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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/02 20060101AFI20240814BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240814BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240814BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B24B7/02
B24B41/06 L
H01L21/78 F
H01L21/304 611S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020216239
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101881
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/189039(JP,A1)
【文献】特開2001-351890(JP,A)
【文献】特開2001-196328(JP,A)
【文献】特開2020-183000(JP,A)
【文献】特開2020-088068(JP,A)
【文献】特開2015-115526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-7/30
B24B21/00-51/00
H01L21/301;21/78
H01L21/304;21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向及び該X方向に直交するY方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す円盤砥石をY方向に延在する回転軸に装着した加工手段と、該保持手段と該加工手段とをX方向に相対的に加工送りするX方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とをY方向に相対的に割り出し送りするY方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とを該保持面に対して垂直なZ方向に相対的に切り込み送りするZ方向送り手段と、を備えた加工装置を用いてZ方向に加工残し量が異なる2以上の被加工物を加工する加工方法であって、
2以上の被加工物を支持するサブストレートの上面に、加工残し量に対応する段差を形成する段差形成工程と、
該段差が形成されたサブストレートの上面であって、段差を形成する各平面上に被加工物を配設する被加工物配設工程と、
サブストレートの段差が形成された段差方向をX方向に向けて該保持手段の保持面に保持するサブストレート保持工程と、
該Y方向送り手段によって該円盤砥石を所望のY位置に位置付けると共に、該Z方向送り手段によって該円盤砥石を所望のZ位置に位置付ける位置付け工程と、
該X方向送り手段によって該円盤砥石を2以上の被加工物に作用させて加工を施す加工工程と、
から構成される加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工残し量が異なる2以上の被加工物を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所望の厚みに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、近年では、比較的厚く形成されたデバイスチップを、所望の薄さまで高精度に研削することが行われており(例えば特許文献1を参照)、デバイスチップの適正な厚みを見つけるために、例えば、20μm、50μm、100μmの厚みにデバイスチップを加工し、各厚みのデバイスチップの性能、例えば、落下強度、耐熱性、放熱性等を検証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-351890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したように異なる厚さのデバイスチップを形成すべく、円盤砥石を用いて各デバイスチップの表面を切削して薄化する場合、異なる目標厚みが設定されたデバイスチップ毎に、円盤砥石による加工残し量(=目標厚み)を変化させて加工を実施する必要があり、生産性が悪いという問題がある。また、ウエーハの分割予定ラインをハーフカットして適正な切り込み深さを検証する場合も、異なる切込み深さが設定された試験ウエーハ片毎に、円盤砥石で形成された切削ブレードによる加工残し量を変化させて加工を実施する必要があり、上記したのと同様の問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、加工残し量が異なる2以上の被加工物を効率よく加工することができる加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、X方向及び該X方向に直交するY方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す円盤砥石をY方向に延在する回転軸に装着した加工手段と、該保持手段と該加工手段とをX方向に相対的に加工送りするX方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とをY方向に相対的に割り出し送りするY方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とを該保持面に対して垂直なZ方向に相対的に切り込み送りするZ方向送り手段と、を備えた加工装置を用いてZ方向に加工残し量が異なる2以上の被加工物を加工する加工方法であって、2以上の被加工物を支持するサブストレートの上面に、加工残し量に対応する段差を形成する段差形成工程と、該段差が形成されたサブストレートの上面であって、段差を形成する各平面上に被加工物を配設する被加工物配設工程と、サブストレートの段差が形成された段差方向をX方向に向けて該保持手段の保持面に保持するサブストレート保持工程と、該Y方向送り手段によって該円盤砥石を所望のY位置に位置付けると共に、該Z方向送り手段によって該円盤砥石を所望のZ位置に位置付ける位置付け工程と、該X方向送り手段によって該円盤砥石を2以上の被加工物に作用させて加工を施す加工工程と、から構成される加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加工方法は、X方向及び該X方向に直交するY方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に加工を施す円盤砥石をY方向に延在する回転軸に装着した加工手段と、該保持手段と該加工手段とをX方向に相対的に加工送りするX方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とをY方向に相対的に割り出し送りするY方向送り手段と、該保持手段と該加工手段とを該保持面に対して垂直なZ方向に相対的に切り込み送りするZ方向送り手段と、を備えた加工装置を用いてZ方向に加工残し量が異なる2以上の被加工物を加工する加工方法であって、2以上の被加工物を支持するサブストレートの上面に、加工残し量に対応する段差を形成する段差形成工程と、該段差が形成されたサブストレートの上面であって、段差を形成する各平面上に被加工物を配設する被加工物配設工程と、サブストレートの段差が形成された段差方向をX方向に向けて該保持手段の保持面に保持するサブストレート保持工程と、該Y方向送り手段によって該円盤砥石を所望のY位置に位置付けると共に、該Z方向送り手段によって該円盤砥石を所望のZ位置に位置付ける位置付け工程と、該X方向送り手段によって該円盤砥石を2以上の被加工物に作用させて加工を施す加工工程と、から構成されていることから、複数の被加工物毎に切り込み深さを変更する必要がなく、生産性が向上する。また、ウエーハの分割予定ラインをハーフカットして適正な切込み残し量を検証するための試験片を作成する際の生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の加工方法に好適なダイシング装置の全体斜視図である。
図2】(a)図1に記載のダイシング装置に配設されたスピンドルユニットの一部を分解して示す斜視図、(b)(a)の示すスピンドルユニットを組み立てた状態の斜視図である。
図3】段差形成工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】(a)被加工物配設工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示すサブストレートの側面図である。
図5】サブストレート保持工程の実施態様を示す斜視図である。
図6】位置付け工程の実施態様を示す斜視図である。
図7】(a)加工工程の実施態様を示す側面図、(b)加工工程によって形成された複数のシリコンチップの斜視図である。
図8】第2の実施形態の位置付け工程の実施態様を示す斜視図である。
図9】(a)第2の実施形態の加工工程の実施態様を示す側面図、(b)第2の実施形態の加工工程によって形成された複数のシリコンチップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の加工方法に係る第1の実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
図1には、本実施形態の加工方法を実施するのに好適なダイシング装置1が示されている。図1に示されたダイシング装置1は、基台2を備え、該基台2上に被加工物を保持するチャックテーブル機構4、門型の支持フレーム5、及び被加工物を加工する加工手段として機能する切削手段6が配設されている。
【0012】
図示のチャックテーブル機構4は、基台2の上面に配設され矢印Xで示すX方向に沿って互いに平行に延設された一対の案内レール2A、2Aを備えている。この一対の案内レール2A、2A上には、X方向移動基台41が配設されている。X方向移動基台41に形成された一対の被案内溝411、411が一対の案内レール2A、2Aに係合することにより、X方向移動基台41がX方向に移動可能に構成されている。
【0013】
X方向移動基台41上には、円筒部材42が配設され、この円筒部材42の上端に被加工物を保持する保持手段として機能するチャックテーブル44が配設されている。チャックテーブル44は、X方向及び該X方向と直交するY方向で規定され被加工物を保持する保持面45aを構成し通気性を有する部材で形成された吸着チャック45を備えている。吸着チャック45には、上記した円筒部材42の内部に形成された図示を省略する連通路及び吸引手段が接続されている。円筒部材42の上端部には、チャックテーブル44が挿通される穴を有しX方向移動基台41を覆うカバー部材43が配設されている。チャックテーブル44は、図示を省略する回転駆動手段、例えばパルスモータによって回転駆動させられる。該吸引手段を作動させることにより、チャックテーブル44の保持面45aに吸引負圧を供給して、被加工物を保持するサブストレート20を吸引保持することができる。
【0014】
チャックテーブル機構4は、チャックテーブル41を一対の案内レール2A、2Aに沿ってX方向に加工送りするためのX方向送り手段3を備えている。X方向送り手段3は、一対の案内レール2A、2Aの間に平行に配設され、一端が軸受部2Bに回転可能に支持された雄ネジロッド32と、雄ネジロッド32の他端に連結され該雄ネジロッド32を正転または逆転駆動するパルスモータ31とから構成されている。このように構成されたX方向送り手段3は、雄ネジロッド32が上記X方向移動基台41の下面側に形成された図示を省略する雌ネジ部に螺合される。従って、X方向送り手段3は、パルスモータ31を駆動して雄ネジロッド32を正転または逆転駆動することにより、上記X方向移動基台41上に配設されたチャックテーブル44を一対の案内レール2A、2Aに沿ってX方向に移動させることができる。
【0015】
図示の実施形態における切削装置1は、上記した一対の案内レール2A、2Aを跨いでX方向と直交するY方向に沿って配設された門型の支持フレーム5を備えている。この支持フレーム5は、一対の案内レール2A、2Aに沿って移動可能に配設されたチャックテーブル44の移動を許容する開口50を備えている。支持フレーム5の前面5aの上方には一対の案内レール51、51と共に、切削手段6が配設されている。切削手段6は、Y方向移動基台61と、Z軸方向移動基台62と、スピンドルユニット63とを備えている。Y方向移動基台61は、背面側で上記した一対の案内レール51、51と係合する図示を省略する被案内溝が設けられており、該被案内溝を一対の案内レール51、51に係合させることにより一対の案内レール51、51に沿ってY方向に移動可能に構成される。また、Y方向移動基台61の前面61aには、上記したチャックテーブル44の保持面45aに対して垂直な方向(矢印Zで示す方向)に一対の案内レール612、612が設けられている。このように構成されたY方向移動基台61は、Y方向送り手段64によって一対の案内レール51、51に沿ってY方向に移動させられる。Y方向送り手段64は、一対の案内レール51、51の間に平行に配設され一端が軸受部52に回転可能に支持された雄ネジロッド641と、該雄ネジロッド641の他端に連結され該雄ネジロッド641を正転または逆転駆動するパルスモータ642とからなっている。このように構成されたY方向送り手段64は、雄ネジロッド641がY方向移動基台61の後面に設けられた図示を省略する雌ネジ部に螺合される。従って、Y方向送り手段64は、パルスモータ642を駆動して雄ネジロッド641を正転または逆転駆動することにより、Y方向移動基台61を一対の案内レール51、51に沿ってY方向に移動させることができる。
【0016】
上記Z方向移動基台62は、後面側に上記Y方向移動基台61の前面61aに設けられた一対の案内レール612、612と係合する被案内溝621、621が設けられ、該被案内溝621、621を一対の案内レール612、612に係合することにより該案内レール612、612に沿って切り込み送り方向であるZ方向に移動可能に構成される。このように構成されたZ方向移動基台62は、図示のZ方向送り手段65によって一対の案内レール612、612に沿ってZ方向に移動させられる。Z方向送り手段65は、一対の案内レール612、612の間に平行に配設され一端が図示を省略する軸受部に回転自在に支持された雄ネジロッド651と、雄ネジロッド651の他端に連結され該雄ネジロッド651を正転または逆転駆動するパルスモータ652とからなっている。このように構成されたZ方向送り手段65は、雄ネジロッド651がZ方向移動基台62の後面に形成された図示を省略する雌ネジ部に螺合される。従って、Z方向送り手段65は、パルスモータ652を駆動して雄ネジロッド651を正転または逆転駆動することにより、Z方向移動基台62上を一対の案内レール612、612に沿ってZ方向に移動させることができる。
【0017】
上記したZ方向移動基台62の前面62aには、スピンドルユニット63を支持するためのスピンドルユニット支持部材66が装着されている。このスピンドルユニット支持部材66は断面L字状に形成され、Z方向移動基台62の前面62aに装着される取り付け部661と、該取り付け部661の下端から直角に水平に延びる支持部662とからなっており、該支持部662の下面にスピンドルユニット63のユニットハウジング631が装着される。
【0018】
ユニットハウジング631には、Y方向に延在する回転軸632が回転自在に支持されている。また、回転軸632の一端側の先端部には、被加工物に対して加工を施す円盤砥石633が装着されている。円盤砥石633は、厚みが約2mmで形成され、外周端面は平坦に形成されている(図2も併せて参照)。ユニットハウジング631の先端部には、該円盤砥石633を覆う砥石カバー634が配設されている。ユニットハウジング631の他端部には、回転軸632を回転駆動するサーボモータ635が配設されている。図2(a)に示すように(説明の都合上、砥石カバー634は省略している)、スピンドルユニット63に回転自在に支持された回転軸632の先端に、雄ネジ部632a、及びフランジ632bが形成され、円盤砥石633の開口633aに回転軸632の先端部を挿入し、回転軸632の雄ネジ部632aに、ナット636の雌ネジ636aを締結することにより、図2(b)に示すように、円盤砥石633がフランジ632bとナット636とに挟み込まれて回転軸632の先端部に固定される。
【0019】
図1に戻り説明を続けると、ダイシング装置1には、図示を省略する制御手段が配設される。該制御手段には、上記したX方向送り手段3、Y方向送り手段64、及びZ方向送り手段65が接続されて、該制御手段から指示される指示信号に基づいて、X方向送り手段3、Y方向送り手段64、及びZ方向送り手段65の作動が制御される。ダイシング装置1には、上記した構成の他、切削加工位置を検出するための撮像手段等も配設されるが、図1では省略されている。
【0020】
上記したX方向送り手段3を作動することで、保持手段として配設されたチャックテーブル44と切削手段6とをX方向に相対的に加工送りすることができ、Y方向送り手段64を作動することで、チャックテーブル44と切削手段6とをY方向に相対的に割り出し送りすることができ、Z方向送り手段65を作動することで、チャックテーブル44と切削手段6とを保持面45aに対して垂直なZ方向に相対的に切り込み送りすることができる。これにより、チャックテーブル44に保持された被加工物に対する切削手段6の円盤砥石633の位置を、所望の位置に位置付けることができる。
【0021】
本実施形態のダイシング装置1は、概ね上記したとおりの構成を備え、ダイシング装置1によって実施されるZ方向において加工残し量が異なる2以上の被加工物を加工する加工方法について、以下に説明する。
【0022】
本実施形態の加工方法を実施するにあたり、まず、2以上の被加工物を支持するサブストレート20の上面に、加工残し量に対応する段差を形成する段差形成工程を実施する。より具体的には、例えば、図3の上方に示す板状のサブストレート20を用意する。本実施形態のサブストレート20は、例えば、厚みが500μmの円形の板材であり、シリコン(Si)で形成されている。なお、図3に示すサブストレート20は円形の板材で形成されているが、本発明はこれに限定されず、他の形状、例えば、四角形の板材であってもよい。上記したサブストレート20を用意したならば、図示を省略する研削装置に搬送し、上面20a側において平行な破線A、Bで区分された3つの第1領域20A、第2領域20B、及び第3領域20Cのうち、中央の第2領域20Bを、研削加工を実施しない第1領域20Aに対して、例えば30μm低くなるように研削して平面を形成し、第1領域20Aに対して30μm薄い第2領域20Bを形成する。さらに、破線Bで区分された第2領域20Bに隣接する第3領域20Cを、第2領域20Bよりも、例えば50μm低くなるように研削して平面を形成し、第1領域20Aよりも80μm薄い第3領域20Cを形成する。これにより、図3の下段に示す斜視図から理解されるように、サブストレート20の上面20aに2つの段差が形成されて、矢印R1で示す段差方向(破線A、破線Bと直交する方向)において厚みが2段階で変化するサブストレート20が形成される。
【0023】
本発明の段差形成工程に関し、サブストレート20は、上記したシリコンにより形成されることに限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されてもよい。また、上記した実施形態の段差形成工程では、一定の厚み(500μm)を有する円板状のサブストレート20を用意し、上面20aにおける第2領域20B、及び第3領域20Cを研削して薄化することにより、上記の段差を形成したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図3の下方に示されたサブストレート20の第3領域20Cの厚み(420μm)で形成された円形の板材を用意し、該円形の板材の上に、第1の領域20A、第2の領域20Bを形成する板材を重ねて貼着することで、上記した段差を有する第1領域20A、第2領域20B、第3領域20Cを形成して、図3の下方に示されたサブストレート20を形成することもできる。
【0024】
上記した段差形成工程を実施したならば、図4に示すように、該段差が形成されたサブストレート20の上面20aであって、段差を形成する各平面(第1領域20A~第3領域20C)上に被加工物を配設する被加工物配設工程を実施する。本実施形態の被加工物は、例えば、図4(a)に概略的に示すシリコンチップ10A、10B、10Cである。シリコンチップ10A、10B、10Cは、デバイスチップを模した同一形状のチップであり、例えば、平面視で1辺が5mm四方の四角形状であって、高さが300μmの直方体である。なお、添付図面に示すサブストレート20、22の寸法、段差、及びシリコンチップ10A~10C等の寸法については、説明の都合上、誇張して示している。
【0025】
上記したシリコンチップ10A~10Cを用意したならば、サブストレート20の上面20aであって、第1領域20Aの平面上にシリコンチップ10Aを載置し、第2領域20Bの平面上にシリコンチップ10Bを載置し、第3領域20Cの平面上にシリコンチップ10Cを載置して、それぞれをワックス等により貼着して固定する。なお、シリコンチップ10A~10Cは、図4(a)に示すように、段差方向R1に沿って直列に配設することが好ましい。図4(b)から理解されるように、サブストレート20の上面20aには、上記した段差が形成されていることから、第2領域20Bに配設されたシリコンチップ10Bは、第1領域20Aに配設されたシリコンチップ10Aよりも30μm低い位置に配設される。また、第3領域20Cに配設されたシリコンチップ10Cは、第1領域20Aに配設されたシリコンチップ10Aよりも80μm低い位置(シリコンチップ10Bよりも50μm低い位置)に配設される。
【0026】
上記した被加工物配設工程を実施したならば、サブストレート20を、図1に示すダイシング装置1に搬送して、以下に説明するサブストレート保持工程を実施する。この際、チャックテーブル44は、図1において示すように、被加工物を搬出入する搬出入位置に位置付けられている。ここで、サブストレート20は、図5に示すように、サブストレート20上において、段差方向R1をX方向に向け、チャックテーブル44の保持面45aに載置される。次いで、図示を省略する吸引手段を作動して、該保持面45aに吸引負圧を供給して、サブストレート20を保持面45aに吸引して保持する。
【0027】
次いで、上記したY方向送り手段64及びZ方向送り手段を作動して、以下に説明する位置付け工程を実施する。位置付け工程を実施するに際し、まず、Y方向送り手段64を作動することにより、図6に示すように、切削手段6のスピンドルユニット63の位置をY方向に移動させ、切削手段6の円盤砥石633を、Y方向における所望の初期位置、例えば、シリコンチップ10A~10Cの手前側の辺10a、10b、10cのY座標と一致するY位置に位置付けると共に、上記したZ方向送り手段65を作動して、スピンドルユニット63をZ方向に移動して下降させ、Z方向における所望の初期位置、より具体的には、図7(a)において2点鎖線で示すように、円盤砥石633の下端をチャックテーブル44の保持面45aからH1となるZ座標と一致するZ位置に位置付ける。該H1は、シリコンチップ10Aの上面を切削した後に残る加工残し量として設定された20μmに対し、サブストレート20の第1領域20Aの厚みである500μmを加算された520μmである。なお、この位置付け工程を実施する際には、チャックテーブル44は、図1に示す搬出入位置から切削加工が施される加工位置の手前までの間のいずれかに位置付けられていればよい。
【0028】
なお、上記した位置付け工程を実施するに際し、シリコンチップ10A~10Cの位置が判明していない場合は、適宜アライメント工程を実施する。アライメント工程を実施する場合は、上記した切削手段6と一体的に配設される撮像手段(図示は省略する)を使用し、チャックテーブル20上に配設されたシリコンチップ10A~10Cを上方から撮像して、該シリコンチップ10A~10Cの位置情報を検出して上記した制御手段に記憶し、該位置情報に基づいて、上記した位置付け工程が実施される。
【0029】
上記した位置付け工程を実施したならば、上記したX方向送り手段3によって円盤砥石633を上記したシリコンチップ10A~10Cに作用させて加工を施す加工工程を実施する。より具体的には、まず、切削手段6のサーボモータ635を作動して、円盤砥石633を図6図7(a)中に矢印R2で示す方向に回転させる。次いで、上記位置付け工程により所定の位置に位置付けられた円盤砥石633に対して、X方向移動手段3を作動して、チャックテーブル44をX方向に移動させ、円盤砥石633を、矢印R3で示す方向に相対的に移動させて、円盤砥石633によって、サブストレート20の第1領域20Aに配設されたシリコンチップ10Aの表面の手前側の辺10aに沿った一部を切削する。上記したように、円盤砥石633の下端は、チャックテーブル44の保持面45aから高さH1(=520μm)の位置に位置付けられており、シリコンチップ10Aは、300μmの厚みで形成されている。したがって、円盤砥石633によって、シリコンチップ10Aは、上面から280μmだけ切削され、加工残し量は20μmとなる。次いで、X方向移動手段3をさらに作動させて、チャックテーブル44をX方向に移動させる。これにより、円盤砥石633によって、サブストレート20の第2領域20Bに配設されたシリコンチップ10Bの表面の手前側の辺10bの一部を切削する。上記したように、第2領域20Bの表面の高さは、第1領域20Aの表面よりも30μm低く設定されていることから、円盤砥石633によってシリコンチップ10Bが切削された場合の加工残し量は、シリコンチップ10Aよりも30μm多い50μmとなる。さらに、X方向送り手段3を作動させて、チャックテーブル44をX方向に移動して、円盤砥石633によって、サブストレート20の第3領域20Cに配設されたシリコンチップ10Cの表面の手前側の辺10cの一部を切削する。上記したように、第3領域20Cの表面の高さは、第1領域20Aよりも80μm低く、第2領域20Bよりも50μm低く設定されていることから、円盤砥石633によってシリコンチップ10Cが切削される際の加工残し量は、シリコンチップ10Aよりも80μm多い100μmとなる。
【0030】
上記したように、平面視におけるシリコンチップ10A~10Cの幅(一辺)は5mmであるのに対し、円盤砥石633の厚みは2mmであることから、上記した一度の切削加工では、シリコンチップ10A~10CのY方向の端部から2mmの範囲でのみ切削される。よって、これに続き、X方向移動手段3、及びZ方向送り手段65を作動して、チャックテーブル44を上記した搬出入位置、又は搬出入位置側のいずれかに位置付けると共に、円板砥石633を、上記した位置付け工程において円盤砥石633を位置付けたZ方向における所望の初期位置に位置付ける。そして、Y方向送り手段64を作動して、切削手段6の円盤砥石633の位置を1.95mmだけY方向に割り出し送りする。その後、サーボモータ635を作動して、円盤砥石633を回転させると共に、上記したのと同じように、X方向送り手段3を作動して、チャックテーブル44の保持面45aから高さH1の位置に位置付けられた円盤砥石633を、図7(a)に矢印R3で示す方向に相対的に移動させてシリコンチップ10A~10Cの上面を切削する。
【0031】
上記したように割り出し送りを実施しながら切削加工を複数回(上記の例では3回)繰り返して、シリコンチップ10A~10Cの表面の全域を切削することで、該加工工程が完了する。この結果、図7(b)に示すように、シリコンチップ10A~10Cは、上記した加工残し量に応じて、20μm、50μm、100μmの厚みに形成される。なお、上記した実施形態におけるサブストレート20上の第1領域20A、第2領域20B、及び第3領域20Cによって形成される段差は、30μm、50μmであったが、本発明はこれに限定されず、所望の厚み(加工残し量)に対応して適宜設定される。
【0032】
上記した実施形態によれば、異なる厚み、すなわち、異なる加工残し量が設定される複数のシリコンチップ10A~10Cを加工するに際し、チップ毎に円盤砥石633による切り込み送り量を変化させる必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0033】
なお、上記した第1の実施形態では、Z方向の加工残し量が異なるようにサブストレート20に複数の段差を設定し、シリコンチップ10A~10Cの表面の全域を切削加工して、厚みが異なる3つのシリコンチップ10A~10Cを形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被加工物の分割予定ラインに沿って表面から切削して切削溝を形成する際に、下面側の一部を切り残ししてハーフカットする際の適切な加工残し(切り残し)量を検証する場合にも有効である。以下に、本発明の加工方法に係る第2の実施形態を説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態においても、図1に示すダイシング装置1を使用するが、切削手段6の回転軸632の先端部には、上記した円盤砥石633に替えて、図8に示すような厚みが50μm程度の円盤砥石637(切削ブレード)が装着される。
【0034】
第2の実施形態では、まず、上記した第1の実施形態と同様の均一の厚み(500μm)の円形板状のサブストレート22を用意し、上記と同様の手順により、段差形成工程を実施する。図8に示すように、該段差形成工程により、サブストレート22の上面に対して、被加工物をハーフカットする際の加工残し量(切り残し量)に対応する段差を形成して、第1領域22A、第2領域22B、第3領域22Cを形成する。なお、本実施形態の第1領域22Aと第2領域22Bとにより形成される段差、及び第2領域22Bと第3領域22Cとにより形成される段差は、上記した第1の実施形態とは異なり、いずれも50μmに設定されている。本実施形態の被加工物は、図8の上段に示すように、直方体形状のシリコンチップ10A~10Cであり、このシリコンチップ10A~10Cは、第1の実施形態で使用した加工前のシリコンチップ10A~10Cと同じ形状及び同じ寸法のチップである。このシリコンチップ10A~10Cを、第1の実施形態で実施したのと同様の被加工物配設工程を実施して、段差が形成されたサブストレート22の上面22aであって、段差を形成する第1領域22A~第3領域22Cの各平面上に、段差方向R1に沿って直列にシリコンチップ10A~10Cを配設する。次いで、上記したのと同様の手順により、サブストレート保持工程を実施して、サブストレート22の段差方向R1をX方向に向けて上記したチャックテーブル44の保持面45aに保持する。
【0035】
次いで、Y方向送り手段64によって円盤砥石637を所望のY位置に位置付けると共に、Z方向送り手段65によって円盤砥石637を所望のZ位置に位置付ける位置付け工程を実施する。より具体的には、Y方向送り手段64を作動し、図8に示すように、円盤砥石637をY方向に移動して、シリコンチップ10A~10CにおけるY方向の中心のY座標と一致するY位置に位置付けると共に、上記したZ方向送り手段65を作動して、スピンドルユニット63をZ方向に移動して下降させ、Z方向における所望の位置、より具体的には、図9(a)に示すように、円盤砥石637の下端が、チャックテーブル44の保持面45aからH2となるZ座標と一致するZ位置に位置付ける。該H2は、シリコンチップ10AをX方向に切削した後に残る切り残し量として設定された100μmに対し、サブストレート22の第1領域22Aの厚みである500μmが加算された600μmである。なお、この位置付け工程を実施する際には、チャックテーブル44は、図1に示す搬出入位置から切削加工が施される加工位置の手前までの間のいずれかに位置付けられていればよい。
【0036】
上記した位置付け工程を実施したならば、X方向送り手段3によって円盤砥石637を上記したシリコンチップ10A~10Cに作用させて加工を施す加工工程を実施する。より具体的には、まず、切削手段6のサーボモータ635を作動して、円盤砥石637を図8中に矢印R2で示す方向に回転させる。次いで、上記位置付け工程により所定の位置に位置付けられた円盤砥石637(図9(a)において2点鎖線で示す)に対して、X方向送り手段3を作動して、チャックテーブル44の保持面45aから高さH2の位置に位置付けられた円盤砥石637を、矢印R4で示す方向に相対的に移動させて、サブストレート22の第1領域22Aに配設されたシリコンチップ10AのY方向における中央を切削する。上記したように、円盤砥石637の下端は、チャックテーブル44の保持面45aから高さH2(=600μm)の位置に位置付けられている。これにより、シリコンチップ10Aには、上面から200μmの深さの切削溝12Aが形成され、切削溝12Aにおける切り残し量は100μmとなる。
【0037】
次いで、X方向移動手段3をさらに作動させて、チャックテーブル44をX方向に移動させる。これにより、円盤砥石637によって、サブストレート22の第2領域22Bに配設されたシリコンチップ10BのY方向における中央を切削する。上記したように、第2領域22Bの表面の高さは、第1領域22Aの表面よりも50μm低く設定されていることから、円盤砥石637によってシリコンチップ10Bが切削されて上面から150μmの深さの切削溝12Bが形成される。よって、切削溝12Bにおける切り残し量は、シリコンチップ10Aよりも50μm多い150μmとなる。さらに、X方向送り手段3を作動させて、チャックテーブル44をX方向に移動して、円盤砥石637によって、サブストレート22の第3領域22Cに配設されたシリコンチップ10CのY方向における中央を切削して切削溝12Cを形成する。上記したように、第3領域22Cの表面の高さは、第1領域22Aよりも100μm低く、第2領域22Bよりも50μm低く設定されている。よって、円盤砥石637によって、シリコンチップ10Cが切削されて、上面から100μmの深さの切削溝12Cが形成され、切削溝12Cにおける切り残し量は200μmとなる。以上により、第2の実施形態の加工工程が完了する。
【0038】
上記した第2の実施形態によれば、X方向送り手段3によって円盤砥石637を3つの被加工物(シリコンチップ10A~10C)に作用させて加工を施すことにより、Z方向における切り残し量が異なる加工が施される。したがって、ウエーハの分割予定ラインに対してハーフカットを実施する場合の適正な切り残し量(加工残し量)を検証する場合においても、Z方向送り手段65を作動して複数の被加工物(シリコンチップ10A~10C)に対する切り込み深さを変更する必要がなく、検証用のチップの生産性が向上する。
【0039】
なお、上記した実施形態では、サブストレート20、22に対して、3つの被加工物を配設する3つの平面(第1領域20A~第3領域20C、第1領域22A~第3領域22C)を形成し、それぞれに2つの段差を形成したが、本発明はこれに限定されず、サブストレート20、22上に配設する被加工物の数に対応する複数の平面を形成し、各平面により加工残し量に対応する段差を形成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:ダイシング装置
2:基台
3:X方向送り手段
31:パルスモータ
32:雄ネジロッド
4:チャックテーブル機構
41:X方向移動基台
42:円筒部材
43:カバー部材
44:チャックテーブル
45:吸着チャック
45a:保持面
5:支持フレーム
5a:前面
50:開口
51:案内レール
6:切削手段
61:Y方向移動基台
612:案内レール
62:Z方向移動基台
63:スピンドルユニット
631:ユニットハウジング
632:回転軸
632a:雄ネジ部
632b:フランジ
633:円盤砥石
634:砥石カバー
635:サーボモータ
636:ナット
637:円盤砥石
64:Y方向送り手段
64a:雄ネジロッド
64b:パルスモータ
65:Z方向送り手段
651:雄ネジロッド
652:パルスモータ
66:スピンドルユニット支持部材
661:取り付け部
662:支持部
10A、10B、10C:シリコンチップ
12A、12B、12C:切削溝
20、22:サブストレート
20A、22A:第1領域
20B、22B:第2領域
20C、22C:第3領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9