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特許7537940シリコンウェーハの貼付装置および貼付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの貼付装置および貼付方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240814BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240814BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
H01L21/304 622N
H01L21/02 B
B24B41/06 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020139558
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035324
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】村田 光昭
(72)【発明者】
【氏名】海老根 泰士
(72)【発明者】
【氏名】中村 大造
(72)【発明者】
【氏名】喜内 文晃
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-237085(JP,A)
【文献】特開平07-037768(JP,A)
【文献】特開平07-183261(JP,A)
【文献】特開平01-045567(JP,A)
【文献】特開昭57-001656(JP,A)
【文献】米国特許第04316757(US,A)
【文献】特開平04-201145(JP,A)
【文献】特開2003-273049(JP,A)
【文献】実開平03-116413(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
H01L 21/02
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付するシリコンウェーハの貼付装置において、
前記キャリアプレートと、
前記キャリアプレートにシリコンウェーハを接着するための接着剤と、
前記接着剤を介して前記シリコンウェーハが仮接着された前記キャリアプレートを覆い、処理空間を形成するためのチャンバと、
前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で減圧する真空ポンプと、
前記真空ポンプの減圧速度を制御する減圧制御部と、
真空状態の前記処理空間を大気開放してシリコンウェーハをキャリアプレートに対して押圧し接着する大気開放手段とを備えることを特徴とするシリコンウェーハの貼付装置。
【請求項2】
シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付するシリコンウェーハの貼付方法において、
キャリアプレートにシリコンウェーハを接着剤により仮接着する工程と、
チャンバにより前記シリコンウェーハが仮接着された前記キャリアプレートを覆い、処理空間を形成する工程と、
前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で目標値まで減圧し真空状態とする工程と、
真空状態の前記処理空間を大気開放してシリコンウェーハをキャリアプレートに対して押圧し接着する工程とを備えることを特徴とするシリコンウェーハの貼付方法。
【請求項3】
前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で目標値まで減圧し真空状態とする工程の後、
真空状態を所定時間維持する工程を備え、
前記真空状態を維持する時間は、予め測定した、前記接着剤からの脱気が完了する時間であることを特徴とする請求項2に記載されたシリコンウェーハの貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの貼付装置および貼付方法に関し、シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付するシリコンウェーハの貼付装置および貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、片面に鏡面を有するシリコンウェーハの製造方法としては、一般的には図5に示すフローに従う。即ち、円柱状に加工したシリコン単結晶をウェーハ状にスライスする工程(ステップS1)と、スライスしたウェーハの両面をラップ又は研削する工程(ステップS2)と、加工によって生じた歪層を除去するためにエッチングする工程(ステップS3)と、エッチドウェーハをキャリアプレートに貼り付ける工程(ステップS4)と、片面研磨装置を用いてウェーハのデバイス形成面である表面の一次研磨から仕上(最終)研磨まで行う工程(ステップS5)と、仕上研磨されたウェーハを純水によって洗浄する工程(ステップS6)とを実施する。
【0003】
上記ステップS4、S5の工程について詳しく説明すると、図6は、シリコンウェーハの片面鏡面研磨に使用される鏡面研磨装置の概要の説明図であり、定盤51には、平坦面に仕上げられた表面に研磨布52が貼着され、定盤51の中心を回転軸51aとして回転可能に構成されている。また、定盤51の上方には加圧・回転ヘッド55が配設されている。このヘッド55は、定盤51の中心から偏位した位置にある回転軸55aにより上下動可能に構成され、また回転軸55aを中心として回転可能に構成されている。
【0004】
この鏡面研磨装置によりシリコンウェーハWを片面鏡面研磨するには、シリコンウェーハWの裏面(非加工面)にワックス等の接着剤を塗布して高精度の平坦度を有するキャリアプレート54の表面に貼り付け、次に、シリコンウェーハWを貼り付けた面を下向きにしてキャリアプレート54をヘッド55の下面に取り付ける。
その後、ヘッド55を定盤51に押しつけながら自転させる。尚、スラリ供給チューブ56から、研磨剤が混入されたスラリを研磨布52に供給するように構成されている。シリコンウェーハWは、研磨布52表面の外周縁から5~20mm程度外側の領域を摺動(移動)する。その結果、シリコンウェーハWの加工面は鏡面加工される。
【0005】
ところで、ウェーハ表面を上記のような研磨加工により、高い平坦度に仕上げるためには、ウェーハを貼り付けるキャリアプレート面自体が高い平坦度を有していることが必要であるだけでなく、ウェーハをキャリアプレート面に対して高い平坦度で貼り付けることが必要である。
すなわち、シリコンウェーハとキャリアプレートとの間の接着剤層が、均等な厚さで、かつ、シリコンウェーハとキャリアプレートとを密着させていることが必要である。
【0006】
また、このシリコンウェーハの貼付けに用いられる接着剤中に気泡が含まれないようにすることも重要である。接着剤中に気泡が含まれていると、キャリアプレートに貼り付けられたウェーハを研磨する際、気泡が発熱により膨張し、その部分にストレスがかかって歪みを生じ、ディンプル不良の発生や、厚さが均一かつ平坦なウェーハを得ることが困難となる。
【0007】
このような課題に対し、特許文献1においては、図7に示すように、減圧可能に構成されたチャンバ66内において台座61上のキャリアプレート62にウェーハWを接着剤により仮接着し、前記ウェーハWに対し加圧プレート65により均等に押圧可能なウェーハ貼付装置60が開示されている。
このウェーハ貼付装置60によれば、減圧されたチャンバ66内においてキャリアプレート62上に接着剤によりウェーハWを仮接着する。更に加圧装置64を駆動し、加圧プレート65によりウェーハWを押圧して接着剤中の気泡を除去し、その後チャンバ66内を大気圧に開放することでウェーハWを強固に接着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-273049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されたウェーハ貼付装置60にあっては、加圧プレート65によりウェーハWを押圧した際、部分的に接着剤中の気泡が除去できない虞があり、その場合、鏡面研磨後にディンプル不良が発生するという課題があった。
また、加圧プレート65により加圧する際、加圧プレート65にウェーハ接着用の接着剤が付着する虞があり、その場合には付着部分の平坦度が低下する不具合が生じるという課題があった。
即ち、特許文献1に開示された発明にあっては、加圧プレート65を用いることにより生じる不具合によって歩留りが低下するという課題があった。
【0010】
上記のように特許文献1に開示された発明にあっては、加圧プレートを用いることにより生じる不具合の虞を有するため、本願発明者は、加圧プレートを用いないことを前提に鋭意研究を行い、本発明をするに至った。
【0011】
本発明の目的は、シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付させる際、接着剤中の気泡を除去し、高い平坦度を有するシリコンウェーハを歩留りよく得ることのできるウェーハの貼付装置及び貼付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェーハの貼付装置は、シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付するシリコンウェーハの貼付装置において、前記キャリアプレートと、前記キャリアプレートにシリコンウェーハを接着するための接着剤と、前記接着剤を介して前記シリコンウェーハが仮接着された前記キャリアプレートを覆い、処理空間を形成するためのチャンバと、前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で減圧する真空ポンプと、前記真空ポンプの減圧速度を制御する減圧制御部と、真空状態の前記処理空間を大気開放してシリコンウェーハをキャリアプレートに対して押圧し接着する大気開放手段とを備えることに特徴を有する。
【0013】
このように構成されたウェーハの貼付装置によれば、キャリアプレートへのシリコンウェーハの貼付において、従来のように加圧プレートを用いないため、接着剤からの脱気不良や加圧プレートへの接着剤の付着等の不具合が生じることがない。また、シリコンウェーハの貼付の際、チャンバ内の減圧速度を制御することができるため、仮接着後のシリコンウェーハがキャリアプレート上で滑る不具合を防止することができる。そのため、本発明の構成によれば、キャリアプレートに対し、高い平坦度で高精度にシリコンウェーハを接着し、歩留りを向上することができる。
【0014】
また、前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェーハの貼付方法は、シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付するシリコンウェーハの貼付方法において、キャリアプレートにシリコンウェーハを接着剤により仮接着する工程と、チャンバにより前記シリコンウェーハが仮接着された前記キャリアプレートを覆い、処理空間を形成する工程と、前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で目標値まで減圧し真空状態とする工程と、真空状態の前記処理空間を大気開放してシリコンウェーハをキャリアプレートに対して押圧し接着する工程とを備えることに特徴を有する。
尚、前記処理空間内を200~2000Pa/secの範囲のいずれかの減圧速度で目標値まで減圧し真空状態とする工程の後、真空状態を所定時間維持する工程を備え、前記真空状態を維持する時間は、予め測定した、前記接着剤からの脱気が完了する時間であることが望ましい。
【0015】
このように構成されたシリコンウェーハの貼付方法によれば、キャリアプレートへのシリコンウェーハの貼付において、従来のように加圧プレートを用いないため、接着剤からの脱気不良や加圧プレートへの接着剤の付着等の不具合が生じることがない。また、シリコンウェーハの貼付の際、チャンバ内の減圧速度を制御することができるため、仮接着後のシリコンウェーハがキャリアプレート上で滑る不具合を防止することができる。そのため、本発明の構成によれば、キャリアプレートに対し、高い平坦度で高精度にシリコンウェーハを接着し、歩留りを向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリコンウェーハの一方の面を研磨するために該シリコンウェーハの他方の面をキャリアプレートに貼付させる際、接着剤中の気泡を除去し、高い平坦度を有するシリコンウェーハを歩留りよく得ることのできるウェーハの貼付装置及び貼付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のシリコンウェーハの貼付装置の断面図である。
図2図2は、ウェーハ貼付装置の一連の動作の遷移を示す断面図である。
図3図3は、ウェーハ貼付装置の一連の動作を示すフロー図である。
図4図4は、実施例の結果を示すグラフである。
図5図5は、従来のシリコンウェーハの研磨方法の手順を示すフローである。
図6図6は、従来の片面枚葉研磨装置の構成を示す正面図である。
図7図7は、従来の加圧プレートを備えるウェーハ貼付装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のシリコンウェーハの貼付装置の断面図である。
ウェーハ貼付装置100は、図1に示すように、昇降可能な台座1と、台座1上に固定されたチャンバ2とを備える。チャンバ2の底部は開口して開口部2aが形成され、その周縁に台座1と密着するため、Oリング3が設けられている。即ち、台座1が最上昇した際にチャンバ2と台座1とが密着し、チャンバ2内が密閉空間(処理空間)となる。一方、台座1が下降移動されると、台座1上の空間が開放され、台座1上の被処理対象の搬入出等が可能となされている。
【0019】
また、前記チャンバ2には、排気口2bと吸気口2cとが設けられている。前記排気口2bには、真空ポンプ4が接続され、チャンバ2内が密閉された状態で真空ポンプ4が駆動することによりチャンバ2内の空間が所望の真空状態に減圧可能となされている。
また、前記真空ポンプ4には、減圧制御部5(コンピュータ)が接続されている。この減圧制御部5は、真空ポンプ4の排気速度を制御するものである(即ち、チャンバ2内の減圧速度(レート)を制御する)。排気速度の具体的な制御方法は特に限定されるものではないが、例えば、真空ポンプ4のモーター回転数を制御することができる。
また、前記吸気口2cには、バルブ6が設けられ、チャンバ2内への外気の流入量を制御できるようになっている。
また、前記台座1上には、キャリアプレート10が載置され、キャリアプレート10上に複数のシリコンウェーハWが貼付可能となっている。
【0020】
続いて、上記のように構成されたウェーハ貼付装置100の一連の動作について図2及び図3を用いて説明する。図2は、ウェーハ貼付装置100の一連の動作の遷移を示す断面図であり、図3は、ウェーハ貼付装置100の一連の動作を示すフロー図である。
先ず、図2(a)に示すように、台座1を下降させた状態で、キャリアプレート10上にシリコンウェーハWをワックス等の接着剤11を用いて仮接着する(ステップST1)。
【0021】
次いで、図2(b)に示すように、チャンバ2に対し台座1を上昇し、チャンバ2の下端を台座1に密着させて、チャンバ2内に処理空間20を形成する(ステップST2)。
処理空間20を形成後、減圧制御部5の制御の下で真空ポンプ4を駆動し、排気口2bから処理室20内の雰囲気を排気して処理室20内を減圧開始する(ステップST3)。
【0022】
このとき、減圧速度(減圧レート)は、200Pa/sec~2000Pa/secの間で設定した値(例えば600Pa/sec)で制御し、処理空間20内の気圧が大気圧より低い目標値(例えば100Pa)となるまで減圧する(ステップST4)。
尚、減圧速度が、1~200Pa/secであると、平坦度は向上するが、減圧時間が長く、スループットが著しく低下するため好ましくない。一方、2000Pa/secより大きい値だと、減圧速度が速すぎ、処理空間20内の気流の流れが急峻となる。そのため、シリコンウェーハWがキャリアプレート10上で滑り、正常な貼り付けができない虞があるため好ましくない。
【0023】
処理空間20内の気圧が100Paに達すると、真空ポンプ4の動作を停止し、気圧100Paの状態で例えば10sec維持する(ステップST5)。これにより、接着剤11中の気泡がすべて処理空間20中に脱気される。尚、真空状態を維持する時間は、接着剤11から脱気が完了する時間を予め測定して決定される。
【0024】
そして、吸気口2cのバルブ6を全開し、図2(c)に示すようにチャンバ2内に外部の気体が流入するとともにチャンバ2内が瞬時に大気圧の状態になされる(ステップST6)。このチャンバ2内の100Paから大気圧への変化によってシリコンウェーハWがキャリアプレート10に対し押圧され、接着される。
その後、台座1が下降されて、台座1から(シリコンウェーハWが貼付された)キャリアプレート10が取り出され、図示しない研磨装置に装着される。
【0025】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、キャリアプレート10へのシリコンウェーハWの貼付において、従来のように加圧プレートを用いないため、接着剤からの脱気不良や加圧プレートへの接着剤の付着等の不具合が生じることがない。また、シリコンウェーハWの貼付の際、チャンバ2内の減圧速度を制御することができるため、仮接着後のシリコンウェーハWがキャリアプレート上で滑る不具合を防止することができる。そのため、本発明の構成によれば、キャリアプレート10に対し、高い平坦度で高精度にシリコンウェーハWを接着し、歩留りを向上することができる。
【0026】
尚、前記実施の形態においては、チャンバ2内の気圧を大気圧より低い目標値(真空状態)まで減圧した後、その状態で10sec維持するものとしたが、本発明にあっては、減圧状態での維持時間は、それに限定されるものではなく、任意に調整してよい。
【0027】
また、前記実施の形態においては、チャンバ2内を減圧状態で維持後、バルブ6を開放して吸気口2cから外気と取り入れ、処理室20内を大気圧とするものとしたが(即ち、バルブ6と吸気口2cとが大気開放手段)、本発明にあっては、その方法に限定されず、チャンバ2内を減圧状態で維持後、台座1を下降させてチャンバ2内を大気開放するようにしてもよい(図示しない台座下降手段が大気開放手段)。
【実施例
【0028】
本発明に係るシリコンウェーハの貼付装置及び貼付方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0029】
(実験1)
実験1では、キャリアプレートにシリコンウェーハを仮接着した後、チャンバ内の好ましい減圧速度について検証した。
【0030】
(実施例1~10)
実施例1~10では、チャンバ内の減圧速度(減圧レート)を200~2000Pa/secの間で設定した値とし、減圧速度とSFQR歩留向上率との関係を求めた。尚、SFQRとは、サイトフラットネスと呼ばれる平坦度の指標であり、ウェーハ全面を格子状(本実験では25mm×25mm)に区切り、各領域内での厚さむらを示したものである。
具体的には、直径200mm、厚み740μmのシリコンウェーハに液体接着剤をスピンコートで塗布し、キャリアプレートに均一な間隔で隔たり無く仮接着した。そして、前記キャリアプレートを収容するチャンバ内を、減圧速度200~2000Pa/secの間で設定したいずれかの値(実施例1:200Pa/sec、実施例2:300Pa/sec、実施例3:400Pa/sec、実施例4:500Pa/sec、実施例5:600Pa/sec、実施例6:700Pa/sec、実施例7:800Pa/sec、実施例8:900Pa/sec、実施例9:1000Pa/sec、実施例10:2000Pa/sec)とし、チャンバ内の気圧が100Paとなるまで減圧した。
【0031】
チャンバ内の気圧を100Paとした後、10sec維持し、その後、チャンバ内を瞬時に大気開放してウェーハをキャリアプレートに接着した。
この貼付処理後、KLA-Tencor製ADE9500を用い、ウェーハ平坦度の測定評価を行った。ウェーハ平坦度の評価は、25mm×25mmのSFQR(SEMI M1規格)。
【0032】
(比較例1、2)
比較例1、2では、チャンバ内の減圧速度(減圧レート)を1~200Pa/sec未満の間で設定した値とし、減圧速度とSFQR歩留向上率との関係を求めた。具体的には、比較例1では減圧速度を10Pa/secとし、比較例2では減圧速度を100Pa/secとした。その他の条件は、実施例1~10と同じである。
【0033】
(比較例3、4)
比較例3、4では、チャンバ内の減圧速度(減圧レート)を2000Pa/secより大きい値とし、減圧速度とSFQR歩留向上率との関係を求めた。具体的には、比較例3では減圧速度を3000Pa/secとし、比較例4では減圧速度を4000Pa/secとした。その他の条件は、実施例1~10と同じである。
【0034】
実施例1~10、及び比較例1~4の結果を図4のグラフに示す。図4のグラフにおいて横軸は減圧速度(Pa/sec)、縦軸はSFQR歩留向上率(%)である。尚、SFQR歩留向上率とは、本発明によるSFQR歩留と先行技術によるSFQR歩留との差を示している。
図4のグラフに示すように、比較例1、2では、SFQR歩留向上率は高い値となったが、目標値までに達する減圧時間が長いため、スループットが大きく低下した。
また、比較例3、4では、減圧速度が速すぎてチャンバ内の気流の流れが急峻となり、プレート上でシリコンウェーハが滑る現象が発生した。そのため、正常な貼り付けができなかった。
一方、実施例1~10では、減圧速度は適度でスループットが良好であり、SFQR歩留向上率が高い値となった。そのため、チャンバ内の好ましい減圧速度の範囲は、200~2000Pa/secであることを確認した。
【0035】
(実験2)
実験2では、上記実施例5の結果と、従来の加圧プレートを用いたウェーハ貼付方法による結果との比較を行った。
【0036】
(比較例5)
比較例5では、実施例5と同様に直径200mm、厚み740μmのシリコンウェーハに液体接着剤をスピンコートで塗布し、キャリアプレートに均一な間隔で隔たり無く仮接着した。そして、前記仮接着したウェーハを加圧プレートにより250Nの力で加圧し、約10000Pa/secの減圧速度にてチャンバ内を真空状態とした。
その後、チャンバ内を瞬時に大気開放してウェーハをキャリアプレートに接着した。
この貼付処理後、KLA-Tencor製ADE9500を用い、ウェーハ平坦度の測定評価を行った。ウェーハ平坦度の評価は、25mm×25mmのSFQR(SEMI M1規格)。
【0037】
実験2の結果、実施例5では、比較例5での平坦度と変わらなかったが、25mm×25mmSFQR≦0.2μmの歩留りは、比較例5よりも5%向上した。
この結果より、実施例5では、ウェーハとキャリアプレート間の気泡抜けがよくなり、エア溜まりによるディンプル不良が減少したものと考えられた。
【0038】
以上の実施例の結果より、本発明によれば、ウェーハとキャリアプレート間の脱気をスムーズに行うことができ、高い平坦度を有するウェーハを歩留りよく得ることができると確認した。
【符号の説明】
【0039】
1 台座
2 チャンバ
2c 吸気口
3 Oリング
4 真空ポンプ
5 減圧制御部
6 バルブ
10 キャリアプレート
11 接着剤
100 ウェーハ貼付装置
W ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7