(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】切削装置及び切削ブレードの管理方法
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240816BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240816BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20240816BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20240816BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B24B27/06 M
B24B49/12
B24B53/00 A
B24B53/00 K
B24B53/12 Z
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020068301
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】添島 義勝
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴光
(72)【発明者】
【氏名】濱砂 正博
(72)【発明者】
【氏名】新 剛資
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-287111(JP,A)
【文献】特開2018-062052(JP,A)
【文献】特開2020-192629(JP,A)
【文献】特開昭62-053803(JP,A)
【文献】米国特許第07495759(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 49/12
B24B 53/00
B24B 53/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルに装着した切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、
該切削ブレードの刃先の状態を検出する検出ユニットと、
該検出ユニットの検出結果を報知する報知部と、を備え、
該検出ユニットは、
該切削ブレードの外周の切り刃を挟んで配置される発光部と受光部を有し、
該切削ブレードで所定距離を切削する前後の該受光部の受光量の変化から
、該切削ブレードで該所定距離を切削する前後の切削ブレードの磨耗量を測定する磨耗量測定部と、
該磨耗量測定部の測定結果に基づいて切削ブレードの状態を判定する判定部と、を備え、
該判定部は、測定された磨耗量が
該切削ブレードの磨耗量の下限値となる閾値未満である場合、
該切削ブレードに目つぶれや目詰まりが起きた可能性があると判定して、該切削ブレードによる被加工物の切削を停止すべき状態と判定し、
該報知部は、該判定部の判定結果を報知することを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該切削ブレードをドレッシングするためのドレッシングボードを保持するサブチャックテーブルと、
該切削ブレードにドレッシングが必要と該判定部が判定した場合、該サブチャックテーブルに保持されたドレッシングボードを該切削ブレードで切削させる制御ユニットと、
を備える請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
請求項1に記載の切削装置を用いた切削ブレードの管理方法であって、
該切削ブレードで該被加工物を所定距離切削した際の磨耗量の下限値となる閾値を登録する登録ステップと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する途中または前後に、該切削ブレードの刃先の磨耗量を測定する磨耗量測定ステップと、
該磨耗量測定ステップで測定された磨耗量と該登録ステップで登録された閾値とを比較する比較ステップと、を備え、
該比較ステップにおいて、該磨耗量が該登録ステップで登録した閾値を下回る場合、警告を発する警告ステップを有する、切削ブレードの管理方法。
【請求項4】
該警告ステップでは、該切削ブレードのドレッシングを促すことを特徴とする、請求項3に記載の切削ブレードの管理方法。
【請求項5】
該警告ステップでは、該切削ブレードの交換を促すことを特徴とする、請求項3に記載の切削ブレードの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置及び切削ブレードの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハのような被加工物をチップサイズへと分割する加工装置として、切削ブレードをスピンドルの先端に装着して高速回転させながら被加工物に接触させることで被加工物を切削する切削装置が知られている(特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-053803号公報
【文献】特開2001-298001号公報
【文献】特開2002-370140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような切削装置で用いられる切削ブレードの切り刃は、砥粒がボンドで固定されることで形成されており、切削加工によって磨耗し、自生発刃により常に一定の切れ味が維持されている。よって、定期的に切削ブレードの磨耗量を測定し、磨耗量にあわせて切削ブレードの高さ(切り込み深さ)を調整することで、所定の深さの切り込み量が維持できるように制御される。特許文献1,2の切削装置では、対面する発光部と受光部を備え、その間に切削ブレードを下降させて、切削ブレードによって光が遮蔽されることによって生じる受光量の変化から、切削ブレードの刃先位置を検出するとともに、切削ブレードの消耗量を測定する機構が提案されている。また、特許文献3の切削装置では、対面する発光部と受光部を備えるブレード破損検出器によって、切削ブレードの刃先の欠けを随時検出する機構も提案されている。
【0005】
しかしながら、上述した機構では、切削ブレードの磨耗量が所定値より大きい場合や、刃先の欠けが存在する場合に異常を検知するのみであり、切削ブレードの目つぶれや目詰まりなどは異常とみなされていなかった。このため、これらの切削ブレードの異常に起因する突発チッピングなどの加工不良を抑制することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削ブレードの目つぶれや目詰まりなどに起因する加工不良を抑制できる切削装置及び切削ブレードの管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルに装着した切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該切削ブレードの刃先の状態を検出する検出ユニットと、該検出ユニットの検出結果を報知する報知部と、を備え、該検出ユニットは、該切削ブレードの外周の切り刃を挟んで配置される発光部と受光部を有し、該切削ブレードで所定距離を切削する前後の該受光部の受光量の変化から、該切削ブレードで該所定距離を切削する前後の切削ブレードの磨耗量を測定する磨耗量測定部と、該磨耗量測定部の測定結果に基づいて切削ブレードの状態を判定する判定部と、を備え、該判定部は、測定された磨耗量が該切削ブレードの磨耗量の下限値となる閾値未満である場合、該切削ブレードに目つぶれや目詰まりが起きた可能性があると判定して、該切削ブレードによる被加工物の切削を停止すべき状態と判定し、該報知部は、該判定部の判定結果を報知することを特徴とする。
【0008】
該切削ブレードをドレッシングするためのドレッシングボードを保持するサブチャックテーブルと、該切削ブレードにドレッシングが必要と該判定部が判定した場合、該サブチャックテーブルに保持されたドレッシングボードを該切削ブレードで切削させる制御ユニットと、を備えていてもよい。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削ブレードの管理方法は、上記した切削装置を用いた切削ブレードの管理方法であって、該切削ブレードで該被加工物を所定距離切削した際の磨耗量の下限値となる閾値を登録する登録ステップと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する途中または前後に、該切削ブレードの刃先の磨耗量を測定する磨耗量測定ステップと、該磨耗量測定ステップで測定された磨耗量と該登録ステップで登録された閾値とを比較する比較ステップと、を備え、該比較ステップにおいて、該磨耗量が該登録ステップで登録した閾値を下回る場合、警告を発する警告ステップを有する。
【0010】
該警告ステップでは、該切削ブレードのドレッシングを促してもよい。
【0011】
該警告ステップでは、該切削ブレードの交換を促してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、切削ブレードの目つぶれや目詰まりなどに起因する加工不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の切削装置の要部の構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る切削ブレードの管理方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る切削装置の要部の構成例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の切削装置の要部の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1の切削装置1の要部の構成例を示す断面図である。切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、サブチャックテーブル15と、切削ユニット20と、検出ユニット30と、報知部50と、制御ユニット60と、を備える。
【0016】
切削装置1の切削対象である被加工物100は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハである。被加工物100は、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にチップサイズのデバイス103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。また、本発明では、被加工物100は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0017】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持する。チャックテーブル10は、被加工物100を保持する平坦な保持面11が上面に形成されかつ多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から構成された円盤形状の吸着部と、吸着部を上面中央部の窪み部に嵌め込んで固定する枠体とを備えた円盤形状である。保持面11は、水平面であるXY平面に平行に形成されている。チャックテーブル10は、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面11全体で、被加工物100を吸引保持する。
【0018】
チャックテーブル10は、X軸移動ユニットにより水平方向の一方向であるX軸方向に移動自在に設けられている。チャックテーブル10は、不図示の回転駆動部が接続されており、回転駆動部によりXY平面に直交し鉛直方向に平行なZ軸周りに回転可能である。
【0019】
サブチャックテーブル15は、チャックテーブル10に隣接する位置に設けられ、ドレッシングボード200を保持面16で吸引保持する。ドレッシングボード200は、切削ブレード21により切削されることで、切削ブレード21の砥粒を覆っているボンド材を除去して砥粒を突出させ、加工品質を向上させるドレッシングに使用される。
【0020】
切削ユニット20は、
図2に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、切削ブレード昇降部23と、を含む。切削ブレード21は、外周縁に設けられた切り刃21-1を有する。切り刃21-1は、例えば、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。切削ブレード21は、切削するに従い切り刃21-1が磨耗することで自生発刃し、一定以上の切れ味が常に維持される。一方、切削ブレード21は、目つぶれや目詰まりなどが起きてしまった場合、目つぶれや目詰まりなどに起因して、磨耗量が異常に小さくなってしまい、突発チッピングなどの加工不良を起こしてしまうおそれがある。
【0021】
切削ブレード21は、水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する。スピンドル22は、軸心がY軸方向に沿って設けられ、先端で軸心周りに回転可能に切削ブレード21を支持する。スピンドル22は、Y軸周りに回転駆動し、切削ブレード21の回転軸となる。切削ブレード昇降部23は、スピンドル22をZ軸方向に移動させることで、スピンドル22の先端で支持された切削ブレード21を昇降させる。
【0022】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、Y軸移動ユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニットによりXY平面に直交し鉛直方向に平行なZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0023】
切削ユニット20は、切削ブレード21を回転させながら、X軸移動ユニット、Y軸移動ユニット及びZ軸移動ユニットにより、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して切削ブレード21を分割予定ライン102に沿って相対的に移動させて、分割予定ライン102に沿って被加工物100を切削ブレード21で切削加工する。
【0024】
検出ユニット30は、
図2に示すように、センサー部31と、光源35と、受光素子36と、光電変換部37と、電圧比較部41と、端部位置検出部45と、算出部46と、位置補正部47と、判定部48と、を備える。検出ユニット30のセンサー部31は、実施形態1では、
図1及び
図2に示すように、切削ユニット20の切削ブレード21の下方に設置されている。
【0025】
センサー部31は、
図2に示すように、基部31-1と、基部31-1から立設した一対の側壁31-2とを有している。一対の側壁31-2は、Y軸方向に間隔をあけて配置され、互いの間の間隔が、切削ブレード21の切り刃21-1の厚みよりも広い幅を有している。一対の側壁31-2は、互いの間に回転する切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が進入可能な溝部31-3を形成している。
【0026】
センサー部31は、
図2に示すように、発光部33と、受光部34と、を有する。発光部33は、
図2に示すように、一方の側壁31-2に設けられ、他方の側壁31-2に向けて光を発する。発光部33は、
図2に示すように、光源35が光ファイバー等により光学的に接続されており、光源35からの光を発する。
【0027】
受光部34は、
図2に示すように、他方の側壁31-2に発光部33と対面する位置に設けられ、発光部33からの光を受光する。受光部34は、受光素子36が光ファイバー等により光学的に接続されており、受光素子36で受光部34が受光した光を検出する。受光素子36は、光電変換部37に光ファイバー等により光学的に接続されており、検出した光を光電変換部37に送る。
【0028】
検出ユニット30は、発光部33と受光部34の間、すなわち溝部31-3に切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2を進入させて、下端部21-2の高さ(溝部31-3における深さ方向の位置)を検出することで、切削ブレード21の切り刃21-1の刃先の状態を検出する。発光部33と受光部34とは、溝部31-3に切削ブレード21の切り刃21-1の下方の刃先である下端部21-2を進入させたとき、切削ブレード21の切り刃21-1を挟んで配置された状態となる。
【0029】
光電変換部37は、受光素子36が検出した光の光量に対応した電圧を電圧比較部41へ出力する。なお、受光素子36が検出した光の光量は、受光部34が受光した光の量である受光量に対応している。切削ブレード21の切り刃21-1が溝部31-3に進入するに従って、切削ブレード21の切り刃21-1が発光部33と受光部34との間を遮る量が増加すると、光電変換部37からの出力電圧が徐々に減少する。光電変換部37は、受光部34の受光量が所定光量となったとき、すなわち切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が発光部33と受光部34との間の所定位置に達したときに、出力電圧が基準電圧になるように設定されている。所定位置は、例えば、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が保持面11の上面に接触する位置として設定される。
【0030】
電圧比較部41は、上記した基準電圧を設定する基準電圧設定部42を備える。電圧比較部41は、光電変換部37からの出力電圧と基準電圧設定部42によって設定された基準電圧とを比較し、光電変換部37からの出力電圧が基準電圧に達したとき、その旨の信号を端部位置検出部45に出力する。端部位置検出部45は、電圧比較部41から上記信号が出力された時点で、切削ブレード昇降部23から取得した切削ユニット20のZ軸方向における位置を切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置(原点位置)として検出する。つまり、端部位置検出部45は、受光部34の受光量が所定光量になったとき、すなわち切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が発光部33と受光部34との間の所定位置に達したときに、切削ブレード昇降部23から取得した切削ユニット20のZ軸方向における位置を切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置として検出する。端部位置検出部45は、検出した切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置を算出部46に出力する。
【0031】
算出部46は、端部位置検出部45によって検出された基準位置に基づいて、Z軸方向の切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の位置の補正量を算出する。位置補正部47は、算出部46によって算出された補正量に基づいて、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2のZ軸方向の位置を補正する。
【0032】
また、電圧比較部41は、受光部34の受光量の変化から切削ブレード21の磨耗量を測定する磨耗量測定部43としても機能する。磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41は、例えば、切削ブレード21で所定量を切削する前後の受光部34の受光量の変化量に基づいて、切削ブレード21で所定量を切削することによる切削ブレード21の磨耗量を測定する。ここで、所定量とは、被加工物100の種類、切削ブレード21の種類、切削ブレード21が切削する距離、深さ、分割予定ライン102の本数などにより適宜設定され、実施形態1では、切削ブレード21で切削する距離により設定される。磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41は、測定した切削ブレード21の磨耗量の情報を、判定部48に出力する。
【0033】
判定部48は、磨耗量測定部43の測定結果に基づいて切削ブレード21の状態を判定する。ここで、判定部48が判定する対象の切削ブレード21の状態は、実施形態1では、切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であるか否かの状態である。判定部48は、磨耗量測定部43で測定された磨耗量が所定の値に達しない場合、当該磨耗量が測定された切削ブレード21の磨耗量が異常に小さいとして、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定し、この判定結果を報知部50に出力する。また、判定部48は、磨耗量測定部43で測定された磨耗量が所定の値に達している場合、当該磨耗量が測定された切削ブレード21の磨耗量が異常に小さい状態ではなく、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を継続しても問題ない状態であると判定する。
【0034】
切削装置1では、切削ブレード21に目つぶれや目詰まりなどが起きてしまった場合、切削ブレード21の磨耗量が異常に小さくなってしまうので、判定部48は、切削ブレード21の磨耗量が異常に小さいと判定することで、切削ブレード21に目つぶれや目詰まりなどが起きてしまった可能性があると判定することができる。
【0035】
判定部48は、切削ブレード21の磨耗量の下限値となる閾値を登録する閾値登録部49を備える。ここで、切削ブレード21の磨耗量の下限値となる閾値は、実施形態1では、被加工物100の種類、切削ブレード21の種類、及び切削距離に応じて経験的に認識される切削ブレード21の磨耗量に基づいて設定される。また、切削ブレード21の磨耗量の下限値となる閾値は、実施形態1では、被加工物100の種類や切削ブレード21の種類ごとに設定される。
【0036】
判定部48は、実施形態1では、磨耗量測定部43で測定された磨耗量が閾値登録部49で登録された閾値未満である場合を、上記した磨耗量測定部43で測定された磨耗量が所定の値に達しない場合と判定する。また、判定部48は、磨耗量測定部43で測定された磨耗量が閾値登録部49で登録された閾値以上である場合を、上記した磨耗量測定部43で測定された磨耗量が所定の値に達している場合と判定する。
【0037】
判定部48は、切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定する場合、実施形態1では、さらに、当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定するか、もしくは、当該切削ブレード21の交換が必要と判定する。判定部48は、実施形態1では、被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定された切削ブレード21の切り刃21-1の残存量が、ドレッシングにより磨耗させても被加工物100の切削に使用できる量である場合、当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定し、切り刃21-1の残存量が、ドレッシングにより磨耗させると被加工物100の切削に使用できない量である場合、当該切削ブレード21の交換が必要と判定する。
【0038】
検出ユニット30の機能部である電圧比較部41、端部位置検出部45、算出部46、位置補正部47及び判定部48は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。これらの検出ユニット30の機能部は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実行して、検出ユニット30を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して検出ユニット30の各構成要素に出力する。演算処理装置は、オペレータから不図示の入力装置に入力された検出ユニット30の各処理の条件を、入出力インターフェース装置を介して受け付ける。
【0039】
電圧比較部41、端部位置検出部45、算出部46、位置補正部47及び判定部48の各機能は、実施形態1では、上記した検出ユニット30の機能部の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。電圧比較部41の基準電圧設定部42及び判定部48の閾値登録部49は、実施形態1では、上記した検出ユニット30の機能部の記憶装置により実現される。
【0040】
報知部50は、判定部48が、切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定した場合に、この判定結果の旨の警告情報を報知する。報知部50が報知する警告情報は、実施形態1では、判定部48のさらなる判定結果に基づくものであり、例えば、判定部48により被加工物100の切削を停止すべき状態と判定された切削ブレード21のドレッシングを促す旨の情報や、当該切削ブレード21の交換を促す旨の情報である。
【0041】
報知部50は、実施形態1では、表示ユニット51と、表示灯52と、を備える。表示ユニット51は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される。表示ユニット51は、制御ユニット60により制御されることで、表示する画像を切り替える。表示ユニット51は、判定部48の判定結果を表示して、切削装置1のオペレータに報知する。表示灯52は、発光ダイオードなどにより構成される。表示灯52は、制御ユニット60により制御されることで、点灯する。表示灯52は、点灯することにより、判定部48の判定結果を切削装置1のオペレータに報知する。報知部50は、本発明ではこれに限定されず、他には、スピーカ等により構成され、音声を発信する音声ユニットを備えていてもよい。
【0042】
制御ユニット60は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御する。制御ユニット60は、切削ユニット20の切削ブレード21による切削処理を実現する。制御ユニット60は、例えばオペレータにより入力設定された被加工物100の切削条件に従って、切削ブレード21により被加工物100を切削する。制御ユニット60は、判定部48が切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定し、さらに、当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定した場合、サブチャックテーブル15に保持されたドレッシングボード200を当該切削ブレード21で切削させることで、当該切削ブレード21をドレッシングする。
【0043】
制御ユニット60は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60は、CPUのようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM又はRAMのようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実行して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。演算処理装置は、オペレータから不図示の入力装置に入力された切削装置1の各処理の条件を、入出力インターフェース装置を介して受け付ける。
【0044】
検出ユニット30の機能部のコンピュータと、制御ユニット60のコンピュータとは、別々でもよいし、一体化されていてもよい。
【0045】
次に、本明細書は、実施形態1に係る切削装置1の動作の一例である切削ブレードの管理方法の処理の手順の一例を図面に基づいて説明する。
図3は、実施形態1に係る切削ブレードの管理方法の処理の手順の一例を示すフローチャートである。実施形態1に係る切削ブレードの管理方法は、
図3に示すように、登録ステップ1001と、磨耗量測定ステップ1002と、比較ステップ1003と、警告ステップ1005と、を備える。
【0046】
実施形態1に係る切削ブレードの管理方法は、切削ユニット20に装着されて切削処理に使用されている切削ブレード21がさらに被加工物100の切削に継続して使用されることが適切であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて当該切削ブレード21に対して所定の処置を促すものである。実施形態1に係る切削ブレードの管理方法は、切削ブレード21の使用に応じて定期的に実施され、例えば、切削ブレード21で所定量を切削する度に実施してもよいし、1枚の被加工物100の全ての分割予定ライン102を切削する度に実施してもよいし、1ロット(例えば、25枚)の被加工物100の全ての分割予定ライン102を切削する度に実施してもよい。
【0047】
実施形態1に係る切削ブレードの管理方法を実施する前には、予め、電圧比較部41、基準電圧設定部42、端部位置検出部45、算出部46及び位置補正部47による切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2のZ軸方向の位置の補正が実施される。この補正により、磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41が、切削ブレード21の刃先の磨耗量を正確に測定することが可能となる。
【0048】
登録ステップ1001は、閾値登録部49が、切削ブレード21で被加工物100を所定距離切削した際の磨耗量の下限値となる閾値を登録するステップである。登録ステップ1001では、閾値登録部49が、例えばオペレータによる入力設定に基づいて、磨耗量の閾値を登録する。
【0049】
磨耗量測定ステップ1002は、磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41が、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する途中または前後に、切削ブレード21の刃先の磨耗量を測定するステップである。磨耗量測定ステップ1002では、磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41が、切削ブレード21で被加工物100を所定距離切削する前後の受光部34の受光量の変化量に基づいて、切削ブレード21で被加工物100を所定距離切削することによる切削ブレード21の切り刃21-1の刃先の磨耗量を測定する。磨耗量測定ステップ1002では、磨耗量測定部43として機能する電圧比較部41が、測定した磨耗量の情報を判定部48に出力する。
【0050】
比較ステップ1003は、判定部48が、磨耗量測定ステップ1002で測定された磨耗量と登録ステップ1001で登録された閾値とを比較するステップである。比較ステップ1003において、判定部48は、磨耗量測定ステップ1002で測定された磨耗量が登録ステップ1001で登録された閾値以上である場合、当該磨耗量が測定された切削ブレード21の磨耗量が異常に小さい状態ではなく、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を継続しても問題ない状態であると判定し(
図3のステップ1004でNo)、切削ブレードの管理方法の処理を終了する。
【0051】
比較ステップ1003において、判定部48は、磨耗量測定ステップ1002で測定された磨耗量が登録ステップ1001で登録された閾値を下回る場合、当該磨耗量が測定された切削ブレード21の磨耗量が異常に小さいとして、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定し(
図3のステップ1004でYes)、この判定結果を報知部50に出力し、切削ブレードの管理方法の処理を警告ステップ1005に進める。
【0052】
比較ステップ1003では、判定部48は、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態であると判定した場合、実施形態1では、さらに、当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定するか、もしくは、当該切削ブレード21の交換が必要と判定し、これらの判定結果も合わせて報知部50に出力する。
【0053】
警告ステップ1005は、報知部50が、比較ステップ1003において、磨耗量測定ステップ1002で測定された磨耗量が登録ステップ1001で登録された閾値を下回る場合、警告を発するステップである。警告ステップ1005は、報知部50が、
図3のステップ1004でYesの場合に実施する。
【0054】
警告ステップ1005では、判定部48が比較ステップ1003で当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定した場合、報知部50は、当該切削ブレード21のドレッシングをオペレータに促す旨の報知をする。また、警告ステップ1005では、判定部48が比較ステップ1003で当該切削ブレード21の交換が必要と判定した場合、報知部50は、当該切削ブレード21の交換をオペレータに促す旨の報知をする。
【0055】
また、実施形態1に係る切削ブレードの管理方法では、判定部48が比較ステップ1003で当該切削ブレード21にドレッシングが必要と判定した場合、報知部50が警告ステップ1005で当該切削ブレード21のドレッシングをオペレータに促す旨の報知をする、もしくは当該報知をすることに代えて、制御ユニット60が、サブチャックテーブル15に保持されたドレッシングボード200を当該切削ブレード21で切削させることで、当該切削ブレード21をドレッシングしてもよい。
【0056】
以上のような構成を有する実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法は、測定した切削ブレード21の磨耗量が所定の閾値に達しない場合、判定部48が当該切削ブレード21による被加工物100の切削を停止すべき状態と判定し、報知部50がその旨を報知する。このため、実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法は、磨耗量が異常に小さくなっている状態を判定することで、切削ブレード21が目つぶれや目詰まりなどが起きてしまった可能性があると判定でき、この判定結果に従って当該切削ブレード21による被加工物100の切削を停止することができるので、切削ブレード21の目つぶれや目詰まりなどに起因する突発チッピングなどの加工不良を抑制できるという作用効果を奏する。
【0057】
また、実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法は、測定した切削ブレード21の磨耗量が所定の閾値に達しない場合、当該切削ブレード21の切り刃21-1の残存量に応じて、当該切削ブレード21のドレッシングを促したり、当該切削ブレード21の交換を促したりすることができる。このため、実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法は、さらに、切削ブレード21の状態の判定結果に応じた適切な対応を促すことができるという作用効果を奏する。
【0058】
また、実施形態1に係る切削装置1及び切削ブレードの管理方法は、測定した切削ブレード21の磨耗量が所定の閾値に達しない場合、サブチャックテーブル15に保持されたドレッシングボード200を当該切削ブレード21で切削させることで、当該切削ブレード21をドレッシングすることにより、速やかに、当該切削ブレード21による被加工物100の切削を可能な状態にできるという作用効果を奏する。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置1-2及び切削ブレードの管理方法を図面に基づいて説明する。
図4は、実施形態2に係る切削装置1-2の要部の構成例を示す斜視図である。
図5は、
図4の切削装置1-2の要部の構成例を示す断面図である。
図4及び
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
実施形態2に係る切削装置1-2は、
図4及び
図5に示すように、実施形態1に係る切削装置1において、切削ユニット20を切削ユニット20-2に変更し、検出ユニット30を検出ユニット30-2に変更したものである。
【0061】
切削ユニット20-2は、
図4及び
図5に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、ブレードカバー25と、給水ノズル26と、給水源接続部27と、昇降部29と、を備える。ブレードカバー25は、スピンドル22の先端側に設けられており、切削ブレード21の上方、前方及び後方を覆う。ブレードカバー25は、内部に複数の水路が形成されており、複数の水路の下側の一端には給水ノズル26が設けられ、複数の水路の上側の他端には給水源接続部27が設けられている。給水ノズル26は、給水源接続部27から供給される切削水を切削ブレード21の切り刃21-1の前方及び側方、並びに、切り刃21-1よりもさらに前方の被加工物100に供給する。切削水は、例えば、純水である。
【0062】
検出ユニット30-2は、検出ユニット30において、基準電圧設定部42と、端部位置検出部45と、算出部46と、位置補正部47と、が省略されたものである。検出ユニット30-2のセンサー部31は、実施形態2では、
図4及び
図5に示すように、切削ユニット20-2の切削ブレード21の上方に設置されている。具体的には、センサー部31は、ブレードカバー25の切削ブレード21の上方の刃先である上端部21-3と対向する位置に設置されている。
【0063】
昇降部29は、検出ユニット30-2のセンサー部31をZ軸方向に移動させることで、センサー部31を切削ブレード21の上端部21-3に対して接近または離間する方向に移動させる。
【0064】
検出ユニット30-2は、昇降部29でセンサー部31を切削ブレード21の上端部21-3に対して接近させ、発光部33と受光部34の間、すなわち溝部31-3に切削ブレード21の切り刃21-1の上端部21-3を進入させて、上端部21-3の高さ(溝部31-3における深さ方向の位置)を検出することで、切削ブレード21の切り刃21-1の刃先の状態を検出する。発光部33と受光部34とは、溝部31-3に切削ブレード21の切り刃21-1の上端部21-3を進入させたとき、切削ブレード21の切り刃21-1を挟んで配置された状態となる。
【0065】
実施形態2に係る切削装置1-2及び切削ブレードの管理方法は、実施形態1において、切削ユニット20を切削ユニット20-2に変更し、検出ユニット30を検出ユニット30-2に変更することにより、切削ブレード21の下端部21-2の高さを検出することに代えて、切削ブレード21の上端部21-3の高さを検出するようにしたものである。このため、実施形態2に係る切削装置1-2及び切削ブレードの管理方法は、実施形態1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0066】
実施形態2に係る切削装置1-2及び切削ブレードの管理方法は、さらに、被加工物100を切削中にも、検出ユニット30-2により切削ブレード21の切り刃21-1の刃先の状態を検出することができるので、切削中の切削ブレード21がさらに被加工物100の切削に継続して使用されることが適切であるか否かを判定することができるという作用効果を奏する。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では、磨耗量の下限値を設けて下限値を超えた場合に報知しているが、本発明では、さらに磨耗量の上限値も設けて上限値を超えた場合にも報知する機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,1-2 切削装置
10 チャックテーブル
15 サブチャックテーブル
20,20-2 切削ユニット
21 切削ブレード
21-1 切り刃
22 スピンドル
30,30-2 検出ユニット
33 発光部
34 受光部
43 磨耗量測定部
48 判定部
49 閾値登録部
50 報知部
60 制御ユニット
100 被加工物
200 ドレッシングボード