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特許7539041生コンクリートの製造方法、および、生コンクリートの製造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】生コンクリートの製造方法、および、生コンクリートの製造設備
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/24 20060101AFI20240816BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240816BHJP
   B28C 7/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N33/24 C
G01N33/38
B28C7/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021060415
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156623
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮薗 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】中西 縁
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-239907(JP,A)
【文献】特開2008-212777(JP,A)
【文献】渡会正典,骨材粒径がフレッシュモルタルおよびコンクリートの性質に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,2012年,vol.34 No.1,1210-1215
【文献】古川雄太,細骨材の特性評価とモルタルの流動性に及ぼす各種要因の検討,コンクリート工学年次論文集,2009年,vol.31 No.1,85-90
【文献】杉浦一郎,砂の堆積のみ都度と充填法について,応用物理,第17巻 第6号,1948年,24-28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
G01N 33/38
B28C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートの製造設備を用いた生コンクリートの製造方法であって、
前記製造設備は、骨材を貯蔵する骨材貯蔵部と、骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入孔とを備えており、
骨材貯蔵部の内壁面から骨材貯蔵部内の一カ所に向かうに従って骨材の上面の高さが高くなるように骨材投入孔から骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入工程と、
該骨材投入工程後の骨材の上面と骨材貯蔵部の内壁面とが接する第一測定位置の骨材貯蔵部における開口部を形成する上端部からの垂直方向の距離と、骨材の上面における最も高い位置へ向かって第一測定位置から離れた第二測定位置の骨材貯蔵部における開口部を形成する上端部からの垂直方向の距離とを測定する距離測定工程と、
距離距離との差Hに基づいて骨材の実積率を推定する実積率推定工程と、
を備える生コンクリートの製造方法。
【請求項2】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(1)を満たす、
請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。

間隔D>0.1β・・・(1)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項3】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(2)を満たす、
請求項1に記載の生コンクリートの製造方法。

間隔D≧0.25β・・・(2)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項4】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(3)を満たす、
請求項2または3に記載の生コンクリートの製造方法。

間隔D≦L1・・・(3)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))
【請求項5】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(4)を満たす、
請求項2または3に記載の生コンクリートの製造方法。

間隔D≦L2-0.1β・・・(4)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項6】
骨材貯蔵部へ骨材が投入される毎に、距離測定工程および実積率推定工程を行う、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の生コンクリートの製造方法。
【請求項7】
セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートの製造設備であって、
骨材を貯蔵する骨材貯蔵部と、
骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入孔と、
骨材投入孔から骨材貯蔵部へ骨材が投入されて骨材貯蔵部の内壁面から骨材貯蔵部内の一カ所に向かうに従って骨材の上面の高さが高くなるように骨材の上面が形成された状態で、骨材の上面と骨材貯蔵部の内壁面との接する第一測定位置の骨材貯蔵部における開口部を形成する上端部からの垂直方向の距離と、骨材の上面における最も高い位置へ向かって第一測定位置から離れた第二測定位置の骨材貯蔵部における開口部を形成する上端部からの垂直方向の距離とを測定する距離測定部と、
距離距離との差Hに基づいて骨材の実積率を推定する実積率推定部と、
を備える、
生コンクリートの製造設備。
【請求項8】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(1)を満たす、
請求項7に記載の生コンクリートの製造設備。

間隔D>0.1β・・・(1)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項9】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(2)を満たす、
請求項7に記載の生コンクリートの製造設備。

間隔D≧0.25β・・・(2)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項10】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(3)を満たす、
請求項8または9に記載の生コンクリートの製造設備。

間隔D≦L1・・・(3)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))
【請求項11】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(4)を満たす、
請求項8または9に記載の生コンクリートの製造設備。

間隔D≦L2-0.1β・・・(4)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))
【請求項12】
距離測定部は、骨材貯蔵部へ骨材が投入される毎に、距離および距離を測定するように構成されており、
実積率推定部は、距離測定部で距離および距離の測定が行われる毎に実積率を推定するように構成される、
請求項7乃至11の何れか一項に記載の生コンクリートの製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートの製造方法、および、生コンクリートの製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートは、セメントと、骨材として細骨材および粗骨材と、水とが混練されて製造される。斯かる生コンクリートを製造する際には、生コンクリートが所定の性能を有するように、各材料を適切な比率で配合する必要がある。ここで、骨材の物性値は、生コンクリートの配合に影響を及ぼすものであり、特に、骨材の実積率は、生コンクリートの配合(換言すれば、生コンクリートの性能)に与える影響は大きい。特許文献1には、骨材の実積率に基づいて生コンクリートの性能を評価する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-357598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、骨材の実積率は、「JIS A 1104:2019 骨材の単位容積質量及び実積率試験方法」に従って求めることができる。斯かる試験方法では、専用の容器に所定の手順で骨材を詰めた際に得られる骨材の単位容積質量と、骨材密度と、骨材の吸水率とに基づいて実積率を算出する。また、生コンクリートの製造を行う際には、「JIS Q 1011:2019 適合性評価-日本工業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート)」に従い、1週間に1回以上の頻度で、骨材サイロや抽出ベルトコンベアから試料を採取して骨材の実積率を求めるのが通常である。
【0005】
しかしながら、生コンクリートの製造を行う際に、上記のような方法および頻度で骨材の実積率を把握する作業は、多大な手間を要するものであるため、より簡易に骨材の実積率を把握できる方法が要求されている。
【0006】
そこで、本発明は、より簡易に骨材の実積率を把握できる生コンクリートの製造方法、および、生コンクリートの製造設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生コンクリートの製造方法は、
セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートの製造設備を用いた生コンクリートの製造方法であって、
前記製造設備は、骨材を貯蔵する骨材貯蔵部と、骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入孔とを備えており、
骨材貯蔵部の内壁面から骨材貯蔵部内の一カ所に向かうに従って骨材の上面の高さが高くなるように骨材投入孔から骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入工程と、
該骨材投入工程後の骨材の上面と骨材貯蔵部の内壁面とが接する第一測定位置の高さYと、骨材の上面における最も高い位置へ向かって第一測定位置から離れた第二測定位置の高さYとを測定する高さ測定工程と、
高さYと高さYとの差Hに基づいて骨材の実積率を推定する実積率推定工程と、
を備える。
【0008】
斯かる構成によれば、骨材の実積率を簡易に把握することができる。具体的には、高さ測定工程で測定される高さYと高さYとの差H(以下では、「高低差H」とも記す)は、「JIS A 1104:2019」に従って求められる実積率(以下では、「基準実積率」とも記す)と、比較的高い相関関係を有することを見出した。このため、実積率推定工程を行うことで、高低差Hに基づいて基準実積率に比較的近い実積率の推定値を求めることができる。これにより、骨材の実積率を簡易に把握することができる。
【0009】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(1)を満たしてもよい。

間隔D>0.1β・・・(1)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【0010】
また、骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(2)を満たしてもよい。

間隔D≧0.25β・・・(2)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【0011】
さらに、骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(3)を満たしてもよい。

間隔D≦L1・・・(3)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))
【0012】
また、骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(4)を満たしてもよい。

間隔D≦L2-0.1β・・・(4)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))
【0013】
上記の各構成によれば、上記の各式のうち少なくとも1つを満たす間隔Dを空けた位置で高さYを測定することになる。これにより、高低差Hと基準実積率との相関関係がより高いものとなる。このため、高低差Hに基づいて、基準実積率により近い実積率の推定値を求めることができる。
【0014】
骨材貯蔵部へ骨材が投入される毎に、高さ測定工程および実積率推定工程を行うことが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、骨材貯蔵部へ骨材が投入される毎に、高さ測定工程および実積率推定工程を行うことで、基準実積率の異なる骨材が骨材貯蔵部へ投入されても、投入された骨材毎に実積率の推定値を得ることができる。これにより、骨材貯蔵部内の骨材の基準実積率と、生コンクリートの配合を決定する際に使用する骨材の実積率の推定値との間に大きな乖離が生じるのを防止することができる。このため、生コンクリートの配合をより適切に行うことができる。
【0016】
本発明に係る生コンクリートの製造設備は、
セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートの製造設備であって、
骨材を貯蔵する骨材貯蔵部と、
骨材貯蔵部へ骨材を投入する骨材投入孔と、
骨材投入孔から骨材貯蔵部へ骨材が投入されて骨材貯蔵部の内壁面から骨材貯蔵部内の一カ所に向かうに従って骨材の上面の高さが高くなるように骨材の上面が形成された状態で、骨材の上面と骨材貯蔵部の内壁面との接する第一測定位置の高さYと、骨材の上面における最も高い位置へ向かって第一測定位置から離れた第二測定位置の高さYとを測定する高さ測定部と、
高さYと高さYとの差Hに基づいて骨材の実積率を推定する実積率推定部と、
を備える。
【0017】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(1)を満たしてもよい。

間隔D>0.1β・・・(1)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【0018】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(2)を満たしてもよい。

間隔D≧0.25β・・・(2)
(β:骨材の最大寸法(mm))
【0019】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(3)を満たしてもよい。

間隔D≦L1・・・(3)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))
【0020】
骨材貯蔵部の内壁面と第二測定位置との水平方向の間隔D(cm)は、下記の式(4)を満たしてもよい。

間隔D≦L2-0.1β・・・(4)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))
【0021】
高さ測定部は、骨材貯蔵部へ骨材が投入される毎に、高さYおよび高さYを測定するように構成されることが好ましく、実積率推定部は、高さ測定部で高さYおよび高さYの測定が行われる毎に実積率を推定するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、より簡易に骨材の実積率を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る生コンクリートの製造設備の概略図。
図2】同実施形態に係る生コンクリートの製造設備を構成する骨材貯蔵部および骨材供給部の概略図。
図3】実施例の試験で使用した容器および骨材投入器の概略図。
図4】実施例の試験例1~6における高低差H’と基準実積率との関係を示した散布図。
図5】実施例の試験例7~12における高低差H’と基準実積率との関係を示した散布図。
図6】実施例の試験例13~18における高低差H’と基準実積率との関係を示した散布図。
図7】実施例の試験例19~25における高低差H’と基準実積率との関係を示した散布図。
図8】実施例の試験例26~32における高低差H’と基準実積率との関係を示した散布図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
本実施形態に係る生コンクリートの製造方法は、セメントと、骨材として粗骨材および細骨材と、水とを含む生コンクリートを製造するものである。また、本実施形態に係る生コンクリートの製造方法では、図1に示すように、生コンクリートの製造設備(以下では、単に「製造設備」とも記す)1を用いる。
【0026】
斯かる製造設備1は、骨材を貯蔵する骨材貯蔵部2を備える。骨材貯蔵部2に貯蔵される骨材としては、粗骨材であってもよく、細骨材であってもよい。本実施形態では、製造設備1は、骨材貯蔵部2として、粗骨材を貯蔵する粗骨材貯蔵部2aと、細骨材を貯蔵する細骨材貯蔵部2bとを備える。骨材貯蔵部2(本実施形態では、粗骨材貯蔵部2aおよび細骨材貯蔵部2b)は、後述する計量部5へ骨材(本実施形態では、粗骨材または細骨材)を供給可能に構成される。
【0027】
また、製造設備1は、セメントを貯蔵するセメント貯蔵部3と、水を貯蔵する水貯蔵部4とを備える。さらに、製造設備1は、骨材貯蔵部2、セメント貯蔵部3、および、水貯蔵部4のそれぞれから供給される骨材、セメント、および、水のそれぞれを計量する計量部5~7を備える。また、製造設備1は、計量部5~7から供給される骨材、セメント、および、水を混練して生コンクリートを形成する混練部8を備える。さらに、製造設備1は、骨材貯蔵部2へ骨材を供給する骨材供給部9を備える。該骨材供給部9は、骨材貯蔵部2へ骨材を投入する骨材投入孔9aを備える。骨材貯蔵部2としては、特に限定されず、例えば、骨材の貯蔵量が10m~30mであるものが挙げられる。また、骨材貯蔵部2の内部空間の形状としては、特に限定されず、例えば、高さ方向に交差する断面が四角形状であってもよく、円形状であってもよい。内部空間が四角形状である場合には、内部空間のサイズは、例えば、1.5m~4m×1.5m~4m×高さ3m~7mであってもよい。骨材投入孔9aの形状としては、特に限定されず、例えば、四角形状であってもよく、円形状であってもよい。骨材投入孔9aが四角形状である場合には、骨材投入孔9aのサイズは、例えば、0.1m~0.9m×0.1m~0.9mであってもよい。
【0028】
本実施形態に係る生コンクリートの製造方法は、骨材投入孔9aから骨材貯蔵部2(具体的には、骨材を貯蔵する貯蔵空間)へ骨材を投入する骨材投入工程を備える。該骨材投入工程では、図2に示すように、骨材貯蔵部2の内壁面(貯蔵空間を形成する内壁面)から骨材貯蔵部2内の一カ所に向かうに従って骨材Aの上面(以下では、「骨材上面」とも記す)A1の高さが高くなるように骨材Aを投入する。
【0029】
また、本実施形態に係る生コンクリートの製造方法は、骨材投入工程後、骨材上面A1の高さを測定する高さ測定工程を備える。該高さ測定工程では、骨材上面A1と骨材貯蔵部2の内壁面とが接する第一測定位置B1の高さYを測定する。また、高さ測定工程では、骨材上面A1における最も高い位置に向かって第一測定位置B1から離れた第二測定位置B2の高さYを測定する。高さ測定工程では、高さYの測定を先に行ってもよく、高さYの測定を先に行ってもよい。また、第二測定位置B2は、第一測定位置B1と骨材上面A1の最も高い位置とを結ぶ直線上に位置することが好ましい。また、高さ測定工程は、骨材貯蔵部2へ骨材が投入される毎(骨材投入工程を行う毎)に行うことが好ましい。
【0030】
高さYおよび高さYは、基準となる一つの高さ位置(以下では、「基準高さ位置」とも記す)から第一測定位置B1および第二測定位置B2それぞれまでの垂直方向の距離である。基準高さ位置としては、例えば、図2に示すように、骨材貯蔵部2における内壁面の上端部の所定位置とすることができる。または、基準高さ位置としては、例えば、骨材上面A1の最も高い部分よりも上であれば前記内壁面の上端部よりも下側の所定位置(図示せず)であってもよく、骨材貯蔵部2における底面の所定位置(図示せず)であってもよい。また、高さYおよび高さYは、骨材上面A1の外周まわりに間隔を空けた複数個所で測定した平均値であることが好ましい。
【0031】
また、骨材貯蔵部2の内壁面と第二測定位置B2との水平方向の間隔D(cm)としては、例えば、下記式(1)を満たしてもよく、下記式(2)を満たしてもよく、下記式(3)を満たしてもよく、下記式(4)を満たしてもよく、下記式(5)を満たしてもよく、下記式(6)を満たしてもよく、下記式(7)を満たしてもよい。なお、骨材の最大寸法は、JIS A 1102(骨材のふるい分け試験方法)に従って試験を行い、質量で骨材の90%以上が通るふるいのうち、最小寸法の呼び寸法で示される骨材の寸法である。

間隔D>0.1β・・・(1)
(β:骨材の最大寸法(mm))

間隔D≧0.25β・・・(2)
(β:骨材の最大寸法(mm))

間隔D≦L1・・・(3)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))

間隔D≦L2-0.1β・・・(4)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))

間隔D≦0.5L1・・・(5)
(L1:骨材貯蔵部の中央部と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))

間隔D≦L2・・・(6)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm))

間隔D≦L2-0.25β・・・(7)
(L2:骨材貯蔵部における骨材投入孔の直下の領域と骨材貯蔵部の内壁面との間の水平方向の最短距離(cm)、β:骨材の最大寸法(mm))
【0032】
本実施形態に係る製造設備1は、上記の高さ測定工程を行う高さ測定部(図示せず)を備える。高さ測定部は、骨材貯蔵部2へ骨材が投入される毎(骨材投入工程を行う毎)に、高さ測定工程を自動的に行うように構成することが好ましい。このように、高さ測定部によって高さ測定工程を自動的に行うことで、高さ測定工程を作業員が行う場合よりも高さ測定工程を省力化することができる。また、高さ測定部は、測定した高さYおよび高さYを、後述の実積率推定部へ自動的に送信する送信装置(図示せず)を備えることが好ましい。高さ測定部としては、特に限定されず、例えば、サウジングレベル計、超音波式レベル計、レーダーレベル計等を用いることができる。
【0033】
また、本実施形態に係る生コンクリートの製造方法は、高さYと高さYと差H(以下では、「高低差H」とも記す)に基づいて骨材の実積率を推定する実積率推定工程を備える。実積率推定工程は、高さ測定工程を行う毎に行うことが好ましい。
【0034】
実積率推定工程は、「JIS A 1104:2019 骨材の単位容積質量及び実積率試験方法」に従って求められる実積率(以下では、「基準実積率」とも記す)と、高低差Hとの間に相関関係あることに基づいて行われる。このため、一の骨材について基準実積率と高低差Hとを求めた場合、斯かる一の骨材で求めた高低差Hと他の骨材(一の骨材と同種の骨材)で求めた高低差Hとが同等であれば、一の骨材で求めた基準実積率の数値を他の骨材の実積率の推定値とすることができる。または、基準実積率が異なる複数の骨材のそれぞれについて、高低差Hを求めると共に、基準実積率と高低差Hとの相関関係を示す散布図、および/または、基準実積率と高低差Hとの相関関係を示す式を作成する。そして、斯かるグラフおよび/または式と、基準実積率が未知である骨材の高低差Hとに基づいて、基準実積率が未知である骨材の実積率の推定値を求めることができる。なお、基準実積率と高低差Hとの相関関係は、後述の実施例に記載の方法で確認することができる。
【0035】
本実施形態に係る製造設備1は、上記の実積率推定工程を行う実積率推定部(図示せず)を備える。実積率推定部は、高さ測定工程が行われる毎に自動的に実積率推定工程を行うように構成することが好ましい。また、実積率推定部は、高さ測定部で測定された高さYおよび高さYを受信する受信部と、高低差Hを算出する算出部と、高低差Hと基準実積率との相関関係から実積率の推定値を導きだす推定値導出部とを備えることが好ましい。実積率推定部としては、コンピューター等を用いることができる。
【0036】
上記のように、実積率推定工程で得られる実積率の推定値は、生コンクリートの配合を設定する際に用いることができる。つまり、本実施形態に係る生コンクリートの製造方法は、実積率推定工程で得られる実積率の推定値に基づいて生コンクリートの配合を設定する配合設定工程を備えてもよい。
【0037】
また、上記のような、骨材投入工程、高さ測定工程、および、実積率推定工程を行うことで実積率の推定を行う骨材としては、粗骨材であってもよく、細骨材であってもよく、粗骨材および細骨材であってもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る生コンクリートの製造方法および生コンクリートの製造設備によれば、より簡易に骨材の実積率を把握できる。
【0039】
即ち、高低差Hは、基準実積率と、比較的高い相関関係を有するため、実積率推定工程を行うことで、高低差Hに基づいて基準実積率に比較的近い実積率の推定値を求めることができる。これにより、骨材の実積率を簡易に把握することができる。
【0040】
また、骨材貯蔵部2の内壁面から、上記の式(1)~(7)の少なくとも1つを満たす間隔Dを空けた位置で高さYを測定することで、高低差Hが基準実積率とより高い相関関係を有するものとなる。このため、斯かる高低差Hに基づいて、基準実積率により近い実積率の推定値を求めることができる。
【0041】
なお、本発明に係る生コンクリートの製造方法および生コンクリートの製造設備は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、更に、他の各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【実施例
【0042】
以下、試験例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の試験例に限定されるものではない。
【0043】
<使用材料・使用設備>
・基準実積率が異なる粗骨材A(最大寸法:20mm)を12種類
・円筒状の内壁面を有する容器2’(内壁面の直径L’が40cmであって容積が38,000cmであるもの、内壁面の直径L’が80cmであって容積が150,000cmであるもの)
・各容器へ粗骨材を投入する投入器9’(骨材投入孔9a’の直径α’が5cmであるもの、骨材投入孔9a’の直径α’が10cmであるもの)
【0044】
<高さの測定>
図3に示すように、上記の容器2’の内壁面の中心と、骨材投入孔9a’の中心とが上下方向で重なるように、容器2’と投入器9’とを設置した。また、骨材投入孔9a’の高さは、容器2’の下縁から40cmの高さとした。そして、骨材投入孔9a’から容器2’へ粗骨材A(投入量:25kg)を投入した。この際、容器2’に投入した粗骨材Aの上面A1は、容器2’の内壁面から容器2’の中心部に向かって高さが高くなるように形成された。
【0045】
次に、粗骨材Aの上面A1と容器2’の内壁面とが接する第一測定位置B1’(上記実施形態の第一測定位置B1に相当する位置)の高さY’(上記実施形態の高さYに相当する高さ)を測定した。
また、粗骨材Aの上面A1における最も高い位置に向かって第一測定位置B1’から離れた第二測定位置B2’(上記実施形態の第二測定位置B2に相当する位置)の高さY’(上記実施形態の高さYに相当する高さ)を測定した。なお、高さY’および高さY’は、容器2’における開口部を形成する上端部から第一測定位置B1’および第二測定位置B2’それぞれまでの垂直方向の距離である。
そして、高さY’と高さY’との差である高低差H’(上記実施形態の高低差Hに相当する数値)を算出した。
容器2’の内壁面と第二測定位置B2’との水平方向の距離D’(上記実施形態の間隔Dに相当する距離)、粗骨材の基準実積率、および、高低差H’については、下記表1~6に示す。
【0046】
次に、各粗骨材について、基準実積率に対する高低差H’の散布図を作成した。そして、斯かる散布図から基準実積率と高低差H’との相関関係を示すR(決定係数)を求めた。Rについては下記表1~6に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
表6に示すRの数値から、基準実積率と高低差H’との間に相関関係があることを確認することができる。このため、実際の生コンクリートの製造設備において、上記実施形態のように高さYと高さYとを測定し、高さYと高さYとの差である高低差Hを算出することで、該高低差Hに基づいて骨材の実積率を推定することができる。
【0054】
また、表6を見ると、D’>0.1β(好ましくは0.25β≦D’≦0.5L’、さらに好ましくは0.25L’≦D’≦0.5L’、さらに好ましくは0.25L’≦D’<0.5L’)であることで、基準実積率と高低差H’との間に良好な相関関係が認められる。このため、実際の生コンクリートの製造設備において、上記実施形態のように、間隔Dを所定の範囲とすることで、より正確な実積率の推定値を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8