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特許7539480基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20240816BHJP
   C23C 16/06 20060101ALI20240816BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/06
C23C16/455
H01L21/28 301R
H01L21/285 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022551455
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035708
(87)【国際公開番号】W WO2022064549
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 幸永
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029618(JP,A)
【文献】特開2020-029616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
H01L 21/28
C23C 16/06
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に酸化アルミニウム膜が形成された基板を445℃以上505℃以下に加熱する工程と、
)前記基板に対して二酸化二塩化モリブデンガスを供給する工程と、
)前記基板に対して水素ガスを供給する工程と、を有し、
)()の後、()と()とを1回以上行うことにより、前記基板上に、表面の平均粗さが、1.0nm以下のモリブデン含有膜を形成する
基板処理方法
【請求項2】
)では、前記基板の温度を445℃以上470℃以下に加熱する請求項記載の基板処理方法
【請求項3】
)では、前記基板の温度を450℃以上465℃以下に加熱する請求項記載の基板処理方法
【請求項4】
)は、膜表面の平均粗さが、0.8nm以下の前記モリブデン含有膜を形成する請求項記載の基板処理方法
【請求項5】
)は、膜表面の平均粗さが、0.7nm以下の前記モリブデン含有膜を形成する請求項記載の基板処理方法
【請求項6】
表面に酸化アルミニウム膜が形成された基板を445℃以上505℃以下に加熱する手順と、
)前記基板に対して二酸化二塩化モリブデンガスを供給する手順と、
)前記基板に対して水素ガスを供給する手順と、を有し、
)()の後、()と()とを1回以上行うことにより、前記基板上に、表面の平均粗さが、1.0nm以下のモリブデン含有膜を形成する処理をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラ
【請求項7】
表面に酸化アルミニウム膜が形成された基板を加熱する加熱系と、
前記基板二酸化二塩化モリブデンガスを供給するモリブデン含有ガス供給系と、
前記基板水素ガスを供給する還元ガス供給系と、
(a)前記基板を445℃以上505℃以下に加熱する処理と、
)前記基板に対して前記二酸化二塩化モリブデンガスを供給する処理と、
)前記基板に対して前記水素ガスを供給する処理と、を有し、
)()の後、()と()とを1回以上行うことにより、前記基板上に、表面の平均粗さが、1.0nm以下のモリブデン含有膜を形成する処理を行わせるように、前記加熱系、前記モリブデン含有ガス供給系及び前記還元ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項8】
(a)表面に酸化アルミニウム膜が形成された基板を445℃以上505℃以下に加熱する工程と、
(b)前記基板に対して二酸化二塩化モリブデンガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して水素ガスを供給する工程と、を有し、
(d)(a)の後、(b)と(c)とを1回以上行うことにより、前記基板上に、表面の平均粗さが、1.0nm以下のモリブデン含有膜を形成する
半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、プログラム、基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAMのワードラインとして例えば低抵抗なタングステン(W)膜が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-66263号公報
【文献】国際公開第2019/058608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3次元構造のNAND型フラッシュメモリの高層化に伴ってエッチングが困難となっているために、ワード線の薄膜化が課題となっている。
この課題を解決するために、上述したようなTiN膜とW膜を用いる代わりに、モリブデン(Mo)を含有したモリブデン(Mo)膜を用いて、薄膜化と低抵抗化を図っているが、Mo膜は、膜の表面の粗さ(表面ラフネス)が大きく、Mo膜の埋め込み性能を向上させることが課題となっている。また、下地金属膜上にMo膜を形成すると、膜中に下地金属膜から金属元素が拡散してしまう場合がある。
【0005】
本開示は、モリブデン含有膜の表面ラフネスを改善しつつ、下地からの拡散を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理容器に収容する工程と、
(b)前記基板を445℃以上505℃以下に加熱する工程と、
(c)前記基板に対してモリブデン含有ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して還元ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(b)の後、(c)と(d)とを1回以上行うことにより、前記基板上にモリブデン含有膜を形成する
技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、モリブデン含有膜の表面ラフネスを改善しつつ、下地からの拡散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一実施形態における基板処理工程を示す図である。
図5図5(A)は、基板上にMo含有膜を形成する前の基板の断面を示す図であり、図5(B)は、基板上にMo含有膜を形成した後の基板の断面を示す図である。
図6】サンプル1~サンプル5にそれぞれ形成されたMo含有膜の平均粗さ(Ra)と基板の温度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1~5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522及び開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、原料ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0021】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0022】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310からMo含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314によりMo含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410をMo含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。
【0023】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0024】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0025】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0026】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0027】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0028】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0029】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0030】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0031】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0032】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,512,522、バルブ314,324,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0033】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0034】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0035】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、例えば3DNANDのコントロールゲート電極として用いられるモリブデン(Mo)を含有するMo含有膜を形成する工程の一例について、図4図5(A)及び図5(B)を用いて説明する。ここでは、図5(A)に示すように、表面に、非遷移金属元素であるアルミニウム(Al)が含まれた金属含有膜であり、金属酸化膜である酸化アルミニウム(AlO)膜が形成されたウエハ200を用いる。そして、後述する基板処理工程により、図5(B)に示すように、AlO膜が形成されたウエハ200上にMo含有膜を形成する。Mo含有膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0036】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)ウエハ200を処理容器内である処理室201に収容する工程と、
(b)ウエハ200を445℃以上505℃以下に加熱する工程と、
(c)ウエハ200に対して金属含有ガスを供給する工程と、
(d)ウエハ200に対して還元ガスを供給する工程と、を有し、
(e)(b)の後、(c)と(d)とを1回以上行うことにより、ウエハ200上にMo含有膜を形成する。
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0039】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0040】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば445℃以上505℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは445℃以上470℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。また、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0041】
[ステップS10]
(金属含有ガス供給)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に原料ガスである金属含有ガスを流す。金属含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して金属含有ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にN2ガス等の不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れた不活性ガスは、MFC512により流量調整され、金属含有ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420内への金属含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0042】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば1000Paとする。MFC312で制御する金属含有ガスの供給流量は、例えば0.1~1.0slm、好ましくは0.1~0.5slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0043】
このとき処理室201内に流しているガスは金属含有ガスと不活性ガスのみである。ここで金属含有ガスとしては、モリブデン(Mo)と酸素(O)を含むモリブデン(Mo)含有ガスを用いることができる。Mo含有ガスとしては、例えば二酸化二塩化モリブデン(MoO2Cl2)ガス、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)ガスを用いることができる。金属含有ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜であるAlO膜)上に金属含有層が形成される。ここで、金属含有ガスとして、MoO2Cl2ガスを用いた場合、金属含有層はMo含有層である。Mo含有層は、ClやOを含むMo層であってもよいし、MoO2Cl2の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。また、Mo含有層は、Moを主成分とする膜であり、Mo元素の他にCl,O,H等の元素を含み得る膜である。
【0044】
[ステップS11(第1パージ工程)]
(残留ガス除去)
金属含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~10秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、金属含有ガスの供給を停止する。つまり、金属含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~10秒の範囲内の時間とする。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層形成に寄与した後の金属含有ガスを処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。このときバルブ514,524は開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層形成に寄与した後の金属含有ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0045】
[ステップS12]
(還元ガス供給)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、還元ガスを流す。還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、還元ガスが供給される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。ガス供給管520内を流れた不活性ガスは、MFC522により流量調整される。不活性ガスは還元ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内への還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0046】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば2000Paとする。MFC322で制御する還元ガスの供給流量は、例えば1~50slm、好ましくは15~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~120秒の範囲内の時間とする。
【0047】
このとき処理室201内に流しているガスは、還元ガスと不活性ガスのみである。ここで、還元ガスとしては、例えば水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、活性化した水素を含むガス等を用いることができる。還元ガスとしてH2ガスを用いた場合、H2ガスは、ステップS10でウエハ200上に形成されたMo含有層の少なくとも一部と置換反応する。すなわち、Mo含有層中のOや塩素(Cl)が、H2と反応し、Mo層から脱離して、水蒸気(H2O)や塩化水素(HCl)や塩素(Cl2)等の反応副生成物として処理室201内から排出される。そして、ウエハ200上にMoを含みClとOを実質的に含まない金属層(Mo層)が形成される。
【0048】
[ステップS13(第2パージ工程)]
(残留ガス除去)
金属層を形成した後、バルブ324を閉じて、還元ガスの供給を停止する。
そして、上述したステップS11(第1パージ工程)と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは金属層の形成に寄与した後の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。
【0049】
(所定回数実施)
上記したステップS10~ステップS13の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.5~20.0nm)の金属含有膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。また、ステップS10~ステップS13の工程をそれぞれ少なくとも1回以上行ってもよい。
【0050】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520のそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0051】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0052】
上述したように本開示における基板処理工程では、ウエハ200を445℃以上505℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは445℃以上470℃以下の範囲内の温度に加熱した後、Mo含有ガスであるMoO2Cl2ガスの供給と、還元ガスであるH2ガスの供給と、を少なくとも1回以上行うことにより、表面にAlO膜が形成されているウエハ200上に、所定の厚さのMo含有膜を形成している。ウエハ200を445℃以上505℃以下の範囲内の温度に加熱して形成されたMo含有膜の表面ラフネスの平均粗さRaは1.0nm以下となり、ウエハ200を445℃以上470℃以下の範囲内の温度に加熱して形成されたMo含有膜の表面ラフネスの平均粗さRaは0.8nm以下となる。更に、ウエハ200を450℃以上465℃以下の範囲内の温度に加熱して形成されたMo含有膜の表面ラフネスの平均粗さRaは、0.7nm以下となる。
【0053】
ここで、ウエハ200の温度を445℃より低い温度で加熱して形成されたMo含有膜は、ウエハ200の温度を450℃に加熱して形成されたMo含有膜と比較して表面ラフネスが悪化する。また、ウエハ200の温度を445℃より低い温度で加熱して形成されたMo含有膜は、ウエハ200の温度を450℃に加熱して形成されたMo含有膜と比較して膜中への下地のAlO膜からのAlの拡散が増加する。これは、445℃より低い温度では、H2ガスによる還元が不完全なものとなり、MoO2Cl2ガスが還元されず、MoOxClyが生成される。このMoOxClyにより、下地のAlO膜や形成されたMo含有膜がアタックされてしまうためであると考えられる。ここで本開示における「アタック」とは還元を意味する。
【0054】
また、ウエハ200の温度を505℃より高い温度で加熱して形成されたMo含有膜は、ウエハ200の温度を450℃に加熱して形成されたMo含有膜と比較して表面ラフネスは悪化する。また、ウエハ200の温度を505℃より高い温度で加熱して形成されたMo含有膜は、ウエハ200の温度を450℃に加熱して形成されたMo含有膜と比較して膜中への下地のAlO膜からのAlの拡散が増加する。これは、505℃より高い温度では、反応副生成物として生成されたHClにより下地のAlO膜や形成されたMo含有膜がアタックされてしまうためであると考えられる。
【0055】
すなわち、ウエハ200を445℃以上505℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは445℃以上470℃以下の範囲内の温度に設定してMo含有膜を形成することにより、表面ラフネスの平均粗さRaが1.0nm以下のMo含有膜を形成することができ、Mo含有膜の表面ラフネスを改善させることができる。つまり、3DNANDのコントロールゲート電極に用いられるMo含有膜の埋め込み性能を向上させることができる。また、Mo含有膜中への下地AlO膜からのAlの拡散を抑制することができる。
【0056】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)Mo含有膜の表面ラフネスを改善することができる。
(b)平坦性を有するMo含有膜を形成することができ、被覆率を向上させることができる。すなわち、3DNANDのコントロールゲート電極に用いられるMo含有膜の埋め込み性能を向上させることができる。
(c)膜中への下地金属膜からの金属元素の拡散を抑制することができる。
(d)高密度なMo膜を形成することが可能となり、生産性が向上される。
【0057】
(4)他の実施形態
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0058】
なお、上記実施形態では、Mo含有ガスとしてMoO2Cl2ガスを用いる場合を例にして説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施形態では、還元ガスとしてH2ガスを用いる場合を例にして説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0060】
また、上記実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0061】
以下、実施例について説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0062】
(5)実施例
上述した基板処理装置10を用いて、表面にAlO膜が形成されたウエハ200のサンプル1~サンプル5を用意した。そして、サンプル1~サンプル5に対して、それぞれ上述した基板処理工程におけるヒータ207の温度を、ウエハ200の温度が425℃、450℃、475℃、500℃、550℃となるように加熱して上述したステップS10~ステップS13を所定回数行って、表面にAlO膜が形成されたウエハ上にMo含有膜を形成した。
【0063】
先ず、サンプル1~サンプル5に形成されたMo含有膜の表面を、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy、略称:AFM)を用いて観測した。図6は、サンプル1~サンプル5にそれぞれ形成されたMo含有膜の表面ラフネス(平均粗さRa)と基板の温度との関係を示した図である。
【0064】
サンプル1~サンプル5におけるMo含有膜の表面の評価結果によれば、サンプル1のウエハを425℃に加熱して形成されたMo含有膜の表面とサンプル5のウエハを550℃に加熱して形成されたMo含有膜の表面の平均粗さRaは1.0nmより大きくなり、サンプル2、サンプル3、サンプル4にそれぞれ形成されたMo含有膜の表面と比較して、平均粗さが大きく、表面ラフネスが悪いことが確認された。
【0065】
また、サンプル2、サンプル3、サンプル4のウエハを、それぞれ450℃、475℃、500℃に加熱して形成されたMo含有膜の表面の平均粗さRaは1.0nm以下となり、さらにサンプル2のウエハを450℃に加熱して形成されたMo含有膜の表面の平均粗さRaは0.8以下となった。すなわち、サンプル2、サンプル3、サンプル4にそれぞれ形成されたMo含有膜は、平均粗さが小さく、表面ラフネスが良好であることが確認された。
【0066】
すなわち、図6に示すように、上述した基板処理工程におけるヒータ207の温度を、ウエハ200の温度が445℃以上505℃以下の範囲内の温度となるようにMo含有膜を形成することにより、Mo含有膜の表面ラフネスが改善され、表面ラフネスの平均粗さRaを1.0nm以下とすることができることが確認された。さらには、上述した基板処理工程におけるヒータ207の温度を、ウエハ200の温度が445℃以上470℃以下の範囲内の温度となるようにMo含有膜を形成することにより、Mo含有膜の表面ラフネスがさらに改善され、表面ラフネスの平均粗さRaを0.8nm以下とすることができることが確認された。さらには、上述した基板処理工程におけるヒータ207の温度を、ウエハ200の温度が450℃以上465℃以下の範囲内の温度となるようにMo含有膜を形成することにより、Mo含有膜の表面ラフネスがさらに改善され、表面ラフネスの平均粗さRaを0.7nm以下とすることができることが確認された。
【0067】
次に、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry、略称:SIMS)を用いて、サンプル1~サンプル5にそれぞれ形成されたMo含有膜中に含まれる各元素の深さ方向の分布を分析した。
【0068】
サンプル1のウエハを425℃に加熱して形成されたMo含有膜と、サンプル5のウエハを550℃に加熱して形成されたMo含有膜は、膜中の表面付近までAlが拡散され、Moの吸着を阻害するClやOも存在していることが確認された。
【0069】
また、サンプル2、サンプル3、サンプル4にそれぞれ形成されたMo含有膜は、下地のAlO膜からの拡散が抑制されており、特にサンプル2に形成されたMo含有膜は、サンプル3、サンプル4にそれぞれ形成されたMo含有膜と比較して、下地のAlO膜からの拡散が抑制されていることが確認された。
【0070】
サンプル2のウエハを450℃に加熱して形成されたMo含有膜は、下地のAlO膜との界面から約2.5nmまでAlが拡散されていることが確認された。また、サンプル3のウエハを475℃に加熱して形成されたMo含有膜は、下地のAlO膜との界面から約3nmまでAlが拡散されていることが確認された。また、サンプル4のウエハを500℃に加熱して形成されたMo含有膜は、下地のAlO膜との界面から約5nmまでAlが拡散されていることが確認された。すなわち、基板処理工程におけるウエハの温度を調整することにより、Mo含有膜中の下地AlO膜からのAlの拡散を抑制できることが確認された。
【0071】
また、サンプル2、サンプル3、サンプル4にそれぞれ形成されたMo含有膜中のO濃度とCl濃度は、同等であり、450℃~500℃の温度にでは変化されないことが確認された。
【0072】
すなわち、上述した基板処理工程におけるヒータ207の温度を、ウエハ200の温度が445℃以上505℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは445℃以上470℃以下の範囲内の温度となるようにMo含有膜を形成することにより、下地のAlO膜からの拡散が抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6