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  • 特許-窒化アルミニウム製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】窒化アルミニウム製造装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 7/04 20060101AFI20240815BHJP
   C01B 21/072 20060101ALI20240815BHJP
   C04B 35/581 20060101ALI20240815BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F27D7/04
C01B21/072 B
C04B35/581
F27D3/12 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020047730
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148350
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰幸
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3092267(JP,U)
【文献】特開2003-212521(JP,A)
【文献】特開平01-290562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00-15/02
C01B 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルミニウム粉末を含む原料粉末に着火し、該金属アルミニウム粉末の窒化燃焼熱を原料粉末全般に伝播させることにより窒化アルミニウムを合成するための装置であって、
窒素を供給するための配管を接続した密閉容器よりなる反応容器本体内に、
前記原料粉末を充填するための、上面が解放された容器よりなる反応用治具と、前記原料粉末に着火するための着火装置と、前記反応容器本体の内壁と間隙をあけて反応用治具を囲む整流具を備え、
整流具で囲まれた反応用治具上部空間に雰囲気ガスを流通させるファン機構よりなり、
前記整流具で囲まれた反応用治具上部空間を通過した雰囲気ガスが、反応容器本体の内壁と整流具との間隙を経て循環するように構成された循環機構と、前記反応容器本体内を循環する雰囲気ガスの一部を冷却する冷却部とを備える、窒化アルミニウム製造装置。
【請求項2】
前記反応容器本体内に、平箱状の前記反応用治具が、ガスが流通可能な間隙をあけて多段に積層されてなる、請求項1に記載の窒化アルミニウム製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な窒化アルミニウムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム焼結体は、高電気絶縁性、高耐プラズマ性、高熱伝導性などの優れた特性を有していることから、絶縁放熱基板、半導体製造装置材料などに広く使用されている。上記窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム粉末に必要により酸化イットリウムなどの焼結助剤を添加し、有機バインダーを使用して成形後、常圧あるいは加圧下で、脱脂、焼結することによって製造されている。
【0003】
ところで、一般的な窒化アルミニウム粉末の工業的な製法として、酸化アルミニウム粉末とカーボン粉末の混合粉末を窒素中で高温に加熱する還元窒化法、金属アルミニウムと窒素を高温で反応させる直接窒化法が知られている。
【0004】
そのうち、還元窒化法により得られる窒化アルミニウム粉末は、直接窒化法により得られる窒化アルミニウム粉末と比較して、平均粒子径が1μm程度で粗大粒子が少ない上に粒子形状も球に近く高純度であるため、成形性、焼結性に優れており、焼結体としたときには高い熱伝導率を得やすい特徴がある。
【0005】
しかしながら、還元窒化法は、カーボンと酸化アルミニウムと混合処理や残ったカーボンの脱炭処理が必要となる。そのため、原料コスト及びエネルギーコストの点で有利な直接窒化法により、還元窒化法と同等の窒化アルミニウム粉末を製造できる方法が望まれていた。
【0006】
かかる窒化アルミニウム粉末を得ることができる直接窒化法として燃焼合成法が知られている。この方法は、窒素雰囲気中で金属アルミニウムよりなる原料粉体層の一部に着火し、以下の反応によって生じる反応熱を上記粉体層に伝播させ、これによって窒化反応を進行させて窒化アルミニウムを合成する方法である。
【0007】
Al+1/2N2 → AlN-ΔH0
反応式中〔-ΔH0〕=320KJ/molであり、この発熱が燃焼合成反応の駆動力となる。
【0008】
上記方法によれば、得られる窒化アルミニウムは軽く粉砕することにより、窒化アルミニウム粉末まで解砕することが可能であり、しかも、還元窒化法のカーボンの除去工程も不要であり、低コストで目的とする窒化アルミニウム粉末を製造することができる。このような金属アルミニウムの燃焼合成法による窒化アルミニウムの製造方法としては、たとえば、特開平7-309611号公報(特許文献1)、特開2000-16805号公報(特許文献2)が知られている。これらの特許文献には、金属アルミニウムとともに、窒化アルミニウム粉末を希釈剤と添加して、燃焼合成法を行うことが開示されている。
【0009】
ところが、上記燃焼合成法は、原料粉末を充填した、上面が解放された容器よりなる反応用治具を一段、或いは複数段間隔を開けて積層した状態で密閉容器内に収納して反応が行われるため、原料の金属アルミニウムの純度において、著しく制約を受けるという問題を有する。例えば、原料金属アルミニウムとして、鉄(Fe)とケイ素(Si)を多く含む低品位の金属アルミニウム粉末を使用した場合、得られる窒化アルミニウム粉末の品質に影響を与えるという問題を有する。具体的には、ケイ素は、得られる窒化アルミニウム粉末を焼結した際、焼結体の熱伝導率を大きく低下させることを確認した。また、鉄は増加しても、熱伝導率への影響は少ないものの、窒化アルミニウム粉末を焼成したときに黒化するため、焼結体の外観が悪くなるという問題も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平7-309611号公報
【文献】特開2000-016805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、燃焼合成法により窒化アルミニウムを製造するに際し、低品位の金属アルミニウムを用いた場合でも、原料中に含まれるケイ素や鉄などの不純物成分が得られる窒化アルミニウム粉末に残存する量を低下させて、高純度の金属アルミニウムを用いた場合と同レベルに高純度の窒化アルミニウム粉末を製造できる製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、燃焼合成法による窒化アルミニウムの製造装置において、原料中に含まれるケイ素や鉄などの不純物成分は化合物として気化して雰囲気ガス中に存在するという知見を得、上記雰囲気ガスを密閉容器内で循環させることで、前記反応用治具に充填された粉末を覆う、気化した不純物の濃度が高い雰囲気ガスが移動し、かかる雰囲気ガス中に含まれる不純物濃度が低下することにより、生成する窒化アルミニウム粉末に残存する不純物量を効果的に低減することができ、これにより高純度の窒化アルミニウム粉末を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明に係る窒化アルミニウム製造装置は、
金属アルミニウム粉末を含む原料粉末に着火し、該金属アルミニウム粉末の窒化燃焼熱を原料粉末全般に伝播させることにより窒化アルミニウムを合成するための装置であって、
窒素を供給するための配管を接続した密閉容器よりなる反応容器本体内に、
前記原料粉末を充填するための、上面が解放された容器よりなる反応用治具と、
前記原料粉末に着火するための着火装置と、
前記反応容器本体内の雰囲気ガスを循環せしめる循環機構とを備える。
【0014】
更に、窒化アルミニウム製造装置は、前記反応容器本体内を循環する雰囲気ガスの一部を冷却する冷却部を備えることが、気化した不純物を冷却部で補足し、雰囲気ガス中の不純物濃度を一層低減することができるため好ましい。
【0015】
また、前記反応容器本体内に、平箱状の前記反応用治具を多段に積層して収容する場合、各反応用治具間に、ガスが流通可能な間隙を形成するように積層されることが好ましい。
【0016】
更に、前記循環機構は、反応容器本体の内壁と間隙をあけて反応用治具を囲む整流具を備え、整流具で囲まれた反応用治具上部空間に雰囲気ガスを流通させるファン機構よりなり、前記整流具で囲まれた反応用治具上部空間を通過した雰囲気ガスが、反応容器本体の内壁と整流具との間隙を経て循環するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反応用治具に充填されている粉末を覆う雰囲気ガスが強制的に循環されるため、反応中に気化した不純物がかかる雰囲気に滞留して高濃度化する現象を防止でき、これにより気化する不純物量を増大でき、その結果、生成する窒化アルミニウム粉末に残存する不純物濃度を著しく低減することができる。そして、低品位の金属アルミニウムを用いて、高純度の窒化アルミニウム粉末を製造することが可能となり、燃焼合成法における経済的メリットを一層伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る製造装置の概略断面図および収容する反応用治具の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を図面により説明するが、かかる図面になんら限定されるものではない。
本発明に係る窒化アルミニウム製造装置は、
金属アルミニウム粉末を含む原料粉末に着火し、該金属アルミニウム粉末の窒化燃焼熱を原料粉末全般に伝播させることにより窒化アルミニウムを合成するための装置である。
【0020】
本発明の製造装置の概略断面図および斜視図を図1に示す。図中、矢印方向はガスが循環する方向を表している。
本発明の製造装置は、反応容器1、反応用治具2、着火装置3、および循環機構4を備える。また、必要に応じて、棚5、整流板6、冷却部7、フード部材8を備えていてもよい。
【0021】
反応容器1は、容器内を窒素置換、必要に応じて窒素加圧(一般には、ゲージ圧で5気圧以下)するための配管設備を備えた密閉容器よりなる構成される。上記配管設備は、反応容器のいずれかの部位に設けられていればよい。反応容器1は、窒化アルミニウムの生成反応時の輻射熱に耐え得る構造を有するものであれば特に制限されず、鉄、ステンレス鋼などの構造材により形成された耐圧性のケーシングの内面に、炭素材料、アルミナ、ジルコニア等の耐熱部材よりなる内張がされた構造、或いは、上記ケーシングに水冷などによる冷却用ジャケットを配した構造が好適に採用される。さらに、反応容器1には、内部の圧力を調整するために、圧力調整弁が設けられていてもよく、また、反応をモニタリングするための、高温および高圧に耐えられる複数の石英ガラス窓が穿設されて設置されていてもよい。
【0022】
また、反応容器1の形状は特に制限されないが、図に示すように、筒状であることが耐圧性の面より好ましい。筒状は特に制限ないが、円筒ないし四角筒状であることが棚5の設置などの観点で望ましい。また、前記反応容器1の本体内に、原料粉末を充填するための、上面が解放された容器よりなる反応用治具2が収容される。上記反応用治具の収容、取出のための構造も特に制限されるものではないが、図1に示すように、反応容器1を横方向に分割し、分割された反応容器の一方に反応用治具を保持する保持構造、例えば棚構造を設ける態様、図には記載していないが、反応容器の前面に扉を設けて反応用治具を収納、取出可能とした態様も挙げられる。この場合、反応用治具の保持は、例えば、反応容器の載置する棚5を設けて反応用治具を保持する構造が好適である。反応用治具2は単段で保持されていてもよいが、反応効率などの点で、反応容器内に2段以上の多段で保持されていることが好ましい。棚5を構成する材料は、熱変形しない材質であれば特に制限されず、例えばステンレス(SUS)製のものが挙げられる。
【0023】
また、上記反応用治具の保持構造において、反応用治具を多段に積層して設ける場合、各反応用治具の間にガスが流通可能な間隙が形成されるように構成することが好ましい。
本発明において、原料粉末は上記反応用治具2に収容される。
【0024】
上記反応用治具2は、上面が開放された平箱状容器からなり、通常カーボン製、アルミナ製、または窒化アルミニウム製である。上記反応用治具2の形状は、平面図において正方形或いは長方形の形状が一般的である。また、大きさは特に制限されないが、工業的には、0.3m2以上、好ましくは、5m2以上の面積を有することが好ましく、高さは前記原料粉末の充填厚み(一般には、10~50mm)を勘案して適宜決定される。
【0025】
また、原料粉末として用いる金属アルミニウム粉末は、公知のもの又は市販品をそのまま用いることができる。また、その製法も特に制限されず、いずれの製造方法によって得られたものも使用することができる。金属アルミニウム粉末の純度は、特に制限されないが、本発明の製造装置を使用すれば従来使用困難であった、低品位の金属アルミニウムを用いることも可能である。低品位の金属アルミニウムには不純物として、ケイ素や鉄が含まれている。これら不純物の含量は特に制限されないが、例えば、ケイ素が酸化物換算で0.2質量%以上含まれる金属アルミニウム粉末原料でも使用可能であるが、上限は0.5質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
また、前記金属アルミニウム粉末の平均粒子径は、通常1~50μmであり、好ましくは2~25μmであるものが望ましい。平均粒子径の大きな金属アルミニウム粉末を使用すると、解れにくい大粒子径の窒化アルミニウム粉末が多く残存することがあり、平均粒子径が小さいものは、ハンドリング性が低く、金属が酸化されやすい。更に、前記金属アルミニウム粉末は、必要に応じて、前記金属アルミニウム粉末と共に、希釈剤として窒化アルミニウム粉末を配合されてもよい。
【0027】
上記金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末との混合比は、反応の制御が可能であり、その比率は金属アルミニウム粉末100質量部に対して窒化アルミニウム粉末が150~400質量部、好ましくは200~350質量部の割合で混合することが望ましい。この比率で混合すると、前記平均一次粒子径の特定と相まって反応の制御が十分行われ、解砕が容易な窒化アルミニウム塊を得ることができ、また生産効率を高くすることができる。
【0028】
本発明において、反応容器1に収容される反応用治具2に、充填された原料粉末に着火して燃焼合成反応を開始せしめるための着火装置3が設けられる。着火装置は、原料粉末の金属アルミニウム粉末の一部に着火、即ち、窒化反応を起こす温度に加熱できるように構成されていればその態様は特に制限されない。着火装置3としては、通電により発熱する材質、具体的には、タングステン、黒鉛等の抵抗体を原料粉末に埋設し、これに反応容器外部より通電を行うようにした構造が好適である。前記したように、反応用治具を複数段配する態様においては、各反応用治具毎に着火装置が設けられる。他の着火装置としては、レーザー、赤外線、マイクロウェーブ等が挙げられ、反応用治具を収容する態様に応じて、適宜使用することができる。
【0029】
本発明の最大の特徴は、前記反応容器1本体内の雰囲気ガスを循環せしめる循環機構4を備えることにある。循環機構4により反応容器1内のガスを積極的に移動させることが可能となり、反応用治具2に充填された原料粉末の燃焼合成反応が進行すると共に発生する揮発性物質が、上記粉末表面に高濃度で存在する状態を解消し、反応用治具内の粉末からより多くの揮発性物質を揮散させることができる。これにより、原料粉末にケイ素等の不純物が含まれている場合に、反応により得られる生成物である窒化アルミニウムの純度をより高くすることを可能とする。
【0030】
本発明において、循環機構4は、前記機能を有するものであれば特に制限されないが、一般には、図1に示すように、対流ファンを設けるのが一般的である。対流ファンは、反応容器1の一端に取り付けることが好ましく、具体的には、軸シールにより羽の部分を反応容器内に存在させ、駆動用のモーターは外部に設けることが好ましい。また必要に応じて、循環効率を向上させる目的で、フード部材8を備えていてもよい。循環機構4やフード部材8は耐熱性があれば特に制限されず、たとえばSUS製のものが使用される。
【0031】
また、反応用治具を多段に積層して設ける態様においては、反応用治具の間隙に、ファンによる循環を効率的に行うため、反応容器本体の内壁と間隙をあけて反応用治具を囲む整流具を備え、整流具によって囲まれた反応用治具上部空間に雰囲気ガスを流通させることが好ましい。整流具としては、積層した反応用治具2の両側面に整流板6を設けることが好ましい。また、最上段の反応用治具2の上面に整流板を設けてもよい。なお整流板6は前記棚5に設けられていてもよい。整流板5の材質も特に制限されず、たとえばSUS製のものなどが挙げられる。
【0032】
整流具で囲まれた反応用治具上部空間を通過した雰囲気ガスが、反応容器本体の内壁と整流具との間隙を経て循環するように構成される。
循環機構4による雰囲気ガスの循環は、反応用治具2における燃焼合成反応を反応用治具内の粉末が飛散しない程度の流速に調整されることが好ましく、具体的には、反応用治具に存在する粉末の表面における流速が1~5m/秒程度となるように行われる。また、雰囲気ガスを循環させる方向は特に制限されず、図に示すように対流ファンに向かって吸引する方向でもよいし、対流ファンから送風する方向でもよい。また、上記循環方向を一定時間毎に切り替えてもよい。
【0033】
本発明において、反応中に揮発するケイ素等の不純物成分は、雰囲気ガスに希釈されて存在するが、かかる雰囲気ガスに含まれる不純物成分の一部を循環機構4により反応容器1内で凝縮せしめ、雰囲気ガスより取り除くことは、反応用治具で反応中の粉体からの不純物成分の除去を一層促進することができ好ましい。上記凝縮は、反応容器1本体内に冷却部7を設け、循環する雰囲気ガスを上記冷却部に接触させることにより行うことが好ましい。これにより、気化した不純物成分は、冷却部に凝縮し、雰囲気ガスより除去される。冷却部を設ける態様としては、例えば、反応容器1の内壁の一部に水冷ジャケットを設けて冷却する態様が挙げられる。また、前記反応容器1の構造において、外部に水冷ジャケットを設ける構造においては、反応容器1の水冷ジャケットを設けた面が冷却部として機能する。また、他の態様として、反応容器1内部の任意の空間部に、熱交換機構を設けて冷却部を構成することも可能である。
【0034】
本発明において、反応容器1には、必要に応じて、各種制御手段が設けられていてもよい。たとえば安全弁、逃がし弁、圧力計、赤外線温度計などが挙げられる。安全弁は、緊急時に反応容器内の気体(窒素ガス)を排出することにより内圧を所定範囲(安全作業の範囲内)までに下げるためのものである。逃がし弁は、反応時の必要な時に反応容器内の気体をある程度排出し、または、反応終了時に反応容器内の気体を内圧が常圧に復帰するまで排出するためのものである。また、圧力計は、内圧を測定するためのものである。赤外線温度計は、反応容器内の温度変化を測定して記録するためのものであり、石英ガラス窓に嵌装されて使用される。さらにまた、制御手段は、モニターシステムを具備して、反応期間に亘って反応の変化状態をモニターする。
【0035】
本発明において、反応終了後、反応容器1から、反応用治具2内の製造された窒化アルミニウム粉末が常温又はそれより低い温度まで冷却してから、反応用治具を取り出し、窒化アルミニウム粉末を回収する。
【実施例
【0036】
以下、実施例により本発明の具体的な態様の一例を示すが、本発明はこの実施例に何ら限定されない。
実施例1
前記図1に示す装置を用いて、金属アルミニウム粉末の燃焼合成反応を行った。即ち、装置は、窒素を供給するための配管を接続した(図示せず)密閉容器よりなる反応容器1本体内に、上面が解放し、内寸で600mm×1000mm×50mmの直方形のカーボン製の箱よりなる反応用治具2をSUS製の棚に、50mmの間隔を開けて4段セットした。上記反応用治具2には、充填される原料粉末に着火するための着火装置3がそれぞれ設けられ、外部から着火操作ができるようにした。また、反応容器1内において、前記棚の一方の側部に循環機構4として、フード部材8付きで、高圧軸シールが可能なファンを取り付けた。更に、棚5の両側部には、上記ファンによる雰囲気ガスの循環を効率よく行うための整流板6を設けた。
【0037】
尚、本実施例においては、冷却部7を別途設けず、反応容器1の外壁に取り付けた(図示せず)冷却用ジャケットにより冷却された反応容器1の内壁(温度約20℃)を冷却部として利用した。
【0038】
前記各反応用治具に、以下の組成よりなる原料粉末を50mmの厚みで充填し、反応容器1内に収容し、窒素置換を行った後、窒素圧を5気圧(ゲージ圧)に調整して着火装置3により着火を行った。
【0039】
[原料粉末]
・金属アルミニウム粉末: 平均粒子径10μm、不純物ケイ素濃度 0.09質量%
・窒化アルミニウム(希釈剤): 平均粒子径 1μm、不純物ケイ素濃度 0.002質量%
・組成:金属アルミニウム粉末100質量部、窒化アルミニウム粉末 300質量部
着火後、循環機構4のファンを起動し、図に示す循環流を形成した。循環流は、反応用治具間の流速が約4m/秒となるように調整した。
【0040】
反応終了後、反応生成物である窒化アルミニウムを取り出し、ボールミルで粉砕し、窒化アルミニウム粉末とした。この粉末を再度希釈剤として使用して、同じ混合比で金属アルミニウム粉末と混合して反応を6回繰り返した。6回の反応後の粉末の不純物ケイ素濃度を測定した結果、0.02質量%であった。
【0041】
また、比較のため、循環機構4を作動させずに同様に6回反応を繰り返して、得られる窒化アルミニウム粉末の不純物ケイ素濃度は、0.04質量%であり、本発明の装置により、より高純度の窒化アルミニウム粉末が得られることを確認することができた。
【符号の説明】
【0042】
1 反応容器
2 反応用治具
3 着火装置
4 循環機構
5 棚
6 整流板
7 冷却部
8 フード部材
図1