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特許7540099荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-16
(45)【発行日】2024-08-26
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20240819BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20240819BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01J37/317 D
H01J37/09 A
H01J37/30 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023544876
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032145
(87)【国際公開番号】W WO2023032083
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 靖孝
(72)【発明者】
【氏名】大庭 弘
(72)【発明者】
【氏名】永原 幸児
(72)【発明者】
【氏名】杉山 安彦
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-053002(JP,A)
【文献】特開平6-349435(JP,A)
【文献】特開2006-128068(JP,A)
【文献】特開昭60-136141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームの一部を通過させるために選択される少なくとも1つの貫通孔が形成された絞り部材と、
前記絞り部材を駆動する駆動機構と、
前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームを試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査する光学系と、
前記駆動機構及び前記光学系を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
所定軸に対して姿勢決めされた目印試料に前記荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料に応じた前記所定軸である観察軸の姿勢情報を記憶し、
前記荷電粒子ビームを前記絞り部材に照射して得られる画像で認識する前記貫通孔の一部を形成する所定部位を、前記観察軸に対して姿勢決めするように前記駆動機構によって前記絞り部材を駆動する、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記荷電粒子ビームを第1の荷電粒子ビームとして、第2の荷電粒子ビームを前記試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査するビーム鏡筒と、
前記試料が配置されて駆動されるステージと、
を備え、
前記制御装置は、
前記ステージ上の前記試料の表面に配置される前記目印試料に前記第2の荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料を前記所定軸に対して姿勢決めするように前記ステージを駆動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記目印試料は前記所定軸に一致するように姿勢決めされる直線的な部位を備え、
前記所定部位の外形は前記観察軸に一致するように姿勢決めされる直線的なエッジ状である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記所定軸は、前記第2の荷電粒子ビームの走査方向に平行な軸である、
ことを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記光学系は、
前記荷電粒子源と前記絞り部材との間で前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、
前記絞り部材を前記荷電粒子ビームの軸に直交する平面内で並進移動させる第1駆動機構と、
前記絞り部材を前記平面内の所定の回転中心に対して回転移動させる第2駆動機構と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子源と、
前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームの一部を通過させるために選択される少なくとも1つの貫通孔が形成された絞り部材と、
前記絞り部材を駆動する駆動機構と、
前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームを試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査する光学系と、
前記駆動機構及び前記光学系を制御する制御装置と、
を備える荷電粒子ビーム装置の調整方法であって、
前記制御装置が、所定軸に対して姿勢決めされた目印試料に前記荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料に応じた前記所定軸である観察軸の姿勢情報を記憶するステップと、
前記制御装置が、前記荷電粒子ビームを前記絞り部材に照射して得られる画像で認識する前記貫通孔の一部を形成する所定部位を、前記観察軸に対して姿勢決めするように前記駆動機構によって前記絞り部材を駆動するステップと、
を含む、
ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置の調整方法。
【請求項8】
前記荷電粒子ビームを第1の荷電粒子ビームとして、第2の荷電粒子ビームを前記試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査するビーム鏡筒と、
前記試料が配置されて駆動されるステージと、
を備える前記荷電粒子ビーム装置の調整方法であって、
前記制御装置が、前記ステージ上の前記試料の表面に配置される前記目印試料に前記第2の荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料を前記所定軸に対して姿勢決めするように前記ステージを駆動するステップを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の荷電粒子ビーム装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の形状の開口が形成されたマスク(アパーチャ)を光学系に備え、マスク形状に切り取られたビームを試料上に結像し、加工形状をマスクと相似形にする投射モードによって試料にビームを照射する荷電粒子ビーム装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この荷電粒子ビーム装置は、マスクを回転させる回転機構を備え、試料の加工時に所望の加工形状(主にマスクによって決まる加工形状を所望の角度)に対応させてマスクを回転させる。加工だけであれば、加工形状を所望の角度になるよう試料を載せるステージの回転機構により調整できる。
従来、イオンビームの照射により試料を観察及び加工して断面を形成する工程と、電子ビームの照射により断面像を取得する工程とを繰り返し実行するビーム装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-214521号公報
【文献】特開2013-197044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した荷電粒子ビーム装置には集束イオンビーム(FIB)鏡筒と走査電子顕微鏡(SEM)とが試料室を構成する真空容器に取り付けられている。FIB鏡筒により生成されるイオンビームによって試料に断面を形成した後に、電子ビームを試料の断面で走査することによって断面像を生成する場合、試料の断面を電子ビームの走査方向に平行に形成することによって、電子ビームの走査時のステージ移動は省略される。ステージ移動(例えば、電子ビームの走査方向を試料の断面に平行にするための回転補正等)の省略によって、工程に要する時間が嵩むことを抑制することができるとともに、ステージの位置ずれ等による位置精度の低下を抑制することができる。
例えば、直線状のエッジを有する縁形状の開口が形成されたマスクを用いる投射モードでは、開口の直線状のエッジの形状が試料上に平行に投影されることによって断面が形成されるので、開口の直線状のエッジは電子ビームの走査方向に平行に設定されればよい。
【0005】
しかしながら、例えば、荷電粒子ビーム装置の組み立て時にマスクとSEMの走査方向との相対的な回転姿勢を調整する場合、煩雑な手間がかかるとともに高精度の微調整が困難であり、必要となる部品精度が過大になるおそれがある。
また、上記した荷電粒子ビーム装置のように、単に、マスクを回転させる回転機構を備える場合、断面形成の加工に先立ってどのようにしてマスクとSEMの走査方向との相対的な回転姿勢を調整するのか不明であり、簡便な方法で調整精度を向上させることが困難であるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、投射モードに用いられるマスクとなる絞り部材の位置及び姿勢を精度良く設定することができる荷電粒子ビーム装置及び荷電粒子ビーム装置の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子源と、前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームの一部を通過させるために選択される少なくとも1つの貫通孔が形成された絞り部材と、前記絞り部材を駆動する駆動機構と、前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームを試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査する光学系と、前記駆動機構及び前記光学系を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、所定軸に対して姿勢決めされた目印試料に前記荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料に応じた前記所定軸である観察軸の姿勢情報を記憶し、前記荷電粒子ビームを前記絞り部材に照射して得られる画像で認識する前記貫通孔の一部を形成する所定部位を、前記観察軸に対して姿勢決めするように前記駆動機構によって前記絞り部材を駆動する。
【0008】
上記構成では、前記荷電粒子ビームを第1の荷電粒子ビームとして、第2の荷電粒子ビームを前記試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査するビーム鏡筒と、前記試料が配置されて駆動されるステージと、を備え、前記制御装置は、前記ステージ上の前記試料の表面に配置される前記目印試料に前記第2の荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料を前記所定軸に対して姿勢決めするように前記ステージを駆動してもよい。
【0009】
上記構成では、前記目印試料は前記所定軸に一致するように姿勢決めされる直線的な部位を備え、前記所定部位の外形は前記観察軸に一致するように姿勢決めされる直線的なエッジ状であってもよい。
【0010】
上記構成では、前記所定軸は、前記第2の荷電粒子ビームの走査方向に平行な軸であってもよい。
【0011】
上記構成では、前記光学系は、前記荷電粒子源と前記絞り部材との間で前記荷電粒子ビームを偏向させる偏向器を備えてもよい。
【0012】
上記構成では、前記駆動機構は、前記絞り部材を前記荷電粒子ビームの軸に直交する平面内で並進移動させる第1駆動機構と、前記絞り部材を前記平面内の所定の回転中心に対して回転移動させる第2駆動機構と、を備えてもよい。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る荷電粒子ビーム装置の調整方法は、荷電粒子ビームを発生させる荷電粒子源と、前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームの一部を通過させるために選択される少なくとも1つの貫通孔が形成された絞り部材と、前記絞り部材を駆動する駆動機構と、前記荷電粒子源から発生する前記荷電粒子ビームを試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査する光学系と、前記駆動機構及び前記光学系を制御する制御装置と、を備える荷電粒子ビーム装置の調整方法であって、前記制御装置が、所定軸に対して姿勢決めされた目印試料に前記荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料に応じた前記所定軸である観察軸の姿勢情報を記憶するステップと、前記制御装置が、前記荷電粒子ビームを前記絞り部材に照射して得られる画像で認識する前記貫通孔の一部を形成する所定部位を、前記観察軸に対して姿勢決めするように前記駆動機構によって前記絞り部材を駆動するステップと、を含む。
【0014】
上記方法では、前記荷電粒子ビームを第1の荷電粒子ビームとして、第2の荷電粒子ビームを前記試料上又は前記絞り部材上に集束させて走査するビーム鏡筒と、前記試料が配置されて駆動されるステージと、を備える前記荷電粒子ビーム装置の調整方法であって、前記制御装置が、前記ステージ上の前記試料の表面に配置される前記目印試料に前記第2の荷電粒子ビームを照射して得られる画像で認識する前記目印試料を前記所定軸に対して姿勢決めするように前記ステージを駆動するステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定軸に対して位置決めされた目印試料の画像から認識される観察軸に対して絞り部材の貫通孔の一部を形成する所定部位を位置決めする制御装置を備えることによって、投射モードに用いられる絞り部材の位置を精度良く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態での荷電粒子ビーム装置の構成を示す図。
図2】本発明の実施形態でのイオンビーム鏡筒の構成を示す図。
図3】本発明の実施形態でのイオンビーム鏡筒の可動絞りの構成を示す図。
図4】本発明の実施形態での荷電粒子ビーム装置の調整動作を示すフローチャート。
図5】本発明の実施形態の第1変形例でのイオンビーム鏡筒の可動絞りの構成を示す図。
図6】本発明の実施形態の第2変形例でのイオンビーム鏡筒の構成を示す図。
図7】本発明の実施形態の第3変形例でのイオンビーム鏡筒の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10について、添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
(荷電粒子ビーム装置)
図1は、実施形態での荷電粒子ビーム装置10の構成を示す図である。
荷電粒子ビーム装置10は、試料室11と、試料ホルダ12と、試料台13と、試料室11に固定される電子ビーム鏡筒15及びイオンビーム鏡筒17とを備える。
荷電粒子ビーム装置10は、試料室11に固定される検出器として、例えば、二次荷電粒子検出器21を備える。荷電粒子ビーム装置10は、試料Sの表面にガスを供給するガス供給部23を備える。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の外部で荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する制御装置25と、制御装置25に接続される入力装置27及び表示装置29を備える。
【0019】
なお、以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は装置構成要素の各軸に平行な方向である。例えば、Z軸方向は荷電粒子ビーム装置10の上下方向(例えば、鉛直方向など)に平行である。X軸方向及びY軸方向は、荷電粒子ビーム装置10の上下方向に直交する基準面(例えば、水平面など)に平行である。
【0020】
試料室11は、所望の減圧状態を維持可能な気密構造の耐圧筐体によって形成されている。試料室11は、排気装置(図示略)によって内部を所望の減圧状態になるまで排気可能である。
試料ホルダ12は、試料Sを固定する。
試料台13は、試料室11の内部に配置されている。試料台13は、試料ホルダ12を支持するステージ31と、試料ホルダ12と一体にステージ31を3次元的に並進及び回転させるステージ駆動機構33とを備える。
ステージ駆動機構33は、例えば、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に沿ってステージ31を並進させる。ステージ駆動機構33は、例えば、所定の回転軸及び傾斜軸の各軸周りに適宜の角度でステージ31を回転させる。回転軸は、例えば、ステージ31に対して相対的に設定され、ステージ31が傾斜軸の軸周りの所定基準位置である場合に、荷電粒子ビーム装置10の上下方向に平行である。傾斜軸は、例えば、荷電粒子ビーム装置10の上下方向に直交する方向に平行である。ステージ駆動機構33は、例えば、ステージ31を回転軸及び傾斜軸の各軸周りにユーセントリック(eucentric)に回転させる。ステージ駆動機構33は、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。
【0021】
電子ビーム鏡筒15は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する。電子ビーム鏡筒15は、例えば、電子ビームの出射端部15aを荷電粒子ビーム装置10の上下方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向でステージ31に臨ませる。電子ビーム鏡筒15は、電子ビームの光軸を傾斜方向に平行にして、試料室11に固定されている。
電子ビーム鏡筒15は、電子を発生させる電子源と、電子源から射出された電子を集束及び偏向させる電子光学系とを備える。電子光学系は、例えば、電磁レンズ及び偏向器などを備える。電子源及び電子光学系は、電子ビームの照射位置及び照射条件などに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。
【0022】
イオンビーム鏡筒17は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に集束イオンビーム等のイオンビーム(IB)を照射する。イオンビーム鏡筒17は、例えば、イオンビームの出射端部17aを荷電粒子ビーム装置10の上下方向でステージ31に臨ませる。イオンビーム鏡筒17は、イオンビームの光軸(ビーム軸)を上下方向に平行にして、試料室11に固定されている。
実施形態でのイオンビーム鏡筒17の詳細については後述する。
【0023】
電子ビーム鏡筒15及びイオンビーム鏡筒17の互いの光軸は、例えば、試料台13の上方の所定位置Pで交差している。
なお、電子ビーム鏡筒15及びイオンビーム鏡筒17の互いの配置は適宜に入れ替えられてもよい。例えば、電子ビーム鏡筒15は上下方向に配置され、イオンビーム鏡筒17は上下方向に対して傾斜する傾斜方向又は直交方向に配置されてもよい。
【0024】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面にイオンビームを走査しながら照射することによって、被照射部の画像化と、スパッタリングによる各種の加工(掘削及びトリミング加工など)と、デポジション膜の形成となどを実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料Sから透過電子顕微鏡による透過観察用の試料片(例えば、薄片試料及び針状試料など)及び電子ビームによる分析用の分析試料片などを形成する加工を実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料片ホルダに移設された試料片を、透過電子顕微鏡による透過観察に適した所望の厚さの薄膜とする加工を実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料S、試料片及びニードルなどの照射対象の表面にイオンビーム又は電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象の表面の観察を実行可能である。
【0025】
二次荷電粒子検出器21は、イオンビーム又は電子ビームなどの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子及び二次イオン)を検出する。二次荷電粒子検出器21は制御装置25に接続されており、二次荷電粒子検出器21から出力される検出信号は制御装置25に送信される。
荷電粒子ビーム装置10は、二次荷電粒子検出器21に限らず、他の検出器を備えてもよい。他の検出器は、例えば、EDS( Energy Dispersive X-ray Spectrometer)検出器、反射電子検出器及びEBSD(Electron Back-Scattering Diffraction)検出器などである。EDS検出器は、電子ビームの照射によって照射対象から発生するX線を検出する。反射電子検出器は、電子ビームの照射によって照射対象から反射される反射電子を検出する。EBSD検出器は、電子ビームの照射によって照射対象から発生する電子線後方散乱回折パターンを検出する。なお、二次荷電粒子検出器21のうち二次電子を検出する二次電子検出器及び反射電子検出器は、電子ビーム鏡筒15の筐体内に収容されてもよい。
【0026】
ガス供給部23は、試料室11に固定されている。ガス供給部23は、ステージ31に臨ませて配置されるガス噴射部(ノズル)を備える。ガス供給部23は、エッチング用ガス及びデポジション用ガスなどを照射対象に供給する。エッチング用ガスは、イオンビームによる照射対象のエッチングを照射対象の材質に応じて選択的に促進する。デポジション用ガスは、照射対象の表面に金属又は絶縁体などの堆積物によるデポジション膜を形成する。
ガス供給部23は、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。
【0027】
制御装置25は、例えば、入力装置27から出力される信号又は予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号等によって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
制御装置25は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御装置25の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0028】
入力装置27は、例えば、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウス及びキーボード等である。
表示装置29は、荷電粒子ビーム装置10の各種情報と、二次荷電粒子検出器21から出力される信号によって生成された画像データと、画像データの拡大、縮小、移動及び回転等の操作を実行するための画面等を表示する。
【0029】
(イオンビーム鏡筒)
図2は、実施形態でのイオンビーム鏡筒17の構成を示す図である。
イオンビーム鏡筒17は、イオン源41と、イオン光学系42とを備える。イオン源41及びイオン光学系42は、イオンビーム(IB)の照射位置及び照射条件などに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。
イオン源41はイオンを発生させる。イオン源41は、例えば、誘導結合又は電子サイクロトロン共鳴(ECR)などによるプラズマ型イオン源である。なお、イオン源41は、例えば、液体ガリウムなどを用いた液体金属イオン源又はガス電界電離型イオン源などであってもよい。
【0030】
イオン光学系42は、イオン源41から引き出されたイオンのビーム(イオンビーム)を集束及び偏向させる。イオン光学系42は、光学条件を後述する集束モード及び投射モードなどの複数のモードのいずれかに切り替え可能である。イオン光学系42は、例えば、イオン源41側からイオンビーム鏡筒17の出射端部17a側(つまり試料S側)に向かって順次に配置される引出電極51と、コンデンサレンズ52と、ブランカー53と、第1アライメント54と、可動絞り55と、第2アライメント56と、スティグメータ57と、走査電極58と、対物レンズ59とを備える。
【0031】
引出電極51は、イオン源41との間に発生させる電界によってイオン源41からイオンを引き出す。引出電極51に印加される電圧は、例えば、イオンビームの放射(エミッション)電流に応じて制御される。
コンデンサレンズ52は、例えば、光軸に沿って配置される第1コンデンサレンズ52a及び第2コンデンサレンズ52bを備える。第1コンデンサレンズ52a及び第2コンデンサレンズ52bの各々は、例えば、光軸に沿って配置される3つの電極を備える静電レンズである。
コンデンサレンズ52は、引出電極51によってイオン源41から引き出されたイオンビームを集束させる。コンデンサレンズ52では、イオンビーム鏡筒17の光学条件に応じて印加される電圧が調整されることによって、イオンビームの集束度合いに関するレンズ強度が変更される。
【0032】
ブランカー53、第1アライメント54、第2アライメント56及び走査電極58は、イオンビームを偏向させる静電偏向器60を構成し、スティグメータ57はビーム形状を補正する。
ブランカー53は、例えば、イオンビームの進行方向に交差する方向の両側から光軸を挟み込むように対向して配置される一対の電極(ブランキング電極)等を備える。ブランカー53は、イオンビームの遮断の有無を切り替える。例えば、ブランカー53は、イオンビームを偏向させることによってブランキングアパーチャ(図示略)に衝突させて遮断し、イオンビームを偏向させないことによって遮断を解除する。
第1アライメント54は、例えば、イオンビームの光軸を取り囲むように筒状に配置される複数の電極等を備える。第1アライメント54は、後述する可動絞り55の絞り部材62をイオンビームの照射によって観察する際に、コンデンサレンズ52によって絞り部材62の表面上に集束するように設定されたイオンビームを絞り部材62の表面上で走査させる。絞り部材62を通過したイオンビームが試料S上に到達すると、2次電子が発生する。走査によりイオンビームが絞り部材62で遮られる走査領域では2次電子が発生しないため、絞り部材62の形状を反映したSIM(走査イオン顕微鏡)像を得ることができる。さらに絞り部材62上に集束したイオンビームとすることにより絞りの縁形状を鮮明にできる。
【0033】
図3は、実施形態でのイオンビーム鏡筒17の可動絞り55の構成を示す図である。
図2及び図3に示すように、可動絞り55は、駆動機構61と、絞り部材62とを備える。
駆動機構61は、例えば、軸部材61aと、第1フランジ61b及び第2フランジ61cと、伸縮管継手61dと、ステージユニット61eと、支持ブロック61fと、回転アクチュエータ61gとを備える。
軸部材61aは、イオンビーム鏡筒17の内部で絞り部材62に連結されるとともに、イオンビーム鏡筒17の外部でステージユニット61eに配置された支持ブロック61fに支持されている。
第1フランジ61b及び第2フランジ61cの外形は、例えば軸部材61aが挿入される貫通孔が形成された円環板状である。
第1フランジ61bは、イオンビーム鏡筒17の表面(外面)に固定されている。第1フランジ61bの外面(第2フランジ61c側の表面)61Bは、ビーム軸上の所定点を中心点とする球面の一部又はビーム軸を中心軸とする円筒面の一部を備える。駆動機構61は、第1フランジ61bと第2フランジ61cの間をシールするシール材を備える。第1フランジ61bの外面61B上又は外面61Bに対向する第2フランジ61cの表面61Cにシール材を装着する凹溝g1が形成されている。
第2フランジ61cは、ビーム軸の軸周りに第1フランジ61bの外面上を移動可能である。第2フランジ61cの内面(第1フランジ61b側の表面)61Cの形状は、第1フランジ61bの外面61Bの形状とほぼ同一である。第2フランジ61cの中心部を貫通する貫通孔には軸部材61aが挿入されており、軸部材61aは第2フランジ61cの貫通孔内で所定方向に並進運動する。第2フランジ61cの貫通孔の大きさは軸部材61aの可動範囲よりも大きい。
【0034】
例えば、第1フランジ61bの外面61B及び第2フランジ61cの内面61Cが円筒面の場合、各フランジ61b,61cは、互いの円筒軸がビーム軸と一致するように、例えばピン等のガイド部材によって精度良く、イオンビーム鏡筒17の外周に取り付けられる。また、第1フランジ61bの外面61B及び第2フランジ61cの内面61Cが球面の場合、第2フランジ61cをビーム軸に直交する平面に平行な面上を移動させるように、例えばレール等のガイド部材が設けられている。
例えば、第1フランジ61bから位置決め用のピンが立ち、第2フランジ61cにピンを通す切り欠きが形成されることによって、第2フランジ61cは切り欠きに沿って移動することができる。
また、第2フランジ61cの内面61Cには第2フランジ61cが円筒面上を移動できるように溝が形成されてもよい。
【0035】
伸縮管継手61dは、第2フランジ61cとステージユニット61eに配置された支持ブロック61fとの間で軸部材61aを取り囲むとともに、内部を封止するように第2フランジ61cと支持ブロック61fとを一体的に接続する。伸縮管継手61dは、例えば弾性的に伸縮及び変形可能な円筒状のベローズ等である。
なお、伸縮管継手61dは、例えば、第1フランジ61bと支持ブロック61fとを一体的に接続するように配置されてもよい。この場合、伸縮管継手61dは、ステージユニット61eの2軸方向の動きに加えて、第1フランジ61bの外面61Bの動きに応じて弾性的に伸縮及び変形する。
【0036】
ステージユニット61eは、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。例えば、ステージユニット61eは、駆動方向が2軸方向の圧電アクチュエータである。ステージユニット61eの駆動方向は、イオンビーム鏡筒17の光軸に直交する平面内にて互いに直交する任意の2軸方向であり、例えばX軸方向及びY軸方向である。ステージユニット61eは、軸部材61aを駆動方向である2軸方向の各々での並進移動によって進退させる。ステージユニット61eは、絞り部材62に設けられた複数の貫通孔62aから動作モードに登録した貫通孔62をビーム軸上に移動させることができる。
ステージユニット61eは、伸縮管継手61dの外周側に設けられる接続部材61hによって第2フランジ61cに一体に接続されている。接続部材61hの外形は、例えば円筒状である。接続部材61hは、例えば金属等の高剛性の材料によって形成されている。ステージユニット61eは、接続部材61hを介して第2フランジ61cと共に回転する。
【0037】
支持ブロック61fはステージユニット61eに固定されている。支持ブロック61fは軸部材61aを支持する。支持ブロック61fの内周面61D上には、軸部材61aとの間をシールするシール材が装着される凹溝g2が形成されている。
【0038】
回転アクチュエータ61gは、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。例えば、回転アクチュエータ61gは、駆動方向が1軸方向の圧電アクチュエータである。回転アクチュエータ61gの駆動方向は、イオンビーム鏡筒17の光軸に直交する平面内にて軸部材61aに交差する方向であり、例えばY軸方向である。回転アクチュエータ61gは、例えば、第2フランジ61cを第1フランジ61bの外面に沿ってビーム軸の軸周りに進退させる。第2フランジ61cは接続部材61hを介してステージユニット61eと一体であり、ステージユニット61eに固定された支持ブロック61fは軸部材61aを支持するので、回転アクチュエータ61gは、軸部材61aに連結された絞り部材62を、ビーム中心Cを回転中心として回転移動させる。
なお、回転アクチュエータ61gは、電気信号による制御が可能な電動であるとしたが、これに限定されず、例えば絞り部材62による絞りの交換時にのみ回転調整されるような手動の移動機構であってもよい。
【0039】
絞り部材62の外形は、例えば、所定方向に沿って配列される複数の貫通孔62aが形成された矩形板状である。所定方向は、ステージユニット61eの駆動方向に平行な方向である。絞り部材62は、ビーム軸に直交する方向に平行に配置されている。複数の貫通孔62aのいずれかは、駆動機構61による絞り部材62の駆動に応じて、イオンビームの少なくとも一部を通過させる。複数の貫通孔62aは、例えば、観察用の少なくとも1つの円形孔と、加工用の少なくとも各1つの矩形孔及び円形孔とである。
【0040】
図2に示すように、第2アライメント56、スティグメータ57及び走査電極58の各々は、例えば、イオンビームの光軸を取り囲むように筒状に配置される複数の電極等を備える。
第2アライメント56は、イオンビームが対物レンズ59の中心軸を通過するようにイオンビームの軌道を調整する。
スティグメータ57は、イオンビームの非点収差を補正する。
走査電極58は、対物レンズ59を通過したイオンビームを試料S上で走査させる。走査電極58は、例えば、2次元走査用の偏向電圧が印加されることによって、試料Sの表面上の矩形領域をラスター走査する。なお、走査電極58の形状は、図2に示すようなイオンビームを囲む形状に限らず、例えば一対の平行平板状等でもよい。
【0041】
対物レンズ59は、例えば、光軸に沿って配置された3つの電極を備える静電レンズである。対物レンズ59は、イオンビームを試料Sに集束させる。対物レンズ59では、イオンビーム鏡筒17の光学条件に応じて印加される電圧が調整されることによって、イオンビームの集束度合い及びビーム形状の大きさ等に関するレンズ強度が変更される。
【0042】
イオン光学系42は、例えば、光学条件を集束モード及び投射モードなどの複数のモードのいずれかに切り替え可能である。
集束モードは、コンデンサレンズ52と対物レンズ59との間でイオンビームの軌道を交差させずにほぼ平行とし、可動絞り55によってイオンビームの角度広がりを調整する。集束モードは、対物レンズ59によって試料S上に集束させられて静電偏向器60によって偏向されるイオンビームによって試料S上を走査する。
投射モードは、いわゆる均一照明であるケーラー照明法に基づいて、視野絞りに相当する可動絞り55で成形されるイオンビームを走査せずに試料S上に投射する。投射モードは、対物レンズ59によって可動絞り55を光源とし、可動絞り55によって切り取られたイオンビームを試料S上に結像させる。なお、投射モードでは、照射範囲を拡大するなどのために走査が実行されてもよい。
【0043】
(調整プロセス)
図4は、実施形態での荷電粒子ビーム装置10の調整動作を示すフローチャートである。
図4に示すステップS01からステップS07の一連の処理は、例えば荷電粒子ビーム装置10の組み立て時及び可動絞り55の絞り部材62の交換時等の所定のタイミングで実行される。
先ず、制御装置25は、試料Sの表面上に目印試料R(図2参照)を設置する(ステップS01)。目印試料Rは、軸合わせ用の少なくとも直線的な部位を目印として備える試料であって、例えば直交する格子状のメッシュ等である。
次に、制御装置25は、電子ビーム鏡筒15によって電子ビームを目印試料Rに走査しながら照射することによって、目印試料Rを観察するための画像を取得する(ステップS02)。
次に、制御装置25は、目印試料Rの直線的な所定部位を所定軸に一致させるように、ステージ駆動機構33によってステージ31の位置及び姿勢を調整する(ステップS03)。所定軸は、例えば、電子ビーム鏡筒15による電子ビームの走査方向に平行な走査軸(例えば、X軸方向に沿う走査X軸)、イオンビーム鏡筒17によるイオンビームの走査方向に平行な走査軸(例えば、X軸方向の走査X軸)及びステージ31の並進軸(例えば、X軸)又は傾斜軸等のいずれかである。
【0044】
次に、制御装置25は、イオンビーム鏡筒17によってイオンビームを目印試料Rに走査しながら照射することによって、目印試料Rを観察するための画像を取得する(ステップS04)。この場合、制御装置25は、例えば、イオンビーム鏡筒17のイオン光学系42の光学条件を集束モードに設定して、可動絞り55の絞り部材62での観察用の円形孔の中心をビーム中心C(図3参照)に一致させることによって、光軸に対する断面形状が円形であるイオンビームを形成する。制御装置25は、第1アライメント54によってイオンビームを目印試料R上で走査させる。
【0045】
次に、制御装置25は、上述のステップS04にて取得した画像にて、電子ビームの照射によって観察した部位と同一の部位(つまり目印試料Rの直線的な所定部位)に一致する軸(観察軸)を把握し、把握した観察軸の位置及び姿勢情報を記憶する(ステップS05)。
次に、制御装置25は、イオンビーム鏡筒17によってイオンビームを可動絞り55の絞り部材62に走査しながら照射することによって、絞り部材62の加工用の貫通孔62aを観察するための画像を取得する(ステップS06)。この場合、制御装置25は、例えば、イオンビーム鏡筒17のイオン光学系42の光学条件を絞り観察モードに設定して、第1アライメント54に走査電極58の走査信号を入力することによってイオンビームを絞り部材62上で走査させる。制御装置25は、例えば、コンデンサレンズ52によってイオンビームを絞り部材62の表面上に集束させるとともに、対物レンズ59に印加する電圧をゼロにする。制御装置25は、加工用の貫通孔62aがビーム中心Cと一致するように可動絞り55を移動させる。
【0046】
次に、制御装置25は、上述のステップS06にて取得した画像に基づき、可動絞り55の絞り部材62での加工用の矩形孔の一部を形成する所望の直線状のエッジを、上述したステップS05にて記憶した観察軸に一致させるように可動絞り55の駆動機構61によって絞り部材62の位置を調整する(ステップS07)。例えば、加工用の矩形孔での所望の直線状のエッジがビーム中心Cを含む場合、回転アクチュエータ61gの駆動によって絞り部材62のビーム軸周りの位置を調整する。そして、制御装置25は、処理をエンドに進める。
【0047】
上述したように、実施形態の荷電粒子ビーム装置10は、所定軸に対して位置及び姿勢決めされた目印試料Rの画像から認識される観察軸に対して絞り部材62の加工用の貫通孔62aを位置及び姿勢決めする制御装置25を備えることによって、投射モードによる加工に用いられる絞り部材62の貫通孔62aの位置及び姿勢を精度良く設定することができる。
制御装置25は、電子ビームの照射により得られる画像から認識される目印試料Rの直線的な所定部位を所定軸に一致させた後に、イオンビームの照射により得られる画像から認識される目印試料Rに応じて把握される観察軸を絞り部材62の貫通孔62aの直線状のエッジに一致させる。これにより、投射モードによる加工に用いられる絞り部材62の貫通孔62aの位置及び姿勢を、電子ビームによる観察に関連する所定軸に対して精度良く設定することができ、加工位置の精度、再現性及び加工効率を向上させることができる。例えば加工時毎にステージ31の駆動及び絞り部材62の駆動によって加工位置の調整を行う必要無しに、精度良く加工位置決めを行うことができるとともに、加工に要する時間が嵩むことを抑制することができる。例えば貫通孔62aの直線状のエッジによる断面加工の場合、形成される断面形状のエッジの急峻性を容易に確保することができる。
【0048】
イオンビームを絞り部材62の表面上で走査させる偏向器として、絞り部材62よりも上流側に配置される第1アライメント54を備えることによって、イオンビームの照射によって絞り部材62の画像を適切に得ることができる。
可動絞り55の駆動機構61は、絞り部材62を2軸方向に並進移動させるステージユニット61e及びビーム中心Cを回転中心として絞り部材62を回転移動させる回転アクチュエータ61gを備えることによって、絞り部材62の加工用の貫通孔62aの位置決めを容易に行うことができる。ステージユニット61e及び回転アクチュエータ61gは、イオンビーム鏡筒17の外部、つまり内部が減圧状態に維持される筐体の外部に配置されていることによって、装置構成が複雑になることを抑制することができる。
【0049】
上述したように、実施形態の荷電粒子ビーム装置10の調整方法によれば、電子ビームの照射により得られる画像から認識される目印試料Rの直線的な所定部位をステージ31の駆動によって所定軸に一致させることによって、イオンビームによる加工後の観察時にステージ31の駆動無しに電子ビームを照射することができる。
目印試料Rを所定軸に対して位置及び姿勢決めした後に、イオンビームの照射により得られる画像から認識される目印試料Rに応じて把握される観察軸を絞り部材62の貫通孔62aの直線状のエッジに一致させることによって、投射モードによる加工に用いられる絞り部材62の貫通孔62aの位置を所定軸に対して精度良く設定することができ、加工位置の精度、再現性及び加工効率を向上させることができる。
【0050】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0051】
上述の実施形態では、ステップS02及びステップS03に示すように、電子ビームの照射による目印試料Rの観察に基づくステージ31の駆動によって目印試料Rを所定軸に位置及び姿勢合わせするとしたが、これに限定されない。例えば、ステップS02及びステップS03の代わりに、電子ビームの照射によらずに他の手法に基づいて目印試料Rを所定軸に位置及び姿勢合わせしてもよい。この場合、制御装置25は、ステップS05にて、適宜の手法によって所定軸に位置及び姿勢合わせされた部位と同一の部位(つまり目印試料Rの直線的な所定部位)に一致する軸(観察軸)を把握し、把握した観察軸の位置及び姿勢情報を記憶する(ステップS05)。なお、例えば、イオンビームによる試料Sの加工後に電子ビームによる加工部位の観察を行うことが前提であれば、所定軸は、電子ビームの走査方向に平行な走査軸(例えば、X軸方向の走査X軸)と実質的に同一又は関連する軸であることが好ましい。
【0052】
上述の実施形態では、可動絞り55の駆動機構61は、イオンビーム鏡筒17の外部に配置される回転アクチュエータ61gを備えるとしたが、これに限定されない。例えば、イオンビーム鏡筒17の内部に配置される回転アクチュエータを備えてもよい。
図5は、実施形態の第1変形例でのイオンビーム鏡筒17の可動絞り55Aの構成を示す図である。
図5に示すように、第1変形例の可動絞り55Aは、駆動機構71と、絞り部材72とを備える。駆動機構71は、例えば、軸部材61aと、ステージユニット61eと、支持ブロック61fと、フランジ61jと、回転ステージ61kとを備える。
軸部材61aは、イオンビーム鏡筒17の内部で回転ステージ61kに接続されるとともに、イオンビーム鏡筒17の外部でステージユニット61eに配置された支持ブロック61fに支持されている。
フランジ61jの外形は、例えば軸部材61aが挿入される貫通孔が形成された円環板状である。フランジ61jは、イオンビーム鏡筒17の表面(外面)に固定されている。
【0053】
回転ステージ61kは、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。例えば、回転ステージ61kは、圧電アクチュエータによる超音波モーター又は電磁モーター等を備える。回転ステージ61kは、ビーム軸に平行な回転軸の軸周りに絞り部材72を回転させる。なお、回転ステージ61kは、電気信号による制御が可能な電動であるとしたが、これに限定されず、例えば絞り部材72による絞りの交換時にのみ回転調整されるような手動の移動機構であってもよい。
絞り部材72の外形は、例えば、少なくとも1つの円周上の周方向に沿って配列される複数の貫通孔72aが形成された円形板状である。絞り部材72は、ビーム軸に直交する方向に平行に配置されている。絞り部材72の回転中心Dは、ビーム軸に直交する平面内にてビーム中心CからX軸方向にステージユニット61e側にずれて配置されている。複数の貫通孔72aのいずれかは、駆動機構71による絞り部材72の駆動に応じて、イオンビームの少なくとも一部を通過させる。複数の貫通孔72aは、例えば、観察用の少なくとも1つの円形孔と、加工用の少なくとも各1つの矩形孔及び円形孔とである。
【0054】
第1変形例によれば、制御装置25は、絞り部材72の同一円周上に配置される複数の貫通孔72aのいずれかをビーム中心Cに対して位置決めすることによって、複数の貫通孔72aをステージユニット61eによる駆動無しに回転ステージ61kの駆動によって切り替えることができる。
また、駆動方向が2軸方向であるステージユニット61eによる駆動と回転ステージ61kによる駆動との組み合わせによって、各貫通孔72aの適宜の回転中心に対する回転角度を任意に設定することができる。
【0055】
上述の実施形態では、イオン光学系42は、イオンビームを絞り部材62の表面上で走査させる第1アライメント54を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、イオンビームを絞り部材62の表面上で走査させるブランカーを備えてもよい。
図6は、実施形態の第2変形例でのイオンビーム鏡筒17Aの構成を示す図である。
図6に示すように、第2変形例のイオンビーム鏡筒17Aは、イオン源41と、イオン光学系42Aとを備える。
第2変形例のイオン光学系42Aは、例えば、イオン源41側からイオンビーム鏡筒17Aの出射端部側(つまり試料S側)に向かって順次に配置される引出電極51と、コンデンサレンズ52と、ブランカー53Aと、可動絞り55と、アライメント56Aと、スティグメータ57と、走査電極58と、対物レンズ59とを備える。ブランカー53A、アライメント56A、スティグメータ57及び走査電極58は、イオンビームを偏向させる静電偏向器60Aを構成する。
【0056】
第2変形例のブランカー53Aは、例えば、イオンビームの進行方向に交差する少なくとも2方向の各々の両側から光軸を挟み込むように対向して配置される二対の電極(ブランキング電極)等を備える。ブランカー53Aは、イオンビームの遮断の有無を切り替えるとともに、可動絞り55の絞り部材62をイオンビームの照射によって観察する際に、コンデンサレンズ52によって絞り部材62の表面上に集束するように設定されたイオンビームを絞り部材62の表面上で走査させる。
第2変形例のアライメント56Aは、例えば、イオンビームの光軸を取り囲むように筒状に配置される複数の電極等を備える。アライメント56Aは、イオンビームが対物レンズ59の中心軸を通過するようにイオンビームの軌道を調整する。
【0057】
第2変形例によれば、イオンビームを絞り部材62の表面上で走査させる偏向器として、少なくとも4極のブランカー53Aを備えることによって、絞り部材62の上流側にアライメントを備える必要無しに、イオン光学系42Aの構成が複雑になることを抑制することができる。
【0058】
上述の実施形態又は第2変形例では、イオン光学系42,42Aは、加工用の貫通孔62aが形成された絞り部材62を、第2アライメント56又はアライメント56Aの上流側に備えるとしたが、これに限定されない。例えば、絞り部材62は、対物レンズ59と試料Sとの間に配置されてもよい。
図7は、実施形態の第3変形例でのイオンビーム鏡筒17Bの構成を示す図である。
図7に示すように、第3変形例のイオンビーム鏡筒17Bは、イオン源41と、イオン光学系42Bとを備える。
第3変形例のイオン光学系42Bは、例えば、イオン源41側からイオンビーム鏡筒17Bの出射端部側(つまり試料S側)に向かって順次に配置される引出電極51と、コンデンサレンズ52と、ブランカー53と、絞り81と、アライメント56Aと、スティグメータ57と、走査電極58と、対物レンズ59と、可動絞り55とを備える。ブランカー53、アライメント56A、スティグメータ57及び走査電極58は、イオンビームを偏向させる静電偏向器60Bを構成する。
【0059】
絞り81は、駆動機構81aと、絞り部材81bとを備える。
駆動機構81aは、荷電粒子ビーム装置10の動作モードなどに応じて制御装置25から出力される制御信号によって制御される。例えば、駆動機構81aは、少なくとも1軸方向に駆動する圧電アクチュエータを備える。圧電アクチュエータは、少なくともイオンビーム鏡筒17Bの光軸に交差する平面内の任意の1軸方向に駆動する。圧電アクチュエータは、イオンビーム鏡筒17の光軸に直交するX軸方向に駆動することによって、絞り部材81bをX軸方向に進退させる。
絞り部材81bの外形は、例えば、所定方向に沿って配列される複数の貫通孔81cが形成された板状である。所定方向は、駆動機構81aの駆動方向であって、例えば、X軸方向である。複数の貫通孔81cは、駆動機構81aによる絞り部材81bの駆動に応じて、イオンビームの一部を通過させるために、いずれかに切り替えられる。複数の貫通孔81cは、例えば、観察用の円形孔である。
【0060】
第3変形例にて、制御装置25は、イオンビームの照射によって絞り部材62の加工用の貫通孔62aを観察するための画像を取得する場合、イオン光学系42Bの光学条件を集束モードに設定して、走査電極58によってイオンビームを絞り部材62上で走査させる。制御装置25は、例えば、対物レンズ59によってイオンビームを絞り部材62の表面上に集束させる。
第3変形例によれば、イオンビームの照射によって目印試料R及び絞り部材62の各々の画像を取得する際に同一の偏向器である走査電極58によってイオンビームを走査することができる。
【0061】
上述の実施形態では、制御装置25は、目印試料Rをイオンビームの照射によって観察する際に、イオン光学系42の光学条件を集束モードに設定するとしたが、これに限定されない。
例えば、制御装置25は、コンデンサレンズ52によってコンデンサレンズ52の直後にイオンビームのクロスオーバーを形成するとともに、対物レンズ59に印加する電圧をゼロにしてもよい。
上述の実施形態では、制御装置25は、可動絞り55の絞り部材62をイオンビームの照射によって観察する際に、イオン光学系42の光学条件を集束モードに設定するとしたが、これに限定されない。
例えば、制御装置25は、イオン光学系42の光学条件を投射モードに設定してもよい。投射モードの場合、絞り部材62の貫通孔62aの中心とビーム中心Cとが一致していなくてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、可動絞り55の回転アクチュエータ61gは、第2フランジ61cを介して、軸部材61a、伸縮管継手61d、ステージユニット61e、支持ブロック61f及び接続部材61hの全体を一体的に第1フランジ61bの外面に沿ってビーム軸の軸周りに進退させるとしたが、これに限定されない。
例えば、軸部材61aをステージユニット61e側の端部を中心として回転可能に構成することによって、回転アクチュエータ61gは、ステージユニット61eを移動させずに、軸部材61a、支持ブロック61f及び伸縮管継手61dを一体的に第1フランジ61bの外面に沿ってビーム軸の軸周りに進退させてもよい。この場合、制御装置25は、ステージユニット61eによって軸部材61aを駆動することによって、ビーム中心Cに対する絞り部材62の位置を調整してもよい。
【0063】
上述した実施形態又は第1変形例にて、回転アクチュエータ61g及び回転ステージ61kは、制御装置25から出力される制御信号によって制御されるとしたが、これに限定されない。例えば、絞り部材62,72は、ギヤ及びベルト等を備える駆動機構が操作者の手動により駆動されることによって回転してもよい。
【0064】
上述した実施形態又は第1変形例にて、ステージユニット61eの駆動方向は2軸方向であるとしたが、これに限定されない。例えば、ステージユニット61eの駆動方向は軸部材61aの軸方向に平行な1軸方向であってもよい。この場合、実施形態の絞り部材62に形成される複数の貫通孔62aは1軸方向に沿って配列されればよく、第1変形例の絞り部材72に形成される複数の貫通孔72aは1つの円周上の周方向に沿って配列されればよい。
また、上述した第1変形例では、ステージユニット61eは省略されてもよい。この場合、回転ステージ61kの駆動によって絞り部材72に形成された同一円周上の複数の貫通孔72aのいずれかが選択される。
【0065】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
10…荷電粒子ビーム装置、11…試料室、12…試料ホルダ、13…試料台、15…電子ビーム鏡筒、17,17A,17B…イオンビーム鏡筒、21…二次荷電粒子検出器、23…ガス供給部、25…制御装置、27…入力装置、29…表示装置、41…イオン源(荷電粒子源)、42,42A,42B…イオン光学系、52…コンデンサレンズ、53,53A…ブランカー(偏向器)、54…第1アライメント(偏向器)、55,55A…可動絞り、56…第2アライメント、56A…アライメント、57…スティグメータ、58…走査電極(偏向器)、59…対物レンズ、61…駆動機構、61e…ステージユニット(第1駆動機構)、61f…支持ブロック、61g…回転アクチュエータ(第2駆動機構)、61h…接続部材、61k…回転ステージ(第2駆動機構)、62…絞り部材、62a…貫通孔、71…駆動機構、72…絞り部材、72a…貫通孔、EB…電子ビーム、IB…イオンビーム、C…ビーム中心、R…目印試料、S…試料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7