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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240816BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H05B3/74
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020028240
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132190
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 和人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅典
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206806(JP,A)
【文献】特表2013-508968(JP,A)
【文献】特表2019-505092(JP,A)
【文献】特開2019-091880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0161104(US,A1)
【文献】特開2017-157617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理チャンバと、
前記基板処理チャンバ内に配置される導電性の基台と、
前記基台の上部に配置され、径方向に複数分割され、かつ周方向に複数分割される複数の分割領域を含む静電チャックと、
前記基台内に画成される空間に配置される制御基板と、を備え、
前記静電チャックは、
前記複数の分割領域の各々の内部に配置されるヒータと、
前記複数の分割領域の各々の内部であって、前記ヒータと前記基台の上面との間に配置され、前記分割領域の内部の温度を測定するサーミスタと、を含み、
前記制御基板は、
前記ヒータに電気的に接続されるスイッチと、
前記サーミスタの両端にかかる電圧を測定する測定部と、
前記測定部により測定された前記電圧値に基づき前記スイッチを制御することにより、前記ヒータへの供給電力を制御する制御部と、を含む、
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御基板は、
前記基板処理チャンバ外に設けられるRFフィルタを介して電力供給装置と電気的に接続される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記スイッチは、
前記基板処理チャンバ外に設けられるRFフィルタを介して電力供給装置と電気的に接続される、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記RFフィルタは、
前記基板処理チャンバの接地された筐体と電気的に接続されるシールド部材によって囲まれる、
請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記サーミスタは、
前記ヒータの下方に配置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記測定部は、
前記サーミスタと直列に接続される基準抵抗と、
前記基準抵抗に電気的に接続される基準電圧供給部と、
前記サーミスタと前記基準抵抗との間に電気的に接続されるADC(Analog Digital Converter)と、を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基台は、
下部電極及び前記下部電極の下部に配置され、前記下部電極に電気的に接続されるカバープレートから構成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記静電チャックに載置される基板の設定温度と前記サーミスタによって測定される前記分割領域の温度との温度差を補正値として保持し、
前記補正値に基づいて前記ヒータに供給される電力を制御する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記補正値は、
前記基台が有する下部電極の設定温度よって決定される、
請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記補正値は、
前記基板の設定温度と前記基台が有する下部電極の設定温度との差によって決定される、
請求項8又は9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記分割領域ごとに前記補正値を保持する、
請求項8から10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記測定部は、
前記サーミスタに対して、1つずつ設けられる、
請求項1から11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記スイッチは、
前記ヒータに対して、1つずつ設けられる、
請求項1から12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前RFフィルタは、
前記ヒータに対して共通に設けられる、
請求項2から13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記基台には、冷媒流路が形成される、
請求項1から14のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御基板は、スペーサを介して前記基台が有する下部電極及びカバープレートに支持される、
請求項7から15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、基板処理装置および載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のヒータが設けられ、半導体ウエハ(以下、基板と記載する)が載置される載置台の複数の領域を独立に温度調整することができる基板処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような基板処理装置を用いた半導体の製造プロセスでは、基板の温度が高精度に調整されることにより、基板の処理の均一性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-228230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置を小型化することができる基板処理装置および載置台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、プラズマを用いて基板を処理する基板処理装置であって、基板が収容されるチャンバと、チャンバ内に配置され、基板が載置される載置台とを備える。載置台は、基台と、基板保持部と、複数のヒータと、ヒータ制御部と、RFフィルタとを有する。基台は、導体によって形成され、RF(Radio Frequency)電力が流れる。基板保持部は、基台上に設けられ、基板を保持する。複数のヒータは、基板保持部に設けられている。ヒータ制御部は、基台の内部に設けられ、複数のヒータのそれぞれに供給される電力を制御する。RFフィルタは、基台の外部に設けられ、ぞれぞれのヒータに電力を供給するための配線に接続される。また、RFフィルタは、複数のヒータに対して共通に1つ設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、基板処理装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の第1の実施形態における基板処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、静電チャックの上面の一例を示す図である。
図3図3は、載置台の詳細な構造の一例を示す拡大断面図である。
図4図4は、第1の実施形態における制御基板の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、測定部の一例を示す回路図である。
図6図6は、基板の表面の温度と抵抗体の温度との温度差を説明するための図である。
図7図7は、第1の補正値テーブルの一例を示す図である。
図8図8は、第2の補正値テーブルの一例を示す図である。
図9図9は、補正値テーブルを作成する際の基板処理装置の構成の一例を示す概略断面図である。
図10図10は、補正値テーブルを作成する際の基板処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1の実施形態における温度制御の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態における制御基板の機能構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、変換テーブルの一例を示す図である。
図14図14は、変換テーブルの作成方法の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、第2の実施形態における温度制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、基板処理装置および載置台の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される基板処理装置および載置台が限定されるものではない。
【0009】
ところで、プラズマを用いた処理が行われる基板処理装置では、載置台にRF電力が流れるため、RF電力の一部が、載置台の外部から載置台内部のヒータに電力を供給するための配線に流れやすい。ヒータに電力を供給するための配線は、ヒータに供給される電力を制御する制御装置を介して電力供給装置に接続されている。
【0010】
制御装置および電力供給装置は、基板処理装置の外部に設けられているため、配線がアンテナとなって、配線に流れたRF電力の一部が基板処理装置の外部に放射され、電力供給装置にRF電力が流れ込む場合がある。これを抑制するために、基板処理装置の外部において、ヒータに電力を供給するためのそれぞれの配線にRFフィルタが設けられる。
【0011】
ここで、近年の半導体の製造プロセスでは、微細化の進行に伴い基板の温度の均一性のさらなる向上が求められている。基板の温度の均一性をさらに高めるためには、基板が載置される載置台において、独立して温度制御される領域をさらに細分化することが考えられる。
【0012】
独立して温度制御される領域が多くなると、それぞれの領域に設けられたヒータに電力を供給するための配線が多くなる。ヒータに電力を供給するための配線が多くなると、RFフィルタの数も多くなる。これにより、基板処理装置全体が大型化してしまう。
【0013】
そこで、本開示は、基板処理装置を小型化することができる技術を提供する。
【0014】
(第1の実施形態)
[基板処理装置1の構成]
図1は、本開示の第1の実施形態における基板処理装置1の構成の一例を示す概略断面図である。基板処理装置1は、装置本体10と、装置本体10を制御する制御装置11とを備える。本実施形態における基板処理装置1は、例えば容量結合型のプラズマエッチング装置である。
【0015】
装置本体10は、チャンバ12を有する。チャンバ12は、その中に内部空間12sを提供している。チャンバ12は、例えばアルミニウム等により略円筒形状に形成された筐体13を含む。内部空間12sは、筐体13の中に提供されている。筐体13は、電気的に接地されている。筐体13の内壁面、即ち、内部空間12sを画成する壁面は、例えば陽極酸化処理等によって形成された耐プラズマ性を有する膜でコーティングされている。
【0016】
筐体13の側壁には、内部空間12sとチャンバ12の外部との間で基板Wが搬送される際に、基板Wが通過する開口部12pが形成されている。開口部12pは、ゲートバルブ12gによって開閉される。
【0017】
筐体13内には、基板Wが載置される載置台16が設けられている。載置台16は、例えば石英等の絶縁性の材料によって略円筒状に形成された支持部15によって支持されている。支持部15は、筐体13の底部から上方に延在している。
【0018】
載置台16は、基台19および静電チャック20を有する。基台19には、カバープレート17および下部電極18が含まれる。静電チャック20は、基台19の下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20上に載置される。静電チャック20は、絶縁体で形成された本体と、膜状に形成された電極とを有する。静電チャック20の電極には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源から静電チャック20の電極に電圧が印加されることにより静電チャック20上に静電気力が発生し、静電気力により基板Wが静電チャック20の上面に吸着保持される。静電チャック20は、基板保持部の一例である。
【0019】
また、静電チャック20の上面は、例えば図2に示されるように、複数の分割領域211に分けられている。図2は、静電チャック20の上面の一例を示す図である。それぞれの分割領域211における静電チャック20の内部には、ヒータ200が1つずつ埋め込まれている。それぞれのヒータ200によって複数の分割領域211の温度が個別に制御されることにより、基板Wの表面の温度の均一性を向上させることができる。なお、ヒータ200は、静電チャック20と下部電極18との間に配置されてもよい。
【0020】
静電チャック20には、静電チャック20と基板Wとの間に、例えばHeガス等の伝熱ガスを供給するための配管25が設けられている。静電チャック20と基板Wとの間に供給される伝熱ガスの圧力を制御することにより、静電チャック20と基板Wとの間の熱伝導率を制御することができる。
【0021】
下部電極18は、例えばアルミニウム等の導電性の材料によって略円板状に形成されている。下部電極18内には、例えばフロン等の冷媒が流通する流路18fが形成されている。冷媒は、図示しないチラーユニットから配管23aを介して流路18f内に供給される。流路18f内を循環した冷媒は、配管23bを介してチラーユニットに戻される。チラーユニットによって温度制御された冷媒が流路18f内を循環することにより、下部電極18を予め定められた温度まで冷却することができる。
【0022】
カバープレート17は、例えばアルミニウム等の導電性の材料によって略円板状に形成されている。カバープレート17は、下部電極18の下部に配置されており、下部電極18と電気的に接続されている。カバープレート17には凹部が形成されており、凹部内には、静電チャック20内の複数のヒータ200を制御するマイクロコンピュータ等の素子が設けられた制御基板80が配置されている。
【0023】
制御基板80は、絶縁性の材料により形成されたスペーサ170を介して、カバープレート17および下部電極18に支持されている。制御基板80は、導体によって形成されたカバープレート17および下部電極18によって囲まれている。
【0024】
制御基板80には、それぞれのヒータ200に電力を供給するための金属配線73の一端が接続されている。金属配線73の他端は、筐体13の底部に形成された貫通孔およびRFフィルタ72を介して、電力供給装置70に接続されている。RFフィルタ72は、基台19の外部であって、ぞれぞれのヒータ200に電力を供給するための金属配線73に設けられている。RFフィルタ72は、導体で形成されたシールド部材71によって囲まれている。シールド部材71は、筐体13に電気的に接続されており、筐体13を介して接地されている。電力供給装置70から供給された電力は、RFフィルタ72および金属配線73を介して制御基板80に供給される。
【0025】
また、制御基板80には、制御基板80に設けられたマイクロコンピュータと制御装置11との間で通信を行うための光ファイバケーブル75の一端が接続されている。光ファイバケーブル75の他端は、制御装置11に接続されている。なお、光ファイバケーブル75に他端は、筐体13の外部に設けられた他のマイクロコンピュータに接続されてもよい。この場合、当該他のマイクロコンピュータが、LAN等の通信回線を介して、制御装置11と通信を行うことにより、制御基板80のマイクロコンピュータと制御装置11との間の通信を中継する。
【0026】
静電チャック20の外周領域上には、例えばシリコン等の導電性の材料により環状に形成されたエッジリング22が設けられている。エッジリング22は、フォーカスリングと呼ばれることもある。エッジリング22は、静電チャック20上に載置された基板Wを囲むように配置されている。
【0027】
載置台16の側面には、載置台16を囲むように、絶縁性の材料により略円筒状に形成されたカバー部材28が設けられている。カバー部材28により、内部空間12s内に生成されたプラズマから載置台16の側面が保護される。
【0028】
載置台16の上方には、上部電極30が設けられている。上部電極30は、絶縁性の材料により形成された部材32を介して筐体13の上部に支持されている。上部電極30は、天板34および天板保持部36を有する。天板34の下面は、内部空間12sに面している。天板34には、天板34を厚さ方向に貫通する複数のガス吐出孔34aが形成されている。天板34は、例えばシリコン等によって形成されている。また、天板34は、例えば表面に耐プラズマ性のコーティングが施されたアルミニウム等で形成されていてもよい。
【0029】
天板保持部36は、天板34を着脱自在に保持している。天板保持部36は、例えばアルミニウム等の導電性の材料によって形成されている。天板保持部36の内部には、ガス拡散室36aが形成されている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。ガス孔36bは、ガス吐出孔34aに連通している。天板保持部36には、ガス拡散室36aに接続されたガス導入口36cが設けられている。ガス導入口36cには、配管38の一端が接続されている。
【0030】
配管38の他端は、バルブ群43、流量制御器群42、およびバルブ群41を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40には、エッチングガスに含まれるガスを供給する複数のガスソースが含まれている。バルブ群41およびバルブ群43には、それぞれ複数のバルブ(例えば開閉バルブ)が含まれている。流量制御器群42には、例えばマスフローコントローラ等の複数の流量制御器が含まれている。
【0031】
ガスソース群40に含まれるそれぞれのガスソースは、バルブ群41の中の対応するバルブ、流量制御器群42の中の対応する流量制御器、およびバルブ群43の中の対応するバルブを介して、配管38に接続されている。ガスソース群40に含まれる複数のガスソースの中から選択された一以上のガスソースからのガスは、個別に調整された流量で、ガス拡散室36a内に供給される。ガス拡散室36a内に供給されたガスは、ガス拡散室36a内を拡散し、ガス孔36bおよびガス吐出孔34aを介して、内部空間12s内にシャワー状に供給される。
【0032】
支持部15の外側壁と筐体13の内側壁との間には、例えば表面に耐プラズマ性のコーティングが施されたアルミニウム等で形成されたバッフル板48が設けられている。バッフル板48には、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。バッフル板48の下方の筐体13の底部には、排気管52が接続されている。排気管52には、自動圧力制御弁等の圧力制御器およびターボ分子ポンプ等の真空ポンプを有する排気装置50が接続されている。排気装置50によって内部空間12sの圧力を予め定められた圧力まで減圧することができる。
【0033】
基台19には、第1の整合器63を介して第1のRF電源61が接続されている。第1のRF電源61は、プラズマ生成用の第1のRF電力を発生する電源である。第1のRF電力の周波数は、27~100[MHz]の範囲内の周波数、例えば60[MHz]の周波数である。第1の整合器63は、第1のRF電源61の出力インピーダンスと負荷側(例えば基台19側)のインピーダンスを整合させるための整合回路を有する。なお、第1のRF電源61は、第1の整合器63を介して、基台19ではなく上部電極30に接続されていてもよい。
【0034】
また、基台19には、第2の整合器64を介して第2のRF電源62が接続されている。第2のRF電源62は、基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の第2のRF電力を発生する電源である。第2のRF電力の周波数は、第1のRF電力の周波数よりも低く、400[kHz]~13.56[MHz]の範囲内の周波数であり、例えば400[kHz]の周波数である。第2の整合器64は、第2のRF電源62の出力インピーダンスと負荷側(例えば基台19側)のインピーダンスを整合させるための整合回路を有する。
【0035】
制御装置11は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリ内には、レシピ等のデータやプログラム等が格納される。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等である。プロセッサは、メモリから読み出されたプログラムを実行することにより、メモリ内に格納されたレシピ等のデータに基づいて、入出力インターフェイスを介して装置本体10の各部を制御する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等である。
【0036】
基板処理装置1によってプラズマエッチングが行われる場合、ゲートバルブ12gが開けられ、図示しない搬送ロボットにより基板Wが筐体13内に搬入され、静電チャック20上に載置される。そして、排気装置50によって筐体13内のガスが排気され、ガスソース群40からの一以上のガスがそれぞれ予め定められた流量で内部空間12sに供給され、内部空間12sの圧力が予め定められた圧力に調整される。
【0037】
また、図示しないチラーユニットによって温度制御された冷媒が流路18f内に供給されることにより下部電極18が冷却される。また、電力供給装置70から、静電チャック20のそれぞれの分割領域211に設けられたヒータ200に供給される電力が制御基板80のマイクロコンピュータによって制御される。また、制御装置11によって静電チャック20と基板Wとの間に供給される伝熱ガスの圧力が制御される。これにより、静電チャック20に載置された基板Wの温度が予め定められた温度となるように調整される。
【0038】
そして、第1のRF電源61からの第1のRF電力および第2のRF電源62からの第2のRF電力が基台19に供給される。これにより、上部電極30と基台19との間にRFの電界が形成され、内部空間12sに供給されたガスがプラズマ化される。そして、内部空間12sに生成されたプラズマに含まれるイオンやラジカル等によって、基板Wがエッチングされる。
【0039】
[載置台16の詳細]
図3は、載置台16の詳細な構造の一例を示す拡大断面図である。本実施形態において、静電チャック20には、分割領域211毎に、ヒータ200と抵抗体201とが配置されている。本実施形態において、抵抗体201は、ヒータ200と下部電極18との間に配置されている。抵抗体201は、温度に応じて抵抗値が変化する。本実施形態において、抵抗体201は、例えばサーミスタである。
【0040】
それぞれの分割領域211に設けられたヒータ200および抵抗体201は、下部電極18に形成された貫通孔内に配置された配線を介して制御基板80に接続されている。制御基板80には、それぞれの分割領域211に配置された抵抗体201を用いて測定された温度に基づいて、対応する分割領域211に配置されたヒータ200に供給される電力を制御するマイクロコンピュータ等の素子800が設けられている。
【0041】
ここで、制御基板80は、導体で形成された基台19によって囲まれているため、基台19にRF電力が供給されても制御基板80にはRF電力はほとんど流れない。そのため、制御基板80には、RF電力を除去するためのフィルタが設けられなくても、RF電力による素子800の誤動作は発生しない。
【0042】
一方、それぞれのヒータ200に電力を供給するための金属配線73は、基台19の内部から基台19の外部へ引き出されており、基台19で囲まれていない。これにより、基台19に供給されたRF電力が金属配線73を流れやすい。そのため、金属配線73には、RFフィルタ72が接続されている。
【0043】
図4は、第1の実施形態における制御基板80の機能構成の一例を示すブロック図である。制御基板80には、素子800として、制御部81、複数のスイッチ82、および複数の測定部83が設けられている。本実施形態において、スイッチ82および測定部83は、それぞれのヒータ200および抵抗体201に対して、1つずつ設けられている。
【0044】
それぞれのスイッチ82は、制御部81からの制御信号に応じて、RFフィルタ72を介して、電力供給装置70から、対応するヒータ200に供給される電力の供給および供給遮断を制御する。
【0045】
それぞれの測定部83は、対応する抵抗体201について、温度に応じた電圧を測定し、測定された電圧値を制御部81へ出力する。
【0046】
図5は、測定部83の一例を示す回路図である。測定部83は、基準電圧供給部830、基準抵抗831、およびADC(Analog Digital Converter)832を有する。基準電圧供給部830は、基準抵抗831および抵抗体201に基準電圧Vrefを供給する。ADC832は、抵抗体201の両端にかかる電圧値をアナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、ADC832は、デジタル信号に変換された電圧値を制御部81へ出力する。
【0047】
制御部81は、制御装置11から、基台19の設定温度と、各分割領域211に対応する基板Wの設定温度を受信する。そして、制御部81は、各分割領域211について、分割領域211に設けられた抵抗体201の電圧値に基づいて、抵抗体201の温度(即ち分割領域211の温度)を測定する。本実施形態において、抵抗体201は、サーミスタである。サーミスタの温度とサーミスタの抵抗値とは、例えば下記の(1)式のような関係を有する。
【数1】
上記(1)式において、Rthermistorはサーミスタの抵抗値、R25は25[℃]でのサーミスタの抵抗値、BはサーミスタのB定数、Tempは測定される分割領域211の温度を表す。
【0048】
また、ADC832から出力される電圧値は、例えば下記の(2)式のように表される。
【数2】
上記(2)式において、VADCはADC832から出力された電圧値、Vrefは基準電圧供給部830から供給される基準電圧値、Rrefは基準抵抗831の抵抗値を表す。
【0049】
上記(1)式および(2)式より、測定される分割領域211の温度Tempは、例えば下記の(3)式のように表される。
【数3】
【0050】
上記(3)式において、ADC832から出力される電圧値VADC以外は既知の値である。そのため、ADC832からの電圧値VADCを取得することにより、制御部81は、サーミスタである抵抗体201が設けられた分割領域211の温度Tempを測定することができる。
【0051】
そして、制御部81は、各分割領域211について、基台19の設定温度と、基板Wの設定温度と、測定された温度Tempとに基づいて、対応するスイッチ82を制御することにより、対応するヒータ200に供給される電力を制御する。例えば、各分割領域211について、測定された温度が目標となる温度よりも低い場合、制御部81は、対応するヒータ200に電力が供給される頻度が多くなるように、対応するスイッチ82を制御する。一方、測定された温度が目標となる温度よりも高い場合、制御部81は、対応するヒータ200に電力が供給される頻度が少なくなるように、対応するスイッチ82を制御する。制御部81は、ヒータ制御部の一例である。
【0052】
本実施形態において、RFフィルタ72は、例えば図4に示されるように、複数のヒータ200に対して共通に1つ設けられている。ここで、制御基板80が基台19の外部に設けられるとすれば、分割領域211の数だけ、スイッチ82とヒータ200とを接続する配線と、測定部83と抵抗体201とを接続する配線とが基台19の外部の制御基板80まで引き出されることになる。分割領域211の数が数十以上になると、基台19の外部へ引き出される配線は百本以上になる場合がある。
【0053】
基台19の外部へ引き出された配線は、基台19内を通過しているため、基台19に供給されたRF電力が流れやすい。また、それぞれの配線は、ヒータ200に個別に電力を供給するための配線、または、抵抗体201の抵抗値を個別に測定するための配線であるため、RFを除去するためのフィルタを共通に設けることが難しい。そのため、RFを除去するためのフィルタは、それぞれの配線に個別に設けられることになる。
【0054】
基台19の外部へ引き出される配線が百本以上になると、RFを除去するためのフィルタを配置するスペースを確保することが難しい。基板Wの温度制御の面内均一性をさらに高める場合、分割領域211の数をさら増やすことが考えられる。この場合、基台19の外部へ引き出される配線がさらに増え、RFを除去するためのフィルタを配置するスペースを確保することがさらに難しくなる。
【0055】
これに対し、本実施形態では、制御基板80が、RF電力が供給される基台19内に配置されており、基台19によって囲まれている。これにより、スイッチ82とヒータ200とを接続する配線、および、測定部83と抵抗体201とを接続する配線には、RF電力がほとんど流れない。そのため、スイッチ82とヒータ200とを接続する配線、および、測定部83と抵抗体201とを接続する配線には、RFを除去するためのフィルタを設ける必要がない。そのため、基板処理装置1を小型化することができる。
【0056】
[基板Wの表面の温度と測定される温度との差]
また、本実施形態において、抵抗体201は、ヒータ200と下部電極18との間に配置されており、下部電極18は、ヒータ200よりも低い温度に設定される。そのため、基板Wの表面の温度と、抵抗体201によって測定される温度とは、例えば図6に示されるような関係になっている。図6は、基板Wの表面の温度と抵抗体201の温度との温度差Δtを説明するための図である。図6では、下部電極18の流路18fの上端を基準として、流路18fからの距離と温度との関係が図示されている。
【0057】
下部電極18内では、流路18fから離れるに従って温度が緩やかに上昇する。一方、下部電極18と静電チャック20との接触部分では、表面粗さ等により下部電極18や静電チャック20の内部よりも熱伝導率が低いため、下部電極18と静電チャック20との接触部分で温度が急激に上昇する。また、静電チャック20内では、流路18fから離れるに従って、ヒータ200の位置まで温度が緩やかに上昇し、ヒータ200の位置で温度が極大値となる。
【0058】
そして、静電チャック20内では、流路18fおよび静電チャック20から離れるに従って、温度が緩やかに下降する。さらに、基板W内でも流路18fおよび静電チャック20から離れるに従って、温度が緩やかに下降する。これにより、抵抗体201によって測定される温度と、基板Wの表面の温度との間には、温度差Δtが存在する場合がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、基板Wの表面と抵抗体201との温度差Δtが測定され、測定された温度差Δtに基づく補正値が作成される。そして、作成された補正値に基づいて、抵抗体201によって測定された温度が補正される。
【0060】
例えば、基板Wの温度を50[℃]に制御する場合を考える。抵抗体201の抵抗値に基づいて算出された温度は、抵抗体201の温度である。抵抗体201の温度が、基板Wの表面の温度よりも2[℃]低い場合、抵抗体201の抵抗値に基づいて算出された温度が50[℃]となるように、ヒータ200に供給される電力を制御するとすれば、基板Wの表面は、52[℃]になってしまう。
【0061】
そこで、本実施形態では、基板Wの表面の温度から抵抗体201の温度を引いた温度差が補正値として算出される。先の例では、温度差は2[℃]である。そして、基板Wの設定温度tWから補正値Cを引いた値が、抵抗体201によって測定される分割領域211の設定温度tRとして決定される。先の例では、tR=tW-Cとなる。
【0062】
制御部81は、抵抗体201によって測定される温度が、決定された設定温度tRとなるように、対応するヒータ200に供給される電力を制御する。これにより、先の例では、抵抗体201によって測定される分割領域211の設定温度tRが50-2=48[℃]となるように制御されることにより、基板Wの表面が50[℃]に制御される。
【0063】
ここで、補正値Cは、下部電極18の温度や下部電極18と基板Wとの温度差によって異なる場合がある。そのため、本実施形態では、下部電極18の設定温度毎に第1の補正値C1が測定され、下部電極18と基板Wとの温度差毎に第2の補正値C2が予め測定される。そして、制御部81は、測定された第1の補正値C1および第2の補正値C2に基づいて補正値Cを特定する。
【0064】
本実施形態では、制御部81は、分割領域211毎に、例えば図7に示されるような第1の補正値テーブル810と、例えば図8に示されるような第2の補正値テーブル811とを保持する。第1の補正値テーブル810には、例えば図7に示されるように、下部電極18の設定温度に対応付けて、第1の補正値C1が格納されている。また、第2の補正値テーブル811には、例えば図8に示されるように、下部電極18の設定温度と基板Wの表面の設定温度との温度差に対応付けて、第2の補正値C2が格納されている。第1の補正値テーブル810および第2の補正値テーブル811の作成方法、および、抵抗体201によって測定された温度の補正方法については、後述する。なお、以下では、第1の補正値テーブル810および第2の補正値テーブル811を区別せずに総称する場合に、補正値テーブルと記載する。
【0065】
[補正値テーブルを作成する際の基板処理装置1の構成]
第1の補正値テーブル810および第2の補正値テーブル811を作成する際には、例えば図9に示されるような構成の基板処理装置1が用いられる。図9は、補正値テーブルを作成する際の基板処理装置1の構成の一例を示す概略断面図である。図9に例示された基板処理装置1は、図1に例示された基板処理装置1から上部電極30が取り外され、キャリブレーションユニット300が取り付けられたものである。なお、以下に説明する点を除き、図9において、図1と同じ符号を付した部材は、図1に示した部材と同一または同様の機能を有するため説明を省略する。
【0066】
第1の補正値テーブル810および第2の補正値テーブル811を作成する際には、表面が黒く着色されたダミー基板W’が静電チャック20上に載置され、ダミー基板W’の表面の温度分布が測定される。キャリブレーションユニット300は、IR(InfraRed)カメラ301およびカバー部材302を有する。カバー部材302は、IRカメラ301の撮影方向が静電チャック20上のダミー基板W’の方向を向くようにIRカメラ301を支持する。IRカメラ301は、ダミー基板W’の表面から放射される赤外線の放射量に基づいて、ダミー基板W’の表面の温度を測定する。そして、IRカメラ301は、測定されたダミー基板W’の表面の温度の情報を制御装置11へ出力する。
【0067】
[補正値テーブルの作成処理]
図10は、補正値テーブルを作成する際の基板処理装置1の処理の一例を示すフローチャートである。図10に例示された処理は、図9に例示された基板処理装置1において、制御装置11が装置本体10の各部を制御することにより実現される。
【0068】
まず、制御装置11は、変数kの値を1に初期化する(S100)。そして、制御装置11は、下部電極18の温度をtkに設定する(S101)。ステップS100では、制御装置11は、下部電極18の流路18f内を循環する冷媒の温度がtkとなるように、図示しないチラーユニットを制御する。
【0069】
次に、制御装置11は、それぞれの分割領域211の温度をtk+Δt0に設定する(S102)。本実施形態において、Δt0は、例えば50[℃]である。ステップS101では、制御装置11は、それぞれの分割領域211について、設定温度tk+Δt0を、制御基板80の制御部81へ送信する。制御部81は、それぞれの分割領域211について、抵抗体201の電圧値に基づいて測定された分割領域211の温度が、設定温度tk+Δt0となるように、ヒータ200に供給される電力を制御する。
【0070】
そして、制御装置11は、下部電極18、静電チャック20、およびダミー基板W’の温度が安定するまで待機する(S103)。
【0071】
次に、制御装置11は、IRカメラ301を制御して、ダミー基板W’の表面の温度を測定する(S104)。
【0072】
次に、制御装置11は、各分割領域211について、ダミー基板W’の表面と分割領域211との温度差Δtを算出する。そして、制御装置11は、各分割領域211について、算出された温度差Δtを、補正値C1kとして第1の補正値テーブル810に保存する(S105)。
【0073】
次に、制御装置11は、変数kの値を1増やし(S106)、変数kの値が定数mの値より大きいか否かを判定する(S107)。定数mは、第1の補正値テーブル810内に格納される第1の補正値C1の数である。変数kの値が定数mの値以下である場合(S107:No)、制御装置11は、再びステップS101に示された処理を実行する。
【0074】
一方、変数kの値が定数mの値より大きい場合(S107:Yes)、制御装置11は、変数kの値を再び1に初期化する(S108)。そして、制御装置11は、下部電極18の温度をt0に設定する(S109)。本実施形態において、t0は、例えば10[℃]である。ステップS109では、制御装置11は、下部電極18の流路18f内を循環する冷媒の温度がt0となるように、図示しないチラーユニットを制御する。
【0075】
次に、制御装置11は、それぞれの分割領域211の温度をt0+Δtkに設定する(S110)。ステップS110では、制御装置11は、それぞれの分割領域211について、設定温度t0+Δtkを、制御基板80の制御部81へ送信する。制御部81は、それぞれの分割領域211について、抵抗体201の電圧値に基づいて測定された分割領域211の温度が設定温度t0+Δtkとなるように、ヒータ200に供給される電力を制御する。
【0076】
そして、制御装置11は、下部電極18、静電チャック20、およびダミー基板W’の温度が安定するまで待機する(S111)。
【0077】
次に、制御装置11は、IRカメラ301を制御して、ダミー基板W’の表面の温度を測定する(S112)。
【0078】
次に、制御装置11は、各分割領域211について、ダミー基板W’の表面と分割領域211との温度差Δtを算出する。そして、制御装置11は、各分割領域211について、算出された温度差Δtを、補正値C2kとして第2の補正値テーブル811に保存する(S113)。
【0079】
次に、制御装置11は、変数kの値を1増やし(S114)、変数kの値が定数nの値より大きいか否かを判定する(S115)。定数nは、第2の補正値テーブル811内に格納される第2の補正値C2の数である。変数kの値が定数nの値以下である場合(S115:No)、制御装置11は、再びステップS110に示された処理を実行する。一方、変数kの値が定数nの値より大きい場合(S115:Yes)、制御装置11は、本フローチャートに示された処理を終了する。
【0080】
[基板Wの処理時の温度制御]
図11は、第1の実施形態における温度制御の一例を示すフローチャートである。図11に例示された処理は、図1に例示された基板処理装置1において、制御部81が制御基板80の各部を制御することにより実現される。なお、制御部81は、図11に例示された処理が開始される前に、図10に例示された処理によって作成された第1の補正値テーブル810および第2の補正値テーブル811を保持している。
【0081】
まず、制御部81は、処理対象となる基板Wの設定温度を制御装置11から取得する(S200)。また、制御部81は、下部電極18の設定温度を制御装置11から取得する(S201)。そして、制御部81は、第1の補正値テーブル810を参照して、各分割領域211について、ステップS201で取得された下部電極18の設定温度に対応する第1の補正値C1を特定する(S202)。そして、制御部81は、第2の補正値テーブル811を参照して、各分割領域211について、基板Wの設定温度と下部電極18の設定温度との温度差Δtに対応する第2の補正値C2を特定する(S203)。
【0082】
次に、制御部81は、特定された第1の補正値C1および第2の補正値C2に基づいて、各分割領域211の設定温度を決定する(S204)。ステップS204において、制御部81は、例えば、下記の(4)式に基づいて、各分割領域211の設定温度tRを決定する。
【数4】
上記(4)式において、tWは基板Wの設定温度、C1は第1の補正値C1、C2は第2の補正値C2を表す。
【0083】
次に、制御部81は、ステップS204において決定された設定温度tRに基づいて、各分割領域211のヒータ200への供給電力を制御する(S205)。
【0084】
次に、制御部81は、制御装置11から処理の終了が通知されたか否かを判定する(S206)。処理の終了が通知された場合(S206:Yes)、本フローチャートに示された処理が終了する。
【0085】
一方、処理の終了が通知されていない場合(S206:No)、制御部81は、制御装置11から基板Wの設定温度の変更が指示されたか否かを判定する(S207)。基板Wの設定温度の変更が指示されていない場合(S207:No)、制御部81は、再びステップS205に示された処理を実行する。一方、基板Wの設定温度の変更が指示された場合(S207:Yes)、制御部81は、再びステップS200に示された処理を実行する。
【0086】
以上、第1の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理装置1は、プラズマを用いて基板Wを処理する基板処理装置1であって、基板Wが収容されるチャンバ12と、チャンバ12内に配置され、基板Wが載置される載置台16とを備える。載置台16は、基台19と、静電チャック20と、複数のヒータ200と、制御部81と、RFフィルタ72とを有する。基台19は、導体によって形成され、RF電力が流れる。静電チャック20は、基台19上に設けられ、基板Wを保持する。複数のヒータ200は、静電チャック20に設けられている。制御部81は、基台19の内部に設けられ、複数のヒータ200のそれぞれに供給される電力を制御する。RFフィルタ72は、基台19の外部に設けられ、ぞれぞれの静電チャック20に電力を供給するための金属配線73に接続される。また、RFフィルタ72は、複数のヒータ200に対して共通に1つ設けられている。これにより、基板処理装置1を小型化することができる。
【0087】
また、上記した実施形態において、載置台16は、載置台16は、それぞれのヒータ200の近傍に配置され、温度によって抵抗値が変化する複数の抵抗体201と、それぞれの抵抗体201の抵抗値を測定する複数の測定部83とを有する。制御部81は、スイッチ82によって測定された抵抗値に対応する温度に基づいて、対応するヒータ200への電力の供給を制御する。これにより、それぞれのヒータ200が設けられた領域に対応する基板Wの領域の温度を精度よく制御することができる。
【0088】
また、上記した実施形態において、それぞれの抵抗体201は、対応するヒータ200と基台19との間に配置されている。これにより、ヒータ200の熱を効率よく基板Wに伝えることができる。
【0089】
また、上記した実施形態において、制御部81は、それぞれの抵抗体201の抵抗値に対応する温度を、抵抗体201の抵抗値に対応する温度と抵抗体201が設けられた位置に対応する基板Wの位置の温度との温度差に基づいて補正し、補正後の温度に基づいて、対応するヒータ200への電力の供給を制御する。これにより、基板Wの温度をより精度よく制御することができる。
【0090】
また、上記した実施形態において、抵抗体201は、サーミスタである。これにより、基板Wの温度を精度よく制御することができる。
【0091】
また、上記した実施形態は、プラズマを用いて基板を処理する基板処理装置1が備えるチャンバ12内に配置され、基板Wが載置される載置台16であって、基台19と、静電チャック20と、複数のヒータ200と、制御部81と、RFフィルタ72とを有する。基台19は、導体によって形成され、RF電力が流れる。静電チャック20は、基台19上に設けられ、基板Wを保持する。複数のヒータ200は、静電チャック20に設けられている。制御部81は、基台19の内部に設けられ、複数のヒータ200のそれぞれに供給される電力を制御する。RFフィルタ72は、基台19の外部に設けられ、ぞれぞれのヒータ200に電力を供給するための金属配線73に接続される。また、RFフィルタ72は、複数のヒータ200に対して共通に1つ設けられている。これにより、載置台16を小型化することができる。
【0092】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ヒータ200とは別に設けられた抵抗体201の抵抗値に基づいて、抵抗体201が設けられた分割領域211の温度が測定された。これに対し、本実施形態では、ヒータ200の抵抗値に基づいて、ヒータ200が設けられた分割領域211の温度が測定される。これにより、抵抗体201が不要となり、載置台16を小型化することができる。
【0093】
以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、基板処理装置1の構成は、図1図3を用いて説明された第1の実施形態における基板処理装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
[制御基板80の機能ブロック]
図12は、第2実施形態における制御基板80の機能構成の一例を示すブロック図である。制御基板80には、素子800として、制御部85、電圧計86、複数の電流計87、複数のスイッチ88、および複数の測定部89が設けられている。電流計87、スイッチ88、および測定部89は、それぞれのヒータ200に対して、1つずつ設けられている。
【0095】
それぞれのスイッチ88は、制御部85からの制御信号に応じて、RFフィルタ72を介して対応するヒータ200に供給される電力の供給および供給遮断を制御する。
【0096】
電圧計86は、それぞれのヒータ200に供給される電圧を測定し、電圧の測定値をそれぞれの測定部89へ出力する。
【0097】
それぞれの電流計87は、スイッチ88によってヒータ200へ電力が供給される際に、ヒータ200に流れる電流を測定し、電流の測定値を、対応する測定部89へ出力する。
【0098】
それぞれの測定部89は、電圧計86から出力された電圧の測定値と、対応する電流計87から出力された電流の測定値とを用いて、対応するヒータ200の抵抗値を算出する。そして、それぞれの測定部89は、算出された抵抗値を制御部85へ出力する。
【0099】
制御部85は、例えば図13に示されるような変換テーブル850を保持している。図13は、変換テーブル850の一例を示す図である。変換テーブル850には、それぞれの分割領域211を識別する識別子851毎に、個別テーブル852が格納されている。それぞれの個別テーブル852には、識別子851で識別される分割領域211の温度に対応付けて、当該分割領域211に配置されているヒータ200の抵抗値が格納されている。
【0100】
制御部85は、それぞれの分割領域211に設けられたヒータ200について、測定部89によって測定された抵抗値を取得する。そして、制御部85は、取得された抵抗値に対応する個別テーブル852を変換テーブル850から抽出し、抽出された個別テーブル852を参照して、取得された抵抗値に対応する温度を特定する。取得された抵抗値と同一の抵抗値が個別テーブル852内に格納されていない場合、制御部85は、取得された抵抗値に近い抵抗値の値を線形補間することにより、取得された抵抗値に対応する温度を特定する。
【0101】
そして、制御部85は、それぞれの分割領域211について、特定された温度を第1の実施形態と同様の方法により補正する。そして、制御部85は、それぞれの分割領域211について、補正後の温度が、制御装置11から通知された基板Wの設定温度となるように、対応するスイッチ88を制御することにより、対応するヒータ200への電力供給を制御する。
【0102】
[変換テーブル850の作成]
図14は、変換テーブル850の作成方法の一例を示すフローチャートである。図14に例示された処理は、図9に例示された基板処理装置1において、制御装置11が装置本体10の各部を制御することにより実現される。
【0103】
まず、制御装置11は、変換テーブル850に格納される複数の温度の中で、未選択の温度を1つ選択する(S300)。
【0104】
次に、制御装置11は、IRカメラ301を制御して、ダミー基板W’の表面の温度の測定を開始する(S301)。
【0105】
次に、制御装置11は、ステップS300で選択された温度とダミー基板W’の表面の温度との差が予め定められた温度(例えば0.1[℃]未満の温度)以下となるように、各分割領域211のヒータ200への供給電力を調整する(S302)。ステップS302では、IRカメラ301によって測定されたダミー基板W’の表面の温度に基づいて、制御装置11が制御部85に、各分割領域211のヒータ200への供給電力の増加および減少を指示する。制御部85は、制御装置11からの指示に応じて、各分割領域211に対応するスイッチ88を制御する。
【0106】
ステップS300で選択された温度とダミー基板W’の表面の温度との差が予め定められた温度以下となった場合、制御装置11は、制御部85から各分割領域211のヒータ200の抵抗値を取得する(S303)。
【0107】
次に、制御装置11は、変換テーブル850に格納される全ての温度が選択されたか否かを判定する(S304)。未選択の温度がある場合(S304:No)、再びステップS300に示された処理が実行される。
【0108】
一方、全ての温度が選択された場合(S304:Yes)、制御装置11は、分割領域211毎に、選択された温度に対応付けて、ヒータ200の抵抗値を個別テーブル852に格納することにより変換テーブル850を作成する(S305)。そして、制御装置11は、作成された変換テーブルを制御部85に保存させる(S306)。そして、本フローチャートに示された処理が終了する。
【0109】
[基板Wの処理時の温度制御]
図15は、第2の実施形態における温度制御の一例を示すフローチャートである。図15に例示された処理は、図1に例示された基板処理装置1において、制御部85が制御基板80の各部を制御することにより実現される。なお、制御部85は、図15に例示された処理が開始される前に、図14に例示された処理によって作成された変換テーブル850を保持している。
【0110】
まず、制御部85は、処理対象となる基板Wの設定温度を制御装置11から取得する(S400)。そして、制御部85は、測定部89から分割領域211毎のヒータ200の抵抗値を取得する(S401)。
【0111】
次に、制御部85は、変換テーブル850を参照し、分割領域211毎に、分割領域211に対応する基板Wの領域の温度を特定する(S402)。そして、制御部85は、分割領域211毎に、ステップS402で特定された温度と、ステップS400で取得された基板Wの設定温度との差に基づいて、ヒータ200への供給電力を制御する(S403)。例えば、制御部85は、分割領域211毎に、ステップS402で特定された温度と、ステップS400で取得された基板Wの設定温度との差が予め定められた温度(例えば0.1[℃]未満の温度)以下となるように、ヒータ200への供給電力を制御する。
【0112】
次に、制御部85は、制御装置11から処理の終了が通知されたか否かを判定する(S404)。処理の終了が通知された場合(S404:Yes)、本フローチャートに示された処理が終了する。
【0113】
一方、処理の終了が通知されていない場合(S404:No)、制御部85は、制御装置11から基板Wの設定温度の変更が指示されたか否かを判定する(S405)。基板Wの設定温度の変更が指示されていない場合(S405:No)、制御部85は、再びステップS401に示された処理を実行する。一方、基板Wの設定温度の変更が指示された場合(S405:Yes)、制御部85は、再びステップS400に示された処理を実行する。
【0114】
以上、第2の実施形態について説明した。本実施形態においても、基板処理装置1を小型化することができる。
【0115】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0116】
例えば、上記した実施形態では、基板処理装置1として、プラズマを用いて基板Wに対してエッチングを行う装置を例に説明したが、開示の技術はこれに限られない。例えば、プラズマを用いて成膜や改質等の処理を行う装置に対しても開示の技術を適用することができる。
【0117】
また、上記した実施形態では、プラズマ源の一例として、容量結合型プラズマ(CCP)を用いて処理を行う基板処理装置1を説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。
【0118】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
W 基板
W’ ダミー基板
1 基板処理装置
10 装置本体
11 制御装置
12 チャンバ
13 筐体
16 載置台
17 カバープレート
18 下部電極
19 基台
20 静電チャック
200 ヒータ
201 抵抗体
211 分割領域
30 上部電極
300 キャリブレーションユニット
301 IRカメラ
34 天板
36 天板保持部
50 排気装置
61 第1のRF電源
62 第2のRF電源
63 第1の整合器
64 第2の整合器
70 電力供給装置
71 シールド部材
72 RFフィルタ
73 金属配線
75 光ファイバケーブル
80 制御基板
800 素子
81 制御部
810 第1の補正値テーブル
811 第2の補正値テーブル
82 スイッチ
83 測定部
830 基準電圧供給部
831 基準抵抗
832 ADC
85 制御部
850 変換テーブル
851 識別子
852 個別テーブル
86 電圧計
87 電流計
88 スイッチ
89 測定部
図1
図2
図3
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図5
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