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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】非接触式通信媒体
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240816BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240816BHJP
   G11B 23/30 20060101ALI20240816BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G06K19/077 276
G06K19/07 090
G11B23/30 E
H01Q7/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020212860
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099098
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 英一郎
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-189961(JP,A)
【文献】特開平11-195921(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
G11B 23/30
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを有する基板に形成されており、外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルと、
前記アンテナコイルによって誘起された電力を利用して動作する処理回路と、を備える非接触式通信媒体であって、
前記処理回路は、前記アンテナコイルの途中に挿入されており、
前記アンテナコイルは、前記基板の外周に沿ってループ状に巻回されており、
前記アンテナコイルの外周端は、前記スルーホールに接続されており、
前記基板上において前記アンテナコイルのうちの前記スルーホールの位置に面する部分は、前記アンテナコイルの巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有し、
前記アンテナコイルの内周端は、前記外周端と前記アンテナコイルの内周方向で干渉せず、かつ、前記基板に対する側面視で前記アンテナコイルの最外周の導線部とオーバーラップしている
非接触式通信媒体。
【請求項2】
前記アンテナコイルのうちの前記スルーホールの位置に面する部分は、前記巻回方向の内周側にV字状に曲がった形状を有する請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項3】
前記アンテナコイルのうちの前記スルーホールの位置に面する部分は、前記巻回方向の内周側にU字状に曲がった形状を有する請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項4】
前記アンテナコイルのうちの前記スルーホールの位置に面する部分は、前記巻回方向の内周側に円弧状に曲がった形状を有する請求項1に記載の非接触式通信媒体。
【請求項5】
前記基板は、厚さ方向において複数の面を有しており、
前記アンテナコイルは、前記複数の面のうちの第1面に形成されており、
前記アンテナコイルの一端及び他端は、前記複数の面のうちの前記第1面とは異なる第2面で補助アンテナコイルを介して電気的に接続されている請求項1から請求項4の何れか一項に記載の非接触式通信媒体。
【請求項6】
前記第1面は、前記基板の表面及び裏面のうちの一方であり、
前記第2面は、前記表面及び前記裏面のうちの他方である請求項5に記載の非接触式通信媒体。
【請求項7】
前記一端及び前記他端は、前記スルーホールを介して前記第2面で電気的に接続されている請求項5又は請求項6に記載の非接触式通信媒体。
【請求項8】
前記補助アンテナコイルは、前記第2面に形成されており、前記基板の外周に沿ってループ状に巻回されている請求項5から請求項7の何れか一項に記載の非接触式通信媒体。
【請求項9】
前記補助アンテナコイルの外周端は、前記スルーホールに接続されており、
前記第2面において前記補助アンテナコイルのうちの前記スルーホールの位置に面する部分は、前記補助アンテナコイルの巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する請求項8に記載の非接触式通信媒体。
【請求項10】
前記第1面に形成された前記アンテナコイルと、前記第2面に形成された前記補助アンテナコイルとは、前記基板の厚さ方向において千鳥状に配置されている請求項8又は請求項9に記載の非接触式通信媒体。
【請求項11】
前記処理回路は、前記アンテナコイルの前記巻回方向の内周側に配置されている請求項1から請求項10の何れか一項に記載の非接触式通信媒体。
【請求項12】
前記アンテナコイルが直線部分と屈曲部分とを有し、前記内周側に入り込んだ形状が前記直線部分に設けられている
請求項1から請求項11の何れか一項に記載の非接触式通信媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、非接触式通信媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ICチップと、接続端子基板と、回路パターンとを少なくとも備えるICカードが開示されている。ICチップは、接触式通信機能と、非接触式通信機能との両方を有する。接続端子基板は、複数の区画を有する外部接続端子と、RF接続端子とを含む。回路パターンは、アンテナコイルと、アンテナコイル接続端子とを含む。RF接続端子とアンテナコイル接続端子とが、導電性物質を少なくとも含む接合材を介して接続している。特許文献1に記載のICカードにおいて、接続端子基板は、その接触式通信に使用しない区画において、接続端子機材に孔を有し、孔を介して、外部接続用端子と、アンテナ接続用端子とが、金属で接続されている。
【0003】
特許文献2には、四角形状の絶縁基板と、絶縁基板の主面上に搭載されたICチップと、絶縁基板主面の周辺部に形成されたアンテナコイルとを備えた非接触ICカードが開示されている。特許文献2に記載の非接触ICカードにおいて、アンテナコイルは、アンテナ部とICチップの下に形成配置されたICチップの実装端子部とを有している。ICチップの実装端子部は、アンテナ部に比較して実質的に薄く形成されている。
【0004】
特許文献3には、外部の送受信装置と無線通信を行うためのアンテナコイルを備えたカード本体に搭載される半導体装置が開示されている。半導体装置は、配線基板と、第1接続端子と、第2接続端子と、半導体チップと、第3接続端子と、第4接続端子と、コンデンサとを有する。配線基板は、主面及び主面とは反対側にある裏面とを有する。第1接続端子は、配線基板の主面に設けられ、アンテナコイルの一端と第1導電性材料を介して電気的に接続される。第2接続端子は、配線基板の主面に設けられ、アンテナコイルの他端と第1導電性材料を介して電気的に接続される。半導体チップは、配線基板の主面に搭載され、さらに第1接続端子と第2接続端子とに電気的に接続され、データの処理を行う。第3接続端子は、配線基板の主面に設けられ、第1接続端子と配線基板の配線により電気的に接続されている。第4接続端子は、配線基板の主面に設けられ、第2接続端子と配線により電気的に接続されている。コンデンサは、第3接続端子にその一端を、第4接続端子にその他端を、第2導電性材料を介して電気的に接続されることにより共振回路を形成する。特許文献3に記載の半導体装置において、第1接続端子及び第2接続端子は、それぞれ半導体チップの異なる辺側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-114754号公報
【文献】特開2001-084343号公報
【文献】特開2009-080843号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、基板上においてアンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分がアンテナコイルの内周側に入り込んでいない形状の場合に比べ、アンテナコイルの内周側の領域を広くすることができる非接触式通信媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、スルーホールを有する基板に形成されており、外部から与えられた磁界が作用することで電力を誘起するアンテナコイルと、アンテナコイルによって誘起された電力を利用して動作する処理回路と、を備える非接触式通信媒体であって、処理回路が、アンテナコイルの途中に挿入されており、アンテナコイルが、基板の外周に沿ってループ状に巻回されており、アンテナコイルの外周端が、スルーホールに接続されており、基板上においてアンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分が、アンテナコイルの巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する非接触式通信媒体である。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分が、巻回方向の内周側にV字状に曲がった形状を有する第1の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分が、巻回方向の内周側にU字状に曲がった形状を有する第1の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分が、巻回方向の内周側に円弧状に曲がった形状を有する第1の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、基板が、厚さ方向において複数の面を有しており、アンテナコイルが、複数の面のうちの第1面に形成されており、アンテナコイルの一端及び他端が、複数の面のうちの第1面とは異なる第2面で補助アンテナコイルを介して電気的に接続されている第1の態様から第4の態様のうち何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、第1面が、基板の表面及び裏面のうちの一方であり、第2面が、表面及び裏面のうちの他方である第5の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、一端及び他端が、スルーホールを介して第2面で電気的に接続されている第5の態様又は第6の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、補助アンテナコイルが、第2面に形成されており、基板の外周に沿ってループ状に巻回されている第5の態様から第7の態様のうち何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、補助アンテナコイルの外周端は、スルーホールに接続されており、第2面において補助アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分が、補助アンテナコイルの巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する第8の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、第1面に形成されたアンテナコイルと、第2面に形成された補助アンテナコイルとが、基板の厚さ方向において千鳥状に配置されている第8の態様又は第9の態様に係る非接触式通信媒体である。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、処理回路が、アンテナコイルの巻回方向の内周側に配置されている第1の態様から第10の態様のうち何れか1つの態様に係る非接触式通信媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る磁気テープカートリッジの外観の一例を示す概略斜視図である。
図2】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下ケースの内側の右後端部の構造の一例を示す概略斜視図である。
図3】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下ケースの内面に設けられた支持部材の一例を示す側面視断面図である。
図4】実施形態に係る磁気テープドライブのハードウェア構成の一例を示す概略構成図である。
図5】実施形態に係る磁気テープカートリッジの下側から非接触式読み書き装置によって磁界が放出されている態様の一例を示す概略斜視図である。
図6】実施形態に係る磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリに対して非接触式読み書き装置から磁界が付与されている態様の一例を示す概念図である。
図7】実施形態に係るカートリッジメモリの表面構造の一例を示す上面図である。
図8】実施形態に係るカートリッジメモリの裏面構造の一例を示す下面図である。
図9図11及び図12に示すカートリッジメモリの線A-Aにおける概略断面図である。
図10】実施形態に係るカートリッジメモリの回路構成の一例を示す概略回路図である。
図11】カートリッジメモリの表面構造の変形例を示す上面図である。
図12】カートリッジメモリの表面構造の別の変形例を示す上面図である。
図13】カートリッジメモリの裏面構造の変形例を示す下面図である。
図14】磁気テープカートリッジ内のカートリッジメモリの傾斜角度の変形例を示す概念図である。
図15】従来技術によるカートリッジメモリの表面構造の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、以下の説明で使用される文言について説明する。
【0020】
CPUとは、“Central Processing Unit”の略称を指す。RAMとは、“Random Access Memory”の略称を指す。NVMとは、“Non-Volatile Memory”の略称を指す。ROMとは、“Read Only Memory”の略称を指す。EEPROMとは、“Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory”の略称を指す。SSDとは、“Solid State Drive”の略称を指す。USBとは、“Universal Serial Bus”の略称を指す。ASICとは、“Application Specific Integrated Circuit”の略称を指す。PLDとは、“Programmable Logic Device”の略称を指す。FPGAとは、“Field-Programmable Gate Array”の略称を指す。SoCとは、“System-on-a-Chip”の略称を指す。ICとは、“Integrated Circuit”の略称を指す。RFIDとは、“Radio Frequency Identifier”の略称を指す。LTOとは、“Linear Tape-Open”の略称を指す。
【0021】
以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の磁気テープドライブ30(図4参照)への装填方向を矢印Aで示し、矢印A方向を磁気テープカートリッジ10の前方向とし、磁気テープカートリッジ10の前方向の側を磁気テープカートリッジ10の前側とする。以下の構造上の説明において、「前」とは、磁気テープカートリッジ10の前側を指す。
【0022】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、矢印A方向と直交する矢印B方向を右方向とし、磁気テープカートリッジ10の右方向の側を磁気テープカートリッジ10の右側とする。以下の構造上の説明において、「右」とは、磁気テープカートリッジ10の右側を指す。
【0023】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、矢印C方向を磁気テープカートリッジ10の上方向とし、磁気テープカートリッジ10の上方向の側を磁気テープカートリッジ10の上側とする。以下の説明において、以下の構造上の説明において、「上」とは、磁気テープカートリッジ10の上側を指す。
【0024】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の前方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の後方向とし、磁気テープカートリッジ10の後方向の側を、磁気テープカートリッジ10の後側とする。以下の構造上の説明において、「後」とは、磁気テープカートリッジ10の後側を指す。
【0025】
また、以下の説明では、説明の便宜上、図1において、磁気テープカートリッジ10の上方向と逆の方向を磁気テープカートリッジ10の下方向とし、磁気テープカートリッジ10の下方向の側を磁気テープカートリッジ10の下側とする。以下の構造上の説明において、「下」とは、磁気テープカートリッジ10の下側を指す。
【0026】
また、以下の説明では、磁気テープカートリッジ10の仕様としてLTOを例に挙げて説明する。また、以下の説明では、本開示の技術に係るLTOに対して、下記の表1に示す仕様が適用されていることを前提として説明するが、これはあくまでも一例に過ぎず、IBM3592の磁気テープカートリッジの仕様に準じていてもよい。
【0027】
【表1】
【0028】
表1において、「REQA~SELCET系」とは、後述のポーリングコマンドを意味する。「REQA~SELCET系」には、少なくとも“Request A”というコマンド、“Request SN”というコマンド、及び“Select”というコマンドが含まれている。“Request A”は、カートリッジメモリに対して、如何なるタイプのカートリッジメモリであるかを問い合わせるコマンドである。本実施形態において“Request A”は、1種類であるが、これに限らず、複数種類であってもよい。“Request SN”は、カートリッジメモリに対して、シリアルナンバーを問い合わせるコマンドである。“Select”は、カートリッジメモリに対して読み書きの準備を予告するコマンドである。READ系は、後述の読出コマンドに相当するコマンドである。WRITE系は、後述の書込コマンドに相当するコマンドである。
【0029】
一例として図1に示すように、磁気テープカートリッジ10は、平面視略矩形であり、かつ、箱状のケース12を備えている。ケース12は、ポリカーボネート等の樹脂製であり、上ケース14及び下ケース16を備えている。上ケース14及び下ケース16は、上ケース14の下周縁面と下ケース16の上周縁面とを接触させた状態で、溶着(例えば、超音波溶着)及びビス止めによって接合されている。接合方法は、溶着及びビス止めに限らず、他の接合方法であってもよい。
【0030】
ケース12の内部には、カートリッジリール18が回転可能に収容されている。カートリッジリール18は、リールハブ18A、上フランジ18B1、及び下フランジ18B2を備えている。リールハブ18Aは、円筒状に形成されている。リールハブ18Aは、カートリッジリール18の軸心部であり、軸心方向がケース12の上下方向に沿っており、ケース12の中央部に配置されている。上フランジ18B1及び下フランジ18B2の各々は円環状に形成されている。リールハブ18Aの上端部には上フランジ18B1の平面視中央部が固定されており、リールハブ18Aの下端部には下フランジ18B2の平面視中央部が固定されている。リールハブ18Aの外周面には、磁気テープMTが巻き回されており、磁気テープMTの幅方向の端部は上フランジ18B1及び下フランジ18B2によって保持されている。なお、リールハブ18A及び下フランジ18B2は一体として成型されていてもよい。
【0031】
ケース12の右壁12Aの前側には、開口12Bが形成されている。磁気テープMTは、開口12Bから引き出される。
【0032】
一例として図2に示すように、下ケース16の右後端部には、カートリッジメモリ19が収容されている。カートリッジメモリ19は、本開示の技術に係る「非接触式通信媒体」の一例である。本実施形態では、いわゆるパッシブ型のRFIDタグがカートリッジメモリ19として採用されている。
【0033】
カートリッジメモリ19には、管理情報が記憶されている。管理情報は、磁気テープカートリッジ10を管理する情報である。管理情報としては、例えば、磁気テープカートリッジ10を特定可能な識別情報、磁気テープMTの記録容量、磁気テープMTに記録されている情報(以下、「記録情報」とも称する)の概要、記録情報の項目、及び記録情報の記録形式等を示す情報が挙げられる。
【0034】
カートリッジメモリ19は、非接触式で外部装置(図示省略)と通信を行う。外部装置としては、例えば、磁気テープカートリッジ10の生産工程で使用される読み書き装置、及び、磁気テープドライブ(例えば、図4に示す磁気テープドライブ30)内で使用される読み書き装置(例えば、図4図6に示す非接触式読み書き装置50)が挙げられる。
【0035】
外部装置は、カートリッジメモリ19に対して、非接触式で各種情報の読み書きを行う。詳しくは後述するが、カートリッジメモリ19は、外部装置から与えられた磁界に対して電磁的に作用することで電力を生成する。そして、カートリッジメモリ19は、生成した電力を用いて作動し、磁界を介して外部装置と通信を行うことで外部装置との間で各種情報の授受を行う。なお、通信方式は、例えば、ISO14443又はISO18092等の公知の規格に準じる方式であってもよいし、ECMA319のLTO仕様に準じる方式等であってもよい。
【0036】
一例として図2に示すように、下ケース16の右後端部の底板16Aの内面には、支持部材20が設けられている。支持部材20は、カートリッジメモリ19を傾斜させた状態で下方から支持する一対の傾斜台である。一対の傾斜台は、第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bである。第1傾斜台20A及び第2傾斜台20Bは、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されており、下ケース16の後壁16Bの内面及び底板16Aの内面に一体化されている。第1傾斜台20Aは、傾斜面20A1を有しており、傾斜面20A1は、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。また、傾斜面20B1も、後壁16Bの内面から底板16Aの内面に向けて下り傾斜している。
【0037】
支持部材20の前方側には、一対の位置規制リブ22が左右方向に間隔を隔てて配置されている。一対の位置規制リブ22は、底板16Aの内面に立設されており、支持部材20に配置された状態のカートリッジメモリ19の下端部の位置を規制する。
【0038】
一例として図3に示すように、底板16Aの外面には基準面16A1が形成されている。基準面16A1は、平面である。ここで、平面とは、底板16Aを下側にして下ケース16を水平面に置いた場合において、水平面に対して平行な面を指す。支持部材20の傾斜角度θ、すなわち、傾斜面20A1及び傾斜面20B1の傾斜角は、基準面16A1に対して45度である。なお、45度は、あくまでも一例に過ぎず、“0度<傾斜角度θ<45度”であってもよいし、45度以上であってもよい。
【0039】
カートリッジメモリ19は、基板26を備えている。基板26は、本開示の技術に係る「基板」の一例である。基板26は、略矩形の平板状をしており、厚さ方向に2つの面、すなわち、表面26Aと裏面26Bとを有する。基板26は、基板26の裏面26Bを下側に向けて支持部材20上に置かれ、支持部材20は、基板26の裏面26Bを下方から支持する。基板26の裏面26Bの一部は、支持部材20の傾斜面、すなわち、傾斜面20A1及び20B1に接触しており、基板26の表面26Aは、天板14Aの内面14A1側に露出している。なお、表面26A及び裏面26Bは、本開示の技術に係る「複数の面」の一例である。表面26Aは本開示の技術に係る「第1面」の一例であり、裏面26Bは本開示の技術に係る「第2面」の一例である。
【0040】
上ケース14は、複数のリブ24を備えている。複数のリブ24は、ケース12の左右方向に間隔を隔てて配置されている。複数のリブ24は、上ケース14の天板14Aの内面14A1から下側に突設されており、各リブ24の先端面24Aは、傾斜面20A1及び20B1に対応した傾斜面を有する。すなわち、各リブ24の先端面24Aは、基準面16A1に対して45度に傾斜している。
【0041】
カートリッジメモリ19が支持部材20に配置された状態で、上述したように上ケース14が下ケース16に接合されると、各リブ24の先端面24Aは、基板26に対して表面26A側から接触し、基板26は、各リブ24の先端面24Aと支持部材20の傾斜面とで挟み込まれる。これにより、カートリッジメモリ19の上下方向の位置がリブ24によって規制される。
【0042】
一例として図4に示すように、磁気テープドライブ30は、搬送装置34、読取ヘッド36、及び制御装置38を備えている。磁気テープドライブ30には、磁気テープカートリッジ10が装填される。磁気テープドライブ30は、磁気テープカートリッジ10から磁気テープMTが引き出され、引き出された磁気テープMTから読取ヘッド36を用いて記録情報をリニアサーペンタイン方式で読み取る装置である。なお、本実施形態において、記録情報の読み取りとは、換言すると、記録情報の再生を指す。
【0043】
制御装置38は、磁気テープドライブ30の全体を制御する。本実施形態において、制御装置38は、ASICによって実現されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置38は、FPGAによって実現されるようにしてもよい。また、制御装置38は、CPU、ROM、及びRAMを含むコンピュータによって実現されるようにしてもよい。また、AISC、FPGA、及びコンピュータのうちの2つ以上を組み合わせて実現されるようにしてもよい。すなわち、制御装置38は、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されるようにしてもよい。
【0044】
搬送装置34は、磁気テープMTを順方向及び逆方向に選択的に搬送する装置であり、送出モータ40、巻取リール42、巻取モータ44、複数のガイドローラGR、及び制御装置38を備えている。
【0045】
送出モータ40は、制御装置38の制御下で、磁気テープカートリッジ10内のカートリッジリール18を回転駆動させる。制御装置38は、送出モータ40を制御することで、カートリッジリール18の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0046】
巻取モータ44は、制御装置38の制御下で、巻取リール42を回転駆動させる。制御装置38は、巻取モータ44を制御することで、巻取リール42の回転方向、回転速度、及び回転トルク等を制御する。
【0047】
磁気テープMTが巻取リール42によって巻き取られる場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを順方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0048】
磁気テープMTがカートリッジリール18に巻き戻される場合には、制御装置38によって、磁気テープMTを逆方向に走行させるように送出モータ40及び巻取モータ44を回転させる。送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等は、巻取リール42によって巻き取られる磁気テープMTの速度に応じて調整される。
【0049】
このようにして送出モータ40及び巻取モータ44の各々の回転速度及び回転トルク等が調整されることで、磁気テープMTに既定範囲内の張力が付与される。ここで、既定範囲内とは、例えば、磁気テープMTから読取ヘッド36によってデータが読取可能な張力の範囲として、コンピュータ・シミュレーション及び/又は実機による試験等により得られた張力の範囲を指す。
【0050】
本実施形態では、送出モータ40及び巻取モータ44の回転速度及び回転トルク等が制御されることにより磁気テープMTの張力が制御されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、磁気テープMTの張力は、ダンサローラを用いて制御されてもよいし、バキュームチャンバに磁気テープMTを引き込むことによって制御されるようにしてもよい。
【0051】
複数のガイドローラGRの各々は、磁気テープMTを案内するローラである。磁気テープMTの走行経路は、複数のガイドローラGRが磁気テープカートリッジ10と巻取リール42との間において読取ヘッド36を跨ぐ位置に分けて配置されることによって定められている。
【0052】
読取ヘッド36は、読取素子46及びホルダ48を備えている。読取素子46は、走行中の磁気テープMTに接触するようにホルダ48によって保持されており、搬送装置34によって搬送される磁気テープMTから記録情報を読み取る。
【0053】
磁気テープドライブ30は、非接触式読み書き装置50を備えている。非接触式読み書き装置50は、本開示の技術に係る「外部」の一例である。非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10が装填された状態の磁気テープカートリッジ10の下側にてカートリッジメモリ19の裏面26Bに正対するように配置されている。なお、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態とは、例えば、磁気テープカートリッジ10が読取ヘッド36による磁気テープMTに対する記録情報の読み取りを開始する位置として事前に定められた位置に到達した状態を指す。
【0054】
一例として図5に示すように、非接触式読み書き装置50は、磁気テープカートリッジ10の下側からカートリッジメモリ19に向けて磁界MFを放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19を貫通する。なお、磁界MFは、本開示の技術に係る「磁界」の一例である。
【0055】
一例として図6に示すように、非接触式読み書き装置50は、制御装置38に接続されている。制御装置38は、カートリッジメモリ19を制御する制御信号を非接触式読み書き装置50に出力する。非接触式読み書き装置50は、制御装置38から入力された制御信号に従って、磁界MFをカートリッジメモリ19に向けて放出する。磁界MFは、カートリッジメモリ19の裏面26B側から表面26A側に貫通する。
【0056】
非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、コマンド信号をカートリッジメモリ19に空間伝送する。詳しく後述するが、コマンド信号は、カートリッジメモリ19に対する指令を示す信号である。コマンド信号が非接触式読み書き装置50からカートリッジメモリ19に空間伝送される場合、磁界MFには、制御装置38からの指示に従って非接触式読み書き装置50によってコマンド信号が含まれる。換言すると、磁界MFには、コマンド信号が重畳される。すなわち、非接触式読み書き装置50は、制御装置38の制御下で、磁界MFを介してコマンド信号をカートリッジメモリ19に送信する。
【0057】
カートリッジメモリ19の表面26Aには、ICチップ52が搭載されている。ICチップ52は、表面26Aに接着されている。また、カートリッジメモリ19の表面26Aにおいて、ICチップ52は封止材56によって封止されている。ここでは、封止材56として、紫外線に反応して硬化する紫外線硬化樹脂が採用されている。なお、紫外線硬化樹脂は、あくまでも一例に過ぎず、紫外線以外の波長域の光に反応して効果する光硬化樹脂を封止材56として使用してもよいし、熱硬化性樹脂を封止材56として使用してもよいし、接着剤を封止材56として使用してもよい。なお、ICチップ52は、本開示の技術に係る「処理回路」の一例である。
【0058】
一例として図7に示すように、カートリッジメモリ19の基板26の表面26Aには、第1コイル60が形成されている。ここでは、第1コイル60の素材として、銅箔が採用されている。銅箔は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウム箔等の他種類の導電性素材であってもよい。第1コイル60は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MF(図5及び図6参照)が作用することで誘導電流を誘起する。なお、第1コイル60は、本開示の技術に係る「アンテナコイル」の一例である。
【0059】
第1コイル60は、基板26の外周26Cに沿ってループ状に巻回されている。第1コイル60の外周端60Aは、基板26に設けられた第1スルーホール62Aに接続されており、第1コイル60の内周端60Bは、基板26に設けられた第2スルーホール62Bに接続されている。第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bは、各々、基板26の表面26Aと裏面26Bとを貫通するように基板26に形成されており、めっき層64を有する。めっき層64に用いられるめっきの一例としては、銅めっきが挙げられる。銅めっきは、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウムめっき等の他種類の導電性素材のめっきであってもよい。なお、外周26Cは、本開示の技術に係る「外周」の一例である。
【0060】
図7に示す例では、第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bとして、中空部を有する円筒状のスルーホールが例示されているが、本開示の技術はこれに限定されず、中空部を有しないスルーホール、すなわち、導電性素材で形成された柱状(例えば、円柱状)のスルーホールであってもよい。
【0061】
表面26A上において、第1スルーホール62Aの位置は、第1コイル60の巻回方向の外周側よりも内周側に偏倚している。換言すると、これは、外周端60Aの位置が、表面26A上において、第1コイル60の巻回方向の内周側よりも外周側に偏倚している、ということである。
【0062】
第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bの各々の直径Dは、第1コイル60の幅W1よりも大きい。第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bの各々の直径Dは、例えば、第1コイル60の幅W1の3倍である。一例として図7に示すように、外周端60Aは、第1スルーホール62Aの中央よりも基板26の外周26C側で、第1スルーホール62Aに接続される。
【0063】
表面26A上において、第1コイル60のうち、外周端60Aの位置及び第1スルーホール62Aの位置に面する部分である湾曲部60Cは、巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する。ここで、湾曲部60Cが巻回方向の内周側にどの程度入り込んでいるかというと、少なくとも第1スルーホール62Aとの接触を回避する程度、第1コイル60の巻回方向の内周側に入り込んでいる。湾曲部60Cは、複数(図7に示す例では、4本)の導線部60C1である。複数の導線部60C1は、表面26Aに対する平面視で第1コイル60の巻回方向の内周側に沿って重なっている。より詳しく説明すると、複数の導線部60C1は、表面26Aに対する平面視で第1コイル60の巻回方向の内周側に沿って一定の間隔で配置されている。複数の導線部60C1のうちの最外周の導線部60C1は、第1スルーホール62Aとの接触を回避するように、第1コイル60の巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有しており、残りの導線部60C1は、最外周の導線部60C1と同形状で、かつ、同じの度合いで第1コイル60の巻回方向の内周側に入り込んでいる。つまり、複数の導線部60C1は、第1コイル60の巻回方向の内周側に同形状で且つ同じ度合いで入り込んだ形状を有しており、第1コイル60の巻回方向の外周側から内周側にかけて一定の間隔でオフセットされている。
【0064】
図7に示す例では、湾曲部60Cは、巻回方向の内周側にV字状に曲がった形状を有する。第1コイル60は、例えば、コンピュータ上で作動されるプリント基板の設計ツール等によって、基板26の表面26Aにレイアウトされる。湾曲部60Cは、基板26の外周26Cに沿って巻回された第1コイル60が、第1スルーホール62Aに重なるのを妨げる。なお、湾曲部60Cは、本開示の技術に係る「アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分」の一例である。
【0065】
第1コイル60の途中には、第1導通部63A及び第2導通部63Bが設けられている。ICチップ52は、ワイヤ接続方式で第1導通部63A及び第2導通部63Bに電気的に接続される。具体的には、第1導通部63A及び第2導通部63Bは、半田を有しており、ICチップ52の正極端子及び負極端子のうちの一方の端子が配線65Aを介して第1導通部63Aに半田付けされており、他方の端子が配線65Bを介して第2導通部63Bに半田付けされている。ICチップ52は、第1コイル60の巻回方向の内周側に配置されている。
【0066】
一例として図8に示すように、カートリッジメモリ19の基板26の裏面26Bには、第2コイル61が形成されている。ここでは、第2コイル61の素材として、銅箔が採用されている。銅箔は、あくまでも一例に過ぎず、例えば、アルミニウム箔等の他種類の導電性素材であってもよい。なお、第2コイル61は、本開示の技術に係る「補助アンテナコイル」の一例である。
【0067】
第2コイル61は、基板26の外周26Cに沿ってループ状に巻回されている。第2コイル61の外周端61Aは、基板26に設けられた第1スルーホール62Aに接続されており、第2コイル61の内周端61Bは、基板26に設けられた第2スルーホール62Bに接続されている。これにより、基板26の裏面26Bにおいて、第2コイル61は、第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bを介して、第1コイル60の外周端60Aと内周端60Bとを電気的に接続している。
【0068】
第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bの各々の直径Dは、第2コイル61の幅W2よりも大きい。第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bの各々の直径Dは、例えば、第2コイル61の幅W2の3倍である。一例として図8に示すように、外周端61Aは、第1スルーホール62Aの中央よりも基板26の外周26C側で、第1スルーホール62Aに接続されている。
【0069】
裏面26B上において、第1スルーホール62Aの位置は、第2コイル61の巻回方向の外周側よりも内周側に偏倚している。換言すると、これは、外周端61Aの位置が、裏面26B上において第2コイル61の巻回方向の内周側よりも外周側に偏倚している、ということである。
【0070】
裏面26B上において、第2コイル61のうち、外周端61Aの位置及び第1スルーホール62Aの位置に面する部分である湾曲部61Cは、巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する。ここで、湾曲部61Cが巻回方向の内周側にどの程度入り込んでいるかというと、少なくとも第1スルーホール62Aとの接触を回避する程度、第2コイル61の巻回方向の内周側に入り込んでいる。湾曲部61Cは、複数(図8に示す例では、4本)の導線部61C1である。複数の導線部61C1は、裏面26Bに対する平面視で第2コイル61の巻回方向の内周側に沿って重なっている。より詳しく説明すると、複数の導線部61C1は、裏面26Bに対する平面視で第2コイル61の巻回方向の内周側に沿って一定の間隔で配置されている。複数の導線部61C1のうちの最外周の導線部61C1は、第1スルーホール62Aとの接触を回避するように、第2コイル61の巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有しており、残りの導線部61C1は、最外周の導線部61C1と同形状で、かつ、同じの度合いで第2コイル61の巻回方向の内周側に入り込んでいる。つまり、複数の導線部60C1は、第2コイル61の巻回方向の内周側に同形状で且つ同じ度合いで入り込んだ形状を有しており、第2コイル61の巻回方向の外周側から内周側にかけて一定の間隔でオフセットされている。
【0071】
図8に示す例では、湾曲部61Cは、V字状に曲がった形状を有する。第2コイル61は、例えば、コンピュータ上で作動されるプリント基板の設計ツール等によって、基板26の裏面26Bにレイアウトされる。湾曲部61Cは、基板26の外周26Cに沿って巻回された第2コイル61が、第1スルーホール62Aに重なるのを妨げる。なお、湾曲部61Cは、本開示の技術に係る「補助アンテナコイルのうちのスルーホールの位置に面する部分」の一例である。
【0072】
図9は、カートリッジメモリ19の線A-Aにおける概略断面図の一例である。一例として図9に示すように、基板26の表面26Aに形成された第1コイル60と、裏面26Bに形成された第2コイル61とは、基板26の厚さ方向において千鳥状に配置されている。一般的には、第1コイル60と第2コイル61とが、基板26の厚さ方向において重複する位置に配置されている場合、第1コイル60と第2コイル61とのインダクタンス成分が結合して、特性上、太い一本の導線とみなされてしまう。しかし、本実施形態によれば、第1コイル60と第2コイル61とは千鳥状に配置されているので、第1コイル60と第2コイル61とが、基板26の厚さ方向において重複する位置に配置されている場合に比べ、インダクタンス成分が結合され難い。
【0073】
一例として図10に示すように、ICチップ52は、コンデンサ80、電源回路82、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88を備えている。ICチップ52は、制御プログラムがインストールされることによってカートリッジメモリ19の制御装置として機能する。
【0074】
また、カートリッジメモリ19は、電力生成器70を備えている。電力生成器70は、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MFが、基板26の表面26Aに形成された第1コイル60及び裏面26Bに形成された第2コイル61に対して作用することで電力を生成する。具体的には、電力生成器70は、共振回路92を用いて交流電力を生成し、生成した交流電力を直流電力に変換して出力する。
【0075】
電力生成器70は、共振回路92及び電源回路82を有する。共振回路92は、第1コイル60、第2コイル61、及びコンデンサ80を備えている。コンデンサ80は、ICチップ52に内蔵されているコンデンサであり、電源回路82もICチップ52に内蔵されている回路である。第1コイル60及び第2コイル61は、第1スルーホール62A及び第2スルーホール62B(図7及び図8参照)を介して直列に接続されている。コンデンサ80は、第1コイル60及び第2コイル61に対して並列に接続されている。
【0076】
共振回路92は、磁界MFが第1コイル60及び第2コイル61を貫通することで第1コイル60及び第2コイル61によって誘起された誘導電流を用いて、予め定められた共振周波数の共振現象を発生させることで交流電力を生成し、生成した交流電力を電源回路82に出力する。カートリッジメモリ19では、磁界MFが作用することで共振回路92を予め定められた共振周波数で共振させる。なお、予め定められた共振周波数は、例えば、13.56MHzである。なお、共振周波数は、13.56MHzに限らず、カートリッジメモリ19及び/又は非接触式読み書き装置50の仕様等によって適宜決定されればよい。
【0077】
電源回路82は、整流回路及び平滑回路等を有する。整流回路は、複数のダイオードを有する全波整流回路である。全波整流回路は、あくまでも一例に過ぎず、半波整流回路であってもよい。平滑回路は、コンデンサ及び抵抗を含んで構成されている。電源回路82は、共振回路92から入力された交流電力を直流電力に変換し、変換して得た直流電力(以下、単に「電力」とも称する)をICチップ52内の各種の駆動素子に供給する。各種の駆動素子としては、コンピュータ84、クロック信号生成器86、及び信号処理回路88が挙げられる。このように、ICチップ52内の各種の駆動素子に対して電力が電力生成器70によって供給されることで、ICチップ52は、電力生成器70によって生成された電力を用いて動作する。
【0078】
コンピュータ84は、CPU、NVM、及びRAM(何れも図示省略)を備えている。NVMには、制御プログラムと管理情報とが記憶されている。CPUは、NVMから制御プログラムを読み出し、RAM上で制御プログラムを実行することで、カートリッジメモリ19の動作を制御する。
【0079】
具体的には、CPUは、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じて、ポーリング処理、読出処理、及び書込処理を選択的に行う。ポーリング処理は、カートリッジメモリ19と非接触式読み書き装置50との間で通信を確立する処理であり、例えば、読出処理及び書込処理の前段階の準備処理として行われる。読出処理は、NVMから管理情報等を読み出す処理である。書込処理は、NVMに管理情報等を書き込む処理である。ポーリング処理、読出処理、及び書込処理(以下、区別して説明する必要がない場合、「各種処理」と称する)は何れも、クロック信号生成器86によって生成されたクロック信号に従ってCPUによって行われる。すなわち、CPUは、各種処理をクロック周波数に応じた処理速度で行う。
【0080】
クロック信号生成器86は、クロック信号を生成してコンピュータ84に出力する。コンピュータ84は、クロック信号生成器86から入力されたクロック信号に従って動作する。
【0081】
信号処理回路88は、共振回路92に接続されている。信号処理回路88は、復号回路及び符号化回路(何れも図示省略)を有する。信号処理回路88の復号回路は、第1コイル60及び第2コイル61によって受信された磁界MFからコマンド信号を抽出して復号し、コンピュータ84に出力する。コンピュータ84は、コマンド信号に対する応答信号を信号処理回路88に出力する。すなわち、コンピュータ84は、信号処理回路88から入力されたコマンド信号に応じた処理を実行し、処理結果を応答信号として信号処理回路88に出力する。信号処理回路88では、コンピュータ84から応答信号が入力されると、信号処理回路88の符号化回路は、応答信号を符号化することで変調して共振回路92に出力する。共振回路92は、信号処理回路88の符号化回路から入力された応答信号を、磁界MFを介して非接触式読み書き装置50に送信する。すなわち、カートリッジメモリ19から非接触式読み書き装置50に応答信号が送信される場合、磁界MFには、応答信号が含まれる。換言すると、磁界MFには応答信号が重畳される。
【0082】
次に、本実施形態によるカートリッジメモリ19の作用について説明する。
【0083】
一例として図15に示すように、従来例によるカートリッジメモリ119では、第1コイル160は、基板26の外周26Cに沿って直線的にループ状に巻回されている。ループ状に巻回された第1コイル160の外周端160Aは、基板26に設けられた第1スルーホール62Aに接続されており、第1コイル160の内周端160Bは、基板26に設けられた第2スルーホール62Bに接続されている。第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bの各々の直径Dは、第1コイル160の幅W1よりも大きい。第1コイル160の外周端160Aは、第1スルーホール62Aの中央よりも基板26の内周側で、第1スルーホール62Aに接続されている。
【0084】
すなわち、カートリッジメモリ119では、第1コイル160の外周端160Aは、図7に示す本実施形態によるカートリッジメモリ19に比べ、距離Lだけ内周側で第1スルーホール62Aに接続されている。つまり、本実施形態によるカートリッジメモリ19では、第1コイル60の外周端60Aは、従来例によるカートリッジメモリ119に比べ、距離Lだけ外周126C側で第1スルーホール62Aに接続され、距離Lだけ外周126C側に配置される。従って、本実施形態によるカートリッジメモリ19では、従来例によるカートリッジメモリ119に比べ、第1コイル60の内周側の領域Rが広くなる。第1コイル60の内周側の領域Rが広くなるほど、領域Rを貫通する磁力線が増加し、第1コイル60によって誘起される電力が大きくなる。
【0085】
以上説明したように、カートリッジメモリ19は、基板26に形成されており、非接触式読み書き装置50から与えられた磁界MFが作用することで電力を誘起する第1コイル60と、第1コイル60によって誘起された電力を利用して動作するICチップ52とを備える。ICチップ52は、第1コイル60の途中に挿入されている。第1コイル60は、基板26の外周26Cに沿ってループ状に巻回されており、第1コイル60のうちの湾曲部60Cは、巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する。従って、本構成によれば、従来例によるカートリッジメモリ119に場合に比べ、第1コイル60の内周側の領域Rを広くすることができる。
【0086】
また、第1コイル60のうちの湾曲部60Cは、巻回方向の内周側にV字状に曲がった形状を有する。従って、本構成によれば、第1コイル60の外周端60Aから既定の距離を保ちながら、基板26の外周26C近傍に第1コイル60を配置することができる。
【0087】
また、基板26は、厚さ方向において、表面26Aと裏面26Bとを有している。第1コイル60は、表面26Aに形成されている。第1コイル60の外周端60A及び内周端60Bは、裏面26Bで第2コイル61を介して電気的に接続されている。従って、本構成によれば、第1コイル60の外周端60A及び内周端60Bが接続されない場合に比べ、より多くの電力を得ることができる。
【0088】
また、第1コイル60の外周端60A及び内周端60Bは、第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bを介して裏面26Bで電気的に接続されている。従って、本構成によれば、第1コイル60の外周端60A及び内周端60Bをワイヤで接続する場合に比べ、第1コイル60の外周端60A及び内周端60Bを省スペースに接続することができる。
【0089】
また、第2コイル61は、裏面26Bに形成されており、基板26の外周26Cに沿ってループ状に巻回されている。従って、本構成によれば、第2コイル61が直線状である場合に比べ、第1コイル60及び第2コイル61を含むコイルの巻き数を多くすることができる。
【0090】
また、第2コイル61のうちの湾曲部61Cは、巻回方向の内周側に入り込んだ形状を有する。従って、本構成によれば、第2コイル61が基板26の外周26Cに沿って直線的に巻回される場合に比べ、第2コイル61の内周側の領域を広くすることができる。
【0091】
また、基板26の表面26Aに形成された第1コイル60と、裏面26Bに形成された第2コイル61とは、基板26の厚さ方向において、千鳥状に配置されている。従って、本構成によれば、第1コイル60と第2コイル61とが、厚さ方向に重複する位置に配置されている場合に比べ、より多くの電力を得ることができる。
【0092】
また、ICチップ52は、第1コイル60の巻回方向の内周側に配置されている。従って、本構成によれば、ICチップ52が第1コイル60の巻回方向の外周側に配置されている場合に比べ、第1コイル60の内周側の領域Rを広くすることができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、第1コイル60が基板26の表面26Aに形成され、第2コイル61が基板26の裏面26Bに形成される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。第1コイル60が基板26の裏面26Bに形成され、第2コイル61が基板26の表面26Aに形成されてもよい。つまり、第1コイル60が形成される面は、表面26A及び裏面26Bのうちの一方であり、第2コイル61が形成される面は、表面26A及び裏面26Bのうちの他方である。従って、本構成によれば、第1コイル60が形成される面又は第2コイル61が形成される面として、表面26A及び裏面26Bとは異なる新たな面が基板26に設けられる場合に比べ、基板26の厚みを薄くすることができる。
【0094】
また、上記実施形態では、第1コイル60の湾曲部60Cは、巻回方向の内周側にV字状に曲がった形状を有する形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。一例として図11に示すように、第1コイル60の湾曲部60Cは、巻回方向の内周側にU字状に曲がった形状を有していてもよい。従って、本構成によれば、第1コイル60の外周端60Aから既定の距離を保ちながら、基板26の外周26C近傍に第1コイル60を配置することができる。また、第2コイル61の湾曲部61Cも同様に、巻回方向の内周側にU字状に曲がった形状を有していてもよい。また、一例として図12に示すように、第1コイル60の湾曲部60Cは、巻回方向の内周側に円弧状に曲がった形状を有していてもよい。本構成によれば、第1コイル60の外周端60Aから一定の距離を保ちながら、基板26の外周26C近傍に第1コイル60を配置することができる。また、第2コイル61の湾曲部61Cも同様に、巻回方向の内周側に円弧状に曲がった形状を有していてもよい。
【0095】
上記実施形態では、表面26A上において、第1コイル60のうち、外周端60Aの位置及び第1スルーホール62Aの位置に面する部分を第1コイル60の巻回方向の内周側に入り込んだ形状としたが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、表面26A上において、第1コイル60のうち、第1スルーホール62Aの位置に面する部分を第1コイル60の巻回方向の内周側に入り込んだ形状としてもよい。
【0096】
上記実施形態では、裏面26B上において、第2コイル61のうち、外周端61Aの位置及び第1スルーホール62Aの位置に面する部分を第2コイル61の巻回方向の内周側に入り込んだ形状としたが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、裏面26B上において、第2コイル61のうち、第1スルーホール62Aの位置に面する部分を第2コイル61の巻回方向の内周側に入り込んだ形状としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、基板26の裏面26Bに形成された第2コイル61は、基板26の外周26Cに沿ってループ状に巻回されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。一例として図13に示すように、第2コイル61は、第1スルーホール62A及び第2スルーホール62Bを介して、クランク状に、外周端60Aと内周端60Bとを接続していてもよい。なお、図13では、第2コイル61がクランク状に形成されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されず、第2コイル61は直線状に形成されていてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、ICチップ52と第1コイル60とが配線65A及び65B(図7参照)で接続されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、ICチップ52と第1コイル60とがフリップチップ接続方式で接続されていてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、傾斜角度θとして45度を例示したが、本開示の技術はこれに限定されず、一例として図14に示すように、カートリッジメモリ19の基準面16A1に対する傾斜角度として、傾斜角度θよりも小さな傾斜角度θ1が採用されてもよい。傾斜角度θ1の一例としては30度が挙げられる。傾斜角度θ1は、傾斜角度θよりも小さな角度であるので、傾斜角度θの場合に比べ、第1コイル60(図7参照)及び第2コイル61(図8参照)に対して多くの磁力線を貫通させることができる。この結果、磁気テープカートリッジ10が磁気テープドライブ30に装填された状態で、第1コイル60及び第2コイル61は、傾斜角度θの場合に比べ、大きな誘導電流を得ることができる。
【0100】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0101】
本明細書において、「A及び/又はB」は、「A及びBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「A及び/又はB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、A及びBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「及び/又は」で結び付けて表現する場合も、「A及び/又はB」と同様の考え方が適用される。
【0102】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0103】
10 磁気テープカートリッジ
12 ケース
12A 右壁
12B 開口
14 上ケース
14A 天板
14A1 内面
16 下ケース
16A 底板
16A1 基準面
16B 後壁
18 カートリッジリール
18A リールハブ
18B1 上フランジ
18B2 下フランジ
19,119 カートリッジメモリ
20 支持部材
20A 第1傾斜台
20A1,20B1 傾斜面
20B 第2傾斜台
22 位置規制リブ
24 リブ
24A 先端面
26 基板
26A 表面
26B 裏面
26C,126C 外周
30 磁気テープドライブ
34 搬送装置
36 読取ヘッド
38 制御装置
40 送出モータ
42 巻取リール
44 巻取モータ
46 読取素子
48 ホルダ
50 非接触式読み書き装置
52 ICチップ
56 封止材
60,160 第1コイル
60A,160A 外周端
60B,160B 内周端
60C 湾曲部
61 第2コイル
61A 外周端
61B 内周端
61C 湾曲部
60C1 導線部
62A 第1スルーホール
62B 第2スルーホール
63A 第1導通部
63B 第2導通部
64 めっき層
65A,65B 配線
70 電力生成器
80 コンデンサ
82 電源回路
84 コンピュータ
86 クロック信号生成器
88 信号処理回路
92 共振回路
A,B,C 矢印
D 直径
GR ガイドローラ
L 距離
MF 磁界
MT 磁気テープ
R 領域
W1,W2 幅
θ,θ1 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15