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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240820BHJP
   G01R 31/12 20200101ALI20240820BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240820BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H05K1/02 G
G01R31/12 A
G01R31/52
H05K3/00 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020108140
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003674
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】益川 純一
(72)【発明者】
【氏名】星 裕之
(72)【発明者】
【氏名】濱吉 繁幸
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203820(JP,A)
【文献】特開2010-107420(JP,A)
【文献】特開平09-211056(JP,A)
【文献】特開平07-005223(JP,A)
【文献】特開2014-042066(JP,A)
【文献】特開2006-013263(JP,A)
【文献】特開2010-278102(JP,A)
【文献】特開2020-038996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
G01R 31/12
G01R 31/52
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路基板を含む集合基板を作製し、該作製した集合基板を個々の前記回路基板に分割することで、前記複数の回路基板を製造する回路基板の製造方法において、
複数の第1端子と前記複数の第1端子同士を同電位に接続する第1配線部とを有する第1測定電極と、複数の第2端子と前記複数の第2端子同士を同電位に接続する第2配線部を有する第2測定電極と、を用い、
前記第1端子と前記第2端子との間に前記集合基板を挟み、前記第1配線部及び前記第2配線部が測定用機器に電気的に接続されることで、前記複数の回路基板の絶縁特性を一括して測定することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の回路基板の製造方法において、
絶縁特性を測定した後に前記集合基板を分割することによって、個々の前記回路基板を得ることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路基板の製造方法において、
前記集合基板は、一方側に複数の回路板を備え、他方側に複数の放熱板を備え、
前記第1測定電極は、前記複数の回路板に対応する数の前記第1端子をし、
前記第2測定電極は、前記複数の放熱板に対応する数の前記第2端子を有していることを特徴とする回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を多数個取りする為の窒化珪素セラミックス集合基板に関し、特に回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電装部品としてセラミックス基板と金属板を張り合わせた回路基板が使用されている。電気自動車の普及に伴って、回路基板の生産量も増加すると考えられている。回路基板は、半導体モジュール、パワーモジュール等に利用され、熱伝導性および絶縁性、強度などの点で回路用セラミックス基板が用いられる。この回路用セラミックス基板に、CuやAlなどの金属板が金属回路板や金属放熱板として接合されて回路基板とされている。回路用セラミックス基板としては、アルミナ材が広く使われてきたが、最近では、より厳しい環境でも使用できるように、高強度で熱伝導性も改善された窒化珪素が使用されるようになってきている。
【0003】
また、回路基板を量産する技術として、前記回路用セラミックス基板が多数切り出せる大きさの1枚のセラミックス集合基板に、活性金属ろう付け法や直接接合法などによりCu板等の金属板を接合し、エッチング加工等で金属回路板と金属放熱板を形成して、セラミックス集合基板を所定の大きさに分割して個々の回路基板を得るという方法がある。
【0004】
個々の回路基板に分割する方法としては、例えば、Cu板等の接合前にレーザ加工により、セラミックス集合基板に凹部又は溝を形成しておき、Cu板等を接合後にセラミックス集合基板を撓ませて、凹部又は溝で分割する方法が採用されている。
【0005】
なお、回路基板、或いは回路板を備えた回路基板について、1個ずつ耐圧を測定することが、特許文献1(特開2010-76948号公報)、及び特許文献2(WO2009/154295号公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-76948号公報
【文献】WO2009/154295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回路基板はセラミックス基板を金属板で挟む構造となっているが、要求される絶縁特性として、金属板間の絶縁性や、セラミックス基板内のピンホールの有無を検出するための部分放電特性が挙げられる。従来、この絶縁特性は、回路基板の製造後に1個ずつ検査されていたが、回路基板の生産量の増加に伴って検査に必要する時間や人員が増加するという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、絶縁特性の検査に係る工数を低減することで、回路基板の製造を効率よく行うことができる回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の回路基板を含む集合基板を作製し、該作製した集合基板を個々の前記回路基板に分割することで、前記複数の回路基板を製造する回路基板の製造方法において、前記集合基板の状態で、前記回路基板の絶縁特性を一括して測定することを特徴とする回路基板の製造方法である。
また、本発明は、複数の回路基板を含む集合基板を作製し、前記集合基板で前記複数の回路基板の絶縁特性を一括して測定することを特徴とする回路基板の製造方法である。
【0010】
本発明の一形態にて、絶縁特性を測定した後に前記集合基板を分割することによって、個々の前記回路基板を得ることができる。たとえば、集合基板を分割するには、回路基板の間に設けるブレークラインに沿って分割を行ってもよい。
【0011】
本発明の一形態にて、第1測定電極と第2測定電極を用い、前記第1測定電極と前記第2測定電極との間に前記回路基板を挟み、前記複数の回路基板の絶縁特性を一括して測定することができる。
【0012】
本発明の一形態にて、 前記第1測定電極は、複数の回路板に対応する数の第1端子と、前記第1端子同士を同電位に接続する配線部とを有しており、前記第2測定電極は、複数の放熱板に対応する数の第2端子と、前記第2端子同士を同電位に接続する配線部とを有していることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の回路基板の製造方法を用いることによって、絶縁性や部分放電特性といった絶縁特性の検査に係る工数を低減することができるため、回路基板の製造を効率よく行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に関して絶縁特性の検査を説明する概略図である。
図2】本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板を説明する概略図である。
図3図2の基板から得た窒化珪素セラミックス集合基板を説明する概略図である。
図4図3の基板に第2のブレークラインを形成した概略図である。
図5図4の基板にろう材を塗布した概略図であり、(5a)はおもて面及び(5b)は裏面を示す。
図6図5の基板に原版のCu板を配置し、ろう付けした概略図であり、(6a)はおもて面及び(6b)は裏面を示す。
図7図6の基板で原版のCu板をパターニングし、はみ出したろう材層を除去した概略図であり、(7a)はおもて面及び(7b)は裏面を示す。
図8図7の基板から得た回路基板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の構成について以下に説明するが、本発明は、必ずしもそれらに限定されるものではない。各構成に関する説明は、特に断りがなければ他の構成にも適用できる。
【0016】
本発明は、回路基板の絶縁特性の検査において、個々の回路基板に分割する前の複数の回路基板を含む「集合基板」の状態で、複数の回路基板の絶縁特性を一括して測定することによって、一括に検査を行うことができ、当該検査に係る時間を短縮し、効率よく回路基板を製造することを特徴とする。ここで“絶縁特性の検査”は、絶縁性の検査あるいは部分放電特性の検査を含める文言として用いることにする。
【0017】
絶縁特性(部分放電特性)の検査で、絶縁媒体(絶縁油など)に回路基板を浸漬して検査を行う場合には、高速搬送が困難であり、測定治具へ設置、取り出しの工数が掛かる。また、絶縁媒体の除去工数が掛かる。つまり、1つの回路基板に掛かる検査の時間が長くなるだけでなく、回路基板の数が多くなるとトータルの検査工数が増加することなる。これに対して、本発明の回路基板の製法方法を適用すると、検査工数を低減でき、効率よく回路基板を製造することができるようになる。
【0018】
絶縁媒体に回路基板を浸漬して検査を行う場合は、測定治具からの取り出しの際に回路基板による絶縁媒体の持ち出しが生じるが、本発明のように、複数の回路基板を備える「集合基板」の状態で絶縁特性の検査することによって、測定治具への出し入れの回数が減り、持ち出し量を少なくすることができる。
【0019】
本発明に係る回路基板の製造方法における絶縁特性の検査(測定方法)について、図1の概略図で説明する。ここで、窒化珪素セラミックス集合基板12(以下、集合基板12)は、窒化珪素セラミックス焼結基板1の一方側に、ろう材層(図示を省略)を介して複数枚の回路板16を有し、窒化珪素セラミックス焼結基板1の他方側に、ろう材層(図示を省略)を介して複数枚の放熱板16’を備え、複数の回路板16と複数の放熱板16’は、側面視で、夫々対向しており、一対の関係になっている。この一対の回路板16及び放熱板16’と、それらの間にろう材層を介して挟まれた窒化珪素セラミックス焼結基板1と、が本発明に係る回路基板に相当する。なお、後述する図7の集合基板は、回路基板を4個備える構成(回路基板の配列は2×2に相当)だが、それに対し、図1の集合基板12は、回路基板を16個備える構成(回路基板の配列は4×4に相当)である。
【0020】
まず、集合基板12に対して、図1では上側において回路板16毎に測定治具53aのプローブ51aを同時に当てて接触させて、図1では下側において放熱板16’毎に測定治具53bのプローブ51bを同時に当てて接触させる。この際に、複数のプローブ51a(第1端子に相当)は、測定用配線52a(一方の配線部に相当)に集約する形で同じ電位となるように接続されて第1測定電極となり、更に測定用配線52bを介して測定機器54の一方の端子に接続される。また、複数のプローブ51b(第2端子に相当)は、測定用配線52c(他方の配線部に相当)に集約する形で同じ電位となるように接続されて第2測定電極となり、更に測定用配線52dを介して測定機器54の他方の端子に接続される。
【0021】
次に、測定機器54を作動させると、たとえば、絶縁特性を一括して測定できる。すなわち、集合基板12における複数の回路基板(回路基板は、回路板/窒化珪素セラミックス焼結基板/放熱板で構成される)は、複数の第1測定電極と複数の第2測定電極との間に挟まれるので、複数の回路基板の絶縁特性を一括して測定することができる。つまり、窒化珪素セラミックス焼結基板1を介して対応する一対の回路板16及び放熱板16’が1つの回路基板に相当するので、複数の回路基板の絶縁特性の検査を一括して行っていることになる。
【0022】
この様に、複数の回路基板の絶縁特性の検査を一括して行った後、検査後の集合基板12を分割することによって、複数の回路基板を得ることができる。なお、分割するには、たとえば、回路基板の間に形成するブレークラインに沿って分割するとよい。ブレークラインは、回路基板の絶縁特性の検査前に形成してもいいし、回路基板の絶縁特性の検査後に形成してもいい。
【0023】
集合基板12(窒化珪素セラミックス集合基板)の製造方法について、図2図7を用いて説明する。まず、図2に示すように、焼結で得る窒化珪素セラミックス焼結基板1に、炭酸ガスレーザ(COレーザ)等を用いて、窒化珪素セラミックス焼結基板1の外縁10から内側の位置に外縁10に沿ってスクライブ孔13a(非貫通の孔)を複数個形成することで、スクライブ孔の中心間を結ぶ分割線による第1のブレークライン13(以下、辺ブレークライン13という)とする(スクライブ孔形成工程)。以下で「スクライブ孔」は基板を貫通していない孔(非貫通の孔)を指す。図2で、外縁10とブレークライン13の間は耳部(第1の耳部)に相当し、辺ブレークライン13から内側は集合基板12(窒化珪素セラミックス集合基板)に相当する。なお、スクライブ孔同士が接触するように並べてブレークラインを構成する場合には、ブレークライン13は溝といえる。
【0024】
そして、辺ブレークライン13が交差する角部に辺ブレークライン13と傾斜する方向に、いわば角部を面取りするように、窒化珪素セラミックス焼結基板1の厚さ方向に貫通するスリット14を形成する(面取り用の貫通孔形成工程(より詳細にはスリット形成工程))。以下で、「スリット」は一方の面から他方の面に基板を貫通している細長い切り込みを指す。「面取り用の貫通孔」は一方の面から他方の面に基板を貫通している孔を指す。前記スリット14は、複数個の貫通孔を連結して形成され、貫通孔の中心間を結ぶ分割線によるブレークライン15(以下、角ブレークラインという)を構成している。角ブレークライン15は、辺ブレークラインと交差して、辺ブレークラインから長さL2で突出していてもよい。長さL2はスリットの形成に用いたレーザのビームスポット直径より大きく、且つ3.5mm未満であることが好ましい。なお、スリット14に代えて、複数個の貫通孔を配列してなる角ブレークラインを用いることもできる(貫通孔同士は、間隔を置くので接触していない)。角ブレークラインを設けない形態とすることも出来るが、角ブレークラインを設ける方が集合基板の角部のクラック等を抑制するうえで好ましい。また、たとえば図5図7は、回路基板を4個備える集合基板12(窒化珪素セラミックス集合基板)の製造について説明しているが、集合基板12に備える回路基板の数は、4個より多くしてもよい。
【0025】
そして、窒化珪素セラミックス焼結基板1の外縁10を構成する四辺のうち、長い方の辺を長辺とするが、この長辺に沿って形成された辺ブレークライン13について、その内側(外縁10とは反対の側)に所定の距離L1をおいて位置決め用の貫通孔5を形成する(位置決め用の貫通孔形成工程)。長辺に沿った辺ブレークラインは2本あり、角ブレークライン15の近くに1個ずつ貫通孔5を形成するので、合計4個の位置決め用貫通孔5を有する窒化珪素セラミックス焼結基板1を得る(辺ブレークライン13と位置決め用貫通孔5の間隔はいずれもL1である)。なお、位置決め用の貫通孔5の直径は、100~500μmが好ましく、150~300μmが更に好ましい。そして、距離L1は、0.1~4.0mmであることが好ましく、0.2~3.0mmであることが更に好ましく、0.5mm~2.0mmであることがより好ましい。このように数値範囲を規定するのは、L1が小さすぎると、位置決め用の貫通孔5が辺ブレークラインに接触する虞があり、また辺ブレークラインの近くに貫通孔を設ける場合、基板強度の低下につながる虞がある為である。またL1が大きすぎると、位置決め用の貫通孔を設ける為の取り代(第2の耳部に相当)の幅が大きくなって、相対的に、上面視したときの回路基板における窒化珪素セラミックス焼結基板1の面積が小さくなり、回路基板の取り数が減る。
【0026】
ついで、窒化珪素セラミックス焼結基板1の四辺について、各々の耳部を順に撓ませて、辺ブレークライン13と直角な方向に曲げによる引張応力を作用させて、窒化珪素セラミックス焼結基板1から四辺の耳部11を分割する(耳部分割工程)。得られる集合基板12a(窒化珪素セラミックス集合基板)は、図3に示すように、縁部17の端のあたり、すなわち四隅の角部を面取している箇所の近くで、且つ辺ブレークライン13から所定の距離L1離れた箇所に、位置決め用の貫通孔5を有している。
【0027】
ついで、図4に示すように、集合基板12aの面に第2のスクライブ孔による第2のブレークライン18,18’を形成する。第2のブレークライン18は辺ブレークライン13に沿って形成されており、辺ブレークライン13と第2のブレークライン18の距離は、距離L1より大きい。なお、第2の耳部に相当する箇所に貫通孔5は位置している。例えば2本の第2のブレークライン18’は、4本の第2のブレークライン18の中点と交差するように形成されている。なお、集合基板12aにおいて、対角線を引き、対角線の交点を集合基板12aの中心点として求めることが出来る。
【0028】
ついで、図5の(5a)に示すように、図4の集合基板12aのおもて面(表面)において、第2のブレークライン18,18’で区切られている領域に(図5では4つの領域それぞれに)、ろう材ペーストをスクリーン印刷で塗布することによってろう材16aを配置する。さらに、図5の(5b)に示すように、集合基板12aのおもて裏を反転させて、裏面においてろう材ペーストをスクリーン印刷で塗布することによってろう材16a’を配置する。
【0029】
ついで、図6の(6a)に示すように、図5の集合基板12aのおもて面(表面)において、4箇所のろう材16aを覆うように、原版(パターニングする前のCu板を原版と称する)のCu板16bを設ける。さらに、図6の(6b)に示すように、集合基板12aを反転させて、裏面において4箇所のろう材16a’を覆うように、もう1枚の原版のCu板16b’を設ける。ついで、Cu板16b’/ろう材16a’/集合基板12a/ろう材16a/Cu板16bという順に積層されている積層体を熱処理することで、ろう材16a,16a’をろう材層と為して、ろう付けを行う。
【0030】
なお、Cu板16bやCu板16b’を設ける際には、少なくとも貫通孔5を覆わないように、位置を調整して設ける。位置決め用の貫通孔5が覆われてしまって見えないと、後の工程において、レジストパターンの位置決めに使えない為である。Cu板16bやCu板16b’の位置を調整するには、例えば、治具として一対のピン或いはストッパーを用意し、Cu板16bの1つの辺に一方のピン或いはストッパーを当接させて、Cu板16bの隣の辺に他方のピン或いはストッパーを当接させるといった手法を用いる。
【0031】
ついで、画像解析装置等を用いて、おもて面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5について中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、集合基板12aの第1の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第1の中心点」によって得られる集合基板12aの第1の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板16bにレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第1の座標によって決定できる。なお、4つの中心のうち、右上および左下の中心同士を結ぶ結線(仮想線)と、右下および左上の中心同士を結ぶ結線(仮想線)とを描き、2つの結線の交点を第1の中心点として算定してもよい。
【0032】
さらに、集合基板12aのおもて裏を反転させて、裏面において、それぞれの位置決め用の貫通孔5で中心を算定し、位置決め用貫通孔5に係る4つの中心から、集合基板12aの第2の中心点を算定する。前記「4つの中心」および前記「第2の中心点」によって得られる窒化珪素セラミックス集合基板の第2の座標に基づき、フォトレジストを形成する手法やレジストフィルムを貼る手法を用いて、Cu板16b’にレジストパターンを4つ形成する。レジストパターンのアウトラインや位置は、上記第2の座標によって決定できる。おもて面と裏面とで、同じ4つの貫通孔5を用いることで(共通の位置決めの基準として用いることで)、第1及び第2の座標を共通化すること、或いは、第1の中心点と第2の中心点を一致させることが出来て、集合基板12aを挟んで対向するレジストパターン同士の位置を、透視したときに重なるように、正確に合わせられる。
【0033】
ついで、Cu板16bとCu板16b’をエッチング処理によってパターニングして、Cu板の縁から外側へはみ出したろう材層を選択的なエッチングで除去することで、図7の(7a)に示すようにCu板16bから4つの銅の回路板16を形成し、図7の(7b)に示すようにCu板16b’から4つの銅の放熱板16’を形成する。レジストパターンで覆われている箇所に対応する形状にパターニングされるので、集合基板12aを挟んで対向するように、銅の回路板16の位置と銅の放熱板16’の位置は、正確に合わせられる。この後に、銅の回路板16や銅の放熱板16’にNiめっき、Agめっき、或いはAuめっきなどを施してもよい。
【0034】
その後、第2のブレークライン18,18’に沿って集合基板12aを分割することで、回路形成部(回路基板20に相当)及び縁部17(第2の耳部に相当)を分離して、各々の回路基板20を得る。回路基板20は、図8に示すように、銅の回路板16及び銅の放熱板(図示せず)とセラミックス基板部19とを有するものとなる。セラミックス基板部19の面(回路板或いは放熱板を設けた面)に垂直な向きからみたときに、セラミックス基板部19の面内において、おもて面における銅の回路板16の位置と、裏面における銅の放熱板の位置とが合っている。
【0035】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1において、例えば図2に示すように、辺ブレークライン13同士が交差する角部に辺ブレークライン13と傾斜する方向に、いわば角部を面取りするように、角ブレークライン14を形成している。この角ブレークライン14は、窒化珪素セラミックス焼結基板1を貫通するスリットであってもよいし、面取り用の貫通孔が連結してなるスリット14であってもよいし、複数の貫通孔(面取り用の貫通孔)を直列に並べているもの(但し、貫通孔のピッチを、辺ブレークラインのスクライブ孔のピッチよりも小さくするのが好ましい)であってもよい。角ブレークラインが有ることによって、窒化珪素セラミックス焼結基板1を撓ませて、集合基板12と耳部11に分割する際に、集合基板12の四隅に亀裂や欠けを生じることを抑制することができる。
【0036】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1において、スクライブ孔13aは、基板表面における直径は例えば300μm以下、深さは例えば基板厚さの1/3以上とするのが好ましい。スクライブ孔の直径は使用するレーザのビームスポット径によるところが大きいが、30~200μmであることがより好ましく、50~150μmであることが更に好ましい。また、スクライブ孔の深さは、例えば基板厚さが0.32mmの場合、80~300μmであることがより好ましく、100~250μmであることが更に好ましい。またスクライブ孔のピッチはスクライブ孔直径の2倍以下が好ましく、より好ましくはスクライブ孔直径と等しくするのが良く、特に好ましくは基板を分割するときの割断性で決定するのがよい。このピッチ制御は加工速度制御により調整可能であり、レーザ出力パルス数などと連動させてもよい。
【0037】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1において、スクライブ孔による辺ブレークラインが交差する角部に形成し、面取り用の貫通孔を連結してなるスリット14は、たとえばスリット幅を30~200μm、スリットの長さを2.8~8.4mmとするのが好ましい。面取り用の貫通孔の直径或いはスリット幅は、20~150μmであることがより好ましく、30~100μmであることが更に好ましい。スリットの長さは、3.0~8.0mmであることがより好ましく、3.5~7.5mmであることが更に好ましい。また、面取り用の貫通孔によるブレークラインは、幅や長さをスリット寸法と同様にすることができる。
【0038】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1において、貫通孔による角ブレークライン或いはスリットは、スクライブ孔による辺ブレークラインに対して例えば30°~60°傾ける。より具体的にはスクライブ孔による辺ブレークラインに対して例えば45°傾けると、基板の面積を無駄なく有効に使えるので好ましい。
【0039】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1の製造方法において、位置決め用の貫通孔、スクライブ孔、面取り用の貫通孔、或いはスリットは、レーザで形成されることが好ましい。例えば、YAGレーザや炭酸ガスレーザ(COレーザ)を用いる。YAGレーザや炭酸ガスレーザの照射による加工は、基板を貫通する貫通孔を形成したり、深い孔を断続的に形成したりすることに適している。
【0040】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1の製造方法において、位置決め用の貫通孔を形成する際には、レーザのビームスポットの照射を複数回繰り返すことが好ましい。照射を複数回繰り返して孔を掘り下げていくと、照射毎のエネルギー密度を低くできるので、貫通孔の表面(内壁)に熱衝撃による亀裂が形成され難くなる。
【0041】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1及び集合基板12は、基板厚さを例えば0.2mmから1.0mmとする。より具体的には、基板厚さを例えば0.25mmから0.65mmとするのが好ましい。
【0042】
また、本発明に係る窒化珪素セラミックス焼結基板1及び集合基板12では、破壊靱性値を例えば5.0MPa・m1/2以上とする。より具体的には破壊靱性値を例えば5.0~7.5MPa・m1/2とするのが好ましい。また、本発明に係る回路基板の製造方法について、金属板はCu板或いはAl板の少なくとも1種を用いることができる。また、集合基板12と金属板とを接合する手法は、ろう付けに限らず、直接接合法などを用いてもよい。
【0043】
以下、本発明について実施形態で説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に必ずしも限定されない。
【0044】
(集合基板の作製)
まず、図2図7と同様の方法で窒化珪素セラミックス集合基板(集合基板)を作製する(ただし、回路板や放熱板の数を増やしてもよい)。たとえば、140mm×200mm×0.3mmtの窒化珪素セラミックスの板(窒化珪素板)の表面および裏面に、AgCu系ろう剤を用いて130mm×190mm×0.5mmtの圧延銅板を張り合わせて、熱処理することによって窒化珪素板と銅板の接合体を作製する。この接合体を室温まで冷却し、銅板表面にマスク用樹脂パターンを印刷し、塩化第二銅系溶液を用いて銅の一部を溶解して銅パターンを形成する。さらに、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、マスク用樹脂パターンを除去することで回路基板の集合体となる「集合基板」を作製する。得られる集合基板の表裏には、それぞれ20mm×40mmの銅パターンが縦8列、横3列で配置される(この集合基板は、分割すると、24個の回路基板を得ることができるものである)。
【0045】
(実施形態1)
上述の“集合基板の作製”で得る集合基板を使い、1枚の集合基板に含まれる24個の銅パターンの表裏それぞれに電極が接触するよう電極を押し当て、交流2kVの電圧を1秒間印加し、銅板(銅パターン)間に流れる漏れ電流を測定する。測定装置は、例えば総研電機製の装置を用いる(以下、参考形態1でも同じ装置を使用する)。測定回路の接続は図1のようにすることができる。そして、漏れ電流の値は、たとえば2.84~2.99mAである。これは、後に述べる参考形態1における漏れ電流のおよそ24倍の値である。この測定に要する時間はおよそ1分である。なお、この集合基板は、漏れ電流測定の前の段階においてファイバーレーザによるブレークラインの形成を行っていてもよいし、行っていなくてもよい(いずれにしても、ブレークラインに沿っての分割を行ってはいない)。ブレークラインを形成する工数は、実施形態でも、下記の参考形態でも同様である。
【0046】
(参考形態1)
上述の“集合基板の作製”で得る集合基板を使い、ファイバーレーザを用いて集合基板の銅パターン間の中央におよそ50μmの溝(ブレークラインに相当する溝)を掘り、ブレークラインに沿って分割することにより、24個の回路基板を得る。1個の回路基板の表裏にそれぞれ直径1mmの電極を押し当てて、測定装置によって交流2kVの電圧を1秒間印加し、銅板(銅パターン)間に流れる漏れ電流を測定する。漏れ電流の値は、たとえば0.12~0.13mAである。続けて、残りの回路基板についても測定するならば、この測定に要する時間はおよそ24分と算定される。
【0047】
(実施形態2)
上述の“集合基板の作製”で得る集合基板を使い、1枚の集合基板に含まれる24個の銅パターンの表裏それぞれに電極が接触するように電極を押し当て、集合基板及び電極をフロリナートFC-40(3M社製)の中に浸漬し、部分放電試験器によって交流5kVの電圧を5秒間印加し、発生する放電電荷量を測定する。放電電荷量の値は例えば2~3pCである。このレベルの値は、部分放電試験器のベースノイズを測定することで得られるものと考えられ、実質的な放電電荷量はほぼゼロであると見なせる。この測定に要する時間はおよそ1分30秒である。なお、持ち出しや揮発によって消耗する絶縁媒体の量はたとえば20mlである。
【0048】
(参考形態2)
上述の“集合基板の作製”で得る集合基板を使い、ファイバーレーザを用いて集合基板の銅パターン間の中央におよそ50μmの溝(ブレークラインに相当する溝)を掘り、ブレークラインに沿って分割することにより、24個の回路基板を得る。1個の回路基板の表裏にそれぞれ直径1mmの電極を押し当てて、絶縁溶媒であるフロリナートFC-40(3M社製)の中に浸漬し、実施形態2と同じ部分放電試験器によって交流5kVの電圧を5秒間印加し、発生する放電電荷量を測定する。放電電荷量の値は例えば2~3pCであり、実施形態2と同様のレベルと言える。ただし、続けて残りの回路基板についても測定(浸漬からの引上げ→回路基板の差替え→電極押当て→浸漬→放電電荷量測定)をするならば、要する時間は36分以上と算定される。なお、この測定で持ち出しや揮発によって消耗する絶縁媒体の量は例えば30mlである。
【0049】
絶縁性の検査においては、集合基板の状態で検査を行うことにより個々の回路基板の枚数にほぼ比例した漏れ電流が測定され、集合基板の状態での検査が可能である。また、測定に要する時間を大幅に削減できる。一方、部分放電試験特性の測定では、放電電荷量はベースノイズレベルで有ってほぼ変わらず、集合基板の状態での測定が可能である。測定時間を大幅に削減でき、測定に伴う絶縁媒体の使用量も減少する。
【符号の説明】
【0050】
1:窒化珪素セラミックス焼結基板
5:貫通孔
10:外縁
11:耳部
12,12a:窒化珪素セラミックス集合基板
13:辺ブレークライン、13a:スクライブ孔
14:スリット、15:角ブレークライン
16:回路板
16’:放熱板
16a,16a’:ろう材
16b,16b’:原版のCu板
17:縁部
18,18’:第2のブレークライン
19:セラミックス基板部
20:回路基板
51a,51b:プローブ
52a、52b,52c、52d:測定用配線
53a,53b:測定用治具
54:測定機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8