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特許7538890重合性組成物、及び素子が搭載された基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】重合性組成物、及び素子が搭載された基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 289/00 20060101AFI20240815BHJP
   C08F 251/02 20060101ALI20240815BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240815BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240815BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20240815BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240815BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C08F289/00
C08F251/02
C08F2/44 C
C08L1/00
C08L33/26
H01L23/30 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022572029
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2021043797
(87)【国際公開番号】W WO2022138012
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020216450
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】植松 照博
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/093213(WO,A1)
【文献】特開平08-184786(JP,A)
【文献】特開2011-174972(JP,A)
【文献】特開平08-325476(JP,A)
【文献】特開平11-326916(JP,A)
【文献】特開2017-095722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0163255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 289/00
C08F 251/02
C08L 1/00
C08L 33/26
C08F 2/44
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において前記封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に前記基板上から除去される封止剤規制材料を形成するため、重合性組成物であって、
水溶性ポリマーと、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーと、重合開始剤とを含み、
前記含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーが、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、下記式(a1):
【化1】
(式(a1)中、R は水素原子又はメチル基であり、Xは、メチレン基、-O-、-S-、又は-NR -であり、R は、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、p及びqは、それぞれ独立に0以上6以下の整数であり、p+qが1以上6以下である。)
で表される化合物、及び、下記式(a2):
【化2】
(式(a2)中、R は水素原子又はメチル基であり、R は、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。R 及びR は互いに結合して最大で11員環までの環を形成してもよい。)
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、重合性組成物。
【請求項2】
前記重合開始剤が光重合開始剤である、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤である、請求項に記載の重合性組成物。
【請求項4】
25℃においてE型粘度計により測定される粘度が、1,000cP以上300,000cP以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項5】
素子が搭載された基板の製造方法であって、
前記基板上に、封止剤が流動し得る領域を規制する封止剤規制材料を形成する工程と、
前記封止剤規制材料を形成する前記工程の前又は後に、前記基板に素子を搭載する工程と、
前記領域内に、前記封止剤を注入し、前記素子の少なくとも一部を封止する工程と、
前記素子の少なくとも一部を封止する前記工程の後に、前記封止剤規制材料を除去する工程と、を含み、
前記封止剤規制材料が、請求項1~のいずれか1項に記載の重合性組成物を前記基板上に塗布した後に、前記重合性組成物を重合させることにより形成される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される封止剤規制材料を形成するために用いられる、重合性組成物と、当該重合性組成物を用いる素子が搭載された基板の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に種々の素子を搭載する場合、素子が、完全に樹脂で封止されたり、所謂アンダーフィルによって部分的に樹脂で封止されることが多い。封止材料としての樹脂は、通常、溶融した状態、又は溶液の状態で素子の近傍に供給される。しかし、封止を行うための液状の樹脂材料を用いる場合、液状の樹脂材料が流動する領域を規制することが難しい。
【0003】
このような事情から、例えば、特許文献1では、素子の、素子が基板と接する底面に設けられたボールグリッドアレイ部分への封止材料の侵入を防ぐために、素子の側面に接して素子の外周部分を被覆するダム剤を形成する方法が提案されている。特許文献1に記載の方法では、素子と基板のパッケージングに不具合が生じた場合に、ダム剤を除去するか、ダム剤が固着した素子を基板から剥離して、所謂リワークを行うために、基板上に設けられた半田コート上にダム剤が設けられている。この場合、基板を半田の融点以上の温度に加熱することで半田コートが溶融するため、ダム剤や、ダム剤が固着した素子を基板から容易に剥離できる。
【0004】
なお、ダム剤自体は、素子の高性能化に寄与しない。このため、リワークを行う場合以外でも、素子の封止後に基板からダム剤を剥離する要求は多い。例えば、基板上に素子を高密度に集積させつつ実装する場合、素子の封止後にダム剤を除去することにより基板上での素子の高集積化が容易である。
例えば、特許文献2においては、ダム剤の設けられた基板上主面に存在する素子を封止樹脂により封止し、切断工程等のその後の工程に悪影響を及ぼさないために、ダム剤を除去する技術が開示されている。
また、ここでのダム剤の除去にあたっては、当該ダム剤の材料を熱硬化性の材料とし硬化させることで密着性を低下させて剥離を行うことや、溶解等で行うといったアプローチが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-294311号公報
【文献】特開2010-283036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、ダム剤を設ける位置に正確に半田コートを形成するという煩雑な工程が必要である。また、特許文献1に記載の方法では、ダム剤やダム剤が固着した素子を剥離した後に、半田コートに由来する溶融した半田が基板上に濡れ広がる懸念もある。このような事情から、半田の溶融を利用せずとも、基板から容易に除去できるダム剤を形成可能な材料についての開拓余地がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される封止剤規制材料を形成するために用いられ、半田の溶融を利用せずとも、基板から容易に除去できる封止剤規制材料を形成可能な重合性組成物と、当該重合性組成物を用いる素子が搭載された基板の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水溶性ポリマーと、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーと、重合開始剤とを含む重合性組成物を、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される封止剤規制材料を形成するために用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される封止剤規制材料を形成するために用いられる、重合性組成物であって、
水溶性ポリマーと、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーと、重合開始剤とを含む重合性組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、素子が搭載された基板の製造方法であって、
基板上に、封止剤が流動し得る領域を規制する封止剤規制材料を形成する工程と、
封止剤規制材料を形成する工程の前又は後に、基板に素子を搭載する工程と、
前述の領域内に、封止剤を注入し、素子の少なくとも一部を封止する工程と、
素子の少なくとも一部を封止する工程の後に、封止剤規制材料を除去する工程と、を含み、
封止剤規制材料が、第1の態様にかかる重合性組成物を基板上に塗布した後に、重合性組成物を重合させることにより形成される、製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される封止剤規制材料を形成するために用いられ、半田の溶融を利用せずとも、基板から容易に除去できる封止剤規制材料を形成可能な重合性組成物と、当該重合性組成物を用いる素子が搭載された基板の製造方法とを提供することができる。
【0012】
≪重合性組成物≫
重合性組成物は、封止規制材料を形成するために用いられる。封止規制材料は、基板上に備えられた素子の少なくとも一部を封止剤により封止する封止工程において封止剤が流動し得る領域を規制し、且つ、封止工程後に基板上から除去される。
ここで、封止剤の流動が規制される領域は、基板の主面上における2次元の領域だけではなく、基板の主面上の空間の一部である3次元の領域も包含する。
例えば、封止剤規制材料の基板の厚さ方向の寸法を調整することにより、基板の厚さ方向の封止剤の流動範囲を規制できる。
【0013】
封止剤規制材料は、封止工程後に基板上から除去される。除去方法は特に限定されないが、水を用いる方法が好ましい。具体的な除去方法については、素子が搭載された基板の製造方法について後述する。
【0014】
重合性組成物は、水溶性ポリマーと、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーと、重合開始剤とを含む。かかる重合性組成物を、所望する形状に成形した後、重合させることにより封止剤規制材料が形成される。
【0015】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、(メタ)アクリルは、アクリル、及びメタクリルの双方を意味し、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル、及びメタクリロイルの双方を意味し、(メタ)アクリレートは、アクリレート、及びメタクリレートの双方を意味する。
【0016】
重合性組成物の25℃においてE型粘度計により測定される粘度は、1,000cP以上300,000cP以下が好ましく、5,000cP以上200,000cP以下がより好ましい。
重合性組成物の粘度が上記の範囲内であると、重合性組成物のディスペンス塗布が容易であり、好ましいサイズ及び形状の封止剤規制材料を、基板上の所定の位置に正確に形成しやすい。
【0017】
以下、重合性組成物が含み得る、必須、又は任意の成分について説明する。
【0018】
<水溶性ポリマー>
重合性組成物は、水溶性ポリマーを含有する。このため、重合性組成物を用いて形成される封止剤規制材料は、高い水溶性を示す。
水溶性とは、25℃の水100gに対して、溶質(水溶性ポリマー)が0.5g以上溶解することをいう。
【0019】
水溶性ポリマーの具体例としては、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリグリセリン、及び水溶性ナイロン等を挙げることができる。
ビニル系樹ポリマーとしては、ビニル基を有する単量体の単独重合体、又は共重合体であって、水溶性のポリマーであれば特に限定されない。ビニル系ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(酢酸ビニル共重合体も含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N-アルキルアクリルアミド)、ポリアリルアミン、ポリ(N-アルキルアリルアミン)、部分アミド化ポリアリルアミン、ポリ(ジアリルアミン)、アリルアミン・ジアリルアミン共重合体、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ブロック共重合体、及びポリビニルアルコールポリアクリル酸エステルブロック共重合体が挙げられる。
セルロース系ポリマーとしては、水溶性のセルロース、又はセルロース誘導体であれば特に限定されない。セルロース系ポリマーの好適な具体例としては、セルロース;メチルセルロース、エチルセルロース、n-プロピルセルロース、イソプロピルセルロース、n-ブチルセルロース、tert-ブチルセルロース、及びn-ヘキシルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及びセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びカルボキシプロピルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;ニトロセルロース、アルデヒドセルロース、ジアルデヒドセルロース、及びスルホン化セルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
上記の水溶性ポリマーの中では、耐熱性に優れることと、ディスペンス塗布に好適な粘度の重合性組成物を得やすいことと、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性に優れることとから、セルロール系ポリマーが好ましく、ヒドロキシアルキルセルロースがより好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0021】
上記の水溶性ポリマーの重量平均分子量は、15,000以上300,000以下が好ましく、20,000以上200,000以下がより好ましい。このような重量平均分子量の水溶性ポリマーを用いることで、重合性組成物の成膜性が向上しやすい。
【0022】
熱重量測定において、室温から200℃まで昇温した場合の、上記の水溶性ポリマーの重量減少率は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。このような特性の水溶性ポリマーを用いることで、得られる封止剤規制材料が封止工程(例えばエポキシ樹脂を用いた200℃程度での封止工程)においても形状が安定化しやすい。
なお、ここでの熱重量測定の条件としては、典型的には以下の内容を採用する。
・使用装置:TG/DTA装置(示差熱-熱重量同時測定装置、株式会社日立ハイテクサイエンス社製、TD/DTA6200R)
・昇温速度:10℃/分
・雰囲気:空気(流量200mL/分)
【0023】
重合性組成物における水溶性ポリマーの含有量は、重合性組成物の全質量に対して、1質量%以上90質量%以下が好ましく、3質量%以上70質量%以下がより好ましく、5質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
かかる範囲内の量の水溶性ポリマーを用いることにより、ディスペンス塗布に好適な粘度の重合性組成物を得やすく、エポキシ化合物等の封止剤と相溶しにくい封止剤規制材料を形成しやすい。
【0024】
<含窒素単官能(メタ)アクリルモノマー>
重合性組成物は、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを含む。典型的には、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーは、未硬化の状態では液状である。このため、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーは、重合性組成物において反応性希釈剤の役割をする。
なお、「含窒素単官能アクリルモノマー」の具体的な態様としては、(α)単官能の(メタ)アクリルアミドモノマーと、(β)(メタ)アクリル酸と構造中に窒素原子を含むアルコールとの縮合体(含窒素(メタ)アクリル酸エステルモノマー)の双方を含む。
また、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーは、重合することにより水溶性の(メタ)アクリルポリマーを与える。このため、重合性組成物を用いて形成される封止剤規制材料は水溶性に優れる。
【0025】
重合性組成物を用いて形成される封止剤規制材料の耐熱性の点から、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーについての、ホモポリマーとしてのガラス転移温度の計算値は、100℃以上であるのが好ましい。
ホモポリマーとしてのガラス転移温度は、Prediction of polymer properties, Marcel Dekker Inc, New York(1993)に記載されるBiceranoの方法(the method of Bicerano)により算出することができる。
【0026】
[単官能(メタ)アクリルアミドモノマー]
以下、前述した(α)の態様について説明する。
単官能(メタ)アクリルアミドモノマーの好ましい具体例としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0027】
また、低粘度であることや、耐熱性及び水溶性に優れる重合体を与えることから、単官能(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、下記式(a1)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体も好ましい。
【化1】
(式(a1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Xは、メチレン基、-O-、-S-、又は-NR-であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、p及びqは、それぞれ独立に0以上6以下の整数であり、p+qが1以上6以下である。)
【0028】
式(a1)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体の入手や合成が容易であったり、水溶性が良好な(メタ)アクリル樹脂を与える点で、式(a1)において、pが1であり、且つqが1であるのが好ましい。つまり、式(1)中の環式基が、6員環であるのが好ましい。
【0029】
前述の通り、式(a1)中のXは、メチレン基、-O-、-S-、又は-NR-であり、Rは、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。
式(a1)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体の入手や合成が容易であったり、水溶性が良好な(メタ)アクリル樹脂を与える点で、式(a1)において、Xが-O-であるのが好ましい。
【0030】
式(a1)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化2】
【0031】
上記の化合物の中では、以下の化合物が好ましい。
【化3】
【0032】
上記の化合物の中では、以下の化合物がより好ましい。
【化4】
【0033】
[含窒素(メタ)アクリル酸エステルモノマー]
以下、前述した(β)の態様について説明する。
含窒素(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、(メタ)アクリル酸と構造中に窒素原子を含むアルコール化合物とが縮合した構造を有する化合物である。
ここで構造中に窒素原子を含むアルコール化合物は、その構造中に1つのみの水酸基を有するものである。
【0034】
また、低粘度であることや、耐熱性及び水溶性に優れる重合体を与えることから、含窒素(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、下記式(a2)で表される化合物が好ましい。
【化5】
(式(a2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素原子数1以上5以下のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。R及びRは互いに結合して最大で11員環までの環を形成してもよい。)
【0035】
また、水溶性の高い重合体を与える観点、入手容易性の高さの観点から、前記式(a2)において、Rは、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基が好ましく、R及びRはともに炭素原子数1以上5以下のアルキル基であることが好ましい。
また、R及びRはともにメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0036】
重合性組成物における含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、重合性組成物の全質量に対して、10質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
かかる範囲内の量の含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを用いることにより、ディスペンス塗布に好適な粘度の重合性組成物を得やすく、耐熱性及び水溶性に優れる封止剤規制材料を形成しやすい。
【0037】
<重合開始剤>
重合性組成物は、前述の含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを重合させるために、重合開始剤を含む。含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを重合させるためには、通常、重合開始剤としてラジカル重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、露光により含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを重合させる光重合開始剤であってもよく、加熱により含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーを重合させる熱重合開始剤であってもよい。
短時間で重合性組成物を良好に硬化させやすい点等から、開始剤は、光重合開始剤が好ましい。
【0038】
光重合開始剤としては、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアルキルフェノン系光重合開始剤、Omnirad TPO H、Omnirad 819(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤や、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02(いずれもBASF社製)等のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
これらの中では、含窒素単官能(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の点で、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましく、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)がより好ましい。
【0039】
光重合開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(Irgacure OXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(Irgacure OXE02)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO H)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(Omnirad 819)、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、O-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2-メルカプトベンゾイミダール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(O-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
熱重合開始剤としては、ケトンパーオキシド(メチルエチルケトンパーオキシド及びシクロヘキサノンパーオキシド等)、パーオキシケタール(2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン及び1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等)、ヒドロパーオキシド(tert-ブチルヒドロパーオキシド及びクメンヒドロパーオキシド等)、ジアルキルパーオキシド(ジ-tert-ブチルパーオキシド(パーブチル(登録商標)D(日油株式会社製)、及びジ-tert-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシル(登録商標)D(日油株式会社製))等)、ジアシルパーオキシド(イソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びベンゾイルパーオキシド等)、パーオキシジカーボネート(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等)、パーオキシエステル(tert-ブチルパーオキシイソブチレート及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等)等}の有機過酸化物や、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)及びジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等}等のアゾ化合物が挙げられる。
【0041】
重合性組成物における光重合開始剤の含有量は、重合性組成物の全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上8質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
かかる範囲内の量の光重合開始剤を用いることにより、封止剤規制材料を形成する際に、重合性組成物を良好に硬化させやすい。
【0042】
<その他の成分>
重合性組成物は、必要に応じて、上記の成分以外のその他成分として各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、分散剤、シランカップリング剤等の密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
これらの添加剤の使用量は、重合性組成物においてこれらの添加剤が使用される量を勘案して適宜定められる。
【0043】
<溶媒>
重合性組成物は、溶媒を含んでいなくてもよいが、塗布性の調整の目的で溶媒を含んでいてもよい。重合性組成物は、溶媒を含まないのが好ましい。溶媒は、水であっても、有機溶媒であっても、有機溶媒の水溶液であってもよい。
重合性組成物の溶媒の含有量は、少ないほどよく、例えば、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
それぞれ所定量の以上説明した各成分を均一に混合することにより、重合性組成物が得られる。
【0045】
≪素子が搭載された基板の製造方法≫
素子が搭載された基板の製造方法は、
基板上に、封止剤が流動し得る領域を規制する封止剤規制材料を形成する工程と、
封止剤規制材料を形成する工程の前又は後に、基板に素子を搭載する工程と、
前述の領域内に、封止剤を注入し、素子の少なくとも一部を封止する工程と、
素子の少なくとも一部を封止する工程の後に、封止剤規制材料を除去する工程と、を含む方法である。
封止剤規制材料は、第1の態様にかかる重合性組成物を基板上に塗布した後に、重合性組成物を重合させることにより形成される。
以下、各工程について説明する。
【0046】
基板上に、封止剤が流動し得る領域を規制する封止剤規制材料を形成する工程において、素子が搭載される基板の種類は特に限定されない。
前述の重合性組成物を基板上の封止剤規制材料が形成される位置に塗布した後、重合性組成物を重合させることにより、基板上に封止剤規制材料が形成される。
重合性組成物を塗布する方法は特に限定されず、種々の印刷法、塗布法を適用可能である。所望する形状、及び厚さの封止剤規制材料の形成が容易である点からは、重合性組成物は基板上にディスペンス塗布されるのが好ましい。
【0047】
基板上に塗布された重合性組成物は、重合性組成物に含まれる重合開始剤の種類に応じて、露光、及び/又は加熱される。重合性組成物を、速やか且つムラなく硬化させることが容易である点で、光重合開始剤を含む重合性組成物を露光するのが好ましい。
重合性組成物を硬化させるために露光する条件は、硬化が良好に進行する限り特に限定されない。露光は、例えば、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射することにより行われる。照射するエネルギー線量は特に制限はないが、例えば30mJ/cm以上5000mJ/cm以下が挙げられる。
【0048】
基板上の封止剤規制材料を形成する位置は、封止剤の流動を規制したい位置であればよい。封止剤規制材料は、素子が基板に搭載された状態における、素子の外周を完全に囲むように形成されるのが好ましい。
典型的には、素子の外周を完全に囲むように形成された封止剤規制材料で囲まれた領域内に、封止剤を注入することにより、素子の少なくとも一部を封止剤により封止しつつ、封止剤規制材料で囲まれた領域の外側への封止剤の流動を規制できる。
【0049】
封止剤規制材料は、通常、厚さのある帯状の形状に形成される。封止剤規制材料の幅、及び厚さは、特に限定されず、素子のサイズ、素子の封止のされかた等を勘案して適宜決定される。
封止剤規制材料の厚さは、典型的には、10μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。封止剤規制材料の幅は、典型的には、5μm以上50mm以下が好ましく、100μm以上5mm以下がより好ましい。封止剤規制材料の厚さは、典型的には、基板の面方向に対して垂直方向の厚さである。封止剤規制材料の幅は、典型的には、基板の面方向に対して平行な方向の幅である。
【0050】
封止剤規制材料を形成する工程の前又は後に、基板に素子を搭載する工程では、基板上の所定の位置に素子が搭載される。素子の搭載は、単なる基板上への載置であってもよく、ボールグリッドアレイ等を用いた素子と基板との電気的な接続であってもよい。
【0051】
前述の領域内に、封止剤を注入し、素子の少なくとも一部を封止する工程では、封止剤規制材料により封止剤の流動が規制された領域内に封止剤が注入される。
封止剤としては、典型的には液状の硬化性樹脂材料が使用される。液状の硬化性樹脂材料としては、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れる硬化物を与えることから、エポキシ化合物を含む硬化性樹脂材料が好ましく使用される。エポキシ化合物を含む硬化性樹脂材料は、通常、種々の硬化剤や硬化促進剤等を含む。また、硬化性樹脂材料は、シリカ等の無機充填材を含んでいてもよい。
【0052】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE-3150(ダイセル社製)として市販される。
【0053】
また、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物も好ましく用いることができる。
オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物の典型的な例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、キシレノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールADノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。
【0054】
封止剤の注入量は、素子の封止のされ方により適宜選択される。封止の態様としては、素子の基板側下部のみを封止剤により固定する所謂アンダーフィルであってもよく、素子を封止剤に完全に埋包する封止方法であってもよい。
封止剤が硬化性樹脂材料である場合、注入された封止剤は、通常、封止剤の組成に応じて露光及び/又は加熱されることにより硬化される。
【0055】
素子の少なくとも一部を封止する工程の後に、封止剤規制材料を除去する工程において、封止剤規制材料を除去する方法は特に限定されない。好ましくは、封止剤規制材料を水と接触させ、封止剤規制材料を水に溶解させることにより封止剤規制材料を容易に除去できる。前述の重合性組成物を硬化させて形成される封止剤規制材料は水に良好に溶解するためである。
封止剤規制材料を水と接触させる方法は特に限定されない。封止剤規制材料を備える基板を、水に浸漬してもよく、封止剤規制材料上に水を盛ってもよく、封止剤規制材料に流水をかてもよく、封止剤規制材料に水をスプレーしてもよい。
封止剤規制材料と接触させる水の温度は特に限定されない。封止剤規制材料の溶解を促進する点で、例えば、水は、40℃以上90℃以下程度の温度に加温されていてもよい。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0057】
〔実施例1〕
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製 HPC SSL)100質量部と、N-アクリロイルモルホリン150質量部と、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製))4.5質量部とを均一に混合して重合性組成物を得た。得られた重合性組成物の25℃においてE型粘度により測定された粘度は、200,000cPを超えるものであった。
【0058】
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製 SHOT MASTER3)を用いて、針の口径φ0.4mm、圧力0.46MPa、速度1mm/sec、基板間ギャップ1mmの条件で、得られた実施例1の組成物を重ね塗りすることでシリコン基板上に高さ250μm、線幅1.6mmのダムパターンを塗布した。未硬化のダムパターンに、超高圧水銀灯ランプを用いて500mJ/cmで露光光を照射して硬化物を形成した。この硬化物を、温風オーブン180℃環境下で120分間加熱し、加熱後のダムパターンの高さが250μmで、線幅1.8mmとなり大きな変化のないことを確認したのち、純水55℃で30分間浸漬してダム材料の剥離をおこない、残膜のないことを確認した。
【0059】
〔実施例2〕
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製 HPC SSL)100質量部と、N,N-ジメチルアクリルアミド150質量部と、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製))4.5質量部とを均一に混合して重合性組成物を得た。得られた重合性組成物の25℃においてE型粘度により測定された粘度は、18821cPであった。
【0060】
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製 SHOT MASTER3)を用いて、針の口径φ0.4mm、圧力0.46MPa、速度1mm/sec、基板間ギャップ1mmの条件で、実施例2の組成物を重ね塗りすることでシリコン基板上に高さ300μm、線幅1.6mmのダムパターンを塗布した。未硬化のダムパターンに、超高圧水銀灯ランプを用いて500mJ/cmで露光光を照射して硬化物を形成した。この硬化物を、温風オーブン180℃環境下で120分間加熱し、加熱後のダムパターンの高さが300μmで、線幅1.7mmとなり大きな変化のないことを確認したのち、純水55℃で30分間浸漬してダム材料の剥離をおこない、残膜のないことを確認した。
【0061】
〔実施例3〕
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製 HPC SSL)100質量部と、N,N-ジエチルアクリルアミド150質量部と、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製))4.5質量部とを均一に混合して重合性組成物を得た。得られた重合性組成物の25℃においてE型粘度により測定された粘度は、191421cPであった。
【0062】
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製 SHOT MASTER3)を用いて、針の口径φ0.4mm、圧力0.46MPa、速度1mm/sec、基板間ギャップ1mmの条件で、実施例3の組成物を重ね塗りすることでシリコン基板上に高さ250μm、線幅1.7mmのダムパターンを塗布した。未硬化のダムパターンに、超高圧水銀灯ランプを用いて500mJ/cmで露光光を照射して硬化物を形成した。この硬化物を、温風オーブン180℃環境下で120分間加熱し、加熱後のダムパターンの高さが250μmで、線幅1.8mmとなり大きな変化のないことを確認したのち、純水55℃で30分間浸漬してダム材料の剥離をおこない、残膜のないことを確認した。
【0063】
〔実施例4〕
ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製 HPC SSL)100質量部と、ジメチルアミノエチルアクリレート150質量部と、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製))4.5質量部とを均一に混合して重合性組成物を得た。得られた重合性組成物の25℃においてE型粘度により測定された粘度は、200,000cPを超えるものであった。
【0064】
ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製 SHOT MASTER3)を用いて、針の口径φ0.4mm、圧力0.46MPa、速度1mm/sec、基板間ギャップ1mmの条件で、実施例4の組成物を重ね塗りすることでシリコン基板上に高さ250μm、線幅1.7mmのダムパターンを塗布した。未硬化のダムパターンに、超高圧水銀灯ランプを用いて500mJ/cmで露光光を照射して硬化物を形成した。この硬化物を、温風オーブン180℃環境下で120分間加熱し、加熱後のダムパターンの高さが250μmで、線幅1.8mmとなり大きな変化のないことを確認したのち、純水55℃で30分間浸漬してダム材料の剥離をおこない、残膜のないことを確認した。
【0065】
〔比較例1〕
アミン系水溶性ポリマー100質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート150質量部と、Omnirad 651(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(IGM Resins B.V.製))4.5質量部とを均一に混合して重合性組成物を得た。
比較例1の重合性組成物を用いて、実施例1と同様の方法により、封止剤規制材料の水による溶解剥離を行ったが、比較例1の重合性組成物を用いて形成された封止剤規制材料を完全に剥離することはできなかった。