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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-15
(45)【発行日】2024-08-23
(54)【発明の名称】自動分析装置、および検体の分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240816BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023503698
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006178
(87)【国際公開番号】W WO2022185919
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021034458
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】為實 秀人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 功夫
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207298(JP,A)
【文献】特開2012-037236(JP,A)
【文献】特開2017-009362(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139997(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/108164(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体を検体容器から分注する検体分注ノズルを有する検体分注機構と、
前記検体容器の情報を取得し、前記検体容器の種類を判別する検体容器種類判別部と、
前記検体分注ノズル内の圧力を検出する圧力センサと、
前記検体分注機構の異常の有無の判定に用いる判定基準データを前記検体容器の種類別に複数記憶する記憶部と、
前記検体分注機構により前記検体を分注した際の前記圧力センサの検出結果と前記検体容器種類判別部で判別した前記検体容器の種類に対応する前記判定基準データとに基づいて、前記検体の分注に異常があったか否かを判定する異常判定部と、を備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体分注ノズルの先端が前記検体容器の底へ接触したか否かを判別する検体容器底接触有無判別部を更に備え、
前記記憶部は、前記検体容器底接触有無判別部の判定に用いる判定基準データを前記検体容器の種類別に複数記憶しており、
前記異常判定部は、前記検体容器底接触有無判別部の判別結果にも基づいて前記検体の分注に異常があったか否かを判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体容器に収容されている前記検体の液量を算出する検体液量算出部を更に備え、
前記記憶部は、前記検体液量算出部の判定に用いる判定基準データを前記検体容器の種類別に複数記憶しており、
前記異常判定部は、前記検体液量算出部の判別結果にも基づいて前記検体の分注に異常があったか否かを判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体容器種類判別部は、ユーザーインターフェースから入力された前記検体容器の情報に基づいて前記検体容器の種類の判別を行う
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体容器種類判別部は、判別対象の前記検体容器を撮像した画像情報に基づいて前記検体容器の種類の判別を行う
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記検体容器種類判別部は、前記検体容器が微量用容器かそれ以外の検体容器かを判別する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
検体を検体容器から分注する検体分注ノズルを有する検体分注機構と、前記検体分注ノズル内の圧力を検出する圧力センサと、を備えた自動分析装置での検体の分注方法であって、
前記検体容器の情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得された前記検体容器の情報を基に前記検体容器の種類を判別する判別ステップと、
分注対象の前記検体を前記検体分注機構により分注する分注ステップと、
前記分注ステップの際の前記圧力センサからの検出結果と、前記判別ステップで判別された前記検体容器の種類とに基づいて、前記分注ステップにおいて前記検体の分注に異常があったか否かを判定する判定ステップと、を有する
ことを特徴とする検体の分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの生体検体(以下、検体と称する)を定性又は定量分析する自動分析装置、および検体の分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル分注時に起こる分注異常を、種類や程度によらず検出することが可能なサンプル分注装置の一例として、特許文献1には、サンプルプローブ、分注シリンジを含む分注流路系に圧力センサを接続し、試料の分注動作時における圧力センサの出力値を複数個取込み、これら得られた複数個の圧力センサ出力値を項目とした多項目分析(マハラノビス距離)を行い、閾値と比較することで分注が正常に行われたか判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-224691号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置は、検体に含まれる特定の成分に特異的に反応する試薬を添加・反応させ、反応液の吸光度や発光量を測定することにより、定性・定量分析を行うものである。
【0005】
このような自動分析装置においては、必要最小限度量の検体を試薬と反応させることが望まれており、分析対象である検体や、検体に添加・反応させる試薬を反応容器に分注する工程が必要である。
【0006】
この反応容器に分注される検体や試薬は少量であるため、分注精度が分析精度へ与える影響は必然的に大きくなる。したがって、分注精度の低下に繋がる分注異常を確実に検出することが重要である。
【0007】
このうち、検体の分注における異常の原因には、例えばフィブリン等の固形異物の吸引によるノズルの詰まりが挙げられる。ノズルに詰まりが生じると、所定量の検体を反応容器に分注できず、信頼性のある分析結果を得ることができない。
【0008】
このような分注時の異常を検知する技術として、分注ノズルを含む分注流路内に圧力センサを設けてその圧力変動を基にノズルの異常をチェックする技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
特許文献1に記載された自動分析装置においては、分注量に応じた基準データを用意し、異常判別処理を行っている。しかしながら、検体が収容される検体容器種類や液量に応じた基準データを使うことで、より適切な異常判別を実施できる余地があることが本発明者らの検討により明らかとなった。
【0010】
具体的には、分析を実施するために最低限必要とされる検体量(以下、デッドボリューム量と称する)を低減するために用いる微量用検体容器からの検体分注においては、液面低下による空吸いを防ぐためのノズルの追下降動作により吸引途中にノズル先端が容器底に接触することがある。
【0011】
この接触に起因した流路内圧力変動が吸引途中にみられる場合があり、これを圧力異常として検知する恐れがあること、また、この圧力変動は分析結果(吸引量)に影響を与えるものではなく、異常として検知するのは必ずしも適切ではないことが本発明者らの検討により明らかとなった。この圧力変動を異常として検知することは、分析異常として検体の廃棄等につながってしまうことから、結果としてデッドボリューム量の増大にも繋がるため、避けることが望まれる。
【0012】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、分注プロセスの監視を維持しつつ、デッドボリューム量を低減することができる自動分析装置、および検体の分注方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体を分析する自動分析装置であって、前記検体を検体容器から分注する検体分注ノズルを有する検体分注機構と、前記検体容器の情報を取得し、前記検体容器の種類を判別する検体容器種類判別部と、前記検体分注ノズル内の圧力を検出する圧力センサと、前記検体分注機構の異常の有無の判定に用いる判定基準データを前記検体容器の種類別に複数記憶する記憶部と、記検体分注機構により前記検体を分注した際の前記圧力センサの検出結果と前記検体容器種類判別部で判別した前記検体容器の種類に対応する前記判定基準データとに基づいて、前記検体の分注に異常があったか否かを判定する異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分注プロセスの監視を維持しつつ、デッドボリューム量を低減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1に係る自動分析装置の概略構成を示す図である。
図2】実施例1に係る自動分析装置における検体分注機構の拡大図である。
図3】検体容器の種類を説明する図である。
図4】実施例1に係る自動分析装置における制御部の詳細を示す機能ブロック図である。
図5】実施例1に係る自動分析装置における制御部の一連の処理についてのフローチャートである。
図6】本発明の実施例2に係る自動分析装置における制御部の詳細を示す機能ブロック図である。
図7】実施例2に係る自動分析装置における制御部の一連の処理についてのフローチャートである。
図8】本発明の実施例3に係る自動分析装置における制御部の詳細を示す機能ブロック図である。
図9】実施例3に係る自動分析装置における制御部の一連の処理についてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の自動分析装置、および検体の分注方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0017】
また、以下の実施例においては、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0018】
<実施例1>
本発明の自動分析装置および検体の分注方法の実施例1について図1乃至図5を用いて説明する。
【0019】
最初に、図1および図2を用いて本実施例に係る自動分析装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施例1に係る自動分析装置の全体的な概略構成を示す図である。図2は検体分注機構の拡大図である。
【0020】
図1に示す自動分析装置1は、検体の分析を自動で行う装置であり、搬送ライン101、ラックロータ102、試薬ディスク103、反応ディスク100、検体分注機構105a、試薬分注機構105b、撹拌機構106、分光器107、洗浄機構108、ノズル洗浄機構109a,109b、静電容量検出機構117a,117b、圧力センサ202a(図2参照)、制御装置115を備えている。
【0021】
ラックロータ102は、検体を保持した検体容器110を装置にセットするための機器であり、搬送ライン101で搬送され検体容器110を複数載置している検体ラック111を複数保持する。なお、ラックロータ102はディスク方式とすることができ、また検体容器110を1本保持する検体ホルダを複数保持するものとすることができる。更に、ラックロータ102を省略して搬送ライン101上の検体容器110から検体を直接分注する形式とすることができる。
【0022】
反応ディスク100は、その周方向に沿って所定の間隔にて相互に離間した状態で、血液又は尿などの検体と試薬とを反応させるための反応容器112が複数格納されている。反応ディスク100では、反応容器112やその内部の反応液を一定温度に保つ構造となっている。
【0023】
試薬ディスク103は、その中に測定項目に応じた試薬が収容された試薬ボトル113が複数個、円周状に格納可能となっている保管庫である。試薬ディスク103は保冷されている。
【0024】
検体分注機構105aは、反応ディスク100とラックロータ102との間に設置されている。図2に示すように、その先端には検体分注ノズル116aが設けられており、検体分注ノズル116a内に充填されたシステム水を移動させ、分節空気を介して検体分注ノズル116aに検体の吸引および吐出を行わせる。
【0025】
また、検体分注機構105aには、システム水を移動させるためのシリンジ(図示省略)が含まれ、このシリンジの駆動により当該移動がなされる。更に、検体分注ノズル116aの上下駆動および回転駆動を行わせるモータなどの駆動機構(図示省略)も備えている。
【0026】
検体分注ノズル116aは検体分注機構105aの回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、測定用の検体の吸引を検体容器110あるいは反応容器112から行い、反応容器112への吐出を行う各種分注動作を実行する。
【0027】
試薬分注機構105bは、反応ディスク100と試薬ディスク103との間に設置されており、その先端には試薬分注ノズル116bが設けられており、試薬分注ノズル116b内に充填されたシステム水を移動させ、分節空気を介して試薬分注ノズル116bに試薬の吸引および吐出を行わせる。
【0028】
また、試薬分注機構105bには、システム水を移動させるためのシリンジ(図示省略)が含まれ、このシリンジの駆動により当該移動がなされる。更に、試薬分注ノズル116bの上下駆動および回転駆動を行わせるモータなどの駆動機構(図示省略)も備えている。
【0029】
試薬分注ノズル116bは試薬分注機構105bの回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、試薬ボトル113から試薬の吸引を行い、反応容器112への吐出を行う各種分注動作を実行する。
【0030】
静電容量検出機構117aは検体分注機構105a内に設けられており、検体分注ノズル116aの静電容量値を検出することで試薬の液面を検知する装置である。検体分注ノズル116aの静電容量を電圧に変換する回路を有し、静電容量が増加すると変換電圧も増加する構成となっている。
【0031】
静電容量検出機構117bは、試薬分注ノズル116bの静電容量値を検出することで検体の液面高さを検出する装置であり、その詳細は静電容量検出機構117aと同じである。
【0032】
また、静電容量検出機構117a,117bは、各々閾値を記憶しており、静電容量が閾値を上回ると液面検知信号を発行する。この閾値は検体分注ノズル116aや試薬分注ノズル116bが空中に位置しているときの静電容量に一定値を加えた電圧として設定される。例えば、検体分注ノズル116aや試薬分注ノズル116bの高さ方向の最上限点に位置センサを配し、下降動作で最上限点位置センサを外れたタイミングでの静電容量の変換電圧に一定電圧を加算してサンプルホールドを行い閾値とする。
【0033】
なお、本発明においては、ノズルの静電容量値とは、各分注ノズルと自動分析装置1の基礎を構成する筐体(GND)との間の静電容量値とする。
【0034】
図2に示すように、圧力センサ202aは、検体分注ノズル116aと接続された配管に接続されており、検体分注ノズル116a内の圧力を検出し続けることでその圧力変化を観測するように設けられており、検体分注ノズル116a内の詰まりや空吸い等の吸引状況のチェックや配管異常の監視を行う。
【0035】
撹拌機構106は、反応容器112中に分注された検体と添加された試薬の反応を安定させるために撹拌する装置であり、例えば先端に設けられた撹拌翼或いはへら状の棒(図示省略)を備えている。なお、撹拌機構106は、このような機構に限られるものではなく、超音波によるものとすることができる。
【0036】
分光器107は、反応容器112内の検体と試薬とを反応させた反応液を比色分析するための装置であり、反応ディスク100の内側に配置される光源(図示省略)に対して反応容器112を挟むように対向して配置される。
【0037】
洗浄機構108は、分析が終了した反応液の吸引および反応容器112の洗浄を行う装置である。
【0038】
反応ディスク100とラックロータ102との間には、検体分注機構105aの検体分注ノズル116aを洗浄するためのノズル洗浄機構109aが設置されている。また、反応ディスク100と試薬ディスク103の間には、試薬分注機構105bの試薬分注ノズル116bを洗浄するためのノズル洗浄機構109bが設置されている。更に、反応ディスク100と撹拌機構106の間には、撹拌機構106を洗浄するための洗浄機構(図示省略)が設置されており、コンタミ防止が図られている。
【0039】
制御装置115は、上述された自動分析装置1内の各機器に有線あるいは無線により接続されており、自動分析装置1内の各機器の動作を制御する。この制御装置115は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、分光器107の検出結果から検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0040】
制御装置115による各機器の動作の制御は、記憶装置(図示省略)に記録された各種プログラムに基づき実行される。記憶装置には、検体の測定に用いる各種プログラムの他に、入力装置301(図4参照)を介して入力された各種パラメータや測定対象検体の情報(検体種別情報など)、測定結果などが記憶されている。
【0041】
なお、制御装置115で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0042】
以上が自動分析装置1の全体的な構成である。
【0043】
なお、自動分析装置の構成は図1に示すような生化学の分析項目の分析を実行する生化学分析装置の場合に限られず、免疫の分析項目の分析を実行する免疫分析装置など、他の分析項目の分析を実行する分析装置とすることができる。また、生化学分析装置についても図1に示す形態に限られず、他の分析項目、例えば電解質を測定する分析機器を別途搭載したものとすることができる。
【0044】
また、自動分析装置は図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0045】
上述のような自動分析装置1による検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0046】
まず、分析対象の検体が収容された検体容器110がラックロータ102に設置され、検体分取位置まで回転移動される。
【0047】
検体分注機構105aは、吸引した検体を反応ディスク100上にある反応容器112に吐出する。その反応容器112に対して試薬分注機構105bにより試薬ディスク103上の試薬ボトル113から吸引した試薬をさらに添加し、撹拌機構106で反応容器112内の検体と試薬とを混合して撹拌する。
【0048】
その後、光源から反応容器112に保持された反応液を通過した光の光学特性が分光器107により測定され、測定結果が制御装置115に送信される。
【0049】
制御装置115は、送信された測定結果から演算処理によって検体内の特定成分の濃度を求める。分析結果は表示装置302(図4参照)を介してユーザに通知されるとともに、記憶装置に記録される。
【0050】
次いで、本実施例における検体容器の種類について図3を用いて説明する。図3は自動分析装置における検体容器110の種類を説明する図面である。
【0051】
自動分析装置1では、様々な形状の検体容器110が用いられるが、その種類としては、例えば、図3に示すように、5本の検体容器110を搭載可能な検体ラック111のうち、中央に搭載されている試験管110aであったり、図3中最も右側、あるいは試験管110aの左隣に設けられている標準カップ110b、図3中最も左側、あるいは試験管110aの右隣に設けられている微量カップ110c(微量用検体容器、微量用容器)などがある。
【0052】
標準カップ110bでは、分析に使用できないデッドボリュームは例えば100μl前後であるのに対し、標準カップ110bより径が細い微量カップ110cではデッドボリュームは50μl前後であり、更に微量な検体の分注に好適な形状となっている。
【0053】
なお、試験管110aや標準カップ110b、微量カップ110cの各々の形状も様々であり、図3は一例である。
【0054】
次に、本実施例の自動分析装置1における制御装置115の機能の詳細について図4を用いて説明する。図4は制御装置115の機能の詳細を示す機能ブロック図である。
【0055】
図4に示すように、制御装置115は、入力装置301や表示装置302の他に、検体容器種類判別部303、記憶部304、異常判定部305、各種機構の動作を制御する動作制御部306などの各種機能ブロックを備えている。
【0056】
検体容器種類判別部303は、検体容器110の情報を取得し、検体が収容されている検体容器110の種類の判別を行う。容器種類の判別は、好適には制御装置115に設けられた入力装置301を含むユーザーインターフェースからから入力された検体容器110の情報、または判別対象の検体容器110を側方または上方からカメラにより撮像した画像情報を基に行われるが、これらの方法に限定されない。
【0057】
ユーザーインターフェースからから入力された検体容器110の情報としては、例えば微量カップ110cであるか、その他の容器(試験管110aや標準カップ110b)であるかの情報である。また、カメラの撮像画像に基づく処理についても、撮像画像を画像処理して、微量カップ110cであるか、その他の容器(試験管110aや標準カップ110b)であるか否かを判定して得られる情報である。
【0058】
なお、判別は、微量カップ110cであるかその他の容器(試験管110aや標準カップ110b)であるかの場合に限られず、試験管110aであるか、その他の容器(標準カップ110bや微量カップ110c)であるか、更には様々な形状がある試験管110aの形状の種類ごとの区別や、標準カップ110bの形状の種類ごとの区別、微量カップ110cの形状の種類ごとの区別等とすることができる。
【0059】
記憶部304は、検体分注機構105aの検体分注ノズル116aによる検体の分注に異常があったか否かの判定に用いる判定基準データが、検体容器110の種類別に複数記憶されている。判定基準データについて、例えば、微量カップ110cの場合、検体分注ノズル116aが微量カップ110cの底に接触する前までの圧力データで構成する。または、検体分注ノズル116aの微量カップ110cの底への軽い接触に起因する圧力変動が含まれており、軽い接触があることを前提とした判定基準データで構成することができる。
【0060】
異常判定部305は、検体分注機構105aにより分析に用いる分注対象の検体を分注した際の圧力センサ202aの検出結果と、記憶部304に記憶されており、検体容器種類判別部303で判別した検体容器110の種類に対応する判定基準データとに基づいて、検体分注ノズル116aによる検体の分注に異常があったか否かを判定する。
【0061】
検体の分注に異常があったか否かの判定は、マハラノビス距離、ユークリッド距離、標準ユークリッド距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離、ミンコフスキー距離、多変量正規密度などの統計距離を算出することで行うことができる。ただし、判定には公知の技術を用いることができ、この限りではない。
【0062】
次に、上述の自動分析装置1において好適に実行される本実施例に係る検体の分注方法について図5を参照して説明する。図5は本実施例に係る自動分析装置における制御部の一連の処理についてのフローチャートであり、動作の制御主体は好適には制御装置115である。
【0063】
まず、制御装置115は、ユーザの操作によって入力装置301から分析開始が指示されると、検体容器種類判別部303により当該分注対象の検体容器110の情報を取得する(ステップS1)。このステップS1が、検体容器110の情報を取得する取得ステップに相当する。
【0064】
次いで、制御装置115は動作制御部306により検体の吸引動作を行わせるとともに、その際の圧力センサ202aの圧力データを取得する(ステップS2)。このステップS2が、分注対象の検体を検体分注機構105aにより分注する分注ステップに相当する。
【0065】
次いで、制御装置115の検体容器種類判別部303は、ステップS1で取得した検体容器110の情報を基に検体容器110の種類の判別を行う(ステップS3)。
【0066】
次いで、制御装置115の異常判定部305は、ステップS2で取得した圧力データと記憶部304に記憶される検体容器種類判別部303で判別した検体容器種類に対応する前記判定基準データとに基づいて、検体分注ノズル116aによる検体の分注に異常があったか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4が、分注ステップの際の圧力センサ202aからの検出結果と、取得ステップで取得された検体容器110の種類とに基づいて、分注ステップにおいて検体の分注に異常があったか否かを判定する判定ステップに相当する。
【0067】
ステップS4での判定結果が異常有りの場合には処理をステップS5に進めて、復帰処理を行い(ステップS5)、処理を終了する。
【0068】
ここで、復帰処理とは、異常判定部305が吸引異常ありの情報を発報し、制御装置115によるアラーム処理及び次の検体の処理に進む動作を実行する処理である。
【0069】
これに対し、ステップS4での判定結果が異常無しの場合は処理をステップS6に進めて、動作制御部306により反応容器112へ検体を吐出させ(ステップS6)、次の分注があるかどうかを判定する(ステップS7)。ステップS7において判定結果がYESの場合、すなわち次の分注がある場合にはステップS2の処理に戻る。これに対し、判定結果がNOの場合、すなわち分析依頼のある検体が存在せずに次の分注処理が予定されていない場合には、処理を終了する。
【0070】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0071】
上述した本発明の実施例1の自動分析装置1は、検体を検体容器110から分注する検体分注ノズル116aを有する検体分注機構105aと、検体容器110の情報を取得し、検体容器110の種類を判別する検体容器種類判別部303と、検体分注ノズル116a内の圧力を検出する圧力センサ202aと、検体分注機構105aの異常の有無の判定に用いる判定基準データを検体容器110の種類別に複数記憶する記憶部304と、検体分注機構105aにより検体を分注した際の圧力センサ202aの検出結果と検体容器種類判別部303で判別した検体容器110の種類に対応する判定基準データとに基づいて、検体の分注に異常があったか否かを判定する異常判定部305と、を備えている。
【0072】
これによって、例えば容器底への接触など、検体分注に支障はないが、検体容器110の形状や液量によっては起こりえる軽微な圧力異常に起因して分注異常と判定されることを従来に比べて大きく低減することができる。したがって、例えば微量分注などにおいて分注異常が生じたと判定されることを従来に比べて減らすことができ、更なる微量分注に対応できるようになることから、分注プロセス監視を適切に行いながら、デッドボリュームの低減を図ることができる。
【0073】
また、検体容器種類判別部303は、ユーザーインターフェースから入力された検体容器110の情報、あるいは判別対象の検体容器110を撮像した画像情報に基づいて検体容器110の種類の判別を行うため、圧力異常の判定基準データを異ならせる必要性の高い検体容器110の状況を高精度に判別することができ、より適切な分注プロセスの監視を実現することができる。
【0074】
更に、検体容器種類判別部303は、検体容器110が微量用容器かそれ以外の検体容器110かを判別することで、圧力異常の判定基準データを異ならせる必要性の高い検体容器110の状況を高精度に判別することができる。
【0075】
<実施例2>
本発明の実施例2の自動分析装置、および検体の分注方法について図6および図7を用いて説明する。図6は本実施例2に係る自動分析装置における制御部の詳細を示す機能ブロック図、図7は本実施例での制御部の一連の処理についてのフローチャートである。
【0076】
実施例1では、判別した検体容器種類に対応する判定基準データを用いて検体の分注に異常があったか否かを判定する形態であった。これに対し、本実施例2の自動分析装置では、実施例1に加えて、検体分注ノズル116aが検体容器110の底へ接触したか否かについても判定基準データに対応させる形態である。つまり、検体容器110の種類と検体分注ノズル116aの検体容器110の底への接触有無の組み合わせにより異常判定に用いる判定基準データを構成する形態である。
【0077】
実施例2において、自動分析装置の全体構成及び検体の分注機構は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0078】
図6に示す実施例2における制御装置115Aの機能ブロック図の実施例1における図4に示した機能ブロック図との相違点は、図4の構成に検体容器底接触有無判別部501が追加されている点である。
【0079】
検体容器底接触有無判別部501は、上述のように、検体分注ノズル116aの先端が検体容器110の底へ接触したか否かを判別するための機構であり、例えば、図2に示すように、検体分注ノズル116aの上端側に設けられた遊び部分の明るさを検知するセンサであり、衝突して検体分注ノズル116aが上昇して当該遊び部分が暗くなるか否かで接触の有無を判別する構成である。
【0080】
それに伴い、本実施例では、記憶部304Aは、検体容器底接触有無判別部501の判定に用いる判定基準データを検体容器110の種類別に複数記憶している。
【0081】
また、異常判定部305Aは、検体容器底接触有無判別部501の判別結果にも基づいて検体の分注に異常があったか否かを判定する。例えば、実施例1に加えて、接触したと判定された後の圧力データを無効とする、あるいは接触したと判定されたときは接触ありきの判定基準データを用いるなどの処理とすることができる。
【0082】
次に、上述の自動分析装置1において好適に実行される本実施例に係る検体の分注方法について図7を参照して説明する。
【0083】
本実施例における処理の流れを示すフローチャートの実施例1における図5に示したフローチャートとの相違点は、図7では、検体容器110の底への接触有無判別(ステップS14)が追加されている点であり、その他のステップS11、S12,S13,S15,S16,S17,S18はそれぞれ図5に示したステップS1,S2、S3、S4,S5,S6,S7と同じであり、詳細は省略する。
【0084】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自動分析装置、および検体の分注方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0085】
本発明の実施例2の自動分析装置、および検体の分注方法においても、前述した実施例1の自動分析装置、および検体の分注方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0086】
また、検体分注ノズル116aの先端が検体容器110の底へ接触したか否かを判別する検体容器底接触有無判別部501を更に備え、記憶部304Aは、検体容器底接触有無判別部501の判定に用いる判定基準データを検体容器110の種類別に複数記憶しており、異常判定部305Aは、検体容器底接触有無判別部501の判別結果にも基づいて検体の分注に異常があったか否かを判定することにより、より適した判定基準データを用いて、異常判定を行うことが可能となり、信頼性の高い判定結果を得ることができ、かつデッドボリューム量を低減することができる。
【0087】
<実施例3>
本発明の実施例3の自動分析装置、および検体の分注方法について図8および図9を用いて説明する。図8は本実施例3に係る自動分析装置における制御部の詳細を示す機能ブロック図、図9は本実施例での制御部の一連の処理についてのフローチャートである。
【0088】
本実施例3の自動分析装置では、実施例1の自動分析装置に、更に、検体容器110に収容されている検体の液量を判定基準データに対応させる。つまり、検体容器110の種類と検体容器110に収容されている検体の液量の組み合わせにより異常判定に用いる判定基準データを構成する形態である。
【0089】
実施例3において、自動分析装置の全体構成及び検体の分注機構は、実施例1と同等であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0090】
図8に示す実施例3における制御装置115Bの機能ブロック図の実施例1における図4に示した機能ブロック図との相違点は、図4の構成に検体液量算出部701が追加されている点である。
【0091】
検体液量算出部701は、例えば、検体容器110を側面側から撮像する検体カメラにより撮像された画像と静電容量検出機構117a,117bにより検出された液面検知高さと検体容器種類判別部303で判別した検体容器110の種類の情報とを用いて検体の液量を算出する。

【0092】
同じ形状の検体容器110であっても、保持されている検体量が常に一定であるとは限られないことから、検体容器110の情報として、検体容器110の形状に加えて、検体容器110に収容された検体の液量の情報を取得することが望ましい。例えば、検体量が微量とみなす量であるか否かの情報とすることができる。
【0093】
それに伴い、本実施例では、記憶部304Bは、検体液量算出部701の判定に用いる判定基準データを検体容器110の種類別に複数記憶している。
【0094】
また、異常判定部305Bは、検体液量算出部701の判別結果にも基づいて検体の分注に異常があったか否かを判定する。例えば、液量と容器種類ごとに分類される判定基準データを用いる処理や、判定された液量と容器種類から接触が想定されるタイミングを見積もり、そのタイミング以降の圧力データを無効とする処理などとすることができる。
【0095】
次に、上述の自動分析装置1において好適に実行される本実施例に係る検体の分注方法について図9を参照して説明する。
【0096】
本実施例における処理の流れを示すフローチャートの実施例1における図5に示したフローチャートとの相違点は、図9では、検体液量の算出処理(ステップS24)が追加されている点であり、その他のステップS21、S22,S23,S25,S26,S27,S28はそれぞれ図5に示したステップS1,S2、S3、S4,S5,S6,S7と同じであり、詳細は省略する。
【0097】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自動分析装置、および検体の分注方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0098】
本発明の実施例3の自動分析装置、および検体の分注方法においても、前述した実施例1の自動分析装置、および検体の分注方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0099】
また、検体容器110に収容されている検体の液量を算出する検体液量算出部701を更に備え、記憶部304Bは、検体液量算出部701の判定に用いる判定基準データを検体容器110の種類別に複数記憶しており、異常判定部305Bは、検体液量算出部701の判別結果にも基づいて検体の分注に異常があったか否かを判定することによっても、より適した判定基準データを用いて、異常判定を行うことが可能となり、信頼性の高い判定結果を得ることかつデッドボリューム量を低減することができる。
【0100】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0101】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…自動分析装置
100…反応ディスク
101…搬送ライン
102…ラックロータ
103…試薬ディスク
105a…検体分注機構
105b…試薬分注機構
106…撹拌機構
107…分光器
108…洗浄機構
109a,109b…ノズル洗浄機構
110…検体容器
110a…試験管
110b…標準カップ
110c…微量カップ
111…検体ラック
112…反応容器
113…試薬ボトル
115,115A,115B…制御装置(制御部)
116a…検体分注ノズル
116b…試薬分注ノズル
117a,117b…静電容量検出機構(静電容量検出部)
202a…圧力センサ
301…入力装置
302…表示装置
303…検体容器種類判別部
304,304A,304B…記憶部
305,305A,305B…異常判定部
501…検体容器底接触有無判別部
701…検体液量算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9