(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版用水性現像液、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液およびフレキソ印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/32 20060101AFI20240814BHJP
B41C 1/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G03F7/32
B41C1/00
(21)【出願番号】P 2021558290
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2020041504
(87)【国際公開番号】W WO2021100496
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019210248
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】白川 征人
(72)【発明者】
【氏名】村上 平
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-138667(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196820(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/32
B41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷版用水性現像液の濃縮液であって、
前記フレキソ印刷版用水性現像液
が、
アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と水とアルカリ剤とを含有し、
前記アニオン界面活性剤が、下記式(1)で表される化合物であり、
前記ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、及び、下記式(2)で表される化合物、の少なくともいずれかであり、
前記アルカリ剤が、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物であり、
前記アルカリ剤の含有量が、前記フレキソ印刷版水性現像液の総質量に対して、0.01~2質量%である、フレキソ印刷版用水性現像液
である、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
R
1-X
1 ・・・(1)
ここで、前記式(1)中、
R
1は、置換基を有していてもよい、炭素数6~14のアルキル基、炭素数6~14のアルケニル基、または、炭素数6~14のアルキニル基を表す。
X
1は、カルボン酸基またはその塩を表す。
【化1】
ここで、前記式(2)中、
Arは、m価の芳香族基を表し、mは、2~8の整数を表す。
X
2は、炭素数6~14の1価の有機基を表し、pは、1~3の整数を表す。ただし、p<mであり、pが2または3である場合、複数のX
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Aは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
2は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、5~50の整数を表す。複数のA、nおよびR
2は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【請求項2】
前記フレキソ印刷版用水性現像液が、前記アニオン界面活性剤の含有量が0.01~10質量%であり、前記ノニオン界面活性剤の含有量が0.01~10質量%である、請求項1に記載のフレキソ印刷版用水性現像
濃縮液。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物が、HLB値が8以下であり、かつ、水溶性である、請求項1または2に記載のフレキソ印刷版用水性現像
濃縮液。
【請求項4】
前記フレキソ印刷版用水性現像濃縮液の総質量に対する、前記アニオン界面活性剤の含有量が0.02~40質量%であり、前記ノニオン界面活性剤の含有量が0.02~40質量%である、請求項
1~3のいずれか1項に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
【請求項5】
非画像部と画像部を有するフレキソ印刷版の製造方法であって、
感光層を有するフレキソ印刷版原版に対して、前記感光層を画像様に露光する露光工程と、
前記露光工程の後に、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液を2~20倍に希釈した液を用いて現像し、非画像部と画像部とを形成する現像工程と、
前記現像工程の後に、水を用いてリンスするリンス工程とを有する、フレキソ印刷版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版用水性現像液、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液、および、これらを用いたフレキソ印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業環境改善や地球環境の保全の観点から有機溶剤の使用を減らそうという動きが各種産業界から出ており、印刷に用いる感光性のフレキソ印刷版の製版工程においても水性現像可能な感光性樹脂版の使用が増えつつある状況にある。
【0003】
例えば、特許文献1には、「(a)炭素数12~18の飽和脂肪酸のアルカリ金属塩と(b)炭素数12~18の不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩とを、(a):(b)=20:80~80:20の重量比で含有する印刷版用現像液組成物。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1などに記載された水性現像液について、保管および輸送などの際の容積を小さくする観点から濃縮液とする態様を検討したところ、水性現像液に含まれる界面活性剤の種類によっては、濃縮液とした際に界面活性剤の溶解性または分散性が低下し、濃縮適性に劣る場合があり、また、濃縮液とした際に界面活性剤の溶解性が良好であっても、経時で界面活性剤の沈殿が発生し、保存安定性に劣る場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、濃縮適性に優れ、濃縮液とした際の保存安定性が良好となるフレキソ印刷版用水性現像液、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液、および、これらを用いたフレキソ印刷版の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定のアニオン界面活性剤とともに、ノニオン界面活性剤を配合した水性現像液が、濃縮適性に優れ、濃縮液とした際の保存安定性も良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] フレキソ印刷版用水性現像液であって、
アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と水とを含有し、
アニオン界面活性剤が、下記式(1)で表される化合物である、フレキソ印刷版用水性現像液。
R
1-X
1 ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、
R
1は、置換基を有していてもよい、炭素数3~20のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、または、炭素数3~20のアルキニル基を表す。
X
1は、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、硫酸基もしくはその塩、または、リン酸基もしくはその塩を表す。
[2] アニオン界面活性剤の含有量が0.01~10質量%であり、ノニオン界面活性剤の含有量が0.01~10質量%である、[1]に記載のフレキソ印刷版用水性現像液。
[3] 更に、アルカリ剤を含有する、[1]または[2]に記載のフレキソ印刷版用水性現像液。
[4] 上記式(1)中のR
1の炭素数が6~14である、[1]~[3]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像液。
[5] 上記式(1)で表される化合物が、HLB値が8以下であり、かつ、水溶性である、[1]~[4]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像液。
[6] ノニオン界面活性剤が、下記式(2)で表される化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像液。
【化1】
ここで、上記式(2)中、
Arは、m価の芳香族基を表し、mは、1~8の整数を表す。
X
2は、1価の有機基を表し、pは、0~3の整数を表す。ただし、p<mであり、pが2または3である場合、複数のX
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Aは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
2は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、1~100の整数を表す。nが2~100の整数である場合、複数のAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。m-pが2~8の整数である場合、複数のA、nおよびR
2は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0009】
[7] 非画像部と画像部を有するフレキソ印刷版の製造方法であって、
感光層を有するフレキソ印刷版原版に対して、感光層を画像様に露光する露光工程と、
露光工程の後に、[1]~[6]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像液を用いて現像し、非画像部と画像部とを形成する現像工程と、
現像工程の後に、水を用いてリンスするリンス工程とを有する、フレキソ印刷版の製造方法。
【0010】
[8] フレキソ印刷版用水性現像液の濃縮液であって、
アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と水とを含有する、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
[9] アニオン界面活性剤の含有量が0.02~40質量%であり、ノニオン界面活性剤の含有量が0.02~40質量%である、[8]に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
[10] 更に、アルカリ剤を含有する、[8]または[9]に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
[11] アニオン界面活性剤が、下記式(1)で表される化合物である、[8]~[10]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
R
1-X
1 ・・・(1)
ここで、上記式(1)中、
R
1は、置換基を有していてもよい、炭素数3~20のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、または、炭素数3~20のアルキニル基を表す。
X
1は、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、硫酸基もしくはその塩、または、リン酸基もしくはその塩を表す。
[12] 上記式(1)中のR
1の炭素数が6~14である、[11]に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
[13] 上記式(1)で表される化合物が、HLB値が8以下であり、かつ、水溶性である、[11]または[12]に記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
[14] ノニオン界面活性剤が、下記式(2)で表される化合物である、[8]~[13]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液。
【化2】
ここで、上記式(2)中、
Arは、m価の芳香族基を表し、mは、1~8の整数を表す。
X
2は、1価の有機基を表し、pは、0~3の整数を表す。ただし、p<mであり、pが2または3である場合、複数のX
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Aは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
2は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、1~100の整数を表す。nが2~100の整数である場合、複数のAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。m-pが2~8の整数である場合、複数のA、nおよびR
2は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0011】
[15] 非画像部と画像部を有するフレキソ印刷版の製造方法であって、
感光層を有するフレキソ印刷版原版に対して、感光層を画像様に露光する露光工程と、
露光工程の後に、[8]~[14]のいずれかに記載のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液を2~20倍に希釈した液を用いて現像し、非画像部と画像部とを形成する現像工程と、
現像工程の後に、水を用いてリンスするリンス工程とを有する、フレキソ印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濃縮適性に優れ、濃縮液とした際の保存安定性が良好となるフレキソ印刷版用水性現像液、フレキソ印刷版用水性現像濃縮液、および、これらを用いたフレキソ印刷版の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本願明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
【0014】
[フレキソ印刷版用水性現像液]
本発明のフレキソ印刷版用水性現像液(以下、「本発明の現像液」とも略す。)は、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と水とを含有する、フレキソ印刷版用の水性現像液である。
また、本発明の現像液が含有するアニオン界面活性剤は、後述する式(1)で表される化合物である。
【0015】
本発明においては、上述した通り、後述する式(1)で表されるアニオン界面活性剤とともに、ノニオン界面活性剤を配合した水性現像液が、濃縮適性に優れ、濃縮液とした際の保存安定性も良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、後述する比較例1~4に示すように、ノニオン界面活性剤を配合せず、アニオン界面活性剤のみを配合した場合には、濃縮適性が劣ることが分かる。
また、後述する比較例5に示すように、アニオン界面活性剤を配合せず、ノニオン界面活性剤のみを配合した場合には、濃縮液とした際の保存安定性が劣ることが分かる。
そのため、本発明においては、後述する式(1)で表されるアニオン界面活性剤とともに、ノニオン界面活性剤を配合することにより、これらの界面活性剤の相互作用により、各界面活性剤を単独で配合した場合と比較して分散性または溶解性が向上したため、濃縮適性に優れ、濃縮液とした際の保存安定性も良好となる。
以下に、本発明の現像液が含有する各成分について詳細に説明する。
【0016】
〔アニオン界面活性剤〕
本発明の現像液が含有するアニオン界面活性剤は、下記式(1)で表される化合物である。
R1-X1 ・・・(1)
【0017】
上記式(1)中、R1は、置換基を有していてもよい、炭素数3~20のアルキル基、炭素数3~20のアルケニル基、または、炭素数3~20のアルキニル基を表す。
また、上記式(1)中、X1は、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、硫酸基もしくはその塩、または、リン酸基もしくはその塩を表す。
【0018】
上記式(1)中のR1の一態様が示す炭素数3~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、および、シクロオクチル基などが挙げられる。
上記式(1)中のR1の一態様が示す炭素数3~20のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、その具体例としては、1-プロペニル基、1-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、および、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
上記式(1)中のR1の一態様が示す炭素数3~20のアルキニル基としては、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、その具体例としては、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、および、1-オクタデシニル基などが挙げられる。
【0019】
また、上記式(1)中のR1が有していてもよい置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が用いられ、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、および、スルホン酸アニオン基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の好ましくは炭素数1~40、より好ましくは炭素数1~20のものが挙げられる。
アリールオキシ基としては、具体的には、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~18のものが挙げられる。
アシル基としては、具体的には、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2~24のものが挙げられる。
アミド基としては、具体的には、例えば、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2~24のものが挙げられる。
アシロキシ基としては、具体的には、例えば、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2~20のものが挙げられる。
エステル基としては、具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1~24のものが挙げられる。
置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0020】
本発明においては、本発明の現像液について、液表面に生じる皮膜の形成を抑制できる理由から、上記式(1)中のR1の炭素数が6~14であることが好ましい。具体的には、上記式(1)中のR1が、炭素数6~14のアルキル基であることがより好ましく、本発明の現像液を用いた現像において、現像カス(分散物)の凝集が抑制できる理由から、炭素数6~10のアルキル基であることが更に好ましい。
【0021】
上記式(1)中のX1は、上述した通り、カルボン酸基(-COOH)もしくはその塩、スルホン酸基(-SO3H)もしくはその塩、硫酸基(-OSO3H)もしくはその塩、または、リン酸基(-OPO3H2)もしくはその塩を表し、中でも、カルボン酸基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、または、硫酸基もしくはその塩であることが好ましく、カルボン酸基もしくはその塩であることがより好ましい。
また、カルボン酸基などの塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、本発明の現像液について、液表面に生じる皮膜の形成を抑制できる理由から、上記式(1)で表される化合物が、HLB値が8以下であり、かつ、水溶性であることが好ましい。
また、上記式(1)で表される化合物が、HLB値が3以上であることが好ましい。
【0023】
ここで、本発明におけるHLB(Hydrophile Lipophile Balance)値は、上記式(1)で表される化合物の分子量をM、上記式(1)中のX1の分子量をMwとして、下記式(HL)により算出した値をいう。
HLB値=20×Mw/M ・・・(HL)
【0024】
また、本発明において、「水溶性である」とは、上記式(1)で表される化合物を105℃で2時間乾燥させた後、40℃の水100g中に溶解させたときに、3時間以内に目視で不溶物が確認できない状態になることをいう。
【0025】
本発明においては、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の現像液の総質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。
【0026】
〔ノニオン界面活性剤〕
本発明の現像液が含有するノニオン界面活性剤は特に限定されず、従来公知のノニオン界面活性剤を使用することができる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、濃縮液とした際の保存安定性がより良好となり、また、本発明の現像液を用いた現像において、現像カス(分散物)の凝集が抑制できる理由から、ノニオン界面活性剤が、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
【0028】
上記式(2)中、Arは、m価の芳香族基を表し、mは、1~8の整数を表す。
また、上記式(2)中、X2は、1価の有機基を表し、pは、0~3の整数を表す。ただし、p<mであり、pが2または3である場合、複数のX2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(2)中、Aは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R2は、水素原子またはアルキル基を表し、nは、1~100の整数を表す。nが2~100の整数である場合、複数のAは、互いに同一であっても異なっていてもよい。m-pが2~8の整数である場合、複数のA、nおよびR2は、いずれも、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
上記式(2)中のArが示す芳香族基は、芳香族性を有する環を含む基をいい、例えば、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有するm価の基などが挙げられる。
ここで、芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などが挙げられ、芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などが挙げられる。
また、上記式(2)中のArが示す芳香族基の価数(m)は、1~8の整数であり、2~6の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、2または3であることが更に好ましい。
これらのうち、Arとしては、2価のベンゼン環(すなわち、フェニレン基)、1価のナフタレン環(すなわち、ナフチル基)であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0030】
上記式(2)中のX2が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などが挙げられ、これら基は、更に置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3~20の単環または多環のシクロアルキル基が挙げられ、具体的には、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられ、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、2-フェニルエタン-2-イル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数3~20のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
【0031】
これらの有機基のうち、分散物の凝集をより抑制することができる理由から、上記式(2)中のX
2が、アラルキル基であることが好ましく、2-フェニルエタン-2-イル基またはベンジル基であることがより好ましい。
なお、2-フェニルエタン-2-イル基およびベンジル基の構造は、それぞれ、下記式(X-1)および(X-2)に示す通りであるが、下記式(X-1)で示す構造(2-フェニルエタン-2-イル基)については、「スチレン化」もしくは「スチリル基」ともいう。
【化4】
【0032】
上記式(2)中のpは、0~3の整数を表すが、p<mである。本発明の現像液を用いた現像において、現像カスの凝集が抑制できる理由から、pは、1~3の整数を表すことが好ましく、1または2を表すことがより好ましい。
【0033】
上記式(2)中のAは、炭素数2~4のアルキレン基を表すが、炭素数2または3のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基またはn-プロピレン基であることがより好ましい。
【0034】
上記式(2)中のR2の一態様が示すアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基が挙げられる。
なお、上記式(2)中のR2は、水素原子またはアルキル基を表すが、本発明の現像液を用いた現像において、現像カスの凝集が抑制できる理由から、水素原子であることが好ましい。
【0035】
上記式(2)中のnは、1~100の整数を表すが、本発明の現像液を用いた現像において、現像カスの凝集が抑制できる理由から、1~30の整数であることが好ましく、5~20の整数であることがより好ましく、5~15の整数であることが更に好ましい。
【0036】
上記式(2)で表される化合物(ノニオン界面活性剤)としては、具体的には、例えば、
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、下記式(2-1)で表されるポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル縮合物などのポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル;
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルエーテル、ポリオキシエチレンβ-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル;
などが挙げられる。
【化5】
【0037】
本発明においては、ノニオン界面活性剤の含有量は、本発明の現像液の総質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。
【0038】
〔水〕
本発明の現像液が含有する水は、特に限定されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、ミリQ水等の超純水のいずれも使用することができる。なお、ミリQ水とは、メルク(株)の超純水製造装置であるミリQ水製造装置による得られる超純水である。
本発明の現像液に含まれる水の含有量は、現像液の総質量に対して80~99.99質量%であることが好ましく、90~99.9質量%であることがより好ましい。
【0039】
〔アルカリ剤〕
本発明の現像液は、現像性が良好となる理由から、アルカリ剤を含有していることが好ましい。
アルカリ剤としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。
ここで、アルカリ金属としては、具体的には、例えば、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムなどが挙げられる。
また、アルカリ金属炭酸塩としては、具体的には、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、中でも、安全性の面から炭酸ナトリウムが好ましい。
また、アルカリ金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0040】
アルカリ剤を含有する場合の含有量は、本発明の現像液の総質量に対して0.01~2質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。
【0041】
〔キレート剤〕
本発明の現像液は、現像カスの凝集が抑制できる理由から、キレート剤を含有していることが好ましい。
キレート剤としては、具体的には、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、L‐グルタミン酸二酢酸(GLDA)、および、これらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0042】
〔その他の成分〕
本発明の現像液は、必要に応じて任意成分として、各種添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、エタノールアミンなどのアルカノールアミン;ベンゾトリアゾール、安息香酸などの防腐剤;グリコール類(例えば、エチレングリコール等)、低級アルコール類(例えば、エタノール等)などの凝固点降下剤;シリコーン類、ポリオール類などの消泡剤;等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0043】
〔現像方法〕
本発明の現像液を用いた現像方法は、従来公知の水性現像液を用いた現像方法と同様の方法が挙げられ、例えば、現像液をフレキソ印刷版原版の未露光部に接触させて、ブラシ、水圧、超音波などの物理的作用を加えて、未露光部を構成する感光層(感光性樹脂組成物)を現像液中に分散させ、除去する方法が挙げられる。
この時、現像液は、未露光部を浸漬させておいてよく、また、物理的作用が及ぶときに連続的に供給して接触させておいてもよい。
また、現像液は、現像時の液温が20~60℃であることが好ましく、30~50℃であることがより好ましい。
また、通常使用される物理的作用力としては、ブラシが用いられ、毛の材質、太さ、長さ、毛の密植度、配置、ブラシの移動、回転方向などが適宜選択される。
【0044】
[フレキソ印刷版用水性現像濃縮液]
本発明のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液(以下、「本発明の濃縮液」とも略す。)は、フレキソ印刷版用水性現像液の濃縮液であって、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤と水とを含有する濃縮液である。
【0045】
〔アニオン界面活性剤〕
本発明の濃縮液が含有するアニオン界面活性剤は特に限定されず、従来公知のアニオン界面活性剤を使用することができる。
アニオン型界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム類、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
【0046】
本発明においては、本発明の濃縮液を希釈して調製する現像液について、液表面に生じる皮膜の形成を抑制できる理由から、アニオン界面活性剤が、上記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0047】
本発明においては、本発明の濃縮液を希釈して調製する現像液について、液表面に生じる皮膜の形成を抑制できる理由から、上記式(1)中のR1の炭素数が6~14であることが好ましい。具体的には、上記式(1)中のR1が、炭素数6~14のアルキル基であることがより好ましく、本発明の濃縮液を希釈して調製した現像液を用いた現像において、現像カス(分散物)の凝集が抑制できる理由から、炭素数6~10のアルキル基であることが更に好ましい。
【0048】
本発明においては、本発明の濃縮液を希釈して調製する現像液について、液表面に生じる皮膜の形成を抑制できる理由から、上記式(1)で表される化合物が、HLB値が8以下であり、かつ、水溶性であることが好ましい。
また、上記式(1)で表される化合物が、HLB値が3以上であることが好ましい。
【0049】
本発明においては、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の濃縮液の総質量に対して0.02~40質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましい。
【0050】
〔ノニオン界面活性剤〕
本発明の濃縮液が含有するノニオン界面活性剤は特に限定されず、上述した本発明の現像液において記載したノニオン界面活性剤を使用することができる。
【0051】
本発明においては、保存安定性がより良好となり、また、本発明の濃縮液を希釈して調製した現像液を用いた現像において、現像カス(分散物)の凝集が抑制できる理由から、ノニオン界面活性剤が、上記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0052】
本発明においては、ノニオン界面活性剤の含有量は、本発明の濃縮液の総質量に対して0.02~40質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましい。
【0053】
〔水〕
本発明の濃縮液が含有する水は特に限定されず、上述した本発明の現像液において記載した水を使用することができる。
本発明の濃縮液に含まれる水の含有量は、濃縮の程度により調整できるため特に限定されないが、本発明の濃縮液の総質量に対して80質量%未満であることが好ましく、50質量%以上80質量%未満であることがより好ましい。
【0054】
〔アルカリ剤〕
本発明の濃縮液は、本発明の濃縮液を希釈して調製した現像液を用いた現像性が良好となる理由から、アルカリ剤を含有していることが好ましい。
アルカリ剤は特に限定されず、上述した本発明の現像液において記載したアルカリ剤を使用することができる。
また、アルカリ剤を含有する場合の含有量は、本発明の濃縮液の総質量に対して0.1~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
【0055】
〔キレート剤〕
本発明の濃縮液は、本発明の濃縮液を希釈して調製した現像液を用いた現像において、現像カスの凝集が抑制できる理由から、キレート剤を含有していることが好ましい。
キレート剤は特に限定されず、上述した本発明の現像液において記載したキレート剤を使用することができる。
【0056】
〔その他の成分〕
本発明の濃縮液は、必要に応じて任意成分として、各種添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、エタノールアミンなどのアルカノールアミン;ベンゾトリアゾール、安息香酸などの防腐剤;グリコール類(例えば、エチレングリコール等)、低級アルコール類(例えば、エタノール等)などの凝固点降下剤;シリコーン類、ポリオール類などの消泡剤;等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0057】
〔現像方法〕
本発明の濃縮液を用いた現像方法は、本発明の濃縮液を希釈した水性現像液を用いる以外は、従来公知の水性現像液を用いた現像方法と同様の方法が挙げられ、例えば、水性現像液をフレキソ印刷版原版の未露光部に接触させて、ブラシ、水圧、超音波などの物理的作用を加えて、未露光部を構成する感光層(感光性樹脂組成物)を水性現像液中に分散させ、除去する方法が挙げられる。
ここで、本発明の濃縮液の希釈方法は特に限定されず、例えば、水を用いて2~20倍に希釈する方法が挙げられる。
また、水性現像液は、未露光部を浸漬させておいてよく、また、物理的作用が及ぶときに連続的に供給して接触させておいてもよい。
また、水性現像液は、現像時の液温が20~60℃であることが好ましく、30~50℃であることがより好ましい。
また、通常使用される物理的作用力としては、ブラシが用いられ、毛の材質、太さ、長さ、毛の密植度、配置、ブラシの移動、回転方向などが適宜選択される。
【0058】
〔フレキソ印刷版原版〕
本発明の現像液または濃縮液を用いて現像されるフレキソ印刷版原版が有する感光層(感光性樹脂組成物)は、従来公知の感光性樹脂組成物を用いることができ、例えば、水分散ラテックス、ゴム、光重合性モノマー、光重合開始剤、界面活性剤などを含有する樹脂組成物が挙げられる。
【0059】
<水分散ラテックス>
樹脂組成物が含有する水分散ラテックスは特に限定されず、従来公知のフレキソ印刷版に用いられている水分散ラテックスを用いることができる。
水分散ラテックスとしては、具体的には、例えば、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどの水分散ラテックス重合体;これら重合体にアクリル酸、メタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
<ゴム>
樹脂組成物が含有するゴムは特に限定されず、従来公知のフレキソ印刷版に用いられているゴム材料を用いることができる。
上記ゴムとしては、具体的には、例えば、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレンなどが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
<光重合性モノマー>
樹脂組成物が含有する光重合性モノマーは特に限定されず、従来公知のフレキソ印刷版に用いられている光重合性モノマーを用いることができる。
光重合性モノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
エチレン性不飽和化合物としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマ、(メタ)アクリル変性重合体などを挙げることができる。
また、(メタ)アクリル変性重合体としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル変性ブタジエンゴム、(メタ)アクリル変性ニトリルゴムなどを挙げることができる。
なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する表記である。
【0062】
<光重合開始剤>
樹脂組成物が含有する光重合開始剤は、上述した光重合性モノマーの光重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、アルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、ベンジル類、ビアセチル類等の光重合開始剤を挙げることができる。
具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0063】
<界面活性剤>
樹脂組成物が含有する樹脂組成物は、水現像性を向上させる観点から、界面活性剤を含有していることが好ましい。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を挙げることができる。なかでも、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、
ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸塩;
ラウリル硫酸エステルナトリウム、セチル硫酸エステルナトリウム、オレイル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩;
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩;
アルキルジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩;
ラウリルリン酸モノエステルジナトリウム、ラウリルリン酸ジエステルナトリウム等の高級アルコールリン酸エステル塩;
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸モノエステルジナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ジエステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;
等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
[フレキソ印刷版の製造方法]
本発明のフレキソ印刷版の製造方法は、感光層を有するフレキソ印刷版原版に対して、感光層を画像様に露光する露光工程と、露光工程の後に、上述した本発明のフレキソ印刷版用水性現像液、または、上述した本発明のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液を2~20倍に希釈した液を用いて現像し、非画像部と画像部とを形成する現像工程と、現像工程の後に、水を用いてリンスするリンス工程とを有する、製造方法である。
【0066】
〔露光工程〕
上記露光工程は、感光層に画像様に活性光線を照射することにより、活性光線の照射された領域の架橋および/または重合を惹起し、硬化させる工程である。
【0067】
上記露光工程は、感光層の外面側に設けたマスクを通して露光することによって実施することができる。
また、真空フレーム露光装置を用いて行うことも好ましく、その場合、レリーフ形成層とマスクとの間の空気を排出した後、活性光線による露光が行われる。
また、露光は、酸素濃度を低下させた状態で行ってもよく、大気中で行ってもよく、特に限定されないが、酸素による重合阻害を防止する観点では、低酸素濃度で露光を行うことが好ましい。
【0068】
〔現像工程〕
上記現像工程は、上述した本発明のフレキソ印刷版用水性現像液、または、上述した本発明のフレキソ印刷版用水性現像濃縮液を2~20倍に希釈した液を用いて現像し、非画像部と画像部とを形成する工程であり、詳しくは、上述した本発明の現像液または濃縮液の現像方法において説明した説明した通りである。
【0069】
〔リンス工程〕
上記リンス工程は、上記現像工程で形成された非画像部と画像部の表面を、水を用いてリンスする工程である。
上記リンス工程におけるリンス手段としては、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、フレキソ印刷版の現像機として公知のバッチ式または搬送式のブラシ式洗い出し機で、非画像部および画像部の表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0071】
[実施例1~11および比較例1~5]
下記表1に示す、水、アルカリ剤、キレート剤、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を、下記表1に示す質量部となるように配合した水性現像液を調製した。
【0072】
〔濃縮適性〕
調製した水性現像液のアルカリ剤などの濃度を10倍に濃縮した水性現像濃縮液について、室温(23℃)における溶解状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。
(評価基準)
A:無色透明
B:白濁
C:二層分離
D:不溶沈殿
【0073】
〔保存安定性〕
<50℃/45日>
濃縮適性の評価で用いた水性現像濃縮液を50℃オーブンで45日間保管した後、液状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。また、比較例1~4については、保管前の状態で不溶物が発生したため、評価を行わず、下記表1においては、「-」と表記している。
(評価基準)
A:無色透明
B:白濁
C:二層分離
【0074】
<-5℃/60日>
濃縮適性の評価で用いた水性現像濃縮液を-5℃冷凍庫で60日間保管した後、液状態を目視で観察した。
また評価液が凍結している場合は、再融解するまでの時間を計測した。
以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。また、比較例1~4については、保管前の状態で二層分離しているため、評価を行わず、下記表1においては、「-」と表記している。
(評価基準)
A:凍結しない
B:冷凍庫から出庫後、再融解するまでの時間が6時間未満
C:冷凍庫から出庫後、再融解するまでの時間が6時間以上
【0075】
〔現像性〕
フレキソ印刷版原版〔FLENEX FW-L2、富士フイルム(株)製〕のカバーフィルムを剥がし、基板側から、40Wのケミカル灯を15本並べた露光装置で15cmの距離から2秒間露光(裏露光)した。
その後、調製した各水性現像液を入れたブラシ式洗い出し機(液温50℃)で3分間現像を行った。
その後、60℃の熱風にて水分が除去されるまで乾燥を行った。得られたフレキソ印刷版について、定圧厚さ測定器を使用して厚みを測定し、現像前後での厚み変化から1分あたりの膜厚変化(現像速度)を算出した。そして、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。
(評価基準)
A:現像速度が170μm/min以上
B:現像速度が100μm/min以上170μm/min未満
C:現像速度が100μm/min未満
【0076】
〔凝集カス〕
フレキソ印刷版原版〔FLENEX FW-L2、富士フイルム(株)製〕のカバーフィルムを剥がし、基板側から、40Wのケミカル灯を15本並べた露光装置で15cmの距離から2秒間露光(裏露光)した。
その後、調製した各水性現像液を入れたブラシ式洗い出し機(液温50℃)で、現像カス(分散物)の固形分が7.0質量%となるように任意の時間現像を行った。なお、現像カスの固形分は、使用した水性現像液(以下、「疲労液」とも略す。)を2.0g測りとり、95℃で18時間乾燥し、乾燥前と乾燥後の重量変化から、疲労液中の固形分%を算出した。
次いで、容器に疲労液を7g測りとり、硬度が120の硬水63gを添加して希釈し、攪拌した直後に発生する凝集カスを観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。
(評価基準)
A:凝集物が発生せず、容器の気液界面部に付着物も発生しない
B:凝集物は発生しないが、容器の気液界面部に付着物が発生する
C:凝集物が発生する
【0077】
〔皮膜抑制〕
フレキソ印刷版原版〔FLENEX FW-L2、富士フイルム(株)製〕のカバーフィルムを剥がし、基板側から、40Wのケミカル灯を15本並べた露光装置で15cmの距離から2秒間露光(裏露光)した。
その後、調製した各水性現像液を入れたブラシ式洗い出し機(液温50℃)で、現像カス(分散物)の固形分が7.0質量%となるように任意の時間現像を行った。なお、現像カスの固形分は、使用した水性現像液(以下、「疲労液」とも略す。)を2.0g測りとり、95℃で18時間乾燥し、乾燥前と乾燥後の重量変化から、疲労液中の固形分%を算出した。
次いで、容器に疲労液を50g測りとり、蓋を開けた状態で50℃オーブンで5時間加熱した後、室温(23℃)で12時間放置した後に、液表面の膜強度を目視観察し、以下の基準で評価した。結果を下記表1に示す。なお、B以上の評価であれば、実用上問題がない。
(評価基準)
A:皮膜形成なし
B:皮膜形成するが、攪拌後、再分散可能
C:皮膜形成し、攪拌しても再分散しない
【0078】
【0079】
上記表1の各成分は、以下のものを使用した。
・炭酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・EDDS:オクタクエストE30(Inno Spec specialty chemicals Corporotaion製)
・ペンタン酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・オクタン酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・ラウリン酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・ラウリル硫酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・ラウリルスルホン酸ナトリウム:富士フイルム和光純薬社製の試薬
・ラウリルリン酸ナトリウム:東京化成工業株式会社製の試薬
・パイオニンD-6120:ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル(竹本油脂社製)
・パイオニンD-1105:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(竹本油脂社製)
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:エマルゲン905(花王社製)
【0080】
上記表1に示す通り、ノニオン界面活性剤を配合せず、アニオン界面活性剤のみを配合した場合には、濃縮適性が劣ることが分かった(比較例1~4)。
また、アニオン界面活性剤を配合せず、ノニオン界面活性剤のみを配合した場合には、保存安定性が劣ることが分かった(比較例5)。
【0081】
これに対し、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤をいずれも配合することにより、濃縮適性に優れ、保存安定性も良好となることが分かった(実施例1~11)。
特に、実施例2と実施例7との対比、および、実施例3と実施例8との対比などから、アルカリ剤を配合すると、濃縮液を希釈して調製した水現像液を用いた現像性がより良好となることが分かった。
また、実施例1~6の対比から、アニオン界面活性剤が上記式(1)で表される化合物であると、濃縮液を希釈して調製した水現像液の液表面に生じる皮膜の形成が抑制できることが分かった。
また、実施例8と実施例9との対比から、ノニオン界面活性剤が上記式(2)で表される化合物であると、濃縮液を希釈して調製した水現像液を用いた現像において、現像カス(分散物)の凝集が抑制できることが分かった。