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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240816BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20240816BHJP
   C23C 14/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/312 N
C23C14/00 B
C23C14/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020181796
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072395
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市木 和弥
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】野沢 秀二
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150087(JP,A)
【文献】特開2020-155716(JP,A)
【文献】特開平04-307734(JP,A)
【文献】特開2016-127063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/312
C23C 14/00
C23C 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に配置されたステージ上に載せられた、一方の面に凹部が形成されている基板を第1の温度に加熱する加熱工程と、
前記容器内に材料ガスを供給することにより、前記基板の表面に熱分解可能な有機材料を積層する積層工程と、
前記ステージから離れた位置で前記基板を保持し、前記基板と前記ステージとの間に不活性ガスが供給され、前記基板を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより、前記凹部の周辺および前記基板の前記一方の面の裏面に積層された前記有機材料を除去する除去工程と
を含む基板処理方法。
【請求項2】
前記除去工程では、
前記ステージに設けられた温度調整部により、前記基板が前記第2の温度に加熱される請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記除去工程における前記基板と前記ステージとの間の距離は、0.5mm以上である請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記除去工程における前記基板と前記ステージとの間の距離は、0.5mm以上かつ2.1mm以下の範囲内の距離である請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
一方の面に凹部が形成されている基板が載せられるステージと、
前記ステージを収容する容器と、
前記容器内に材料ガスおよび不活性ガスを供給するガス供給部と、
前記基板の温度を調整する温度調整部と、
前記ステージから離れた位置で前記基板を保持する保持部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記ステージ上に載せられた前記基板を第1の温度に加熱する加熱工程を実行するように前記温度調整部を制御し、
前記容器内に材料ガスを供給することにより、前記基板の表面に熱分解可能な有機材料を積層する積層工程を実行するように前記ガス供給部を制御し、
前記ステージから離れた位置で前記基板を保持するように前記保持部を制御し、
前記基板と前記ステージとの間に不活性ガスを供給するように前記ガス供給部を制御し、
前記ステージから離れた位置にある前記基板を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより、前記凹部の周辺および前記基板の前記一方の面の裏面に積層された前記有機材料を除去する除去工程を実行するように前記温度調整部を制御する基板処理システム。
【請求項6】
第1の処理装置と、
第2の処理装置と、
搬送装置と、
制御部と
を備え、
前記第1の処理装置は、
一方の面に凹部が形成されている基板が載せられる第1のステージと、
前記第1のステージを収容する第1の容器と、
前記第1の容器内に材料ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記基板の温度を調整する第1の温度調整部と
を有し、
前記第2の処理装置は、
前記基板が載せられる第2のステージと、
前記第2のステージを収容する第2の容器と、
前記基板の温度を調整する第2の温度調整部と、
前記第2のステージから離れた位置で前記基板を保持する保持部と、
前記基板と前記第2のステージとの間に不活性ガスを供給する第2のガス供給部と
を有し、
前記制御部は、
前記第1のステージ上に載せられた前記基板を第1の温度に加熱する加熱工程を実行するように前記第1の温度調整部を制御し、
前記第1の容器内に材料ガスを供給することにより、前記基板の表面に熱分解可能な有機材料を積層する積層工程を実行するように前記第1のガス供給部を制御し、
前記有機材料が積層された前記基板を前記第1の容器内から前記第2の容器内へ搬送する搬送工程を実行するように前記搬送装置を制御し、
前記第2のステージから離れた位置で前記基板を保持するように前記保持部を制御し、
前記基板と前記第2のステージとの間に不活性ガスを供給するように前記第2のガス供給部を制御し、
前記第2のステージから離れた位置にある前記基板を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより、前記凹部の周辺および前記基板の前記一方の面の裏面に積層された前記有機材料を除去する除去工程を実行するように前記第2の温度調整部を制御する基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、基板処理方法および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、尿素結合を有する重合体を、基板に形成された空隙内に埋め込み、基板上に酸化膜を形成した後に、重合体を解重合させる技術が開示されている。解重合した重合体は、酸化膜を介して脱離することにより、酸化膜の下層に空隙が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-207909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる基板処理方法および基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、基板処理方法であって、加熱工程と、積層工程と、除去工程とを含む。加熱工程では、容器内に配置されたステージ上に載せられた、一方の面に凹部が形成されている基板が第1の温度に加熱される。積層工程では、容器内に材料ガスを供給することにより、基板の表面に熱分解可能な有機材料が積層される。除去工程では、ステージから離れた位置で基板が保持され、基板が第1の温度よりも高い第2の温度に加熱されることにより、凹部の周辺および基板の一方の面の裏面に積層された有機材料が除去される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、基板の裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態における基板処理システムの一例を示すシステム構成図である。
図2図2は、本開示の一実施形態における成膜装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、本開示の一実施形態におけるリセス装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略図である。
図5図5は、本開示の一実施形態における加熱装置の一例を示す概略図である。
図6図6は、本開示の一実施形態における基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、半導体装置の製造過程の一例を示す模式図である。
図8図8は、半導体装置の製造過程の一例を示す模式図である。
図9図9は、半導体装置の製造過程の一例を示す模式図である。
図10図10は、半導体装置の製造過程の一例を示す模式図である。
図11図11は、基板の裏面に付着した有機材料の膜厚の分布の一例を示す図である。
図12A図12Aは、基板の裏面に付着した有機材料の膜厚と基板の表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。
図12B図12Bは、基板の裏面に付着した有機材料の膜厚と基板の表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。
図12C図12Cは、基板の裏面に付着した有機材料の膜厚と基板の表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。
図13図13は、基板とステージとの距離が2.1mmの場合における基板の裏面に付着した有機材料の膜厚と基板の表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。
図14図14は、リセス処理後の基板の表面における有機材料の膜厚の均一性の一例を示す図である。
図15図15は、リセス装置の他の例を示す概略図である。
図16図16は、リセス装置の他の例を示す概略図である。
図17図17は、リセス装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示される基板処理方法および基板処理システムの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示される基板処理方法および基板処理システムが限定されるものではない。
【0009】
ところで、基板が収容された容器内に、重合体等の有機材料を積層するための材料ガスが供給されると、有機材料は、ステージ上に配置された基板の表面、即ち、基板におけるステージ側の面と反対側の面に積層される。しかし、材料ガスの一部は、ステージと基板の間にも入りこむため、基板の裏面、即ち、基板のステージ側の面にも有機材料の膜が積層される場合がある。
【0010】
基板の裏面に有機材料の膜が積層されると、基板を搬送する際に、基板の裏面に付着した膜が剥がれてパーティクルが発生する場合がある。また、基板の裏面に付着した膜が剥がれない場合であっても、次工程で別な装置内のステージ上に基板が載せられると、基板の裏面に付着した膜の影響で、ステージ上での基板の安定した保持が難しくなる場合がある。また、基板の裏面に付着した膜の影響で、ステージ上で基板が傾いた場合には、基板の温度分布に偏りが発生する場合もある。
【0011】
そこで、本開示は、基板の裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる技術を提供する。
【0012】
[基板処理システム10の構成]
図1は、本開示の一実施形態における基板処理システム10の一例を示すシステム構成図である。基板処理システム10は、成膜装置200、リセス装置300、プラズマ処理装置400、および加熱装置500を備える。基板処理システム10は、マルチチャンバータイプの真空処理システムである。基板処理システム10は、成膜装置200、リセス装置300、プラズマ処理装置400、および加熱装置500を用いて、半導体装置に用いられる素子が形成される基板Wにエアギャップを形成する。成膜装置200は第1の処理装置の一例であり、リセス装置300は第2の処理装置の一例である。
【0013】
成膜装置200は、凹部が形成された基板Wの表面に熱分解可能な有機材料の膜を積層させる。本実施形態において、熱分解可能な有機材料は、複数種類のモノマーの重合により生成された尿素結合を有する重合体である。リセス装置300は、成膜装置200によって有機材料の膜が積層された基板Wを加熱することにより、凹部の周辺の有機材料を除去すると共に、凹部内に積層された有機材料の厚さを予め定められた厚さまで減らすリセス処理を実行する。リセス処理では、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に積層された有機材料の膜も併せて除去される。基板Wの裏面とは、基板Wが載せられるステージ側の基板Wの面である。
【0014】
プラズマ処理装置400は、基板Wの凹部に積層された有機材料上に封止膜を積層させる。加熱装置500は、プラズマ処理装置400によって封止膜が積層された基板Wを加熱することにより、封止膜の下層の有機材料を熱分解させ、封止膜を介して有機材料を脱離させる。これにより、基板Wの凹部と封止膜との間にエアギャップが形成される。
【0015】
成膜装置200、リセス装置300、プラズマ処理装置400、および加熱装置500は、平面形状が七角形をなす真空搬送室101の4つの側壁にそれぞれゲートバルブGを介して接続されている。真空搬送室101の他の3つの側壁には、3つのロードロック室102がゲートバルブG1を介して接続されている。3つのロードロック室102のそれぞれは、ゲートバルブG2を介して大気搬送室103に接続されている。
【0016】
真空搬送室101内は、真空ポンプにより排気されて予め定められた真空度に保たれている。真空搬送室101内には、ロボットアーム等の搬送装置106が設けられている。搬送装置106は、成膜装置200、リセス装置300、プラズマ処理装置400、加熱装置500、およびそれぞれのロードロック室102の間で基板Wを搬送する。搬送装置106は、独立に移動可能な2つのアーム107aおよび107bを有する。
【0017】
大気搬送室103の側面には、基板Wを収容するキャリア(FOUP(Front-Opening Unified Pod)等)Cを取り付けるための複数のポート105が設けられている。また、大気搬送室103の側壁には、基板Wのアライメントを行うためのアライメント室104が設けられている。大気搬送室103内には清浄空気のダウンフローが形成される。
【0018】
大気搬送室103内には、ロボットアーム等の搬送装置108が設けられている。搬送装置108は、それぞれのキャリアC、それぞれのロードロック室102、およびアライメント室104の間で基板Wを搬送する。
【0019】
制御装置100は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリには、プロセッサによって実行されるプログラム、および、各処理の条件を含むレシピ等が格納されている。プロセッサは、メモリから読み出したプログラムを実行し、メモリ内に記憶されたレシピに基づいて、入出力インターフェイスを介して、基板処理システム10の各部を制御する。
【0020】
[成膜装置200]
図2は、本開示の一実施形態における成膜装置200の一例を示す概略断面である。成膜装置200は、容器201、排気装置202、シャワーヘッド206、およびステージ207を有する。本実施形態において、成膜装置200は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。容器201は第1の容器の一例であり、ステージ207は第1のステージの一例である。
【0021】
容器201の上部には、シャワーヘッド206が設けられている。シャワーヘッド206は、ガス供給部の一例である。容器201には、シャワーヘッド206を介して複数種類の原料モノマーが供給される。複数種類の原料モノマーは、例えばイソシアネートおよびアミンである。シャワーヘッド206には、イソシアネートを液体で収容する原料供給源203aが、配管204aを介して接続されている。また、シャワーヘッド206には、アミンを液体で収容する原料供給源203bが、配管204bを介して接続されている。
【0022】
原料供給源203aから供給されたイソシアネートの液体は、配管204aに介在する気化器205aにより気化される。気化器205aによって気化されたイソシアネートの蒸気は、配管204aを介して、シャワーヘッド206に導入される。また、原料供給源203bから供給されたアミンの液体は、配管204bに介在する気化器205bにより気化される。気化器205bによって気化されたアミンの蒸気は、シャワーヘッド206に導入される。気化されたイソシアネートの蒸気および気化されたアミンの蒸気は、材料ガスの一例である。
【0023】
シャワーヘッド206の下面には、多数の吐出孔が形成されている。シャワーヘッド206は、配管204a介して導入されたイソシアネートの蒸気および配管204bを介して導入されたアミンの蒸気を、別々の吐出孔から容器201内にシャワー状に吐出する。
【0024】
排気装置202は、容器201内のガスを排気する。容器201内は、排気装置202によって予め定められた圧力の真空雰囲気に制御される。排気装置202は、制御装置100によって制御される。
【0025】
容器201内には、一方の面に凹部が形成された基板Wが載せられるステージ207が設けられている。基板Wは、凹部が形成された一方の面の裏面において、ステージ207に支持される。ステージ207には、基板Wの温度を調整するためのヒータ207aが設けられている。ヒータ207aは、温度調整部および第1の温度調整部の一例である。制御装置100は、ヒータ207aを制御することにより、基板Wの上面が原料モノマーの蒸着重合に適した第1の温度となるように、基板Wの温度を制御する。第1の温度は、原料モノマーの種類に応じて定めることができ、例えば40℃~200℃とすることができる。
【0026】
このような成膜装置200を用いて、基板Wの表面において2種類の原料モノマーの蒸着重合反応を起こすことにより、凹部が形成された基板Wの表面に有機材料が積層される。2種類の原料モノマーがイソシアネートおよびアミンである場合、基板Wの表面には、ポリ尿素の重合体の膜が積層される。ポリ尿素の重合体は、熱分解可能な有機材料の一例である。
【0027】
なお、気化されたイソシアネートの蒸気および気化されたアミンの蒸気の一部は、基板Wとステージ207の間にも入りこむ。これにより、基板Wのエッジ部分や基板Wの裏面、即ち、ステージ207側の基板Wの面にも有機材料が付着する。
【0028】
[リセス装置300]
図3は、本開示の一実施形態におけるリセス装置300の一例を示す概略断面である。リセス装置300は、容器301、排気装置302、シャワーヘッド306、およびステージ307を有する。容器301は、第2の容器の一例であり、ステージ307は第2のステージの一例である。
【0029】
容器301の上部には、シャワーヘッド306が設けられている。容器301には、シャワーヘッド306を介して窒素ガスや希ガス等の不活性ガスが供給される。シャワーヘッド306には、配管305を介して流量制御器304およびガス供給源303が接続されている。ガス供給源303から供給された不活性ガスは、流量制御器304によって予め定められた流量に制御され、配管305を介してシャワーヘッド306に導入される。流量制御器304は、制御装置100によって制御される。
【0030】
シャワーヘッド306の下面には、多数の吐出孔が形成されている。シャワーヘッド306は、配管305を介して導入された不活性ガスを、吐出孔から容器301内にシャワー状に吐出する。
【0031】
排気装置302は、容器301内のガスを排気する。容器301内は、排気装置302によって予め定められた圧力の真空雰囲気に制御される。排気装置302は、制御装置100によって制御される。
【0032】
容器301内には、ステージ307が設けられている。ステージ307には、ステージ307を貫通するように、複数(例えば3本)のリフトピン310が設けられている。複数のリフトピン310は、駆動部311によって上下に移動可能である。成膜装置200によって有機材料の膜が積層された基板Wが容器301に搬入される場合、駆動部311は、複数のリフトピン310を上方に移動させ、複数のリフトピン310の先端で基板Wを受け取る。そして、駆動部311は、複数のリフトピン310を上下方向に移動させることにより、ステージ307と基板Wとの距離が予め定められた距離となるように基板Wの位置を調整する。駆動部311は、制御装置100によって制御される。複数のリフトピン310は、保持部の一例である。
【0033】
シャワーヘッド306にはヒータ306aが設けられており、容器301の側壁にはヒータ301aが設けられており、ステージ307内にはヒータ307aが設けられている。ヒータ307aは、温度調整部および第2の温度調整部の一例である。制御装置100は、複数のリフトピン310によってステージ307と基板Wとの距離が予め定められた距離に維持された状態で、ヒータ301a、ヒータ306a、およびヒータ307aを制御する。そして、制御装置100は、基板Wの上面が原料モノマーの解重合が起こる第2の温度となるように、基板Wの温度を制御する。第2の温度は、原料モノマーの種類に応じて定めることができ、例えば240℃~400℃とすることができる。
【0034】
これにより、基板Wの凹部周辺の有機材料の膜が除去されると共に、基板Wの温度および加熱時間に応じた深さまでの凹部内の有機材料が解重合し、凹部から脱離する。また、基板Wのエッジ部分や基板Wの裏面に付着していた有機材料の膜も解重合し、除去される。
【0035】
ここで、基板Wがステージ307の上に載せられた状態で、基板Wが第2の温度に加熱された場合でも、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着した有機材料において解重合が起こる。しかし、基板Wがステージ307の上に載せられた状態では、基板Wのエッジ部分の近傍の空間および基板Wの裏面とステージ307との間の空間におけるコンダクタンスが低い。そのため、解重合して脱離したモノマーが、基板Wのエッジ部分の近傍の空間および基板Wの裏面とステージ307との間の空間の留まり、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に再び重合体を形成する場合がある。そのため、基板Wがステージ307の上に載せられた状態では、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着した有機材料を除去することが難しい。
【0036】
なお、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着した有機材料が除去されるまで、基板Wを第2の温度に加熱し続けることで、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着した有機材料を除去することも可能である。しかし、この場合、基板Wの上面の凹部内に積層された有機材料も除去されてしまい、基板Wにエアギャップを形成することが困難となる。
【0037】
そこで、本実施形態では、ステージ307と基板Wとの距離が予め定められた距離に維持された状態で、基板Wを第2の温度に加熱する。これにより、基板Wとステージ307との間の空間のコンダクタンスが高くなり、基板Wの裏面の有機材料の膜から解重合して脱離したモノマーが、基板Wとステージ307との間の空間から移動しやすくなる。そのため、基板Wの裏面の有機材料の膜から解重合して脱離したモノマーが、基板Wの裏面に再付着しにくくなる。これにより、基板Wの凹部内に有機材料の膜を残しつつ、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着していた有機材料の膜を除去することができる。
【0038】
[プラズマ処理装置400]
図4は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置400の一例を示す概略図である。プラズマ処理装置400は、容器401およびマイクロ波出力装置404を備える。
【0039】
容器401は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等によって略円筒状に形成されており、内部に略円筒形状の処理空間Sを提供している。容器301は、保安接地されている。また、容器401は、側壁401aおよび底部401bを有する。側壁401aの中心軸を、軸線Zと定義する。底部401bは、側壁401aの下端側に設けられている。底部401bには、排気用の排気口401hが設けられている。また、側壁401aの上端部は開口している。
【0040】
側壁401aの上端部には誘電体窓407が設けられており、側壁401aの上端部の開口は、誘電体窓407によって塞がれている。誘電体窓407の下面は、処理空間Sに面している。誘電体窓407と側壁401aの上端部との間にはOリング406が配置されている。
【0041】
容器401内には、ステージ402が設けられている。ステージ402は、軸線Zの方向において誘電体窓407と対向するように設けられている。ステージ402と誘電体窓407との間の空間が処理空間Sである。ステージ402の上には、基板Wが載せられる。
【0042】
ステージ402は、基台402aおよび静電チャック402cを有する。基台402aは、例えばアルミニウム等の導電性の材料により略円盤状に形成されている。基台402aは、基台402aの中心軸が軸線Zに略一致するように容器301内に配置されている。
【0043】
基台402aは、導電性の材料により形成され、軸線Zに沿う方向に延伸する筒状支持部420によって支持されている。筒状支持部420の外周には、導電性の筒状支持部421が設けられている。筒状支持部421は、筒状支持部420の外周に沿って容器401の底部401bから誘電体窓407へ向かって延びている。筒状支持部421と側壁401aとの間には、環状の排気路422が形成されている。
【0044】
排気路422の上部には、厚さ方向に複数の貫通穴が形成された環状のバッフル板423が設けられている。バッフル板423の下方には上述した排気口401hが設けられている。排気口401hには、排気管430を介して、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプや自動圧力制御弁等を有する排気装置431が接続されている。排気装置431により、処理空間Sを予め定められた真空度まで減圧することができる。
【0045】
基台402aは、RF(Radio Frequency)電極としても機能する。基台402aには、給電棒442およびマッチングユニット441を介して、RFバイアス用のRF信号を出力するRF電源440が電気的に接続されている。RF電源440は、基板Wに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した予め定められた周波数(例えば、13.56MHz)のバイアス電力をマッチングユニット441および給電棒442を介して基台402aに供給する。
【0046】
マッチングユニット441は、RF電源440側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、容器401といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。整合器の中には自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0047】
基台402aの上面には、静電チャック402cが設けられている。静電チャック402cは、基板Wを静電気力によって吸着保持する。静電チャック402cは、略円盤状の外形を有し、ヒータ402dが埋め込まれている。ヒータ402dには、配線452およびスイッチ451を介してヒータ電源450が電気的に接続されている。ヒータ402dは、ヒータ電源450から供給される電力によって、静電チャック402c上に置かれた基板Wを加熱する。基台402a上には、エッジリング402bが設けられている。エッジリング402bは、基板Wおよび静電チャック402cを囲むように配置されている。エッジリング402bは、フォーカスリングと呼ばれることもある。
【0048】
基台402aの内部には、流路402gが形成されている。流路402gには、図示しないチラーユニットから配管460を介して冷媒が供給される。流路402g内に供給された冷媒は、配管461を介してチラーユニットに戻される。チラーユニットによって温度が制御された冷媒が基台402aの流路402g内を循環することにより、基台402aの温度が制御される。基台402a内を流れる冷媒と、静電チャック402c内のヒータ402dとによって、静電チャック402c上の基板Wの温度が制御される。本実施形態において、基板Wの温度は、例えば20℃~270℃(例えば150℃)に制御される。
【0049】
また、ステージ402には、Heガス等の伝熱ガスを、静電チャック402cと基板Wとの間に供給するための配管462が設けられている。
【0050】
マイクロ波出力装置404は、容器401内に供給された処理ガスを励起するためのマイクロ波を出力する。マイクロ波出力装置404は、例えば2.4GHzの周波数のマイクロ波を発生させる。
【0051】
マイクロ波出力装置404は、導波管408を介してモード変換器409に接続されている。モード変換器409は、マイクロ波出力装置404から出力されたマイクロ波のモードを変換し、モードが変換されたマイクロ波を同軸導波管410を介してアンテナ405に供給する。
【0052】
同軸導波管410は、外側導体410aおよび内側導体410bを含む。外側導体410aおよび内側導体410bは、略円筒形状を有しており、外側導体410aおよび内側導体410bの中心軸が軸線Zに略一致するようにアンテナ405の上部に配置されている。
【0053】
アンテナ405は、冷却ジャケット405a、誘電体板405b、およびスロット板405cを含む。スロット板405cは、導電性を有する金属によって略円板状に形成されている。スロット板405cは、スロット板405cの中心軸が軸線Zに一致するように誘電体窓407の上面に設けられている。スロット板405cには、複数のスロット穴が形成されている。複数のスロット穴は、2つ一組となって、スロット板405cの中心軸の周りに配列されている。
【0054】
誘電体板405bは、石英等の誘電体材料によって略円盤状に形成されている。誘電体板405bは、誘電体板405bの中心軸が軸線Zに略一致するようにスロット板405c上に配置されている。冷却ジャケット405aは、誘電体板405bの上に設けられている。
【0055】
冷却ジャケット405aは、表面に導電性を有する材料により形成されており、内部には流路405eが形成されている。流路405e内には、図示しないチラーユニットから冷媒が供給される。冷却ジャケット405aの上部表面には、外側導体410aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体410bの下端は、冷却ジャケット405aおよび誘電体板405bの中央部分に形成された開口を通って、スロット板405cに電気的に接続されている。
【0056】
同軸導波管410内を伝搬したマイクロ波は、誘電体板405b内を伝搬して、スロット板405cに形成された複数のスロット穴から誘電体窓407に伝搬する。誘電体窓407に伝搬したマイクロ波は、誘電体窓407の下面から処理空間S内に放射される。
【0057】
同軸導波管410の内側導体410bの内側には、ガス管411が設けられている。スロット板405cの中央部には、ガス管411が通過可能な貫通穴405dが形成されている。ガス管411は、内側導体410bの内側を通って延在しており、ガス供給部412に接続されている。
【0058】
ガス供給部412は、基板Wに封止膜を積層するための処理ガスをガス管411に供給する。ガス供給部412は、ガス供給源412a、バルブ412b、および流量制御器412cを含む。ガス供給源412aは、封止膜を成膜するための処理ガスの供給源である。処理ガスには、窒素含有ガス、シリコン含有ガス、および希ガスが含まれる。本実施形態において、窒素含有ガスは、例えばNH3ガスまたはN2ガスであり、シリコン含有ガスは、例えばSiH4ガスであり、希ガスは、例えばHeガスまたはArガスである。
【0059】
バルブ412bは、ガス供給源412aからの処理ガスの供給および供給停止を制御する。流量制御器412cは、例えばマスフローコントローラ等であり、ガス供給源412aからの処理ガスの流量を制御する。
【0060】
誘電体窓407内には、インジェクタ413が設けられている。インジェクタ413は、ガス管411を介して供給された処理ガスを、誘電体窓407に形成された貫通穴407hを介して処理空間S内に噴射する。処理空間S内に噴射された処理ガスは、誘電体窓407を介して処理空間S内に放射されたマイクロ波によって励起される。これにより、処理空間S内で処理ガスがプラズマ化され、プラズマに含まれるイオンおよびラジカル等により、基板Wに封止膜が積層される。本実施形態において、封止膜は、例えばシリコン窒化膜である。
【0061】
[加熱装置500の構成]
図5は、本開示の一実施形態における加熱装置500の一例を示す概略図である。加熱装置500は、容器501、排気管502、供給管503、ステージ504、ランプハウス505、および赤外線ランプ506を有する。
【0062】
容器501内には、基板Wが置かれるステージ504が設けられている。基板Wが置かれるステージ504の面と対向する位置には、ランプハウス505が設けられている。ランプハウス505内には、赤外線ランプ506が配置されている。
【0063】
容器501内には、供給管503を介して不活性ガスが供給される。本実施形態において、不活性ガスは、例えばN2ガスである。
【0064】
ステージ504上に基板Wが置かれた状態で、供給管503を介して容器501内に不活性ガスが供給される。そして、赤外線ランプ506を点灯させることにより、凹部に有機材料が積層された基板Wが加熱される。基板Wの凹部に積層された有機材料が予め定められた温度に達すると、有機材料が2種類の原料モノマーに解重合する。本実施形態において、有機材料はポリ尿素であるため、基板Wが300℃以上(例えば500℃)に加熱されることにより、有機材料が原料モノマーであるイソシアネートとアミンとに解重合する。そして、解重合した原料モノマーは、封止膜を介して凹部から脱離する。
【0065】
[エアギャップの形成方法]
図6は、基板処理方法の一例を示すフローチャートである。例えば、搬送装置106によって、凹部が形成された基板Wが成膜装置200内に搬入されることにより、図6に例示された処理が開始される。図6に例示された各処理は、制御装置100が基板処理システム10の各部を制御することにより実現される。
【0066】
まず、成膜装置200内において、基板Wが第1の温度に調整される(S10)。ステップS10では、ステージ207内のヒータ207aによって、ステージ207上に載せられた基板Wが第1の温度となるように制御される。ステップS10は、加熱工程の一例である。
【0067】
次に、基板Wに有機材料が積層される(S11)。ステップS11では、容器201内に材料ガス(2種類のモノマーの蒸気)が供給される。これにより、例えば図7に示されるように、基板Wの凹部60に有機材料61が積層される。ステップS11は、積層工程の一例である。
【0068】
次に、搬送装置106により、基板Wが成膜装置200内から搬出されリセス装置300内に搬送される(S12)。ステップS12では、基板Wがリセス装置300内に搬送される際に、駆動部311によって複数のリフトピン310が上方に移動し、複数のリフトピン310の先端で基板Wが受け取られる。ステップS12は、搬送工程の一例である。
【0069】
次に、基板Wがリセス装置300内における予め定められた位置に保持される(S13)。ステップS13では、駆動部311が複数のリフトピン310を上下方向に移動させ、ステージ307と基板Wとの距離が予め定められた距離となる位置で基板Wが保持される。
【0070】
次に、リセス装置300内において、基板Wが第2の温度に調整される(S14)。ステップS14では、ヒータ301a、ヒータ306a、およびヒータ307aによって、基板Wが第2の温度となるように制御される。これにより、例えば図8に示されるように、基板Wの凹部周辺の有機材料の膜が除去されると共に、基板Wの温度および加熱時間に応じた深さまでの凹部内の有機材料が解重合し、凹部から脱離する。また、基板Wのエッジ部分や基板Wの裏面に付着していた有機材料の膜も解重合し、除去される。ステップS13およびS14は、除去工程の一例である。
【0071】
そして、搬送装置106により、基板Wがリセス装置300内から搬出されてプラズマ処理装置400内に搬送される(S15)。
【0072】
次に、プラズマ処理装置400により、基板W上に封止膜が積層される(S16)。これにより、例えば図9に示されるように、基板Wの凹部60内の有機材料61の上に封止膜62が積層される。
【0073】
そして、搬送装置106により、基板Wがプラズマ処理装置400内から搬出され、加熱装置500内に搬送される(S17)。
【0074】
次に、加熱装置500によって基板Wが加熱される(S18)。ステップS18では、基板Wが、加熱装置500によって例えば300℃以上の温度(例えば500℃)に加熱されることにより、封止膜62の下層の有機材料61が熱分解され、封止膜62を介して脱離する。これにより、例えば図10に示されるように、凹部60内において、封止膜62の下層の下に、有機材料61の形状に対応したエアギャップ63が形成される。
【0075】
そして、基板Wは、搬送装置106によって加熱装置500から搬出され(S19)、本フローチャートに示された処理が終了する。
【0076】
[基板Wの裏面の有機材料の膜厚]
図11は、基板Wの裏面に付着した有機材料の膜厚の分布の一例を示す図である。図11には、基板Wの表面(ステージ307側の面と反対側の面)に1000Åの膜厚の有機材料が積層された後に、リセス処理により基板Wの表面の有機材料の膜厚が約40%に減少した際の、基板Wの裏面の有機材料の膜厚の分布が例示されている。また、図11において、「2.1mm Pin up」は、基板Wとステージ307との距離が2.1mmであることを示しており、「On stage」は、基板Wとステージ307とが接している、即ち、基板Wとステージ307との距離が0mmであることを示している。図11を参照すると、基板Wとステージ307との距離が0.5mmおよび2.1mmの場合における基板Wの裏面の有機材料の膜厚は、いずれも、基板Wとステージ307とが接している場合における基板Wの裏面の有機材料の膜厚に比べて小さい。
【0077】
図12A図12Cは、基板Wの裏面に付着した有機材料の膜厚と基板Wの表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。図12Aは、基板Wのエッジから1mmの位置における基板Wの裏面の有機材料の膜厚を示している。図12Bは、基板Wのエッジから2mmの位置における基板Wの裏面の有機材料の膜厚を示している。図12Cは、基板Wのエッジから5mmの位置における基板Wの裏面の有機材料の膜厚を示している。図12A図12Cの横軸は、基板Wの表面に1000Åの膜厚の有機材料が積層された後に、リセス処理により表面の有機材料の膜厚が減少した割合を示す。例えば100%のリセス割合は、表面の有機材料が完全に消失したことを示す。図12A図12Cを参照すると、基板Wとステージ307との距離が0.5mm~11.5mmの場合における有機材料の膜厚(破線)は、いずれも、基板Wとステージ307とが接している場合における有機材料の膜厚(点線)に比べて小さい。
【0078】
基板Wとステージ307とが離れた状態では、基板Wとステージ307とが接している状態に比べて、基板Wとステージ307との間の空間のコンダクタンスが高くなる。そのため、基板Wの裏面の有機材料の膜から解重合して脱離したモノマーが、基板Wとステージ307との間の空間から移動しやすくなり、基板Wの裏面に再付着しにくくなる。これは、基板Wのエッジ部分についても同様である。従って、ステージ307から離れた状態で基板Wを保持しながらリセス処理が実行されることにより、基板Wのエッジ部分および基板Wの裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる。
【0079】
また、図11を参照すると、基板Wとステージ307との距離が0.5mmおよび2.1mmの場合、基板Wの裏面の有機材料の膜厚はほぼ同程度であった。また、図12A図12Cを参照すると、基板Wとステージ307との距離が0.5mm~11.5mmの場合、基板Wの裏面の有機材料の膜厚はほぼ同程度であった。そのため、リセス処理は、基板Wとステージ307とが少なくとも0.5mm以上離れた状態で実行されることが好ましい。
【0080】
図13は、基板Wとステージ307との距離が2.1mmの場合における基板Wの裏面に付着した有機材料の膜厚と基板Wの表面に積層された有機材料のリセス割合との関係の一例を示す図である。図13の横軸は、基板Wの表面に100Åの膜厚の有機材料が積層された後に、リセス処理により表面の有機材料の膜厚が減少した割合を示す。
【0081】
なお、図13において、10Å以下の膜厚は、多くの測定誤差を含むと考えられるため、本実施形態では、基板Wの裏面の有機材料の膜厚が10Å以下の場合、基板Wの裏面の有機材料がほぼ除去されたとみなす。
【0082】
図13を参照すると、基板Wの表面のリセス割合が増加するほど、基板Wの裏面の有機材料の膜厚が減少している。そして、基板Wの表面のリセス割合が50%以上であれば、基板Wの裏面の有機材料の膜厚が10Å以下となり、基板Wの裏面の有機材料がほぼ除去されたとみなすことができる。これは、基板Wのエッジ部分に付着した有機材料の膜についても同様である。従って、基板Wのエッジ部分および裏面の有機材料を除去するためには、基板Wの表面のリセス割合が50%以上となるまでリセス処理を実行することが好ましい。
【0083】
[有機材料の膜厚の均一性]
図14は、リセス処理後の基板Wの表面における有機材料の膜厚の均一性の一例を示す図である。基板Wとステージ307とが接している場合(On stage)、リセス割合が29%では基板Wの表面の有機材料の膜厚の均一性は7.9%であった。また、基板Wとステージ307とが接している場合、リセス割合が60%では基板Wの表面の有機材料の膜厚の均一性は5.9%であった。
【0084】
一方、基板Wとステージ307との距離が2.1mmである場合(Pin up = 2.1mm)、リセス割合が27%では基板Wの表面の有機材料の膜厚の均一性は2.8%であった。また、基板Wとステージ307との距離が2.1mmである場合、リセス割合が69%では基板Wの表面の有機材料の膜厚の均一性は1.4%であった。
【0085】
基板Wとステージ307とを離した状態でリセス処理が行われることにより、ステージ307に設けられたヒータ307aからの熱が、ヒータ307aの形状に応じた温度分布が緩和された状態で基板Wに伝達されると考えられる。基板Wがステージ307から離れた状態でリセス処理が行われることにより、基板Wとステージ307とが接している場合に比べて、基板Wの表面の有機材料の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0086】
なお、本実施形態において、基板Wは、複数のリフトピン310によってステージ307から離れた位置で保持される。そのため、基板Wとステージ307との間の距離が長くなりすぎると、ステージ307の表面から基板Wに伝達される熱量と、リフトピン310を介して基板Wに伝達される熱量との差が大きくなる。これにより、リフトピン310の位置における基板Wの温度が他の部分に比べて高くなり、基板Wの温度分布の偏りが大きくなる。リセス処理において温度分布の偏りが大きくなると、有機材料の膜厚の減少量の分布の偏りも大きくなり、リセス処理後の有機材料の膜厚の均一性が低下する。従って、基板Wとステージ307との間の距離が長くなりすぎないことが好ましい。基板Wとステージ307との間の距離は、例えば0.5mm以上かつ2.1mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0087】
以上、実施形態について説明した。上記したように、本実施形態における基板処理方法は、加熱工程と、積層工程と、除去工程とを含む。加熱工程では、容器201内に配置されたステージ207上に載せられた、一方の面に凹部が形成されている基板Wが第1の温度に加熱される。積層工程では、容器201内に材料ガスを供給することにより、基板Wの表面に熱分解可能な有機材料が積層される。除去工程では、ステージ307から離れた位置で基板Wが保持され、基板Wが第1の温度よりも高い第2の温度に加熱されることにより、凹部の周辺および基板Wの一方の面の裏面に積層された有機材料が除去される。これにより、基板Wの裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる。
【0088】
また、上記した実施形態において、除去工程では、ステージ307に設けられたヒータ307aにより、基板Wが第2の温度に加熱される。これにより、基板Wの裏面が効率よく加熱され、基板Wの裏面の有機材料を効率よく除去することができる。
【0089】
また、上記した実施形態において、除去工程における基板Wとステージ307との間の距離は、0.5mm以上である。これにより、基板Wの裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる。
【0090】
また、上記した実施形態において、除去工程における基板Wとステージ307との間の距離は、0.5mm以上かつ2.1mm以下の範囲内の距離である。これにより、基板Wの裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができると共に、基板Wの表面に積層された有機材料の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0091】
また、上記した実施形態における基板処理システム10は、成膜装置200と、リセス装置300と、搬送装置106と、制御装置100とを備える。成膜装置200は、容器201と、シャワーヘッド206と、ステージ207と、ヒータ207aとを有する。ステージ207には、一方の面に凹部が形成されている基板Wが載せられる。容器201は、ステージ207を収容する。シャワーヘッド206は、容器201内に材料ガスを供給する。ヒータ207aは、基板Wの温度を調整する。リセス装置300は、容器301と、ステージ307と、ヒータ307aと、リフトピン310とを有する。ステージ307には、基板Wが載せられる。容器301は、ステージ307を収容する。ヒータ307aは、基板Wの温度を調整する。リフトピン310は、ステージ307から離れた位置で基板Wを保持する。制御装置100は、ステージ207上に載せられた基板Wを第1の温度に加熱する加熱工程を実行するようにヒータ207aを制御する。また、制御装置100は、容器201内に材料ガスを供給することにより、基板Wの表面に熱分解可能な有機材料を積層する積層工程を実行するようにシャワーヘッド206を制御する。また、制御装置100は、有機材料が積層された基板Wを容器201内から容器301内へ搬送する搬送工程を実行するように搬送装置106を制御する。また、制御装置100は、ステージ307から離れた位置で基板Wを保持するようにリフトピン310を制御する。また、制御装置100は、ステージ307から離れた位置にある基板Wを第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより、凹部の周辺および基板Wの一方の面の裏面に積層された有機材料を除去する除去工程を実行するようにヒータ307aを制御する。これにより、基板Wの裏面に付着した有機材料を効率よく除去することができる。
【0092】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記した実施形態におけるリセス装置300では、シャワーヘッド306によって容器301内に不活性ガスが供給されるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、例えば図15に示されるように、基板Wとステージ307との間に不活性ガスが供給されてもよい。また、例えば図15に示されるように、基板Wの裏面の中央から基板Wのエッジ方向へ放射状に流れるように、基板Wとステージ307との間に不活性ガスが供給されることが好ましい。図15の例では、容器301の天井部分にヒータ301bが設けられている。基板Wとステージ307との間に不活性ガスが供給されることにより、基板Wの裏面の有機材料の膜から解重合して脱離したモノマーが、基板Wとステージ307との間の空間から移動しやすくなる。これにより、基板Wの裏面に有機材料が再付着しにくくなり、基板Wの裏面に付着した有機材料をさらに効率よく除去することができる。
【0094】
また、さらに他の形態として、容器301の上部には、例えば図16に示されるように、可動式の天井部材312が設けられてもよい。天井部材312は、駆動部313によって上下方向に移動可能である。天井部材312には,ヒータ312aが設けられている。基板Wの搬入時および搬出時には、例えば図16に示されるように、天井部材312は、上方に退避している。
【0095】
そして、容器301内に基板Wが搬入され、基板Wとステージ307との距離が予め定められた距離となるようにリフトピン310によって基板Wが保持された後、例えば図17に示されるように、駆動部313によって天井部材312が下方へ移動する。これにより、天井部材312と基板Wとの間の空間が狭くなり、基板Wの上方の空間のコンダクタンスが低くなる。これにより、リセス処理の際に、基板Wの天井部材312側の面において有機材料の膜厚の減少が抑制される。また、図17の例では、基板Wとステージ307との間に不活性ガスが供給される。これにより、基板Wの天井部材312側の面の有機材料を残しつつ、基板Wの裏面の有機材料をさらに効率よく除去することができる。
【0096】
また、上記した実施形態において、リセス装置300内にステージ307が設けられるが、開示の技術はこれに限られない。例えば、基板Wの下方にヒータ307aが設けられていれば、リセス装置300内にステージ307が設けられていなくてもよい。
【0097】
また、上記した実施形態におけるリセス装置300では、リセス処理時にリフトピン310によって基板Wが保持されるが、開示の技術はこれに限られない。リセス処理時に基板Wとステージ307との間に0.5mm以上の隙間を形成することができれば、ステージ307の上面に形成されたエンボス加工等の突起物によって、基板Wとステージ307との間に0.5mm以上の隙間が形成されてもよい。
【0098】
また、上記した実施形態では、有機材料の成膜が成膜装置200で行われ、リセス処理がリセス装置300で行われるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、有機材料の成膜とリセス処理とは同一の装置で行われてもよい。例えば、有機材料の成膜とリセス処理とは成膜装置200で行われてもよい。
【0099】
また、上記した実施形態では、熱分解可能な有機材料を構成する重合体の一例として尿素結合を有する重合体が用いられたが、熱分解可能な有機材料を構成する重合体としては、尿素結合以外の結合を有する重合体が用いられてもよい。尿素結合以外の結合を有する重合体としては、例えばウレタン結合を有するポリウレタン等が挙げられる。ポリウレタンは、例えばアルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとを共重合させることにより合成することができる。また、ポリウレタンは、予め定められた温度に加熱されることにより、アルコール基を有するモノマーとイソシアネート基を有するモノマーとに解重合する。
【0100】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
C キャリア
W 基板
10 基板処理システム
100 制御装置
101 真空搬送室
102 ロードロック室
103 大気搬送室
104 アライメント室
106 搬送装置
200 成膜装置
201 容器
206 シャワーヘッド
207 ステージ
207a ヒータ
300 リセス装置
301 容器
301a ヒータ
301b ヒータ
306 シャワーヘッド
306a ヒータ
307 ステージ
307a ヒータ
310 リフトピン
311 駆動部
312 天井部材
312a ヒータ
313 駆動部
400 プラズマ処理装置
500 加熱装置
60 凹部
61 有機材料
62 封止膜
63 エアギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17