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特許7539629治療計画装置、粒子線治療システム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】治療計画装置、粒子線治療システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019164728
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021040899
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】藤高 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴啓
(72)【発明者】
【氏名】林 建佑
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-062605(JP,A)
【文献】特表2015-535437(JP,A)
【文献】特開2017-131399(JP,A)
【文献】特開2004-358237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0297850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に粒子線を照射するためのパラメータの入力を受け入れる入力装置と、
前記入力装置が受け入れた前記パラメータに基づいて、前記標的に前記粒子線の照射位置及び前記照射位置毎の前記粒子線の照射量を設定し、前記照射位置毎の前記照射量を予め定められた上限値及び下限値に基づいて分割した分割照射量を設定し、この分割照射量を複数のグループのいずれかに割り当てた治療計画情報を作成する制御装置と
を有し、
前記入力装置は、前記照射量の分割回数及び前記グループの個数に関する入力を受け入れ、
前記制御装置は、前記入力装置が受け入れた前記照射量の分割回数及び前記グループの個数に基づいて前記分割照射量及び前記グループを設定し、前記治療計画情報を作成することを特徴とする治療計画装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記入力装置が受け入れた前記照射量の分割回数に近くなるような分割回数になるように前記分割照射量を設定することを特徴とする請求項に記載の治療計画装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記粒子線の照射方向において照射エネルギーが異なる複数の層領域を前記標的に設定し、それぞれの前記層領域に前記照射位置及び前記照射位置毎の前記粒子線の照射量を設定することを特徴とする請求項1に記載の治療計画装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記層領域毎に前記分割照射量及び前記グループの個数を設定することを特徴とする請求項に記載の治療計画装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記層領域に複数の前記照射位置を設定し、前記分割照射量に基づく前記照射位置毎の前記粒子線の照射順序を設定することを特徴とする請求項に記載の治療計画装置。
【請求項6】
粒子線を加速する加速器と、
前記加速器で加速された前記粒子線を標的に照射する照射装置と、
前記標的に粒子線を照射するためのパラメータの入力を受け入れる入力装置と、
前記加速器及び前記照射装置を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、前記入力装置が受け入れた前記パラメータに基づいて、前記標的に前記粒子線の照射位置及び前記照射位置毎の前記粒子線の照射量を設定し、前記照射位置毎の前記照射量を予め定められた上限値及び下限値に基づいて分割した分割照射量を設定し、この分割照射量を複数のグループのいずれかに割り当てて、前記照射装置により前記グループ毎に前記粒子線を照射させ
前記入力装置は、前記照射量の分割回数及び前記グループの個数に関する入力を受け入れ、
前記制御装置は、前記入力装置が受け入れた前記照射量の分割回数及び前記グループの個数に基づいて前記分割照射量及び前記グループを設定し、前記治療計画情報を作成する
ことを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記照射装置により前記グループ毎に前記粒子線を照射させる際に、ある前記グループにおける前記粒子線の照射から異なる前記グループにおける前記粒子線の照射に移行するとき、前記照射装置による前記粒子線の照射を停止させることを特徴とする請求項6に記載の粒子線治療システム。
【請求項8】
入力装置が受け入れた、標的に粒子線を照射するためのパラメータに基づいて治療計画情報を生成するコンピュータにより実行されるコンピュータプログラムであって、
前記パラメータに基づいて、前記標的に前記粒子線の照射位置及び前記照射位置毎の前記粒子線の照射量を設定し、前記照射位置毎の前記照射量を予め定められた上限値及び下限値に基づいて分割した分割照射量を設定し、この分割照射量を複数のグループのいずれかに割り当てた治療計画情報を作成する制御機能を実現させ
前記制御機能は、前記照射量の分割回数及び前記グループの個数に基づいて前記分割照射量及び前記グループを設定し、前記治療計画情報を作成する
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療計画装置、粒子線治療システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種放射線を照射することで腫瘍細胞を壊死させることを目的とする放射線治療は、近年広く行われている。用いられる放射線としては最も広く利用されているX線だけでなく、陽子線や炭素線をはじめとする粒子線を使った治療も広がりつつある。
【0003】
粒子線治療において、スキャニング法の利用が広がっている。これは細い粒子ビームを、腫瘍内部を塗りつぶすように照射することで腫瘍領域にのみ高い線量を付与するという方法である。分布を腫瘍形状に成型するためのコリメータ等の患者固有の器具が基本的に必要なく、様々な分布を形成できる。
【0004】
スキャニング法では、ある位置を照射するとき、一度に照射可能な照射量が装置により決められている。照射量の下限値は、照射量や照射位置を計測する検出器の検出下限から決定され、照射量の上限値は、検出器の検出上限や検出した位置の検証間隔から決定される。
【0005】
粒子線治療は、事前に詳細な計画を立てる必要がある。治療計画装置により、事前に患部および患部周囲への所望の線量分布が得られるように照射量、照射位置が決定される。事前の計画時に患者の体内の様子を確認する手段は、X線CT画像(以下、CT画像)が最も一般的である。患部位置の指定、それに基づく体内の線量分布計算もCT画像を用いて行われることが多い。
【0006】
照射時にも計画通りの照射が行われることが望ましいが、実際には様々な要因による誤差が影響する。この誤差要因には装置自体の誤差や位置決め時の誤差に加え、呼吸や心拍による照射中の患部の動きが挙げられる。それらの誤差の影響を平均化して低減するため、照射量の制限範囲を守りながら、同じ位置を複数回に分けて照射するリペイント照射と呼ばれる方法が特許文献1に開示されている。
【0007】
特許文献1に開示された手法は、一回の照射量が照射量の上限以下となる最小の繰り返し回数(リペイント回数)を決め、照射すべき量をそのリペイント回数で割った値を1回あたりの照射量とする手法である。このようにして決定した照射量に従い、最初にすべての位置を照射し、次に2回以上の繰り返し回数が必要な位置のみを照射し、さらに3回以上の繰り返し回数が必要な場所を照射するというように、リペイント回数が最大の場所が照射を完了するまで照射を続ける。照射量の多い場所ほど多くのリペイント回数の照射をできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-50824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した特許文献1に開示された手法に基づいて、患部に所望の線量分布を形成するための照射位置毎の照射量を求めると、照射位置毎の照射量のばらつきが大きく、リペイント照射のリペイント回数もばらつきが大きくなる。その結果、リペイント回数が進むと、特定の少数の位置のみをリペイント照射するため、リペイント照射による平均化効果が小さくなる課題があった。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、リペイント照射を用いつつ照射量の平均化をより行うことが可能な治療計画装置、粒子線治療システム及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う治療計画装置は、標的に粒子線を照射するためのパラメータの入力を受け入れる入力装置と、入力装置が受け入れたパラメータに基づいて、標的に粒子線の照射位置及び照射位置毎の粒子線の照射量を設定し、照射位置毎の照射量を予め定められた照射量の上限値及び下限値に基づいて分割した分割照射量を設定し、この分割照射量を複数のグループのいずれかに割り当てた治療計画情報を作成する制御装置とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リペイント照射を用いつつ照射量の平均化をより行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例に係る粒子線治療システムを示す概略構成図である。
図2】実施形態に係る粒子線治療システムに用いられる照射野形成装置の構成を示す図である。
図3】粒子線スキャニング照射法における照射位置の概念を示す図である。
図4】粒子線スキャニング照射法におけるエネルギー変更の概念を示す図である。
図5】実施例に係る治療計画装置を示す図である。
図6】実施例に係る治療計画装置を示す概略構成図である。
図7】実施例に係る治療計画装置の全体動作を説明するためのフローチャートである。
図8】実施例に係る治療計画装置による照射量の分割とリペイント・グループへの割り当てを示す図である。
図9】実施例に係る治療計画装置による粒子線の照射順序を示す図である。
図10】実施例に係る粒子線治療システムによる粒子線照射の手順を説明するためのフローチャートである。
図11】実施例に係る治療計画装置による照射量の分割とリペイント・グループへの割り当ての手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
本発明の実施例は、陽子線や炭素線などの粒子線を照射する粒子線治療システムとこの粒子線治療システムの一部を為す治療計画装置である。なお、本実施例の粒子線治療システム等に用いられる粒子線は、上述した陽子線、炭素線など、既に実用化され、また、今後実用化されるであろう粒子線であれば限定はない。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例に係る粒子線治療システムを示す概略構成図である。
【0017】
図1において、実施例に係る粒子線治療システムSは、荷電粒子ビーム発生装置301、高エネルギービーム輸送系310、回転照射装置311、中央制御装置312、メモリ313、照射制御システム314、表示装置315、照射野形成装置(照射装置)400、ベッド407、治療計画装置501を有する。
【0018】
荷電粒子ビーム発生装置301は、イオン源302、前段加速器303、粒子ビーム加速装置304を有する。本実施例は、粒子ビーム加速装置304としてシンクロトロン型の粒子ビーム加速装置を想定したものだが、粒子ビーム加速装置304としてサイクロトロン等、他のどの粒子ビーム加速装置を用いてもよい。シンクロトロン型の粒子ビーム加速装置304は、図1に示すように、その周回軌道上に偏向電磁石305、加速装置306、出射用の高周波印加装置307、出射用デフレクタ308、および4極電磁石(図示せず)を備える。
【0019】
図1を用いて、粒子ビームが、シンクロトロン型の粒子ビーム加速装置304を利用した荷電粒子ビーム発生装置301から発生し、患者406へ向けて出射されるまでの経過を説明する。
【0020】
イオン源302より供給された粒子は前段加速器303にて加速され、粒子ビーム加速装置304であるシンクロトロンへと送られる。シンクロトロンには加速装置306が設置されており、シンクロトロン内を周回する粒子ビームが加速装置306を通過する周期に同期させて加速装置306に設けられた高周波加速空胴(図示せず)に高周波を印加し、粒子ビームを加速する。このようにして粒子ビームが所定のエネルギーに達するまで加速される。
【0021】
所定のエネルギー(例えば70~250MeV)まで粒子ビームが加速された後、中央制御装置312より、照射制御システム314を介して出射開始信号が出力されると、高周波電源309からの高周波電力が、高周波印加装置307に設置された高周波印加電極によりシンクロトロン内を周回している粒子ビームに印加され、粒子ビームがシンクロトロンから出射される。
【0022】
高エネルギービーム輸送系310は、シンクロトロンと照射野形成装置400とを連絡している。シンクロトロンから取り出された粒子ビームは、高エネルギービーム輸送系310を介して回転照射装置311に設置された照射野形成装置400まで導かれる。回転照射装置311は、患者406の任意の方向からビームを照射するためのものであり、装置311全体が回転することで患者406の設置されたベッド407の周囲どの方向へも回転することができる。
【0023】
照射野形成装置400は、最終的に患者406へ照射する粒子ビームの形状を整形する装置であり、その構造は照射方式により異なる。散乱体法とスキャニング法が代表的な照射方式であり、本実施例の粒子線治療システムSはスキャニング法を対象とする。スキャニング法は、高エネルギービーム輸送系310から輸送された細いビームをそのまま標的へ照射し、これを3次元的に走査することで、最終的に標的のみに高線量領域を形成することができる。
【0024】
図2は、実施形態に係る粒子線治療システムSに用いられる照射野形成装置400の構成を示す図である。図2に示す照射野形成装置400は、スキャニング法に対応したものである。
【0025】
図2を使って、照射野形成装置400内の機器のそれぞれの役割と機能とを簡単に述べる。照射野形成装置400は、上流側から二つの走査電磁石401および402、線量モニタ403、ビーム位置モニタ404を有する。線量モニタ403はモニタを通過した粒子ビームの量を計測する。一方、ビーム位置モニタ404は、粒子ビームが通過した位置を計測することができる。これらのモニタ403、404からの情報により、計画通りの位置に計画通りの量のビームが照射されていることを、照射制御システム314が管理することが可能となる。
【0026】
荷電粒子ビーム発生装置301から高エネルギービーム輸送系310を経て輸送された細い粒子ビームは、走査電磁石401、402によりその進行方向を偏向される。これらの走査電磁石401、402は、ビーム進行方向と垂直な方向に磁力線が生じるように設けられており、例えば図2では、走査電磁石401は走査方向405の方向にビームを偏向させ、走査電磁石402はこれに垂直な方向に偏向させる。この二つの電磁石401、402を利用することで、ビーム進行方向と垂直な面内において任意の位置にビームを移動させることができ、標的406aへのビーム照射が可能となる。
【0027】
照射制御システム314は、走査電磁石磁場強度制御装置411を介して、走査電磁石401および402に流す電流の量を制御する。走査電磁石401、402には、走査電磁石用電源410より電流が供給され、電流量に応じた磁場が励起されることでビームの偏向量を自由に設定できる。粒子ビームの偏向量と電流量との関係は、あらかじめテーブルとして中央制御装置312の中のメモリ313に保持されており、それを参照する。
【0028】
スキャニング法のビームの走査方式は二通りある。一つは、照射位置を停止させた状態のみで粒子線を照射し、照射位置を変更する間は粒子線の照射を停止する離散スキャニング照射である。もう一つは、粒子線の照射を停止することなく連続的に照射位置を変化させる連続スキャニング照射である。
【0029】
本実施例では離散スキャニング照射について記述するが、本発明は連続スキャニング照射に対しても適用することができる。
【0030】
図3は、粒子線スキャニング照射法における照射位置の概念を示す図である。
【0031】
図3は、立方体の標的801を照射する例である。粒子線は、進行方向におけるある位置で停止し、その停止位置にエネルギーの大部分を付与するため、ビームの停止する深さが標的領域内となるようにエネルギーが調整される。図3では、同一エネルギーで照射される面802付近で停止するエネルギーのビームが選ばれている。この面上に、照射位置(スポット)804がスポット間隔803で配置されている。スポット804は、照射位置と照射量の組み合わせを表す。
【0032】
一つのスポット804で規定量を照射すると、一旦照射を停止して次のスポット804へ移動する。移動が完了すると次のスポット804の照射を開始し、規定量に達すると照射を停止する。以降、これを繰り返す。スポット804は、スポット804を照射するビームの軌跡805を通るビームで照射される。標的内に配置された同一エネルギーのスポット804を順次照射し終わると、標的内の他の深さ位置を照射するために、ビームを停止させる深さが変更される。ここでは、単純な立方体標的に一定の照射量を照射することを仮定しているが、実際には複雑な形状の線量分布を標的に形成するため、スポット804毎の照射量は、それぞれ大きく異なる。
【0033】
スポット804の照射量には上限と下限がある。照射された粒子線は、その位置がビーム位置モニタ404で、量が線量モニタ403で計測される。特にビーム位置モニタ404の計測が十分な精度を得るためには、通過する粒子線の量が十分である必要がある。このため、照射量に対して下限値を設定する。また、スポット804の照射毎に照射位置が正しいことを確認して照射を進める場合、スポット804の照射量に上限を設けることで、照射位置の確認の間に照射される量を制限する。また、スポット804の照射量に上限を設けない場合でも、照射位置を一定の周期あるいは一定の照射量毎に計測する必要があり、この計測間に照射される照射量が実質的にスポット804の照射量の上限値である。
【0034】
ビームの停止する深さを変化させるためには、患者406に照射するビームのエネルギーを変化させる。エネルギーを変化させる方法の一つは、粒子ビーム加速装置304、すなわち本実施例においてはシンクロトロンの設定を変更することである。粒子はシンクロトロンにおいて設定されたエネルギーになるまで加速されるが、この設定値を変更することで患者406に入射するエネルギーを変更することができる。この場合、シンクロトロンから取り出されるエネルギーが変化するため、高エネルギービーム輸送系310を通過する際のエネルギーも変化し、高エネルギービーム輸送系310の設定変更も必要になる。シンクロトロンの場合、エネルギー変更には1秒程度の時間を要する。
【0035】
図3の例では、同一エネルギーで照射される面802に相当する領域に主にエネルギーを付与していた。エネルギーを変更することで、例えば図4のような状況となる。
【0036】
図4は、粒子線スキャニング照射法におけるエネルギー変更の概念を示す図である。図4では、図3で使用したエネルギーよりも低いエネルギーのビームが照射される。そのため、ビームはより浅い位置で停止する。この面を同一エネルギーで照射される面901で表わす。このエネルギーのビームに対応するスポットの一つであるスポット902は、スポット902を照射するビームの軌跡903を通るビームで照射される。
【0037】
ビームエネルギーを変化させるもう一つの方法は、照射野形成装置400内に飛程変調体(図示せず)を挿入することである。変化させたいエネルギーに応じて、飛程変調体の厚みを選択する。厚みの選択は、複数の厚みを持つ複数の飛程変調体を用いる方法や、対向する楔形の飛程変調体を用いてもよい。
【0038】
本実施例では、同一エネルギーで照射されるスポット(照射位置)804、902の集合をレイヤー(層領域)と呼ぶ。
【0039】
図5は、実施例に係る治療計画装置501を示す図である。治療計画装置501は、ネットワークによりデータサーバ502、中央制御装置312と接続される。
【0040】
図6は、実施例に係る治療計画装置501を示す概略構成図である。
【0041】
治療計画装置501は、各種情報処理が可能な装置、一例としてコンピュータ等の情報処理装置から構成される。情報処理装置は、演算素子、記憶媒体及び通信インターフェースを有し、さらに、マウス、キーボード等の入力装置、ディスプレイ等の表示装置を有する。
【0042】
演算素子は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等である。記憶媒体は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などの半導体記憶媒体等を有する。また、DVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスク及び光ディスクドライブの組み合わせも記憶媒体として用いられる。その他、磁気テープメディアなどの公知の記憶媒体も記憶媒体として用いられる。
【0043】
記憶媒体には、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。治療計画装置501の動作開始時(例えば電源投入時)にファームウェア等のプログラムをこの記憶媒体から読み出して実行し、治療計画装置501の全体制御を行う。また、記憶媒体には、プログラム以外にも、治療計画装置501の各処理に必要なデータ等が格納されている。
【0044】
あるいは、治療計画装置501を構成する構成要素の一部がLAN(Local Area Network)を介して相互に接続されていてもよいし、インターネット等のWAN(Wide Area Network)を介して相互に接続されていてもよい。
【0045】
治療計画装置501は、図6に示すように、粒子線を照射するためのパラメータを入力するための入力装置602、治療計画を表示する表示装置603、メモリ(記憶媒体)604、線量分布計算を実施する演算処理装置605(演算素子である制御装置)、通信装置606を有する。演算処理装置605が、入力装置602、表示装置603、メモリ(記憶装置)604、通信装置606に接続される。
【0046】
図7は、実施例に係る治療計画装置501の全体動作を説明するためのフローチャートである。
【0047】
治療計画装置501を用いた操作の流れを、図7に沿って説明する。治療に先立ち、治療計画用の画像が撮像される。治療計画用の画像として最も一般的に利用されるのはCT画像である。CT画像は、患者の複数の方向から取得した透視画像から、3次元のデータを再構成する。CT装置(図示せず)により撮像されたCT画像は、データサーバ502に保存されている。
【0048】
治療計画の立案が開始されると(S101)、治療計画装置501の操作者である技師(または医師)は、入力装置602であるマウス等の機器を用いて、データサーバ502から対象となるCTデータを読み込む。すなわち、治療計画装置501は、入力装置602の操作により、通信装置606に接続されたネットワークを通じて、データサーバ502からCT画像をメモリ604上にコピーする(S102)。
【0049】
データサーバ502からメモリ604への3次元CT画像の読み込みが完了し、3次元CT画像が表示装置603に表示されると、操作者は表示装置603に表示された3次元CT画像を確認しながら、入力装置602に相当するマウス等の機器を用いて、3次元CT画像のスライス、すなわち2次元CT画像ごとに標的として指定すべき領域を入力する(S103)。
【0050】
ここで入力すべき標的領域は、腫瘍細胞が存在する、あるいは存在する可能性があるために十分な量の粒子線を照射すべきと判断された領域である。これを標的領域と呼ぶ。照射線量を極力抑えるべき重要臓器が標的領域の近傍に存在するなど、他に評価、制御を必要とする領域がある場合、操作者はそれら重要臓器等の領域も同様に指定する。他にも、MRIに代表される異なるモダリティの画像上で実行されてもよい。
【0051】
すべての3次元CT画像に対して領域の入力が終わると、操作者は入力した領域の登録を指示する(S104)。登録することで、操作者が入力した領域は3次元の位置情報としてメモリ604内に保存される。領域の位置情報はデータサーバ502にも保存可能であり、3次元CT画像を読み込むにあたり過去に入力された情報を3次元CT画像と共に読み込むこともできる。
【0052】
次に操作者は、登録された標的領域に対して照射すべきビームの位置やエネルギーの情報を含む治療計画を作成する(S105)。まず、操作者は、照射方向を設定する。本実施例を適用した粒子線治療システムは、回転照射装置311とベッド407の角度を選択することで、患者の任意の方向からビームの照射を行うことができる。照射方向は一つの標的に対して複数設定することが可能である。通常、標的406aの中心付近がアイソセンタ(回転照射装置311の回転中心位置)に一致するように位置決めがされる。
【0053】
他に操作者が決定すべき照射のためのパラメータとしては、S104で登録した領域に照射すべき線量値(処方線量)がある。処方線量は標的に照射すべき線量や、重要臓器が避けるべき最大線量が含まれる。これらパラメータは入力装置602を用いて操作者が入力する。
【0054】
以上のパラメータが決まった後、操作者の指示に従って治療計画装置501が自動で計算を行う(S106)。以下に、治療計画装置501が行う線量計算に係わる内容の詳細に関して説明する。
【0055】
初めに、治療計画装置501は、ビーム照射位置を決定する。照射位置は標的領域を覆うように設定される。照射方向(回転照射装置311とベッド407の角度)として複数の方向が指定されている場合は、各方向に関して同じ操作を行う。
【0056】
全ての照射位置が決定されると、治療計画装置501は照射量の最適化計算を開始する。各スポットへの照射量が、S105で設定された目標の処方線量に近づくように決定される。この計算では、照射位置ごとの照射量をパラメータとした目標線量からのずれを数値化した目的関数を用いる方法が広く採用されている。目的関数は線量分布が目標とする線量を満たすほど小さな値となるように定義されており、目標関数が最小となるような照射量を反復計算により探索することで、最適とされる照射量を算出する。このとき、ひとつの照射位置に照射可能な照射量の最小値を考慮して照射量を最適化する。反復計算が終了すると、最終的に各照射位置に必要な照射量が定まる。
【0057】
次に、治療計画装置501は演算処理装置605により、得られた照射位置と照射量を用いて、線量分布を計算する。必要があれば、計算した線量分布結果は、表示装置603に表示される。
【0058】
操作者は表示された線量分布を評価し、この線量分布が目標とする条件や、目標とする線量分布との一致度を満たしているか否かを判断する(S107、108)。
【0059】
線量分布を評価した結果、操作者が望ましくない分布であると判断した場合は(S108においてNO)、ステップ105に戻り、照射パラメータを設定し直す。変更すべきパラメータとしては、照射方向や処方線量がある。
【0060】
望ましい結果が得られたと判断した後(S108においてYES)、操作者は、同じ照射位置の照射を繰り返す回数であるリペイント回数と、リペイントをいくつかのグループにまとめるためのグループ数を指定する。リペイント回数及びグループ数の指定も、同様に入力装置602を用いて操作者が入力する。
【0061】
治療計画装置501は、指定されたリペイント数とグループ数に基づき、本発明の特徴である照射量の分割と、照射順序の決定と、分割した照射量のグループ化を実施して(S109)、エネルギー、照射量、照射位置を含むスポットデータをネットワークを通じてデータサーバ502に保存する(S110、S111)。
【0062】
照射量の分割と照射順序の決定について、図8図9及び図11を用いて説明する。
【0063】
図11は、実施例に係る治療計画装置501による照射量の分割とリペイント・グループへの割り当ての手順を説明するためのフローチャートである。
【0064】
まず、治療計画装置501は、照射量の分割と照射順序の決定を開始する(S301)。以下の説明では、リペイント数は4回、グループ数は2組で指定されているものとする。また、スポットあたりの照射量制限値は0.005~0.04とする。また、0.001の位までが有効桁であるケースを示す。
【0065】
照射量の分割と照射順序の決定は、レイヤー毎に実施する。まず、治療計画装置501は、第1レイヤーの照射量の分割と照射順序の決定を開始する(S302)。
【0066】
図8は、実施例に係る治療計画装置501による照射量の分割とリペイント・グループへの割り当てを示す図である。
【0067】
図8に示す例は、照射量最適化の結果、第1レイヤーについて5か所(A~E)に照射すべき照射量がそれぞれ0.120、0.012、0.280、0.197、0.023だった場合を表す。
【0068】
治療計画装置501は、照射位置毎に照射量を分割する(S303)。図8に示すように、照射位置Aには0.120が照射される。照射量を指定されたリペイント回数である4回で割ると、スポットあたり0.03が照射される。分割照射量0.03は照射量制限内の値である。
【0069】
次に、照射位置Bには0.012が照射される。照射位置Aと同様に照射量を指定されたリペイント回数である4回で割ると、スポットあたりの照射量が0.003となり、照射量制限値未満となるので、治療計画装置501は、照射回数を、指定された回数に最も近く照射量が制限値を超える2回とする。この場合、スポットあたりの分割照射量は0.006である。
【0070】
照射位置Cには0.280が照射される。照射位置Aと同様に照射量を指定されたリペイント回数の4回で割ると0.07となり、照射量制限の上限を超えてしまう。そこで、治療計画装置501は、照射量を超えた場合には、照射量が上限以下となる最小の自然数でさらに割る。ここでは2回で割れば上限値以下となるので2回で割る。この場合、スポットあたりの分割照射量は0.035である。各リペイントには、照射量0.035のスポットが二つずつ割り当てられる。
【0071】
照射位置Dには0.197が照射される。照射位置Aと同様に照射量を指定されたリペイント回数である4回で割ると照射量制限の上限を超えるため、さらに2で割る必要がある。また、0.001の位までの有効桁を考慮すると、0.197は4で割れないので0.05がひとつと0.049が三つになる。さらに0.049を0.025と0.024に分けることで、合計を0.197とできる。
【0072】
このように、できるだけ各照射量を等しくしつつ、合計値が照射すべき量と一致することが好ましい。この他の手法として、三つの0.05とひとつの0.047に分け、さらに二つずつに分けることも可能である。照射位置Eには0.017が照射される。4回のリペイント回数で割ると照射量制限の最小値を下回るので、3回に分け、さらに合計値が一致するようにスポットあたりの照射量を決定する。
【0073】
こうして照射位置毎に照射量を分割照射量に分割すると、治療計画装置501は、分割照射量を順に各リペイントに割り当てる(S304)。照射位置Bは、リペイント1、2のみ、照射位置Eは、リペイント1、2、3のみに割り当てられる。
【0074】
さらに、治療計画装置501は、各リペイントをグループに割り当てる(S305)。ここではグループ数として2組が指定されているので2組に分ける。グループ1にはリペイント1と2、グループ2にはリペイント3と4が属する。
【0075】
治療計画装置501は、次のレイヤーがあると判断した場合(S306においてNO)にはS302に戻り、次のレイヤーがないと判断した場合(S306においてYES)にはS307に移り、照射量の分割と照射順序の決定を完了する。
【0076】
こうして割り当てられたスポットを照射する順序の例を図9に示す。図9は、実施例に係る治療計画装置501による粒子線の照射順序を示す図である。
【0077】
最初にグループ1を照射する。リペイント1ではABCCDDEの順に照射する。照射位置CとDはそれぞれ2つの照射量が登録されているので2回ずつ照射する。次に、リペイント1と同様に、リペイント2を照射する。次に、グループ2のリペイント3を照射する。リペイント3では、照射位置Bに照射量がないので他の照射位置のみを照射する。最後にリペイント4を照射する。リペイント4では、さらに照射位置Eも照射しない。
【0078】
なお、各リペイント内における照射順序には様々なバリエーションがある。通常、近接したスポットを順に照射するが、走査電磁石の走査速度を考慮して短い時間で照射が完了する順序にすることもできるし、リペイント内で分割された照射量のみを先または後に照射して平均化効果を高めることもできる。
【0079】
また、ここでは、リペイント1と2をグループ1に割り当てたが、リペイント1と3、またはリペイント1と4を割り当てるなど、他の組み合わせとすることもできる。リペイント1が最も照射位置が多く、リペイントの回数が大きくなると照射位置が減るので、リペイントの順序を変更してグループに属する照射位置のばらつきを小さくすることでより大きな平均化効果を得ることができる。また、グループ内での照射順序は、リペイント番号が小さいほうからでも良いし、その逆など他の順序でも良い。
【0080】
なお、リペイント数とグループ数は、全てのレイヤーで共通でも良いし、個別に指定しても良い。また、一部のレイヤーについて照射量の分割と照射順序の決定を行い、他のレイヤーについては別の手法を適用してもよい。
【0081】
次に、標的に線量分布を形成する手順を説明する。照射を開始する前に、オペレータは照射対象である患者406をベッド407の上に乗せ、計画した位置に移動させる。中央制御装置312はメモリ604に登録されたエネルギー、照射位置、照射量の情報を読み出す。中央制御装置312はメモリ604から読み出したエネルギー、照射位置、照射量の情報を元に、照射制御システム314を介して照射野形成装置400内の走査電磁石401、402の励磁電流値を治療計画装置501が指定したものに設定する。
【0082】
オペレータが中央制御装置312に接続された操作卓にある照射開始ボタンを押すことで一連の照射を開始する。
【0083】
照射手順について図10を用いて説明する。図10は、実施例に係る粒子線治療システムSによる粒子線照射の手順を説明するためのフローチャートである。
【0084】
グループ番号i=1、スポット番号j=1から照射を開始する(S201)。照射制御システム314は、粒子ビーム加速装置304(本実施例ではシンクロトロン)を制御して、中央制御装置312から指定されたエネルギーまで陽子線を加速する(S202)。陽子線は、ライナック(前段加速器303)からシンクロトロンに入射され、シンクロトロン内を周回しながら粒子ビーム加速装置304により加速される。また、中央制御装置312は高エネルギービーム輸送系310を制御し、陽子線が照射野形成装置400へ到達できるように電磁石を励磁する。
【0085】
中央制御装置312は、最初の照射位置を照射するために走査電磁石401、402をそれぞれ励磁する(S203)。走査電磁石401、402の励磁が完了すると、中央制御装置312から照射制御システム314へ出射信号が出力される(S204)。照射制御システム314は高周波印加装置307を制御して陽子線に高周波を印加する。高周波を印加された陽子線は高エネルギービーム輸送系310を経て照射野形成装置400で走査され、最初の照射位置に達する。
【0086】
陽子線が照射野形成装置400を通過した照射量は線量モニタ403により計測されており、その量がスポットに規定された照射量に達すると中央制御装置312から照射制御システム314へ出射停止信号を送信する。照射制御システム314は出射停止信号を受信すると高周波印加装置307を停止し、陽子線の出射を停止する。
【0087】
陽子線の出射停止後、中央制御装置312はj=ns(nsはグループに含まれるスポット数)を満たすか否かを判定し(S205)、満たしていない(S205においてNO)と判定したら、スポット数jを1つインクリメントし、次の照射位置を照射するためS203へ戻り、中央制御装置312は走査電磁石401、402の励磁量を変更する。
【0088】
一方、j=nsを満たすと判定したら(S205においてYES)、S206において中央制御装置312はシンクロトロンを制御して減速する。次いで、中央制御装置312は、i=nr(nrはグループ数)を満たすか否かを判定し(S207)、満たしていない(S207においてNO)と判定したら、グループ数iを1つインクリメントし、S202において次のグループの照射に備える。
【0089】
一方、i=nrを満たすと判定したら(S207においてYES)、照射を完了する(S208)。
【0090】
図10のフローチャートに示す手順のように加速器を運転することで、グループ間に減速と加速による数秒間の照射時間を設けることができる。また、減速加速の代わりに一定時間、照射を停止するだけでも同様の効果を得ることができる。
【0091】
図10の制御を患者の呼吸に合わせることもできる。呼吸と共に標的が移動する場合、常に同じ呼吸位相(例えば息を吐いた呼気相)のみで粒子線を照射することにより、粒子線を照射するときの標的の位置誤差を小さくすることができる。また、標的の位置をX線透視などで直接計測して、標的が予め決めた位置に来たときのみ粒子線を照射することもできる。このような標的の動きと同期した照射をする場合、図10の制御と組み合わせると、ひとつのグループをひとつの呼吸周期で照射することができる。
【0092】
このように構成される本実施例によれば、治療計画装置501が、入力装置602が受け入れたパラメータに基づいて、標的に粒子線の照射位置(スポット)及び照射位置毎の粒子線の照射量を設定し、照射位置毎の照射量を予め定められた照射量の上限値及び下限値に基づいて分割した分割照射量を設定し、この分割照射量を複数のグループのいずれかに割り当てた治療計画情報を作成する。
【0093】
従って、本実施例によれば、リペイント照射を用いつつ照射量の平均化をより行うことが可能な治療計画装置501、粒子線治療システムS及びコンピュータプログラムを実現することができる。
【0094】
特に、本実施例の特徴である指定したリペイント回数に近い回数で照射するように照射量を分割し、分割した照射量をグループ化したデータを作成し、そのデータに従って照射することで、平均化効果を得ることができる。平均化効果により、標的の移動や、装置の誤差による線量分布の計画からの誤差を小さくし、計画通りの線量分布を標的に対して形成することができる。
【0095】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0096】
一例として、本実施例では、治療計画装置501が照射量を分割してグループ化したスポット情報をメモリ604、さらにはデータサーバ502に登録したが、データサーバ502には照射位置と照射量を登録し、粒子線治療システムSに含まれる中央制御装置312が照射量の分割とグループ化を実施してもよい。中央制御装置312が実施することで同じ効果を得ることができる。
【0097】
また、本実施例では、グループ化したスポットをレイヤー毎に照射する例を示したが、レイヤー毎に照射する必要はない。例えば最初に各レイヤーの一つ目のグループを照射し、次に各レイヤーの二つ目以降のグループを照射してもよい。レイヤーの切り替え時間が短い装置であれば、平均化効果を大きくすることができる。
【0098】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0099】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0100】
S…粒子線治療システム 312…中央制御装置 406…患者 406a…標的 501…治療計画装置 602…入力装置 603…表示装置 604…メモリ 605…演算処理装置(制御装置) 606…通信装置


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11