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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】液体濾過器の濾布洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/62 20060101AFI20240820BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B01D29/38 580A
C22B23/00 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020161272
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054212
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大道 陽平
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-212768(JP,A)
【文献】特開2001-170417(JP,A)
【文献】特開2020-059909(JP,A)
【文献】特開2013-185179(JP,A)
【文献】特開2014-237876(JP,A)
【文献】特開平06-226013(JP,A)
【文献】特開2004-148147(JP,A)
【文献】特開2020-185559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04
35/08-37/08
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽と、濾布と、液排出機構と、を備え、前記液排出機構は、濾液を排出する濾液排出部、前記処理槽内の固形物を含む処理液を上流工程側に配置される装置に繰り返す繰り返し部、及び、濾過処理によって分離された固形物を含む液を排出する残滓排出部を有する液体濾過器における、濾布洗浄方法であって、
前記処理槽内への前記処理液の供給を停止した後に、前記処理槽内に貯留されている前記処理液全体の一部分であって、固体分濃度が相対的に高い前記処理液の高濃度部分上流工程側に配置される前記装置には戻さずに、前記残滓排出部から排出する第一の処理液排出工程と、
前記第一の処理液排出工程を行った後に、前記処理槽内に残存している前記処理液全体の他の部分であって、固体分濃度が相対的に低い前記処理液の低濃度部分を、前記繰り返し部から上流工程側に配置される前記装置に戻す第二の処理液排出工程と、
前記第二の処理液排出工程を行った後に、前記処理槽内に洗浄液を注入して前記濾布を該洗浄液で洗浄する洗浄工程と、
この順で行う、
液体濾過器の濾布洗浄方法。
【請求項2】
前記処理槽の下部の形状は、最深部に向かって水平断面積が逓減している形状であって、前記残滓排出部は、前記処理槽の最深部に接合されている、
請求項1に記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【請求項3】
前記第二の処理液排出工程においては、前記濾布の全体が気相中に露出する状態になるまで前記処理液の排出を行い、
前記洗浄工程においては、前記洗浄液を注入する前に、前記濾布への不活性ガスの吹き付けを行う、
請求項1又は2に記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【請求項4】
前記第一の処理液排出工程における、前記処理液の排出量の制御を、前記処理槽の天頂部側において検知される液面の高さの制御によって行う、
請求項1から3の何れかに記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【請求項5】
上流工程側に配置される前記装置が硫化反応槽であって、
前記固形物が硫化物である、
請求項1から4の何れかに記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体濾過器の濾布洗浄方法に関する。詳しくは、本発明は、連続式液体フィルター等の液体濾過器において、濾布の目詰まりに起因する通液量の低下を許容できる程度まで解消するために行われる、濾布洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用対象となる液体濾過器としては、例えば、低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルを回収する高圧硫酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leach)によるニッケル製錬プロセス(図3参照)において、亜鉛硫化物を含む液を濾過する装置として広く用いられている連続式液体フィルター(特許文献1参照)を挙げることができる。
【0003】
ここで、上記の液体濾過器は、一定時間以上通液を継続していると、濾布に固体分が目詰まりして通液量が低下する。この場合には、通液を一時的に停止させて、「槽内の処理液を、繰り返し部から一時的に液体濾過器の外に移した後に、濾布を目詰まりさせている固体分を除去する洗浄処理(以下「バックウォッシュ」とも言う」)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-185179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の液体濾過器において、「バックウォッシュ」と称される従来の濾布洗浄方法を行ったとしても、濾布の目詰まりを完全に除去することは難しい。このような態様で定期的に濾布の洗浄を行ったとしても、濾布の目詰まりの蓄積による経時的な通液量の低下は依然として避けれられず、長期に亘る通液量の維持のためには、定期的な濾布の交換を余儀なくされていた。
【0006】
本発明は、連続式液体フィルター等の液体濾過器において、濾布の目詰まりの蓄積を抑制して、定期的な濾布の交換頻度を下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、連続式液体フィルター等の液体濾過器において、濾布の洗浄を行う場合に、液体濾過器の外に移す工程に先行して、処理液の一部を下流側の装置に少量排出する工程を行うことによって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 処理槽と、濾布と、液排出機構と、を備え、前記液排出機構は、濾液を排出する濾液排出部、上流工程側に配置される装置に前記処理槽内の液の一部を繰り返す繰り返し部、及び、濾過処理によって分離された固形物を含む液を排出する残滓排出部を有する液体濾過器における、濾布洗浄方法であって、前記処理槽内への処理液の供給を停止した後に、前記処理槽内に貯留されている処理液全体の一部分であって、固体分濃度が相対的に高い高濃度部分を、前記残滓排出部から排出する第一の処理液排出工程と、前記処理液の他の一部分であって、前記第一の処理液排出工程を行った後に、前記処理槽内に残存している部分を、前記繰り返し部から上流工程側に配置される装置に戻す第二の処理液排出工程と、前記第二の処理液排出工程を行った後に、前記処理槽内に洗浄液を注入して前記濾布を該洗浄液で洗浄する洗浄工程と、を行う、液体濾過器の濾布洗浄方法。
【0009】
(2) 前記処理槽の下部の形状は、最深部に向かって水平断面積が逓減している形状であって、前記残滓排出部は、前記処理槽の最深部に接合されている、(1)に記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【0010】
(3) 前記第二の処理液排出工程においては、前記濾布の全体が気相中に露出する状態になるまで処理液の排出を行い、前記洗浄工程においては、前記洗浄液を注入する前に、前記濾布への不活性ガスの吹き付けを行う、(1)又は(2)に記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【0011】
(4) 前記第一の処理液排出工程における、前記処理液の排出量の制御を、前記処理槽の天頂部側において検知される液面の高さの制御によって行う、(1)から(3)の何れかに記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【0012】
(5) 上流工程側に配置される前記装置が硫化反応槽であって、前記固形物が硫化物である、(1)から(4)の何れかに記載の液体濾過器の濾布洗浄方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、連続式液体フィルター等の液体濾過器において、濾布の目詰まりの蓄積を抑制して、定期的な濾布の交換頻度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の濾布洗浄方法を適用することができる液体濾過器の構成を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の濾布洗浄方法の処理の流れを示すフロー図である。
図3図1の液体濾過器が用いられる工程の具体例であるニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の工程図である。
図4図3のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の部分工程であって、図1に示す液体濾過器を用いて行われる脱亜鉛工程の処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されない。尚、本発明は、処理槽、濾布、及び、液排出機構を備え、更に、この液排出機構が、上流工程側に配置される装置に処理液の一部を繰り返す繰り返し部を含んで構成されている液体濾過器を適用対象とする(図1参照)。
【0016】
<液体濾過器>
本発明に係る液体濾過器の濾布洗浄方法を適用することができる液体濾過器の一例として、図1に示す液体濾過器10を挙げることができる。図1に示す通り、液体濾過器10は、処理槽1、濾布2、処理液供給機構3、液排出機構4、洗浄液供給機構5、不活性ガス注入機構6、液位検知機構7、排気機構8、及び、液体濾過器10に具備された上記各機構の動作を制御する制御機構(図示せず)が、備えられている。
【0017】
又、液体濾過器10は、高圧硫酸浸出(以下、HPAL:High Pressure Acid Leachの略)によるニッケル回収プロセスに用いる連続式液体フィルターとしての実施を、好ましい実施形態の代表例として挙げることができる。高圧硫酸浸出(以下、HPAL:High Pressure Acid Leachの略)によるニッケル回収プロセスの詳細については後述する。
【0018】
[処理槽]
処理槽1は、処理液を貯留する槽であり、この槽内で、処理液は、濾布2によって濾過される。処理槽1は、槽内の圧力を適切な圧力に調整して処理液の濾布2への浸透を促進させることができる密閉槽であることが好ましい。
【0019】
[濾布]
処理槽1の内部には、濾布2が設置されている。この濾布2によって、処理液(但し、濾過対象となる不純物として一定量の固形物を含んでいる液(固液混合物)のことを言う。以下同じ)を、濾過することにより、不純物を除去した濾液を得ることができる。
【0020】
[処理液供給機構]
処理液供給機構3は、処理槽1の内部に処理液を供給する。例えば、液体濾過器10を、図3に示すニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の脱亜鉛工程において用いる場合であれば、この処理液供給機構3から、亜鉛硫化物を含む固液混合物が処理液として、処理槽1の内部に供給される。
【0021】
[液排出機構]
液排出機構4は、不純物を除去した濾液や、残滓を含む処理液を、処理槽1の外部に排出する。液体濾過器10の液排出機構4は、濾液を排出する、濾液排出部41、上流工程側に配置される装置に処理液の一部を繰り返す、繰り返し部42、及び、濾過処理によって分離された固形物を含む液(固液混合物)を排出する、残滓排出部43と、を含んで構成される。
【0022】
尚、上述の「上流工程側に配置される装置」、即ち、処理液の一部を繰り返す装置については、処理液の貯槽等、処理槽1に液を移送可能な装置であればよく、特定の装置に限定はされないが、例えば、液体濾過器10が、処理液から固形物として、硫化物を分離する濾過器である場合には、上流工程側に配置される硫化反応槽を、処理液の一部を繰り返す「上流工程側に配置される装置」とすることができる。
【0023】
尚、残滓排出部43からは、通常の操業中には、濾布2に付着した濾過後の固形物を含む処理液が排出されるが、後述する通り、濾布を洗浄する洗浄工程を行なった後においては、洗浄に用いられた洗浄液が、洗浄によって濾布から剥離された固形物とともに、この残滓排出部43から排出される。
【0024】
例えば、上記同様、液体濾過器10を、図3に示すニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の脱亜鉛工程において用いる場合であれば、濾液排出部41からは、ニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液である脱亜鉛後液が排出される。又、繰り返し部42は、通常の操業中に使う必要はないが、第二の処理液排出工程においては、この繰り返し部42から亜鉛硫化物を含む処理液の一部が脱亜鉛反応槽に繰り返される。
【0025】
[洗浄液供給機構]
洗浄液供給機構5は、濾布2の洗浄を行うときに処理槽1の内部に洗浄液を供給する。洗浄液供給機構5は、その先端部に、濾布2に洗浄液を吹き付けることができるスプレーノズルが設置されていることが好ましい。
【0026】
[不活性ガス注入機構]
不活性ガス注入機構6は、濾布2の洗浄を行うときに処理槽1の内部に窒素等の不活性ガスを注入する。不活性ガス注入機構6は、その先端部に、濾布2にガスを吹き付けることができるスプレーノズルが設置されていてもよい。
【0027】
[液位検知機構]
液位検知機構7は、処理槽1の内部の処理液の液位を検知する機構である。液位検知機構7は、それぞれ独立して異なる高さに規定された液位を検知する複数の検知装置の組合せにより構成されていることが好ましい。具体的に、液位検知機構7は、少なくとも、処理槽1の内部の処理液の液位が、規定の「上限」に達した状態であることを検知する上限検知装置71と、同液位が規定の「下限」に達した状態であることを検知する下限検知装置72と、を含んで構成されることが好ましい。尚、各検知装置(71、72)は、具体的には、振動式レベルスイッチ、光学センサー等、従来周知の各種の液位検知装置を適宜用いて構成することができる。
【0028】
[排気機構]
排気機構8は、液体濾過器10において、処理槽1の気相部から処理槽1の外部に気体を排出する。例えば、上記同様、液体濾過器10を、図3に示すニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法の脱亜鉛工程において用いる場合であれば、処理槽1の気相部の気体が、この排気機構8を通じて排気されながら処理槽1の内部に処理液が充填される。又、この排気機構8は、多くの場合、プラント全体の環境集煙設備として連動して機能している。
【0029】
<液体濾過器の濾布洗浄方法>
本発明の液体濾過器の濾布洗浄方法(以下、「濾布洗浄方法」とも言う)は、上述の液体濾過器10に対して好ましく適用することができる濾布洗浄方法である。但し、本発明の「液体濾過器の濾布洗浄方法」は、槽内に濾布が配置されている液体濾過器であって、液排出機構として、濾液や濾過により分離された固形物を排出する機構に加えて、上流工程側に配置される装置に処理液の一部を繰り返す繰り返し部を有する装置であれば、上述の液体濾過器10に限られず、その他の様々な構成の液体濾過器に適用可能な濾布洗浄方法である。
【0030】
濾布洗浄方法は、図2に示す通り、従来のバックウオッシュによる洗浄方法とは異なり、処理槽1内への処理液の供給を停止した後に、処理槽1内に貯留されている処理液全体の一部分であって、固体分濃度が相対的に高い部分である高濃度部分を、残滓排出部43から排出する「第一の処理液排出工程st1」を、処理液の大部分を、繰り返し部42から上流工程側に配置される装置に戻す「第二の処理液排出工程st2」に先行して行い、その後に従来のバックウオッシュによる洗浄方法と同様に「洗浄工程st3」を行う方法である。
【0031】
[第一の処理液排出工程]
第一の処理液排出工程st1においては、処理槽1内への処理液の供給を停止した後に、処理槽1内に貯留されている処理液全体の一部分であって、固体分濃度が相対的に高い部分である高濃度部分を、残滓排出部43から排出する。
【0032】
ここで、処理槽1においては、通常、処理槽1内においては、貯留されている処理液全体の中で相対的に固体分濃度が高い固液混合物が、槽内の最深部11(図1参照)に滞留している。よって、この場合は、処理液のうち槽内の最深部11付近に滞留しているこの部分が、即ち、「処理液の高濃度部分」となる。従って、残滓排出部43が処理槽の最深部11に接合されていれば、この残滓排出部43から、この「処理液の高濃度部分」を優先的に排出することができる。残滓排出部43の処理槽1への接合部と「処理液の高濃度部分」が滞留する部分が離間している場合には、残滓排出部43から当該部分との間に残滓収集のための管を延設することによって、「処理液の高濃度部分」を優先的に排出するようにすることもできる。
【0033】
又、濾布洗浄方法は、処理槽1の下部の形状が、最深部11に向かって水平断面積が逓減している形状であって、尚且つ、残滓排出部43が、処理槽1の最深部11に接合されている場合に特に、その効果を発現させやすい。上記の水平断面積が小さい部分ほど、固体分濃度がより高まりやすく、「固体分」をより効率よく排出できるからである。
【0034】
又、第一の処理液排出工程st1における、残滓排出部43からの処理液の排出量の制御は、処理槽1の天頂部側において、例えば、上限検知装置71によって検知した液面の高さに基づき、この液面の高さが所定の高さとなるまで液面の低下を許容する制御によって行うことが好ましい。
【0035】
[第二の処理液排出工程]
第二の処理液排出工程st2においては、第一の処理液排出工程st1を行った後、即ち、「処理液の高濃度部分」を優先的に排出した後に、処理槽1内に残存している処理液を繰り返し部42から上流工程側に配置される装置に戻す処理が行われる。第一の処理液排出工程st1の後に行われる第二の処理液排出工程st2において、上流工程側に配置される装置に戻される処理液は、固体分濃度が相対的に低い固液混合物となっている。又、この処理液は、固体分を実質的に含有しない残留液となっていることがより好ましい。
【0036】
第二の処理液排出工程st2においては、濾布2の全体が気相中に露出する状態になるまで、上述の処理液の排出を行うことが好ましい。この排出量の制御は、例えば、下限検知装置72によって検知した液面の高さに基づき、この液面の高さが所定の高さとなるまで液面の低下を許容する制御によって行うことが好ましい。
【0037】
[洗浄工程]
洗浄工程st3においては、第二の処理液排出工程st2を行った後に、洗浄液供給機構5から処理槽1内に洗浄液を注入して、濾布2を洗浄液で洗浄する。洗浄液としては、不要な反応を避けるため温水を用いることが好ましい。
【0038】
又、洗浄工程st3においては、濾布の表面の付着物を落下させるために不活性ガス注入機構6から窒素等の不活性ガスを濾布2への吹き付ける処理を、洗浄液を注入する前に行うことが好ましい。
【0039】
<ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法>
最後に、本発明の濾布洗浄方法の適用対象である液体濾過器を用いて行うことができる代表的な工業プロセスである「ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法」の概要について説明する。この「ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法」は、ニッケル酸化鉱石のスラリーから、例えば高温高圧浸出法(HPAL法)を用いて、ニッケル及びコバルトを回収する湿式製錬方法である。
【0040】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法は、図3に示す通り、複数種類の低品位ニッケル酸化鉱石の混合物から鉱石スラリーを得る「鉱石準備工程」、鉱石スラリーを加熱加圧した硫酸と混合することによりニッケルを硫酸中に浸出させ、浸出液中の残留遊離酸を予備中和して、浸出スラリーを得る「浸出工程」、浸出スラリーから固液分離により浸出液(貴液)を得る「固液分離工程」、固液分離にて得られた貴液を中和する「中和工程」、中和後液から亜鉛を除去する「脱亜鉛工程」、脱亜鉛後液に対して、硫化水素ガスを用いることによって、ニッケル・コバルト混合硫化物として回収する「ニッケル硫化工程」が順次行われる方法である。「固液分離工程」で分離された浸出残渣スラリーは最終中和工程にて、その構成成分を自然界で長期堆積に適した態様に調整されたうえで、テーリングダムへと送液される。又、ニッケル硫化工程でニッケル硫化物を回収した後の貧液は、一部は固液分離工程で再利用され、余剰分は最終中和工程に送液される。
【0041】
又、上記各工程のうち、「脱亜鉛工程」においては、図4に示すように、「中和工程」で得られる中和後液を硫化反応槽(脱亜鉛応槽)内に導入し、硫化水素ガスや水硫化ソーダ等の硫化剤を添加することによって中和終液中に含有される亜鉛を硫化し、その後、液体濾過器で固液分離して脱亜鉛後液(ニッケル及びコバルトを含むニッケル回収用母液)を得る(図4参照)。脱亜鉛応槽においては、硫化水素ガスの添加により中和終液に含まれる亜鉛に基づく亜鉛硫化物が生成される。そして、液体濾過器(連続式液体フィルタ)によって、スラリー状の亜鉛硫化物を含む処理液から、亜鉛硫化物とニッケル回収用母液とが分離される。これにより、脱亜鉛工程における処理後の終液(脱亜鉛後液)は、亜鉛が取り除かれたニッケル回収用の母液となる。
【0042】
上記のニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法によって操業を行う工場において、処理液のpH2.8~3.2、通液量100~200m/Hrの条件において、従来のバックウオッシュ方法による場合には、濾布の交換頻度は、10~25日(平均15日程度)に1回であったが、本発明の濾布洗浄方法に濾布の洗浄方法を変更して行った試験操業の結果、濾布の交換頻度が、15~30日(平均20日程度)に1回程度に交換頻度を下げることができることが確認されている。
【符号の説明】
【0043】
1 処理槽
11 (処理槽の)最深部
12 (処理槽の)天頂部
2 濾布
3 処理液供給機構
4 液排出機構
41 濾液排出部
42 繰り返し部
43 残滓排出部
5 洗浄液供給機構
6 不活性ガス注入機構
7(71、72) 液位検知機構
8 排気機構
10 液体濾過器
st1 第一の処理液排出工程
st2 第二の処理液排出工程
st3 洗浄工程
図1
図2
図3
図4