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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】アシロキシシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20240816BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
C07F7/18 K
C07F7/18 P
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020164434
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056597
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】吉永 充代
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218305(JP,A)
【文献】特表2005-518450(JP,A)
【文献】米国特許第02910496(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第01378514(EP,A1)
【文献】European Journal of Lipid Science and Technology,2015年,117,P.778-785
【文献】Chemistry of Heterocyclic Compounds,2018年,54(1),P.100-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)および(2)から選ばれる酸性触媒の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物に、カルボン酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-OCO結合(OCOは、オキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。)を有するアシロキシシランの製造方法。
(1)周期表で第3族~第15族元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩(ただし、トリフルオロメタンスルホン酸鉄を除く。)、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、もしくはチオシアン酸塩;塩化ルテニウム;塩化ガリウム;塩化スズ;塩化インジウム;臭化鉄;臭化ルテニウム;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン;トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;ノナフルオロブタンスルホン酸;ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル;過塩素酸;ヘキサフルオロアンチモン酸;またはチオシアン酸。
(2)ゼオライトおよびモンモリロナイトの少なくとも一方。
【請求項2】
前記(1)の酸性触媒が、第3族、第8族、および第13~第15族の元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩(ただし、トリフルオロメタンスルホン酸鉄を除く。)、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、またはヘキサフルオロアンチモン酸塩;塩化ルテニウム;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン;トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;ノナフルオロブタンスルホン酸;ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル;から選ばれる化合物である、請求項1に記載のアシロキシシランの製造方法。
【請求項3】
前記第3族、第8族、および第13~第15族の元素から選ばれる元素が、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、イッテルビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、およびビスマスから選ばれる元素である、請求項2に記載のアシロキシシランの製造方法
【請求項4】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IA)、(IB)、または(IC)で表されるシロキサン化合物である、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
Si-O-SiR (IA)
【化1】

O(SiRO) (IC)
(式(IA)~(IC)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数である。)
【請求項5】
前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIA)または(IIB)で表されるカルボン酸無水物である、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
(RCO)O (IIA)
【化2】

(式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【請求項6】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIA)で表されるアシロキシシランである、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
Si-O-SiR (IA)
(RCO)O (IIA)
Si(OCOR) (IIIA)
(式(IA)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIA)中、R~Rは、式(IA)中のR~Rと同様に定義され、Rは、式(IIA)中のRと同様に定義される。)
【請求項7】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIB)で表されるアシロキシシランである、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
【化3】

(RCO)O (IIA)
CO(SiRO)COR (IIIB)
(式(IB)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;mは、2以上10000以下の整数である。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIB)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;pは、1~100の整数である。)
【請求項8】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIC)で表されるアシロキシシランである、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
O(SiRO) (IC)
(RCO)O (IIA)
CO(SiRO)COR (IIIC)
(式(IC)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;nは、2以上10000以下の整数である。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIC)中、RおよびRは、式(IC)中のおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;qは、1~100の整数である。)
【請求項9】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIID)で表されるアシロキシシランである、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

(式(IB)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;mは、2以上10000以下の整数である。
式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIID)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され;r1は、1~100の整数であり;r2は、1以上r1以下の整数である。)
【請求項10】
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIE)で表されるアシロキシシランである、請求項1~の何れか1項に記載のアシロキシシランの製造方法。
O(SiRO) (IC)
【化7】

【化8】

(式(IC)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;nは、2以上10000以下の整数である。
式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIE)中、RおよびRは、式(IC)中のおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され;s1は、1~100の整数であり;s2は、1以上s1以下の整数である。)
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の製造方法によりアシロキシシランを製造するアシロキシシラン製造工程、および
前記アシロキシシランに下記一般式(IV)で表されるアルコールを反応させ、前記アシロキシシランのアシロキシ基をアルコキシ基に変換する修飾工程
を含む、アルコキシシランの製造方法。
10OH (IV)
(式中、R10は、炭素数1~6のアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシロキシシランの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アシロキシシラン類は、医薬、農薬、電子材料等の精密合成用試薬またはその合成中間体として利用される他、表面修飾剤、ゾル・ゲル材料、ナノ材料、有機無機ハイブリッド材料等の原料等として利用される機能性化学品である。
アシロキシシラン類の製造方法として、クロロシランを原料とする方法が知られている。具体的には、(A)クロロシランとカルボン酸を直接あるいは塩基存在下で反応させる方法(特許文献1、2)、(B)クロロシランとカルボン酸金属塩を反応させる方法(特許文献3)、(C)クロロシランとカルボン酸無水物を反応させる方法(特許文献4)等が検討されている。
一方、原料としてSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物を用いる方法として、(D)ジシロキサンとカルボン酸無水物を、塩化亜鉛(II)の存在下(非特許文献1)、またはトリフルオロメタンスルホン酸またはアンバーリスト15の存在下で(特許文献5)、反応させる方法が報告されている。また、環状シロキサン化合物のオクタメチルシクロテトラシロキサンと無水酢酸を、硫酸の存在下で反応させる例(特許文献6)、および塩化亜鉛(II)または塩化鉄(III)の存在下で反応させる例が報告されている(非特許文献2)。
【0003】
しかし、クロロシランを原料とする方法では、(1)加水分解により腐食性の塩化水素を発生するクロロシランを使用するため、原料の取り扱いが容易でない(方法A、B)、(2)カルボン酸との反応で塩基を使用しない場合、腐食性の塩化水素が副生する(方法A)、(3)カルボン酸との反応で塩基を使用する場合、大量の塩が副生する(方法A)、(4)カルボン酸金属塩との反応でも大量の塩が副生する(方法B)、(5)カルボン酸無水物との反応では、加水分解しやすく腐食性の塩化水素を発生しやすいアシル塩化物が副生する(方法C)等の問題点があった。
一方、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物を原料とする方法(方法D)では、腐食性の塩化水素の発生等の問題はなく、原子利用効率が100%の反応のため、不要な共生成物の問題はないものの、触媒的に使用されていた従来の酸性化合物では効率が低いために、原料に対して大量の酸性化合物が必要であること(非特許文献1では、塩化亜鉛をヘキサメチルジシロキサンに対して20mol%;特許文献5では、トリフルオロメタンスルホン酸をヘキサメチルジシロキサンに対して10mol%;特許文献5では、アンバーリスト15を、ヘキサメチルジシロキサンに対して119質量%、無水酢酸に対して184質量%、など)、反応温度を130℃以上の高温とする必要があること(特許文献6では、140℃付近;非特許文献2では、150℃または250℃、など)、数時間から48時間などの長い反応時間が必要であること(特許文献5,6、非特許文献1,2)、などの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭54-103500号公報
【文献】欧州特許出願第0837067号明細書
【文献】米国特許第4379766号明細書
【文献】独国特許発明第882401号明細書
【文献】欧州特許出願第1378514号明細書
【文献】米国特許第2910496号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Compt. Rend., 246, p.952-954 (1958)
【文献】J. Organomet. Chem., 11, p.27-33 (1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、アシロキシシランを、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物から効率的に製造する方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物とカルボン酸無水物との反応が、特定の触媒存在下でスムーズに進行し、アシロキシシランが効率よく得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1>
下記(1)および(2)から選ばれる酸性触媒の存在下で、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物に、カルボン酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-OCO結合(OCOは、オキシカルボニル基のO-C(=O)を示す。)を有するアシロキシシランの製造方法。
(1)周期表で第3族~第15族元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、もしくはチオシアン酸塩;塩化ルテニウム;塩化ガリウム;塩化スズ;塩化インジウム;臭化鉄;臭化ルテニウム;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン;トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;ノナフルオロブタンスルホン酸;ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル;過塩素酸;ヘキサフルオロアンチモン酸;またはチオシアン酸。
(2)無機系の固体酸化合物。
<2>
前記(1)の酸性触媒が、第3族、第8族、および第13~第15族の元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、またはヘキサフルオロアンチモン酸塩;塩化ルテニウム;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン;トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;ノナフルオロブタンスルホン酸;ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル;から選ばれる化合物である、<1>に記載のアシロキシシランの製造方法。
<3>
前記第3族、第8族、および第13~第15族の元素から選ばれる元素が、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、イットリビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、およびビスマスから選ばれる元素である、<2>に記載のアシロキシシランの製造方法
<4>
前記(2)の酸性触媒が、ゼオライトおよびモンモリロナイトの少なくとも一方である、<1>~<3>の何れかに記載の製造方法。
<5>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IA)、(IB)、または(IC)で表されるシロキサン化合物である、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法

Si-O-SiR (IA)
【化1】

O(SiRO) (IC)
(式(IA)~(IC)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数である。)
<6>
前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIA)または(IIB)で表されるカルボン酸無水物である、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
(RCO)O (IIA)
【化2】

(式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
<7>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIA)で表されるアシロキシシランである、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
Si-O-SiR (IA)
(RCO)O (IIA)
Si(OCOR) (IIIA)
(式(IA)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIA)中、R~Rは、式(IA)中のR~Rと同様に定義され、Rは、式(IIA)中のRと同様に定義される。)
<8>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前
記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIB)で表されるアシロキシシランである、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
【化3】

(RCO)O (IIA)
CO(SiRO)COR (IIIB)
(式(IB)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;mは、2以上10000以下の整数である。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIB)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;pは、1~100の整数である。)
<9>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIC)で表されるアシロキシシランである、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
O(SiRO) (IC)
(RCO)O (IIA)
CO(SiRO)COR (IIIC)
(式(IC)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;nは、2以上10000以下の整数である。
式(IIA)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIC)中、RおよびRは、式(IC)中のおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;qは、1~100の整数である。)<10>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIID)で表されるアシロキシシランである、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

(式(IB)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;mは、2以上10000以下の整数である。
式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIID)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され;r1は、1~100の整数であり;r2は、1以上r1以下の整数である。)
<11>
前記シロキサン化合物が、下記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、下記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物であり、前記アシロキシシランが、下記一般式(IIIE)で表されるアシロキシシランである、<1>~<4>の何れかに記載のアシロキシシランの製造方法。
O(SiRO) (IC)
【化7】

【化8】

(式(IC)中、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;XおよびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子であり;nは、2以上10000以下の整数である。
式(IIB)中、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
式(IIIE)中、RおよびRは、式(IC)中のおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され;s1は、1~100の整数であり;s2は、1以上s1以下の整数である。)
<12>
<1>~<11>の何れかに記載の製造方法によりアシロキシシランを製造するアシロキシシラン製造工程、および
前記アシロキシシランに下記一般式(IV)で表されるアルコールを反応させ、前記アシロキシシランのアシロキシ基をアルコキシ基に変換する修飾工程
を含む、アルコキシシランの製造方法。
10OH (IV)
(式中、R10は、炭素数1~6のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いることにより、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物を原料として、アシロキシシランを、従来の方法に比べ、より効率的に製造できるという効果を有する。
【0010】
詳細には、本発明の製造方法の好適な態様では、次のような特徴を有する。
(1)原料および触媒が入手し易く、取り扱いが容易で安全性も高い。
(2)腐食性の塩化水素の発生等の問題はない。
(3)室温~90℃程度の温和な条件でも反応が進行する。
(4)触媒活性が高いため、少量の触媒量でも反応が進行する。
(5)固体触媒を使用する反応系では、触媒の分離、回収等も容易である。
(6)低分子のジシロキサンだけでなく、ポリシロキサンのような高分子でもスムーズに反応が進行する。
すなわち、本発明の製造方法の好適な態様においては、製造プロセスの低コスト化、高効率化を可能にするもので、従来技術に比べて経済性、環境負荷等の面で大きな利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特段の記載がない限り、本明細書中のある式中の記号が他の式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
本発明の一実施態様に係るアシロキシシランの製造方法は、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物を、酸性触媒の存在下で、カルボン酸無水物と反応させる反応工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本実施形態に係る製造方法において、原料として使用するSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」と称することがある。)は、たとえば、下記一般式(IA)~(IC)で表される。
Si-O-SiR (IA)
【0013】
【化9】
【0014】
O(SiRO) (IC)
これら式(IA)~(IC)中、R~Rは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。なお、本明細書において「反応に関与しない」とは、目的とする反応に反応物質として直接関与せず、また、当該反応を阻害または促進しないことを意味する。
およびXは、それぞれ独立にシリル基または水素原子である。
また、mおよびnは、それぞれ独立に2以上10000以下の整数である。
【0015】
~Rが炭素数1~24の炭化水素基である場合、炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
【0016】
炭化水素基がアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~10である。また、アルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0017】
反応に関与しない基としては、炭素数が1~6のアルコキシ基、炭素数が1~6のアルコキシカルボニル基、炭素数が1~6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、およびハロゲン原子をより具体的に示せば、それぞれ、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;およびフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、クロロメチル基、2-メトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-ジメチルアミノエチル基、3-シアノプロピル基、トリフルオロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
【0018】
また、炭化水素基がアリール基の場合、炭化水素環系または複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の場合、炭化水素環系の1価の芳香族有機
基の炭素数は、好ましくは6~22、より好ましくは6~14である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、複素環系の1価の芳香族有機基の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。アリール基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合に示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。それらの基等を有するアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,4-ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
【0019】
さらに、炭化水素基がアラルキル基の場合には、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~23、より好ましくは7~16である。また、アラルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基、9-アントリルメチル基、(4-クロロフェニル)メチル基、1-(4-メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
【0020】
また、炭化水素基がアルケニル基の場合には、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~23、より好ましくは2~20、さらに好ましくは2~10である。また、アルケニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、上記のアルキル基の場合について示したもの等の他、上記に示したアリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基、2-フェニルエテニル基、2-(メトキシフェニル)エテニル基、2-ナフチルエテニル基、2-アントリルエテニル基等が挙げられる。
【0021】
およびXがシリル基である場合、シリル基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、アリールジアルキルシリル基、アルケニルジアルキルシリル基、モノアルキルシリル基、トリアリールシリル基、ジアリールシリル基、モノアリールシリル基、トリアラルキルシリル基、ジアラルキルシリル基、モノアラルキルシリル基、トリアルケニルシリル基、ジアルケニルシリル基、モノアルケニルシリル基等を挙げることができる。これらのシリル基におけるアルキル基、アリール基、アラルキル基、およびアルケニル基としては、R~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0022】
mは、好ましくは3以上1000以下の整数、より好ましくは3以上200以下の整数、さらに好ましくは3以上50以下の整数、特に好ましくは3以上10以下の整数である。
また、nは、好ましくは3以上5000以下の整数、より好ましくは3以上3000以下の整数、さらに好ましくは3以上1000以下の整数、特に好ましくは3以上500以
下の整数である。
【0023】
したがって、それらの炭化水素基等を有する原料のSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
まず、一般式(IA)で表されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe)、ヘキサエチルジシロキサン(EtSiOSiEt)、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン(MePhSiOSiMePh)、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン(MePhSiOSiMePh)、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン(MeViSiOSiMeVi)、1,3-ビス(クロロメチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン((ClCH)MeSiOSiMe(CHCl))、1,3-ビス(3-シアノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン([NC(CH]MeSiOSiMe[(CHCN])等が挙げられる。
【0024】
また、一般式(IB)で表されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン((SiMeO))、オクタメチルシクロテトラシロキサン((SiMeO))、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン((SiMeViO))、デカメチルシクロペンタシロキサン((SiMeO))等が挙げられる。
【0025】
さらに、一般式(IC)で表されるシロキサン化合物としては、末端が、それぞれ独立にトリメチルシロキシ基またはヒドロキシ基である、ポリ(ジメチルシロキサン)(X1aO(SiMeO)2a;X1a、X2a=SiMeまたはH)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)(X1bO(SiMePhO)2b;X1b、X2b=SiMeまたはH)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)(X1cO(SiMeO)(SiPhO)2c;X1c、X2c=SiMeまたはH)等が挙げられる。
末端がトリメチルシリル基である、ポリ(ジメチルシロキサン)あるいはポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)としては、たとえば、KF-968あるいはKF-54(ともに信越化学社製)の名称で、シリコーンオイルとして市販されているもの等を使用できる。
【0026】
一方、上記アルコキシシラン類と反応させるカルボン酸無水物は、たとえば、下記一般式(IIA)または(IIB)で表される。
(RCO)2O (IIA)
【0027】
【化10】
【0028】
一般式(IIA)~(IIC)中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、炭素数2~24の2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0029】
一般式(IIA)において、Rは、炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭素数1~24の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
炭素数1~24の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、反応に関与しない基としては、上記の一般式(IA)~(IC)のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基中の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキル基の場合には、好ましくは1~20、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~8であり;アリール基の場合には、好ましくは4~20、より好ましくは4~18、さらに好ましくは6~12であり;アラルキル基の場合には、好ましくは5~21、より好ましくは5~19であり;アルケニル基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18である。
それらの基の具体例としては、上記の一般式(IA)~(IC)のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0030】
一方、一般式(IIB)において、Rは、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、炭素数2~24の2価の炭化水素基の水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
炭素数2~24の2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基等が挙げられ、反応に関与しない基としては、上記の一般式(IA)~(IC)のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基中の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキレン基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18であり;炭化水素基がアリーレン基の場合には、好ましくは4~20、より好ましくは4~18であり;炭化水素基がアルケニレン基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18である。
【0031】
したがって、それらの炭化水素基を有するカルボン酸無水物(IIA)の具体例としては、無水酢酸(AcO)、プロピオン酸無水物((EtCO)O)、酪酸無水物((PrCO)O)、イソ酪酸無水物((MeCHCO)O)、吉草酸無水物((BuCO)O)、イソ吉草酸無水物((MeCHCHCO)O)、ピバル酸無水物((tert-BuCO)O)、ヘキサン酸無水物((C11CO)O)、ヘプタン酸無水物(C13CO)O)、シクロヘキサンカルボン酸無水物((cyc-C11CO)O)、オクタン酸無水物((C15CO)O)、ノナン酸無水物((C17CO)O)、デカン酸無水物((C19CO)O)、ラウリン酸無水物((C1123CO)O)、ミリスチン酸無水物((C1329CO)O))、パルミチン酸無水物((C1531CO)O)、ステアリン酸無水物((C1735CO)O)、ジフルオロ酢酸無水物((CFHCO)O))、トリフルオロ酢酸無水物((CFCO)O)、トリクロロ酢酸無水物((CClCO)O)、クロロジフルオロ酢酸無水物((CClFCO)O)、ペンタフルオロプロピオン酸無水物((CCO)O)、安息香酸無水物((PhCO)O)、トルイル酸無水物((MeCCO)O)、ナフトエ酸無水物((C10CO)O)、フェニル酢酸無水物((PhCHCO)O)、クロトン酸無水物((trans-MeCH=CHCO)O)、イソクロトン酸無水物((cis-MeCH=CHCO)O)、チグリン酸無水物((MeCH=CMeCO)O)、オレイン酸無水物([C17CH=CH(CHCO]O)等が挙げられる。
【0032】
また、カルボン酸無水物(IIB)の具体例としては、無水コハク酸((CH(CO)O)、グルタル酸無水物((CH(CO)O)、オクチルコハク酸無水物、((OctCHCH)(CO)O)、オクタデシルコハク酸無水物([(C1837)CHCH](CO)O)、アリルコハク酸無水物([(CH=CHCH)CHCH](CO)O)、イタコン酸無水物([CHC(=CH)](CO)
O)、3,3-ジメチルグルタル酸無水物((CHCMeCH)(CO)O)、無水フタル酸((1,2-C)(CO)O)等が挙げられる。
【0033】
原料のSi-O-Si結合を有するシロキサン化合物に対するカルボン酸無水物のモル比は任意に選ぶことができるが、シロキサン化合物に対するアシロキシシランの収率を考慮すれば、通常0.4以上100以下であり、より好ましくは0.5以上50以下であり、さらに好ましくは0.5以上20以下である、特に好ましくは0.5以上10以下である。
【0034】
本実施形態において、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、前記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物である場合、下記一般式(IIIA)で表されるアシロキシシランを製造できる。
Si(OCOR) (IIIA)
一般式(IIIA)中、R~Rは、式(IA)中のR~Rと同様に定義され、R~Rの具体例としては、式(IA)のR~Rの説明において示したもの等を挙げることができる。また、Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され、Rの具体例としては、式(IIA)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0035】
したがって、それらの基等を有する一般式(IIIA)のアシロキシシランの具体例としては、アセトキシトリメチルシラン(MeSiOAc)、アセトキシトリエチルシラン(EtSiOAc)、アセトキシジメチルフェニルシラン(MePhSiOAc)、アセトキシメチルジフェニルシラン(MePhSiOAc)、アセトキシジメチルビニルシラン(MeViSiOAc)、アセトキシ(クロロメチル)ジメチルシラン((ClCH)MeSiOAc)、アセトキシ(3-シアノプロピル)ジメチルシラン([NC(CH]MeSiOAc)、トリメチル(プロピオニルオキシ)シラン(MeSiOCOEt)、トリメチル(ブタノイルオキシ)シラン(MeSiOCOPr)、(ヘキサノイルオキシ)トリメチルシラン(MeSiOCOC11)、(トリフ
ルオロアセチルオキシ)トリメチルシラン(MeSiOCOCF)、(ペンタフルオロプロパノイルオキシ)トリメチルシラン(MeSiOCOC)、(ベンゾイルオ
キシ)トリメチルシラン(MeSiOCOPh)等を挙げることができる。
【0036】
また、本実施形態において、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、前記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物である場合、下記一般式(IIIB)で表されるアシロキシシランを製造できる。
(RCO)O(SiRO)(COR) (IIIB)
一般式(IIIB)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;pは、1~100の整数である。RおよびRの具体例としては、式(IB)のRおよびRの説明において示したもの等を挙げることができ、Rの具体例としては、式(IIA)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
また、pは、好ましくは1~80、より好ましくは1~50、さらに好ましくは1~10である。
【0037】
したがって、それらの基等を有する一般式(IIIB)で表されるアシロキシシランの具体例としては、ジアセトキシジメチルシラン(AcO(SiMeO)Ac)、1,3-ジアセトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(AcO(SiMeO)Ac)、1,5-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン(AcO(SiMeO)Ac)、1,7-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5
,7,7-オクタメチルテトラシロキサン(AcO(SiMeO)Ac)、ジアセトキシジフェニルシラン(AcO(SiPhO)Ac)、1,3-ジアセトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン(AcO(SiPhO)Ac)、1,5-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサフェニルトリシロキサン(AcO(SiPhO)Ac)、1,7-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタフェニルテトラシロキサン(AcO(SiPhO)Ac)、1,3-ジアセトキシ-1,1-ジメチル-3,3-ジフェニルジシロキサン(AcO(SiMeO)(SiPhO)Ac)等を挙げることができる。
【0038】
本実施形態において、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、前記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物である場合、下記一般式(IIIC)で表されるアシロキシシランを製造できる。
(RCO)O(SiRO)(COR) (IIIC)
一般式(IIIC)中、RおよびRは、式(IC)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIA)中のRと同様に定義され;qは、1~100の整数である。RおよびRの具体例としては、式(IC)のRおよびRの説明において示したもの等を挙げることができ、Rの具体例としては、式(IIA)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
また、qは、好ましくは1~80、より好ましくは1~50、さらに好ましくは1~10である。
【0039】
一般式(IIIC)で表されるアシロキシシランの具体例としては、一般式(IIIB)で表されるアシロキシシランの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0040】
さらに、本実施形態において、前記Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、前記一般式(IB)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物である場合、下記一般式(IIID)で表されるアシロキシシランを製造できる。下記一般式(IIID)で表されるアシロキシシランは、シロキサン化合物に由来するr1個の(SiR-O)ユニットとカルボン酸無水物に由来するr2個の(O-CO-R-CO)ユニットとから化合物の骨格が形成されており、(O-CO-R-CO)ユニットの両側には1個以上の(SiR-O)ユニットが存在する。
【0041】
【化11】
【0042】
一般式(IIID)中、RおよびRは、式(IB)中のRおよびRと同様に定義され;Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され;r1は、1~100の整数であり;r2は、1以上r1以下の整数である。RおよびRの具体例としては、式(IB)のRおよびRの説明において示したもの等を挙げることができ、Rの具体例としては、式(IIB)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
また、r1およびr2は、好ましくは1~80、より好ましくは1~50、さらに好ましくは1~20である。
【0043】
したがって、それらの基等を有する一般式(IIID)で表されるアシロキシシランの具体例としては、1,1-ジメチル-2,8-ジオキサ-3,7-ジオキソ-1-シラシクロオクタン((SiMeO)[CO(CHCO])、1,1,3,3-テトラメチル-2,4,10-トリオキサ-5,9-ジオキソ-1,3-ジシラシクロデカン((SiMeO)[CO(CHCO])、 1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-2,4,6,12-テトラオキサ-7,11-ジオキソ-1,3,5-トリシラシクロドデカン((SiMeO)[CO(CHCO])、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-2,4,6,8,14-ペンタオキサ-9,13-ジオキソ-1,3,5,7-トリシラシクロテトラデカン((SiMeO)[CO(CHCO])、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチル-2,4,6,8,10,16-ヘキサオキサ-11,13-ジオキソ-1,3,5,7,9-ペンタシラシクロヘキサデカン((SiMeO)[CO(CHCO])、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11-ドデカメチル-2,4,6,8,10,12,18-ヘプタオキサ-13,17-ジオキソ1,3,5,7,9,11-ヘキサシラシクロオクタデカン((SiMeO)[CO(CHCO])等を挙げることができる。
【0044】
さらにまた、本実施形態において、前記Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物が、前記一般式(IC)で表されるシロキサン化合物であり、前記カルボン酸無水物が、前記一般式(IIB)で表されるカルボン酸無水物である場合、下記一般式(IIIE)で表されるアシロキシシランを製造できる。下記一般式(IIIE)で表されるアシロキシシランは、シロキサン化合物に由来するs1個の(SiR-O)ユニットとカルボン酸無水物に由来するs2個の(O-CO-R-CO)ユニットとから化合物の骨格が形成されており、(O-CO-R-CO)ユニットの両側には1個以上の(SiR-O)ユニットが存在する。
【0045】
【化12】
【0046】
一般式(IIIE)中、RおよびRは、式(IC)中のRおよびRと同様に定義される。Rは、式(IIB)中のRと同様に定義され。s1は、1~100の整数であり、s2は、1以上s1以下の整数である。RおよびRの具体例としては、式(IB)のRおよびRの説明において示したもの等を挙げることができ、Rの具体例としては、式(IIB)のRの説明において示したもの等を挙げることができる。
また、s1およびs2は、好ましくは1~80、より好ましくは1~50、さらに好ましくは1~20である。
【0047】
一般式(IIIE)で表されるアシロキシシランの具体例としては、一般式(IIID)で表されるアシロキシシランの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0048】
本実施形態おける反応工程では、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物に対して、カルボン酸無水物が求核的に相互作用して、反応が進行していると考えられる。
したがって、本実施形態における反応は、シロキサン化合物のSi-O-Si結合と、カルボン酸無水物のCO-O-CO結合の間での結合の組み換えが起こる反応になり、その反応工程では、たとえば、前記一般式(IA)で表されるシロキサン化合物に1当量の前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物を反応させた場合、前記一般式(IIIA)のアシロキシシランが2当量生成する(スキーム1)。
【0049】
【化13】

スキーム1
【0050】
一方、前記一般式(IB)または(IC)で表される環状または直鎖状のシロキサン化合物の反応では、Si-O-Si結合のアシロキシ化だけでなく、生成物間の不均化反応が進行するため、前記一般式(IIA)で表されるカルボン酸無水物を反応させる場合、両末端にアシロキシ基を有する、前記一般式(IIIB)または(IIIC)で表されるアシロキシシランが生成する(スキーム2、3)。
【0051】
【化14】

スキーム2
【0052】
【化15】

スキーム3
【0053】
スキーム2、3におけるアシロキシシランの分子量の分布は、原料のポリシロキサン、カルボン酸無水物の反応性、および、それらの仕込み比等に依存して変化するが、一般的には、原料のシロキサン化合物に対するカルボン酸無水物の仕込み比が高いほど、低分子量側の割合が多い分布になる。
【0054】
また、前記一般式(IB)または(IC)で表される環状または直鎖状のシロキサン化合物と、前記一般式(IIB)で表される環状カルボン酸無水物の反応でも、Si-O-
Si結合のアシロキシ化だけでなく、生成物間の不均化反応が進行するため、環内にカルボニルオキシ基を有する、前記一般式(IIID)または(IIIE)で表される環状アシロキシシランが生成する(スキーム4、5)。
【0055】
【化16】

スキーム4
【0056】
【化17】

スキーム5
【0057】
本実施形態における反応工程では、反応を促進するために、次の(1)および(2)から選ばれる酸性触媒を使用する。
(1)周期表で第3族~第15族元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、もしくはチオシアン酸塩;塩化ルテニウム;塩化ガリウム;塩化スズ;塩化インジウム;臭化鉄;臭化ルテニウム;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン;トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル;ノナフルオロブタンスルホン酸;ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル;過塩素酸;ヘキサフルオロアンチモン酸;またはチオシアン酸。
(2)無機系の固体酸化合物。
【0058】
(1)の酸性触媒における第3族~第15族元素は、好ましくは第3族、第8族、または第13第~15族元素であり、より好ましくは第3族、第8族、13族、または第15族元素であり、さらに好ましくは第3族、第8族、または第13族元素である。
より具体的には、第3族~第15族元素は、好ましくは、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、イットリビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、またはビスマスであり、より好ましくは、スカンジウム、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、またはビスマスであり、さらに好ましくは、スカンジウム、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムである。
【0059】
したがって、第3族~第15族元素から選ばれる元素の過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)塩、ヘキサフルオロアン
チモン酸塩、およびチオシアン酸塩の具体例としては、過塩素酸鉄(III)、過塩素酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、またはチオシアン酸塩の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(III)、トリフルオロメタンスン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)、トリフルオロメタンスン酸ガリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(IV)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスズ(IV)、ヘキサフルオロアンチモン酸鉄(III)、ヘキサフルオロアンチモン酸インジウム(III)、チオシアン酸鉄(III)、チオシアン酸インジウム(III)等を挙げることができる。
【0060】
また、前記(1)の酸性触媒としては、塩化ルテニウム、塩化ガリウム、塩化スズ、塩化インジウム、臭化鉄、または臭化ルテニウムを使用することもできる。
それらの塩化物または臭化物とともに過塩素酸銀、ヘキサフルオロアンチモン酸銀等を反応系に添加し、反応系内で塩化物または臭化物を、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩等に変換して使用することも、好ましい方法である。
【0061】
さらに、前記(1)の酸性触媒としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル、過塩素酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、またはチオシアン酸を使用することもできる。
【0062】
一方、前記(2)の無機系の固体酸化合物としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物等が挙げられ、より具体的に示せば、プロトン性水素原子または金属原子(アルミニウム、チタン、ガリウム、鉄、セリウム、スカンジウム等)を有する、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイトなどのほか、シリカゲル、ヘテロポリ酸、カーボン系素材等を担体とする無機系固体酸が挙げられる。
【0063】
これらの中では、触媒活性または生成物に対する選択性等の点で、規則的細孔および/または層状構造を有する無機系固体酸である、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイト系等の固体酸が好ましく、ゼオライト、モンモリロナイト等の固体酸がより好ましく使用される。無機系固体酸の規則的細孔および/または層状構造の種類にとくに制限はないが、反応する分子または生成する分子の拡散のしやすさを考慮すると、細孔構造を有する固体酸触媒では、細孔径は、通常0.2~20nm、好ましくは0.3~15nm、より好ましくは0.3~10nmである。また、層状構造を有する固体酸触媒では、層間距離は、通常0.2~20nm、好ましくは0.3~15nm、より好ましくは0.3~10nmである。
【0064】
規則的細孔構造を有する無機系固体酸触媒としてゼオライトを使用する場合、その種類としては、Y型、ベータ型、ZSM-5型、モルデナイト型、SAPO型等の基本骨格を有する各種のゼオライトを挙げることができる。また、Y型ゼオライト(Na-Y)を二次的処理して得られる、SUSY型(Super Ultrastable Y)、VUSY型(Very Ultrastable Y)、SDUSY型(Super dealuminated ultrastable Y)等として知られるUSY型(Ult
rastable Y、超安定Y型)のものも好ましく使用できる(USY型については、たとえば、“Molecular Sieves”、Advances in Chemistry、Volume 121、American Chemical Society、1973、Chapter 19、等を参照)。
【0065】
反応速度の点では、これらゼオライトの中では、USY型、ベータ型、Y型、ZSM-5型、およびモルデナイト型が好ましく、USY型、ベータ型、およびY型がより好ましく、USY型およびベータ型がさらに好ましい。
【0066】
これらゼオライトにおいては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型のもの、金属カチオンを有するルイス酸型のものなど、各種のゼオライトを使用できる。この中で、プロトン性水素原子を有するプロトン型のものは、H-Y型、H-SDUSY型、H-SUSY型、H-ベータ型、H-モルデナイト型、H-ZSM-5型等で表される。また、アンモニウム型のものである、NH-Y型、NH-VUSY型、NH-ベータ型、NH-モルデナイト型、NH-ZSM-5型等のゼオライトを焼成して、プロトン型に変換したものも使用することができる。
さらに、ゼオライトのシリカ/アルミナ比(物質量比)については、反応条件に応じて各種の比を選択できるが、通常は3~1000であり、好ましくは3~800、より好ましくは5~600、さらに好ましくは5~400である。
【0067】
それらゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。市販品の具体例を示すと、USY型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV760、CBV780、CBV720、CBV712、CBV600等が挙げられる。Y型ゼオライトとしては、東ソー社より市販されているHSZ-360HOA、HSZ-320HOA等が挙げられる。また、ベータ型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CP811C、CP814N、CP7119、CP814E、CP7105、CP814CN、CP811TL、CP814T、CP814Q、CP811Q、CP811E-75、CP811E、CP811C-300等;東ソー社より市販されているHSZ-930HOA、HSZ-940HOA等;UOP社より市販されているUOP-Beta等;が挙げられる。さらに、モルデナイト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCBV21A、CBV90A等;東ソー社より市販されている、HSZ-660HOA、HSZ-620HOA、HSZ-690HOA等;が挙げられる。ZSM-5型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV5524G、CBV8020、CBV8014N等が挙げられる。
【0068】
一方、層状構造を有する無機系固体酸としてモンモリロナイトを使用する場合、層間にプロトンを有するブレンステッド酸性のものだけでなく。周期表で第3族~第15族等の元素の陽イオンを層間に有するルイス酸性のものを使用できる。
ブレンステッド酸性のものとしては、モンモリロナイトKSF、モンモリロナイトK10、モンモリロナイトK30等が挙げられる。
また、ルイス酸性のものとしては、層間に、スカンジウム(III)、チタン(III)、チタン(IV)、ジルコニム(IV)、マンガン、鉄(III)、ルテニウム(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、亜鉛(II)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(III)、スズ(IV)、ビスマス(III)等の陽イオン(本明細書中では、金属Mのn価の陽イオンを、Mn+イオンと表記する場合もある。)を有するものが挙げられる。
層間の陽イオンとしては、好ましくは、チタン(III)、チタン(IV)、ジルコニム(IV)、鉄(III)、ルテニウム(III)、アルミニウム(III)、ガリウム(III)、インジウム(III)、スズ(IV)であり、より好ましくは、チタン(III)、チタン(IV)、ジルコニム(IV)、スズ(IV)であり、さらに好ましくは
、チタン(III)、チタン(IV)、ジルコニム(IV)、スズ(IV)である。
これらの陽イオンは、一種類に限らず、複数の種類が混在しているものも使用できる。
また、前記(1)と(2)の触媒は、それらを複数組み合わせて使用することもできる。
【0069】
シロキサン化合物又はカルボン酸無水物に対する触媒量は任意に決めることができるが、重量比では、通常は0.0001~20程度、好ましくは0.0001~10程度、より好ましくは0.001~8程度、さらに好ましくは0.001~6程度である。
【0070】
本実施形態において、反応工程での反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常は-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは、-10~200℃、さらに好ましくは0℃~100℃である。
さらに、反応圧力は、通常は0.1~100気圧で、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧である。
反応時間は、原料の量、触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性および効率を考慮すると、通常1~1200分、好ましくは1~600分、より好ましくは1~300分程度である。
【0071】
また、反応を液相系で行う場合、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、トルエン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、重クロロホルム、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル等;のような、原料と反応しない各種の溶媒;等が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0072】
本実施形態の反応工程は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、原料のカルボン酸無水物、酸触媒等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下ではカルボン酸無水物、触媒等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
【0073】
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、反応の種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、医療分野等で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
【0074】
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
【0075】
本実施形態の反応工程は、密閉系の反応装置でも進行するが、反応装置を開放系にして、反応生成物を反応系外に連続的に除去することにより、反応をより効率的に進行させる
こともできる。
【0076】
本実施形態の製造方法で、固体酸触媒を用いる場合、反応工程後の触媒の分離および回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。
また、生成したアシロキシシランの精製も、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
【0077】
本実施形態に係る製造方法により提供されるアシロキシシランは、反応性が高いアシロキシ基を有している。そのため、合成中間体として利用する際の反応、表面処理剤、ゾル・ゲル材料等として利用する際の反応を、温和な条件で、効率的に行うことができると考えられ、機能性化学品として高い利用価値を有する。
たとえば、表面処理剤に関しては、ガラス等の固体材料に対して、室温で数分程度の温和な条件下で迅速に表面処理を行うことが可能で、使用するアシロキシシラン類の種類に応じて、固体材料表面の親水性または疎水性を容易に制御することができる。
また、表面処理剤は、上記の反応で製造されるアシロキシシランを組成物とするもので、単離精製したアシロキシシランだけでなく、複数のアシロキシシランを含む混合溶液を使用することもできる。
さらに、本実施形態に係るアシロキシシランの製造方法では、さまざまなアシロキシシランを温和な条件下で簡便に製造できるため、アシロキシシランを含む反応液をそのまま使用して表面処理を行うこともできる。
アシロキシシランを表面処理剤として用いる場合は、必要に応じて、トルエン、ヘキサン等のアシロキシシランと反応しない有機溶剤で希釈して用いることもできる。
固体材料の表面処理の方法については、ディップ法(浸漬法)、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法等、従来公知の各種の方法により行うことができる。
【0078】
本実施形態に係る製造方法では、得られるアシロキシシランが反応性のアシロキシ基を有している。そのため、得られたアシロキシシランに修飾剤を反応させることで、アシロキシ基を他の官能基に変換する修飾工程を含んでいてもよい。
なお、修飾工程は、精製したシロキサン化合物だけでなく、未精製のシロキサン化合物を用いて行うこともできる。すなわち、アシロキシシランを含む反応液に修飾剤を添加して、アシロキシ基を他の置換基にワンポットで変換することが可能である。
【0079】
修飾工程において使用される修飾剤としては、アシロキシ基と反応するものであればとくに制限はなく、たとえば、アルコール、水等を挙げることができる。修飾剤としてアルコールを用いた場合、アシロキシ基をアルコキシ基に変換することができ、修飾剤として水を用いた場合は、アシロキシ基をヒドロキシ基に変換することができる。
アルコールとしては、たとえば、下記一般式(IV)で表されるアルコールが挙げられ、当該アルコールとの反応により、アシロキシ基は対応するアルコキシ基(R10O基)に変換される。
10OH (IV)
【0080】
一般式(IV)において、R10は、炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基の炭素数は好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。R10の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
それらの基を有する一般式(IV)のアルコールの具体例としては、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソプロパノール(iso-PrOH)、tert-ブタノール(tert-BuOH)、ペンタノール(PentOH)、ヘキサノール(HexOH)等を挙げることができる。
また、アシロキシ基にそれらのアルコールを反応させて生成するアルコキシ基(R10
O基)の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0081】
また、修飾工程では、反応を促進するために、塩基性化合物等を共存させて反応を行ってもよい。塩基性化合物としては、有機系化合物または無機系化合物が使用可能である。有機系化合物の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等を挙げることができる。無機系化合物の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム等を挙げることができる。
それらの塩基性化合物は、触媒量であってもよく、各反応工程において使用するものと同一でも異なっていてもよい。触媒として使用する場合、通常、塩基を添加することなく、水、アルコール等の修飾剤をワンポット的に添加することにより、アシロキシ基をヒドロキシ基、アルコキシ基等に変換できる。
【0082】
修飾剤の量は任意に選ぶことができるが、アシロキシシランに対するモル比として、通常は1以上30以下、好ましくは1以上20以下、より好ましくは1以上10以下である。
修飾工程は、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒としては、反応工程で用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。
反応温度も任意に選ぶことができるが、通常は-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは-10~200℃、さらに好ましくは0~100℃である。また、修飾剤としてアルコールを用いる場合、アルコールの反応性を制御するために室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常は0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
反応時間は、アシロキシ基を有するシロキサン生成物の量、反応促進剤の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性および効率を考慮すると、通常1分~72時間、好ましくは1分~48時間、より好ましくは1分~24時間、さらに好ましくは1~10時間程度である。
【0083】
本実施形態に係る製造方法は、ポリシロキサンのような高分子にも適用することが可能である。たとえば、室温付近の温和な条件下で、ポリシロキサンを無水酢酸と反応させて、1時間以内の短時間で、単量体、2量体等のジアセトキシシランを得ることができる。この反応は、廃シリコーンのリサイクル、再資源化等にも利用できる反応系である。
【実施例
【0084】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で使用した主な分析装置等は、以下の通りである。
・核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMRと称する場合がある。):ブルカー製 AVANCE III HD 600MHz(クライオプローブ装着)
・ガスクロマトグラフ分析(以下、GCと称する場合がある。):島津製作所製 GC-2014
・ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC-MSと称する場合がある。):島津製作所製 GCMS-QP2010Plus
・ショートパス蒸留:桐山製作所製 ショートパス蒸留装置AB25F-1または柴田科学製 ガラスチューブオーブンGTO-350RD(以下、それぞれ、ショートパス蒸留装置AまたはBと称する場合がある。)
【0085】
(実施例1)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 2mmol、無水酢酸(Ac
O) 4mmol、過塩素酸鉄(III)6水和物(Fe(ClO・6HO)
0.02mmolを反応容器に入れ、約25℃(室温)で、30分攪拌した。生成物を、GC、GC-MS、およびNMRで分析し、生成物をNMRで分析した結果、(アセトキシ)トリメチルシラン(MeSiOAc)が、1.88mmol(収率94%)生成したことがわかった(表1-1参照)。
【0086】
(実施例2~215、比較例1~3)
反応条件(原料、触媒、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を表1-1~表1-20に示す。
【0087】
【表1-1】
【0088】
【表1-2】
【0089】
【表1-3】
【0090】
【表1-4】
【0091】
【表1-5】
【0092】
【表1-6】
【0093】
【表1-7】
【0094】
【表1-8】
【0095】
【表1-9】
【0096】
【表1-10】
【0097】
【表1-11】
【0098】
【表1-12】
【0099】
【表1-13】
【0100】
【表1-14】
【0101】
【表1-15】
【0102】
【表1-16】
【0103】
【表1-17】
【0104】
【表1-18】
【0105】
【表1-19】
【0106】
【表1-20】
【0107】
表1-1~表1~20(以下、単に「表1」と称することがある。)中の注釈を以下に
示す。
1) Me3SiOSiMe3:ヘキサメチルジシロキサン
Et3SiOSiEt3:ヘキサエチルジシロキサン
Me2PhSiOSiMe2Ph:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン
MePh2SiOSiMePh2:1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン
Me2ViSiOSiMe2Vi:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン
(ClCH2)Me2SiOSiMe2(CH2Cl):1,3-ビス(クロロメチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロ
キサン
[NC(CH2)3]Me2SiOSiMe2[(CH2)3CN]:1,3-ビス(3-シアノプロピル)-1,1,3,3-テトラメ
チルジシロキサン
(SiMe2O)4:オクタメチルシクロテトラシロキサン
(SiMe2O)5:デカメチルシクロペンタシロキサン
KF-968:ポリ(ジメチルシロキサン)(信越化学社製、Me3SiO(SiMe2O)pSiMe3、メチル
基を有し、両末端がトリメチルシリル基のポリシロキサン)
KF-54:ポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)(信越化学社製、Me3SiO(SiMe2O)q(SiPh2O)rSiMe3、q:r=約73:27、置換基として、メチル基およびフェニル基を
有し、両末端がトリメチルシリル基のポリシロキサン)
なお、シロキサン化合物がポリマーの場合の使用モル数は、繰り返し構造単位当たりのモル数を示す。繰り返し構造単位の分子量は、KF-968は74.2、KF-54は107.7とした。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(トルエン溶出液)によるKF-968およびKF-54の数平均分
子量(ポリスチレン標準)の測定値は、それぞれ、6000および1300であることから、KF-968のpおよびKF-54のq+rの値は、それぞれ、79および11程度と見積もられた。
【0108】
2) Ac2O:無水酢酸、
(EtCO)2O:プロピオン酸無水物
(C5H11CO)2O:ヘキサン酸無水物
(CF3CO)2O:トリフルオロ酢酸無水物
(C2F5CO)2O:ペンタフルオロプロピオン酸無水物
(CH2)3(CO)2O:グルタル酸無水物
(PhCO)2O:安息香酸無水物
【0109】
3) Fe(ClO4)3・6H2O:過塩素酸鉄(III)6水和物
FeBr3:臭化鉄(III)
RuCl3:塩化ルテニウム(III)
RuCl3・H2O:塩化ルテニウム(III)水和物
InCl3:塩化インジウム(III)
SnCl4:塩化スズ(IV)
AgClO4:過塩素酸銀
AgSbF6:ヘキサフルオロアンチモン酸銀
Sc(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)
Yb(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(III)
Fe(OTf)3:トリフルオロメタンスン酸鉄(III)
Cu(OTf)2:トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)
Al(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)
Ga(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)
In(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)
Sn(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)
Bi(OTf)4:トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(IV)
La(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)
Pr(OTf)4:トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(IV)
Nd(OTf)4:トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム(IV)
Yb(OTf)4:トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(IV)
Me3SiOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
C4F9SO3H:ノナフルオロブタンスルホン酸
Sc(NTf2)3:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)
Zn(NTf2)2:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)
In(NTf2)3:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)
Sn(NTf2)4:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスズ(IV)
Me3SiNTf2:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル
Tf2NH:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(C4F9SO2)2NH:ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド
B(C6F5)3:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン
ZnCl2:塩化亜鉛(II)
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
CBV780:USY系ゼオライトCBV780(ゼオリスト社製)
Ti3+-mont:Ti3+イオン含有モンモリロナイト
Ti4+-mont:Ti4+イオン含有モンモリロナイト
Zr4+-mont:Zr4+イオン含有モンモリロナイト
Fe3+-mont:Fe3+イオン含有モンモリロナイト
Ru3+-mont:Ru3+イオン含有モンモリロナイト
Cu2+-mont:Cu2+イオン含有モンモリロナイト
Zn2+-mont:Zn2+イオン含有モンモリロナイト
Al3+-mont:Al3+イオン含有モンモリロナイト
Ga3+-mont:Ga3+イオン含有モンモリロナイト
In3+-mont:In3+イオン含有モンモリロナイト
Sn4+-mont:Sn4+イオン含有モンモリロナイト
Amberlyst 15:H+型陽イオン交換樹脂アンバーリスト15(ダウ・ケミカル社製)
なお、上記に記載の元素Mの陽イオンを含むMn+イオン含有モンモリロナイトは、水中で、Na+型モンモリロナイトに、元素Mの硝酸塩または塩化物を添加し、Na+イオンをMn+イオンに交換させて調製したものである。
【0110】
4) 丸括弧の数値の単位はmmol、角括弧の数値の単位はmg。
5) DCB:1,2-ジクロロベンゼン
PhMe:トルエン
CHCl3:クロロホルム
CH2Cl2:ジクロロメタン
6) 25℃は、室温での反応を示す。室温より高い温度での反応では、オイルバス(理工科
学社製MH-5D)を使用した。
【0111】
7) Me3SiOAc:アセトキシトリメチルシラン
Et3SiOAc:アセトキシトリエチルシラン
Me2PhSiOAc:アセトキシジメチルフェニルシラン
MePh2SiOAc:アセトキシメチルジフェニルシラン
Me2ViSiOAc:アセトキシジメチルビニルシラン
(ClCH2)Me2SiOAc:アセトキシ(クロロメチル)ジメチルシラン
[NC(CH2)3]Me2SiOAc:アセトキシ(3-シアノプロピル)ジメチルシラン
Me3SiOCOEt:トリメチル(プロピオニルオキシ)シラン
Me3SiOCOC5H11:(ヘキサノイルオキシ)トリメチルシラン
Me3SiOCOCF3:(トリフルオロアセチルオキシ)トリメチルシラン
Me3SiOCOC2F5:(ペンタフルオロプロパノイルオキシ)トリメチルシラン
Me3SiOCO(CH2)3CO2SiMe3:1,3-ビス(トリメチルシロキシカルボニル)プロパン
Me3SiOCOPh:(ベンゾイルオキシ)トリメチルシラン
(SiMe2O)[CO(CH2)3CO2]:1,1-ジメチル-2,8-ジオキサ-3,7-ジオキソ-1-シラシクロオ
クタン
(SiMe2O)2[CO(CH2)3CO2]:1,1,3,3-テトラメチル-2,4,10-トリオキサ-5,9-ジオキソ-1,3-ジシラシクロデカン
(SiMe2O)3[CO(CH2)3CO2]:1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-2,4,6,12-テトラオキサ-7,11-
ジオキソ-1,3,5-トリシラシクロドデカン
(SiMe2O)4[CO(CH2)3CO2]:1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-2,4,6,8,14-ペンタオキサ-9,13-ジオキソ-1,3,5,7-トリシラシクロテトラデカン
(SiMe2O)5[CO(CH2)3CO2]:1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチル-2,4,6,8,10,16-ヘキサオキサ-11,13-ジオキソ-1,3,5,7,9-ペンタシラシクロヘキサデカン
(SiMe2O)6[CO(CH2)3CO2]:1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11-ドデカメチル-2,4,6,8,10,12,18-ヘプタオキサ-13,17-ジオキソ1,3,5,7,9,11-ヘキサシラシクロオクタデカン
AcO(SiMe2O)Ac:ジアセトキシジフェニルシラン
AcO(SiMe2O)2Ac:1,3-ジアセトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
AcO(SiMe2O)3Ac:1,5-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
AcO(SiMe2O)4Ac:1,7-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン
AcO(SiPh2O)Ac:ジアセトキシジフェニルシラン
AcO(SiPh2O)2Ac:1,3-ジアセトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン
AcO(SiPh2O)3Ac:1,5-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサフェニルトリシロキサン
AcO(SiPh2O)4Ac:1,7-ジアセトキシ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタフェニルテトラシロキサン
AcO(SiMe2O)(SiPh2O)Ac:1,3-ジアセトキシ-1,1-ジメチル-3,3-ジフェニルジシロキサン
【0112】
8) NMRによる収率(シロキサン化合物に対するアシロキシシランの収率)
9) カルボン酸無水物に対するシロキサン生成物の収率
10) 2個のアセトキシ基を有する化合物AcO(SiMe2O)tAc(t = 1, 2, 3, 4, 5, ≧6)の混
合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
11) 2個のアセトキシ基を有する化合物Me2CHCO2(SiMe2O)uCOCHMe2(u = 1, 2, 3, 4, ≧5)の混合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
12) 環内にカルボニルオキシ基を有する化合物(SiMe2O)v1[CO(CH2)3CO2]v2(v2 = 1で v1
= 1, 2, 3の3種類の化合物(P1~P3)、および、v2 = 1でv1 ≧ 4とv2 ≧ 2でv1 ≧ 2のその他の化合物(P4))の混合物。角括弧内は、P1~P4の化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
13) Me3SiOAcと、2個のアセトキシ基を有する化合物AcO(SiMe2O)wAc(w = 1, 2, 3, 4,
≧5)の混合物。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計
収率を示す。
14) Me3Si基を含むアシロキシシランMe3SiO(SiMe2O)w1[CO(CH2)3CO2]w2SiMe3(w1 ≧ 0, w2 ≧ 1)(Q1)と、環内にカルボニルオキシ基を有する化合物(SiMe2O)w3[CO(CH2)3CO2]w4(w4 = 1で w3 = 1, 2, 3の3種類の化合物(Q2~Q4)、および、w4 = 1でw3 ≧ 4とw4 ≧ 2でw3 ≧ 2のその他の化合物(Q5))の混合物。角括弧内は、Q1~Q5の化合物の比を
示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
15) Me3SiOAcと、2個のアセトキシ基を有する化合物である、AcO(SiMe2O)xAc(x = 1, 2
)、AcO(SiPh2O)yAc(y = 1, 2)、AcO(SiMe2O)(SiPh2O)Ac、および、AcO(SiR2)zOAc (R = Me, Ph; z ≧3)(両末端にアセトキシ基があり、他のケイ素原子上の置換基がメチル基またはフェニル基である、ケイ素原子数が3個以上のオリゴシロキサン化合物)の混合物
。角括弧内は、それらの化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
【0113】
表1に示した結果から、本発明の製造方法では、触媒活性が高く、室温付近でも反応が容易に進行するため、従来知られていた触媒よりも効率よくアシロキシシランを製造できることがわかった。
たとえば、ヘキサメチルジシロキサンと無水酢酸の反応で、触媒として、過塩素酸鉄(III)6水和物、塩化ルテニウム(III)水和物、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドトリメチルシリル、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドを使用した場合(実施例1、9、52、56、59、61、および63)、25℃で0.5時間撹拌の条件で、アシロキシシランを、それぞれ、94%、93%、98%、98%、96%、98%、および98%の高収率で得ることができた。
一方、従来知られていた触媒である、塩化亜鉛またはトリフルオロメタンスルホン酸を使用した場合(比較例1、2)、25℃で0.5時間の条件では、アシロキシシランの収率は、それぞれ、1%または20%であり、実施例1、9、52、56、59、61、および63の収率より低い値であった。
【0114】
また、固体酸触媒を用いた場合でも、ヘキサメチルジシロキサンと無水酢酸の反応で、たとえば、触媒として、Sn4+イオン含有モンモリロナイトを使用した場合(実施例106)、25℃で0.5時間撹拌の条件で、アシロキシシランが、56%の収率で得られた。
それに対して、従来知られていたアンバーリスト15を使用した場合(比較例3)、25℃で0.5時間の条件では、アシロキシシランの収率は15%であり、実施例106の収率より低い値であった。
これらの結果は、(1)および(2)から選ばれる酸性触媒を用いることにより、アシロキシシランを、従来の触媒を用いる場合に比べて、より効率的に製造できることを示すものである。
【0115】
上記反応で得られたアシロキシシランは、下記実施例に示すように、アルコール等の適当な修飾剤を反応させることにより、アシロキシ基をアルコキシ基等の他の置換基に変換することができる。
【0116】
(実施例216)
表1の実施例144で得られた、AcO(SiMeO)Ac(t=1~5,≧6;それらの組成比は、1:10:13:13:11:49) 約0.074mmol(ケイ素原子当たり)を含む反応液0.03mLを重クロロホルム 0.45mLに溶解させ、メタノール 0.22mmolおよびトリエチルアミン 0.22mmolを添加して、室温で約5時間放置した。生成物をNMRで分析した結果、MeO(SiMeO)Me(t=1~5,≧6;それらの組成比は、2:11:13:13:12:48)が、約0.073mmol(ケイ素原子当たりのモル数、収率≧95%)生成したことがわかった(表2参照)。
【0117】
(実施例217~221)
反応条件(原料、触媒、温度、時間等)を変えて、実施例216と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2中の注釈を以下に示す。
1) 実施例216~221では、それぞれ、実施例144、145、146、173、173、および212で得ら
れた反応液を使用して、修飾剤との反応を行った。反応液の使用量(mL)は、それぞれ、0.03、0.05、0.08、0.09、0.09、および0.02で、モル数は、ケイ素原子当たりのモル数である。また、角括弧内は、アシロキシシラン化合物の比を示す。
2) MeOH:メタノール
EtOH:エタノール。
3) Et3N:トリエチルアミン。
4) CDCl3:重クロロホルム。
5) 25℃は、室温での反応を示す。
【0120】
6) MeO(SiMe2O)Me:ジメチルジメトキシシラン
MeO(SiMe2O)2Me:1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジメトキシジシロキサン
MeO(SiMe2O)3Me:1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ジメトキシトリシロキサン
MeO(SiMe2O)4Me:1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチル-1,7-ジメトキシテトラシロキサン
MeO(SiMe2O)5Me:1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチル-1,9-ジメキシペンタシロキサン
Me3SiOMe:トリメチルメトキシシラン
Me3SiOEt:エトキシトリメチルシラン
EtO(SiMe2O)Et:ジエトキシジメチルシラン
EtO(SiMe2O)2Et:1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
EtO(SiMe2O)3Et:1,5-ジエトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
EtO(SiMe2O)4Et:1,7-ジエトキシ-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン
MeO(SiPh2O)Me:ジメトキシジフェニルシラン
MeO(SiMe2O)(SiPh2O)Me:1,1-ジメチル-1,3-ジメトキシ-3,3-ジフェニルジシロキサン
MeO(SiPh2O)2Me:1,3-ジメトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン
なお、角括弧内は、生成した修飾化合物の比を示す。また、収率は、それらの合計収率を示す。
7) NMRによる収率(アシロキシシランに対する収率)
【0121】
上記の表1および表2の実施例で得られた、アシロキシシランおよびその修飾化合物の29Si-NMR、GC-MSの測定データを表3-1~表3-5に示す。
【0122】
【表3-1】
【0123】
【表3-2】
【0124】
【表3-3】
【0125】
【表3-4】
【0126】
【表3-5】
【0127】
表3-1~表3~5中の注釈を以下に示す。
1) 各生成物の名称は、表1脚注7、および、表2脚注6に記載。
2) 29Si NMRの化学シフト値。NMR溶媒として、CDCl3を使用。緩和試薬Cr(acac)3(クロム(III)アセチルアセトナート)を添加して測定。括弧内はピーク面積の積分比に基づくケ
イ素原子の個数またはその比。なお、*は、同じ位置に複数の化合物のシグナルが重なっ
ていると考えられることから、その化合物におけるケイ素原子の個数またはその比を推定した値。
3) GC-MS:ガスクロマトグラフ質量分析、EI法:電子衝撃イオン化法(70eV)。
4) NMR溶媒として、C6D6を使用。
【0128】
本発明の製造方法により得られたアシロキシシランは、固体酸触媒を用いた場合、次の実施例に示すように、触媒を遠心分離、ろ過等で分離した後、蒸留、再結晶等の操作により、容易に単離精製できることが確認された。また、均一系触媒を用いた場合も、触媒量が少ない場合などは、触媒を分離することなく、蒸留、再結晶等の操作により、アシロキシシランを容易に単離精製できることが確認された。
【0129】
(実施例222)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 25.6mmol、プロピオン酸無水物((EtCO)O) 26.9mmol、およびSn4+-Mont触媒(クニピア工業製 クニピアF(Na型モンモリロナイト、Na-Mont)に、水中で、塩化スズ(IV)5水和物を反応させて調製したもの) 400mgを反応容器に入れ、90℃で45分攪拌した。触媒の固体を遠心分離で分離し、上澄み液を分離した後、触媒をヘキサンで洗浄した(1mLで2回)。先の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下濃縮して、ショートパス蒸留装置Aで生成物の蒸留を行った結果、トリメチル(プロピオニルオキシ)シラン(MeSiOCOEt)が、23.0mmol(収率90%)得られた。
【0130】
得られた生成物の物性値、スペクトルデータは、次の通りであった。
沸点:135-140℃(ショートパス蒸留での留出温度)
1H-NMR (CDCl3): δ 0.28 (s, 9H, SiCH3), 1.10 (t, J = 7.5 Hz, 3H, COCCH3), 2.32
(q, J = 7.5 Hz, 2H, COCH2)
13C-NMR (CDCl3): δ -0.3, 9.1, 29.1, 175.1
29Si-NMR (CDCl3): δ 23.0
【0131】
(実施例223)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 6.4mmol、ヘキサン酸無水物((C11CO)O) 6.7mmol、およびSn4+-Mont触媒(クニピア工業製 クニピアF(Na型モンモリロナイト、Na-Mont)に、水中で、塩化スズ(IV)5水和物を反応させて調製したもの) 100mgを反応容器に入れ、90℃で45分攪拌した。触媒の固体を遠心分離で分離し、上澄み液を分離した後、触媒をヘキサンで洗浄した(1mLで2回)。先の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下濃縮して、ショートパス蒸留装置Bで生成物の蒸留を行った結果、(ヘキソイルオキシ)トリメチルシラン(MeSiOCOC11)が、4.5mmol(収率70%)得られた。
【0132】
得られた生成物の物性値、スペクトルデータは次の通りであった。
沸点:90-95℃/48mmHg(ショートパス蒸留での留出温度)
1H-NMR (CDCl3): δ 0.27 (s, 9H, SiCH3), 0.89 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CCH3), 1.26-1.34 (m, 4H, CH2), 1.59 (quint, J = 7.4 Hz, 2H, COCCH2), 2.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H,
COCH2)
13C-NMR (CDCl3): δ -0.3, 13.9, 22.3, 24.7, 31.3, 35.9, 174.6
29Si-NMR (CDCl3): δ 23.0
【0133】
(実施例224)
1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン(MePhSiOSiMePh) 8mmol、無水酢酸(AcO) 6.7mmol、およびSn4+-Mont触媒(クニピア工業製 クニピアF(Na型モンモリロナイト、Na-Mont)に、水中で、塩化スズ(IV)5水和物を反応させて調製したもの) 180mgを反応容器に入れ、90℃で45分攪拌した。触媒の固体を遠心分離で分離し、上澄み液を分離した後、触媒をトルエンで洗浄した(1mLで2回)。先の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下濃縮して、ショートパス蒸留装置Bで生成物の蒸留を行った結果、アセトキシジメチルフェニルシラン(MePhSiOAc)が、5mmol(収率63%)得られた。
【0134】
得られた生成物の物性値、スペクトルデータは次の通りであった。
沸点:100-110℃/3.5mmHg(ショートパス蒸留での留出温度)
1H-NMR (CDCl3): δ 0.58 (s, 6H, SiCH3), 2.09 (s, 3H, COCH3), 7.37-7.46 and 7.62-7.67 (each m, 5H, C6H5)
13C-NMR (CDCl3): δ -1.6, 22.9, 127.9, 130.2, 133.6, 135.7, 171.6
29Si-NMR (CDCl3): δ 11.7
【0135】
(実施例225)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 24mmol、トリフルオロ酢酸無水物((CFCO)O) 36mmol、およびSn4+-Mont触媒(クニピア工業製 クニピアF(Na型モンモリロナイト、Na-Mont)に、水中で、塩化スズ(IV)5水和物を反応させて調製したもの) 350mgを反応容器に入れ、90℃で45分攪拌した。触媒の固体を遠心分離で分離し、上澄み液を分離した後、触媒をペンタンで洗浄した(1mLで2回)。先の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下濃縮して、ショートパス蒸留装置Aで生成物の蒸留を行った結果、(トリフルオロアセチルオキシ)トリメチルシラン(MeSiOCOCF)が、19.7mmol(収率82%)得られた。
【0136】
得られた生成物の物性値、スペクトルデータは次の通りであった。
沸点:86-88℃(ショートパス蒸留での留出温度)
1H-NMR (CDCl3): δ 0.40 (s, 9H, SiCH3)
13C-NMR (CDCl3): δ -0.7, 114.5 (q, J = 286 Hz), 156.7 (q, J = 42 Hz)
29Si-NMR (CDCl3): δ 33.5
【0137】
(実施例226)
ヘキサメチルジシロキサン(MeSiOSiMe) 25mmol、プロピオン酸無水物((EtCO)O) 37.5mol、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III) 0.016mmolを反応容器に入れ、90℃で30分撹拌した。ショートパス蒸留装置Aで生成物の蒸留を行った結果、トリメチル(プロピオニルオキシ)シラン(MeSiOCOEt)が、23.8mmol(収率95%)得られた。
得られた生成物の物性値およびスペクトルデータは、実施例222で得られたデータと一致していた。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の製造方法により、機能性化学品として有用なアシロキシシランを、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物に、カルボン酸無水物を反応させることによって、効
率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。