IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】収容器、収容体、製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240820BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20240820BHJP
   B29C 59/16 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B65D23/00 H
B29C59/16
B23K26/00 N
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020162355
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2021176648
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019225898
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020081469
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平山 里絵
(72)【発明者】
【氏名】今井 重明
(72)【発明者】
【氏名】橘 弘人
(72)【発明者】
【氏名】新井 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】小橋川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田村 麻人
(72)【発明者】
【氏名】西尾 卓衛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宗朗
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0056322(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0001237(US,A1)
【文献】特開2015-199239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352772(US,A1)
【文献】特表2015-501229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B65D 23/00
B29C 59/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンが形成された収容器であって、
前記第1パターンは第2パターンの集合体により構成されており、
前記第2パターンの集合体は凹凸形状を含み、
前記凹凸形状における凹部と凸部の深さの差は0.4μm以上であり、
前記第1パターンは画像であり、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれは、前記第2パターンの集合体により構成されている
収容器。
【請求項2】
前記収容器は樹脂で構成されている
請求項1に記載の収容器。
【請求項3】
前記凹部の周囲に円環面状に凸部を有している
請求項1、又は2に記載の収容器。
【請求項4】
前記収容器は、ポリエチレンテレフタレートで構成されている
請求項1乃至3の何れかに記載の収容器。
【請求項5】
前記第2パターンの集合体は、前記収容器の周辺の光を拡散させる
請求項1乃至4の何れか1項に記載の収容器。
【請求項6】
前記第2パターンは、前記収容器の形状、結晶化状態、又は発泡状態の少なくとも1つが変化することで形成されている
請求項1乃至5の何れか1項に記載の収容器。
【請求項7】
前記第2パターンの集合体における隣接する前記第2パターン同士の間隔は0.4μm以上で130μm以下である
請求項1乃至6の何れか1項に記載の収容器。
【請求項8】
前記第2パターンは所定の周期で形成されている
請求項1乃至7の何れか1項に記載の収容器。
【請求項9】
前記第2パターンの集合体は2個以上で5個以下の前記第2パターンを含む
請求項1乃至8の何れか1項に記載の収容器。
【請求項10】
隣接する前記第2パターン同士の間隔は、前記画素間で異なる
請求項1乃至9の何れか1項に記載の収容器。
【請求項11】
前記収容器は生分解樹脂で構成されている
請求項1乃至10の何れか1項に記載の収容器。
【請求項12】
可視光に対して透過性を有する
請求項1乃至11の何れか1項に記載の収容器。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の収容器により構成された収容器であって、
口部と、
前記口部に連結された肩部と、
前記肩部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記第1パターンは、前記肩部に形成されている
収容器。
【請求項14】
前記肩部は、前記胴部に対して傾斜している
請求項13に記載の収容器。
【請求項15】
前記口部から遠ざかるにつれて幅が狭くなる前記第1パターンが前記肩部に形成されている
請求項14に記載の収容器。
【請求項16】
口部と、
前記口部に連結された肩部と、
前記肩部に連結された胴部と、
前記胴部に連結された底部と、を備え、
前記第1パターンは、前記底部に形成されている
請求項13乃至15の何れか1項に記載の収容器。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の収容器と、
前記収容器に収容されている被収容物と、からなる
収容体。
【請求項18】
表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンが形成され、前記第1パターンは第2パターンの集合体により構成されている収容器の製造方法であって、
前記第2パターンの集合体が凹凸形状を含み、前記凹凸形状における凹部と凸部の深さの差が0.4μm以上であるように、前記収容器にレーザビームを照射する照射工程と、
前記収容器を所定の軸回りに回転させる回転工程、又は前記収容器を移動させる移動工程の少なくとも1つの工程と、
前記第2パターンを構成させる前記照射工程の制御と、前記回転工程又は前記移動工程の少なくとも1つの制御と、を行う制御工程と、を行い、
前記第1パターンは画像であり、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれは、前記第2パターンの集合体により構成されている
製造方法。
【請求項19】
前記レーザビームを走査する工程をさらに行う
請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記照射工程では、ビームスポット径が1μm以上で200μm以下の前記レーザビームを前記収容器に照射する
請求項18、又は19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記照射工程では、複数のレーザ光源のそれぞれにより前記レーザビームを照射する
請求項18乃至20の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記レーザビームの強度を制御する工程をさらに行う
請求項18乃至21の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
表面又は内部の少なくとも一方に他の領域と拡散特性が異なる第1の領域が形成された収容器であって、
前記第1の領域は、当該第1の領域よりも小さく且つ前記他の領域と拡散特性が異なる第2の領域の集合体により構成されており、
前記第2の領域の集合体は凹凸形状を含み、
前記凹凸形状における凹部と凸部の深さの差は0.4μm以上であり、
前記第1の領域は画像であり、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれは、前記第2の領域の集合体により構成されている
ことを特徴とする収容器。
【請求項24】
表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンが形成され、前記第1パターンは第2パターンの集合体により構成されている収容器の製造装置であって、
前記第2パターンの集合体が凹凸形状を含み、前記凹凸形状における凹部と凸部の深さの差が0.4μm以上であるように、前記収容器にレーザビームを照射する照射部と、
前記収容器を所定の軸回りに回転させる回転部又は前記収容器を移動させる移動部の少なくとも1つと、
前記第2パターンを構成させる前記照射部の制御と、前記回転部又は前記移動部の少なくとも1つの制御と、を行う制御部を備え、
前記第1パターンは画像であり、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれは、前記第2パターンの集合体により構成されている
製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、収容体、製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PET(Poly Ethylene Terephthalate)ボトル等の収容器として、名称や成分、賞味期限、バーコード、QRコード(登録商標)、リサイクルマーク又はロゴマーク等を表示するラベルが貼付されたものが知られている。また、消費者に訴求するデザインや絵をラベルにより表示することで、商品の個性の発揮や競争力アップを図る試みもなされている。
【0003】
一方で、昨今、プラスチックごみによる海洋汚染が取り沙汰され、世界的にプラスチックごみによる汚染をなくしていく動きが活発化しており、収容器の循環型リサイクルへの要求が高まっている。ここで、収容器の循環型リサイクルとは、分別回収された使用済みの収容器をリサイクル業者が収容器の原料となるフレークに変え、再度収容器を製造することをいう。
【0004】
このような循環型リサイクルを円滑に進めるには、収容器やラベル等の材質毎に分別回収を徹底することが好ましいが、分別回収のために収容器からラベルを剥がす作業は手間がかかり、分別回収を徹底させるための制約の1つになっている。
【0005】
これに対し、名称や成分等の情報を表示するパターンを、炭酸ガスレーザで収容器の表面に直接形成することで、ラベルを無くした収容器を提供する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、画像や図形等を収容器に形成すると、これらの視認性が低下する場合がある。
【0007】
本発明は、基材となる部材において画像や図面等が良好な視認性で形成された基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンが形成された収容器であって、前記第1パターンは第2パターンの集合体により構成されており、前記第2パターンの集合体は凹凸形状を含み、前記凹凸形状における凹部と凸部の深さの差は0.4μm以上であり、前記第1パターンは画像であり、前記画像を構成する複数の画素のそれぞれは、前記第2パターンの集合体により構成されている
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材となる部材において画像や図面等が良好な視認性で形成された基材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る収容器の製造装置の構成例を示す図である。
図2A】実施形態に係るレーザ照射部の構成例を示す図である。
図2B】加工レーザビームアレイによるレーザ光の照射を説明する図である。
図3】実施形態に係る制御部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る製造方法例を示すフローチャートである。
図6】パターンデータの一例を示す図である。
図7】第1パターンの種類と加工パラメータの対応テーブル例を示す図である。
図8】加工パラメータの一例を示す図である。
図9】加工データの一例を示す図である。
図10】加工レーザビームの照射例の図であり、(a)はY方向と直交する方向でビーム間に隙間がある状態、(b)は(a)の高速走査の状態、(c)Y方向と直交する方向でビーム同士が重なっている状態、(d)は(c)の高速走査の状態、(e)はY方向と直交する方向でビーム同士が接している状態、(f)は(e)の高速走査の状態の図である。
図11】収容器の基材の性状変化例を示す図であり、(a)は蒸散による形状変化の図、(b)は溶融による形状変化の図、(c)は結晶化状態変化の図、(d)は発泡状態変化の図である。
図12】第1実施形態に係る収容器の一例を示す図である。
図13】第1パターンと第2パターンの関係例を示す図である。
図14図13のA-A断面図である。
図15】加工深さの各種の例を示す図であり、(a)は加工深さが非加工部深さより浅い場合、(b)は加工深さが非加工部深さより深い場合、(c)は加工深さと非加工部深さが同程度の場合、(d)加工深さと非加工部深さを変化させた場合の図である。
図16】実施形態に係る収容体の一例を示す図である。
図17】第2パターンによる階調表現の一例を説明する図である。
図18】第2パターンによる階調表現の他の例を示す図であり、(a)は周期性のない第2パターンの加工データを示す図、(b)は結晶化による第2パターンの断面図、(c)は結晶化による第2パターンの平面図である。
図19】第2実施形態に係る収容器の一例を示す図である。
図20】第3実施形態に係る収容器の一例を示す図である。
図21】第3実施形態に係る収容器を口部側から見た図である。
図22】第3実施形態に係る収容器の製造装置の構成例を示す図である。
図23】第3実施形態に係る収容器の他の例を示す図である。
図24】第3実施形態に係る収容器を底部側から見た図である。
図25】第4実施形態に係るバーコード例を示す図であり、(a)比較例に係るバーコードを口部側から見た図、(b)は第4実施形態に係るバーコードを示す図、(c)は(b)のバーコードを口部側から見た図である。
図26】第1変形例に係る収容器の製造装置の構成例を示す図である。
図27】第2変形例に係る収容器の製造装置の構成例を示す図である。
図28】第3変形例に係る収容器の一例を示す図である。
図29】第1パターンの見え方を説明する図であり、(a)は一例であり、(b)は他の例である。
図30】場所ごとに異なる波長のレーザ光を照射する構成例の図である。
図31】変性痕の走査型電子顕微鏡写真であり、(a)は上面方向から視た斜視図、(b)は(a)のD-D矢視断面方向から視た斜視図である。
図32】第5実施形態に係る製造装置による温度制御例を示す図である。
図33】第5実施形態に係る制御部の機能構成例を示すブロック図である。
図34】封止部材に形成したパターン例を示す図である。
図35】マルチレーザビームを照射する構成の一例を示す図である。
図36】各種マルチレーザビームを例示する図であり、(a)は1列に配列するものの図、(b)は2列に配列するものの図、(c)は千鳥状に2次元配列するものの図、(d)は矩形格子状に2次元配列するものの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
実施形態に係る収容器は、基材の表面又は内部の少なくとも一方に、第1パターンが形成されたPET(Poly Ethylene Terephthalate)ボトル等の収容器である。この第1パターンは、文字やバーコード等のコード、図形等を含み、収容器、又は収容器に収容される飲料等の被収容物の、名称や識別番号、製造業者、製造日時等の情報を表示するものである。また基材とは、樹脂やガラス等の収容器を構成する部分をいう。
【0013】
実施形態では、この第1パターンを第2パターンの集合体により構成する。ここで集合体とは、複数の要素が集まったものをいう。
【0014】
例えば、第1パターンの一例としての線の図形を、この線よりさらに細い複数の線により構成したり、或いは、線の太さに対して直径が小さい複数の点等により構成したりする。この細い線や小さい点の1つ1つはそれぞれ第2パターンの一例である(図13参照)。換言すると、第1パターンより微細な第2パターンの集合体を埋め込んで第1パターンを構成する。
【0015】
第2パターンの集合体により構成される第1パターンによって、収容器の周辺の光(以下では周辺光という)の第1パターンによる拡散性が高くなり、第1パターンのコントラストが向上する。そして、第1パターンが微細な線や文字、画像、図形等を含む情報量の多いパターンであっても、第1パターンを高いコントラストで良好に視認可能にする。
【0016】
以下では、実施形態に係る収容器と、製造装置を用いた収容器の製造方法について説明する。
【0017】
[第1実施形態]
<製造装置100の構成例>
まず、第1実施形態に係る収容器1の製造装置100の構成について説明する。図1は製造装置100の構成の一例を示す図である。製造装置100は、収容器を構成する基材の性状を変化させることで、基材の表面又は内部の少なくとも一方に、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成するための装置である。ここで基材の性状とは、基材の性質又は状態をいう。
【0018】
図1に示すように、製造装置100は、レーザ照射部2と、回転機構3と、保持部31と、移動機構4と、集塵部5と、制御部6とを備えている。製造装置100は、円筒状の容器である収容器1を、保持部31を介して収容器1の円筒軸10回りに回転可能に保持する。そして、レーザ照射部2から収容器1にレーザ光を照射して、収容器1を構成する基材の性状を変化させることで、収容器1の表面に第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成する。ここで、円筒軸10は「所定の軸」の一例である。なお、以下では、説明を簡略化するため、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを、適宜第1パターンという場合がある。
【0019】
照射部の一例としてのレーザ照射部2は、レーザ光源から射出されるレーザ光を図1のY方向に走査し、正のZ方向に配置されている収容器1に向けて、レーザビームの一例としての加工レーザビーム20を照射する。なお、このレーザ照射部2については、図2を用いて詳述する。
【0020】
回転部の一例としての回転機構3は、保持部31を介して収容器1を保持している。保持部31は回転機構3の備える駆動部としてのモータ(図示を省略)のモータ軸に接続されるカップリング部材であり、一端を収容器1の口部に挿し込んで収容器1を保持する。モータ軸の回転により、保持部31を回転させることで、保持部31に保持された収容器1を円筒軸10回りに回転させる。
【0021】
移動部の一例としての移動機構4は、テーブルを備える直動ステージであり、移動機構4のテーブル上には回転機構3が載置されている。移動機構4は、テーブルをY方向に進退させることで、回転機構3、保持部31及び収容器1を一体にしてY方向に進退させる。
【0022】
集塵部5は、収容器1における加工レーザビーム20が照射される部分の近傍に配置されたエアー吸引装置である。加工レーザビーム20の照射により第1パターンを形成する際に生じるプルームや粉塵をエアーの吸引により収集することで、プルームや粉塵による製造装置100、収容器1及び周辺の汚れを防止する。
【0023】
制御部6は、レーザ光源21、走査部23、回転機構3、移動機構4及び集塵部5のそれぞれにケーブル等を介して電気的に接続されており、制御信号を出力することでそれぞれの動作を制御する。
【0024】
製造装置100は、制御部6による制御下で、回転機構3により収容器1を回転させながら、Y方向に走査される加工レーザビーム20をレーザ照射部2により収容器1に照射する。そして、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンを2次元的に形成する。
【0025】
ここで、レーザ照射部2による加工レーザビーム20のY方向への走査領域は、範囲が制限される場合がある。そのため、走査領域より広い範囲に第1パターンを形成する場合には、製造装置100は移動機構4で収容器1をY方向に移動させることで、収容器1における加工レーザビーム20の照射位置をY方向にずらす。その後、再び回転機構3により収容器1を回転させながら、レーザ照射部2で加工レーザビーム20をY方向に走査することで、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に第1パターンを形成する。これにより、収容器1のより広い領域に第1パターンを形成できる。
【0026】
<レーザ照射部2の構成例>
次に、レーザ照射部2の構成について説明する。図2Aは、レーザ照射部2の構成の一例を示す図である。図2Aに示すように、レーザ照射部2は、レーザ光源21と、ビームエキスパンダ22と、走査部23と、走査レンズ24と、同期検知部25とを備えている。
【0027】
レーザ光源21はレーザ光を射出するパルスレーザである。レーザ光源21は、レーザ光が照射された収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方の性状を変化させるために好適な出力(光強度)のレーザ光を射出する。
【0028】
レーザ光源21は、レーザ光の射出のオン又はオフの制御、射出周波数の制御、及び光強度制御等が可能になっている。レーザ光源21の一例として、波長が532nmで、レーザ光のパルス幅が16ピコ秒、平均出力4.9Wのレーザ光源を用いることができる。収容器1における基材の性状を変化させる領域でのレーザ光の直径は1μm以上で200μm以下であることが好ましい。
【0029】
また、レーザ光源21は、1つのレーザ光源で構成されてもよいし、複数のレーザ光源で構成されてもよい。複数のレーザ光源を用いる場合、レーザ光源毎にオン又はオフの制御、射出周波数の制御及び光強度制御等を独立に行えるようにしてもよい。
【0030】
レーザ光源21から射出された平行光のレーザ光は、ビームエキスパンダ22により直径が拡大され、走査部23に入射する。
【0031】
走査部23は、モータ等の駆動部により反射角度を変化させる走査ミラーを備えている。走査ミラーによる反射角度を変化させることで、入射するレーザ光をY方向に走査する。この走査ミラーには、ガルバノミラーやポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー等を用いることができる。
【0032】
なお、実施形態では走査部23がレーザ光をY方向に1次元走査する例を示すが、これに限定されるものではない。走査部23は、直交する2方向に反射角度を変化させる走査ミラーを用いてレーザ光をXY方向に2次元走査してもよい。
【0033】
但し、円筒状の収容器1の表面にレーザ光を照射する場合は、XY方向に2次元走査すると、X方向への走査に応じて収容器1の表面上でのビームスポット径が変化するため、このような場合は1次元走査のほうが好ましい。
【0034】
走査部23により走査されるレーザ光は、加工レーザビーム20として収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に照射される。
【0035】
走査レンズ24は、走査部23により走査される加工レーザビーム20の走査速度を一定にするとともに、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方の所定位置に、加工レーザビーム20を収束させるfθレンズである。収容器1における基材の性状を変化させる領域で、加工レーザビーム20のビームスポット径が最小になるように走査レンズ24と収容器1が配置されることが好ましい。なお、走査レンズ24は複数のレンズの組み合わせにより構成されてもよい。
【0036】
同期検知部25は、加工レーザビーム20の走査と回転機構3による収容器1の回転とを同期させるために用いられる同期検知信号を出力する。同期検知部25は、受光した光強度に応じた電気信号を出力するフォトダイオードを備え、フォトダイオードによる電気信号を同期検知信号として制御部6に出力する。
【0037】
図2Aでは、加工レーザビームを走査する例を示したが、加工レーザビームを例えば印字幅の範囲に多数設けて加工レーザビームアレイとし、収容器1を回転させることで、収容器1上を多数のレーザビームで1方向に走査する構成とすることも可能である。図2Bはその一例を示す図であり、収容器1に並列の複数のレーザビームからなる加工レーザビームアレイを示している。
【0038】
<制御部6のハードウェア構成例>
次に、製造装置100の備える制御部6のハードウェア構成について説明する。図3は、制御部6のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部6はコンピュータにより構築されている。
【0039】
図3に示すように、制御部6は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、HD(Hard Disk)504と、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505と、ディスプレイ506とを備えている。また制御部6は、外部機器接続I/F(Interface)508と、ネットワークI/F509と、データバス510と、キーボード511と、ポインティングデバイス512と、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ514と、メディアI/F516とを備えている。
【0040】
これらのうち、CPU501はプロセッサであり、制御部6全体の動作を制御する。ROM502は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶するメモリである。
【0041】
RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用されるメモリである。HD504は、プログラム等の各種データを記憶するメモリである。HDDコントローラ505は、CPU501の制御に従ってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0042】
ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字又は画像等の各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、レーザ光源21、走査部23、同期検知部25、回転機構3、移動機構4及び集塵部5等である。但し、他にUSB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等を接続することもできる。
【0043】
ネットワークI/F509は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、図3に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0044】
キーボード511は、文字、数値、各種指示等を入力するための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動等を行う入力手段の一種である。
【0045】
DVD-RWドライブ514は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW513に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0046】
<制御部6の機能構成例>
次に、制御部6の機能構成について説明する。図4は制御部6の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0047】
図4に示すように、制御部6は、第1パターンデータ入力部61と、第2パターンパラメータ指定部62と、格納部63と、加工データ生成部64と、レーザ照射制御部65と、レーザ走査制御部66と、収容器回転制御部67と、収容器移動制御部68と、集塵制御部69とを備えている。
【0048】
これらのうち、第1パターンデータ入力部61、第2パターンパラメータ指定部62、加工データ生成部64、レーザ照射制御部65、レーザ走査制御部66、収容器回転制御部67、収容器移動制御部68及び集塵制御部69のそれぞれの機能は、何れも図3のCPU501が所定のプログラムを実行し、外部機器接続I/F508を介して制御信号を出力すること等により実現される。但し、制御部6のハードウェア構成にASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子回路又は電気回路を追加し、上記の各構成部の機能の一部又は全部を電子回路又は電気回路で実現してもよい。格納部63の機能は、HD504等により実現される。
【0049】
第1パターンデータ入力部61は、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に形成する第1パターンのパターンデータをPC(Personal Computer)やスキャナ等の外部装置から入力する。第1パターンのパターンデータは、バーコード、QRコード等のコードや文字、図形、写真等のパターンを示す情報と、第1パターンの種類を示す情報とを含む電子データである。
【0050】
但し、パターンデータは、外部装置から入力されるものに限定はされない。製造装置100のユーザが制御部6のキーボード511やポインティングデバイス512を用いて生成した第1パターンのパターンデータを入力することもできる。
【0051】
第1パターンデータ入力部61は、入力した第1パターンのパターンデータを加工データ生成部64及び第2パターンパラメータ指定部62のそれぞれに出力する。
【0052】
第2パターンパラメータ指定部62は、第2パターンを形成するための加工パラメータを指定する。上述したように第2パターンは、第1パターンより小さい線又は点等であり、第1パターンのコントラストを上げ、視認性を向上させるように作用するものである。
【0053】
第2パターンの加工パラメータは、第2パターンとしての線の種類や太さ、加工深さ、或いは線の集合体における隣接する線同士の間隔又は配置等を指定する情報である。或いは第2パターンとしての点の種類、大きさ、加工深さ、或いは点の集合体における隣接する点同士の間隔又は配置等を指定する情報である。
【0054】
線の種類は直線や曲線等を示す情報である。点の種類は、円や楕円、矩形、菱形等の点の形状を示す情報である。第2パターンの集合体において、第2パターンは周期性を有するように構成されてもよいし、非周期に構成されてもよい。但し、周期性を有するように構成すると、パラメータの指定をより簡略化できるため好適である。
【0055】
文字、コード、図形又は写真等の第1パターンの種類に対応して、視認性を向上させるために適した第2パターンの加工パラメータは、予め実験やシミュレーションにより定められている。格納部63は、このような第1パターンの種類と加工パラメータとの対応関係を示すテーブルを格納する。
【0056】
第2パターンパラメータ指定部62は、第1パターンデータ入力部61から入力した第1パターンの種類を示す情報に基づき、格納部63を参照して第2パターンの加工パラメータを取得して指定することができる。
【0057】
但し、第2パターンパラメータ指定部62による指定方法は上述したものに限定されるものではない。第2パターンパラメータ指定部62は、制御部6のキーボード511やポインティングデバイス512を介してユーザの指示を受け付け、この指示に基づき格納部63を参照して第2パターンの加工パラメータを取得してもよい。
【0058】
また、第2パターンパラメータ指定部62は、製造装置100のユーザが制御部6のキーボード511やポインティングデバイス512を用いて生成した第2パターンの加工パラメータを取得してもよい。
【0059】
加工データ生成部64は、第1パターンのパターンデータと、第2パターンの加工パラメータとに基づいて、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成するための加工データを生成する。
【0060】
加工データは、回転機構3が収容器1を回転させるための回転条件データと、レーザ照射部2が加工レーザビーム20を走査するための走査条件データと、レーザ照射部2が収容器1の回転に同期して加工レーザビーム20を照射するための照射条件データとを含む。また、移動機構4が収容器1をY方向に移動させるための移動条件データと、集塵部5が集塵動作を行うための集塵条件データとを含む。
【0061】
加工データ生成部64は、レーザ照射制御部65、レーザ走査制御部66、収容器回転制御部67、収容器移動制御部68及び集塵制御部69のそれぞれに対し、生成した加工データを出力する。
【0062】
レーザ照射制御部65は、光強度制御部651と、パルス制御部652とを備え、照射条件データに基づき、レーザ光源21による収容器1への加工レーザビーム20の照射を制御する。またレーザ照射制御部65は、同期検知部25からの同期検知信号に基づき、回転機構3による収容器1の回転に同期して加工レーザビーム20を収容器1への照射タイミングを制御する。なお、同期検知信号を用いた照射タイミング制御には、特開2008-073894号公報等の公知技術を適用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
レーザ光源21が複数のレーザ光源で構成される場合は、レーザ照射制御部65は複数のレーザ光源毎に独立して上記の制御を行う。
【0064】
光強度制御部651は加工レーザビーム20の光強度を制御し、パルス制御部652は加工レーザビーム20のパルス幅及び照射タイミングを制御する。
【0065】
レーザ走査制御部66は、走査条件データに基づき、走査部23による加工レーザビーム20の走査を制御する。具体的には走査ミラーの駆動のオン又はオフの制御、駆動周波数の制御等を行う。
【0066】
収容器回転制御部67は、回転条件データに基づき、回転機構3による収容器1の回転駆動のオン又はオフ、回転角度、回転方向及び回転速度等を制御する。なお、収容器回転制御部67は、収容器1を所定の回転方向に連続して回転させてもよいし、回転方向を切り替えながら±90度等の所定の角度範囲内で収容器1を往復回動(搖動)させてもよい。
【0067】
収容器移動制御部68は、移動条件データに基づき、移動機構4による収容器1の移動駆動のオン又はオフ、移動方向、移動量及び移動速度等を制御する。
【0068】
集塵制御部69は、集塵条件データに基づき、集塵部5による集塵のオン又はオフの制御、吸引するエアー流量又は流速等を制御する。なお、集塵部5を移動させるための機構部を設け、加工レーザビーム20が照射される位置の近傍に集塵部5が配置されるように、機構部による集塵部5の移動を制御してもよい。
【0069】
<製造装置100による製造方法例>
次に、製造装置100による製造方法について説明する。図5は、製造装置100による製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0070】
まず、ステップS51において、第1パターンデータ入力部61は、第1パターンのパターンデータをPCやスキャナ等の外部装置から入力する。第1パターンデータ入力部61は、入力した第1パターンのパターンデータを加工データ生成部64及び第2パターンパラメータ指定部62のそれぞれに出力する。
【0071】
続いて、ステップS52において、第2パターンパラメータ指定部62は、第2パターンを形成するための加工パラメータを指定する。第2パターンパラメータ指定部62は、第1パターンデータ入力部61から入力した第1パターンの種類を示す情報に基づき、格納部63を参照して第2パターンの加工パラメータを取得して指定する。
【0072】
なお、ステップS51とステップS52の動作は適宜順序を入れ替えてもよく、またこれらのステップが並行して実行されてもよい。
【0073】
続いて、ステップS53において、加工データ生成部64は、第1パターンのパターンデータと、第2パターンの加工パラメータとに基づいて、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成するための加工データを生成する。そして、レーザ照射制御部65、レーザ走査制御部66、収容器回転制御部67、収容器移動制御部68及び集塵制御部69のそれぞれに対して、生成した加工データを出力する。
【0074】
続いて、ステップS54において、レーザ走査制御部66は、走査条件データに基づき、走査部23に加工レーザビーム20のY方向への走査を開始させる。実施形態では、この走査開始に応答して、走査部23は加工レーザビーム20のY方向への走査を停止の指示が出るまで継続して行う。
【0075】
続いて、ステップS55において、収容器回転制御部67は、回転条件データに基づき、回転機構3に収容器1の回転駆動を開始させる。実施形態では、この回転駆動開始に応答して、回転機構3は収容器1の回転を停止の指示が出るまで継続して行う。
【0076】
続いて、ステップS56において、収容器移動制御部68は、移動条件データに基づき、収容器1の所定の位置に加工レーザビーム20が照射されるように、移動機構4により収容器1をY方向の初期位置に移動させる。収容器1の初期位置までの移動が完了後に、収容器移動制御部68は移動機構4を停止させる。
【0077】
なお、ステップS54~ステップS56の動作は適宜順序を入れ替えてもよく、またこれらのステップが並行して実行されてもよい。
【0078】
続いて、ステップS57において、レーザ照射制御部65は、収容器1に対する加工レーザビーム20の照射制御を開始する。
【0079】
具体的には、レーザ照射部2はY方向に沿う1ライン分を走査して収容器1に加工レーザビーム20を照射する。その後、回転機構3は収容器1の円筒軸10回りに所定角度回転する。所定角度回転後に、レーザ照射部2は次の1ライン分を走査して収容器1に加工レーザビーム20を照射する。その後、回転機構3は収容器1の円筒軸10回りに所定角度回転する。このような動作を繰り返し行うことで、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に、第1パターンが順次形成される。
【0080】
続いて、ステップS58において、レーザ照射制御部65は、Y方向における収容器1の所定領域に対し、第1パターンの形成が終了したか否かを判定する。
【0081】
ステップS58で終了していないと判定された場合は(ステップS58、No)、ステップS56以降の処理が再度繰り返される。
【0082】
一方、ステップS58で終了したと判定された場合は(ステップS58、Yes)、ステップS59において、回転機構3は、収容器回転制御部67による停止の指示に応答して収容器1の回転駆動を停止する。
【0083】
続いて、ステップS60において、走査部23は、レーザ走査制御部66による停止の指示に応答して加工レーザビーム20の走査を停止する。レーザ光源21は、レーザ照射制御部65による停止の指示に応答して加工レーザビーム20の照射を停止する。
【0084】
なお、ステップS59とステップS60の動作は適宜順序の変更が可能であり、これらのステップが並行して行われてもよい。
【0085】
このようにして、製造装置100は、収容器1における基材の表面又は内部の少なくとも一方に、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成することができる。
【0086】
<各種データ例>
次に、収容器1の製造で用いられる各種データの一例を説明する。
【0087】
(パターンデータ例)
図6は、第1パターンデータ入力部61が入力する第1パターンのパターンデータの一例を示す図である。
【0088】
図6に示すように、パターンデータ611は、「ラベルレス」という文字データ612を含み、文字データ612は第1パターンとして収容器1に形成される対象となる。「ラベルレス」の5文字を構成する複数の線の集合が第1パターンのためのデータに対応する。パターンデータ611における文字データ612以外のデータは、収容器1への形成の対象外である。
【0089】
パターンデータ611は、一例としてビットマップ等の画像ファイルとして提供される。またパターンデータ611を提供する画像ファイルのヘッダ情報には、第1パターンの種類を示す情報が含まれている。この例では、第1パターンの種類は「文字」である。
【0090】
第1パターンデータ入力部61は、「文字」を示す情報を含むパターンデータ611を、第2パターンパラメータ指定部62及び加工データ生成部64のそれぞれに出力する。
【0091】
(第1パターンの種類と加工パラメータとの対応テーブル例)
図7は、格納部63に収納される対応テーブルの一例を示している。図7に示す対応テーブル631は、文字、コード、図形又は写真等の第1パターンの種類と、第1パターンの視認性を向上させるために適した第2パターンのための加工パラメータとの対応関係を示している。この対応関係は、予め実験やシミュレーションにより定められている。
【0092】
対応テーブル631の「識別情報」列に示された数値は、第1パターンの種類を示す情報を示し、「種類」列に示された情報は、第1パターンの種類を示している。また「パラメータ」列に示された情報は、第1パターンの種類に対応した加工パラメータが記録されたファイル名を示している。
【0093】
第2パターンパラメータ指定部62は、対応テーブル631を参照して、第1パターンの種類を示す情報に対応するファイルを読み込み、加工パラメータを取得する。図6の例では、第1パターンの種類は「文字」であるため、第2パターンパラメータ指定部62は、「文字」を示す識別情報「1」に対応するファイル「para1」を読み出して加工パラメータを取得し、加工データ生成部64に出力する。
【0094】
(加工パラメータ例)
図8は、第2パターンパラメータ指定部62が取得した加工パラメータの一例を示す図である。加工パラメータ621の「項目」列の項目に応じて、「パラメータ」列にパラメータが示されている。
【0095】
(加工データ例)
図9は、加工データ生成部64が生成した加工データの一例を示す図である。加工データ641における文字データ642は、第2パターンに対応する複数の直線データにより構成されている。加工データ641における黒地領域が、加工レーザビーム20の照射により収容器1の基材の性状を変化させる領域に対応する。
【0096】
<加工レーザビーム20の一例>
次に、図10は、収容器1に対する加工レーザビーム20の照射の例を示す図であり、3通りの照射の例を示している。
【0097】
また図10は、収容器1の表面上での加工レーザビーム20のビームスポット201を示し、また加工レーザビーム20の走査方向(Y方向)と直交する方向に配列する3つのビームスポット201がY方向に走査された状態を示している。
【0098】
このような3つのビームスポット201は、レーザ光源21をY方向と直交する方向に3つのレーザ光源21を並置し、3つのレーザ光源21のそれぞれが加工レーザビーム20を照射することで得ることができる。
【0099】
図10(a)、(b)は、1つめの例であり、Y方向と直交する方向でビームスポット201間に隙間がある場合である。図10(a)はY方向と直交する方向でビームスポット201間に隙間がある状態を示し、図10(b)は図10(a)のビームスポット201をY方向に高速走査させた状態を示している。高速走査させることで、3つのビームスポット201により3つの走査ラインが形成されており、Y方向における走査ライン間には隙間がある。図10(a)、(b)の配置でビームスポット201を照射すると、パターンの形成効率を上げることができる。
【0100】
図10(c)、(d)は、2つめの例であり、ビームスポット201同士がY方向と直交する方向で重なる場合である。図10(c)はビームスポット201同士がY方向と直交する方向で重なっている状態を示し、図10(d)は図10(c)のビームスポット201をY方向に高速走査させた状態を示している。高速走査させることでビームスポット201による3つの走査ラインが形成されており、Y方向における走査ライン同士は重なっている。図10(c)、(d)の配置でビームスポット201を照射することで、パターンのコントラストを上げることができる。
【0101】
図10(e)、(f)は3つめの例であり、ビームスポット201同士がY方向と直交する方向で接する場合である。図10(e)はビームスポット201同士がY方向と直交する方向で接している状態を示し、図10(f)は図10(e)のビームスポット201をY方向に高速走査させた状態を示している。高速走査させることでビームスポット201による3つの走査ラインが形成され、Y方向における走査ライン同士は接している。図10(e)、(f)の配置でビームスポット201を照射することで、パターンの形成効率とコントラストのバランスを取ることができる。
【0102】
このような3通りの加工レーザビーム20の照射例を組み合わせて、収容器1に第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成できる。なお、加工レーザビーム20の数は3つに限定されるものではなく、1つであってもよいし、さらに数を増やしてもよい。加工レーザビーム20の数を増やすほど、パターン形成にかかる時間を短縮できる。
【0103】
ビームスポット201の直径は、一例として42.6μmであり、図10(a)、(b)におけるY方向と直交する方向でのレーザスポット201間の隙間は、一例として23.6μmである。
【0104】
また、図10では、加工レーザビームを周期的に配置させる実施例を示したが、これに限定されるものではなく、非周期的な配置とすることも可能である。
【0105】
<基材の性状の変化例>
次に、加工レーザビーム20の照射による収容器1の基材の性状変化について説明する。図11は、加工レーザビーム20の照射による収容器1の基材の性状変化の一例を示す図である。
【0106】
図11(a)は、収容器1の表面の基材を蒸散させて形成した凹部形状を示し、図11(b)は、収容器1の表面の基材を溶融させて形成した凹部形状を示している。図11(b)の場合、図11(a)に対して凹部の周縁部が盛り上がった形状になる。
【0107】
また、図11(c)は、収容器1の基材表面の結晶化状態の変化を示し、図11(d)は、収容器1の基材内部の発泡状態の変化を示している。
【0108】
このように、収容器1の表面の形状を変化させたり、基材表面の結晶化状態、又は基材内部の発泡状態等の性質を変化させたりすることで、収容器1の表面又は内部に第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成できる。
【0109】
収容器1の表面の基材を蒸散させて凹部形状を形成する方法として、例えば、波長が355nm~1064nm、パルス幅が10fsから500nm以下のパルスレーザを照射する。これによりレーザビームが照射された部分の基材が蒸散し、表面に微小な凹部が形成できる。
【0110】
また、波長が355nm~1064nmのCW(Continuous Wave)レーザを照射することで、機材を溶融させて凹部を形成することも可能である。また、基材が溶融した後も、レーザを照射し続けると、基材の内部及び表面が発泡し、白濁化させることができる。
【0111】
結晶化状態を変化させるためには、例えば基材をPETとし、波長が355nm~1064nmのCWレーザを照射して、基材の温度を一気に上げ、その後、パワーを弱くしていく等により徐冷していくことで、基材のPETを結晶化状態にすることができ、白濁化させることができる。なお、温度を上げたあと、レーザビームを消灯する等により急冷すると、PETは非晶質状態になり、透明になる。
【0112】
収容器1の基材性状の変化は、図11に示したものに限定されるものではない。樹脂材料で構成された基材の黄変や酸化反応、表面改質等により基材の性状を変化させてもよい。
【0113】
<第1実施形態に係る収容器1の一例>
次に、第1実施形態に係る収容器1を説明する。図12は、収容器1の一例を示す図である。収容器1は、可視光に対して透過性を有する樹脂(透明な樹脂)を基材とする円筒状のボトルである。図12は背景としての黒いスクリーンの前に置かれた収容器1を示している。透明な収容器1を通して背景の黒いスクリーンが見えている。或いは収容器1内に黒色の液体が入っており、透明な収容器1を通して収容器1内の黒色の液体が見えているとみなしてもよい。
【0114】
収容器1の表面には「ラベルレス」という文字11が形成されている。背景の黒色又は収容器1内の液体の黒色に対し、文字11での周辺光の拡散により、文字11が白濁化されて視認される。「ラベルレス」の5文字を構成する複数の線の集合が文字11に対応しており、文字11は第1パターンの一例であり、第1の領域の一例である。また収容器1における文字11が形成されていない領域は、他の領域の一例である。
【0115】
収容器1の基材の樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレン(PE)、ポリプロビレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、エポキシ、バイオポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸ブレンド(PBAT)、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシプチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、バイオPET30、バイオポリアミド(PA)610,410,510、バイオPA1012,10T、バイオPA11T,MXD10、バイオポリカーポネート、バイオポリウレタン、バイオPE、バイオPET100、バイオPA11、バイオPA1010等を用いることができる。
【0116】
これらのうち、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解樹脂を用いると、環境負荷を低減できるため好適である。
【0117】
図13は、収容器1に形成された第1パターンと第2パターンの関係の一例を示す図である。図13における拡大図111は、文字11の一部を拡大表示したものである。図13に示すように、収容器1の表面には「ラベルレス」という文字11が形成され、拡大図111に示すように、文字11は複数の直線12により構成されている。換言すると、文字11は直線12の集合体により構成されている。なお、図13では、拡大図111に対応する領域にのみ直線12を示しているが、文字11全体が直線12の集合体により構成されている。
【0118】
直線12の集合体における白地領域は基材の性状が変化した領域を示し、白地領域で示す複数の直線のうちの1本の直線に対応する直線12は、第2パターンの一例であり、また第2の領域の一例である。複数の直線12は直線12の集合体の一例である。直線12は文字11より小さいパターンである。より詳しくは、直線12は、直線部分の面積が文字11を構成する複数の線部分の面積の総和より小さいパターンである。このように文字11は、文字11より小さい(微細な)直線12の集合体を含んで形成されている。
【0119】
図14は、図13の拡大図111におけるA-A断面形状を示す断面図である。外側表面部121は収容器1の外側の基材表面を示している。また凹部122は加工レーザビーム20の照射で収容器1の基材の表面が蒸散することにより形成された部分を示し、直線12に対応する部分である。内側表面部123は収容器1の内側(収容器1の内部側)の基材表面を示している。
【0120】
厚みtは収容器1の基材の厚みを示し、加工深さHpは凹部122の深さを示している。非加工部深さHbは非加工部の深さを示している。非加工部の深さは、収容器1の基材の厚みtから加工深さHpを差し引いた深さである。
【0121】
ここで、隣接する第2パターン同士の間隔とは、隣接する第2パターンの中心間の距離をいう。図14における間隔Pは隣接する直線12同士の間隔を示している。また幅Wは直線12の太さを示している。本実施形態における直線12は周期性をもって形成されているため、間隔Pは直線12が形成された周期にも該当する。
【0122】
ここで間隔Pは、0.4μm以上で130μm以下にすることが好ましい。間隔Pを0.4μm以上にすることで可視光の波長限界の制限を受けずに周辺光を拡散させることができ、直線12の集合体により構成される文字11のコントラストを向上させることができる。
【0123】
また、間隔Pを130μm以下とすることで、200dpi(dot per inch)の解像度を保証するとともに、直線12のそのものが視認されることを防ぎ、文字11を白濁化したパターンとして高いコントラストで視認させることができる。間隔Pを50μm以下にすると、第2パターンそのものが視認されることを確実に防ぐことができるため、より好適である。
【0124】
上述した例では間隔Pに対する好適な数値として説明したが、第2パターンが周期性を有する場合は、上記の好適な数値を周期に対しても当てはめることができる。
【0125】
なお、図9に示した第2パターンの加工データに対して、図13は間隔の狭い第2パターンの例を示している。つまり、図9の文字データ642と図13の文字11とは対応していない。
【0126】
また、拡大図111では、等間隔に周期性を持って形成された直線12の集合体を示したが、第2パターンの集合体はこれに限定されるものではない。異なる間隔で非周期に形成された複数の直線12で第2パターンの集合体を構成してもよいし、周期的又は非周期に形成された複数の点等により第2パターンの集合体を構成してもよい。第2パターンが点のパターンである場合、この点のパターンは文字11等の第1パターンより小さいパターンにする。
【0127】
また、本実施形態では、凸部に対応する外側表面部121と凹部122を含む凹凸形状で第2パターンが形成されている。このように凹凸形状で第2パターンを形成する場合は、外側表面部121と凹部122との深さの差を0.4μm以上にすることが好ましい。0.4μm以上にすることで、可視光の波長限界の制限を受けずに周辺光を拡散させ、直線12の集合体により構成される文字11のコントラストを向上させることができる。なお、凸部の一例として外側表面部121を示したが、凹部122より深さが浅ければ、加工レーザビーム20を照射して収容器1の外側表面を蒸散させた部分が凸部であってもよい。
【0128】
次に、図15は、加工深さHpの各種の例を示す図である。
【0129】
図15(a)は加工深さHpが基材の非加工部深さHbより浅い場合の図である。より具体的には、加工深さHp対非加工部深さHbの比が、1以下対9以上から3対7となる場合である。この場合、第2パターンの剛性(機械強度)が向上する。一例として収容器1の基材の厚みが100μm~500μmの場合に加工深さHpは10μmである。
【0130】
図15(b)は加工深さHpが基材の非加工部深さHbより深い場合の図である。より具体的には、加工深さHp対非加工部深さHbの比が、7対3から9以上対1以下となる場合である。
【0131】
図15(c)は加工深さHpと基材の非加工部深さHbが同程度の場合の図である。より具体的には、加工深さHp対非加工部深さHbの比が、4対6から6対4となる場合である。
【0132】
図15(d)は加工深さHpと基材の非加工部深さHbを変化させた場合の図である。
【0133】
図15(a)~(d)に示したような加工深さHpの深さは、レーザ照射制御部65における光強度制御部651でレーザ光源21の射出するレーザ光の光強度を制御することにより調整できる。
【0134】
<レーザ光源と加工パラメータの対応例>
製造装置100で使用されるレーザ光源21は、例えば、波長355nm、波長532nm、波長1064nmのパルスレーザが使用され、パルス幅は、数10fsから数100nsである。換言すると、紫外領域、又は可視光領域の短パルスレーザ、若しくは超短パルスレーザが使用される。但し、これに限定されるものではなく、CWレーザを使用することも可能であり、CWレーザを変調して使用できる。
【0135】
レーザ光源21として波長が短いレーザ光源を用いるほどビームスポット径を小さくでき、より微細な第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成するために好適である。
【0136】
<収容器1による作用効果>
PETボトル等の収容器は、飲料等の流通及び販売における保存性等、様々な利点があるため広く利用されている。市場で流通する収容器には、その管理や販売促進のために商品名、成分表示、賞味期限、バーコード、QRコード、リサイクルマーク及びロゴマーク等を表示するラベルが貼付されることが多い。ラベルにより、消費者にとって有用な情報を提供することができる。また消費者に訴求するためのデザインをラベルで表示することで、商品の個性発揮や競争力アップを図ることができる。
【0137】
一方で昨今、海洋プラスチックごみの問題等が取り沙汰され、世界的にプラスチックごみによる環境汚染をなくしていく動きが活発化している。これはPETボトル等の収容器においても例外でなく、環境に配慮したリデュースの観点で、プラスチックごみ削減のための対策が進められている。
【0138】
そんな中で、収容器の循環型リサイクルへの要求が高まっている。ここで、収容器の循環型リサイクルとは、分別回収された使用済みの収容器をリサイクル業者が収容器の原料となるフレークに変え、再度収容器を製造することをいう。
【0139】
このような循環型リサイクルを円滑に進めるには、PETボトル等の収容器本体、ラベル、又はキャップ等の材質が異なる基材を、リサイクルの過程で分別回収を徹底することが好ましい。分別回収のためには、消費者は1つ1つの収容器からキャップとラベルを分離する必要があり、特にラベルを剥がす作業は手作業になるため、一般消費者及び自治体の資源回収業者にとっては手間となる。そのため、収容器からラベルを剥がす作業は、分別回収を徹底させるための制約の1つになっている。
【0140】
これに対し、ラベルを無くした収容器を提供する技術の検討が行われている。例えば、インクジェット方式で情報を表示するパターンを収容器本体に印刷することで、ラベルを無くす方法が検討されている。
【0141】
しかし、印刷により付与されたインクがボトル回収後のリサイクル過程で残留することで不純物が増えるため、好ましくない場合がある。また不純物を削減するためにリサイクルの過程でインクを収容器本体から除去すると、管理情報が欠落してしまい、好ましくない場合がある。
【0142】
また他の方法として、CO2レーザ(炭酸ガスレーザ)を用いて収容器本体に情報を表示するパターンを形成することも検討されている。
【0143】
しかし、CO2レーザ等のレーザ光源の波長は長いため、ビームスポット径が大きくなることで収容器本体へのパターン形成の解像度が低くなる。その結果、画像等の情報量が多いパターンを収容器に形成すると、パターンのコントラストが低下して、視認性が低くなる場合がある。
【0144】
これに対し、本実施形態では、基材の表面又は内部の少なくとも一方に、第2パターンにより構成される第1パターンが形成された収容器1を提供する。
【0145】
第2パターンにより構成される第1パターンは、一筆書きで形成した第1パターン等と比較して、周辺光の拡散性が高くなる。なお、ここでいう一筆書きとは、レーザ光を間欠なく連続的なく照射しながら線又は図形を描くことをいう。その結果、収容器1における第1パターンが形成されていない領域に対する第1パターンのコントラストが向上する。本実施形態では、第2パターンによる拡散効果により、第1パターンが形成されていない領域に対して第1パターンが白濁化して視認され、コントラストの向上により白濁化した領域がより白く視認される。
【0146】
これにより、第1パターンが微細な線や文字等を含む情報量の多いパターンであっても、第1パターンを高いコントラストで良好に視認させることができ、情報量の多いパターンが良好な視認性で形成された収容器1を提供できる。また、収容器1の基材となる部材において、画像や図面等が良好な視認性で形成された基材を提供できる。
【0147】
また、インク等の不純物を収容器1本体に付与せずに第1パターンを形成できるため、循環型リサイクルの工程内で不純物を除去する工程を不要とし、またインクを不純物として除去することによる管理情報の欠落も防ぐことができる。
【0148】
また、第1パターンを白濁化させることで、収容器1の基材として可視光に対して透過性を有する透明なプラスチックや透明なガラスを用いた場合にも、第1パターンを良好なコントラストで視認させることができる。
【0149】
なお、本実施形態では、加工レーザビーム20によって第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成する例を示したが、これに限定されるものではなく、切削加工等の他の加工法も適用可能である。
【0150】
また、基材の性状として形状、結晶化状態、又は発泡状態の少なくとも1つを変化させると、基材の性状を変化させる手段としてレーザビームを照射するレーザ加工法を適用できる。レーザ加工法は高速加工が可能で、かつ切削粉等の発生を抑制できるため、よりクリーンな環境で第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成可能になる。
【0151】
また、本実施形態では、照射条件データに基づき、加工レーザビーム20の光強度を制御することで、第2パターンの加工深さHpの深さ調整を行う。これにより、第1パターンのコントラスト又は第2パターンの剛性等の適正化できる。
【0152】
また、収容器1の表面又は内部で基材の性状を変化される領域における加工レーザビーム20の直径を1μm以上で200μm以下にすることが好ましい。第2パターンの集合体により構成される第1パターンによる周辺光の拡散性を良好にでき、また第1パターンの形成効率を確保することができる。
【0153】
ビームスポット径が1μmよりも小さくなると、可視光の波長に近くなり、そうなると、そのビームスポット径で加工した構造で光を散乱することができなくなり、白濁化できなくなってしまう。また、200μmよりも大きくなると、人の目で構造が認識できてしまう。上記利用により、加工レーザビーム20の直径を1μm以上で200μm以下にすることが好ましい。さらに、視力がいい人でも確実に構造を視認できなくするためには、1~100μm以下の加工レーザビーム直径とすることがさらに好ましい。
【0154】
また、隣接する第2パターン同士の間隔は0.4μm以上で130μm以下にすることが好ましい。間隔を0.4μm以上とすることで可視光の波長限界の制限を受けずに周辺光を拡散させ、第1パターンのコントラストを向上させることができる。また、130μm以下とすることで、200dpi(dot per inch)の解像度を保証するとともに、第2パターンそのものが視認されることを防いで、白濁化したパターンとして第1パターンを高いコントラストで視認させることができる。
【0155】
また、第2パターンは所定の周期で形成すると、加工パラメータとして周期情報を用いることができ、第2パターンを形成するための加工パラメータを簡略化できるため好適である。
【0156】
また、第2パターンを凹凸形状で構成する場合、凹凸形状における凹部と凸部の深さの差は0.4μm以上にすることが好ましい。このようにすることで、第2パターンによる周辺光の拡散性を確保でき、第1パターンのコントラストを向上させることができる。
【0157】
また、2個以上で5個以下の第2パターンを含んで集合体を構成すると、第2パターンによる白濁化を良好に行わせることができるためより好適である。
【0158】
さらに、収容器1の基材として生分解樹脂を用いると、樹脂廃棄物を生じさせないため、環境負荷を低減できて、より好適である。この場合、収容器1を構成する樹脂における生分解樹脂の比率は100%であることが好ましいが、30%程度であっても環境負荷は大幅に低減される。
【0159】
また、実施形態は、収容器1と、収容器1に収容されている被収容物とを含んで構成される収容体も含む。図16は、このような収容体7の一例を示す図である。収容体7は、収容器1と、キャップ等の封止部材8と、収容器1に収容された液体飲料等の被収容物9とを含んで構成されている。収容器1の表面にはラベルレスという文字11が形成されている。
【0160】
被収容物9は、黒、茶色、又は黄色等の色を有していることが多い。収容体7の口部には、封止部材8と螺合し固定するためのねじ部が設けられている。また、封止部材8の内側には、収容体7の口部に設けられたねじ部と螺合するためのねじ部が設けられている。
【0161】
収容体7の製造方法としては、次の3態様がある。
態様1:収容器1にパターンを形成後、被収容物9を収容し、その後、封止部材8で封止する収容体7の製造方法。
態様2:被収容物9を収容し、その後、封止部材8で封止し、収容器1にパターンを形成する収容体7の製造方法。
態様3:被収容物9を収容しながら収容器1にパターンを形成し、その後、封止部材8で封止する収容体7の製造方法。
【0162】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0163】
第2実施形態では、収容器1に形成される第1パターンを画像とし、この画像を構成する複数の画素のそれぞれを第2パターンの集合体により構成する。また、第2パターンの間隔を画素間で異ならせることで、第1パターンとしての画像を多値の階調で表現可能にする。
【0164】
図17は、画素間で第2パターンの間隔を異ならせることによる階調表現の一例を説明する図であり、収容器1に形成する第1パターンに対応する画像の加工画像データ112を示している。図17に升目で示した画素1121は、加工画像データ112を構成する画素を示している。加工画像データ112は複数の画素1121により構成されている。
【0165】
本実施形態では、第2パターンは点のパターンであり、複数の画素1121のそれぞれは点データ1122の集合体により構成されている。加工画像データ112において黒地領域で示す点データ1122が、加工レーザビーム20の照射により基材の性状を変化させる領域に対応する。
【0166】
また、図17では、図示した矢印の上方向に向かうほど隣接する点データ1122同士の間隔が広くなり、下方向に向かうほど隣接する点データ1122同士の間隔が狭くなっている。隣接する点データ1122同士の間隔が広いほど、収容器1に点のパターンが形成された際に周辺光の拡散性は低くなり、白濁化した第1パターンの濃度が低くなる。一方、隣接する点データ1122同士の間隔が狭いほど、収容器1に点のパターンが形成された際に周辺光の拡散性は高くなり、白濁化した第1パターンの濃度が高くなる。
【0167】
このように、第2パターンの間隔を画素間で異ならせることで、画像の階調(濃淡)が表現される。
【0168】
ここで、図17では、周期性を有する点のパターンの間隔により階調を表現する例を示したが、階調表現方法はこれに限定されるものではない。図18は、第2パターンによる階調表現の他の例を説明する図である。図18(a)は周期性のない第2パターンの加工データを示す図である。図18(a)では、画素180は1つの画素を示し、画素180は非周期に配置された矩形の点データにより構成されている。図示した矢印の方向は画素濃度の濃淡を示し、画素180内における点データの数が多いほど濃度が濃くなる。
【0169】
図18(a)における間隔Pd1~Pd4は、画素180内における様々な点データの配置における隣接する点データ同士の間隔を示し、収容器1に点パターンが形成された場合の点パターン同士の間隔に対応する。
【0170】
一方、図18(b)は、結晶化状態の変化によって形成された第2パターンの断面図を示している。図18(c)は図18(b)の平面図である。
【0171】
図18(b)、(c)では、収容器1の基材を結晶化させる結晶化深さDを変化させることで、第2パターンによる周辺光の拡散性を変化させ、第1パターンの濃度を変化させる例を示している。結晶化深さDが深いほど、周辺光の拡散性が高くなり、白濁化の白の濃度が濃くなる(より白っぽくなる)。
【0172】
次に、図19は、第2実施形態に係る収容器1aの一例を示す図である。収容器1aには、多値の階調で表現された画像13及び14が形成されている。また文字が重ねて形成された画像15が形成されている。
【0173】
画像13、14及び15のそれぞれは、複数の画素により構成され、各画素は第2パターンとしての点パターンの集合体により構成されている。隣接する点パターン同士の間隔を画素間で異ならせることで、階調が表現されている。このような画像13、14及び15のそれぞれは、第1パターンの一例である。
【0174】
以上説明したように、本実施形態では、収容器1に形成される第1パターンは画像であり、この画像を構成する複数の画素のそれぞれを第2パターンの集合体により構成し、また第2パターンの間隔を画素間で異ならせる。これにより、画素毎での拡散性を変化させることで、画素毎で収容器1に形成される第1パターンの濃度を変化させ、第1パターンを多値の階調で表現することができる。
【0175】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る収容器1bについて説明する。
【0176】
本実施形態では、口部と、口部に連結された肩部と、肩部に連結された胴部と、胴部に連結された底部とを備える収容器1bの肩部に、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成することで、収容器1bを口部側から見た場合に第1パターンを視認しやすくする。
【0177】
ここで、図20は本実施形態に係る収容器1bの一例を説明する図である。図20に示すように、収容器1bは、円筒状のボトルであり、口部101と、肩部102と、胴部103と、底部104とを含んで構成されている。
【0178】
口部101は、飲料等の被収容物を収容器1b内に導入するための導入口の部分である。収容器1b内に収容された被収容物がこぼれないように、収容器1bに栓をするためのキャップが設けられてもよい。
【0179】
肩部102は、口部101と連結し、口部101側を頂角とした円錐状の部分である。胴部103は、肩部102と連結し、図20に矢印で示すY方向に沿う軸を円筒軸とする円筒状の部分である。肩部102は、胴部103の円筒面に対して傾斜している。
【0180】
底部104は、胴部103に連結する収容器1bの底部分である。
【0181】
収容器1bの肩部102には、「ラベルレス」の文字16と、バーコード17が形成されている。文字16及びバーコード17は、第2パターンの集合体により構成されている。
【0182】
図21は、収容器1bを口部101側から見た図である。換言すると、図21の負のY方向から正のY方向に向かって収容器1bを見た図である。図21に示すように、肩部102に文字16及びバーコード17を形成すると、肩部102は胴部103に対して傾斜しているため、収容器1bのユーザ(消費者)が収容器1bを口部101側から見た際に、文字16及びバーコード17がユーザに向いた状態になる。そのため、文字16及びバーコード17を胴部103に形成した場合と比較して、ユーザは文字16及びバーコード17を視認しやすくなる。
【0183】
次に、図22は収容器1bを製造するための製造装置100bの構成の一例を示す図である。製造装置100bは、収容器1bの円筒軸10がZ方向に沿うように収容器1bを保持する。またレーザ照射部2は、収容器1bの肩部102に対向して加工レーザビーム20を照射するように配置されている。
【0184】
製造装置100bの構成により、肩部102に対向して加工レーザビーム20を走査させることができ、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成しやすくなる。
【0185】
図23は収容器1bの他の例を示す図である。収容器1bの肩部102には、文字が重ねて形成されたパターンである文字18が形成されている。
【0186】
以上説明したように、本実施形態では、口部101と、口部101に連結された肩部102と、肩部102に連結された胴部103と、胴部103に連結された底部104とを備える収容器1bの肩部102に、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成する。これにより、収容器1bを口部101側から見た場合に、第1パターンが視認しやすくなる。
【0187】
その結果、例えば、収容器1bを収納ケース等に底部104を下側に向けて収納した場合でも、収納ケースから収容器1bを取り出すことなく、第1パターンが表示する情報を視認しやすくなり、収容器1b又は収容器1bの被収容物の管理を効率的に行うことができる。収容器1bを箱等に底部104を下側に向けて収納する場合としては、例えば収容器1bが飲料用のPETボトルであり、複数のPETボトルを収納ケースに収納する場合等が挙げられる。
【0188】
また、収納ケースの底部が透明であったり、底部に貫通孔が設けられていたりして収納ケースに収納された収容器1bを収納ケースの底側から視認できる場合は、収容器1bの底部104に第1パターンを形成してもよい。
【0189】
ここで図24は、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを、収容器1bの底部104に形成した例を示す図である。図24に示すように、底部104には「ラベルレス」という文字19が第1パターンの一例として形成されている。
【0190】
底部104に第1パターンを形成することで、収納ケースから収容器1bを取り出すことなく、第1パターンが表示する情報を収納ケースの底側から視認しやすくなり、収容器1b又は収容器1bの被収容物の管理を効率的に行うことができる。
【0191】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。図25は、本実施形態に係る収容器1cの一例を示す図である。収容器1cには第2パターンの集合体により構成される第1パターンの一例としてのバーコードが形成されている。
【0192】
ここで、収容器の肩部が口部側を頂角にした円錐状に構成されていると、肩部に形成した第1パターンを口部側から見た場合に、口部から遠ざかるにつれて第1パターンの幅が広がって視認される場合がある。
【0193】
図25(a)は、収容器1cの肩部102に形成した比較例に係る第1パターンとしてのバーコード171'を口側から見た図を示している。図25(a)に示すように、矩形状のバーコード171'が口部101から遠ざかるにつれて広がって視認される。これにより、口部101側からバーコード171'を適切に読み取れない場合がある。
【0194】
そのため、本実施形態では、口部101から遠ざかるにつれて幅が狭くなるバーコード171を肩部102に形成する。図25(b)はこのようなバーコード171の一例を示している。図25(b)における負のY方向側が口部101側に対応し、バーコード171は、口部101から遠ざかるにつれ、幅が狭くなっている。
【0195】
図25(c)は、収容器1cの肩部102に形成したバーコード171を、口部101側から見た図を示している。バーコード171は口部101から遠ざかるにつれ、幅が狭くなるパターンであるため、バーコード171を口部101側から見た場合に、口部101から遠ざかるにつれてバーコード171の幅の広がりが相殺され、矩形状のバーコードとして正しく視認される。バーコード171の幅は、肩部102の胴部103に対する傾斜角度に対応させて適正化しておくことが好ましい。
【0196】
このように、本実施形態では、口部101から遠ざかるにつれて幅が狭くなるバーコード171を肩部102に形成する。これにより、バーコード171が口部101から遠ざかるにつれて広がって視認されることを防ぎ、口部101側からバーコード171やQRコード等のコードを適切に読み取ることができる。なお、このようなコードの読み取りには、ユーザがコードを視認して読み取るものだけでなく、バーコードリーダ又はQRコードリーダ等の読取機器による読み取りも含まれる。
【0197】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0198】
なお、製造装置100における移動機構4(図1参照)はコンベアなどの継続的に移動するものでもよく、収容器1の保持は収容器1と被収容物自身の重みによるものとし、置いているのみでも良い。
【0199】
ここで、図26は、第1変形例に係る製造装置100dの構成の一例を示す図である。製造装置100dは、収容器1の円筒軸10がZ方向に沿うように収容器1を保持する。またレーザ照射部2は、収容器1の胴部103に対向して加工レーザビーム20を照射するように配置されている。
【0200】
また、図27は、第2変形例に係る製造装置100eの構成の一例を示す図である。製造装置100eは、収容器1の円筒軸10がZ方向に沿うように収容器1を支持する。また収容器1を挟んで正のY方向側と負のY方向側に1つずつレーザ照射部2が収容器1の胴部103に対向して配置されている。2つのレーザ照射部2は、正のY方向側と負のY方向側の両側から収容器1の胴部103に加工レーザビーム20を照射する。
【0201】
製造装置100eにより、収容器1の胴部103の正のY方向側と負のY方向側の両側に第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成できる。そのため、収容器1を円筒軸回りに回転させる回転機構が構成から省略されている。但し、回転機構を構成に加えてもよい。
【0202】
移動機構4はコンベアなどの継続的に移動するものでもよく、収容器1の保持は収容器1と被収容物自身の重みによるものとし、置いているのみでも良い。レーザ照射部は2つに限らず3つ以上で構成しても良い。
【0203】
また、上述した実施形態では、樹脂により構成されたPETボトル等のボトルを収容器の一例として示したが、収容器はこれに限定されるものではない。ガラスにより構成されたコップ等であってもよい。図28は、第3変形例に係る収容器としてのコップ1fの一例を示す図である。図28に示すように、コップ1fの円筒面には第2パターンの集合体により構成される第1パターン210が形成されている。
【0204】
また、上述した実施形態では、収容器1は、可視光に対して透過性を有する基材により構成され、この収容器1を背景としての黒いスクリーン等の前に配置した例を示した。
【0205】
これ以外の例として、図29(a)では、収容器1は、可視光に対して透過性を有する樹脂又はガラス(透明な樹脂又は透明なガラス)により構成され、背景としての白いスクリーンの前に配置されている。透明な収容器1を通して背景の白いスクリーンが見えている。或いは透明な収容器1内に白色の液体が入っており、透明な収容器1を通して収容器1内の白色の液体が見えているとみなしてもよい。
【0206】
図29(a)における収容器1の表面には、文字220aが形成されている。文字220aは、加工レーザビームの照射により、収容器1における基材の表面を炭化等で黒色化させることで形成されたものである。背景の白色又は収容器1内の液体の白色に対して、黒色化された文字220aが黒く視認されている。このように、収容器1の基材を黒色化させることで、第2パターンにより構成される文字220a等の第1パターンを視認させることもできる。
【0207】
また、さらに他の例として、図29(b)では、収容器1は透明な樹脂又は透明なガラスにより構成され、背景としての黒いスクリーンの前に配置されている。透明な収容器1を通して背景の黒いスクリーンが見えている。或いは透明な収容器1内に黒色の液体が入っており、透明な収容器1を通して収容器1内の黒色の液体が見えているとみなしてもよい。
【0208】
図29(b)における収容器1の表面には、文字220b以外の領域に加工レーザビームを照射して、収容器1の基材の性状を変化させたパターンが形成されている。この文字220b以外の領域は、第2パターンの集合体により構成される第1パターンに対応する。
【0209】
文字220a以外の領域で周辺光の拡散性が向上し、文字220a以外の領域が白濁化されて視認されている。文字220bの領域では背景のスクリーンの黒色、又は収容器1内の液体の黒色が視認されている。このようにして文字220b等の第1パターンを視認させることもできる。
【0210】
また、実施形態では、収容器が円筒状である例を示したが、収容器はこれに限定されるものではなく、箱状の収容器や錐体状の収容器等であってもよい。
【0211】
また、実施形態では、第2パターンの集合体により構成される第1パターンを収容器の表面に形成する例を示したが、収容器を構成する基材の内部に第2パターンの集合体により構成される第1パターンを形成することもできる。
【0212】
また、収容器1に収容されている被収容物についても、可視光に対して透過性を有する収容器に収容された被収容物の色に対して、第1パターンのコントラストを上げることで、良好な視認性で情報量が多いパターンが形成されたものを提供できる。例えば被収容物が黒色の場合は、収容器に白濁化された第1パターンを形成すると、第1パターンを視認しやすくなり、被収容物が白色の場合は、収容器に黒色化された第1パターンを形成すると、第1パターンを視認しやすくなる。
【0213】
<レーザ光源の波長の一例>
ここで、レーザ光源の波長について、より詳細に説明する。レーザ光源の波長は、上述した紫外領域、可視領域のものだけでなく、近赤外領域から中赤外領域のものも好適である。具体的には、1200nm乃至1500nmの波長領域のものも好適である。
【0214】
例えば、近赤外領域から中赤外領域の波長は、発泡(熱変性)で白濁化させる場合に高速で対応でき、また装置のアレイ化もしやすくなる点で好適である。紫外領域の波長は、アブレーションによる加工を行うために、レーザ光の光強度を大きくできる点で好適である。
【0215】
また波長帯域ごとで、吸対象基材に対する吸収率が周辺波長よりも突出して高い波長が存在するため、この波長を利用すると特に好適である。
【0216】
以下に示す表1は、波長帯域ごとでの吸収率が突出して高い波長の一例を示すものである。表1の右側の列に「凡その波長帯域」を示し、各波長帯域における吸収率が突出して高い波長を左側の列に示す。中央の列は、吸収率が突出して高い波長の吸収率を示す。
【表1】
【0217】
なお、吸収率は、基材の材質又は厚み等によって異なるが、表1では、PETを材料として構成された厚み0.5mmの基材の場合を例示している。また吸収率が20%以上の波長を例示している。
【0218】
表1に示す波長を射出可能なレーザ光源を使用することで、基材におけるレーザ光の吸収率を確保し、良好な視認性のパターンを高速に形成できる。具体的なレーザ光源としては、例えば1660nmの波長のレーザ光を射出するYAGレーザ等が挙げられる。
【0219】
また収容器1の場所ごとで異なる波長のレーザ光を照射することもできる。ここで図30は、場所ごとで異なる波長のレーザ光を照射する構成の一例を示す図である。図3に示すように、製造装置100eはレーザ照射部2a、2b及び2cを有する。レーザ照射部2aは、収容器1の第1の面(例えば図30の-Y方向側の面)に第1の波長の加工レーザビーム20aを照射し、レーザ照射部2bは、収容器1の第2の面(例えば図30の+Y方向側の面)に第2の波長の加工レーザビーム20bを照射する。またレーザ照射部2cは、収容器1の封止部材8の面に第3の波長の加工レーザビーム20cを照射する。
【0220】
レーザ照射部2a、2b及び2cのそれぞれが備えるレーザ光源は、加工レーザビーム20a、20b及び20cを射出できる。第1の波長と、第2の波長と、第3の波長は相互に異なる波長である。但し、必ずしも全部の光源の波長がそれぞれ異なる必要はなく、一部の光源同士は波長が等しくてもよい。レーザ照射部2a、2b及び2cは、それぞれが並行して加工レーザビームを照射できる。
【0221】
例えば、封止部材8の材質が収容器1の材質とは異なり、且つ収容器1と比較して第1の波長の吸収率が低い場合には、封止部材8の材質に対する吸収率が、収容器1に対する第1の波長の吸収率と同程度である第2の波長を加工レーザビーム20bとして照射する。これにより加工レーザビーム20aによる収容器1へのパターン形成の速度と、加工レーザビーム20bによる封止部材8へのパターン形成の速度とを合わせることができる。
【0222】
また、第1の波長と第3の波長を異ならせることで、例えば、レーザ照射部2aにより収容器1の第1の面に形成するパターンに対して濃度が異なるパターンを、レーザ照射部2cにより収容器1の第2の面に形成することができる。
【0223】
<変性痕の一例>
次に、加工レーザビームの照射による基材の変性痕について説明する。図31は、変性痕の走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)写真であり、(a)は上面方向から視た斜視図、(b)は(a)のD-D矢視断面方向から視た斜視図である。図31(a)では、変性痕110が観察されている。
【0224】
図31に示すように、変性痕110は、凹部131と、凸部132とを含む。凹部131は、第1の傾斜面1311と、底部1312とを含み、椀状の形状に形成されている。凹部幅Dcは凹部131の幅を表し、深さdpは、パターンが形成されていない非パターン領域の表面に対する底部1312の高さ(Z軸方向の長さ)を表している。
【0225】
また、凸部132は、頂部1321と、第2の傾斜面1322とを含み、円環面状に形成されている。なお、円環面とは円周を回転して得られる回転面をいう。円環幅Drは、凸部132の円環面部分の半径方向の幅を表し、高さhは、非パターン領域の表面に対する頂部1321の高さ(Z軸方向の長さ)を表している。
【0226】
変性痕幅W1は、変性痕110全体の幅を表している。変性痕幅W1は、例えば約100um程度である。第1の傾斜面1311と第2の傾斜面1322は連続した面である。なお、連続した面とは、同じ材質で段差がなく繋がった面をいう。
【0227】
また図31に示すように、凹部131及び凸部132のそれぞれを構成する面には、微小な凹凸部113が形成され、表面が荒れている。凹凸部113は変性痕110の変性痕幅W1より小さい幅の凹部と凸部からなり、典型的には1μm乃至10μm程度の幅の凹部と凸部からなる。
【0228】
また図31(a)に示すように、隣接する変性痕間にも、変性痕110を加工した際の加工片が飛散しており、これらによっても面が荒れている。パターン領域13aでは、凹凸部113や加工片による表面の荒れにより、非パターン領域と比較して表面粗さが大きくなっている。
【0229】
実施形態に係る製造装置は、例えば、基材1Aに対して加工レーザビームを照射し、基材1Aの表面を変性させることで変性痕110を形成する。また加工レーザビームを基材1A上の1点に集光させることで1つの変性痕110を形成する。また、この加工レーザビームを2次元走査することで、複数の変性痕110を形成する。或いは、アレイ化した複数のレーザ光源のそれぞれから射出された複数の加工レーザビームによっても複数の変性痕110を形成できる。さらに複数の変性痕の各位置に対応した複数の光透過開口を有するマスク部材に、拡大した加工レーザビームを照射し、マスク部材の各光透過開口を透過した複数の透過レーザビーム群のそれぞれにより、複数の変性痕を1回の露光で並行に形成することもできる。
【0230】
<製造装置100fによる温度制御例>
次に、第5実施形態に係る製造装置100fによる温度制御について説明する。図32は、製造装置100fによる温度制御の一例を説明する図である。図32に示すように、製造装置100fは、エアブロウ321と、制御部6fとを有する。
【0231】
エアブロウ321は、収容器1における加工レーザビーム20が照射される部分の近傍に配置されたエアー噴射装置である。エアブロウ321は、加工レーザビーム20が照射されて温度上昇した収容器1の部分にエアーを吹き付けることで該部分を冷却する。
【0232】
エアブロウ321は、制御部6fの制御下で、エアー噴射のオンとオフを切り替え、またエアーの噴射量を変化させることができる。また、エアブロウ321をロボットハンド等の保持手段に保持させ、該保持手段を駆動させること等により、加工レーザビーム20の照射位置に合わせてエアーの噴射位置を可変にすることもできる。
【0233】
なお、ここでは、加工レーザビーム20が照射されて温度上昇した収容器1の部分を冷却する構成としてエアブロウ321を例示したが、これに限定されるものではなく、冷却機能を有する如何なる構成を適用してもよい。
【0234】
ここで、図33は、制御部6fの機能構成の一例を説明するブロック図である。制御部6fは、温度制御部70を有する。また温度制御部70は、環境温度制御部71と、エアブロウ制御部72とを有する。
【0235】
環境温度制御部71は、ヒータ等の加熱手段や熱交換器等の冷却手段を制御して製造装置100fの内部全体の環境温度を制御する。
【0236】
エアブロウ制御部72は、エアブロウ321によるエアー噴射のオンとオフの切替制御、及びエアーの噴射量の制御等を行うことができる。
【0237】
<封止部材8へのパターン形成例>
次にPETボトルを封止するキャップ等の封止部材8へのパターン形成について説明する。図34は、封止部材8に形成したパターンの一例を示す図である。図34に示すように、封止部材8の表面には、パターンの一例としての1次元バーコード341が形成されている。このようなパターン形成には、図30の製造装置100eにおけるレーザ照射部2c等の構成を用いることができる。
【0238】
図34の1次元バーコード341では、黒色の封止部材8の表面に加工レーザビームを照射して白濁化させ、白濁化させた領域以外の線状の領域を一次元バーコードとして機能させる。なお、封止部材8は小さいため、短縮コード等の長さが短い1次元バーコードを形成することが好ましい。
【0239】
また、白濁化するだけでなく、白以外の色に変性させてバーコードとして機能させてもよい。さらに変性箇所以外の部分でバーコードのバー部分(線状領域)を形成してもよいし、変性箇所でバー部分そのものを形成してもよい。
【0240】
実施形態に係る製造装置は、例えば、PETボトルを封止する無地のキャップの表面に、PETボトルが収容する飲料の種類を示す一次元バーコード等を、PETごとにオンデマンドで形成できる。これにより、在庫を用意することなく、飲料の種類に応じた一次元バーコードが形成されたキャップを随時取得できる。またラベルを用いずに、単一の素材でキャップに情報表示できるため、リサイクルへの適応性も確保できる。
【0241】
<マルチビーム例>
次にアレイレーザが射出するマルチレーザビームを用いたパターン形成について説明する。図35は、マルチレーザビームを照射する構成の一例を示す図である。なお、マルチレーザビームとは、2以上のレーザビームをいう。
【0242】
図35に示すように、製造装置100gは、レーザ照射部2gと、回転機構3とを有する。レーザ照射部2gは、アレイ状に配列する複数の半導体レーザ351と、半導体レーザ351のそれぞれに1対1で対応して設けられた複数の集光レンズ352とを有する。
【0243】
レーザ照射部2gは、複数の半導体レーザ351がそれぞれ射出するレーザビームを、集光レンズ352を介して収容器1の基材に照射する。製造装置100gは、回転機構3により収容器1を回転させながら、半導体レーザ351のそれぞれが射出するレーザビームを並行に照射することで、収容器1の基材にパターンを形成できる。
【0244】
なお、レーザ照射部2dは、複数の半導体レーザ351に1対1に対応して複数の光ファイバを有し、各光ファイバで導光されたレーザビームを収容器1に照射する構成にしてもよい。
【0245】
図36は、各種のマルチレーザビームを例示する図であ。(a)は1列に配列するもの、(b)は2列に配列するもの、(c)は千鳥状に2次元配列するもの、(d)は矩形格子状に2次元配列するものをそれぞれ示している。製造装置100gは、図36(a)乃至(d)のマルチレーザビームを収容器1に照射できる。
【0246】
図36(a)では、例えば254個のレーザビームが配列することで、収容器1の基材上で、100μmの画素サイズで1インチ幅の領域にレーザビームを並行に照射できる。
【0247】
例えば、図36(a)のマルチビームにより、低コストの構成で高速にパターンを形成できる。図36(b)のマルチビームにより、図36(a)のマルチビームと比較して、より高速にパターンを形成できる。
【0248】
図36(c)のマルチビームにより、基材上でのビームの密度(ドット密度)を上げることができる。図36(d)のマルチビームにより、図36(a)及び(b)と比較して、さらに高速にパターンを形成できる。また図36(d)のマルチビームにより、収容器1を回転させたり、移動させたりすることなく2次元のパターンを形成することもできる。
【符号の説明】
【0249】
1 収容器
10 円筒軸
11 文字(第1パターンの一例)
112 加工画像データ
1121 画素
12 直線(第2パターンの一例)
121 外側表面部(凸部の一例)
122 凹部
2 レーザ照射部(照射部の一例)
20 加工レーザビーム
21 レーザ光源
22 ビームエキスパンダ
23 走査部
24 走査レンズ
25 同期検知部
3 回転機構(回転部の一例)
4 移動機構(移動部の一例)
5 集塵部
6 制御部
61 第1パターンデータ入力部
62 第2パターンパラメータ指定部
621 加工パラメータ
63 格納部
631 対応テーブル
64 加工データ生成部
641 加工データ
65 レーザ照射制御部
651 光強度制御部
652 パルス制御部
66 レーザ走査制御部
67 収容器回転制御部
68 収容器移動制御部
69 集塵制御部
7 収容体
8 封止部材
9 被収容物
100 製造装置
101 口部
102 肩部
103 胴部
104 底部
P 間隔(周期の一例)
Pd1、Pd2、Pd3、Pd4 間隔
W 幅
Hp 加工深さ
Hb 非加工部深さ
t 基材の厚み
D 結晶化深さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0250】
【文献】特開2011-011819号公報
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36