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特許7539652電力変換システム、ヒートポンプシステム、及び太陽光発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電力変換システム、ヒートポンプシステム、及び太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240819BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240819BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/48 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023170178
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2024-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206405
【弁理士】
【氏名又は名称】岸 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 尚也
(72)【発明者】
【氏名】日比野 寛
(72)【発明者】
【氏名】安田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】山際 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 稔之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】永井 栄寿
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/099280(WO,A1)
【文献】特開2004-357390(JP,A)
【文献】特開2017-220996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電源を接続可能なDC/DCコンバータと、
系統連系インバータと、
前記DC/DCコンバータと前記系統連系インバータとを接続したDCリンクと、を備え、
前記系統連系インバータのAC側の系統電圧の半周期内において、前記DCリンクに接続可能なDC負荷に応じて当該DCリンクの電圧が調整される、
電力変換システム。
【請求項2】
前記DCリンクの電圧は、当該DCリンクに接続可能なDC負荷の状態に応じて調整される、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記DCリンクは、前記DC負荷として、当該DCリンクの電圧によって出力が変化するDC負荷が接続可能である、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記DCリンクは、前記DC負荷として、電力変換器を含み、当該電力変換器の電力変換の状態に応じて、当該DCリンクの電圧が調整されるDC負荷が接続可能である、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記DCリンクは、前記DC負荷として、回転電機を可変速運転する前記電力変換器を含み、当該回転電機の運転状態に応じて、当該DCリンクの電圧が調整されるDC負荷が接続可能である、請求項4に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記DCリンクの電圧の調整は、前記系統電圧の半周期内において、当該DCリンクに接続可能な前記DC負荷に応じて調整する期間と、当該系統電圧に基づく電圧となるように調整する期間とを含む制御を有する、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記系統電圧に基づく電圧は、当該系統電圧の絶対値よりも大きい電圧である、請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記系統連系インバータは、前記DCリンクに接続可能な前記DC負荷に応じて、PWM動作、PAM動作、及び整流動作のいずれかで制御される、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項9】
前記DCリンクは、スイッチ回路を介して、前記DC負荷が接続可能である、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項10】
前記DCリンクに設けられたコンデンサより容量の大きいコンデンサが、前記DC負荷の入力側に、当該DC負荷に並列に設けられている、請求項9に記載の電力変換システム。
【請求項11】
前記スイッチ回路は、前記DCリンクの電圧が前記DC負荷に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される、請求項9に記載の電力変換システム。
【請求項12】
前記スイッチ回路は、前記DCリンクの電圧が前記DC負荷の入力電圧に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される、請求項9に記載の電力変換システム。
【請求項13】
前記DC/DCコンバータは、当該DC/DCコンバータに接続可能な前記DC電源と、前記DCリンクに接続可能な前記DC負荷とを、ダイオードを介して接続する、請求項9に記載の電力変換システム。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電力変換システムと、
前記DC負荷としてヒートポンプ機器と、
を備える、ヒートポンプシステム。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電力変換システムと、
前記DC電源として太陽電池と、
を備える、太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システム、ヒートポンプシステム、及び太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、発電装置が発電した直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であって、発電装置の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータ回路と、昇圧コンバータ回路の出力電圧を交流電力に変換して系統に連系するインバータ回路と、昇圧コンバータ回路の出力電力を変換して内部負荷に供給する降圧コンバータ回路と、制御器と、を備え、制御器は、発電装置の出力電力を昇圧コンバータ回路及び降圧コンバータ回路を介して内部負荷に供給する場合は、昇圧コンバータ回路の出力電圧を系統の交流電力の最大値より低い電圧値以下にする電力変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/099280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池などのDC電源からの電力を、DC負荷に供給しつつ、系統連系インバータにより交流化して電力系統に逆潮流させる機能を有する電力変換システムでは、DC負荷に適正な電力を供給し、DC負荷の運転効率を向上させることが求められている。
【0005】
本開示は、DC負荷に応じて、DC負荷の運転効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点の電力変換システムは、DC電源を接続可能なDC/DCコンバータと、系統連系インバータと、前記DC/DCコンバータと前記系統連系インバータとを接続したDCリンクと、を備え、前記系統連系インバータのAC側の系統電圧の半周期内において、前記DCリンクに接続可能なDC負荷に応じて当該DCリンクの電圧が調整される。これにより、DC負荷の運転効率が向上する。
第2の観点の電力変換システムは、第1の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクの電圧は、当該DCリンクに接続可能な前記DC負荷の状態に応じて調整される。これにより、DC負荷に印加される電圧を適正にできる。
第3の観点の電力変換システムは、第2の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクは、前記DC負荷として、当該DCリンクの電圧によって出力が変化するDC負荷が接続可能である。これにより、DC負荷の出力を適正にできる。
第4の観点の電力変換システムは、第2の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクは、前記DC負荷として、電力変換器を含み、当該電力変換器の電力変換の状態に応じて、当該DCリンクの電圧が調整されるDC負荷が接続可能である。これにより、電力変換器を含むDC負荷に印加される電圧を適正にできる。
第5の観点の電力変換システムは、第4の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクは、前記DC負荷として、回転電機を可変速運転する前記電力変換器を含み、当該回転電機の運転状態に応じて、当該DCリンクの電圧が調整されるDC負荷が接続可能である。これにより、回転電機を可変速運転する電力変換器を含むDC負荷に印加される電圧を適正にできる。
第6の観点の電力変換システムは、第1の観点乃至第5の観点のいずれか1つの電力変換システムであって、前記DCリンクの電圧の調整は、前記系統電圧の半周期内において、当該DCリンクに接続可能な前記DC負荷に応じて調整する期間と、当該系統電圧に基づく電圧となるように調整する期間とを含む制御を有する。これにより、DC負荷に過剰な電圧が印加されるのが抑制できる。
第7の観点の電力変換システムは、第6の観点の電力変換システムであって、前記系統電圧に基づく電圧は、当該系統電圧の絶対値よりも大きい電圧である。これにより、DCリンクの電圧の変動にかかわらず、系統連系インバータに必要な電圧が確保できる。
第8の観点の電力変換システムは、第1の観点乃至第7の観点のいずれか1つの電力変換システムであって、前記系統連系インバータは、前記DCリンクに接続可能な前記DC負荷に応じて、PWM動作、PAM動作、及び整流動作のいずれかで制御される。これにより、系統連系インバータの制御によりDC負荷に印加される電圧が適正にできる。
第9の観点の電力変換システムは、第1の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクは、スイッチ回路を介して、前記DC負荷が接続可能である。これにより、DC負荷に過剰な電圧が印加されることが抑制できる。
第10の観点の電力変換システムは、第9の観点の電力変換システムであって、前記DCリンクに設けられたコンデンサより容量の大きいコンデンサが、前記DC負荷の入力側に、当該DC負荷に並列に設けられている。これにより、DCリンクの電圧及びDC負荷の電圧の制御が容易になる。
第11の観点の電力変換システムは、第9の観点又は第10の観点の電力変換システムであって、前記スイッチ回路は、前記DCリンクの電圧が前記DC負荷に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される。これにより、DC負荷に過剰な電圧が印加されることが抑制できる。
第12の観点の電力変換システムは、第9の観点乃至第11の観点のいずれか1つの電力変換システムであって、前記スイッチ回路は、前記DCリンクの電圧が前記DC負荷の入力電圧に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される。これにより、スイッチ回路をオンしたときに過剰な電流が流れることが抑制できる。
第13の観点の電力変換システムは、第9の観点乃至第12の観点のいずれか1つの電力変換システムであって、前記DC/DCコンバータは、当該DC/DCコンバータに接続可能な前記DC電源と、前記DCリンクに接続可能な前記DC負荷とを、ダイオードを介して接続する。これにより、ダイオードがオン状態になると、電流経路での損失が低減される。
第14の観点のヒートポンプシステムは、第1の観点乃至第13の観点のいずれか1つに記載の電力変換システムと、前記DC負荷としてヒートポンプ機器と、を備える。これにより、別にDC/DCコンバータを設けることを要しない。
第15の観点の太陽光発電システムは、第1の観点乃至第13の観点のいずれか1つに記載の電力変換システムと、前記DC電源として太陽電池と、を備える。これにより、太陽電池を電力系統に連系させながら、DC負荷に印加される電圧を適正にできる発電システムを簡素な回路構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る電力変換システムの一例を示す図である。
図2】系統連系インバータを並列/逆潮流で動作させた場合において、DCリンク電圧と、電力系統のAC電圧及びAC電流との関係を説明する図である。(a)は、DCリンク電圧が330Vの場合、(b)は、DCリンク電圧が270Vの場合、(c)は、DCリンク電圧がAC電圧より低い部分を昇圧する調整を行った場合である。
図3】DC電源とDC/DCコンバータとの組をN組備えた電力変換システムを説明する図である。
図4】DC負荷をM個備えた電力変換システムを説明する図である。
図5】DC電源とDC/DCコンバータとの組をN組備え、且つDC負荷をM個備える電力変換システムを説明する図である。
図6】系統連系インバータの動作モードを説明する図である。
図7】並列/逆潮流において、DC負荷に給電する動作モードを説明する図である。
図8】DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値の変化によるDCリンク電圧目標値を説明する図である。(a)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より小さい場合、(b)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より大きいが、AC電圧のピーク電圧の絶対値より小さい場合、(c)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がAC電圧のピーク電圧の絶対値より大きい場合である。
図9】電圧マージンを加えた場合におけるDCリンク電圧目標値の変化を説明する図である。(a)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より小さい場合、(b)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より大きいが、交流電圧のピーク電圧の絶対値に電圧マージンを加えた値より小さい場合、(c)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がAC電圧のピーク電圧の絶対値に電圧マージンを加えた値より大きい場合である。
図10】並列/逆潮流において、DC負荷に給電しない動作モードを説明する図である。
図11】並列/逆潮流において、DC負荷に給電しない動作モードにおけるDCリンク電圧目標値を説明する図である。
図12】並列/順潮流において、DC電源と電力系統とからDC負荷に給電する動作モードを説明する図である。
図13】並列/順潮流において、電力系統からDC負荷に給電する動作モードを説明する図である。
図14】解列において、DC電源からDC負荷に給電する動作モードを説明する図である。
図15】解列において、DC電源からDC負荷に給電する動作モードにおけるDCリンク電圧目標値を説明する図である。(a)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より大きい場合、(b)は、DC/DCコンバータの出力電圧の下限値がDC負荷に基づくDCリンク電圧目標値より大きい場合である。
図16】第2の実施の形態の電力変換システムの一例を示す図である。
図17】DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値の変化によるDCリンク電圧目標値を説明する図である。(a)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より小さい場合、(b)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値がDC/DCコンバータの出力電圧の下限値より大きいが、交流電圧のピーク電圧の絶対値より小さい場合、(c)は、DC負荷に基づくDCリンク電圧目標値が交流電圧vacのピーク電圧の絶対値より大きい場合である。
図18】負荷スイッチによって生じる突入電流を抑制する手段を説明する図である。(a)は、突入電流が発生する場合、(b)は、突入電流を抑制した場合である。
図19】第2の実施の形態に係る電力変換システムの変形例である電力変換システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
(電力変換システム1)
図1は、第1の実施の形態に係る電力変換システム1の一例を示す図である。
電力変換システム1は、直流/直流コンバータ10と、直流リンク20と、系統連系インバータ30とを備える。以下では、直流/直流コンバータ10をDC/DCコンバータ10と、直流リンク20をDCリンク20と表記する。DCリンク20は、DC/DCコンバータ10と系統連系インバータ30とを接続する。DC/DCコンバータ10の出力側、及び系統連系インバータ30の入力側がDCリンク20である。DCリンク20には、コンデンサC1が設けられている。コンデンサC1の両端子間の電圧がDCリンク20の電圧であり、DCリンク電圧vdcと表記する。
【0009】
DC/DCコンバータ10の入力側には、直流電源40が接続されている。以下では、直流をDCと表記し、直流電源40をDC電源40と表記する。ここでは、DC電源40は、太陽電池(photovoltaic cell)であるとし、DC電源40の出力電圧をDC電源電圧vpvと表記する。DC/DCコンバータ10は、DC電源40が接続可能に構成されている。
【0010】
DCリンク20には、直流負荷50が接続されている。以下では、直流負荷50をDC負荷50と表記する。DC負荷50は、DCリンク20から電力が供給される。DCリンク20は、DC負荷50が接続可能に構成されている。
【0011】
系統連系インバータ30の出力側には、開閉器60を介して、電力系統100が接続されている。電力系統100は、単相交流である。以下では、交流をACと表記する。電力系統100の系統電圧である交流電圧をAC電圧vac(瞬時値)と、交流電圧の実効値をAC電圧実効値vac rmsと、交流電圧のピーク電圧の絶対値をACピーク電圧|vac peak|と表記する。系統連系インバータ30と開閉器60との間の一方の線路にリアクトルL2が、他方の線路にリアクトルL3が設けられている。系統連系インバータ30と開閉器60との間の二本の線路の間に、コンデンサC3が設けられている。リアクトルL2、L3及びコンデンサC3は、系統連系インバータ30の動作によって生じる高周波成分を除去するフィルタとして作用する。コンデンサC3は、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサなどの無極性のコンデンサである。
【0012】
系統連系インバータ30を挟んで、DCリンク20側をDC側(直流側)、電力系統100側をAC側(交流側)と表記する。
【0013】
DC/DCコンバータ10は、電圧変換回路である。DC/DCコンバータ10は、DC電源40に接続され、DC電源電圧vpvを入力電圧とし、異なる電圧に変換して出力電圧とする。DC/DCコンバータ10の回路構成は、DC/DCコンバータ10の入力電圧、DC/DCコンバータ10の出力電力、DC/DCコンバータ10の仕様などに応じて決められる。DC/DCコンバータ10は、入力電圧を昇圧して出力電圧とする昇圧回路、入力電圧を降圧して出力電圧とする降圧回路、入力電圧を昇圧又は降圧して出力電圧とする昇降圧回路などの回路構成にできる。昇圧回路は昇圧チョッパ回路と、降圧回路は降圧チョッパ回路と、昇降圧回路は昇降圧チョッパ回路と表記されることがある。DC/DCコンバータ10は、電力の向きが単方向、双方向のいずれであってもよい。ただし、DC電源40が蓄電池又はキャパシタのみである場合、DC電源40が接続されるDC/DCコンバータ10は、双方向であることが望ましい。DC/DCコンバータ10の回路構成は、後述する。
【0014】
系統連系インバータ30は、DCリンク20と電力系統100との間で電力を授受する電力変換回路である。系統連系インバータ30は、順潮流、逆潮流、及び解列の動作を行う。順潮流は、電力系統100のAC電力をDC電力に変換して、DCリンク20に供給する。逆潮流は、DCリンク20のDC電力をAC電力に変換して電力系統100に供給する。解列は、DCリンク20と電力系統100とを切り離し、DCリンク20側と、電力系統100とが、独立して動作する。系統連系インバータ30の回路構成は、後述する。
【0015】
DC電源40は、DC電力を出力する電源である。DC電源40は、前述した太陽電池、燃料電池、発電機のPWM(Pulse Width Modulation)コンバータの直流部、蓄電池、キャパシタなどである。DC電源の種類や状態に応じて、DC電源40の供給する電圧、電力が変動する。また、DC電源40の供給する電圧、電力は、DC電源の運転状況に応じて変動する。DC電源40に、コンデンサC2が並列に接続されていてもよい。コンデンサC2は、DC電源電圧vpvの変動を抑制する。DC電源40とコンデンサC2とをまとめてDC電源部としてもよい。コンデンサC2は、電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサなどである。さらに、DC電源40と並列に、直接または充放電制御回路を介して、蓄電池やキャパシタが接続されてもよい。蓄電池やキャパシタは、DC電源の電力の変動を抑制する。DC電源40と蓄電池やキャパシタとをまとめてDC電源部としてもよい。
【0016】
DC負荷50は、DC電力を受電することで運転される負荷である。DC負荷50にコンデンサC4が並列に設けられていてもよい。コンデンサC4は、DC負荷50に給電される電圧の変動を抑制する。コンデンサC4は、電解コンデンサやセラミックコンデンサなどである。DC負荷50とコンデンサC4とをまとめて、DC負荷(又は、DC負荷部)としてもよい。DC負荷50を運転するとは、DC負荷50を動作させると表記してもよい。DC負荷50に電力が供給されている、DC負荷50に電圧が印加されているなどと表記してもよい。DC負荷50は、空調機、給湯器、冷凍機器、冷蔵庫、ショーケースなどに用いられるヒートポンプ機器(ヒートポンプシステム)、換気装置、EV(Electric Vehicle)充電器、ヒータ、直流モータなどである。DC負荷50は、回転電機を可変速運転する電力変換器を含んでもよい。DC負荷50は、入力電圧であるDCリンク20の電圧によって出力が変化するものであってもよい。このようなDC負荷50には、電力変換器を備えず、入力電圧によって出力が変わるヒータ、直流モータなどがある。例えば、ヒータは入力電圧によって出力される熱量や温度が変わり、直流モータは入力電圧によって回転数やトルクが変わる。DC負荷50に電力を供給することをDC負荷50に給電すると表記する。
【0017】
開閉器60は、AC側とDC側とを切り離す。開閉器60が閉(オン)であると、AC側とDC側とが接続され、DC側とAC側とが並列に運転される。開閉器60が開(オフ)であると、AC側とDC側とが遮断され、DC側とAC側とが独立に運転される。開閉器60を開(オフ)にすることで、上記した解列が確実に行われる。電力変換システム1が並列に運転される場合には、開閉器60は閉(オン)である。
【0018】
DCリンク電圧vdcは、後述するように、AC電圧vacの半周期内において調整される。よって、コンデンサC1は、DCリンク電圧vdcが調整されやすい容量に設定されることがよい。例えば、DC/DCコンバータ10や系統連系インバータ30の動作によって、生じるリンギングなどのノイズ成分が抑制できればよい。コンデンサC1は、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサなどである。
【0019】
(DC/DCコンバータ10の回路構成)
DC/DCコンバータ10は、昇降圧コンバータである。DC/DCコンバータ10は、スイッチング素子Sw1、Sw2と、ダイオードD1、D2と、リアクトルL1とを備える。スイッチング素子Sw1、Sw2は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であって、コレクタ端子、エミッタ端子、及び制御端子(ゲート端子)を備える3端子素子である。ダイオードD1、D2は、アノード端子、及びカソード端子を備える2端子素子である。直列接続されたスイッチング素子Sw2とダイオードD2とが、DC電源40に並列接続されている。スイッチング素子Sw2のコレクタ端子が、DC電源40の+側に接続され、スイッチング素子Sw2のエミッタ端子がダイオードD2のカソード端子に接続されている。ダイオードD2のアノード端子がDC電源40の-側に接続されている。
【0020】
直列接続されたダイオードD1とスイッチング素子Sw1とが、DCリンク20に並列接続されている。スイッチング素子Sw1のエミッタ端子がDCリンク20の-側に接続され、スイッチング素子Sw1のコレクタ端子がダイオードD1のアノード端子に接続されている。ダイオードD1のカソード端子がDCリンク20の+側に接続されている。スイッチング素子Sw2とダイオードD2とが接続された接続点(スイッチング素子Sw2のエミッタ端子とダイオードD2のカソード端子との接続点)と、ダイオードD1とスイッチング素子Sw1とが接続された接続点(ダイオードD1のアノード端子とスイッチング素子Sw1のコレクタ端子との接続点)との間に、リアクトルL1が接続されている。ダイオードD2のアノード端子とスイッチング素子Sw1のエミッタ端子とが接続されている。なお、端子間は、直接接続されていなくともよく、配線などを介して接続されていてもよい。スイッチング素子Sw1、Sw2は、IGBT以外のMOSトランジスタなどであってもよい。
【0021】
スイッチング素子Sw1、Sw2の制御端子に供給される制御信号により、スイッチング素子Sw1、Sw2のオンとオフとが制御される。DC/DCコンバータ10は、スイッチング素子Sw1、Sw2のオンとオフとの組み合わせによって、昇圧回路、又は降圧回路として機能する。DC/DCコンバータ10は、スイッチング素子Sw2をオンに保持し、スイッチング素子Sw1をPWM制御することにより、昇圧回路となる。DC/DCコンバータ10は、スイッチング素子Sw1をオフに保持し、スイッチング素子Sw2をPWM制御することにより、降圧回路となる。
【0022】
(系統連系インバータ30)
系統連系インバータ30は、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnと、ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnとを備える。スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnは、上述したスイッチング素子Sw1、Sw2と同様の素子である。ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnは、上述したダイオードD1、D2と同様の素子である。
【0023】
直列接続されたスイッチング素子Sap、Sanと、直列接続されたスイッチング素子Sbp、Sbnとが、並列にDCリンク20に接続されている。スイッチング素子Sapは、コレクタ端子がDCリンク20の+側に接続され、エミッタ端子がスイッチング素子Sanのコレクタ端子に接続されている。スイッチング素子Sanのエミッタ端子は、DCリンク20の-側に接続されている。同様に、スイッチング素子Sbpは、コレクタ端子がDCリンク20の+側に接続され、エミッタ端子がスイッチング素子Sbnのコレクタ端子に接続されている。スイッチング素子Sbnのエミッタ端子は、DCリンク20の-側に接続されている。ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnは、いわゆる帰還ダイオードである。ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnは、同じ符号のスイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnに逆並列に接続されている。
【0024】
スイッチング素子Sapのエミッタ端子とスイッチング素子Sanのコレクタ端子との接続点がリアクトルL2及び開閉器60を介して、電力系統100の一方の線路に接続されている。スイッチング素子Sbpのエミッタ端子とスイッチング素子Sbnのコレクタ端子との接続点がリアクトルL3及び開閉器60を介して、電力系統100の他方の線路に接続されている。
【0025】
スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnの制御端子に供給される制御信号により、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnのオンとオフとが制御される。順潮流において、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnは、電力系統100からDCリンク20に電力が供給されるように制御される。逆潮流において、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnは、DCリンク20から電力系統100に電力が供給されるように制御される。開閉器60が開である解列では、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnは、すべてオフに制御される。
【0026】
次に、電力変換システム1における制御について説明する。
図1に示したように、DC負荷50は、DCリンク20に接続され、DCリンク20から給電される。DC負荷50に印加される電圧は、DCリンク電圧vdcである。DCリンク電圧vdcは、DC負荷50の運転が適正に維持される電圧であることを要す。DC負荷50は、DC電源40から給電される場合と、電力系統100から系統連系インバータ30を介して給電される場合と、DC電源40及び電力系統100の両方から給電される場合とがある。いずれの場合においても、DC負荷50の運転が適正に維持されるように、DCリンク電圧vdcが調整される。DCリンク20に接続可能なDC負荷50に応じてDCリンク電圧vdcが調整される。付言すれば、DCリンク20に接続されたDC負荷50に応じてDCリンク電圧vdcが調整される。
【0027】
図2は、系統連系インバータ30を並列/逆潮流で動作させた場合において、DCリンク電圧vdcと、電力系統100のAC電圧vac及びAC電流iacとの関係を説明する図である。ここでは、AC電圧実効値vac rmsを200Vとする。図2(a)は、DCリンク電圧vdcが330Vの場合、図2(b)は、DCリンク電圧vdcが270Vの場合、図2(c)は、DCリンク電圧vdcがAC電圧vacより低い部分を昇圧する調整を行った場合である。図2(a)、(b)、(c)において、上側にDCリンク電圧vdc、AC電圧vac、下側にAC電流iacを示している。横軸は、時間(秒)、縦軸は、上側のDCリンク電圧vdc、AC電圧vacでは電圧(V)、下側のAC電流iacでは、電流(A)である。図2(a)、(b)、(c)には、AC電流iacの総合電流歪み率(%)を示している。図2(a)、(b)、(c)は、シミュレーションにより求めた。
【0028】
AC電圧実効値vac rmsが200Vであると、ACピーク電圧|vac peak|は、約283Vである。
図2(a)に示す、DCリンク電圧vdc330Vは、ACピーク電圧|vac peak|の約283Vを超えている。この場合、AC電流iacの総合電流歪み率は3.0%と低く、AC電流iacに歪みが生じることが抑制されている。
【0029】
図2(b)に示す、DCリンク電圧vdc270Vは、ACピーク電圧|vac peak|の約283V未満である。この場合、AC電圧vacのピーク電圧vac peak近傍において、AC電流iacが、高周波電流を含んで歪んでいる。総合電流歪み率は25.3%と高い。
【0030】
図2(b)に示したように、AC電流iacに歪みが生じたのは、ACピーク電圧|vac peak|近傍においてである。そこで、図2(c)に示すように、DCリンク電圧vdcがAC電圧vacより低い部分において、DCリンク電圧vdcを昇圧することで、AC電流iacの高周波電流が抑制される。総合電流歪み率は、図2(a)と同じ3.0%と低くなる。図2(c)に示すように、DCリンク電圧vdcをAC電圧の半周期内において、変化(又は変動)させることを、DCリンク電圧vdcを調整すると表現する。図2(c)に示すように、DCリンク電圧vdcを調整すると、図2(a)のDCリンク電圧vdcを330Vにする場合に比べ、DCリンク電圧vdcが低下し、損失が低減する。
【0031】
図2(a)、(b)、(c)では、DCリンク20から給電されるDC負荷50に印加される電圧について説明していない。例えば、図2(a)のように、DCリンク電圧vdcを330Vとすると、DC負荷50に過剰な電圧が印加されるおそれがある。一方、図2(b)のDCリンク電圧vdc270VがDC負荷50への給電に適した電圧であるとすると、上述したように、AC電流iacに歪みが発生する。そこで、図2(c)に示したように、DCリンク電圧vdcのAC電圧vacより低い部分を昇圧する調整を行うことにより、DC負荷50に過剰な電圧が印加される期間が短くなり、且つ、AC電流iacに歪みが発生することが抑制される。以下において、DC負荷50に印加される電圧をDC負荷電圧vdc loadと表記する。
【0032】
電力変換システム1が並列/逆潮流で動作している場合、DCリンク電圧vdcは、DC/DCコンバータ10の出力電圧である。DCリンク電圧vdcは、DC/DCコンバータ10により制御される。DCリンク電圧vdcは、DC/DCコンバータ10の出力電圧で制御してもよく、DC/DCコンバータ10からの出力電流(又は出力電力)で制御してもよい。DC/DCコンバータ10の出力電圧でDCリンク電圧vdcを制御する場合を出力電圧制御モードと表記し、DC/DCコンバータ10からの出力電流(又は出力電力)でDCリンク電圧vdcを制御する場合を出力電流制御モード(出力電力制御モード)と表記する。
以下において、電力変換システム1の制御について詳細に説明する。
【0033】
(出力電圧制御モード)
出力電圧制御モードでは、DCリンク電圧vdcは、式(1)に従って制御される。
【0034】
【数1】
【0035】
DCリンク電圧目標値v dcは、DCリンク電圧vdcを制御する際における目標値である。DCリンク電圧vdcは、DCリンク電圧目標値v dcに近づけるように制御される。DCリンク電圧目標値v dcは、系統連系インバータ30のAC側におけるAC電圧(系統電圧)の半周期よりも(十分に)短い周期で変化する。DCリンク電圧vdcは、DCリンク電圧目標値v dcであるとしてよい。
【0036】
DCリンク電圧目標値v dcは、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadと、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invと、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitの内の最大値に設定される。以下では、上記の用語を符号のみで説明することがある。他の場合も同様とする。系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invは、系統電圧によって決まる電圧である。
【0037】
dc loadは、DC負荷50の構成および状態に応じて決定される。例えば、DC負荷50の状態に応じてDC負荷50の損失が低減するように、v dc loadを決定してもよい。DC負荷50が電力変換器を含む場合、電力変換器の電力変換の状態に応じて、v dc loadを決定してもよい。例えば、電力変換器のデューティ比、変調率、電圧利用率、出力電力、出力電流などの電力変換の状態に応じて、v dc loadを決定してもよい。これにより、電力変換器を含むDC負荷50に印加される電圧を適正にできる。
【0038】
DC負荷50が回転電機を可変速運転する電力変換器を含む場合、回転電機の運転状態に応じて、v dc loadを決定してもよい。例えば、回転電機の回転数に略比例するように、v dc loadを決定してもよい。これにより、回転電機を可変速運転する電力変換器を含むDC負荷50に印加される電圧を適正にできる。
【0039】
DC負荷50がEVなど蓄電池を含む場合、蓄電池の種類、蓄電池の状態(SOC(State Of Charge)、SOH(State of Health))、充電時間などに応じて、v dc loadを決定してもよい。DC負荷50がヒータや直流モータのような、電圧によって出力が変化する負荷の場合、出力に応じてv dc loadを決定してもよい。
【0040】
dc invは、系統連系インバータ30と連系する系統の瞬時値であるAC電圧vac、及び系統連系インバータ30の動作状態に応じて決定される。例えば、系統連系インバータ30が並列動作である時においては、AC電圧vacの絶対値|vac|をv dc invとして決定してもよい。系統連系インバータ30が並列/逆潮流である時において、系統電圧vacの絶対値|vac|に電圧マージンvmarginを加えた値(|vac|+vmargin)をv dc invとして決定してもよい。vmarginをDC負荷50の動作状態に応じて決定してもよい。消費電力の変動が大きい動作状態に対するvmarginを、消費電力の変動が小さい動作状態に対するvmarginより大きく決定してもよい。より具体的に説明すると、回転電機を可変速運転する電力変換器を含むDC負荷50において、回転電機の始動時、加速時、又は減速時に対するvmarginを、回転電機の定速運転時又は静止時(電力変換器の停止時)に対するvmarginより大きく決定してもよい。
【0041】
conv lowlimitは、DC/DCコンバータ10の構成によって決まる値である。例えば、DC/DCコンバータ10が昇圧回路であれば、vconv lowlimitは、昇圧回路の入力電圧である。DC/DCコンバータ10が降圧回路であれば、vconv lowlimitは、原理的には“0V”になる。
【0042】
式(1)に示すように、DCリンク電圧目標値v dcは、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadと、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invと、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitの内の最大値に設定される。DCリンク電圧vdc(DCリンク電圧目標値v dc)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadに基づいて設定されることになる。換言すれば、DCリンク電圧vdcは、DC負荷50に応じて調整される。上述したように、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadは、DC負荷50の状態によって決定される。よって、DCリンク電圧vdc(DCリンク電圧目標値v dc)は、DC負荷50の状態に応じて調整されるとしてもよい。
【0043】
dcが、v dc load未満であると、DC負荷50に適正な電圧が印加されない。vdcが、v dc inv未満であると、前述したように、AC電流iacに歪みが発生する。vdcは、DC/DCコンバータ10の出力電圧であるので、vdcは、vconv lowlimit未満に設定できない。
【0044】
conv lowlimitがv dc load及びv dc invより小さい場合(v dc load、v dc inv>vconv lowlimit)、AC電圧の半周期内において、v dc loadが、v dc invより常に大きい条件(v dc load≧v dc inv)では、v dcは、v dc loadとなる(v dc=v dc load)。v dc invがv dc loadより大きく(v dc inv>v dc load)なる期間がある条件では、v dcは、AC電圧の半周期内において、周期的に変動するように調整される。
【0045】
式(1)に示す条件でv dcを調整すれば、DC負荷50に合わせた電圧でDC負荷50を運転しながら、DC電源40からの電力を電力系統100へ逆潮流できる。v dcの調整により、運転に適した電圧(適正な電圧)がDC負荷50に印加される。なお、先行技術文献1には、発電装置の出力電圧を昇圧する昇圧コンバータ回路と、昇圧コンバータ回路の出力電力を変換して内部負荷に供給する降圧コンバータ回路とを設けることが記載されている。図1に示した電力変換システム1は、先行技術文献1に記載された昇圧コンバータ回路と降圧コンバータ回路とを1つに共通化したことにより、簡素な回路構成になる。そして、電力変換システム1は、先行技術文献1における内部負荷に供給する降圧コンバータ回路を備えないことから、DC負荷50に印加する電圧を調整するコンバータによって発生する電力損失が無くせる。
【0046】
(出力電流制御モード(出力電力制御モード))
DC/DCコンバータ10は、入力電圧の検出値又は推定値と、出力電圧の目標値であるv dcとに基づいて動作するように構成されている。DC/DCコンバータ10は、これらの値に加えて、出力電流に相当する値に応じて動作するように構成されてもよい。DC/DCコンバータ10の出力電流に相当する値は、DC負荷50に流れる電流(又は電力)に相当する値や、系統連系インバータ30に流れる電流(又は電力)に相当する値に基づいて決定されてもよい。これらの値は、センサなどにより検出された検出値でも、推定値でも、目標値でもよい。DC/DCコンバータ10の出力電流に相当する値に応じて動作するようにDC/DCコンバータ10を構成することで、電流変動による出力電圧であるvdcの変動を抑制できる。なお、検出値とは、実測された値であり、推定値とは、DC/DCコンバータ10の構成に基づいて推定された値である。目標値とは、DC/DCコンバータ10を動作させたときに近づけたい値である。
【0047】
出力電流制御モード(出力電力制御モード)では、DC/DCコンバータ10の出力電流iconv(又は出力電力Pconv)を、目標値i conv(又はP conv)に制御する。i conv(又はP conv)は、DC電源40、DC負荷50、及び系統連系インバータ30のいずれか、又はいくつかをまとめた動作状態に応じて決定される。例えば、DC電源40が太陽電池である場合、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御時の太陽電池からの出力電流をi convとしてもよい。出力電流制御モード(出力電力制御モード)でDC/DCコンバータ10を制御することで、DC負荷50を運転する電流(電力)が不足することが抑制される。出力電流制御モード(出力電力制御モード)でDC/DCコンバータ10を制御することで、系統連系インバータ30のDC側からAC側に供給される電流(電力)が不足することが抑制される。
【0048】
(変形例1の電力変換システム1A)
電力変換システム1の変形例1として、DC電源40とDC/DCコンバータ10との組を複数備える電力変換システム1Aを説明する。
図3は、DC電源40とDC/DCコンバータ10との組をN組備えた電力変換システム1Aを説明する図である。Nは、2以上の整数である。N個のDC/DCコンバータ10を区別する場合には、DC/DCコンバータ10-1~10-Nと表記する。N個のDC電源40を区別する場合には、DC電源40-1~40-Nと表記する。
【0049】
DC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードで制御する場合における、DCリンク電圧目標値v dcは、式(2)で表される。
【0050】
【数2】
【0051】
1台のDC/DCコンバータ10のみを出力電圧制御モードで制御するのが望ましい。出力電圧の下限値vconv lowlimitが最も大きいDC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードで制御することが好ましい。vconv lowlimitが最大でないDC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードとすると、他のDC/DCコンバータ10の出力電圧をこの下限値に合わせることが必要になり、精度が問題になる。一方、vconv lowlimitが最大であるDC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードで駆動すれば、他のDC/DCコンバータ10は、下限値を合わせることを要しない。
【0052】
変形例1の電力変換システム1Aを出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御させる場合には、全てのDC/DCコンバータ10を出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御すればよい。
【0053】
(変形例2の電力変換システム1B)
電力変換システム1の変形例2として、DC負荷50を複数備える電力変換システム1Bを説明する。
図4は、DC負荷50をM個備えた電力変換システム1Bを説明する図である。Mは、2以上の整数である。M個のDC負荷50を区別する場合は、DC負荷50-1~50-Mと表記する。
【0054】
DC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードで制御する場合における、DCリンク電圧目標値v dcは、式(3)で表される。
【0055】
【数3】
【0056】
変形例2の電力変換システム1Bを出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御させる場合には、全てのDC/DCコンバータ10を出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御すればよい。
【0057】
(変形例3の電力変換システム1C)
電力変換システム1の変形例3として、DC電源40とDC/DCコンバータ10との組を複数備え、且つDC負荷50を複数備える電力変換システム1Cを説明する。
図5は、DC電源40とDC/DCコンバータ10との組をN組備え、且つDC負荷50をM個備える電力変換システム1Cを説明する図である。M、Nは、2以上の整数である。N個のDC/DCコンバータ10を区別する場合は、DC/DCコンバータ10-1~10-Nと表記する。N個のDC電源40を区別する場合は、DC電源40-1~40-Nと表記する。M個のDC負荷50を区別する場合は、DC負荷50-1~50-Mと表記する。
【0058】
DC/DCコンバータ10を出力電圧制御モードで制御する場合における、DCリンク電圧目標値v dcは、式(4)で表される。
【0059】
【数4】
【0060】
変形例3の電力変換システム1Cを出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御させる場合には、全てのDC/DCコンバータ10を出力電流制御モード(出力電力制御モード)で制御すればよい。
【0061】
DC/DCコンバータ10として、図1では、昇降圧コンバータを示した。DC/DCコンバータ10は、DAB(Dual Active Bridge)コンバータ、フライバックコンバータ、又はこれらの組み合わせなど、公知のDC/DCコンバータであってよい。昇圧のみの場合には、DC/DCコンバータ10は、昇圧コンバータであってよく、降圧のみの場合には、降圧コンバータであってよい。
【0062】
(DCリンク電圧目標値v dcの決定方法)
DCリンク電圧vdcは、DC/DCコンバータ10の出力である。DCリンク電圧vdcは、DCリンク電圧目標値v dcにより制御される。出力電圧制御モードにおいては、DC/DCコンバータ10は、DC負荷50と系統連系インバータ30との状態を取得して、DCリンク電圧目標値v dcを決定する。DC/DCコンバータ10を複数備える場合には、出力電圧制御モードのDC/DCコンバータ10が、DC負荷50の状態と系統連系インバータ30の状態と他のDC/DCコンバータの状態とを取得して、DCリンク電圧目標値v dcを決定する。
【0063】
DC/DCコンバータ10とDC電源40とが1組、且つDC負荷50が1個である電力変換システム1において、具体的に説明する。DC/DCコンバータ10は、DC負荷50から取得するDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadと、系統連系インバータ30から取得する系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invとから、DCリンク電圧目標値v dcを決定する。なお、DC/DCコンバータ10は、DC負荷50からv dc loadを取得してもよく、v dc loadを決定するために必要な状態を取得してもよい。v dc loadを決定するために必要な状態とは、例えば、電力変換器の変調率や、電力変換器が可変速運転される回転電機を含む場合には、回転電機の回転数や出力電力などである。回転電機の回転数や出力電力などは、検出値でも、推定値でも、目標値でもよい。
また、DC/DCコンバータ10は、系統連系インバータ30からv dc invを取得してもよく、v dc invを決定するために必要な状態を取得してもよい。v dc invを決定するために必要な状態とは、例えば、電力系統のAC電圧vacなどである。
【0064】
別に設けられた制御器が、DC負荷50からv dc load又はv dc loadを決定するために必要な状態を取得し、系統連系インバータ30からv dc inv又はv dc invを決定するために必要な状態を取得するように構成してもよい。この場合、制御器が出力電圧モードのDC/DCコンバータ10を操作する。
【0065】
制御器は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータ(又は、マイクロコンピュータ)として構成されたものでよい。ROMには、不揮発性の書き換え可能なメモリを含む。制御器は、ROMに蓄積されたプログラムがRAMに展開されて実行されることで動作する。制御器は、ASICなどで構成されていてもよい。
【0066】
なお、DC負荷50を複数個備える電力変換システム1B、1Cでは、DC負荷50のそれぞれから、v dc load又はv dc loadを決定するために必要な状態を取得するようにすればよい。DC/DCコンバータ10を複数個備える電力変換システム1A、1Cでは、出力電圧制御モードのDC/DCコンバータ10が他のDC/DCコンバータ10の状態を取得するようにすればよい。DC/DCコンバータ10の状態とは、例えば、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitである。
【0067】
(系統連系インバータ30の動作モード)
これまで、系統連系インバータ30は並列/逆潮流の場合を説明したが、並列/順潮流の場合、及び解列を含めて、電力変換システム1の動作を詳細に説明する。
まず、電力変換システム1において、系統連系インバータ30の動作モードを説明する。
図6は、系統連系インバータ30の動作モードを説明する図である。図6において、左側から、電力系統100との接続状態、系統連系インバータ30の動作モード、前提条件を示している。
【0068】
並列/逆潮流において、系統連系インバータ30は、PAM(Pulse Amplitude Modulation)動作又はPWM動作を行う。
PAM動作とは、系統連系インバータ30を構成する4個のスイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnの内2個のスイッチング素子(例えば、スイッチング素子Sap、Sbnの場合と、スイッチング素子San、Sbpの場合)がオンとなり、他の2個のスイッチング素子がオフで維持される動作であって、vacのゼロクロス近傍又は動作モード切替時にオンとオフが切り替えられる(スイッチングする)動作である。
【0069】
PAM動作は、DCリンク電圧目標値v dcが系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invと一致し、DCリンク電圧vdcと交流電圧vacの絶対値|vac|との差の絶対値|(vdc-|vac|)|が、逆潮流時に許容できる系統連系インバータ30の出力電圧と系統電圧vacとの電圧差Δvacより小さい場合に用いられる。
【0070】
PWM動作は、系統連系インバータ30のスイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnのスイッチングを繰り返す動作である。
【0071】
並列/順潮流において、系統連系インバータ30は、全波整流動作又はPWM整流動作を行う。
全波整流動作は、系統連系インバータ30において、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnをオフに維持し、ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnにて整流する動作である。また、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnが、逆方向にも電流を流せるモノポーラ素子である場合には、ダイオードDap、Dan、Dbp、Dbnが順バイアスになるタイミングに一致させて、スイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnをオンにする同期整流で動作させてもよい。全波整流動作、及び同期整流動作が、整流動作の一例である。
【0072】
PWM整流動作は、系統連系インバータ30のスイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnのスイッチングを繰り返す動作である。順潮流する電力品質を優先して制御する場合には、順潮流する電流値、及び、電流と電圧との位相差を制御して行う。また、DCリンク電圧vdcを優先して制御してもよい。
【0073】
解列において、系統連系インバータ30のスイッチング素子Sap、San、Sbp、Sbnは、オフに維持される。
【0074】
(電力変換システム1の動作モード)
(1)並列/逆潮流において、DC負荷50に給電する動作モード
DC側からAC側に電力を供給する並列/逆潮流において、DC負荷50に給電する動作モードを説明する。以下では、DC/DCコンバータ10が1個、DC負荷50が1個の場合を説明する。
【0075】
図7は、並列/逆潮流において、DC負荷50に給電する動作モードを説明する図である。上側に電力変換システム1を示し、下側にDC/DCコンバータ10の動作、及び系統連系インバータ30の動作を示す。ここでは、DC/DCコンバータ10は、出力電圧制御モードで駆動されている。
【0076】
図7の上側の電力変換システム1に、電力の流れを矢印で示す。DC電源40から電力系統100とDC負荷50とに電力が供給されている。図7の下側に示すDC/DCコンバータ10の出力であるDCリンク電圧目標値v dcは、式(1)に示したように、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadと、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invと、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitとの大小関係によって決まる。
【0077】
dc loadが、v dc inv、及びvconv lowlimitより大きい場合には、v dcは、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadになる。v dcがv dc invより大きいので、系統連系インバータ30は、PWM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0078】
dc invが、v dc load、及びvconv lowlimitより大きい場合には、v dcは、v dc invになる。v dcがv dc invであるので、系統連系インバータ30は、PAM動作又はPWM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0079】
conv lowlimitが、v dc load、及びv dc invより大きい場合には、v dcは、vconv lowlimitになる。v dcがvconv lowlimitであるので、系統連系インバータ30は、PWM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0080】
DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadは、DC負荷50の種類や運転状態によって変化する。DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadの変化によって、DCリンク電圧目標値v dcが変化する例を説明する。
【0081】
図8は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadの変化によるDCリンク電圧目標値v dcを説明する図である。図8(a)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより小さい場合、図8(b)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより大きいが、AC電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|より小さい場合、図8(c)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがAC電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|より大きい場合である。縦軸は、電圧(V)、横軸は時間(秒)である。時間の進む順に時刻t0から時刻t6とする。時刻t0は0秒、時刻t3は、0.01秒、時刻t6は0.02秒である。図8(a)、(b)、(c)では、50HzのAC(交流)の1周期を示している。時刻t0から時刻t6までの期間が、AC電圧vacの1周期である。時刻t0から時刻t3までの期間、及び時刻t3から時刻t6までの期間が、AC電圧vacの半周期である。1周期は、2つの半周期の繰り返しで構成されている。以下では、時刻t0から時刻t3の半周期のみを説明する。他の場合も同様である。
【0082】
系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invをAC電圧vacの絶対値|vac|とした(v dc inv=|vac|)。以下では、AC電圧vacの絶対値|vac|を交流電圧絶対値|vac|と表記する。
【0083】
図8(a)、(b)、(c)において、DCリンク電圧目標値v dcを太い実線、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadを点線、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitを破線、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc inv(=AC電圧vacの絶対値|vac|)を細い実線で表記する。なお、重なる部分は、ずらして表記する。
【0084】
図8(a)は、v dc loadがvconv lowlimitより小さい場合である。図8(a)において、時刻t1、t2、t4、t5は、vconv lowlimitとv dc inv(=|vac|)とが交差する時刻である。
【0085】
時刻t0から時刻t1までの期間では、vconv lowlimitが、v dc load及びv dc inv(=|vac|)のいずれより大きい。v dcは、vconv lowlimitとなる。v dc inv(=|vac|)は、v dcより小さい。よって、系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|)が、vconv lowlimit及びv dc loadのいずれより大きい。v dcは、v dc inv(=|vac|)となる。v dcは|vac|であるので、系統連系インバータ30は、PAM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
時刻t2から時刻t3までの期間は、時刻t0から時刻t1までの期間と同様であるので、v dcは、再びvconv lowlimitとなる。系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
図8(a)では、v dc loadは、v dcより小さい。DC負荷50には、運転に十分な電圧(適正な電圧)が給電される。
【0086】
図8(b)は、v dc loadがvconv lowlimitより大きいが、|vac peak|より小さい場合である。図8(b)において、時刻t2、t3、t4、t5は、v dc loadとv dc inv(=|vac|)とが交差する時刻である。時刻t2、t3、t4、t5は、図8(a)と異なる時刻である。表記する場合を除いて、他も同様である。
【0087】
時刻t0から時刻t1までの期間では、v dc loadが、vconv lowlimit及びv dc inv(=|vac|)のいずれより大きい。v dcは、v dc loadとなる。|vac|は、v dcより小さい。よって、系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|)が、vconv lowlimit及びv dc loadのいずれより大きい。v dcは、v dc inv(=|vac|)となる。v dcは|vac|であるので、系統連系インバータ30は、PAM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
時刻t2から時刻t3までの期間では、時刻t0から時刻t1までの期間と同様であるので、v dcは、再びv dc loadとなる。系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
【0088】
時刻t0から時刻t1までの期間及び時刻t2から時刻t3までは、DCリンク電圧目標値v dcは、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadであり、DC負荷50に適正な電圧が給電されている。時刻t1から時刻t2までは、DC負荷50は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadより大きい、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc inv(=|vac|)が給電されている。時刻t0から時刻t3までのAC電圧の半周期内において、時刻t0から時刻t1までの期間、及び時刻t2から時刻t3までの期間は、DCリンク電圧vdcがDC負荷50に応じて制御される期間である。時刻t1から時刻t2までの期間は、DCリンク電圧vdcが系統電圧によって決まる電圧となるように制御される期間である。これにより、DC負荷50に過剰な電圧が印加されることが抑制される。
【0089】
図8(c)は、v dc loadが|vac peak|より大きい場合である。
時刻t0から時刻t6までの期間において、v dc loadが、vconv lowlimit及びv dc inv(=|vac|)のいずれより大きい。v dcは、v dc loadとなる。v dcは|vac|より大きいので、系統連系インバータ30は、PWM動作して、DC側とAC側とを連携させる。
【0090】
時刻t0から時刻t6までの期間において、DC負荷50には、適正な電圧が給電される。よって、DC負荷50の運転効率が向上する。
【0091】
DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadが変化(変動)しても、図8(a)、(b)、(c)の間のように、DCリンク電圧目標値v dcを調整すればよい。DCリンク電圧目標値v dcを調整することにより、DCリンク電圧vdcが変化(変動)し、DC負荷50を運転する電圧(電力)が給電される。
【0092】
次に、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invをAC電圧絶対値|vac|に電圧マージンvmarginを加えた値とした場合を説明する(v dc inv=|vac|+vmargin)。
図9は、電圧マージンvmarginを加えた場合におけるDCリンク電圧目標値v dc loadの変化を説明する図である。図9(a)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより小さい場合、図9(b)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより大きいが、AC電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|に電圧マージンvmarginを加えた値より小さい場合、図9(c)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadが交流電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|に電圧マージンvmarginを加えた値より大きい場合である。縦軸、横軸などは、図8と同じである。
【0093】
系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc inv(=AC電圧vacの絶対値|vac|+電圧マージンvmargin)を二点鎖線で表記する。他は、図8と同様である。
【0094】
図9(a)は、v dc loadがvconv lowlimitより小さい場合である。時刻t1、t2、t4、t5は、v dc inv(=|vac|+vmargin)とvconv lowlimitとが交差する時刻である。
【0095】
時刻t0から時刻t1までの期間では、vconv lowlimitがv dc load及びv dc invのいずれより大きい。v dcは、vconv lowlimitとなる。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc invがv dc load及びvconv lowlimitより大きい。v dcは、v dc invとなる。
時刻t2から時刻t3までの期間では、v dcは、再びvconv lowlimitとなる。
時刻t0から時刻t3の期間において、v dcは、|vac|と異なる。よって、系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
【0096】
図9(b)は、v dc loadがvconv lowlimitより大きいが、|vac peak|+vmarginより小さい場合である。時刻t1、t2、t4、t5は、v dc loadとv dc inv(=|vac|+vmargin)とが交差する時刻である。
【0097】
時刻t0から時刻t1までの期間では、v dc loadがvconv lowlimit及びv dc inv(=|vac|+vmargin)のいずれより大きい。v dcは、v dc loadとなる。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|+vmargin)がv dc load及びvconv lowlimitより大きい。v dcは、v dc inv(=|vac|+vmargin)となる。
時刻t2から時刻t3までの期間では、時刻t0から時刻t1までの期間と同じであるので、v dcは、再びv dc loadとなる。
時刻t0から時刻t3の期間において、v dcが|vac|と一致する期間はない。よって、系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
【0098】
図9(c)は、v dc loadが|vac peak|+vmarginより大きい場合である。
時刻t0から時刻t3までの期間において、v dc loadがvconv lowlimit及びv dc invのいずれより大きい。v dcは、v dc loadとなる。
時刻t0から時刻t3の期間において、v dcが|vac|と一致する期間はない。よって、系統連系インバータ30は、PWM動作により、DC側とAC側とを連携させる。
【0099】
系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invを交流電圧vacの絶対値|vac|に電圧マージンvmarginを加えた値(v dc inv=|vac|+vmargin)とすることで、DC負荷50によりDCリンク電圧vdcが変動しても、系統連系インバータ30に必要なDC電圧が確保され、系統連系インバータ30の出力における波形歪みが抑制される。
【0100】
(2)並列/逆潮流において、DC負荷50に給電しない動作モード
DC側からAC側に電力を供給する並列/逆潮流において、DC負荷50に給電しない動作モードでは、DC電源40からの全電力が電力系統100に逆潮流される。
図10は、並列/逆潮流において、DC負荷50に給電しない動作モードを説明する図である。上側に電力変換システム1を示し、下側にDC/DCコンバータ10の動作、及び系統連系インバータ30の動作を示す。ここでは、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invをAC電圧vacの絶対値|vac|とした(v dc inv=|vac|)。DC/DCコンバータ10は、出力電圧制御モードで駆動されている。
【0101】
図10の上側の電力変換システム1に、電力の流れを矢印で示す。DC電源40から電力系統100に電力が供給されている。DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadは“0V”である。図10の下側に示すDCリンク電圧目標値v dcは、式(1)に示したように、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc inv(=|vac|)と、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitとの大小関係によって決まる。
【0102】
dc invがv dc load及びvconv lowlimitより大きい場合、v dcは、v dc inv(=|vac|)になる。v dcが|vac|であるので、系統連系インバータ30は、PAM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0103】
conv lowlimitがv dc load及びv dc inv(=|vac|)より大きい場合、v dcは、vconv lowlimitになる。v dcがvconv lowlimitであるので、系統連系インバータ30は、PWM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0104】
図11は、並列/逆潮流において、DC負荷50に給電しない動作モードにおけるDCリンク電圧目標値v dcを説明する図である。図11において、時刻t1、t2、t4、t5は、vconv lowlimitとv dc inv(=|vac|)とが交差する時刻である。
【0105】
時刻t0から時刻t1までの期間では、vconv lowlimitがv dc inv(=|vac|)より大きい。よって、v dcは、vconv lowlimitとなる。系統連系インバータ30は、PWM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|)がvconv lowlimitより大きい。よって、v dcは、v dc inv(=|vac|)となる。v dcは|vac|であるので、系統連系インバータ30は、PAM動作を行って、DC側とAC側とを連携させる。
【0106】
(3)並列/順潮流において、DC電源40と電力系統100とからDC負荷50に給電する動作モード
AC側からDC側に電力を供給する並列/順潮流において、DC電源40と電力系統100とからDC負荷50に給電する動作モードでは、DC電源40と電力系統100とが並列して電力をDC負荷50に給電する。
図12は、並列/順潮流において、DC電源40と電力系統100とからDC負荷50に給電する動作モードを説明する図である。上側に電力変換システム1を示し、下側にDC/DCコンバータ10の動作、及び系統連系インバータ30の動作を示す。
【0107】
図12の上側の電力変換システム1に、電力の流れを矢印で示す。DC電源40及び電力系統100から電力がDC負荷50に給電されている。図12の下側に示すように、系統連系インバータ30は、全波整流動作、又はPWM整流動作する。系統連系インバータ30の動作は、順潮流する電力(電流)に対する制約(例えば、力率、高調波含有率、電流ピーク、又は系統連系インバータ30の効率など)に応じて適宜選択される。系統連系インバータ30により、DCリンク電圧目標値v dcが調整されるので、DC/DCコンバータ10は、出力電流制御モードで動作する。
【0108】
(4)並列/順潮流において、電力系統100からDC負荷50に給電する動作モード
AC側からDC側に電力を供給する並列/逆潮流において、電力系統100からDC負荷50に給電する動作モードでは、DC電源40は、DC負荷50に給電しない。
図13は、並列/順潮流において、電力系統100からDC負荷50に給電する動作モードを説明する図である。上側に電力変換システム1を示し、下側にDC/DCコンバータ10の動作、及び系統連系インバータ30の動作を示す。
【0109】
図13の上側の電力変換システム1に、電力の流れを矢印で示す。電力系統100から電力がDC負荷50に給電されている。図13の下側に示すように、系統連系インバータ30は、全波整流動作、又はPWM整流動作する。系統連系インバータ30の動作は、順潮流する電力(電流)に対する制約(例えば、力率、高調波含有率、電流ピーク、又は系統連系インバータ30の効率など)に応じて適宜選択される。DC/DCコンバータ10は、停止している。
【0110】
(5)解列において、DC電源40からDC負荷50に給電する動作モード
解列における、DC電源40からDC負荷50に給電する動作モードでは、電力系統100からDC負荷50に給電されない。
図14は、解列において、DC電源40からDC負荷50に給電する動作モードを説明する図である。上側に電力変換システム1を示し、下側にDC/DCコンバータ10の動作、及び系統連系インバータ30の動作を示す。
【0111】
図14の上側の電力変換システム1に、電力の流れを矢印で示す。DC電源40からDC負荷50に給電されている。図14の下側に示すように、系統連系インバータ30は、停止しており、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invはない。DCリンク電圧目標値v dcは、式(1)に示したように、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadと、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitとの大小関係によって決まる。DC/DCコンバータ10は、出力電圧制御モードで動作する。
【0112】
dc loadがvconv lowlimitより大きい場合(v dc load≧vconv lowlimit)、v dcはv dc loadになり、vconv lowlimitがv dc loadより大きい場合(vconv lowlimit≧v dc load)、v dcはvconv lowlimitになる。
【0113】
図15は、解列において、DC電源40からDC負荷50に給電する動作モードにおけるDCリンク電圧目標値v dcを説明する図である。図15(a)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより大きい場合、図15(b)は、DC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitがDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadより大きい場合である。参考として、AC電圧vacの絶対値|vac|を示す。
【0114】
図15(a)に示ように、v dc loadがvconv lowlimitより大きい場合(v dc load≧vconv lowlimit)では、v dcは、v dc loadとなる。
図15(b)に示ように、vconv lowlimitがv dc loadより大きい場合(vconv lowlimit≧v dc load)では、v dcは、vconv lowlimitとなる。
【0115】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態の電力変換システム2は、DC負荷50をDCリンク20に接続する線路に負荷スイッチ回路70を備える。負荷スイッチ回路70は、スイッチ回路の一例である。
【0116】
図16は、第2の実施の形態の電力変換システム2の一例を示す図である。電力変換システム2は、図1に示した電力変換システム1に負荷スイッチ回路70を備える。電力変換システム2は、電力変換システム1において、DC負荷50に並列に設けられたコンデンサC4の替わりにコンデンサC5を備える。
【0117】
負荷スイッチ回路70は、負荷スイッチSxと、ダイオードD3とを備える。負荷スイッチSxは、DC負荷50をDCリンク20に接続する一方の線路(ここでは、DCリンク20の+側と接続される線路)に設けられている。ダイオードD3は、DC負荷50をDCリンク20に接続する一対の線路間に逆バイアスに接続されている。負荷スイッチSxは、上述したスイッチング素子Sw1、Sw2と同様の素子でよい。
【0118】
負荷スイッチSxは、別なる制御器により、DCリンク電圧vdcがDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc load近傍となる期間、において閉(オン)に、それ以外の期間において開(オフ)に制御される。言い換えると、DCリンク電圧vdcがDC負荷50に応じて予め定められた電圧範囲にある期間において、負荷スイッチSxが閉(オン)に制御される。なお、負荷スイッチSxは、DCリンク電圧vdcがDC負荷50に応じて予め定められた電圧範囲にある期間において、閉(オン)であってもよい。負荷スイッチSxが閉(オン)の期間において、DCリンク20からDC負荷50に給電される。負荷スイッチSxが開(オフ)の期間において、コンデンサC5からDC負荷50に給電される。ダイオードD3は、負荷スイッチSxに対する、いわゆる帰還ダイオードである。
【0119】
コンデンサC5は、負荷スイッチSxが開(オフ)の期間において、DC負荷50に給電する。よって、コンデンサC5は、電力変換システム1におけるコンデンサC4に比べて大きい容量であることを要する。そして、コンデンサC5は、DCリンク20におけるコンデンサC1よりも大きな容量が選定されることが好ましい。このように選定されると、DC/DCコンバータ10と系統連系インバータ30との間のDCリンク電圧vdcが調整しやすくなり、且つDC負荷50に給電するDC電圧vdc loadの変動が低減される。コンデンサC5は、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどである。
【0120】
(電力変換システム2の動作モード)
電力変換システム2の並列/逆潮流における、DC負荷50に給電する動作モードを説明する。
図17は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadの変化によるDCリンク電圧目標値v dcを説明する図である。図17(a)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより小さい場合、図17(b)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadがDC/DCコンバータ10の出力電圧の下限値vconv lowlimitより大きいが、交流電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|より小さい場合、図17(c)は、DC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadが交流電圧vacのピーク電圧の絶対値|vac peak|より大きい場合である。図17は、電力変換システム1に対する図8と同様な図であるが、系統連系インバータ30の動作の代わりに、負荷スイッチSxの開(オフ)閉(オン)を示している。
【0121】
系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invを交流電圧vacの絶対値|vac|と同じとした(v dc inv=|vac|)。
DC負荷50に印加されるDC負荷電圧vdc loadを一点鎖線で示している。
【0122】
図17(a)は、v dc loadがvconv lowlimitより小さい場合である(v dc load<vconv lowlimit)。時刻t1、t2、t4、t5は、v dc inv(=|vac|)とvconv lowlimitとが交差する時刻である。
【0123】
時刻t0から時刻t1までの期間では、vconv lowlimitがv dc load及びv dc inv(=|vac|)のいずれより大きい。v dcは、vconv lowlimitとなる。負荷スイッチSxが閉(オン)に制御され、DC負荷50は、DCリンク20から給電され、コンデンサC5が充電される。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|)がv dc load及びvconv lowlimitのいずれより大きい。v dcは、v dc inv(=|vac|)となる。負荷スイッチSxが開(オフ)に制御され、DC負荷50は、コンデンサC5の放電により給電される。
時刻t2から時刻t3までの期間は、時刻t0から時刻t1までの期間と同様であり、v dcは、再びvconv lowlimitとなる。負荷スイッチSxが閉(オン)に制御され、DC負荷50は、DCリンク20から給電され、コンデンサC5が充電される。
【0124】
時刻t1から時刻t2までの期間におけるコンデンサC5の放電による電圧低下を無視すると、図17(a)に破線で示すように、時刻t0から時刻t3までの期間において、DC負荷50には、vconv lowlimitが印加される。図8(a)では、時刻t1から時刻t3までの期間において、DC負荷50は、v dc inv(=|vac|)が印加された。v dc inv(=|vac|)はvconv lowlimitより大きい。負荷スイッチSxを開(オフ)、閉(オン)する制御を行うことで、DC負荷50に過剰な電圧で給電されることが抑制される。DC負荷50に印加される電圧vdcを適正にできる。これにより、DC負荷50の運転効率が向上する。
【0125】
図17(b)は、v dc loadがvconv lowlimitより大きいが、|vac peak|より小さい場合である。時刻t1、t2、t4、t5は、v dc inv(=|vac|)とv dc loadとが交差する時刻である。
【0126】
時刻t0から時刻t1までの期間では、v dc loadがvconv lowlimit及びv dc inv(=|vac|)より大きい。v dcは、v dc loadとなる。負荷スイッチSxが閉(オン)に制御され、DC負荷50は、DCリンク20から給電され、コンデンサC5が充電される。
時刻t1から時刻t2までの期間では、v dc inv(=|vac|)がv dc load及びvconv lowlimitより大きい。v dcは、v dc inv(=|vac|)となる。負荷スイッチSxが開(オフ)に制御され、DC負荷50は、コンデンサC5から給電され、コンデンサC5が放電する。
時刻t2から時刻t3までの期間は、時刻t0から時刻t1までの期間と同様であって、v dcは、再びv dc loadとなる。負荷スイッチSxが閉(オン)に制御され、DC負荷50は、DCリンク20から給電され、コンデンサC5が充電される。
【0127】
時刻t1から時刻t2までの期間において、コンデンサC5の放電による電圧低下を無視すると、図17(b)に破線で示すように、時刻t0から時刻t3までの期間において、DC負荷50には、v dc loadが印加される。DC負荷入力電圧vdc loadは常にDC負荷50に適したv dc loadとなる。なお、図8(b)では、時刻t1から時刻t3までの期間において、DC負荷入力電圧vdc loadは、v dc loadより大きいv dc inv(=|vac|)になっていた。負荷スイッチSxを開(オフ)、閉(オン)する制御を行うことで、DC負荷50に過剰な電圧が給電されることが抑制される。DC負荷50に印加される電圧vdcを適正にできる。これにより、DC負荷50の運転効率が向上する。
【0128】
図17(c)は、v dc loadが|vac peak|より大きい場合である。
時刻t0から時刻t3までの期間において、v dc loadがvconv lowlimit及びv dc inv(=|vac|)より大きい。v dcは、v dc loadとなる。負荷スイッチSxが閉(オン)に制御され、DC負荷50は、DCリンク20から給電される。
DC負荷50のDC負荷入力電圧vdc loadは、常にDC負荷50に適したv dc loadとなる。DC負荷50に印加される電圧vdcを適正にできる。これにより、DC負荷50の運転効率が向上する。
【0129】
図17(a)、(b)における時刻t2、t5において、負荷スイッチSxを開(オフ)から閉(オン)にする制御は、DCリンク電圧vdcがDC負荷50に応じて予め定められた電圧範囲にある間に行われればよい。なお、予め定められた電圧範囲にある間において、負荷スイッチSxを開(オフ)に維持してもよく、負荷スイッチSxを閉(オン)から開(オフ)にする制御してもよい。
【0130】
次に、負荷スイッチSxの開(オフ)から閉(オン)にする際に生じる突入電流を抑制する手段(突入電流の抑制手段)を説明する。
図18は、負荷スイッチSxによって生じる突入電流を抑制する手段を説明する図である。図18(a)は、突入電流が発生する場合、図18(b)は、突入電流を抑制した場合である。図18(a)、図18(b)において、上側に電圧波形を、下側に電流波形を示す。下側の電流波形は、負荷スイッチSxからDC負荷50に流れる電流idc loadの波形である。縦軸は電流idc load(a.u.)である。時刻t1、t2、t4、t5、t2′、t5′は、負荷スイッチSxの開(オフ)閉(オン)を切り替える時刻である。
【0131】
図18(a)に示すように、DC負荷入力電圧vdc loadとDCリンク電圧vdcとの間に電圧差がある状態(時刻t2、t5の状態)において、負荷スイッチSxを開(オフ)から閉(オン)に切り替えると、負荷スイッチSxからDC負荷50に流れる電流idc loadに、コンデンサC5の充電にともなう突入電流が流れる。突入電流は、回路損失の増加や、コンデンサC5の寿命低下を引き起こすおそれがある。
【0132】
図18(b)に示すように、DC負荷入力電圧vdc loadとDCリンク電圧vdcとの電圧差が予め定められた電圧範囲にある間(時刻t2′、t5′の状態)において、負荷スイッチSxを開(オフ)から閉(オン)に切り替えるように制御すると、コンデンサC5の充電にともなう突入電流が抑制される。DC負荷入力電圧vdc loadとDCリンク電圧vdcとの電圧差は、突入電流の許容される大きさによって設定すればよい。
【0133】
また、突入電流の抑制手段として、負荷スイッチSxを開(オフ)から閉(オン)に切り替える際に、負荷スイッチSxを断続的に開(オフ)と閉(オン)とを繰り返すチョッピング動作させてもよい。チョッピング動作は、予めチョッピング期間を定めて行ってもよく、負荷スイッチSxの電流を検出してチョッピング期間を定めて行ってもよい。負荷スイッチSxの制御端子に接続する抵抗の値を高めるなど、負荷スイッチSxが開(オフ)の状態(オフ状態)から閉(オン)の状態(オン状態)に切り替わる動作(ターンオン動作)が遅くなるようにしてもよい。負荷スイッチSxとコンデンサC5の間に、小容量のリアクトルを挿入して、電流の急峻な変化を抑制してもよい。
【0134】
(第2の実施の形態の電力変換システム2の変形例)
電力変換システム2の変形例である電力変換システム3を説明する。
【0135】
図19は、第2の実施の形態に係る電力変換システム2の変形例である電力変換システム3の一例を示す図である。電力変換システム2と同じ部分には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0136】
電力変換システム3は、電力変換システム2のDC/DCコンバータ10に替えて、DC/DCコンバータ11を備える。DC/DCコンバータ11は、DC/DCコンバータ10におけるスイッチング素子Sw2、ダイオードD2を削除し、ダイオードD4を備える。電力変換システム3は、電力変換システム2の負荷スイッチ回路70に替えて、負荷スイッチ回路71を備える。負荷スイッチ回路71は、スイッチ回路の他の一例である。
【0137】
DC/DCコンバータ11におけるダイオードD4は、リアクトルL1とダイオードD1と直列接続に並列に設けられている。ダイオードD4のアノード端子が、リアクトルL1のダイオードD1と接続されていない側の端子に接続され、ダイオードD4のカソード端子が、ダイオードD1のカソード端子に接続されている。
【0138】
負荷スイッチ回路71は、負荷スイッチSyと、ダイオードD5とを備える。ダイオードD5のアノード端子は、DC電源40の+側に接続されている。負荷スイッチSyは、コレクタ端子がDCリンク20の+側に接続され、エミッタ端子がダイオードD5のカソード端子と接続されている。DC負荷50は、DC電源40の-側と負荷スイッチSyのエミッタ端子(ダイオードD5のカソード端子)との間に接続されている。
【0139】
DC/DCコンバータ11は、昇圧動作をしないときには、入力電圧がそのまま出力電圧とできる昇圧回路である。昇圧動作をするときには、別なる制御器によって、スイッチング素子Sw1をスイッチングさせることで、DCリンク電圧vdcをDC電源電圧vpvより高くする。昇圧動作をしないときには、スイッチング素子Sw1をオフにし、DC/DCコンバータ11を停止する。ダイオードD4により、DC電源40の出力電圧(DC電源電圧vpv)をDCリンク20にバイパスさせる。ダイオードD4は、バイパスダイオードである。ダイオードD4は、昇圧動作中はオフ状態、DC/DCコンバータが停止中はオン状態に切り替わる。
【0140】
負荷スイッチSyは、負荷スイッチ回路70における負荷スイッチSxと同様に機能する。DCリンク電圧vdcがDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc load近傍となる期間において閉(オン)に、それ以外の期間において開(オフ)に制御される。これにより、DC負荷入力電圧vdc loadが過大になることが抑制される。また、DC負荷入力電圧vdc loadを、DC電源電圧vpvとする場合には、負荷スイッチSyをオフに設定する。ダイオードD5は、DC電源40の出力電圧(DC電源電圧vpv)をDC負荷50にバイパスさせる。ダイオードD5は、バイパスダイオードである。ダイオードD5は、DC負荷50とDC電源40とを接続するダイオードである。
【0141】
電力変換システム3では、バイパスダイオードであるダイオードD4、D5を備えた。バイパスダイオードであるダイオードD4、D5がオン状態では、受動素子・能動素子の数が少ない電流経路が形成され、電流経路での損失が低減される。
【0142】
また、電力変換システム2で説明した突入電流の抑制手段は、電力変換システム3に対しても適用できる。
【0143】
(三相交流の電力系統への適用)
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、電力系統100が単相交流であるとして説明したが、三相交流の電力系統にも適用できる。
三相交流の電力系統において、系統連系インバータ30と連携する系統電圧をAC電圧v、v、v(瞬時値)とする。系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invは、AC電圧v、v、v、及び系統連系インバータ30の動作状態に応じて決定される。例えば、電力系統と並列の時は、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invを、AC電圧v、v、vの最大値max(v、v、v)と最小値min(v、v、v)との差(max(v、v、v)-min(v、v、v))、換言すれば、線間電圧(瞬時値)の絶対値における最大値(max(|v-v|、|v-v|、|v-v|))と決定してもよい。例えば、電力系統と並列で逆潮流の時は、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invを、線間電圧(瞬時値)の絶対値の最大値に電圧マージンvmarginを加えた値(max(|v-v|、|v-v|、|v-v|)+vmargin)と決定してもよい。
【0144】
三相交流では、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invは、線間電圧のピーク電圧の√3/2(約0.86)倍以上となる。このため、DCリンク電圧目標値v dcがDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadとなる電圧範囲(v dc=v dc loadとなる電圧範囲)が限定される。一方、単相交流では、系統連系インバータ30に基づくDCリンク電圧目標値v dc invの変化量が三相交流に比べて大きいため、DCリンク電圧目標値v dcがDC負荷50に基づくDCリンク電圧目標値v dc loadとなる電圧範囲(v dc=v dc loadとなる電圧範囲)が広い。電力系統は、三相交流より、単相交流が適する。
【0145】
(実施の形態の作用効果)
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3は、DC電源40を接続可能なDC/DCコンバータ10と、系統連系インバータ30と、DC/DCコンバータ10と系統連系インバータ30とを接続したDCリンク20と、を備え、系統連系インバータ30のAC側の系統電圧の半周期内において、DCリンク20に接続可能なDC負荷50に応じてDCリンク20の電圧が調整される。DCリンク20に接続されたDC負荷50に応じてDCリンク20の電圧が調整される。これにより、DC負荷50の運転効率が向上する。
【0146】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20の電圧は、DCリンク20に接続可能なDC負荷50の状態に応じて調整される、ものであってよい。これにより、DC負荷50に印加される電圧を適正にできる。
【0147】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20は、DC負荷50として、DCリンク20の電圧によって出力が変化するDC負荷が接続可能である、ものであってよい。これにより、DC負荷50の出力を適正にできる。
【0148】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20は、DC負荷50として、電力変換器を含み、電力変換器の電力変換の状態に応じて、DCリンク20の電圧が調整されるDC負荷が接続可能である、ものであってもよい。これにより、電力変換器を含むDC負荷50に印加される電圧を適正にできる。
【0149】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20は、DC負荷50として、回転電機を可変速運転する前記電力変換器を含み、回転電機の運転状態に応じて、DCリンク20の電圧が調整されるDC負荷が接続可能である、ものであってよい。これにより、回転電機を可変速運転する電力変換器を含むDC負荷50に印加される電圧を適正にできる。
【0150】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20の電圧の調整は、系統電圧の半周期内において、DCリンク20に接続可能なDC負荷50に応じて調整する期間と、系統電圧に基づく電圧となるように調整する期間とを含む制御を有する、ものであってよい。これにより、DC負荷50に過剰な電圧が印加されるのが抑制できる。
【0151】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3の系統電圧に基づく電圧は、系統電圧の絶対値よりも大きい電圧である、ものであってよい。これにより、DCリンク20の電圧の変動にかかわらず、系統連系インバータ30に必要な電圧が確保できる。
【0152】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3の系統連系インバータ30は、DCリンク20に接続可能なDC負荷50に応じて、PWM動作、PAM動作、及び整流動作のいずれかで制御される、ものであってよい。これにより、系統連系インバータ30の制御によりDC負荷50に印加される電圧が適正にできる。
【0153】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDCリンク20は、負荷スイッチ回路70、71を介して、DC負荷50が接続可能である、ものであってよい。これにより、DC負荷50に過剰な電圧が印加されることが抑制できる。
【0154】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3は、DCリンク20に設けられたコンデンサC1より容量の大きいコンデンサC5が、DC負荷50の入力側に、DC負荷50に並列に設けられている、ものであってよい。これにより、DCリンク20の電圧及びDC負荷50の電圧の制御が容易になる。
【0155】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3の負荷スイッチ回路70、71は、DCリンク20の電圧がDC負荷50に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される、ものであってよい。これにより、DC負荷50に過剰な電圧が印加されることが抑制できる。
【0156】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3の負荷スイッチ回路70、71は、DCリンク20の電圧がDC負荷50の入力電圧に応じて予め定められた電圧範囲にある間においてオンに制御される、ものであってよい。これにより、負荷スイッチ回路70、71をオンしたときに過剰な電流が流れることが抑制できる。
【0157】
本実施の形態の電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3のDC/DCコンバータ10は、DC/DCコンバータ10に接続可能なDC電源40と、DCリンク20に接続可能なDC負荷50とを、ダイオードD5を介して接続する、ものであってよい。これにより、ダイオードD5がオン状態になると、電流経路での損失が低減される。
【0158】
本実施の形態のヒートポンプシステムは、電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3と、DC負荷50としてヒートポンプ機器と、を備える。これにより、別にDC/DCコンバータを設けることを要しない。
【0159】
本実施の形態の太陽光発電システムは、電力変換システム1、1A、1B、1C、2、3と、DC電源40として太陽電池と、を備える。これにより、太陽電池を電力系統100に連系させながら、DC負荷50に印加される電圧を適正にできる発電システムを簡素な回路構成で実現できる。
【0160】
以上、実施の形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様の変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0161】
1、1A、1B、1C、2、3…電力変換システム、10、11…DC/DCコンバータ(直流/直流コンバータ)、20…DCリンク(直流リンク)、30…系統連系インバータ、40…DC電源(直流電源)、50…DC負荷(直流負荷)、60…開閉器、100…電力系統、70、71…負荷スイッチ回路、C1、C2、C3、C4、C5…コンデンサ、D1、D2、D3、D4、D5、Dap、Dan、Dbp、Dbp…ダイオード、L1、L2、L3…リアクトル、San、Sap、Sbn、Sbp、Sw1、Sw2…スイッチング素子、Sx、Sy…負荷スイッチ
【要約】      (修正有)
【課題】太陽電池などのDC電源からの電力を、DC負荷に供給しつつ、系統連系インバータにより交流化して電力系統に逆潮流させる機能を有する電力変換システムにおいて、DC負荷に応じて、DC負荷の運転効率を向上させる。
【解決手段】電力交換システム1は、DC電源40を接続可能なDC/DCコンバータ10と、系統連系インバータ30と、DC/DCコンバータと系統連系インバータ30とを接続したDCリンク20と、を備え、系統連系インバータ30のAC側の系統電圧Vacの半周期内において、DCリンク20に接続可能なDC負荷50に応じてDCリンク電圧Vdcを調整することにより、DC負荷の運転効率を向上させる。
【選択図】図1
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