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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-14
(45)【発行日】2024-08-22
(54)【発明の名称】エステル化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/65 20060101AFI20240815BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20240815BHJP
   A01N 53/06 20060101ALI20240815BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C07C69/65 CSP
A01N37/06
A01N53/06 110
A01P3/00
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2024522096
(86)(22)【出願日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2024002431
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2023216477
(32)【優先日】2023-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森 達哉
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/72285(WO,A1)
【文献】特開昭49-26425(JP,A)
【文献】特開2007-39412(JP,A)
【文献】Agric. Biol. Chem.,1987年,Vol.51, No.6,pp.1633-1640
【文献】Pestic. Sci.,1983年,Vol.14,pp.1-8
【文献】Journal of Essential Oil Bearing Plants,2011年,Vol.14, No.2,pp.255-259
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、R1及びR2は、R1が水素原子を表し、R2が1-プロペン-2-イル基を表すか、又は、R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す。〕
で示される化合物。
【請求項2】
1が水素原子であり、R2が1-プロペン-2-イル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)で示される化合物が、式(II-1):
【化2】
で示される化合物である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、不活性担体とを含有する組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物の有効量を植物又は土壌に処理することによる、植物病害の防除方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、メトフルトリン及びジメフルトリンからなる群より選ばれる1以上の化合物とを含有する組成物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、水、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、鉱物油類、及び植物油類からなる群より選ばれる1以上の液体担体とを含有する組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物と、水、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、鉱物油類、及び植物油類からなる群より選ばれる1以上の液体担体とを含有する組成物。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤とを含有する組成物。
【請求項11】
請求項7に記載の組成物と、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤とを含有する組成物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、カゼイン、ゼラチン、多糖類、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子からなる群より選ばれる1以上の増粘剤とを含有する組成物。
【請求項13】
請求項7に記載の組成物と、カゼイン、ゼラチン、多糖類、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子からなる群より選ばれる1以上の増粘剤とを含有する組成物。
【請求項14】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びBHA(2-t-ブチル-4-メトキシフェノールと3-t-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)からなる群より選ばれる1以上の酸化防止剤とを含有する組成物。
【請求項15】
請求項7に記載の組成物と、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びBHA(2-t-ブチル-4-メトキシフェノールと3-t-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)からなる群より選ばれる1以上の酸化防止剤とを含有する組成物。
【請求項16】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物を、植物性粉末に担持させた組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の組成物を、植物性粉末に担持させた組成物。
【請求項18】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物と、結合剤とを含有する組成物。
【請求項19】
請求項7に記載の組成物と、結合剤とを含有する組成物。
【請求項20】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物を、コットンリンター及びパルプからなる群より選ばれる1以上の基材に担持させた組成物。
【請求項21】
請求項7に記載の組成物を、コットンリンター及びパルプからなる群より選ばれる1以上の基材に担持させた組成物。
【請求項22】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物を、熱可塑性樹脂又は紙に担持させた組成物。
【請求項23】
請求項7に記載の組成物を、熱可塑性樹脂又は紙に担持させた組成物。
【請求項24】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤。
【請求項25】
請求項7に記載の組成物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2023-216477号(2023年12月22日出願)に基づくパリ条約上の優先権及びその利益を主張するものであり、その全内容は参照することにより本出願に組み込まれるものとする。
本発明はエステル化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに植物病害の防除を目的として、様々な化合物が検討されており、実用に供されている(非特許文献1参照)。一方で、特許文献1には、家庭防疫用途に優れた効力を有する化合物として式(A):
【化1】
で示される化合物(以下、化合物Aと記す)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-11022号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】The Pesticide Manual-17th edition(BCPC刊)ISBN 978-1-901396-88-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物病害に対して優れた防除効力を有する化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、植物病害に対する優れた防除効力を有する化合物を見出すべく検討した結果、下記式(I)で示される化合物が、植物病害に対して優れた防除効力を有することを見出した。
本発明は、以下のとおりである。
[1] 式(I):
【化2】
〔式中、R1及びR2は、R1が水素原子を表し、R2が1-プロペン-2-イル基を表すか、又は、R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す。〕
で示される化合物(以下、本発明化合物と記す)。
[2] R1が水素原子であり、R2が1-プロペン-2-イル基である[1]に記載の化合物。
[3] 式(I)で示される化合物が、式(II-1):
【化3】
で示される化合物である[2]に記載の化合物。
[4] R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す[1]に記載の化合物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、不活性担体とを含有する組成物。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物の有効量を植物又は土壌に処理することによる、植物病害の防除方法。
[7] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、メトフルトリン及びジメフルトリンからなる群より選ばれる1以上の化合物とを含有する組成物。
[8] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、水、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、鉱物油類、及び植物油類からなる群より選ばれる1以上の液体担体とを含有する組成物。
[9] [7]に記載の組成物と、水、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、鉱物油類、及び植物油類からなる群より選ばれる1以上の液体担体とを含有する組成物。
[10] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤とを含有する組成物。
[11] [7]に記載の組成物と、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤とを含有する組成物。
[12] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、カゼイン、ゼラチン、多糖類、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子からなる群より選ばれる1以上の増粘剤とを含有する組成物。
[13] [7]に記載の組成物と、カゼイン、ゼラチン、多糖類、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子からなる群より選ばれる1以上の増粘剤とを含有する組成物。
[14] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びBHA(2-t-ブチル-4-メトキシフェノールと3-t-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)からなる群より選ばれる1以上の酸化防止剤とを含有する組成物。
[15] [7]に記載の組成物と、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)及びBHA(2-t-ブチル-4-メトキシフェノールと3-t-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)からなる群より選ばれる1以上の酸化防止剤とを含有する組成物。
[16] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物を、植物性粉末に担持させた組成物。
[17] [7]に記載の組成物を、植物性粉末に担持させた組成物。
[18] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物と、結合剤とを含有する組成物。
[19] [7]に記載の組成物と、結合剤とを含有する組成物。
[20] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物を、コットンリンター及びパルプからなる群より選ばれる1以上の基材に担持させた組成物。
[21] [7]に記載の組成物を、コットンリンター及びパルプからなる群より選ばれる1以上の基材に担持させた組成物。
[22] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物を、熱可塑性樹脂又は紙に担持させた組成物。
[23] [7]に記載の組成物を、熱可塑性樹脂又は紙に担持させた組成物。
[24] [1]~[4]のいずれかに記載の化合物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤。
[25] [7]に記載の組成物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、植物病害を防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明化合物において、R1が水素原子であり、R2が1-プロペン-2-イル基である化合物は、具体的には、式(I-1):
【化4】
で示される化合物である。
【0009】
本発明化合物において、R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す化合物は、具体的には、式(I-2):
【化5】
で示される化合物である。
【0010】
本発明化合物には、一つ以上の立体異性体が存在する。立体異性体としては、光学異性体及び幾何異性体が挙げられる。本発明には各光学異性体、各幾何異性体、及び任意の比率の異性体混合物が含まれる。
【0011】
本発明化合物の光学異性体としては、具体的には、例えば、式(II-1)で示される化合物及び式(III-1)で示される化合物が挙げられる。
【0012】
【化6】
【0013】
【化7】
【0014】
本発明化合物として、式(II-1)で示される光学異性体又は該光学異性体を多く含む異性体混合物を使用するのが好ましい。
【0015】
本発明化合物の幾何異性体としては、例えば、式(IV)で示される化合物が挙げられる。
【化8】
【0016】
本発明化合物として、式(I)で示される幾何異性体又は該幾何異性体を多く含む異性体混合物を使用するのが好ましい。
【0017】
本発明化合物の態様として、以下の化合物が挙げられる。
本発明化合物において、R1が水素原子であり、R2が1-プロペン-2-イル基である化合物。
式(I-1)で示される化合物。
式(II-1)で示される化合物。
式(II-1)で示される化合物と式(III-1)で示される化合物とを含む混合物。
式(II-1)で示される光学異性体を多く含む、光学異性体混合物。
本発明化合物において、R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す化合物。
式(I-2)で示される化合物。
式(I)で示される化合物と式(IV)で示される化合物とを含む混合物。
式(I)で示される幾何異性体を多く含む、幾何異性体混合物。
【0018】
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物と不活性担体とを含有する組成物である。前記組成物は、通常、本発明化合物と固体担体、液体担体等の不活性担体とを混合し、必要に応じて界面活性剤、その他の製剤用補助剤を添加して、乳剤、油剤、粉剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、マイクロカプセル剤等に製剤化される。
前記組成物は、本発明化合物を通常、組成物の総重量に対して、0.0001~95重量%含有する。
【0019】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、酸性白土等)、乾式シリカ、湿式シリカ、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物等、並びに合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-プロピレン共重合体等)が挙げられる。
【0020】
液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ニトリル類(アセトニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル若しくはその塩(ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル若しくはその塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0022】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、着色剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)、酸性リン酸イソプロピル、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
【0023】
本発明化合物は、真菌(fungi)、卵菌(Oomycete)、ネコブカビ(Phytomyxea)、細菌(bacteria)等の植物病原性微生物が引き起こす植物病害に対して効力を有し、該植物病害を防除することができる。真菌(fungi)としては、例えば、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、Blasocladiomycota、Chytridiomycota、Mucoromycota及びOlpidiomycotaが挙げられる。具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。括弧内は、その病害を引き起こす植物病原性微生物の学名を示す。
【0024】
イネの病害:いもち病(Pyricularia oryzae)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、黄化萎縮病(Sclerophthora macrospora)、にせいもち病及び穂枯病(Epicoccum nigrum)、苗立枯病(Trichoderma viride、Rhizopus oryzae)、疑似紋枯症(赤色菌核病菌(Waitea circinata)、褐色菌核病菌(Ceratobasidium setariae)、褐色紋枯病菌(Thanatephorus cucumeris));
コムギの病害:うどんこ病(Blumeria graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Microdochium nivale)、黄さび病(Puccinia striiformis)、黒さび病(Puccinia graminis)、赤さび病(Puccinia recondita)、紅色雪腐病(Microdochium nivale、Microdochium majus)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata、Typhula ishikariensis)、雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、褐色雪腐病(Pythium spp.)、裸黒穂病(Ustilago tritici)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries、Tilletia controversa)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Stagonospora nodorum)、黄斑病(Pyrenophora tritici-repentis)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、いもち病(Pyricularia graminis-tritici);
オオムギの病害:うどんこ病(Blumeria graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Microdochium nivale)、黄さび病(Puccinia striiformis)、黒さび病(Puccinia graminis)、小さび病(Puccinia hordei)、裸黒穂病(Ustilago nuda)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、網斑病(Pyrenophora teres)、斑点病(Cochliobolus sativus)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、ラムラリアリーフスポット病(Ramularia collo-cygni)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani);
トウモロコシの病害:さび病(Puccinia sorghi)、南方さび病(Puccinia polysora)、すす紋病(Setosphaeria turcica)、熱帯性さび病(Physopella zeae)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、炭疽病(Colletotrichum graminicola)、グレーリーフスポット病(Cercospora zeae-maydis)、褐斑病(Kabatiella zeae)、ファエオスファエリアリーフスポット病(Phaeosphaeria maydis)、Diplodia病(Stenocarpella maydis、Stenocarpella macrospora)、ストークロット病(Fusarium graminearum、Fusarium verticilioides、Colletotrichum graminicola)、黒穂病(Ustilago maydis)、フイソデルマ病(Physoderma maydis)、tar spot病(Phyllachora maydis);
ワタの病害:炭疽病(Colletotrichum gossypii)、白かび病(Ramularia areola)、黒斑病(Alternaria macrospora、Alternaria gossypii)、Black root rot病 (Thielaviopsis basicola);
コーヒーの病害:さび病(Hemileia vastatrix)、リーフスポット病(Cercospora coffeicola);
ナタネの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒斑病(Alternaria brassicae)、根朽病(Phoma lingam)、light leaf spot病(Pyrenopeziza brassicae);
サトウキビの病害:さび病(Puccinia melanocephela、Puccinia kuehnii)、黒穂病 (Ustilago scitaminea);
ヒマワリの病害:さび病(Puccinia helianthi)、べと病(Plasmopara halstedii);
カンキツ類の病害:黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、緑かび病(Penicillium digitatum)、青かび病(Penicillium italicum)、疫病(Phytophthora parasitica、Phytophthora citrophthora)、こうじかび病(Aspergillus niger);
リンゴの病害:モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternata apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、炭疽病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、褐斑病(Diplocarpon mali)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、疫病(Phytophtora cactorum)、赤星病(Gymnosporangium juniperi-virginianae、Gymnosporangium yamadae);
ナシの病害:黒星病(Venturia nashicola、Venturia pirina)、黒斑病(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum);
モモの病害:灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、縮葉病(Taphrina deformans);
ブドウの病害:黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Neophysopella sp.)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、べと病(Plasmopara viticola);
カキの病害:炭疽病(Gloeosporium kaki、Colletotrichum acutatum)、落葉病(Cercospora kaki、Mycosphaerella nawae);
イチジクの病害:さび病(Phakopsora nishidana);
ウリ類の病害:炭疽病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Didymella bryoniae)、褐斑病(Corynespora cassiicola)、つる割病(Fusarium oxysporum)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora capsici)、苗立枯病(Pythium sp.)、ホモプシス根腐病(Phomopsis sp.);
トマトの病害:輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、すすかび病(Pseudocercospora fuligena)、疫病(Phytophthora infestans)、うどんこ病(Leveillula taurica);
ナスの病害:褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
アブラナ科野菜の病害:黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora parasitica)、白さび病(Albugo candida);
ネギの病害:さび病(Puccinia allii)、黒斑病(Alternaria porri)、黒腐菌核病(Sclerotium cepivorum)、小菌核腐敗病(Botrytis squamosa);
ダイズの病害:紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、褐色輪紋病(Corynespora cassiicola)、炭疽病(Colletotrichum glycines、Colletotrichum truncatum)、葉腐病(Rhizoctonia solani)、褐紋病(Septoria glycines)、斑点病(Cercospora sojina)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Microsphaera diffusa)、茎疫病(Phytophthora sojae)、べと病(Peronospora manshurica)、突然死病(Fusarium virguliforme)、黒根腐病(Calonectria ilicicola)、Diaporthe/Phomopsis complex(Diaporthe longicolla);
インゲンの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、さび病(Uromyces appendiculatus)、角斑病(Phaeoisariopsis griseola)、炭疽病(Colletotrichum lindemuthianum)、根腐病(Fusarium solani);
ラッカセイの病害:黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、黒根腐病(Calonectria ilicicola);
エンドウの病害:うどんこ病(Erysiphe pisi)、根腐病(Fusarium solani);
ジャガイモの病害:夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、緋色腐敗病(Phytophthora erythroseptica)、粉状そうか病(Spongospora subterranea f. sp. subterranea)、半身萎凋病(Verticillium albo-atrum、Verticillium dahliae、Verticillium nigrescens)、乾腐病(Fusarium solani)、がん腫病(Synchytrium endobioticum);
イチゴの病害:うどんこ病(Sphaerotheca humuli)、炭疽病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum);
チャの病害:網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭疽病(Colletotrichum theae-sinensis);
タバコの病害:赤星病(Alternaria longipes)、炭疽病(Colletotrichum tabacum)、べと病(Peronospora tabacina)、疫病(Phytophthora nicotianae);
テンサイの病害:褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、黒根病(Aphanomyces cochlioides)、さび病(Uromyces betae);
バラの病害:黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa);
キクの病害:褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana);
タマネギの病害:白斑葉枯病(Botrytis cinerea、Botrytis byssoidea、Botrytis squamosa)、灰色腐敗病(Botrytis allii)、小菌核性腐敗病(Botrytis squamosa);
種々の作物の病害:灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒腐菌核病(Sclerotium cepivorum)、白絹病(Sclerotium rolfsii)苗立枯病(Pythium aphanidermatum、Pythium irregulare、Pythium ultimum);
ダイコンの病害:黒斑病(Alternaria brassicicola);
シバの病害:ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、ブラウンパッチ病、ラージパッチ病(Rhizoctonia solani)、赤焼病(Pythium aphanidermatum);
バナナの病害:シガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、Mycosphaerella musicola);
レンズマメの病害:Ascochyta病(Ascochyta lentis);
ヒヨコマメの病害:Ascochyta病(Ascochyta rabiei);
ピーマンの病害:炭疽病(Colletotrichum scovillei);
マンゴーの病害:炭疽病(Colletotrichum acutatum);
かんしょの病害:基腐病(Diaporthe destruens);
果樹の病害:白紋羽病(Rosellinia necatrix)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa);
収穫後のリンゴ、ナシ等の果実の病害:ムコールロット病(Mucor piriformis);
Aspergillus属、Penicillium属、Fusarium属、Gibberella属、Tricoderma属、Thielaviopsis属、Rhizopus属、Mucor属、Corticium属、Phoma属、Rhizoctonia属、Diplodia属等によって引き起こされる、種子病害又は生育初期の病害;
ウイルス病:Olpidium brassicaeによって媒介されるレタスのビッグベイン病、Polymyxa属(例えば、Polymyxa betae及びPolymyxa graminis)によって媒介される各種作物のウイルス病;
細菌(bacteria)が引き起こす病害:イネの苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、イネの内穎褐変病(Pantoea ananatis)、イネの白葉枯病(Xanthomonas oryzae pv. oryzae.)、キュウリの斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv. lachrymans)、ナスの青枯病(Ralstonia solanacearum)、カンキツのかいよう病(Xanthomonas citri)、ハクサイの軟腐病(Erwinia carotovora)、ジャガイモのそうか病(Streptomyces scabiei)、トウモロコシのGoss's wilt病(Clavibacter michiganensis)、ブドウ、オリーブ、モモ等のピアス病(Xylella fastidiosa)、リンゴ、モモ、サクランボ等のバラ科植物の根頭がんしゅ病(Agrobacterium tumefaciens)。
【0025】
本発明の植物病害の防除方法は、例えば茎葉散布、種子消毒等の植物体への処理;土壌処理等の植物の栽培地への処理が挙げられる。
【0026】
本発明化合物の処理量は、植物の栽培地1000m2あたり通常1~10000gである。本発明化合物が乳剤、水和剤、フロアブル剤等に製剤化されている場合は、通常、有効成分濃度が0.01~10000ppm(例えば1000ppm)となるように水で希釈して施用し、粒剤、粉剤等は、通常、そのまま施用する。
【0027】
本発明の組成物は、畑、水田、芝生、果樹園等の農耕地における植物病害の防除剤として使用することができる。
【0028】
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物と、メトフルトリン(metofluthrin)及びジメフルトリン(dimefluthrin)からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物とを含有する組成物(以下、組成物Aと記す)である。メトフルトリン及びジメフルトリンは、一種のみで、又は、二種を組み合わせて、使用できる。また、メトフルトリン及びジメフルトリンには、それぞれ一つ以上の立体異性体が存在するが、本発明で使用されるメトフルトリン及びジメフルトリンには、立体異性体及びその混合物が含まれる。
組成物Aにおいて、本発明化合物と、メトフルトリン及びジメフルトリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物との比は、特に限定されるものではないが、質量比(本発明化合物:メトフルトリン及びジメフルトリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物)で、100000:1~1:100000、50000:1~1:50000、10000:1~1:10000、1000:1~1:1000、500:1~1:500、100:1~1:100、50:1、20:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:20、1:50等が挙げられる。
【0029】
メトフルトリン及びジメフルトリンは、それぞれ、有害昆虫、有害ダニ類等の有害節足動物に対し優れた防除効果を発揮することが知られている。そのため、メトフルトリン及びジメフルトリンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する組成物Aは、有害節足動物に対し優れた防除効果を発揮することも期待できる。有害節足動物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
半翅目害虫:ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、アブラムシ類、カメムシ類、コナジラミ類、カイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等;
鱗翅目害虫:ニカメイガ、コブノメイガ、ノシメコクガ等のメイガ類、ハスモンヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ等のヨトウ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、コカクモンハマキ等のハマキガ類、シンクイガ類、ハモグリガ類、ドクガ類、ウワバ類、カブラヤガ、タマナヤガ等のアグロティス属害虫(Agrotis spp.)、ヘリコベルパ属害虫(Helicoverpa spp.)ヘリオティス属害虫(Heliothis spp.)、コナガ、イチモンジセセリ、イガ、コイガ等;
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ等のハマダラカ類、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、タネバエ、ヒメイエバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、アブ類、ブユ類、サシバエ類等;
鞘翅目害虫:ウエスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、コクゾウムシ、イネミズゾウムシ、ワタミゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、ウリハムシ等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ属(Epilachna spp.)、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ等;
網翅目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等;
総翅目害虫:ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ハナアザミウマ等;
膜翅目害虫:アリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、カブラハバチ等のハバチ類等;
直翅目害虫:ケラ、バッタ等;
隠翅目害虫:ヒトノミ、ネコノミ等;
シラミ目害虫:ヒトジラミ、ケジラミ等;
等翅目害虫:ヤマトシロアリ、イエシロアリ等;
屋内塵性ダニ類:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニ等のコナダニ類、チリニクダニ、イエニクダニ、サヤアシニクダニ等のニクダニ類、クワガタツメダニ、フトツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、マルニクダニ類、イエササラダニ類、ハダニ類、フタトゲチマダニ等のマダニ類、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ等。
有害節足動物は、殺虫剤、殺ダニ剤等に薬剤感受性の低下した、又は薬剤抵抗性の発達した有害節足動物であってもよい。
【0030】
本発明化合物又は組成物Aは、通常、さらに不活性担体を含有する組成物(以下、組成物Bと記す)として使用する。組成物Bは、通常、本発明化合物又は組成物Aと液体担体、界面活性剤等とを混合し、必要により、増粘剤、結合剤、分散剤、安定剤、ガス等の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤(水中懸濁剤、水中乳濁剤等)、粉剤、粒剤、エアゾール剤(直撃噴霧型、空間噴霧型、定量噴霧型、ワンプッシュ型、全量噴霧型、間欠噴霧型等)、スプレー剤、電気式噴霧剤(超音波振動式、静電噴霧式等)、加熱蒸散剤(線香、電気マット、吸液芯型加熱蒸散剤等)、非加熱蒸散剤(樹脂蒸散剤、含浸紙蒸散剤、ネット製剤等)、煙霧剤(フォギング等)、ULV(Ultra Low Volume)剤等に用いることができる。
本発明の1つの実施形態である製剤は、本発明化合物又は組成物Aを含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤である。
これらの製剤には本発明化合物又は組成物Aが、製剤の総重量に対して、重量比で通常0.0001~99%含有される。
【0031】
液体担体としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン、フェニルキシリルエタン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、オレイン酸メチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ラクタム類(N-メチルピロリドン、N-オクチルピロリドン等)、脂肪酸類(オレイン酸等)、鉱物油類(ケロシン、灯油、軽油等)、及び植物油類(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aと、水、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、スルホキシド類、鉱物油、類及び植物油類からなる群より選ばれる1以上の液体担体とを含有する組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤である。
【0032】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aと、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、及び糖アルコール誘導体からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤とを含有する組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、乳剤、フロアブル剤、及び加熱蒸散剤からなる群より選ばれる製剤である。
【0033】
増粘剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(デンプン、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類等)が挙げられる。
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aと、カゼイン、ゼラチン、多糖類、リグニン誘導体、ベントナイト、及び合成水溶性高分子からなる群より選ばれる1以上の増粘剤とを含有する組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、フロアブル剤である。
【0034】
酸化防止剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)及びBHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aと、BHT及びBHAからなる群より選ばれる1以上の酸化防止剤とを含有する組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、油剤、乳剤、フロアブル剤、エアゾール剤、加熱蒸散剤、非加熱蒸散剤、煙霧剤、及びULV剤からなる群より選ばれる製剤である。
【0035】
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aを、植物性粉末(木粉、粕粉等)に担持させた組成物である。植物性粉末は、前記植物性粉末と結合剤(タブ粉、スターチ、グルテン等)とを混合して用いてもよい。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、加熱蒸散剤である。
本発明のまた別の実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aと、結合剤とを含有する組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、加熱蒸散剤である。
【0036】
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aを、コットンリンター及びパルプからなる群より選ばれる1以上の基材に担持させた組成物である。前記基材は、具体的には、例えば、コットンリンターを板状に固めたもの及びコットンリンターとパルプとの混合物の繊維を板状に固めたものが挙げられる。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、加熱蒸散剤である。
【0037】
本発明の1つの実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aを、熱可塑性樹脂又は紙に担持させた組成物である。また、本発明の1つの実施形態である製剤は、当該組成物を含有する、非加熱蒸散剤である。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエチレン-ビニルエステル共重合体;エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン-メタクリル酸エステル共重合体;エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等のエチレン-アクリル酸エステル共重合体;エチレン-アクリル酸共重合体等のエチレン-ビニルカルボン酸共重合体;エチレン-テトラシクロドデセン共重合体;プロピレン重合体、プロピレン-エチレン共重合体のポリプロピレン樹脂;ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリブテン-1、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレン-共役ジエン共重合体、スチレン-共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリルサルフォン、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタンが挙げられ、これらの樹脂は、単独で用いても2種以上の混合物として用いてもよい。これらの樹脂には、必要により、フタル酸エステル類(フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸エステル類、ステアリン酸等の可塑剤が添加されていてもよい。
前記紙としては、例えば、濾紙及び和紙が挙げられる。
本発明の別の実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aを、熱可塑性樹脂に担持させた組成物である。
本発明のまた別の実施形態である組成物は、本発明化合物又は組成物Aを、紙に担持させた組成物である。
【実施例
【0038】
以下、本発明を製造例、参考製造例、及び試験例等によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0039】
まず、本発明化合物の製造例を示す。
【0040】
参考製造例1
有機合成化学協会誌40,930(1980)に記載の方法で製造したエチル (R,E)-2-(1-プロペン-2-イル)-5-メチル-3-ヘキセノエート1.1g及びエタノール6mLの混合物に、1N水酸化カリウム水溶液5.8mLを加え、室温で3時間撹拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮し、残渣をtert-ブチルメチルエーテルに溶解させ、5%塩酸に加え、分液した。得られた水層をtert-ブチルメチルエーテルで2回抽出した。得られた有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、下式で示される(R,E)-2-(1-プロペン-2-イル)-5-メチル-3-ヘキセン酸0.9gを得た。
【化9】
1H-NMR(CDCl3)δ:5.56 (2H, s), 4.89 (2H, s), 3.66 (1H, d), 2.33 (1H, m), 1.76 (3H, s), 1.00 (6H, d).
【0041】
製造例1
(R,E)-2-(1-プロペン-2-イル)-5-メチル-3-ヘキセン酸0.12g、N-メチルイミダゾール0.17mL、及びアセトニトリル2mLの混合物に、p-トルエンスルホニルクロリド0.16gを加え、室温で10分間撹拌した。得られた混合物に4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール0.16gを加え、室温で12時間撹拌した。得られた混合物をtert-ブチルメチルエーテルで希釈し、得られた希釈液を水に加え、分液した。得られた有機層を5%塩酸、水、及び飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)に付し、下式(II-1)で示される化合物(以下、本発明化合物1と記す)を0.13g得た。
【化10】
【0042】
本発明化合物1の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3)δ:5.54 (2H, s), 5.23 (2H, s), 4.86 (2H, d), 4.58 (2H, s), 3.63 (1H, d), 3.41 (3H, s), 2.30 (1H, m), 1.73 (3H, s), 0.98 (6H, d).
【0043】
製造例2
特開2001-11022号公報の製造例1に記載の方法で製造した4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル (1R)-トランス-3-(2-メチル-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート3.0g及びクロロホルム25mLの混合物に、メタンスルホン酸0.62gを加え、35時間加熱還流した。得られた混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、分液した。得られた水層を、tert-ブチルメチルエーテル100mLで2回抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=30:1)に付し、下式(I-2)で示される化合物(以下、本発明化合物2と記す)を0.79g得た。
【化11】
【0044】
本発明化合物2の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(CDCl3)δ:6.16 (1H, d), 5.47 (1H, d), 5.34 (2H, s), 4.58 (2H, s), 3.39 (3H, s), 2.34 (1H, m), 1.82 (3H, s), 1.80 (3H, s), 0.99 (6H, d).
【0045】
次に、本発明化合物の植物病害に対する効力を試験例により示す。
なお、DMSOとはジメチルスルホキシドを意味する。また、試験例1~3において、無処理区とは、本発明化合物を含有するDMSO希釈液の代わりにDMSOを分注する以外は試験例に記載されたのと同じ条件で行った試験区を表す。
【0046】
試験例1 トウモロコシ黒穂病(Ustilago maydis)に対する防除試験
本発明化合物1又は2を1067ppm含有するようにDMSOで希釈し、タイタープレート(96ウェル)に1μL分注した後、あらかじめトウモロコシ黒穂病菌の胞子を接種したジャガイモ煎汁液体培地(PDB培地)を150μL分注した。このプレートを4日間、18℃で培養しトウモロコシ黒穂病菌を増殖させたのち、タイタープレートの各ウェルの550nmの吸光度を測定し、その値をトウモロコシ黒穂病菌の生育度とした。その結果、本発明化合物1又は2を処理した区における生育度はいずれも、無処理区における生育度の70%以下であった。
【0047】
試験例2 イネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)に対する防除試験
本発明化合物1を1067ppm含有するようにDMSOで希釈し、タイタープレート(96ウェル)に1μL分注した後、あらかじめイネごま葉枯病菌の胞子を接種したYB液体培地を150μL分注した。このプレートを5日間、18℃で培養しイネごま葉枯病菌を増殖させたのち、タイタープレートの各ウェルの550nmの吸光度を測定し、その値をイネごま葉枯病菌の生育度とした。その結果、本発明化合物1を処理した区における生育度は、無処理区における生育度の70%以下であった。
【0048】
試験例3 コムギ赤かび病(Fusarium graminearum)に対する防除試験
本発明化合物2を533ppm含有するようにDMSOで希釈し、タイタープレート(96ウェル)に1μL分注した後、あらかじめコムギ赤かび病菌の胞子を接種したジャガイモ煎汁液体培地(PDB培地)を150μL分注した。このプレートを4日間、18℃で培養しコムギ赤かび病菌を増殖させたのち、タイタープレートの各ウェルの550nmの吸光度を測定し、その値をコムギ赤かび病菌の生育度とした。その結果、本発明化合物2を処理した区における生育度はいずれも、無処理区における生育度の70%以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明化合物は、植物病害に対して優れた防除効果を示す。
【要約】
本発明は、植物病害に対して優れた防除効力を有する化合物を提供する。式(I)
〔式中、R1及びR2は、R1が水素原子を表し、R2が1-プロペン-2-イル基を表すか、又は、R1とR2とが一つになってイソプロピリデン基を表す。〕で示される化合物は植物病害に対して優れた防除効力を有する。