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7539370ウルトラファインバブル含有水溶液及び当該水溶液を含有する飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル含有水溶液及び当該水溶液を含有する飲料
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/2375 20220101AFI20240816BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240816BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20240816BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20240816BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20240816BHJP
   A23L 2/54 20060101ALN20240816BHJP
   C12G 3/04 20190101ALN20240816BHJP
【FI】
B01F23/2375
C25B1/04
A23F5/24
A23F3/16
A23L2/00 T
A23L2/54 101
C12G3/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021512833
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020038034
(87)【国際公開番号】W WO2021075332
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/041060
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598105123
【氏名又は名称】錦町農産加工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521089409
【氏名又は名称】ベルテクノサービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120145
【弁理士】
【氏名又は名称】田坂 一朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊久
(72)【発明者】
【氏名】張 蘭因
(72)【発明者】
【氏名】ドドビバ ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宏美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 税
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121630(JP,A)
【文献】特開2018-183110(JP,A)
【文献】特開2018-202363(JP,A)
【文献】登録実用新案第3198704(JP,U)
【文献】特開2018-008230(JP,A)
【文献】特開2018-140356(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178436(WO,A1)
【文献】特開2016-104474(JP,A)
【文献】特開2016-136936(JP,A)
【文献】特開2015-188789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 23/20-2375
A23L 2/00-84
A23L 33/10
A23F 5/24-42
A23F 3/16-32
C12G 3/04-07
C25B 1/02-044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、水素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込んで、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水飲料を製造する、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、
前記ウルトラファインバブルの内部の水素をダブルボトル水素発生装置を使用して電解により生成し、
前記ウルトラファインバブルの内部の二酸化炭素を二酸化炭素の多孔質セラミクス通過により生成する、製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに水素を吹き込んで、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水飲料を製造する、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、
前記ウルトラファインバブルの内部の水素をダブルボトル水素発生装置を使用して電解により生成し、
前記ウルトラファインバブルの内部の二酸化炭素を二酸化炭素の多孔質セラミクス通過により生成する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルトラファインバブルを含有する水溶液及び当該水溶液を含有する飲料に関し、特に、二酸化炭素および水素の少なくともいずれか一方を含むウルトラファインバブル含有水溶液及び当該水溶液を含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素(以下、「ROS」ともいう。)は、癌を含む多くの疾患の原因物質であり、活性酸素の消去が疾患の予防および治療への1つのアプローチと考えられてきている。
【0003】
活性酸素の消去を効率的に行うためには、活性酸素消去成分の効率的な摂取が必要である。しかしながら、食品または飲料等からの活性酸素消去成分の摂取は微量で限定的あり、持続的な効果を期待することはできない。活性酸素の中でも、特に、ヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキシドアニオンラジカル(O)の消去が疾患の予防・治療に重要であると言われている。
【0004】
一方、ウルトラファインバブル(以下、「UFB(Ultrafine Bubble)」ともいう。)は、中性溶液中で高い負のゼータ電位を有し、抗酸化能を有する。UFBは、時間経過とともにサイズが減少し、1か月経過後も存在可能とされる。
【0005】
ウルトラファインバブルの持続的な抗酸化能について十分な検討は未だ行われていない。例えば、水素は高い還元力を有するが、ナノファインバブ水素水(水素を含むウルトラファインバブル水溶液)について、その抗酸化能は未だ十分に検討されていない。
【0006】
上村らは、共鳴発泡と真空キャビテーションにより、ウルトラファインバブルを大量に噴出させる技術を開発したとしており、さらに「水素のウルトラファインバブル水は、抗酸化機能を有し高齢化の進む現代社会の高血圧 、高脂血症、糖尿病、心疾患、脳梗塞等のいわゆる生活習慣病の予防、また癌の予防にも 役立てることが可能である。」(下記特許文献1参照)と述べるが、科学的根拠もなく、実証もされていない。
【0007】
ウルトラファインバブルの調製に関し、Ahmedらは、流体力学、音響、粒子、光キャビテーションによる従来の生成方法ではなく、円筒状セラミックナノ濾過膜を用いる空気、窒素、及び酸素のウルトラファインバブル含有水溶液を検討し、空気バブルのサイズをナノレベルにできることを報告している(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-104474号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ahmed A.K.B., Shi X., Likun Hua L., Leidy Manzueta L., Weihua Qing W., Marhaba T., Wen Zhang, W., J. of Agricultural and Food Chemistry(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー), 2018, 66(20), 5117-5124.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ウルトラファインバブルは長期間の存在が可能なため、その抗酸化能も長期に持続する可能性がある。しかしながら、各種気体のウルトラファインバブルが活性酸素消去に及ぼす影響は未知であり、その検討が課題とされていた。
【0011】
本発明者らは、種々の気体のナノファインバブルについて、その抗酸化能、各種疾患への効果を検討する中で、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体を含むウルトラファインバブルの含有溶液が持続的なROS消去能、癌細胞への細胞障害効果、担癌マウスへの抗腫瘍効果を有することを見出したことに基づいて、活性酸素消去能を有し、癌細胞への細胞障害効果、担癌マウスへの抗腫瘍効果を有する、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体を含むウルトラファインバブルの含有溶液について、PCT/JP2019/041060において開示した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、本発明者らは、上記の課題に鑑み、種々の気体のナノファインバブルについて、その抗酸化能、各種用途への適用を検討する中で、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液が持続的なROS消去作用を有し、各種飲料へ適用できることを見出した。
【0013】
したがって、本発明の目的は、活性酸素消去作用を有する、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液及び当該水溶液を含有する飲料を提供することにある。
【0014】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液。
[2]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、エタノールを含有しない非アルコール性水溶液である[1]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[3]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含む、[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[4]
水素ウルトラファインバブルを含む、[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[5]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[6]
ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[3]から[5]のいずれか1項のウルトラファインバブル含有水溶液。
[7]
スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[3]~[5]のいずれか1項のウルトラファインバブル含有清涼飲料。
[8]
ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[3]~[5]のいずれか1項のウルトラファインバブル含有水溶液。
[9]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[10]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[11]
水素ウルトラファインバブルを含み、スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[12]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含み、スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[2]のウルトラファインバブル含有水溶液。
[13]
[2]~[12]のいずれか1項のウルトラファインバブル含有水溶液を含有する清涼飲料。
[14]
炭酸飲料、果樹飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーターからなる群から選択されるいずれかの清涼飲料である、[13]の清涼飲料。
[15]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、[5]、[10]又は[12]のウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、水素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込んで、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水飲料を製造する、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法。
[16]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、[5]、[10]又は[12]のウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法であって、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに水素を吹き込んで、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水飲料を製造する、ウルトラファインバブル含有水溶液の製造方法。
[17]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、エタノールを含有するアルコール性水溶液である[1]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[18]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含む、[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[19]
水素ウルトラファインバブルを含む、[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[20]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[21]
ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[18]~[20]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[22]
スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[18]~[20]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[23]
ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[18]~[20]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[24]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[25]
水素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[26]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[27]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含み、スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[28]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含み、ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンの消去作用を有する[17]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液。
[29]
[17]~[28]のいずれか1項のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液を含有するアルコール飲料。
[30]
日本酒、ピール、ワイン、ウィスキーからなる群から選択されるいずれかのアルコール飲料である、[29]のアルコール飲料。
[31]
二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、[23]、[26]、又は[28]のウルトラファインバブル含有アルコール水溶液の製造方法であって、水素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込んで、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液を製造する、ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、活性酸素消去作用を有する、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有水溶液及び当該水溶液を含有する飲料を提供することすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる二酸化炭素ウルトラファインバブルの作成装置を示す図である。
図2】本発明にかかる水素ウルトラファインバブルの作成装置を示す図である。
図3】本発明にかかるウルトラファインバブルのIFA測定装置の主要部を示す図である。
図4】本発明にかかるウルトラファインバブルの粒子サイズ分布を示す図である。
図5】本発明にかかるウルトラファインバブルの安定性を示す図である。
図6】本発明における活性酸素の検出方法(スピントラップ法/ESR法)において、G-CYPMPOと活性酸素の付加物を示す図である。
図7】本発明にかかるウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液のヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図8】本発明にかかるウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図9】本発明にかかるウルトラファインバブル含有100%エタノール溶液のヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図10】本発明にかかるウルトラファインバブル含有50%エタノール溶液のヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図11】本発明にかかるウルトラファインバブル含有20%エタノール水溶液のヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図12】本発明にかかるウルトラファインバブル含有10%エタノール水溶液のヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図13】本発明にかかるウルトラファインバブル含有100%エタノール溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図14】本発明にかかるウルトラファインバブル含有50%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図15】本発明にかかるウルトラファインバブル含有20%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図16】本発明にかかるウルトラファインバブル含有10%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(ウルトラファインバブル含有水溶液)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有水溶液は、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体を含むウルトラファインバブルの含有水溶液であることを特徴とする。
【0019】
前記ウルトラファインバブル含有水溶液においては、当該溶液に含まれる個々のウルトラファインバブルの内部に、二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体が含まれ得る。
【0020】
前記ウルトラファインバブル含有水溶液は、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の両方の気体を含むウルトラファインバブル含有水溶液を含むこともできる。
【0021】
気泡は、気体以外により囲まれた気体からなる閉じた空間であり、液体に完全に囲まれている気泡は浮遊性気体である。この浮遊性気体のうち、直径が1マイクロメーター以下の気泡は、ウルトラファインバブルと呼ばれる(ファインバブル学会連合)。
【0022】
ウルトラファインバブルは極めて小さな気泡であるため、気泡がゼータ電位という負の電位を帯び、気泡が極めて長時間液中に存在できる等の特徴が知られている。
【0023】
本発明においては、ウルトラファインバブルの内部に、二酸化炭素、水素、及び二酸化炭素と水素の両方を含有するウルトラファインバブルを、それぞれ、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素ウルトラファインバブル、及び二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルともいう。
【0024】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルの含有水溶液としては、水、各種イオンを含む塩類溶液、アミノ酸溶液、水と水溶性有機溶媒の混合溶液等を挙げることができる。特に、本発明にかかるウルトラファインバブルの含有水溶液は、エタノールを含有しない非アルコール性水溶液、及びエタノールを含有するアルコール水溶液であることが好ましい。
【0025】
本発明におけるウルトラファインバブルは、特定の50%平均粒径をも有することが好ましい。ウルトラファインバブルの内部に含まれる気体が特定の50%平均粒径よりも小さな粒径を有することにより、ウルトラファインバブルの安定性が向上し、長時間ウルトラファインバブルとして存在することができる。本発明における50%平均粒径は、通常、ウルトラファインバブルの個数についての50%平均粒径をいう。
【0026】
ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素を含む前記ウルトラファインバブルの50%平均粒径は、50nm~300nmの範囲であることが好ましく、50nm~150nmの範囲であることが更に好ましい。この範囲の50%平均粒径により、数日間ウルトラファインバブルとして存在することが可能になる。50nm未満の50%平均粒径のウルトラファインバブル二酸化炭素を調製することは困難である。
【0027】
ウルトラファインバブルの内部に水素を含む前記ウルトラファインバブルの50%平均粒径は、10nm~500nmの範囲であることが好ましく、10nm~150nmの範囲であることが更に好ましい。この範囲の50%平均粒径により、数日間ウルトラファインバブルとして存在することが可能になる。10nm未満の50%平均粒径のウルトラファインバブルを調製することは困難である。
【0028】
本発明におけるウルトラファインバブル含有水溶液は、特定のウルトラファインバブルの含有量を有することが好ましい。前記ウルトラファインバブル含有水溶液の抗酸化作用が発揮されるためには、一定量の気体がウルトラファインバブルに含有されることが必要である。
【0029】
本発明におけるウルトラファインバブル含有水溶液における、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素を含む前記ウルトラファインバブルの含有量は、1億個/mL~100億個/mLの範囲であることが好ましく、10億個/mL~100億個/mLの範囲であることが更に好ましい。
【0030】
本発明におけるウルトラファインバブル含有水溶液における、ウルトラファインバブルの内部に水素を含む前記ウルトラファインバブルの含有量は、0.1億個/mL~1000億個/mLの範囲であるあることが好ましく、1億個/mL~500億個/mLの範囲であることが更に好ましい。
【0031】
(ウルトラファインバブル含有水溶液の調製)
前記ウルトラファインバブル含有水溶液の調製法としては、スパイラル流システム法(Spiral Flow System Method)、加圧溶解システム法(Pressurized Dissolution System)、超音波法(Ultrasonic Wave Method)、多孔質セラミクス通過、多孔質プラスチック膜通過、ダブルボトル水素発生装置など様々な方法が知られている。
【0032】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、様々な方法により調製することができる。なかでも、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、加圧タンクからの二酸化炭素を多孔質セラミクス通過(前記多孔質セラミクス通過法)させ、または多孔質プラスチック膜を通過させ、次に液体に吹き込むことにより調製することが好ましい(図1参照)。前記多孔質プラスチック膜としては、通常の微粒子を除去する膜もナノバブル調製に用いることができる。
【0033】
前記水素ウルトラファインバブルは、様々な方法により調製することができる。なかでも、前記水素ウルトラファインバブルは、ダブルボトル水素発生装置(Woo社製、Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用して電解(前記ファインバブル製造用電解法)により調製した水素ウルトラファインバブルが好ましい。前記ダブルボトル水素発生装置により、水素ウルトラファインバブルの含有溶液を調製することができる(図2参照)。
【0034】
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル水溶液(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)は、二酸化炭素を多孔質セラミクス通過(前記多孔質セラミクス通過法)させ、または多孔質プラスチック膜を通過させ、次に前記水素ウルトラファインバブルの含有溶液に吹き込むことにより、又は前記二酸化炭素ウルトラファインバブルにダブルボトル水素発生装置により水素ウルトラファインバブルを生成させることにより、調製することができる。
【0035】
また、前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル水溶液は、前記加圧溶解システム及びスパイラル流システムからなる群から選択される少なくともいずれかの1つの方法により調製することができる。これらの方法によれば、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル水溶液を多量に調製することができる。
【0036】
(ウルトラファインバブル含有水溶液の特性測定)
ウルトラファインバブルの特性測定法としては、共振質量法(Resonant Mass Method)、粒子軌道法(Particle Trajectory Method)、レーザー回折法(Laser Diffraction Method)、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering Method: DLS Method)、相互作用力装置法(Interactive Force Apparatus Method: IFA Method)などが知られている。
【0037】
本発明におけるウルトラファインバブルは、その特性を様々な方法で測定することができる。なかでも、本発明のウルトラファインバブルの特性測定には、動的光散乱法(DLS)法と同等の粒径の小さなウルトラファインバブルの測定が可能であり、高い精度を有するため、以下の相互作用力装置(IFA)測定法を用いることが好ましい。
【0038】
本発明におけるウルトラファインバブルは、水溶液中で、図3のIFA測定装置を用いて、その粒径サイズ分布を測定できる(図4及び5参照)。本測定装置によれば、「数nm~数100μmまでのファインバブルの粒度分布を高精度に測定することができ、また、粒子濃度、液の光透過性、屈折率に影響されることなく、測定可能」(特許第6502657号公報、3頁段落[0009])である。本測定装置の1例を図3に示した。測定値は、動的光散乱(DLS)法による測定値とよく一致する。
【0039】
前記相互作用力装置測定法は、特開2016-109453(発明の名称「ファインバブルの粒度分布測定法及び測定装置」、特許第6502657号)に開示されている。
【0040】
(ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液の特性)
ウルトラファインバブルの粒径
前記ウルトラファインバブルの粒径を水中で上記相互作用力装置法により測定すると、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)は115nmと測定され、記水素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)は130nmと測定された(図4参照)。
【0041】
ウルトラファインバブルの安定性
前記ウルトラファインバブル(水中)の経時的な粒径変化を上記相互作用力装置法により測定し、その安定性(持続性)を評価した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、蒸留水中で数日存在し、4日後には消失した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの蒸留水中での安定性は、数日となりウルトラファインバブルによる安定性が認められた。前記水素ウルトラファインバブルは、40日の経過後における粒径は25nmであり、時間経過とともに粒径が小さくなることがわかった。前記水素ウルトラファインバブルは、40日後においても安定に存在することがわかった(図5参照)。これらの安定性と他のバブルの安定性との比較を表1に示した。
【0042】
前記ウルトラファインバブル含有水溶液における二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルの含有量は、粒子径と密度測定によれば、それぞれ、1億個/mL~100億個/mL及び0.1億個/mL~1000億個/mLの範囲であった。
【0043】
前記ウルトラファインバブル含水有溶液の含有量、粒径、安定性を表1にまとめた。表1で明らかなように、本発明にかかるウルトラファインバブルは、十分に小さなサイズの粒径及びその内部の含有量を有し、長時間安定に存在し得ることができる。
【0044】
【表1】
【0045】
(ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液の特性)
ウルトラファインバブルの粒径
前記ウルトラファインバブルの凡その粒径をアルコール性水溶液において上記相互作用力装置法により測定した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)の1例は、10%、20%、50%、100%エタノール水溶液又はエタノール溶液において、それぞれ250nm、280nm、300nm、500nmと測定され、前記水素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)の1例は、10%、20%、50%、100%エタノール水溶液又はエタノール溶液において、230nm、540nm、830nm、1000nmと測定された(表2参照)。エタノール水溶液中には、数100nmのウルトラファインバブルが存在し、水溶液中のエタノール含量が多いほど、ウルトラファインバブルの粒径は大きくなる傾向が見られる。
【0046】
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの凡その粒径(バブルサイズの50%平均直径)は、水素から二酸化炭素、二酸化炭素から水素の順で吹込み調製した二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの粒径を測定した。水素から二酸化炭素の吹込みでは、10%、20%、50%エタノール水溶液において粒径の1例は、それぞれ220nm、220nm、104nmであり、100%エタノール溶液においては観察されなかった。二酸化炭素から水素の吹込み調製では、10%、20%エタノール水溶液において粒径の1例は、それぞれ200nm、460nmと測定された(表2参照)。二酸化炭素又は水素の単独吹込み調製と同様に、エタノール水溶液中には、数100nmのウルトラファインバブルが存在し、水溶液中のエタノール含量が多いほど、ウルトラファインバブルの粒径は大きくなる傾向が見られる。
【0047】
【表2】
【0048】
(ウルトラファインバブル含有水溶液のROS消去作用の測定方法)
ウルトラファインバブル含有水溶液におけるヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキシドアニオンラジカル(O2)の測定は、スピントラップ剤としてG-CYPMPO(登録商標):2-(5,5-dimethyl-2-oxo-2-l5- [1,3,2]dioxaphosphinan-2-yl)-2-methyl-3,4-dihydro-2H-pyrro- line N-oxide {2-(5,5-dimethyl-2-oxo-1,3,2-dioxaphosphinan-2-yl)-3,4-dihydro-2-methyl-2H-pyrrole N-oxide(下記化学式1)を用いて、ESR分光器(JEOL製JES-TE25X)を用いて、スピン・トラッピング付加物のESRスペクトルを記録にすることにより行った。
【0049】
【化1】
【0050】
UV照射下における過酸化水素溶液(0.1w/v%)における、すなわちヒドロキシラジカル(OH・)とG-CYPMPO(登録商標)との付加物、及びヒポキサンチン/キサンチンオキシダーゼ系における、すなわちスーパーオキシドアニオンラジカル(O2)とG-CYPMPO(登録商標)との付加物のESRスペクトルを図6に示した。図中、ダイヤモンド印(◆)はスーパーオキシドアニオンラジカル(O2)付加物のピークを、逆三角印(▼)はヒドロキシラジカル(OH・)付加物のピークを示している。この両ピークのピークtoピーク強度を活性酸素量の測定に用いる。
【0051】
データ分析には代表的方法であるKohri‘s ESRスピントラップ法を用いた。前記フリーラジカル付加物の選択されたESRラインのピークtoピーク強度を抗酸化剤の存在下及び非存在下で追跡する。
【0052】
スピントラップ剤(SP)及び抗酸化剤(AO)の存在下、以下のフリーラジカル(R)とラッピング反応が起こることが考えられる。
R+SP→R付加物の速度定数:tksp(1)
R+AO→生成物の速度定数:kAO(2)
及びIが、それぞれSTのみ及びST+AOの存在下のESRピーク高である場合、式(2)における生成物の量はI-Iである。したがって、I/I-1がフリーラジカル補足能力を定量するために算出される。
【0053】
フリーラジカル補足能力を定量するために、ESR測定の数時間前に酸化剤種をフリーラジカル生成系と混合する。I及びIが、それぞれSTのみ及びST+酸化剤の存在下のESRピーク高である場合、酸化剤種に酸化されるフリーラジカル生成系の量はI-Iである。したがって、I/I-1がフリーラジカル補足能力を定量するために算出される。
【0054】
(ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液のROS消去作用)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有溶液は、活性酸素(ROS)消去作用を有する。特に、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有溶液はヒドロキシラジカル(OH・)の消去作用を有し(図7参照)、ウルトラファインバブル水素の含有溶液はスーパーオキシドアニオンラジカル(O)の消去作用が顕著である(図8参照)。
【0055】
すなわち、加圧タンクからの二酸化炭素の多孔質セラミクス通過(前記多孔質セラミクス通過法)により調製した二酸化炭素ウルトラファインバブル(以下、「多孔質セラミクス二酸化炭素UFB」という。)は、過酸化水素と紫外線ランプを用いて発生させたヒドロキシラジカル(OH・)の高い消去作用を有する。一方、ダブルボトル水素発生装置(Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用して電解(前記ファインバブル製造用電解法)により調製した水素ウルトラファインバブル(以下、「水素UFB」という。)には、ヒドロキシラジカル(OH・)の消去作用が認められない(以上、図7参照)。
【0056】
また、前記水素UFBには、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2)の高い消去作用が認められる。水素ウルトラファインバブルは、調製後24時間で最も高い消去作用を示した。一方、前記多孔質セラミクス二酸化炭素UFBには、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2)の消去作用が弱い又は認められない(図8参照)。
【0057】
以上のように、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液は、ヒドロキシラジカルの消去作用を有し、ヒドロキシラジカル消去作用の強度の点から、二酸化炭素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルが好ましく、二酸化炭素ウルトラファインバブルがさらに好ましい(図7及び表3参照)。
【0058】
また、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液は、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去作用を有し、スーパーオキシドアニオンラジカルの消去作用の強度の点から、水素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルが好ましい(図8及び表4参照)。
【0059】
さらに、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液は、ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンラジカルのいずれもの消去作用を有し、ROS消去作用の強度の点から、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルが好ましい(図7及び8、表3及び4参照)。
【0060】
(ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液のROS消去作用)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液は、ウルトラファインバブルを含むアルコール性水溶液は、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含むことを特徴とする。前記アルコール水溶液は、前記ウルトラファインバブルを含有するため、活性酸素消去作用をもつことができる。
【0061】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、活性酸素、特に、ヒドロキシラジカルの消去作用を有する。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むアルコール性水溶液は、アルコール性水溶液中のアルコール含有率が変動しても、いずれのアルコール含有率においても強いヒドロキシラジカル消去作用を有する(表5及び図9~12)。
【0062】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、活性酸素の消去作用を有するが、スーパーオキシドアニオンの消去作用は弱い。スーパーオキシドアニオンの活性酸素消去作用は、アルコール水溶液中のアルコール含有率が変動することにより変動する。アルコール水溶液中のアルコール含有率が高いと前記活性酸素消去作用は弱く、アルコール含有率が低くなると前記活性酸素消去作用が強くなる傾向が見られる。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、アルコール含有率が20%以下で、スーパーオキシドアニオンの消去作用を有する(表6及び図13~16)。
【0063】
前記水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液のヒドロキシラジカル消去作用は、アルコール水溶液中のエタノール含有率により変動する。前記ヒドロキシラジカル消去作用は100%含有率のエタノール溶液において認められず、エタノール含有率が低下すると強くなる傾向がみられる。前記アルコール水溶液におけるエタノール含有率が10%の場合、ヒドロキシラジカル消去作用が認められる(表5及び図9~12)。
【0064】
前記水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用も、アルコール水溶液中のエタノール含有率により変動する。前記スーパーオキシドアニオン消去作用は100%含有率のエタノール溶液において認められず、エタノール含有率が低下すると強くなる傾向がみられる。前記アルコール水溶液におけるエタノール含有率が10%の場合、ヒドロキシラジカル消去作用が認められる(表6及び図13~16)。
【0065】
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、ヒドロキシラジカル消去作用を有する。特に、水素から二酸化炭素の順で吹込み調製した二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、前記アルコール水溶液中のエタノール含有率にかかわりなく強いヒドロキシラジカル消去作用を有する(表5及び図9~12)。
【0066】
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、スーパーオキシドアニオン消去作用を有する。前記スーパーオキシドアニオン消去作用は、エタノール含有率が低下すると強くなる傾向がみられる。前記アルコール水溶液におけるエタノール含有率が20%以下の場合、強いスーパーオキシドアニオンの消去作用は認められる。特に、水素から二酸化炭素の順で吹込み調製した二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含むアルコール水溶液は、前記アルコール水溶液中のエタノール含有率が20%以下の場合、強いヒドロキシラジカル消去作用を有する(表6及び図13~16)。
【0067】
本発明にかかるウルトラファインバブルを含むアルコール性水溶液については、二酸化炭素ウルトラファインバブル含有水溶液にヒドロキシラジカル消去作用が認められるが、スーパーオキシドアニオン消去作用は弱い。水素ウルトラファインバブル含有水溶液では、ヒドロキシラジカル消去作用及びスーパーオキシドアニオン消去作用は弱いが、ウルトラファインバブル含有水溶液中のエタノール含有率が低くなるほど活性酸素消去作用が強くなる傾向が認められる。
【0068】
本発明にかかるウルトラファインバブルを含むアルコール性水溶液については、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液に、比較的安定した強い活性酸素消去作用が認められる。特に、水素から二酸化炭素の順に吹込み調製した酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液において、強い活性酸素消去作用が認められる。
【0069】
以上のように、本発明にかかるウルトラファインバブルを含むアルコール性水溶液については、二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液がヒドロキシラジカル消去作用に好ましい。また、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液が活性酸素(ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオン)消去作用に好ましい。
【0070】
(ウルトラファインバブル含有飲料)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有飲料は、本発明にかかるウルトラファインバブル含有水溶液を含むことを特徴とする。前記ウルトラファインバブル含有水溶液は、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含むため、活性酸素の消去作用を有することができる。前記ウルトラファインバブル含有飲料は前記ウルトラファインバブル含有水溶液を含有するため、活性酸素、特に、ヒドロキシラジカル及び/又はスーパーオキシドアニオンの消去作用を有することができる。
【0071】
前記ウルトラファインバブル含有飲料は、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含むため、活性酸素消去作用、特に、ヒドロキシラジカル及び/又はスーパーオキシドアニオンの持続的な消去作用を有することにより、健康維持、疲労回復、種々の疾患の予防効果などが期待される。
【0072】
本発明にかかる飲料としては、様々な飲料が含まれるが、非アルコール性水溶液としての清涼飲料及びアルコール性水溶液としてのアルコール飲料であることが好ましい。
【0073】
(ウルトラファインバブル含有清涼飲料)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有清涼飲料は、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含むことを特徴とする。
【0074】
本発明にかかる前記清涼飲料は、水以外の含有物に違いはあるが、いずれも非アルコール性水溶液であり、エタノールを含まない。ノンアルコール飲料は酒精分(エタノール)が1容量%未満の水溶液であり、清涼飲料に含まれる(食品衛生法)。しかし、エタノールを含むため、本発明にかかる清涼飲料には含まれない。
【0075】
本発明にかかる清涼飲料は、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを含む水溶液であるため、活性酸素消去作用、特に、ヒドロキシラジカル及び/又はスーパーオキシドアニオンの持続的な消去作用を有することにより、健康維持、疲労回復、種々の疾患の予防効果などが期待される。
【0076】
前記ウルトラファインバブル含有清涼飲料は、「乳酸菌飲料、乳、乳製品、アルコール(酒精分1容量%以上)を除くすべての飲料」(食品衛生法)のことをいう。前記清涼飲料としては、ラムネ、サイダー、コーラなどの炭酸飲料、果樹飲料、トマトジュースなどの野菜飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、豆乳などが挙げられる。前述のとおり、本発明にかかるアルコール飲料は含まない。
【0077】
(ウルトラファインバブル含有アルコール飲料)
本発明にかかるアルコール飲料は、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルからなる群から選択される少なくとも1つのウルトラファインバブルを含むことを特徴とする。
【0078】
前記アルコール飲料は、酒精分1容量%以上を含むエタノール含有水溶液である。ノンアルコール飲料は、酒精分(エタノール)が1容量%未満の水溶液のため、一般にアルコール飲料に含まれないが、本発明にかかるアルコール飲料には含まれる。
【0079】
本発明にかかるアルコール飲料は、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む水溶液であるため、活性酸素消去作用、特に、ヒドロキシラジカル及び/又はスーパーオキシドアニオンの持続的な消去作用を有することにより、健康維持、疲労回復、種々の疾患の予防効果などが期待される。
【0080】
本発明にかかるアルコール飲料において、アルコール飲料は、エチルアルコールを含む飲料であり、日本酒、ピール、ワイン、ウィスキーなどのことをいう。
【0081】
(ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液の製造)
本発明にかかる前記二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含有する非アルコール性水溶液の製造方法は、前記二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含有する水溶液と同様に、2つのウルトラファインバブルの調製順(気体の吹込み順)を変えて、製造することができる。
【0082】
すなわち、前記の二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液は、上記のとおり、水素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込んで製造し、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液を得ることができる。
【0083】
また、前記の二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液は、上記のとおり、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに水素を吹き込んで製造し、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液を得ることができる。
【0084】
本発明にかかる清涼飲料は、前記ウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液と同様にして、製造することができる。
【0085】
(ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液の製造)
本発明にかかる前記二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含有するアルコール性水溶液の製造方法は、前記二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含有する水溶液と同様に、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルに対応する2つのウルトラファインバブルの調製順(気体の吹込み順)を変えて、製造される。
【0086】
すなわち、前記の二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液は、上記のとおり、水素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込んで製造し、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液を得ることができる。
【0087】
また、前記の二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液は、上記のとおり、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液に、さらに水素を吹き込んで製造し、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液を得ることができる。
【0088】
本発明にかかるアルコール飲料は、前記ウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液と同様にして、製造することができる。
【実施例
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0090】
(1)本発明にかかるウルトラファインバブル含有水溶液の調製
実験例1:本発明にかかる二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有水溶液の調製
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有水溶液を、図1のように、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を200mLの水を入れたビーカー中の多孔質セラミクスを通過(前記多孔質セラミクス通過法)させて調製した。前記水溶液中のウルトラファインバブル二酸化炭素は、以下、「UFB/CO」ともいう。
【0091】
実験例2:本発明にかかる水素ウルトラファインバブルの含有水溶液の調製
前記水素ウルトラファインバブルを、図2のように、ダブルボトル水素発生装置(Woo社製、Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用した電解(前記ファインバブル製造用電解法)により生成した(以下、「UFB/EH」ともいう)。水素ウルトラファインバブルの含有水溶液は、200mLの水に30分間で調製した。電解による水素ウルトラファインバブルの濃度は0.15容量%で、比重瓶を用いて定量した。
【0092】
実験例3:本発明にかかる二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの含有水溶液の調製
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル水溶液は、前記水素ウルトラファインバブルの含有水溶液(前項(実験例2)で作成)に、前項(実験例1)の方法のとおり、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を吹き込むことにより調製した。又は、前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル水溶液は、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有水溶液(前項(実験例1)で作成)に、前項(実験例2)の方法のとおり、30分間の電気分解を行うことにより調製した。
【0093】
(2)本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液の調製
実験例4:本発明にかかる二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液の調製
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)を、図1のように、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を200mLのアルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)を入れたビーカー中の多孔質セラミクスを通過(前記多孔質セラミクス通過法)させて調製した。前記水溶液中の二酸化炭素ウルトラファインバブルは、以下、「UFB/CO」ともいう
【0094】
実験例5:本発明にかかる水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液の調製
前記水素ウルトラファインバブルを、図2のように、ダブルボトル水素発生装置(Woo社製、Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用した電解(前記ファインバブル製造用電解法)により生成した。水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)は、200mLのアルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)に30分間で調製した。電解による水素ウルトラファインバブルの濃度は0.15容量%で、比重瓶を用いて定量した。
【0095】
実験例6:本発明にかかる二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液の調製
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液又はアルコール溶液は、前記水素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)(前項(実験例2)で調製)に、前項(実験例1)の方法のとおり、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を吹き込むことにより調製した。又は、前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール溶液又はアルコール溶液は、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有アルコール水溶液又はアルコール溶液(100%、50%、20%、10%エタノール)(前項(実験例1)で調製)に、前項(実験例2)の方法のとおり、30分間の電気分解を行うことにより調製した。
【0096】
(3)本発明におけるウルトラファインバブル含有溶液のIFA測定装置による測定
本発明におけるウルトラファインバブルは、水又はアルコール水溶液中で、図3のIFA測定装置を用いて、特開2016-109453公報「ファインバブルの粒度分布測定方法及び測定装置」に示されるIFA法により、その粒径サイズ分布を測定した(図4及び5参照)。
【0097】
(4)本発明におけるウルトラファインバブル含有溶液のROS消去作用
実験例7:活性酸素(ROS)の生成
ヒドロキシラジカル(OH・)は、UV放射器(UV LIGHTSOURCE製、SUPERCURE-203S)の5s紫外放射下、0.1w/t%過酸化水素(H)の分解により生成させた。0.2w/t%の過酸化水素90μL及び100mMのG-CYPMPO20μLの混合液をディスポーザブル硼珪酸ESRセルに移し、ヒドロキシラジカルとG-CYPMPOとの付加物のESRスペクトルを分析した。
【0098】
スーパーオキシドアニオンラジカル(O)は、ヒポキサンチン/キサンチン(HX/XO)系において生成させた。10.970単位/mLのXO、20mMのHX20μL、及び100mMのG-CYPMPO20μLの混合液をディスポーザブル硼珪酸ESRセルに移し、ヒドロキシラジカルとG-CYPMPOとの付加物のESRスペクトルを分析した。
【0099】
実験例8:活性酸素のESRによる測定
新規のラジカル・トラッパーである2-(5,5-dimethyl-2-oxo-2-l5-[1,3,2] dioxaphosphinan-2-yl)-2-methyl-3,4-dihydro-2H-pyrro-line N-oxide {2-(5,5-dimethyl-2-oxo-1,3,2-dioxaphosphinan-2-yl)-3,4-dihydro-2-methyl-2H-pyrrole N-oxide, G-CYPMPO(登録商標)を活性酸素のフリーラジカルを補足するために用いた。25mgのG-CYPMPO(登録商標)(100mL)を2mLの超純水に溶解した。
【0100】
ESR分光器(JEOL製JES-TE25X)を用いて、スピン・トラッピング付加物のESRスペクトルを記録した。代表的なESR測定条件は以下のとおりであった。
マイクロ波電力:4mW、マイクロ波周波数:9.2GHz、磁場:328.0mT、フィールド掃引(field sweep with):±7.5mT、フィールド変調:0.16mT、掃引時間:1分、0.003663mT/ポイント、全4096ポイント、ESR測定は室温で実施した。
【0101】
代表的方法であるKohri‘s ESRスピントラップ法をデータ分析に用いた。前記フリーラジカル付加物の選択されたESRラインのピークtoピーク強度を抗酸化剤の存在下及び非存在下で追跡した。
【0102】
スピントラップ剤(SP)及び抗酸化剤(AO)の存在下、以下のフリーラジカル(R)とラッピング反応が起こる。
R+SP→R付加物の速度定数:tksp(1)
R+AO→生成物の速度定数:kAO(2)
及びIが、それぞれSTのみ及びST+AOの存在下のESRピーク高である場合、式(2)における生成物の量はI-Iである。したがって、I/I-1をフリーラジカル補足能力を定量するために算出した。
【0103】
フリーラジカル捕捉能力を定量するために、ESR測定の数時間前に酸化剤種がフリーラジカル生成系と混合される。I及びIが、それぞれSTのみ及びST+酸化剤の存在下のESRピーク高である場合、酸化剤種に酸化されるフリーラジカル生成系の量はI-Iである。したがって、I/I-1を、フリーラジカル補足能力を定量するために算出した。
【0104】
実施例等1~5:本発明にかかるウルトラファインバブル含有非アルコール性水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用
対照例1:ウルトラファインバブル非含有、実施例2:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例3:水素ウルトラファインバブル含有、実施例4:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例5:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図7に示した。
【0105】
図7に基づき、表3には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有水溶液(実施例2)では、強いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有水溶液(実施例4及び5)では、中緯度のヒドロキシラジカル消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有水溶液(参考例3)では、ヒドロキシラジカル消去作用はほとんどないか認められなかった。
【0106】
【表3】
【0107】
図7及び表3に示されるように、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液のヒドロキシラジカル消去作用についは、その強度の点から、二酸化炭素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを用いることが好ましく、二酸化炭素ウルトラファインバブルを用いることがさらに好ましいことがわかった。
【0108】
実施例等6~10:本発明にかかるウルトラファインバブル含有非アルコール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O 2 )消去作用
対照例6:ウルトラファインバブル非含有、参考例7:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例8:水素ウルトラファインバブル含有、実施例9:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例10:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの水溶液のスーパーオキシドアニオン(・O2 )消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図8に示した。
【0109】
図8に基づき、表4には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。水素ウルトラファインバブル含有水溶液(実施例8)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有水溶液(実施例9及び10)では、中緯度のスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。一方、二酸化炭素ウルトラファインバブル含有水溶液(参考例7)では、スーパーオキシドアニオン消去作用はほとんどないか認められなかった。
【0110】
【表4】
【0111】
図8及び表4示されるように、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用についは、その強度の点から、水素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを用いることが好ましいことがわかった。
【0112】
表3及び4に基づき、本発明にかかるウルトラファインバブルを含む非アルコール性水溶液の活性酸素消去作用についは、ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンのいずれにも消去作用を示す点から、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを用いることが好ましいことがわかった。
【0113】
実施例等11~15:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール溶液(100%)のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用
対照例11:ウルトラファインバブル非含有、実施例12:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例13:水素ウルトラファインバブル含有、実施例14:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例15:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの100%エタノール溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図9に示した。
【0114】
図9に基づき、表5には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(実施例12)では、強いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(参考例13)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(実施例14及び15)では、中緯度のヒドロキシラジカル消去作用が認められた。
【0115】
実施例等16~20:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(50%)のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用
対照例16:ウルトラファインバブル非含有、実施例17:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例18:水素ウルトラファインバブル含有、実施例19:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例20:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの50%エタノール水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図10に示した。
【0116】
図10に基づき、表5には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有エタノール水溶液(実施例17)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例19)では、強いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例20)では、中緯度のヒドロキシラジカル消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例18)では、弱いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。
【0117】
実施例等21~25:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(20%)のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用
対照例21:ウルトラファインバブル非含有、実施例22:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例23:水素ウルトラファインバブル含有、実施例24:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例25:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの20%エタノール水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図11に示した。
【0118】
図11に基づき、表5には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例22)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例24)では、強いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例25)では、中緯度のヒドロキシラジカル消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(参考例23)では、弱いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。
【0119】
実施例等26~30:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(10%)のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用
対照例26:ウルトラファインバブル非含有、実施例27:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例28:水素ウルトラファインバブル含有、実施例29:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例30:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの10%エタノール水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図12に示した。
【0120】
図12に基づき、表5には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例27)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例29)では、強いヒドロキシラジカル消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例28)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例30)では、中緯度のヒドロキシラジカル消去作用が認められた。
【0121】
【表5】
【0122】
図9~12及び表5に示されるように、本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液のヒドロキシラジカル消去作用については、二酸化炭素ウルトラファインバブル、又は二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルを用いることが好ましく、ヒドロキシラジカル消去作用の強度の点から、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)を用いることが、さらに好ましいことがわかった。また、ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液のエタノール含有率が低くなると、水素ウルトラファインバブルもヒドロキシラジカル消去作用が有することがわかった。
【0123】
実施例等31~35:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール溶液(100%)のスーパーオキシドアニオン(O 2 )消去作用
対照例31:ウルトラファインバブル非含有、実施例32:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例33:水素ウルトラファインバブル含有、実施例34:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例35:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの100%エタノール溶液のスーパーオキシドアニオン(O2)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図13に示した。
【0124】
図13に基づき、表6には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(実施例32)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(実施例34及び35)では、弱いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。水素ウルトラファインバブル含有エタノール溶液(参考例33)では、スーパーオキシドアニオン消去作用はほとんどないか認められなかった。
【0125】
実施例等36~40:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(50%)のスーパーオキシドアニオン(O 2 )消去作用
対照例36:ウルトラファインバブル非含有、参考例37:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例38:水素ウルトラファインバブル含有、実施例39:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例40:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの50%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O2)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図14に示した。
【0126】
図14に基づき、表6には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例38)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例39)では、弱いスーパーオキシドアニオン(O2)消去作用が認められた。二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例40)では、中緯度のスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有エタノール水溶液(実施例37)では、スーパーオキシドアニオン消去作用がほとんどないか認められなかった。
【0127】
実施例等41~45:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(20%)のスーパーオキシドアニオン(O 2 )消去作用
対照例41:ウルトラファインバブル非含有、実施例42:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例43:水素ウルトラファインバブル含有、実施例44:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素)、及び実施例45:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素)のそれぞれの20%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O2)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図15に示した。
【0128】
図15に基づき、表6には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例42)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例44及び45)では、中程度から強いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められ、特に、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例45)では、強いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。一方、水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例43)では、スーパーオキシドアニオン消去作用がほとんどないか認められなかった。
【0129】
実施例等46~50:本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(10%)のスーパーオキシドアニオン(O 2 )消去作用
対照例46:ウルトラファインバブル非含有、実施例47:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、実施例48:水素ウルトラファインバブル含有、実施例49:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例50:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの10%エタノール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O2)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図16に示した。
【0130】
図16に基づき、表6には消去作用の強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例47)、水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例48)、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例49及び50)のいずれの水溶液でも、弱い~強いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められ、特に、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液(実施例49)では、強いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。
【0131】
【表6】
【0132】
図13~16及び表6に示されるように、本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用については、二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液、水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液のいずれのアルコール水溶液も、そのエタノール含有率によってスーパーオキシドアニオン消去作用は変動した。エタノール含有率が低くなるほど、スーパーオキシドアニオン消去作用は強くなった。アルコール水溶液のエタノール含有率が低くなると(20%及び10%)、二酸化炭素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有アルコール水溶液のスーパーオキシドアニオン消去作用は中程度以上となり、特に二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)では、強いスーパーオキシドアニオン消去作用が認められた。
【0133】
表5及び6に基づき、本発明にかかるウルトラファインバブル含有アルコール性水溶液の活性酸素消去作用についは、ヒドロキシラジカル及びスーパーオキシドアニオンのいずれにも消去作用を示す点から、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル、特に、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)を用いることが好ましいことがわかった。
【0134】
以上、実施形態及び実施例を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0135】
310 電気天秤
320 プラチナ
330 試料溶液
340 粒子挙動部
341 半球
342 平板
343 ピエゾステージ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16