(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エチレン製造用触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/40 20060101AFI20240815BHJP
C07C 5/333 20060101ALI20240815BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240815BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240815BHJP
【FI】
B01J29/40 Z
C07C5/333
C07C11/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019164542
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 孝典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 智洋
(72)【発明者】
【氏名】花谷 誠
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-188067(JP,A)
【文献】特開2004-189743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのイオン交換サイトにおいて亜鉛およびアルカリ金属が結合している金属イオン交換ゼオライトを含み、
該金属イオン交換ゼオライトにおける亜鉛イオン交換率が5~
52%であり、アルカリ金属のイオン交換率が48~95%である、ことを特徴とするエタンの脱水素化反応によるエチレン製造用触媒。
【請求項2】
前記金属イオン交換ゼオライトが、ZSM-5型ゼオライトである、ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン製造用触媒。
【請求項3】
前記アルカリ金属が、ナトリウム、カリウム及びセシウムのうち少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項1
または2に記載のエチレン製造用触媒。
【請求項4】
前記アルカリ金属が、セシウムである、ことを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載のエチレン製造用触媒。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一つに記載のエチレン製造用触媒の存在下、500℃~700℃の範囲内でエタンの脱水素化反応を行うことを含む、ことを特徴とするエチレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタンを原料とする、脱水素化反応によりエチレンを製造するのに適したエチレン製造用触媒に関するものであり、特に特定の組合せの金属が担持されている金属イオン交換ゼオライトを含む新規なエチレン製造用触媒及びそれを用いたエチレンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、有用な化学品原料であり、その多くはナフサをはじめとする原料油を熱分解反応装置にて分解し、得られた熱分解生成物からエチレンを分離することにより得られる。該手法では、エチレンは多数の熱分解生成物の一つにすぎず、反応の選択率が低いという課題、及び800℃程度の高い反応温度を要するという課題がある。
【0003】
また、別法としてSnとWとを含む酸化物を触媒とするエチレン製造用触媒(例えば特許文献1参照。)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等と接触したゼオライト担体に亜鉛及び第VIIIA族金属を担持した触媒の存在下、不飽和炭化水素を製造する方法(例えば特許文献2参照。)、触媒担体としてZSM-5ゼオライトを用いた触媒の存在下、低級アルケンを製造する方法(例えば特許文献3参照。)、等が提案されている。
【0004】
さらに、シェールガスや石油随伴ガスより得られるエタンを原料とした熱分解プロセスによりエチレンが製造されている。しかし、該プロセスにおいても800℃以上程度の高い反応温度を要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-0368490号公報
【文献】特開2013-163647号公報
【文献】特開2008-266286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の触媒は、Sn-W系酸化物という特殊酸化物を触媒とするものである上に、そのエチレン転化率には課題を有するものであった。また、特許文献2に記載の方法においては一応の不飽和炭化水素の生成は見られるものであったが、その効率としては課題を有するものである上に、その生成が困難とされるエチレンの製造についてはなんら検討のされていないものである。さらに、特許文献3に記載の製造方法においては、エチレンの生成は確認されるものではあるが、その使用に課題を有するクロム系の触媒が記載されており、その使用温度も比較的高いものであり、課題を有するものであった。
【0007】
そこで、本発明は、エタンを原料とし、より温和な反応条件下でエチレンを製造できる新規なエチレン製造用触媒を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の組み合わせの金属がイオン交換により導入されているゼオライトを含む触媒を用いることで、より温和な反応温度条件下でエタンを原料として、エチレンを効率的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、亜鉛およびアルカリ金属が担持されている金属イオン交換ゼオライトを含むエチレン製造用触媒に関する。
また、本発明は、該エチレン製造用触媒の存在下、500℃~700℃の範囲内でエタンの脱水素化反応を行うことを特徴とするエチレンの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、エタンを原料とし、より温和な反応条件下でエチレンを効率良く製造することのできる新規な触媒に関するものであり、工業的にも非常に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一つの実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のエチレン製造用触媒は、金属がイオン交換により担持されているゼオライト(金属イオン交換ゼオライト)を含み、該ゼオライトにおいては、亜鉛およびアルカリ金属が担持されている。ゼオライトとしては、AEI、BEA、CHA、CON、EPI、ERI、EUO、FAU、FER、LAU、LEV、LTA、MEL、MFI、MOR、MSE、MTW、MWW、PON、UTL、ZON等のゼオライトと称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよい。中でも、特にエタンからエチレンを製造する際により温和な温度条件で高効率を発現する触媒となることから、例えばZSM-5型ゼオライト等のMFI型(より好ましくはZSM-5型ゼオライト)であることが好ましい。MFI型とは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するものであり、ZSM-5型ゼオライトはZSM-5型アルミノシリケート化合物であることが好ましい。
なお、本実施形態に係わるゼオライトの構造は、粉末X線回折により特定することができる。
【0011】
本明細書中において、亜鉛およびアルカリ金属がゼオライトに担持されているとは、ゼオライトが有するイオン交換サイト(カチオンサイト)において、亜鉛およびアルカリ金属が結合していることを意味する。
ゼオライトに対する亜鉛およびアルカリ金属の担持は、例えばゼオライトをイオン交換処理に供することにより行うことができる。イオン交換処理は、例えば公知の方法により行うことができ、特に限定されない。
本実施形態に係わる金属イオン交換ゼオライトの亜鉛のイオン交換率には制限はないが、エチレン製造用触媒を構成するときにより高効率を示すものとなることから、3~80%の範囲内であることが好ましい。さらに、亜鉛と未交換のカチオンサイトは、アルカリ金属によりイオン交換されていることが好ましい。該アルカリ金属としては、アルカリ金属に属するものであればよいが、エチレン製造用触媒としてより優れた効率を示すものとなることから、ナトリウム、カリウム及びセシウムのうち1または2以上のアルカリ金属であることが好ましい。また、アルカリ金属のイオン交換率は、エチレン製造用触媒を構成するときにより高効率を示すものとなることから、97~20%の範囲内であることが好ましい。
また、エチレン製造用触媒としてさらにより優れた効率を示すため、アルカリ金属がナトリウムである場合には、亜鉛のイオン交換率が15~40%であることがより好ましい。
【0012】
なお、本明細書において、亜鉛またはアルカリ金属のイオン交換率とはゼオライト中のイオン交換サイト上のカチオンを亜鉛イオンまたはアルカリ金属イオンで置き換えた率をいう。
具体的には、イオン交換率は式:(亜鉛イオンまたはアルカリ金属イオンの原子数)×(亜鉛イオンまたはアルカリ金属イオンの価数)/(ゼオライト中のイオン交換サイトの数)×100によって算出できる。
イオン交換率は、ゼオライト中のイオン交換サイトに対して担持される亜鉛イオンまたはアルカリ金属イオンの量を調整することによって所望の値に調整することができる。具体的には、例えば、イオン交換処理を行う際に用いる溶液の濃度を調整することなどが挙げられる。
【0013】
また、該ゼオライト、特にZSM-5型ゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)としては制限されるものではなく、その中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れる触媒となることから、SiO2/Al2O3(モル比)が20以上100以下であることが好ましい。また、該ゼオライトとしては、反応選択性、生産性に優れるものとなることから、細孔内に有機構造指向剤を含まないものであることが好ましい。更に、ゼオライトとしては、1次粒子径及び凝集径に関して何ら制限はない。
【0014】
本実施形態のエチレン製造用触媒の形態としては、該金属イオン交換ゼオライトを含むものであればよく、例えば調製された該金属イオン交換ゼオライト粉末をそのまま触媒として用いること、圧縮成型等を行い特定の形状付与したものとして用いること、バインダー等と混合し成形を行い特定の形状を附与したものとして用いること、等のいずれの形態として用いることも可能である。
【0015】
本実施形態のエチレン製造用触媒は、その存在下でエタンと接触することにより脱水素化反応を行いエチレンを効率的に製造することが可能となり、その脱水素化反応の進行が困難とされるエタンの脱水素化反応であってもより温和な温度条件で効率良くエチレンの製造を行うことができる。温度条件としては、エチレンへの転化効率がより高く、触媒の失活等の抑制が可能となることから500℃以上700℃未満であることが好ましい。また、圧力条件としては、任意の圧力条件を選択することができる。
【0016】
そして、エチレンを製造する際のエタンの供給としては任意であり、原料ガス(エタン)の流量に対する触媒重量の比として特に制限されるものではなく、例えば0.01~1000(分・g-触媒/L-原料ガス)程度の空間速度で供給することを挙げることができる。また、エタンを原料ガスとして供給する際には、エタンの単一ガス、混合ガスまたはエタンを窒素等の不活性ガスにより希釈したもの等、を用いることもできる。
【0017】
また、エチレンを製造する際の反応形式としては制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器、連続流式、間欠流式、スイング式反応器、等のいずれの形式をも用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、実施例により用いたゼオライト(ZSM-5)は以下の方法により評価・測定を行った。
【0019】
~SiO2/Al2O3モル比、および亜鉛およびアルカリ金属のイオン交換率の測定~
ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これをICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)より観測・測定を行った。 また、測定結果に基づき、上記式を用いて亜鉛およびアルカリ金属のイオン交換率(%)を算出した。
【0020】
~粉末X線回折の測定~
X線回折測定装置(スペクトリス社製、(商品名)X’pert PRO MPD)を用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。5~60度の範囲を0.04度/ステップ、4度/分で分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0021】
~エチレン製造装置及びその製造方法~
以下の方法によりエチレンの製造を行い、その評価を行った。
石英製反応管(内径7mm、長さ400mm)を用いた固定床気相流通式反応装置を用いた。石英製反応管の中段に、エチレン製造用触媒を充填し、窒素流通下での加熱前処理を行ったのち、エタン(原料ガス)をフィードした。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、触媒層の温度を制御した。反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。水素は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(SHIMADZU社製、(商品名)GC-8A)を用いて分析した。充填剤は、GL Science社製Unibeads 1S 60/80(商品名)または信和化工社製Sunpack A(商品名)を用いた。その他のガス、液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(SHIMADZU社製、(商品名)GC-2025)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラムアジレント・テクノロジー社製PoraPLOT Q(商品名)を用いた。
【0022】
反応条件は下記のように設定した。
(エチレン製造条件)
流通ガス:エタンガス6mL/分+窒素14mL/分の混合ガス
触媒重量:60mg。
触媒形状:ゼオライト粉末のうち、100メッシュの篩を通過したものを用いた。
圧力:0MPaG。
(触媒前処理条件)
触媒温度:550℃。
流通ガス:窒素14ml/分。
圧力:0MPaG。
【0023】
<実施例1>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)9.5mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は9%、ナトリウムイオン交換率は91%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0024】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0025】
<実施例2>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)19.5mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は25%、ナトリウムイオン交換率は75%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0026】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0027】
<実施例3>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)28.1mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は28%、ナトリウムイオン交換率は72%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0028】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0029】
<実施例4>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)46.8mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は52%、ナトリウムイオン交換率は48%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0030】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0031】
<実施例5>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。塩化セシウム2.12gを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥し、セシウム型ZSM-5ゼオライトを得た。セシウム型ZSM-5ゼオライトのセシウムイオン交換率は100%であった。
硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)11.7mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。上記のセシウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト0.3gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は5%、セシウムイオン交換率は95%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0032】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0033】
<実施例6>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。塩化セシウム2.12gを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥し、セシウム型ZSM-5ゼオライトを得た。セシウム型ZSM-5ゼオライトのセシウムイオン交換率は100%であった。
硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)22.8mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。上記のセシウム型ZSM-5ゼオライト0.3gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は6%、セシウムイオン交換率は94%であった。該金属イオン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0034】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0035】
<実施例7>
金属イオン交換ゼオライトは下記の通り調製した。塩化セシウム2.12gを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥し、セシウム型ZSM-5ゼオライトを得た。セシウム型ZSM-5ゼオライトのセシウムイオン交換率は100%であった。
硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)46.8mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。上記のセシウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト0.3gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は8%、セシウムイオン交換率は92%であった。該金属イン交換ZSM-5ゼオライトをエチレン製造用触媒として用いた。
【0036】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0037】
<比較例1>
ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)を触媒として用いた。
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を試みた。
【0038】
<比較例2>
ゼオライトは下記の通り調製した。硝酸亜鉛六水和物(富士フィルム和光純薬社製)56200mgを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥した。得られた金属イオン交換ZSM-5ゼオライトの亜鉛イオン交換率は100%であった。該ZSM-5ゼオライトを触媒として用いた。
【0039】
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0040】
<比較例3>
ゼオライトは下記の通り調製した。塩化セシウム2.12gを純水100mL中に溶解させた溶液を調製した。ここにナトリウムイオン交換型ZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)0.5gを上記溶液中に分散させ、85℃に加熱し24時間攪拌を行い、遠心分離による固液分離、固体分を純水により十分に洗浄する一連の作業を3回繰り返し行い、得られた固体分を100℃で12時間乾燥し、セシウムイオン交換型ZSM-5を得た。セシウム型ZSM-5ゼオライトのセシウムイオン交換率は100%であった。該セシウムイオン交換型ZSM-5ゼオライトを触媒として用いた。
【0041】
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を試みた。
【0042】
実施例および比較例の触媒を用いての上記エチレンの製造における、反応時間、エタン転化率、およびエチレン収率を表1に示す。
比較例1、3の触媒を用いた場合は、エチレンの生成は確認されず、効率的な触媒又は製造方法とは言い難かった。また、比較例2の触媒を用いた場合もエチレン収率が低く、効率的な触媒又は製造方法とは言い難かった。
一方、実施例の触媒を用いた場合は、比較例と比べ、より高収率でより長時間にわたりエチレン製造が可能であり、効率的なエチレン製造となった。
【0043】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のエチレン製造用触媒は、より温和な条件下で、効率良くエチレンを製造すること可能となり、工業的にも非常に有用なものである。