(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】運搬システム、及び運搬方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20240816BHJP
B65G 21/14 20060101ALI20240816BHJP
B65G 47/19 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65G43/00 Z
B65G21/14 C
B65G47/19
(21)【出願番号】P 2021010395
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】縄田 周悟
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-059866(JP,A)
【文献】実開昭63-185530(JP,U)
【文献】特開2016-061131(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00
B65G 21/14
B65G 47/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を運搬する運搬システムであって、
前記粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアを有し、前記コンベアの仰角が変更可能に構成された搬送装置と、
前記搬送装置に対して前記粉体を供給する供給装置と、
前記供給装置に設けられ、前記搬送装置に対する前記粉体の供給量を調節する供給量調節装置と、
前記コンベアの仰角に応じた目標値に前記粉体の供給量が追従するように、前記供給量調節装置を制御する追従制御を実行する制御装置と、を備える運搬システム。
【請求項2】
前記搬送装置への前記粉体の供給量を測定する供給量測定装置を更に備え、
前記制御装置は、前記供給量測定装置による測定値と前記目標値よりも大きい閾値との関係が所定の検知条件を満たした場合に、前記追従制御を停止したうえで、前記粉体の供給量を減少させるように前記供給量調節装置を制御する制限制御を実行する、請求項1に記載の運搬システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記供給量測定装置の測定値が前記閾値を超過した状態の継続時間が、予め設定された検知時間に達した場合に、前記供給量測定装置による測定値と前記閾値との関係が前記検知条件を満たすと判定して前記制限制御を実行する、請求項2に記載の運搬システム。
【請求項4】
前記供給量調節装置は、前記供給装置に含まれる前記粉体の供給路に設けられた調節弁及び遮断弁を有し、
前記調節弁の開度は、所定の範囲内で調節可能であり、
前記遮断弁は、第1状態と、当該第1状態に比べて開度が小さい第2状態とに切り替え可能であり、
前記追従制御は、前記遮断弁が前記第1状態に維持された状態で、前記供給量測定装置による測定値が前記目標値に追従するように前記調節弁を制御することを含み、
前記制限制御は、前記遮断弁を前記第1状態から前記第2状態に切り替えることを含む、請求項2又は3に記載の運搬システム。
【請求項5】
前記遮断弁は、前記第2状態において前記粉体の通過を許容する所定の開度に維持されるように構成されている、請求項4に記載の運搬システム。
【請求項6】
前記供給装置は、前記搬送装置に供給するための前記粉体を収容するタンクと、前記タンク内の前記粉体の残量が、所定の下限レベルに達したことを検出可能な残量センサとを有し、
前記制御装置は、前記残量センサによって前記粉体の残量が前記下限レベルに達したことが検出された場合に、前記追従制御を停止する、請求項1~5のいずれか一項に記載の運搬システム。
【請求項7】
粉体を運搬する運搬方法であって、
前記粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアを有し、前記コンベアの仰角が変更可能に構成された搬送装置に対して前記粉体を供給することと、
前記コンベアの仰角に応じた目標値に前記搬送装置に対する前記粉体の供給量を追従させるように、当該供給量を調節することと、を含む運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運搬システム、及び運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、岸壁上にアンローダ設備を有する荷揚設備が開示されている。この荷揚設備による被輸送物として、石炭、穀物、及び小麦粉のような塊状体、粒状体、及び紛状体(粉体)が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉体を斜め上方に向かって搬送可能なコンベアを用いて、粉体を運搬する場合がある。そのコンベアの仰角と単位時間あたりの粉体の搬送量との関係によっては、粉体がコンベア上で逆流するおそれがある。本開示は、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流を抑制するのに有用な運搬システム及び運搬方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る運搬システムは、粉体を運搬するシステムである。この運搬システムは、粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアを有し、コンベアの仰角が変更可能に構成された搬送装置と、搬送装置に対して粉体を供給する供給装置と、供給装置に設けられ、搬送装置に対する粉体の供給量を調節する供給量調節装置と、コンベアの仰角に応じた目標値に粉体の供給量が追従するように、供給量調節装置を制御する追従制御を実行する制御装置と、を備える。
【0006】
この運搬システムでは、コンベアの仰角に応じた目標値に、供給装置から搬送装置への粉体の供給量が追従するように、供給量調節装置が制御される。この場合、コンベアの仰角が変化すると、その変化に応じた目標値に粉体の供給量が調節されるので、コンベアの仰角が大きくなっても粉体の逆流が生じ難い。従って、本運搬システムは、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流を抑制するのに有用である。
【0007】
上記運搬システムは、搬送装置への粉体の供給量を測定する供給量測定装置を更に備えてもよい。制御装置は、供給量測定装置による測定値と前記目標値よりも大きい閾値との関係が所定の検知条件を満たした場合に、追従制御を停止したうえで、粉体の供給量を減少させるように供給量調節装置を制御する制限制御を実行してもよい。粉体が空気を含むことで、多量の粉体が一度に流れてしまう所謂フラッシング現象が生じ得る。上記構成では、粉体の供給量と目標値よりも大きい上記閾値との関係が検知条件を満たした際に、粉体の供給量が減少されるので、フラッシング現象に起因した粉体の供給量の急激な増大を抑制できる。従って、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流の抑制に更に有用である。
【0008】
制御装置は、供給量測定装置の測定値が目標値よりも大きい閾値を超過した状態の継続時間が、予め設定された検知時間に達した場合に、供給量測定装置による測定値と上記閾値との関係が検知条件を満たすと判定して制限制御を実行してもよい。この場合、粉体の供給量の測定値が瞬間的に閾値を超えた際には、追従制御から制限制御に移行しない。そのため、粉体の供給量を過剰に減少させることが抑制されるので、運搬効率の向上に有用である。
【0009】
供給量調節装置は、供給装置に含まれる粉体の供給路に設けられた調節弁及び遮断弁を有してもよい。調節弁の開度は、所定の範囲内で調節可能であってもよい。遮断弁は、第1状態と、当該第1状態に比べて開度が小さい第2状態とに切り替え可能であってもよい。追従制御は、遮断弁が第1状態に維持された状態で、供給量測定装置による測定値が目標値に追従するように調節弁を制御することを含んでもよい。制限制御は、遮断弁を第1状態から第2状態に切り替えることを含んでもよい。
【0010】
粉体の供給量を目標値に精度良く追従させる際には、開度の細かい調節が必要となり、フラッシング現象に伴う供給量の増大をより確実に抑制するには、短時間で開度を小さくする必要がある。遮断弁は、調節弁に比べて動作速度を速くすることができる。そのため、追従制御で調節弁を制御し、制限制御で遮断弁を制御する上記構成は、供給量の高精度な調節と、フラッシング現象による影響のより確実な抑制とに有用である。
【0011】
遮断弁は、第2状態において粉体の通過を許容する所定の開度に維持されるように構成されていてもよい。この場合、粉体の搬送が全て停止されることなく、フラッシング現象に起因した粉体の逆流を抑制できる。従って、粉体の逆流の抑制と運搬効率との両立に有用である。
【0012】
供給装置は、搬送装置に供給するための粉体を収容するタンクと、タンク内の粉体の残量が、所定の下限レベルに達したことを検出可能な残量センサとを有してもよい。制御装置は、残量センサによって粉体の残量が下限レベルに達したことが検出された場合に、追従制御を停止してもよい。
【0013】
タンク内の粉体の残量が減少すると、搬送装置への供給量も減少する傾向があり、この場合に追従制御を継続すると、より多くの量の粉体を供給可能な状態となるように供給量調節装置が制御される。この状態で、タンク内に粉体が補充されると、供給量調節装置によって粉体の供給可能な量が多い状態となっているので、搬送装置に対して過剰な量の粉体を供給してしまうおそれがある。上記構成では、粉体の残量が下限レベルに達すると追従制御が停止されるので、粉体の残量の低下後の補充に起因した過剰な量の粉体の供給を抑制できる。従って、粉体の逆流の抑制に更に有用である。
【0014】
本開示の一側面に係る運搬方法は、粉体を運搬する方法である。この運搬方法は、粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアを有し、コンベアの仰角が変更可能に構成された搬送装置に対して粉体を供給することと、コンベアの仰角に応じた目標値に搬送装置に対する粉体の供給量を追従させるように、当該供給量を調節することと、を含む。
【0015】
この運搬方法では、コンベアの仰角に応じた目標値に、搬送装置への粉体の供給量が追従するように、粉体の供給量が調節される。この場合、コンベアの仰角が変化すると、その変化に応じた目標値に粉体の供給量が調節されるので、コンベアの仰角が大きくなっても粉体の逆流が生じ難い。従って、本運搬方法は、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流を抑制するのに有用である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流を抑制するのに有用な運搬システム及び運搬方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、運搬システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、供給装置及びトリッパーの一例を示す模式図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、調節弁の一例を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、遮断弁の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、コンベアの仰角の変化を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、追従制御を含む処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、制限制御を含む処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、保持制御を含む処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、制御装置による制御結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
[運搬システム]
図1には、一実施形態に係る運搬システムが模式的に示されている。
図1に示される運搬システム1は、粉体を運搬可能なシステムである。運搬システム1は、例えば、港湾又は運河に設置されており、船舶2に向けて粉体を運搬する。船舶2は、ばら積み船等の貨物船である。運搬システム1によって船舶2まで運搬されることで、粉体が船舶2に積み込まれる。運搬システム1は、例えば、粉体としてセメントを船舶2に運搬する(積み込む)。
【0020】
運搬システム1は、サイロ8から導入される粉体(セメント)を船舶2まで運搬する。サイロ8から運搬システム1への粉体の搬送では、粉体を空気で圧送するセラーポンプが用いられてもよい。運搬システム1は、
図1に示されるように、供給装置10と、搬送装置20と、制御装置100とを備える。
【0021】
(供給装置)
供給装置10は、サイロ8から導入される粉体を一時的に貯留し、搬送装置20に対して粉体を供給する装置である。供給装置10は、例えば、中継タンク12(タンク)と、エアスライダ14と、ルーツブロワ16と、バッグフィルタ18と、を有する。
【0022】
中継タンク12は、搬送装置20に供給するための粉体を一時的に貯留(収容)するタンクである。中継タンク12は、例えば、供給装置10から搬送装置20に供給可能な量(単位時間あたりの供給量)よりも多い量の粉体を収容可能である。中継タンク12の下部に設けられた粉体の排出口には、エアスライダ14が接続されている。
【0023】
エアスライダ14は、粉体を斜め下方に向かって滑らすことによって、搬送装置20に対して粉体を投入する。エアスライダ14は、中継タンク12から搬送装置20までの粉体の供給路14aを形成する(
図2参照)。エアスライダ14は、中継タンク12の下部から搬送装置20に向かって、斜め下方に傾斜した状態で延びている。エアスライダ14は、筒状に形成されてもよい。例えば、エアスライダ14の延在方向に相当する粉体の供給方向に垂直な面において、エアスライダ14(供給路14a)の断面は、四角形である。エアスライダ14の上流に位置する端部は、エアスライダ14の下流に位置する端部よりも上方に位置している。本開示では、粉体の流れ(粉体が運搬される流れ)を基準として、「上流」及び「下流」の用語を使用する。
【0024】
ルーツブロワ16は、エアスライダ14の底部に空気を供給する。ルーツブロワ16からエアスライダ14の底部に空気が供給されることで、エアスライダ14内の供給路14aにおいて粉体が空気によって浮き上がり、下方に位置する端部に向って粉体が流れる。バッグフィルタ18は、ルーツブロワ16からエアスライダ14に送られる空気を回収し、当該空気内に含まれる粉体を回収する。バッグフィルタ18は、エアスライダ14及び中継タンク12を介して送られる空気から、粉体を分離する集塵装置として機能する。
【0025】
図2には、供給装置10の一部と搬送装置20の一部(後述のトリッパー30)とを拡大した模式図が示されている。
図2に示されるように、供給装置10は、残量センサ60を更に有する。残量センサ60は、例えば、中継タンク12に設けられている。残量センサ60は、中継タンク12内の粉体の残量が、所定の下限レベルに達したことを検出するセンサである。
【0026】
残量センサ60は、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達した場合(下限レベルを下回った場合)に、粉体の残量が下限レベルに達したことを示す検出信号を制御装置100に出力してもよい。残量センサ60は、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達していない場合に、信号を出力しなくてもよく、又は、当該残量が下限レベルに達していないことを示す別の検出信号を制御装置100に出力してもよい。
【0027】
残量センサ60は、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したこと(下回ったこと)を検出可能であれば、いかなる方式のセンサであってもよい。下限レベルは、中継タンク12の最大容量の30%以下、20%以下、10%以下、又は5%以下に設定されてもよい。中継タンク12内の粉体の残量は、搬送装置20への粉体の供給状況、及びサイロ8から中継タンク12への粉体の導入状況に応じて変動する。
【0028】
(供給量調節装置)
運搬システム1は、供給量調節装置50を更に備える。供給量調節装置50は、搬送装置20に対する粉体の供給量(単位時間あたりの供給量)を調節する装置である。供給量調節装置50は、供給装置10に設けられている。供給量調節装置50は、例えば、エアスライダ14が形成する供給路14aの開度を調節する。言い換えると、供給量調節装置50は、エアスライダ14が形成する供給路14a内を通過可能な粉体の量を調節する。供給量調節装置50は、例えば、調節弁52と、遮断弁54とを有する。調節弁52及び遮断弁54は、エアスライダ14の供給路14aに設けられており、調節弁52は、遮断弁54よりも下流に位置する。
【0029】
調節弁52は、その開度が所定の範囲内で調節可能な弁である。調節弁52の開度が変化することで、当該調節弁52が設けられている位置での供給路14aを通過可能な粉体の量が調節される。調節弁52の開度は、所定の範囲内で段階的に(少なくとも3段階以上に)調節可能である。調節弁52の開度は、最も開度が大きい段階を100%としたときに、調節可能な開度の下限から100%の間で多段階に調節可能であってもよい。
【0030】
図3(a)及び
図3(b)には、調節弁52の一例が模式的に示されている。
図3(a)及び
図3(b)では、エアスライダ14の延在方向が「方向D」で示されている。調節弁52は、エアスライダ14の上下方向(底面と上面が対向する方向)及び方向Dの双方に直交する方向(
図3(a)において紙面に垂直な方向)に沿った軸線まわりに、回転可能に設けられている。調節弁52は、
図3(b)に示されるように、方向Dに交差し粉体の通過を阻止する閉塞部52aを有しており、当該閉塞部52aには、粉体の通過を許容する切欠き部52bが形成されている。
【0031】
調節弁52は、方向Dから見たときに、当該調節弁52によって形成される開口の大きさ(粉体が通過可能な面積)が変化するように、上記軸線まわりに回転可能である。調節弁52は、電動式の弁であってもよい。例えば、調節弁52には、上記軸線まわりに回転するための駆動力を発生するモータが接続されており、当該モータに印加される電圧値が調節されることで、開度が変化する。
図3(a)では、開度が50%である状態の調節弁52が実線で示され、開度が0%である状態の調節弁52が一点鎖線で示され、開度が100%である状態の調節弁52が破線で示されている。なお、上述した調節弁52の構成は一例であり、調節弁52は、その開度が所定の範囲内で調節可能な弁であれば、どのように構成されていてもよい。
【0032】
図2に示される遮断弁54は、開状態(第1状態)と、当該開状態よりも開度が小さい閉状態(第2状態)とに切り替え可能な弁である。すなわち、遮断弁54は、当該遮断弁54が設けられている位置において、エアスライダ14によって形成される供給路14aの開閉状態を切り替える。遮断弁54は、閉状態において、粉体の通過を許容する所定の開度に維持されてもよい。つまり、遮断弁54は、閉状態において、供給路14aを全て閉止しないように構成されてもよい。遮断弁54が開状態であるときの開度を100%とした場合に、閉状態での遮断弁54の開度が、0%よりも大きくてもよい。例えば、閉状態での遮断弁54の開度は、5%以上、10%以上、20%以上、又は30%以上であってもよい。
【0033】
図4(a)及び
図4(b)には、遮断弁54の動作の様子が模式的に示されている。
図4(a)には、開状態の遮断弁54が示されており、
図4(b)には、閉状態の遮断弁54が示されている。
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、遮断弁54が閉状態である場合において、当該遮断弁54が設けられる位置での供給路14aを通過可能な粉体の量は、遮断弁54が開状態である場合に比べて少ない。
【0034】
遮断弁54は、例えば、空動式の弁であり、供給される空気の圧力によって開状態又は閉状態に切り替わる。遮断弁54の動作速度は、調節弁52の動作速度よりも速い。一例では、遮断弁54が開状態から閉状態までに遷移する時間は、調節弁52の開度が100%である状態から調節可能な開度の下限までに遷移する時間よりも短い。以上のように、遮断弁54は、調節弁52と異なり、調節可能な開度の上限と下限との間の中間の状態に遷移しないように構成されていてもよい。
【0035】
(搬送装置)
図1に戻り、搬送装置20は、供給装置10から粉体の供給を受け、供給された粉体を船舶2まで搬送する装置である。搬送装置20は、例えば、トリッパー30と、シップローダ40と、を有する。トリッパー30は、その一端が供給装置10のエアスライダ14の下流側の端部の下方に位置するように配置されている。トリッパー30には、エアスライダ14とバッグフィルタ18とから粉体が供給されてもよい。
【0036】
トリッパー30は、搬送コンベア32を有する。搬送コンベア32は、エアスライダ14及びバッグフィルタ18から供給された粉体をシップローダ40まで搬送する。搬送コンベア32は、例えば、ベルトコンベアである。搬送コンベア32は、供給装置10から供給された粉体を水平方向に沿って搬送した後に、当該粉体を斜め上方に向かって搬送するように構成されてもよい。このように、搬送コンベア32の下流に位置する端部の高さは、搬送コンベア32の上流に位置する端部の高さよりも高くてもよい。搬送コンベア32は、シップローダ40に対して粉体を投入する。
【0037】
図2に示されるように、運搬システム1は、供給量測定装置70を備える。供給量測定装置70は、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量(単位時間あたりの供給量)を測定する。より詳細には、供給量測定装置70は、トリッパー30の搬送コンベア32に設けられており、搬送コンベア32において搬送中の粉体の搬送量(単位時間あたりの搬送量)を測定する。搬送コンベア32において搬送中の粉体の搬送量は、供給装置10(エアスライダ14及びバッグフィルタ18)から供給される粉体の供給量に相関する。そのため、搬送コンベア32の粉体の搬送量を測定することは、搬送装置20への粉体の供給量を測定することに相当する。
【0038】
供給量測定装置70は、いかなる方式で粉体の搬送量を測定(計測)してもよい。供給量測定装置70は、例えば、ロードセル式のコンベアスケールである。供給量測定装置70は、搬送コンベア32に加わる荷重(重さ)を測定するセンサと、搬送コンベア32の移動速度を測定するセンサとを含み、測定した荷重と移動速度との積算値を出力するように構成されてもよい。この積算値を得ることで、所定の測定周期ごとに、単位時間あたりの粉体の搬送量が測定される。
【0039】
図1に示されるように、シップローダ40は、船舶2が隣接可能な岸壁4に設けられている。シップローダ40は、岸壁4に対して移動可能に設けられてもよい。シップローダ40は、トリッパー30の搬送コンベア32から投入された粉体を、岸壁4に隣接されている船舶2まで搬送する。シップローダ40は、粉体以外のものを含む種々のバラ物(例えば、礫状の鉱石類)の搬送にも用いられてもよい。シップローダ40は、例えば、支持体42と、搬送コンベア44と、ブーム46と、ブームコンベア48(コンベア)と、を有する。
【0040】
支持体42は、岸壁4に設けられており、搬送コンベア44とブーム46とを支持するように構成されている。搬送コンベア44は、トリッパー30の搬送コンベア32から粉体の供給を受け入れて、供給された粉体を搬送する。搬送コンベア44は、例えば、ベルトコンベアである。搬送コンベア44は、その一方の端部が搬送コンベア32の下流側の端部の下方に位置するように配置される。搬送コンベア44は、水平方向に沿って粉体を搬送してもよい。すなわち、搬送コンベア44の下流側の端部の高さは、搬送コンベア44の上流側の端部の高さに略一致していてもよい。
【0041】
ブーム46は、鉛直斜め方向に延びるように形成されている。ブーム46の一端部は、支持体42に接続されており、ブーム46の他端に向かうにつれて高くなるように、ブーム46は傾斜している。ブーム46の一端部は、水平方向(
図1において紙面に垂直な方向)に沿った軸線まわりに回転可能となるように支持体42に接続されている。シップローダ40は、ブーム46の上記軸線まわりの角度を変更させる駆動力を発生するモータ(不図示)を有してもよい。ブーム46には、その延在方向に沿ってブームコンベア48が設けられる。
【0042】
ブームコンベア48は、粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアである。ブームコンベア48は、例えば、ベルトコンベアである。ブームコンベア48の粉体の搬送方向に沿った長さは、搬送コンベア44(搬送コンベア32)の粉体の搬送方向に沿った長さよりも長くてもよい。ブームコンベア48の一方の端部は、搬送コンベア44の下流側の端部の下方に位置している。ブームコンベア48には、搬送コンベア44から粉体が投入される。ブームコンベア48の他方の端部は、上記一方の端部よりも上方に位置している。
【0043】
ブーム46の上記軸線まわりの角度が変化することで、ブームコンベア48の仰角αが変更される。すなわち、搬送装置20は、ブームコンベア48の仰角αが変更可能に構成されている。ブームコンベア48の仰角αは、所定の範囲で調節可能である。仰角αの調節可能な範囲の最大値は、15°であってもよく、13°であってもよく、11°であってもよい。仰角αの調節可能な範囲の最小値は、0°程度であってもよい。
【0044】
シップローダ40は、シュート49を有する。シュート49は、ブームコンベア48の下流側の端部に設けられ、鉛直下方に延びている。シュート49は、ブームコンベア48の下流側の端部まで搬送された粉体を、船舶2内の収容部まで導く。岸壁4に対する船舶2の高さ(例えば、船舶2の甲板の高さ)は、潮の干満(潮汐)及び船舶2に既に積み込まれた粉体の量に応じて変動する。岸壁4に対する船舶2の高さ(以下、「高さH」という。)が変動すると、シュート49の下端と船舶2内の収容部との間の距離が変化するので、ブームコンベア48の仰角αを調節する必要が生じる。
【0045】
図5(a)及び
図5(b)には、岸壁4に対する船舶2の高さHが変化する様子が示されている。例えば、
図5(a)に示される状態での船舶2の高さHに比べて、
図5(b)に示される状態での船舶2の高さHは低い。船舶2の高さHが低くなると、シュート49の下端と船舶2内の収容部との間隔が広くなるので、運搬システム1では、この間隔の変化(広がり)を縮小させるように仰角αの調節が行われる。船舶2の高さHが高くなるにつれて仰角αが大きくなるように、仰角αの調節が行われ、船舶2の高さHが低くなるにつれて仰角αが小さくなるように、仰角αの調節が行われる。
【0046】
運搬システム1は、仰角測定装置80を更に備える。仰角測定装置80は、ブームコンベア48の仰角αを測定する。仰角測定装置80は、いかなる方式でブームコンベア48の仰角αを測定してもよい。仰角測定装置80は、ブームコンベア48の仰角αとして、ブーム46の傾斜角(水平方向に対する角度)を測定してもよい。又は、仰角測定装置80は、ブームコンベア48の仰角αとして、ブーム46の傾斜角を変動させるモータの回転角度を測定してもよい。
【0047】
(制御装置)
制御装置100は、運搬システム1に含まれる各種測定装置から測定値を取得すると共に、運搬システム1の各装置を制御する。制御装置100には、作業員等のオペレータからの指示を入力するための入力デバイスが接続されていてもよい。この入力デバイスは、所望の情報を入力可能であればいかなるものであってもよく、その具体例としてはキーボード、操作パネル、及びマウス等が挙げられる。
【0048】
制御装置100は、例えば、
図6に示されるように、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、入力情報取得部112と、仰角取得部114と、仰角制御部116と、目標値設定部118と、供給量取得部122と、異常判定部126と、残量判定部128と、供給制御部132と、を有する。これらの機能モジュールが実行する処理は、制御装置100が実行する処理に相当する。
【0049】
入力情報取得部112は、作業員等からの指示を示す入力情報を取得する。作業員等からの入力情報には、例えば、ブームコンベア48の仰角αの目標値が含まれてもよい。作業員等は、船舶2の現在の高さH又は船舶2への粉体の積込状況に応じて、ブームコンベア48の仰角αの目標値を制御装置100に入力してもよい。
【0050】
仰角取得部114は、仰角測定装置80から、ブームコンベア48の仰角αの測定値を取得する。仰角取得部114は、所定の周期で、ブームコンベア48の仰角αの測定値を取得してもよい。
【0051】
仰角制御部116は、ブームコンベア48の仰角αが目標値に近づくように搬送装置20(シップローダ40)を制御する。仰角制御部116は、例えば、仰角取得部114が取得した仰角αの測定値が、入力情報取得部112によって取得された仰角αの目標値に略一致するように、シップローダ40のブーム46を水平方向に沿った軸線まわりに回転させるモータを制御する。
【0052】
目標値設定部118は、ブームコンベア48の仰角αに応じて、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量の目標値(以下、「目標供給量Ta」という。)を設定する。目標値設定部118は、例えば、仰角取得部114が取得した仰角αの測定値に応じて、目標供給量Taを設定する。目標供給量Taは、ブームコンベア48の仰角αが大きくなるにつれて小さくなるように設定され、ブームコンベア48の仰角αが小さくなるにつれて大きくなるように設定される。目標値設定部118は、ブームコンベア48の仰角αと目標供給量Taとが予め対応付けられたテーブルを参照することで、ブームコンベア48の仰角αに応じた目標供給量Taを設定してもよい。当該テーブルは、制御装置100に予め記憶されている。
【0053】
目標供給量Taは、ブームコンベア48において粉体の逆流が発生しないと予測される量に設定される。粉体の逆流とは、ブームコンベア48が粉体を搬送する方向とは反対の方向に、搬送中の粉体の少なくとも一部が流れることを意味する。粉体の逆流が発生すると、例えば、ブームコンベア48において搬送中の粉体の一部が、ブームコンベア48の下流側の端部に向って落下していく。一例では、仰角αに応じた目標供給量Taは、粉体の逆流が発生しなかった場合の過去の実績値に基づいて定められている。
【0054】
供給量取得部122は、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量を取得する。供給量取得部122は、例えば、供給量測定装置70による測定値を、搬送装置20に対する粉体の現在の供給量として取得する。供給量取得部122は、所定の周期で、供給量測定装置70から供給量の測定値を取得してもよい。
【0055】
異常判定部126は、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量が異常であるか否かを判定する。具体的には、異常判定部126は、エアスライダ14からトリッパー30に多量の粉体が一度に流れ出てしまう現象(所謂フラッシング現象)が生じているか否かを判定する。異常判定部126は、所定の周期で、粉体の現在の供給量が異常であるか否かを判定してもよい。例えば、異常判定部126は、供給量取得部122が供給量測定装置70から測定値を取得する周期に合わせて、異常の有無を判定する。
【0056】
異常判定部126は、供給量測定装置70による測定値と判定閾値Th(閾値)との関係が所定の検知条件を満たした場合に、粉体の供給量が異常である(フラッシング現象が生じた)と判定してもよい。異常判定部126は、例えば、供給量測定装置70の測定値が判定閾値Thを超過した状態の継続時間が、予め設定された検知時間に達した場合に、供給量測定装置70による測定値と判定閾値Thとの関係が上記検知条件を満たし、粉体の供給量が異常であると判定する。すなわち、異常判定部126は、供給量の測定値が判定閾値Thを超えた状態が上記検知時間だけ継続した場合に、フラッシング現象が生じていると判定してもよい。
【0057】
上記判定閾値Thは、目標値設定部118が設定する目標供給量Ta(供給量の目標値)に応じて設定され、当該目標供給量Taよりも大きい値に設定される。一例では、判定閾値Thは、目標供給量Taの1.1倍~1.5倍に設定される。上述の検知時間は、数秒(例えば、2秒~5秒)に設定されてもよい。判定閾値Thの設定方法及び検知時間は、フラッシング現象が生じた際の過去の供給量及び当該供給量の時間変化についての実績値に基づいて、予め定められていてもよい。
【0058】
異常判定部126は、供給量の測定値と判定閾値Thとの関係が検知条件を満たすと判定した後に、供給量測定装置70による測定値が、目標供給量Taを下回った場合に、粉体の供給量の異常(フラッシング現象)が解消したと判定してもよい。なお、異常判定部126は、一の周期において、供給量測定装置70による測定値が判定閾値Thを上回った場合に、供給量測定装置70の測定値と判定閾値Thとの関係が上記検知条件を満たし、フラッシング現象が生じていると判定してもよい。
【0059】
残量判定部128は、供給装置10の中継タンク12内の粉体の残量が、上述の下限レベルに達したか否かを判定する。残量判定部128は、例えば、残量センサ60による検出結果から、粉体の残量が下限レベルに達したか否かを判定する。例えば、残量センサ60が粉体の残量が下限レベルに達したことを検出した際に下限レベルに達したことを示す検出信号を出力するセンサである場合、残量判定部128は、残量センサ60から当該検出信号が入力された場合に、粉体の残量が下限レベルに達したと判定する。
【0060】
残量判定部128は、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したと判定した後に、残量センサ60による検出結果から、粉体の残量が下限レベルを上回ったことを判定してもよい。残量判定部128は、例えば、残量センサ60からの下限レベルを上回ったことを示す別の検出信号が入力された場合に、粉体の残量が下限レベルを上回ったと判定してもよい。
【0061】
供給制御部132は、ブームコンベア48の仰角αに応じた目標供給量Taに、供給装置10に対する粉体の供給量が追従するように、供給量調節装置50を制御する。以下では、粉体の供給量を目標供給量Taに追従させるための供給量調節装置50に対する制御を「追従制御」と称する。供給制御部132は、例えば、追従制御において、目標値設定部118が設定した目標供給量Taに、供給量取得部122が取得した供給量の測定値(供給量測定装置70による測定値)が追従するように供給量調節装置50を制御する。
【0062】
一例では、供給制御部132は、所定の周期で、供給量の測定値と目標供給量Taとの偏差を算出し、当該偏差を縮小するように供給量調節装置50の調節弁52を制御する。供給制御部132は、追従制御を実行する際に、供給量調節装置50の遮断弁54を開状態に維持する。以上のように、追従制御では、遮断弁54が開状態に維持された状態で、供給量の測定値が目標供給量Taに追従するように調節弁52の開度が調節される。
【0063】
上述したように、目標供給量Taは、ブームコンベア48の仰角αが大きくなるほど小さい値に設定され、ブームコンベア48の仰角αが小さくなるほど大きい値に設定される。そのため、目標供給量Taに応じた追従制御が継続されている場合に、ブームコンベア48の仰角αが大きくなると、供給装置10から搬送装置20への粉体の供給量は減少し、ブームコンベア48の仰角αが小さくなると、搬送装置20への粉体の供給量は増加する。供給制御部132は、異常判定部126によって搬送装置20に対する供給量が異常であると判定されずに、且つ、残量判定部128によって中継タンク12内の残量が下限レベルに達したと判定されない場合に、追従制御を継続して実行してもよい。
【0064】
供給制御部132は、異常判定部126によって搬送装置20に対する供給量が異常であると判定された場合(フラッシング現象が検知された場合)に、追従制御を停止してもよい。この場合、供給制御部132は、搬送装置20に対する粉体の供給量を減少させるように供給量調節装置50を制御してもよい。以下では、供給量の異常が検知された場合に、搬送装置20に対する粉体の供給量を減少させるための供給量調節装置50に対する制御を「制限制御」と称する。制限制御において供給量を減少させるとは、制限制御を実行する直前の追従制御の実行時における量よりも、粉体の供給量を減少させることを意味する。
【0065】
供給制御部132は、例えば、制限制御において、遮断弁54を開状態から閉状態に切り替える。遮断弁54が閉状態に遷移した際に、遮断弁54が設置された位置の供給路14aが全て閉止されなくてもよい。供給制御部132は、遮断弁54の切替えに加えて、調節弁52の開度が所定の設定値となるように調節弁52を制御してもよい。所定の設定値は、予め定められており、例えば、調節弁52の開度の上限の10%~40%に設定される。供給制御部132は、制限制御において、上記設定値に代えて、直前の追従制御での開度に調節弁52を維持してもよい。
【0066】
供給制御部132は、追従制御から制限制御に移行した後において(すなわち、供給量を減少させた後に)、搬送装置20に対する粉体の供給量が、移行前に設定されていた目標供給量Taを下回った場合に、追従制御を再度実行(継続)してもよい。例えば、供給制御部132は、遮断弁54を閉状態から開状態に切り替えて、調節弁52の開度を徐々に制限制御を実行する前の開度に戻すように調節弁52を制御した後に、粉体の供給量が目標供給量Taに追従するように調節弁52の制御を継続する。以上のように、制限制御は、遮断弁54を開状態から閉状態に切り替えることを含む。
【0067】
供給制御部132は、残量判定部128によって中継タンク12内の粉体の残量が上記下限レベルに達したことが検出された場合に、追従制御を停止してもよい。この場合、供給制御部132は、調節弁52の開度が一定値に維持されるように供給量調節装置50を制御してもよい。調節弁52の開度を一定値に維持する際に、供給制御部132は、遮断弁54を開状態に維持してもよい。以下では、粉体の残量が下限レベルを下回ったことが検知された場合に、調節弁52の開度を一定値に維持させる制御を「保持制御」と称する。
【0068】
供給制御部132は、調節弁52の開度を、保持制御を実行する直前の追従制御の実行時における開度に維持してもよく、所定の設定開度に維持してもよい。供給制御部132は、追従制御から保持制御に移行した後において、残量判定部128によって、中継タンク12内の粉体の残量が、下限レベルを上回ったと判定された場合に、追従制御を再度実行(継続)してもよい。すなわち、下限レベルを上回ったと判定された場合に、供給制御部132は、目標供給量Taと現在の粉体の供給量とに合わせた調節弁52の開度の調節を再開してもよい。
【0069】
以上のように、供給制御部132による制御は、異常判定部126による判定結果、及び残量判定部128による判定結果に応じて、追従制御を実行するモード、制限制御を実行するモード、及び保持制御を実行するモードのいずれかに切り替える。具体的には、供給制御部132は、制限制御及び保持制御を実行する条件が満たされない限り、追従制御を継続する。供給制御部132は、制限制御を実行する条件が満たされると、追従制御を停止して制限制御を実行する。供給制御部132は、保持制御を実行する条件が満たされると、追従制御を停止して保持制御を実行する。供給制御部132は、制限制御及び保持制御を実行する条件の両方が満たされた場合に、いずれか一方の制御を優先して実行してもよい。
【0070】
制御装置100は、
図7に示されるように、回路150を有する。回路150は、少なくとも一つのプロセッサ152と、メモリ154と、ストレージ156と、入出力ポート158と、タイマ162とを含む。ストレージ156は、上述の各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録する。ストレージ156は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0071】
メモリ154は、ストレージ156からロードされたプログラム、プロセッサ152の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ152は、メモリ154と協働してプログラムを実行することで、各機能モジュールを構成する。入出力ポート158は、プロセッサ152からの指令に応じ、シップローダ40、供給量調節装置50、残量センサ60、供給量測定装置70、及び仰角測定装置80等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ162は、プロセッサ152からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0072】
以上のように構成される運搬システム1による粉体の運搬方法は、粉体を斜め上方に向かって搬送するブームコンベア48を有し、ブームコンベア48の仰角αが変更可能に構成された搬送装置20に対して粉体を供給することと、ブームコンベア48の仰角αに応じた目標供給量Taに搬送装置20に対する粉体の供給量を追従させるように、当該供給量を調節することと、を含む。
【0073】
[制御装置による処理手順]
続いて、
図8~
図11を参照しながら、制御装置100が実行する処理手順の一例について説明する。
図8は、追従制御を含む一連の処理の一例を示すフローチャートである。この一連の処理では、供給量調節装置50の遮断弁54が開状態に維持されている状態で、制御装置100が、最初にステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、仰角取得部114が、仰角測定装置80から、ブームコンベア48の仰角αの測定値を取得する。
【0074】
次に、制御装置100は、ステップS12,S13を順に実行する。ステップS12では、例えば、目標値設定部118が、ステップS11で得られた仰角αの測定値に応じて、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量の目標値を示す目標供給量Taを設定する。ステップS13では、例えば、供給量取得部122が、供給装置10から搬送装置20に対する粉体の供給量として、供給量測定装置70による測定値を取得する。
【0075】
次に、制御装置100は、ステップS14を実行する。ステップS14では、例えば、供給制御部132が、ステップS12で得られた目標供給量Taと、ステップS13で得られた供給量の測定値との偏差が、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。ステップS14において、当該偏差が閾値よりも大きいと判断された場合(ステップS14:YES)、制御装置100が実行する処理はステップS15に進む。
【0076】
ステップS15では、例えば、供給制御部132が、上記偏差が縮小するように供給量調節装置50の調節弁52を制御する。一例では、供給制御部132は、目標供給量Taに対して供給量の測定値が大きい場合、その時の偏差に応じた量だけ開度が小さくなるように調節弁52を制御する。供給制御部132は、目標供給量Taに対して供給量の測定値が小さい場合には、その時の偏差に応じた量だけ開度が大きくなるように調節弁52を制御する。
【0077】
一方、ステップS14において、目標供給量Taと供給量の測定値との偏差が閾値以下であると判断された場合(ステップS14:NO)、制御装置100の処理はステップS16に進む。すなわち、上記偏差が閾値以下である場合、制御装置100は、ステップS15を実行しない。
【0078】
次に、制御装置100は、ステップS16を実行する。ステップS16では、例えば、制御装置100が、予め定められ量の粉体の運搬が完了したか否かを判定する。ステップS16において、所定量の粉体の運搬が完了していないと判断された場合(ステップS16:NO)、制御装置100が実行する処理は、ステップS11に戻る。一方、ステップS16において、所定量の粉体の運搬が完了したと判断された場合(ステップS16:YES)、制御装置100は、一連の処理を終了する。
【0079】
以上のように、制御装置100は、所定量の粉体の運搬が完了するまで、ステップS11~S16の一連の処理を繰り返し実行する。制御装置100は、所定周期で(例えば、1秒~数秒又は数十秒ごとに)、ステップS11~S16の一連の処理を繰り返してもよい。ステップS11~S16の一連の処理が繰り返されることで、目標供給量Taがブームコンベア48の仰角αに応じた値に設定され、仰角αに応じた目標供給量Taに、供給量の測定値が追従するように調節弁52が制御される。すなわち、上述の追従制御が継続される。
【0080】
図9は、制限制御を含む一連の処理を示すフローチャートである。制御装置100は、
図9に示される一連の処理を、上記ステップS11~S16の一連の処理と並行して実行する。
【0081】
この一連の処理では、制御装置100が、最初にステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、異常判定部126が、所定周期で実行されるステップS13において得られる供給量の測定値と判定閾値Thとの関係が、所定の検知条件を満たすまで待機する。一例では、異常判定部126は、供給量測定装置70による測定値が判定閾値Thを超過した状態の継続時間が、予め設定された検知時間に達した場合に、供給量の増加の程度が上記検知条件を満たすと判定する。異常判定部126は、上記ステップS11~S16の一連の処理を実行する周期に合わせて、ステップS21を実行してもよい。
【0082】
ステップS21において、検知条件が満たされた場合(ステップS21:YES)、制御装置100は、ステップS22,S23を実行する。制御装置100は、これらの処理の実行に合わせて、繰り返し実行するステップS11~S16のうちのステップS14,S15の実行を停止する。ステップS22では、例えば、供給制御部132が、開状態から閉状態に遷移させるように遮断弁54を制御する。ステップS23では、例えば、供給制御部132が、開度が所定の設定値に固定されるように調節弁52を制御する。ステップS22,S23の実行により、供給路14a内を通過する粉体の量が、ステップS11~S16の全てが繰り返されていた場合に比べて減少する。
【0083】
次に、制御装置100は、ステップS24を実行する。ステップS24では、例えば、異常判定部126が、ステップS22の実行後も所定周期で行われるステップS13において得られる供給量が、目標供給量Taを下回るまで待機する。
【0084】
一の周期での供給量が目標供給量Taを下回ったと判断された場合(ステップS24:YES)、制御装置100は、ステップS25,S26を実行する。ステップS25では、例えば、供給制御部132が、閉状態から開状態に遷移させるように遮断弁54を制御する。ステップS26では、例えば、供給制御部132が、ステップS23で設定した開度から、徐々に元の開度(例えば、ステップS22を実行する直前での開度)に戻すように調節弁52を制御する。供給制御部132は、数秒間~数十秒間かけて、元の開度に徐々に戻すように調節弁52を制御してもよい。
【0085】
ステップS21よりも後のステップS22~S26の一連の処理が実行されることで、搬送装置20に対する粉体の供給量を減少させる制限制御が実行される。制御装置100は、ステップS26の実行後、所定周期ごとに、ステップS11~S16の処理を繰り返すと共に、ステップS21の判定を繰り返す。
【0086】
図10は、制御装置100が実行する保持制御を含む一連の処理を示すフローチャートである。制御装置100は、
図10に示される一連の処理を、上記ステップS11~S16の一連の処理と並行して実行する。
【0087】
この制御手順では、制御装置100が、最初にステップS31を実行する。ステップS31では、例えば、残量判定部128が、供給装置10の中継タンク12内の粉体の残量が、下限レベルに達するまで待機する。一例では、残量判定部128が、残量センサ60からの検出信号の入力の有無に応じて、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したか否かを判定する。残量判定部128は、上記ステップS11~S16の一連の処理を実行する周期に合わせて、ステップS31を実行してもよい。
【0088】
ステップS31において、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したと判断された場合(ステップS31:YES)、制御装置100は、ステップS32を実行する。制御装置100は、この処理の実行に合わせて、繰り返し実行するステップS11~S16のうちのステップS14,S15の実行を停止する(すなわち、追従制御を停止する)。ステップS32では、例えば、供給制御部132が、調節弁52による開度の調節を停止する。一例では、供給制御部132が、調節弁52の開度を現在の開度(ステップS32を実行する直前に設定されていた開度)に固定する。
【0089】
次に、制御装置100は、ステップS33を実行する。ステップS33では、例えば、残量判定部128が、中継タンク12内の粉体の残量が、下限レベルを上回るまで待機する。一例では、残量判定部128が、残量センサ60からの検出信号の入力の有無に応じて、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルを上回ったこと(下限レベルに達していない状態となったこと)を判定する。
【0090】
中継タンク12内の残量が下限レベルを上回ったと判断された場合(ステップS33:YES)、制御装置100は、所定周期ごとに、ステップS11~S16の処理を繰り返すと共に、ステップS31の判定を繰り返す。ステップS31よりも後のステップS32,S33の一連の処理が実行されることで、調節弁52の開度の調節を停止させる保持制御が実行される。
【0091】
ここで、
図11を参照して、上述の一連の処理を実行した場合の制御結果の一例について説明する。
図11は、供給量調節装置50による測定値(供給量の測定値)と調節弁52の開度との時間変化を示すグラフである。このグラフでは、横軸が時間を示し、縦軸が粉体の単位時間あたりの供給量及び調節弁52の開度[%]を示す。粉体の供給量の測定値の時間変化がグラフ「D1」で示されており、開度の時間変化がグラフ「D2」で示されている。このグラフの測定時間においては、ブームコンベア48の仰角αは変化しておらず、目標供給量Ta及び判定閾値Thも一定である。
【0092】
図11のグラフから、粉体の供給量が目標供給量Taを下回っている際には、調節弁52の開度を増加させ、粉体の供給量が目標供給量Taを上回っている際には、調節弁52の開度を減少させていることがわかる。すなわち、追従制御が実行されていることがわかる。時刻「t1」において、粉体の供給量が判定閾値Thを上回っている。時刻t1以降において、粉体の供給量が判定閾値Thを超過している時間が短いため、追従制御が継続されている。
【0093】
時刻「t2」及び時刻「t3」において、時刻t1と同様に、粉体の供給量が判定閾値Thを上回っている。時刻t2,t3以降において、粉体の供給量が判定閾値Thを超過している時間が数秒間継続しているため、追従制御が停止され、調節弁52の開度が30%程度に低下している。この際、遮断弁54は、開状態から閉状態に遷移している。これにより、判定閾値Thを上回っていた供給量が急激に減少している。すなわち、時刻t2,t3付近において、追従制御に代えて制限制御が実行されている。また、このグラフの測定時間において、ブームコンベア48において粉体の逆流が発生していないことが、作業員による目視から確認された。
【0094】
[変形例]
制御装置100が実行する上述の一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置100は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置100は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。
【0095】
目標値設定部118は、ブームコンベア48の仰角αの目標値、又はブーム46を駆動させるモータへの指令値に応じて、供給量の目標値(目標供給量Ta)を設定してもよい。上述の例では、作業員の指示に基づいてブームコンベア48の仰角αが調節されるが、潮の干満及び船舶2への積込状況に応じて、ブームコンベア48の仰角αが自律的に変動するようにシップローダ40が構成されていてもよい。この場合、制御装置100は、自律的に変動する仰角αの測定値に応じて、目標供給量Taを設定してもよい。
【0096】
運搬システム1は、仰角が可変に構成されたコンベアを有する搬送装置と、当該搬送装置に対して粉体を供給する供給装置と、供給装置からの粉体の供給量を調節する装置と、これらの装置を制御する制御装置とを備えていれば、どのように構成されていてもよい。
【0097】
上述の例では、供給装置10のエアスライダ14と、ブームコンベア48との間には、粉体を搬送する装置として、搬送コンベア32,44が設けられる。搬送コンベア32,44の少なくとも一方に代えて、別のエアスライダ、空気輸送設備、又はスクリューコンベアが用いられてもよい。
【0098】
残量センサ60は、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したことを検出することに代えて、中継タンク12内の粉体の残量(例えば、重さ)を測定するセンサであってもよい。この場合、制御装置100の残量判定部128は、残量センサ60による残量の測定値に応じて、中継タンク12内の粉体の残量が下限レベルに達したか否かを判定してもよい。粉体の残量を測定する残量センサ60を用いる場合でも、下限レベルに相当する残量を測定可能であり、当該残量センサ60は、粉体の残量が下限レベルに達したことを検出可能である。
【0099】
ブーム46は、ブームコンベア48の仰角αがプラスの範囲(斜め上方に向かって搬送する状態)に加えて、仰角αがマイナスの範囲(斜め下方に向かって搬送する状態)においても、水平な軸線まわりに回転可能であってもよい。この場合、仰角αの調節可能な範囲の最小値は、-10°であってもよく、-9°であってもよく、-8°であってもよい。仰角αがマイナスとなる範囲でも調節可能である場合に、制御装置100は、仰角αがプラスの範囲内で調節されているときに、上述の追従制御及び制限制御等を実行してもよい。上述の例及び本変形例のように、ブームコンベア48は、少なくとも斜め上方に向かって粉体を搬送可能に構成されていればよい。
【0100】
運搬システム1は、セメント以外の粉体を運搬してもよい。運搬システム1による粉体の運搬先は、船舶2に限られない。例えば、運搬システム1は、トラック、及び列車等の輸送体に粉体を運搬してもよく、コンテナ等又は工場内の設備に粉体を運搬してもよい。運搬システム1が、船舶2への粉体の積込(積付)に代えて、船舶2からの搬出(荷揚)に用いられてもよい。
【0101】
[実施形態の効果]
以上に説明した運搬システム1は、粉体を運搬するシステムである。運搬システム1は、粉体を斜め上方に向かって搬送するブームコンベア48を有し、ブームコンベア48の仰角αが変更可能に構成された搬送装置20と、搬送装置20に対して粉体を供給する供給装置10と、供給装置10に設けられ、搬送装置20に対する粉体の供給量を調節する供給量調節装置50と、ブームコンベア48の仰角αに応じた目標値に供給量が追従するように、供給量調節装置50を制御する追従制御を実行する制御装置100と、を備える。
【0102】
ブームコンベア48の仰角αが大きくなった際に、目標値を変化させずに粉体の運搬を継続すると、ブームコンベア48で搬送中の粉体の一部が落下する逆流が発生してしまう可能性がある。上記運搬システム1では、ブームコンベア48の仰角αに応じた目標値(目標供給量Ta)に、供給装置10から搬送装置20への粉体の供給量が追従するように、供給量調節装置50が制御される。この場合、ブームコンベア48の仰角αが変化すると、その変化に応じた目標値に粉体の供給量が調節されるので、ブームコンベア48の仰角αが大きくなっても粉体の逆流が生じ難い。従って、運搬システム1は、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流を抑制するのに有用である。
【0103】
逆流を防止するための別の方法として、例えば、ブームコンベア48に襞等の流れ止めを設置することも考えられる。しかしながら、上述したように、運搬システム1(シップローダ40)は、セメント以外のばら物の運搬にも使用される場合がある。そのため、流れ止めを設置してしまうと、運搬対象物の切替え時の清掃が著しく煩雑となる。これに対して、運搬システム1では、流れ止めを設置しなくてもセメント等の粉体の逆流を抑制できるので、運搬対象物の切替え時の作業性と粉体の逆流の抑制との両立に有用である。
【0104】
逆流を防止するための別の方法として、ブームコンベア48上の粉体の搬送状況を作業員が監視しながら、作業員が、その搬送状況に応じた目標供給量Taを制御装置100に入力することも考えられる。しかしながら、この場合、作業員は、逆流を防止するためにブームコンベア48上での粉体の搬送状況の監視と目標供給量Taの指示とを継続する必要がある。これに対して、上記運搬システム1では、ブームコンベア48の仰角α(例えば、仰角測定装置80による測定値)に応じて、目標供給量Taが設定される。そのため、逆流を防止するための供給量の調節作業の簡便化にも有用である。
【0105】
運搬システム1は、搬送装置20への粉体の供給量を測定する供給量測定装置70を更に備えてもよい。制御装置100は、供給量測定装置70による測定値と目標供給量Taよりも大きい判定閾値Thとの関係が所定の検知条件を満たした場合に、追従制御を停止したうえで、供給量を減少させるように供給量調節装置50を制御する制限制御を実行してもよい。
【0106】
粉体が空気を含むことで、多量の粉体が一度に流れてしまうフラッシング現象が生じ得る。上記構成では、粉体の供給量と判定閾値Thとの関係が検知条件を満たした際に、粉体の供給量が減少されるので、フラッシング現象に起因した供給量の急激な増大を抑制できる。従って、斜め上方に粉体を搬送するコンベア上での粉体の逆流の抑制に更に有用である。
【0107】
制限制御を実行せずに、フラッシング現象の発生を考慮して(例えば、フラッシング現象が起きても逆流が生じないように)、目標供給量Taを低い値に設定することが考えられる。これに対して、上記構成では、フラッシング現象が発生したと推測される場合には追従制御が停止するので、目標供給量Taを必要以上に低い値に設定せずに粉体の逆流を抑制できる。そのため、粉体の逆流の抑制と粉体の運搬効率との両立に有用である。なお、フラッシング現象に起因した粉体の逆流の発生を抑制する観点からは、コンベアの仰角に応じた目標供給量の設定を必ずしも行う必要はなく、コンベアの仰角が変更可能でなくてもよい。
【0108】
制御装置100は、供給量測定装置70の測定値が目標値よりも大きい閾値(判定閾値Th)を超えている状態の継続時間が、予め設定された検知時間に達した場合に、供給量測定装置70による測定値と閾値との関係が検知条件を満たすと判定して制限制御を実行してもよい。この場合、粉体の供給量の測定値が瞬間的に閾値を超えた際には、追従制御から制限制御に移行しない。そのため、粉体の供給量を過剰に減少させることが抑制されるので、粉体の逆流の抑制と運搬効率との両立に有用である。
【0109】
供給量調節装置50は、供給装置10に含まれる粉体の供給路14aに設けられた調節弁52及び遮断弁54を有してもよい。調節弁52の開度は、所定の範囲内で調節可能であってもよい。遮断弁54は、第1状態(開状態)と、当該第1状態に比べて開度が小さい第2状態(閉状態)とに切り替え可能であってもよい。追従制御は、遮断弁54が第1状態に維持された状態で、供給量測定装置70による測定値が目標値に追従するように調節弁52を制御することを含んでもよい。制限制御は、遮断弁54を第1状態から第2状態に切り替えることを含んでもよい。
【0110】
粉体の供給量を目標値に精度良く追従させる際には、開度の細かい調節が必要となり、フラッシング現象に伴う供給量の増大をより確実に抑制するには、短時間で開度を小さくする必要がある。遮断弁54は、調節弁52に比べて動作速度を速くすることができる。そのため、追従制御で調節弁52を制御し、制限制御で遮断弁54を制御する上記構成は、供給量の高精度な調節と、フラッシング現象に伴う供給量増加による影響のより確実な抑制とに有用である。
【0111】
遮断弁54は、第2状態において粉体の通過を許容する所定の開度に維持されるように構成されていてもよい。この場合、粉体の搬送を全て停止されることなく、フラッシング現象に起因した粉体の逆流を抑制できる。従って、粉体の逆流の抑制と運搬効率との両立に有用である。
【0112】
供給装置10は、搬送装置20に供給するための粉体を収容するタンク(中継タンク12)と、タンク内の粉体の残量が、所定の下限レベルに達したことを検出可能な残量センサ60とを有してもよい。制御装置100は、残量センサ60によって粉体の残量が下限レベルに達したことが検出された場合に、追従制御を停止してもよい。
【0113】
タンク内の粉体の残量が減少すると、搬送装置20への供給量も減少する傾向があり、追従制御を継続すると、より多くの粉体が供給可能な状態となるように(例えば、調節弁52の開度が大きくなるように)供給量調節装置50が制御される。この状態で、タンク内に粉体が補充されると、供給量調節装置50によって粉体の供給可能な量が多い状態となっているので、搬送装置20に対して過剰な量の粉体を供給してしまうおそれがある。上記構成では、粉体の残量が下限レベルに達すると追従制御が停止されるので、粉体の残量の低下後の補充に起因した過剰な量の粉体の供給を抑制できる。従って、粉体の逆流の抑制に更に有用である。
【0114】
なお、上記実施形態は、以下の構成も含まれている。
(付記)
粉体を運搬する運搬システムであって、
前記粉体を斜め上方に向かって搬送するコンベアを有する搬送装置と、
前記搬送装置に対して前記粉体を供給する供給装置と、
前記供給装置に設けられ、前記搬送装置に対する前記粉体の供給量を調節する供給量調節装置と、
前記搬送装置への前記粉体の供給量を測定する供給量測定装置と、
前記供給量測定装置による測定値が目標値に追従するように、前記供給量調節装置を制御する追従制御を実行する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記供給量測定装置による測定値と前記目標値よりも大きい閾値との関係が所定の検知条件を満たした場合に、前記追従制御を停止したうえで、前記供給量を減少させるように前記供給量調節装置を制御する制限制御を実行する、運搬システム。
【符号の説明】
【0115】
1…運搬システム、2…船舶、10…供給装置、12…中継タンク、14…エアスライダ、14a…供給路、20…搬送装置、30…トリッパー、40…シップローダ、48…ブームコンベア、α…仰角、50…供給量調節装置、52…調節弁、54…遮断弁、60…残量センサ、70…供給量測定装置、80…仰角測定装置、100…制御装置。