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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240816BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20240816BHJP
   C09D 179/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C09D133/00
C08F220/02
C09D5/00 D
C09D5/02
C09D133/02
C09D133/06
C09D133/14
C09D143/04
C09D179/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018082095
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019189713
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】秋山 寿江
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】弘實 由美子
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171697(JP,A)
【文献】特開2011-231274(JP,A)
【文献】国際公開第2013/58402(WO,A1)
【文献】特開2000-178287(JP,A)
【文献】特開2006-282879(JP,A)
【文献】国際公開第2013/47880(WO,A1)
【文献】特開2004-250637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-210/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンと、カルボジイミド基を有するポリマー(A)を含有するプライマー組成物であって、
前記(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(b)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(B)からなる粒子であり、
前記(メタ)アクリル系ポリマー(B)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)と、加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)とを有し、かつ、前記繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されている、ポリマーであり、
前記(メタ)アクリル粒子および前記ポリマー(A)の合計含有量が、組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する前記加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)のモル比(B4/B1)が0.04~0.07である、プライマー組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する前記カルボジイミド基のモル比(カルボジイミド基/B3)が0.01~0.8である、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する前記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)のモル比(B2/B1)が0.1~0.55である、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する前記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)のモル比(B3/B1)が0.05~0.4である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する前記第3級アミン類(C)のモル比(C/B3)が0.1~1.0である、請求項1~のいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
下地と防水材とを密着させるために使用される、請求項1~のいずれか1項に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
前記防水材がウレタン防水材である、請求項に記載のプライマー組成物。
【請求項8】
前記下地が無機系硬質素材である、請求項またはに記載のプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、建築用シーリング材(例えば、防水材など)をモルタルのような無機系硬質素材等の被着体と接着させるためには、被着体にプライマーを塗布することが必要である。
現在、環境汚染をできるだけ少なくし、作業者への安全衛生をより一層向上させるために水系プライマーの開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル系エマルジョンと、第3級アミン類とを含有し、(メタ)アクリル系エマルジョンが、アルコキシシリル基1を有するポリ(メタ)アクリレート、及び、アルキル基とヒドロキシ基とカルボキシ基とアルコキシシリル基2とを有する自己乳化型の(メタ)アクリル系ポリマーを含み、ポリ(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル系ポリマーの合計含有量が、15~60質量%である、防水材用のプライマー組成物(ただし、ポリ(メタ)アクリレートは、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有さない。)が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-171697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されたプライマー組成物について検討したところ、このようなプライマー組成物の接着性(常態接着性による評価)について改善の余地があることが明らかとなった(比較例4)。
また、本発明者らは、自己乳化型の(メタ)アクリル系ポリマーの耐水性(耐水接着性による評価)について改善の余地があることを見出した(比較例1~3)。
そこで、本発明は、接着性および耐水性に優れるプライマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を有する所定の重合性モノマーを重合させ、所定の第3級アミン類を用いて自己乳化型とした(メタ)アクリル系ポリマーからなる(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンに対して、カルボジイミド基を有するポリマーを配合することにより、無機系硬質素材等の被着体との接着性(特に常態接着性)および耐水性(特に耐水接着性)が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1] (メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンと、カルボジイミド基を有するポリマー(A)を含有するプライマー組成物であって、
上記(メタ)アクリル粒子が、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(b)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(B)からなる粒子であり、
上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)と、加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)とを有し、かつ、上記繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されている、ポリマーであり、
上記(メタ)アクリル粒子および上記ポリマー(A)の合計含有量が、組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である、プライマー組成物。
[2] 上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する上記カルボジイミド基のモル比(カルボジイミド基/B3)が0.01~0.8である、[1]に記載のプライマー組成物。
[3] 上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)のモル比(B2/B1)が0.1~0.55である、[1]または[2]に記載のプライマー組成物。
[4] 上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)のモル比(B3/B1)が0.05~0.4である、[1]~[3]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[5] 上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)のモル比(B4/B1)が0.01~0.1である、[1]~[4]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[6] 上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する上記第3級アミン類(C)のモル比(C/B3)が0.1~1.0である、[1]~[5]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[7] 下地と防水材とを密着させるために使用される、[1]~[6]のいずれかに記載のプライマー組成物。
[8] 上記防水材がウレタン防水材である、[7]に記載のプライマー組成物。
[9] 上記下地が無機系硬質素材である、[7]または[8]に記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接着性および耐水性に優れるプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物(本発明の組成物)は、(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンと、カルボジイミド基を有するポリマー(A)とを含有するプライマー組成物である。
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(b)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(B)からなる粒子である。
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)と、加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)とを有し、かつ、上記繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されている、ポリマーである。
更に、本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子および上記ポリマー(A)の合計含有量は、組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である。
【0011】
このような本発明のプライマー組成物は、無機系硬質素材等の被着体(例えば、モルタルなど)との接着性および耐水性が良好となる。
その理由は詳細には明らかではないが、(メタ)アクリル粒子を構成している(メタ)アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)と、加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)とを有することにより、ウレタン防水材および無機系硬質素材(特にモルタル)に対する接着が強固になると考えられる。
また、上記(メタ)アクリル系ポリマーにおいては、上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されており、一方、上記ポリマー(A)はカルボジイミド基を有する。本発明の組成物が下地に適用された際、水分および上記第3級アミン類(C)が上記組成物から蒸発して、イオン化されたカルボキシ基がカルボキシ基となると、上記カルボキシ基が上記ポリマー(A)が有するカルボジイミド基と反応して、プライマー層内において上記(メタ)アクリル系ポリマーとポリマー(A)とが結合できる。
以上のような、ウレタン防水材および無機系硬質素材(特にモルタル)に対する強固な接着力、および、上記結合によって生じるプライマー層自体の強靭性またはバリア性によって、本発明の組成物は接着性および耐水性に優れると推測される。
以下、本発明のプライマー組成物が含有する各成分について詳述する。
【0012】
〔(メタ)アクリル系エマルジョン〕
本発明のプライマー組成物が含有する(メタ)アクリル系エマルジョンは、分散質としての(メタ)アクリル粒子と、分散媒とを含有するエマルジョンである。
ここで、分散質である(メタ)アクリル粒子の相は、液相であっても固相であってもよい。すなわち、一般的には、液相である分散媒に液相である分散質が分散した系を「エマルジョン」といい、液相である分散媒に固相である分散質が分散した系を「サスペンション」というが、本発明においては、「エマルジョン」は「サスペンション」を含む概念とする。
また、分散媒は水系溶媒であれば特に制限されない。水系溶媒としては、例えば、水;水に可溶な有機溶媒を水に混合した混合溶媒;などが挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、アルコール;メチルエチルケトン(MEK)のようなケトンが挙げられる。
【0013】
<(メタ)アクリル粒子>
上記(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(b)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(B)からなる粒子である。
(メタ)アクリル粒子の形状は、粒状であれば特に制限されない。
また、(メタ)アクリル粒子の平均粒子径は、例えば、0.01~0.6μmとすることができる。なお、平均粒子径は、粒度径分布測定機(Nanotrac UPA-EX150、日機装社製)を用いて測定することができる。
【0014】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)と、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)と、加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)とを有し、かつ、上記繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されている、自己乳化型のポリマーである。
以下、各繰り返し単位を構成する各モノマーについて詳述する。
【0015】
〈(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)〉
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)において、エステル結合に結合するアルキル基(脂肪族炭化水素基)は特に制限されない。直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれか、又はこれらの組合せであってもよい。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらのうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0017】
本発明においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)としては、上記で例示したものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する際の組み合わせとしては、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」とも略す。)とアクリル酸-2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」とも略す。)との組合せが好ましい。
ここで、アクリル酸-2-エチルヘキシルに対するメタクリル酸メチルのモル比(MMA/2EHA)が、0.5~2.5であることが好ましく、1.470~2.310であることがより好ましく、1.650~2.030が更に好ましい。
【0018】
〈ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)〉
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)は、ヒドロキシ基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)1分子が有するヒドロキシ基は、1個又は複数とすることができる。上記ヒドロキシ基は1個であることが好ましい。
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)1分子が有する(メタ)アクリロイル基は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基であってもよい。
ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とは有機基(例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基)を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。有機基(ヘテロ原子、炭化水素基)は特に制限されない。
【0019】
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)としては、具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」とも略す。)がより好ましい。
【0020】
本発明においては、ウレタン防水材との接着性および/または耐水性がより向上する理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)のモル比(B2/B1)が0.1~0.55を満たしていることが好ましく、0.20~0.50を満たしていることがより好まし、0.20~0.30を満たすことが更に好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)のモル比(b2/b1)についても、0.1~0.55であることが好ましく、0.20~0.50であることがより好まし、0.20~0.30を満たすことが更に好ましい。
【0021】
〈(メタ)アクリル酸モノマー(b3)〉
(メタ)アクリル酸モノマー(b3)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸(MAA)である。これらのうち、メタクリル酸が好ましい。
【0022】
本発明においては、接着性および/または耐水性により優れ、エマルジョンの貯蔵安定性が向上する理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)のモル比(B3/B1)が0.05~0.4を満たしていることが好ましく、0.05~0.20を満たしていることがより好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に対する上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)のモル比(b3/b1)についても、0.05~0.4であることが好ましく、0.05~0.20であることがより好ましい。
【0023】
〈加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)〉
加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)は、加水分解性シリル基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
【0024】
上記加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基であることが好ましく、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基がより好ましく、ジアルコキシシリル基が更に好ましい。
アルコキシシリル基がジアルコキシシリル基またはモノアルコキシシリル基である場合、上記アルコキシシリル基におけるケイ素原子に(アルコキシ基以外に)更に結合しうる基としては、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。上記炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記加水分解性シリル基と上記重合性官能基とは、例えば、有機基(例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基)を介して結合できる。上記有機基は特に制限されない。
【0025】
加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)としては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましく用いられる。
【0026】
本発明においては、無機系硬質素材との接着性および/または耐水性がより向上し、エマルジョンの貯蔵安定性が良好となる理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に由来する繰り返し単位(B1)に対する上記加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)のモル比(B4/B1)が0.01~0.1を満たしていることが好ましく、0.03~0.07を満たしていることがより好ましく、0.04~0.06が更に好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)に対する上記加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)のモル比(b4/b1)についても、0.01~0.1であることが好ましく、0.03~0.07であることがより好ましく、0.04~0.06が更に好ましい。
【0027】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、上述したモノマー(b1)~(b4)に由来する繰り返し単位(B1)~(B4)以外に、他のモノマー、すなわち、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位を有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、オレフィン;スチレンのようなビニル性芳香族炭化水素化合物;などが挙げられる。
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、カルボジイミド基を有さないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0028】
〈第3級アミン類〉
上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)は、上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されている、自己乳化型のポリマーである。
なお、本発明の組成物中において、上記カルボキシ基の少なくとも一部又は全てが、上記第3級アミン類(C)でイオン化されていればよい。
イオン化されたカルボキシ基は-COO-で表される。
一方、第3級アミン類(C)はカルボキシ基をイオン化して、カチオンとなる。
上記繰り返し単位(B3)におけるカルボキシ基が第3級アミン類(C)でイオン化されていることによって、上記カルボキシ基がポリマー(A)が有するカルボジイミド基と反応することが抑制されるため、本発明の組成物は貯蔵安定性に優れる。
【0029】
上記第3級アミン類(C)は、窒素原子に有機基(炭素原子)が3個結合する化合物であれば特に制限されない。
【0030】
有機基は特に制限されない。例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基は、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状を含む。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン等が挙げられる。ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を構成してもよい。
有機基としては、具体的には例えば、ヒドロキシ基を有してもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0031】
第3級アミン類(C)としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する上記第3級アミン(C)のモル比(C/B3)が0.1~1.0であることが好ましく、0.5~1.0がより好ましい。
【0033】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、接着性および/または耐水性がより良好となる理由から、10,000以上が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表される重量平均分子量である。
なお、本発明において、上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、上記第3級アミン類(C)を含まない。
【0034】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(B)の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)、ヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)、(メタ)アクリル酸モノマー(b3)および加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)を、AIBN(2,2′-アゾビスイソブチロニトリル)のような重合開始剤の存在下で重合させ、得られた(メタ)アクリル系ポリマーと第3級アミン類(C)と水とを混合することによって製造することができる。
【0035】
本発明において、上記(メタ)アクリル系エマルジョンは、乳化剤(界面活性剤)を含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0036】
〔カルボジイミド基を有するポリマー(A)〕
本発明の組成物に含有されるポリマー(A)は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を有する重合体である。
上記ポリマー(A)は、1分子中、カルボジイミド基を1個または複数有することができる。
上記ポリマー(A)はカルボジイミド基を例えば主鎖内に有することができる。
【0037】
上記ポリマー(A)としては、例えば、ポリカルボジイミド樹脂が挙げられ、具体的には例えば、ジイソシアネート類を脱二酸化炭素縮合して得られる縮合反応物、又は、ジイソシアネート類とトリイソシアネート類とを脱二酸化炭素縮合して得られる縮合反応物が挙げられる。
上記ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類としては、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートのいずれでもよい。分子中にイソシアネート基を少なくとも2個以上、特に2個有するものが好適である。
上記ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類としては、例えば、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4,6-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TIDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12-ジイソシアネートドデカン(DDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、及び2,4-ビス-(8-イソシアネートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン(OCDI)などが挙げられる。
【0038】
上記ポリマー(A)は、接着性および/または耐水性により優れるという観点から、水溶性または水分散性であることが好ましく、水分散性(エマルジョンタイプ)であることがより好ましい。このため、上記ポリマー(A)は、例えば、上記縮合反応物の末端イソシアネート基を親水性基で封止してなる水溶性又は水分散性のポリカルボジイミドであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
末端イソシアネート基を封止しうる化合物としては、例えば、イソシアネート基と反応し得る基を有する水溶性又は水分散性有機化合物が挙げられる。具体的例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の二官能性の水分散性有機化合物のモノアルキルエステル又はモノアルキルエーテル、あるいはカチオン系の官能基(例えば窒素を含む基)、又はアニオン系の官能基(例えばスルホニル基を含む基)を持つ一官能の有機化合物などが挙げられる。特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが好適である。
【0039】
上記ポリマー(A)のカルボジイミド基1モルあたりの化学式量(以下「NCN当量」と略記する場合がある)は、接着性および/または耐水性により優れるという観点から、
300~600(g/カルボジイミド基1モル)であることが好ましく、300~450(g/カルボジイミド基1モル)であることがより好ましい。
【0040】
上記ポリマー(A)の形態としては、例えば、溶液が挙げられる。
上記ポリマー(A)を溶液として使用する場合に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの溶媒のなかでは、取り扱い性が容易であることから、水が好ましい。なお、上記溶液の濃度は、特に限定がない。
本発明において、上記ポリマー(A)を、例えば、上記ポリマー(A)と水との混合物(例えば、水溶液、エマルジョン)として使用することができる。
【0041】
<(メタ)アクリル粒子およびポリマー(A)の合計含有量>
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子および上記ポリマー(A)の合計含有量は、プライマー組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である。
上記合計含有量は、接着性および/または耐水性により優れるという観点から、プライマー組成物の総質量に対して、25質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、上記(メタ)アクリル粒子の含有量は、上記第3級アミン類(C)の量を含まない。
【0042】
(カルボジイミド基/B3)
上記(メタ)アクリル系ポリマー(B)における(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対する上記ポリマー(A)が有するカルボジイミド基のモル比(カルボジイミド基/B3)は、接着性および/または耐水性により優れるという観点から、0.01~0.8であることが好ましく、0.1~0.8であることがより好ましく、0.1~0.6であることが更に好ましく、0.2~0.6であることが特に好ましい。
なお、上記繰り返し単位(B3)は1個あたり、1個の、カルボキシ基(-COOH)又はイオン化されたカルボキシ基(-COO-)を有することができる。
【0043】
〔添加剤〕
本発明のプライマー組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョン以外のエマルジョン、充填剤、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、難燃剤、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、有機溶剤などが挙げられる。
【0044】
〔製造方法〕
本発明のプライマー組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョンおよび上記ポリマー(A)、ならびに、任意成分を混合する方法が挙げられる。本発明のプライマー組成物を製造する際、組成物に更に水を添加してもよい。
【0045】
〔用途〕
本発明のプライマー組成物は、下地と防水材とを密着させるプライマー組成物として使用することができる。
防水材としては、例えば、シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系防水材が挙げられる。なかでも、ウレタン防水材、特に、建築用ウレタン防水材に好適に用いることができる。
また、下地としては、例えば、無機系硬質素材が挙げられ、具体的には例えば、モルタル、ガラス、シリコーンハードコート、セラミック、コンクリート、磁器、金属などが挙げられる。
【0046】
〔使用方法〕
本発明のプライマー組成物を用いて下地と防水材とを密着させる方法としては、例えば、まず、本発明のプライマー組成物を下地に塗布し、20~28℃の条件下で乾燥させる。本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、その中に水が残留していても、下地と防水材との密着性に優れるので、本発明のプライマー組成物を使用する場合、その乾燥時間を短くすることができる。また、プライマーの乾燥時間は25~40分とすることができる。
次に、乾燥後の下地の上に、防水材を設ける。防水材が液状である場合は防水材を上記乾燥後の下地の上に流し込み、防水材がシート状である場合はシートを上記乾燥後の下地の上に敷いて、その後、例えば、25℃、45%RHの条件下で3~7日間養生させることによって、下地と防水材とを密着させることができる。
【実施例
【0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
〔(メタ)アクリル系ポリマーの調製〕
下記第1表に示す、第3級アミン類(C)以外の各成分を同表に示す量(モル比)で有機溶媒(MEK)中に添加し、撹拌機で混合しながら80℃の条件下でラジカル重合させ、反応開始から5時間後に重合を停止し、各(メタ)アクリル系ポリマーを調製した。
【0049】
【表1】
【0050】
下記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
<モノマー(b1)>
・MMA:メチルメタクリレート
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
<モノマー(b2)>
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
<モノマー(b3)>
・MMA:メタクリル酸
<モノマー(b4)>
・KBE-502:γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業社製)
【0051】
<重合開始剤>
・AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
【0052】
<第3級アミン類(C)>
・TEA:トリエチルアミン
【0053】
〔実施例1~8および比較例1~4〕
上記のとおり調製された各(メタ)アクリル系ポリマーと、上記第1表中の第3級アミン類(C)と、蒸留水とを混合して、各(メタ)アクリル系ポリマーにおいて繰り返し単位(B3)が有するカルボキシ基を第3級アミン(C)でイオン化し、各(メタ)アクリル系エマルジョンを調製した。上記各(メタ)アクリル粒子の含有量を上記各エマルジョン中の30質量%とした。
次に、上記のとおり調製された各(メタ)アクリル系エマルジョンと、ポリマー(A)とを下記第2表に示す組成(質量比)で混合し、プライマー組成物を調製した。
なお、第2表の「(メタ)アクリル系ポリマー(B)」の「BB1」欄の数値は、イオン化された(メタ)アクリル系ポリマー(BB1)を含む(メタ)アクリル系エマルジョンとしての使用量を意味する。「BB2」~「BB6」も同様である。
また、第2表において、「ポリマー(A)」の「A1」欄の数値は、ポリマー(A1)を含む水系組成物としての使用量を意味する。「ポリマー(A)」の「A2」欄も同様である。
第2表において、「A1のカルボジイミド基/B3(MMA)」欄の数値は、各(メタ)アクリル系ポリマー(B)における(メタ)アクリル酸モノマー(b3)に由来する繰り返し単位(B3)に対するポリマー(A1)が有するカルボジイミド基のモル比を意味する。「A2のカルボジイミド基/B3(MMA)」欄の数値も同様である。
また、第2表の「(B)および(A)の合計含有量」欄の値は、組成物の総質量(組成物全体)に対する、(メタ)アクリル粒子およびポリマー(A)の合計含有量(質量%)を意味する。
【0054】
〔評価〕
<試験片の調製>
各プライマー組成物を、被着体であるモルタル(縦50mm×横50mm、パルテック社製)上に、刷毛を用いて、80g(各プライマー組成物の固形分量として)/m2の膜厚となるように塗布し、25℃で3時間乾燥させてプライマー層とした。
次に、上記プライマー層の上にウレタン防水材(商品名ハマタイト アーバンルーフ NX、横浜ゴム株式会社製、ウレタン防水材)を厚さ3mmとなるように流し込み、25℃、45%相対湿度の条件下で7日間ウレタン防水材を硬化させ、試験片を得た。
【0055】
<常態試験(接着性)>
(常態剥離試験)
試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、試験片からウレタン防水材をモルタルに対して90°の角度で剥離する常態剥離試験を行った。
【0056】
(常態剥離試験の評価結果)
上記剥離試験後の接着界面の破壊状態を目視で確認した。
接着界面の破壊状態について、「CF」はプライマー層の凝集破壊を意味する。
また、評価結果の表示において、「CF」の後の数値は、上記各試験片のウレタン防水材の接着面全体に対して、上記CF(プライマー層の凝集破壊)が占める面積の百分率(%)を意味する。
上記常態剥離試験の結果を下記の評価基準(I~VI)で評価した。結果を下記第2表に示す。
本発明において、常態剥離試験の結果が「III」以上であった場合、接着性(詳細には常態接着性。以下同様)に優れるものとする。
【0057】
(常態剥離試験の評価基準)
試験後の接着界面の破壊状態がCF90~100%であった場合、接着性に非常に優れると評価してこれを「I」と表示した。
CF80~89%であった場合、接着性に優れると評価してこれを「II」と表示した。
CF70~79%であった場合、接着性がやや優れると評価してこれを「III」と表示した。
CF60~69%であった場合、接着性がやや劣ると評価してこれを「IV」と表示した。
CF50~59%であった場合、接着性が劣ると評価してこれを「V」と表示した。
CF49%以下であった場合、接着性が非常に劣ると評価してこれを「VI」と表示した。
【0058】
<耐水試験(耐水性)>
(耐水剥離試験)
試験片を25℃の水に1週間浸漬させた後、水中から取り出した。
次いで、試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、試験片からウレタン防水材をモルタルに対して90℃の角度で剥離する耐水剥離試験を行った。
【0059】
(耐水剥離試験の評価結果)
上記剥離試験後の接着界面の破壊状態を目視で確認した。
接着界面の破壊状態について、「CF」はプライマー層の凝集破壊を意味する。
また、評価結果の表示において、「CF」の後の数値は、上記各試験片のウレタン防水材の接着面全体に対して、上記CF(プライマー層の凝集破壊)が占める面積の百分率(%)を意味する。
【0060】
(耐水剥離試験の評価基準)
上記耐水剥離試験の結果を上記の常態剥離試験の評価基準(I~VI)と同様の評価基準で評価した。結果を下記第2表に示す。
本発明において、耐水剥離試験の結果が「V」以上であった場合、耐水性(詳細には耐水接着性。)に優れるものとする。
【0061】
【表2】
【0062】
上記第2表に示す各成分の詳は以下のとおりである。
<(メタ)アクリル系ポリマー(B)>
・BB1~BB6:上記のとおり調製された、(メタ)アクリル系ポリマー(BB1)~(BB6)をそれぞれ含む(メタ)アクリル系エマルジョン
【0063】
<ポリマー(A)>
・A1:ポリカルボジイミド樹脂に親水性セグメントを付与させた水溶性化合物を含む水溶液。日清紡ケミカル社製、カルボジライトV-04。有効成分(上記水溶性化合物)の濃度40質量%。NCN当量(カルボジイミド基1molあたりの化学式量)335(g/カルボジイミド基1モル)。
・A2:ポリカルボジイミド樹脂に親水性セグメントを付与させた化合物を含むエマルジョン。日清紡ケミカル社製、カルボジライトE-05。有効成分(上記水溶性化合物)の濃度40質量%。NCN当量(カルボジイミド基1molあたりの化学式量)310(g/カルボジイミド基1モル)。
【0064】
・比較ポリマー(D):東亜合成製 ARUFON US-6100。1分子中にトリアルコキシシリル基を0.2個有するポリ(メタ)アクリレート。比較ポリマー(D)は、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を有さない。比較ポリマー(D)は、カルボジイミド基を有さない。
【0065】
上記第2表に示す結果から明らかなように、(メタ)アクリル系ポリマー(B)がヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(b2)に由来する繰り返し単位(B2)を有さない場合、接着性および耐水性が劣ることが分かった(比較例1)。
また、(メタ)アクリル系ポリマー(B)が加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有重合性モノマー(b4)に由来する繰り返し単位(B4)を有さない場合、耐水性が劣ることが分かった(比較例2)。
所定のポリマー(A)を含有しない場合、耐水性が劣ることが分かった(比較例3)。
所定のポリマー(A)を含有せず、代わりに、カルボジイミド基を有さない比較ポリマー(D)を含有する場合、接着性が劣ることが分かった(比較例4)。
【0066】
これに対し、本発明の組成物は、接着性および耐水性がいずれも良好となることが分かった(実施例1~8)。