(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】香辛料ペースト調味料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20240820BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240820BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2019216793
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】中西 誠人
(72)【発明者】
【氏名】中島 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 ますみ
(72)【発明者】
【氏名】大熊 弘子
(72)【発明者】
【氏名】湯山 将樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】里見 茂樹
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122268(JP,A)
【文献】特開2016-182076(JP,A)
【文献】特開2016-123319(JP,A)
【文献】特開2019-110927(JP,A)
【文献】特開2014-030381(JP,A)
【文献】特開2000-069931(JP,A)
【文献】特開平11-290016(JP,A)
【文献】特開2013-013395(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084094(WO,A1)
【文献】特開2002-101837(JP,A)
【文献】国際公開第2014/171359(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満であり、かつ該油脂に含まれる液状油脂は50質量%以上である油脂を含む香辛料ペースト調味料組成物の製造方法であって、該方法が、1質量%以上70質量%以下の香辛料、30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満であり、かつ該油脂に含まれる液状油脂は50質量%以上である油脂、及び0質量%以上かつ10質量%未満の水を60℃達温以上で加熱、混合すること、ならびに、香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超とすること、
を含
み、該油脂にショートニングを用いる場合には、ショートニングは該加熱後、組成物を常温(5℃~35℃)まで冷却した後に加えて混合する、製造方法。
【請求項2】
前記油脂中に含まれる極度硬化油脂は0質量%以上5質量%未満の量である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに油系増粘剤を混合すること、を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
油系増粘剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
香辛料がコショウ、ゴマ、トウガラシ、ニンニク、オニオン、山椒、花椒、生姜からなる群から選択される1又は2以上の香辛料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が2000mPa・s~1000Pa・sとなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法により製造された香辛料ペースト調味料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離安定性を有し、かつ良好な風味とコクを有する香辛料ペースト調味料組成物の製造方法、ならびにそれによって製造された香辛料ペースト調味料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香辛料を調味料等と共に食用油脂と混合してなるペースト状調味料(以下、「香辛料ペースト調味料組成物」と記載する場合がある)が知られている。香辛料ペースト調味料組成物は、炒め料理、煮込み料理、鍋料理、及びスープ等の種々の料理の調理において、味付け及び香り付けに利用されている。
【0003】
従来、様々な香辛料ペースト調味料組成物が開発され、報告されている。
【0004】
特許文献1には、液状油脂、極度硬化油及び可塑性油脂を含む油脂原料と、香辛料等の粉体原料と、乳化剤とを含むペースト状調味料の製造方法が記載され、液状油脂、極度硬化油、香辛料及び乳化剤を品温が72℃に達するまで攪拌しながら加熱し、その後、品温が35℃になるまで冷却してから、可塑性油脂であるショートニングを20.0質量部混合して調製された組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、油脂及び緑色乾燥野菜等の具材からなる油脂組成物が記載され、油脂として菜種極度硬化油を10質量%の量で含む組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3には、油脂及び乾燥香辛料等の具材からなる油脂組成物が可撓性容器に充填された油脂食品が記載され、油脂として菜種極度硬化油を10質量%の量で含む油脂食品が開示されている。
【0007】
特許文献4には、香辛料を食用油脂とともに磨砕した後、加熱殺菌して製造されるペースト香辛料が記載されている。
【0008】
特許文献5には、10℃における固体脂含有量(以下、「SFC」と記載する)が25%以下である食用油脂、香辛料等の粉体調味料、及びHLBが4以下の乳化剤を5℃~35℃で混合することを含む、チューブ入り半練り状調味料の製造方法が記載され、食用油脂としてショートニングを油脂中に88質量%の量で含む半練り状調味料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-122268号公報
【文献】特許第3106465号公報
【文献】特許第3252389号公報
【文献】特開2004-283056号公報
【文献】特許第6046411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の香辛料ペースト調味料組成物の多くは炒め料理、煮込み料理、鍋料理、及びスープ等の種々の料理の調理において用いられ、すなわち、加熱して使用されることを前提としており、加熱することなくそのまま食される(例えば、タレやディップソースとして利用する)ことは意図されていなかった。そのため従来の香辛料ペースト調味料組成物を、加熱することなくそのまま食した場合には香辛料の風味が十分に感じられない場合や、滑らかさが十分でなく、また口に入れた際の口どけが悪く良好な食感が得られない場合があった。さらに、従来の香辛料ペースト調味料組成物には分離安定性が高くないものがあり、保存中に油浮きを生じる場合があった。
【0011】
そこで本発明は、加熱して用いられるだけでなく、加熱することなくそのまま食した場合においても、香辛料の良好な風味とコクを感じることができ、また、十分な滑らかさを有し、口どけもよく良好な食感を有し、さらに、高い分離安定性を有する香辛料ペースト調味料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1質量%以上70質量%以下の香辛料、30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満である油脂、及び0質量%以上かつ10質量%未満の水を60℃達温以上で加熱、混合すること、ならびに製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超となるように調整すること、を含む方法により製造された香辛料ペースト調味料組成物が、加熱して用いられるだけでなく、加熱することなくそのまま食した場合においても、香辛料の良好な風味とコクを感じることができ、また、十分な滑らかさを有し、口どけもよく良好な食感を有し、さらに、高い分離安定性を有することを見出した。
【0013】
本発明はこれらの知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 1質量%以上70質量%以下の香辛料、30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満である油脂、及び0質量%以上かつ10質量%未満の水を60℃達温以上で加熱、混合すること、ならびに、香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超とすること、
を含む、香辛料ペースト調味料組成物の製造方法。
[2] 前記油脂中に含まれる極度硬化油脂は0質量%以上5質量%未満の量である、[1]の製造方法。
[3] さらに油系増粘剤を混合すること、を含む、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 油系増粘剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである、[3]の製造方法。
[5] 香辛料がコショウ、ゴマ、トウガラシ、ニンニク、オニオン、山椒、花椒、生姜からなる群から選択される1又は2以上の香辛料である、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 組成物の25℃及びせん断速度1(1/s)における粘度が2000mPa・s~1000Pa・sとなる、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] [1]~[6]のいずれかの製造方法により製造された香辛料ペースト調味料組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱して用いられるだけでなく、加熱することなくそのまま食した場合においても、香辛料の良好な風味とコクを感じることができ、また、十分な滑らかさを有し、口どけもよく良好な食感を有し、さらに、高い分離安定性を有する香辛料ペースト調味料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、1質量%以上70質量%以下の香辛料、30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満である油脂、及び、0質量%以上かつ10質量%未満の水を60℃達温以上で加熱、混合すること、ならびに製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超となるように調整することを含む、香辛料ペースト調味料組成物の製造方法に関するものである。なお、本明細書中において、「1質量%以上70質量%以下の香辛料、30質量%以上99質量%以下の油脂であって該油脂に含まれる固形油脂は0質量%超50質量%未満である油脂、及び、0質量%以上かつ10質量%未満の水を60℃達温以上で加熱、混合すること」、ならびに、「製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超となるように調整すること」とはこの順序で記載されることがあるが、これはこれらの工程がこの順序で行われることを意味するものではない。また、「製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分のSFCが25℃で0.5%超となるように調整すること」について、この調整は、製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分の固体脂含有量(SFC)を所定の値にする油脂等の量が一度決定されれば、本発明の製造方法を実施する際に毎回行われる必要はなく、当該SFCを達成可能な決定された配合で、香辛料、及び、油脂、ならびに必要に応じて水やその他の成分(後述)を混合すればよい。
【0016】
本発明において「香辛料」とは、植物から採取され、調理の際に香りや辛味、色を付与したり、臭みを消したりするものの総称であり、ハーブ類や香辛植物、複数の香辛料をブレンドしたものが挙げられる。例えば、本発明において利用可能な香辛料としては、アジョワン、アニス、エシャロット、オールスパイス、オニオン、オレガノ、カファライム、カホクザンショウ(花椒)、カルダモン、カレーリーフ、キャラウェイ、クミン、グリーンペッパー、クローブ、ゴマ、コショウ、コリアンダー(パクチー)、サフラン、山椒、シソ、シナモン、生姜、スターアニス、セージ、タイム、ターメリック、タデ、タラゴン、チンピ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニラ、ニンイク、ネギ、バジル、パセリ、バニラ、パプリカ、ハラペーニョ、フェヌグリーク、フェンネル、ホースラディッシュ、マージョラム、マスタード、ミカン、ミント、ラディッシュ、レモン、レモングラス、ローズマリー、ローリエ、ワサビ、五香粉、ガラムマサラ、カレー粉、七味唐辛子、柚子胡椒(柚子唐辛子)等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは、本発明の香辛料ペースト調味料組成物には、香辛料として、コショウ、ゴマ、トウガラシ、ニンニク、オニオン、山椒、花椒、生姜からなる群から選択される1又は2以上の刺激性香辛料が含まれる。
【0017】
本発明において、香辛料は粉末の形態で用いることが可能であり、乾燥粉砕物や抽出物の乾燥粉末の形態で用いることができる。
【0018】
本発明において、香辛料は任意の量で加えることができ、その量は用いる香辛料に応じて適宜設定することができる。例えば、本発明において、香辛料は1質量%以上、例えば1質量%以上70質量%以下、好ましくは2質量%以上60質量%以下、より好ましくは3質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上40質量%以下、最も好ましくは5質量%以上30質量%以下の範囲より適宜選択される量で加えることができる。香辛料が1質量%よりも少ないと香辛料の良好な風味が得られない場合があり、70質量%よりも多いと、製造される香辛料ペースト調味料組成物の滑らかさが得られない場合がある。
【0019】
本発明において「油脂」とは、食用に供される動植物性油脂(食用油とも呼ばれる場合がある)を意味し、液状油脂、固形油脂(例えば、極度硬化油脂、可塑性油脂(ショートニング、ラード、エステル交換油脂))等であり、これらの油脂の1種又は2種以上が利用される。
【0020】
本発明において利用可能な油脂としては、例えば、ショートニング、マーガリン、パーム油、パーム核油、綿実油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、からし油等の植物油脂、バター、ラード、牛脂及び豚脂等の動物油脂、及びこれらの極度硬化油脂、エステル交換油脂等を挙げることができる(これらに限定はされない)。油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明において、油脂は任意の量で加えることができ、その量の調整により本発明の香辛料ペースト調味料組成物に含まれる粗脂肪分の固体脂含有量(SFC)が後述する所望の値となる範囲に適宜調整することができる。
【0022】
例えば、本発明の香辛料ペースト調味料組成物には油脂を30質量%以上99質量%以下、好ましくは35質量%以上98質量%以下、より好ましくは40質量%以上95質量%以下の範囲より適宜選択される量で含めることができる。油脂が30質量%よりも少ない場合や、99質量%よりも多い場合には、本発明の香辛料ペースト調味料組成物の滑らかさや口どけ等の食感の低下を生じる場合や、風味の低下を生じる場合がある。
【0023】
本発明に利用する油脂中、固形油脂が0質量%超50質量%未満、すなわち、0質量%超40質量%未満、0質量%超30質量%未満、0質量%超20質量%未満、5質量%以上15質量%未満、又は5質量%以上10質量%未満の量で含まれていてもよい。固形油脂を利用することによって、製造される香辛料ペースト調味料組成物の香辛料の香り・辛みを程よく持続させ、コクを付与し、風味を強く感じさせることができ、また保存中の油浮きを抑えることができる。
【0024】
「固形油脂」とは、上昇融点が30℃以上の油脂を意味する。このような固形油脂としては、例えば、ショートニング、ラード、エステル交換油脂、カカオバター、牛脂、パーム核油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、パーム極度硬化油等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0025】
また、本発明に利用する油脂中、液状油脂が50質量%以上100質量%未満、すなわち、60質量%以上100質量%未満、70質量%以上100質量%未満、80質量%以上100質量%未満、85質量%以上95質量%以下、又は90質量%以上95質量%以下の量で含まれていてもよい。液状油脂を含めることによって、加熱することなくそのまま食した場合においても、十分な滑らかさを有し、口どけもよく良好な食感を付与することができる。
【0026】
「液状油脂」とは、上昇融点が30℃未満の油脂を意味する。このような固形油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、綿実油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、からし油等の植物油脂等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0027】
本発明に利用する油脂中、ショートニングが0質量%以上50質量%以下、すなわち、0質量%以上45質量%以下、0質量%以上40質量%以下、0質量%以上30質量%以下、0質量%以上20質量%以下、0質量%以上10質量%以下、又は0質量%以上5質量%以下の量で含まれていてもよい。ショートニングを含めることによって、製造される香辛料ペースト調味料組成物の滑らかさを調節することができ、また保存中の油浮きを抑えることができる。ショートニングを50質量%以上の量で含む場合には、製造される香辛料ペースト調味料組成物について、加熱することなくそのまま食するには滑らかさが十分でなく、また口に入れた際の口どけが悪く食感が不良であったりする場合がある。
【0028】
さらに、本発明に利用する油脂中、極度硬化油脂が0質量%以上30質量%以下、例えば、0質量%以上20質量%以下、0質量%以上10質量%以下、0質量%以上7質量%以下、好ましくは0質量%以上5質量%未満、より好ましくは0質量%以上4質量%未満、すなわち、0質量%以上4.5質量%以下、0質量%以上4質量%以下、0質量%以上3質量%以下、0.5質量%以上2質量%以下、又は、1質量%以上1.5質量%以下の量で含まれていてもよい。極度硬化油脂を含めることによって、製造される香辛料ペースト調味料組成物の滑らかさを調節することができ、また保存中の油浮きを抑えることができる。極度硬化油脂を5質量%以上の量で含む場合には、製造される香辛料ペースト調味料組成物について、所望の粘度を得ることができない場合があり、滑らかさや口どけ等の食感の低下を生じる場合がある。
【0029】
「極度硬化油脂」とは、不飽和脂肪酸がほとんど存在しなくなるまで、すなわちヨウ素価が実質的に0(通常は2~3以下)になるまで水素添加を施した油脂であって、硬度が高く、融点も50~70℃と高い固形油脂を意味する。このような極度硬化油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、米ぬか油、綿実油、パーム油、パーム分別油、からし油、ラード、牛脂等(これらに限定はされない)から選択される油脂から調製された極度硬化油脂が挙げられる。
【0030】
本発明において、製造される香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分の25℃における固体脂含有量(SFC)は0.5%超え、好ましくは0.6%以上であり、より好ましくは0.8%以上であり、例えば、0.6%~20%、好ましくは0.8%~20%、より好ましくは1%~10%とする。前記SFCが0.5%以下である場合には、製造される香辛料ペースト調味料組成物の安定性が低下し油浮き等を生じる場合があり、一方、前記SFCが20%を超える場合には、製造される香辛料ペースト調味料組成物の滑らかさや口どけ等の食感の低下を生じる場合がある。なお、「粗脂肪分」とは、本発明に利用される油脂由来のもののみならず、香辛料由来のもの、添加材由来のもの、その他の成分由来のもの等、香辛料ペースト調味料組成物全体に含まれる粗脂肪分を示すものである。
【0031】
ここで、香辛料ペースト調味料組成物の粗脂肪分の25℃における固体脂含有量(SFC)は、香辛料ペースト調味料組成物に含まれる粗脂肪分をソックスレー抽出法により抽出し、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法(II)に記載されるNMR法(暫3-1983 暫定固体脂含量)に準じて測定することができる。
【0032】
日本油化学会制定の基準油脂分析試験法(II)に記載されるNMR法(暫3-1983 暫定固体脂含量)とは、具体的には、試料を90℃の恒温槽で加熱して均一にし、試験管(2ml)に詰めゴム栓をする。試料管に詰めた試料及び対照試料(局方オリーブ油)を60±0.2℃に30分間保持した後、それぞれの試料のNMRシグナルを読む。次いでこれらの試料を0±2℃に30分間保持した後、測定温度(T±0.2℃)に30分間保持して、それぞれのシグナルを読む。T℃におけるSFCは次の式により計算される。
SFC(%)=100-A/B×C/D×100
式中、Aは60℃における対照試料のNMRシグナルの読みであり、Bは60℃における測定試料のNMRシグナルの読みであり、CはT℃における測定試料のNMRシグナルの読みであり、DはT℃における対照試料のNMRシグナルの読みである。
【0033】
製造される香辛料ペースト調味料組成物の粘度は、25℃及びせん断速度1(1/s)における値が2000mPa・s~1000Pa・sであることが好ましく、同条件において1Pa・s~500Pa・sであることがより好ましく、10Pa・s~100Pa・sであることがさらに好ましい。油脂に一定の粘度を付与する事で、香辛料の香りの後引きを増強することが出来る。
【0034】
前記粘度は、1mm以上の粒子を取り除いたサンプルを回転式粘弾性測定装置(例えば、HAAKE社製RheoStress 6000)を用い、直径35mmパラレルプレート、25℃にて、ずり速度0.1s-1から31s-1までの間を低ずり速度側から測定することにより測定することができる。
【0035】
本発明の香辛料ペースト調味料組成物の粘度は、油脂、特に固形油脂、ショートニング、極度硬化油脂の配合によって調整してもよいし、あるいは、油系増粘剤の加えることによって調整してもよい。
【0036】
本発明において「油系増粘剤」とは、液状の油脂に添加して溶解することにより、当該油脂を増粘、固化、及び/又はゾル・ゲル化することが可能な物質を意味する。このような油系増粘剤としては、脂肪酸とポリグリセリンとを構成成分として含む、ポリグリセリン脂肪酸エステルを好適に用いることができる。
【0037】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸(以下、「構成脂肪酸」と記載する)については、全構成脂肪酸の内、炭素数16~18の直鎖脂肪酸が分子数として45%以上含まれる場合に高い粘度を得ることができる。この割合は、全構成脂肪酸のモル数に対する炭素数16~18の直鎖脂肪酸のモル数の割合を示す。
【0038】
構成脂肪酸には、炭素数8~14の直鎖脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸のいずれかを含む事が好ましい。
【0039】
構成脂肪酸として、(a)炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸を少なくとも1種以上、(b)炭素数8~14の直鎖飽和脂肪酸、炭素数18~22の分岐脂肪酸及び炭素数18~22の不飽和脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種以上が挙げられる。構成脂肪酸における脂肪酸(a)と脂肪酸(b)の比率をモル比にして、0.91:0.09~0.99:0.01とするとき、低添加量にて粘度が高く、長期間油脂の分離を抑えることができる。
【0040】
脂肪酸(a)としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪酸(b)としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エルカ酸、イソステアリン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンについては、水酸基価に基づく平均重合度が10以上のものを用いるのが好ましい。平均重合度が10未満であるポリグリセリンを用いた場合、十分な粘度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない場合がある。より好ましくは、ポリグリセリンの平均重合度は20以上であり、さらに好ましくは30以上、よりさらに好ましくは40以上であり、平均重合度が高い程、粘度が高くなり、低添加量で固化を達成することができる。
【0042】
ポリグリセリンの水酸基価に基づく平均重合度は、従来公知の手法(特開2018-42550号公報)にしたがって、末端基分析法、水酸基価は社団法人日本油化学会編「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法(I)1996年度版」に準じて算出することができる。
【0043】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、70%以上であることが好ましい。エステル化率が70%未満である場合、十分な粘度は得られず、長期間油脂の分離を抑えることができない場合がある。より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、エステル化率が高い程、粘度が高くなり、低添加量で固化を達成することができる。
【0044】
エステル化率は、従来公知の手法(特開2018-42550号公報)にしたがって算出することができる。
【0045】
本発明においてポリグリセリン脂肪酸エステルは常法にしたがって製造されたものを用いることができ、より詳細には、上記の各成分を、上記条件を満たすような組成で仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて、常圧又は減圧下におけるエステル化反応に付すことにより製造されたものを用いることができる。また、本発明においてポリグリセリン脂肪酸エステルは市販品を利用してもよく、例えば、TAISET AD(太陽化学株式会社)、TAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB-100D(三菱化学フーズ(株))等を好適に用いることができる。
【0046】
本発明において、油系増粘剤は任意の量で加えることができ、その量は製造された香辛料ペースト調味料組成物の粘度が上記所望の値となる範囲で適宜調整することができる。
【0047】
例えば、本発明において、油系増粘剤を、0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは1~3質量%の範囲より適宜選択される量で加えることができる。油系増粘剤が0.1量%よりも少ないと、油脂の粘度が十分でない場合があり、一方、10質量%よりも多いと、油脂の粘度が高くなり過ぎる場合があり、その結果、製造される香辛料ペースト調味料組成物の分離安定性が低下し油浮き等を生じる場合、滑らかさや口どけ等の食感の低下を生じる場合がある。
【0048】
本発明においては、製造される香辛料ペースト調味料組成物の所望の特性を妨げない範囲で、水を0質量%以上かつ10質量%未満の量で加えることができる。
【0049】
例えば、本発明において、水を0質量%以上かつ10質量%未満の量で加えることができる。水を10質量%以上の量で加える場合には、製造された香辛料ペースト調味料組成物について、所望の粘度を得ることができない場合があり、滑らかさや口どけ等の食感の低下や風味の低下を生じる場合があり、また油脂の分離を抑えることができず組成物の分離安定性が低下する場合があり、さらに保存性が低下する場合がある。例えば、本発明において水を、0質量%以上10質量%未満、すなわち、0質量%以上8質量%以下、0質量%以上5質量%以下、0質量%以上3質量%以下、0質量%以上2質量%以下、0質量%以上1質量%以下、又は0質量%以上0.5質量%以下の量で加えてもよい。これらの水には、香辛料ペースト調味料組成物の製造において直接加えられる水だけでなく、香辛料ペースト調味料組成物を製造するための一又は複数の原材料の調製過程において当該原材料に混入した水に起因するものが含まれる。
【0050】
また、本発明においては、必要に応じて、上記成分に加えてさらに、水溶性の粉体原料を加えることができる。粉体原料としては、例えば、食塩、水溶性デキストリン、グルタミン酸ソーダ、ブドウ糖、グラニュー糖、上白糖、クエン酸、造粒塩、岩塩、イノシン酸、グアニル酸等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0051】
本発明の香辛料ペースト調味料組成物には、水溶性の粉体原料を任意の量で含めることができ、その含量は用いる粉体原料に応じて適宜設定することができる。例えば、0.1質量%以上69質量%以下質量%、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下質量%の量で含めることができ、特に粉体原料が食塩である場合には0.1~20質量%、より好ましくは1~10質量%、水溶性デキストリンである場合には1~50質量%、より好ましくは5~30質量%、グルタミン酸ソーダである場合には0.1~10質量%、より好ましくは1~5質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。水溶性の粉体原料を上記の範囲で混合することで香辛料の香りの強さを増強することができる。
【0052】
本発明においては、必要に応じて、上記成分に加えてさらに、飲食品の製造において通常用いられている、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えることができる。
【0053】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、ブドウ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0054】
滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル等のシュガーエステル類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、サラシミツロウ等のロウ類、タルク、ケイ酸、ケイ素等が挙げられる。
【0055】
結合剤としては、例えば、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0056】
崩壊剤としては、例えば、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0057】
また、本発明においては、必要に応じてさらに、飲食品の製造において通常用いられている、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール等)、天然高分子(例えば、レシチン、澱粉、デキストリン等)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群等)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロース等)、界面活性剤(例えばソルビタン脂肪酸エステル等)、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料等を適宜加えることができる。
【0058】
本発明は、香辛料、及び油脂、ならびに必要に応じて水や上記のその他の成分を上記の量で、60℃達温以上で加熱、混合する工程を含む。各成分は全て一緒に加えて混合してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次加えて(順序は問わない)混合してもよい。成分の混合は、加熱の前、加熱の最中、又は加熱した後に行うことができる。ただし、例えばショートニングを用いる場合には、ショートニングは加熱後、組成物を常温(5℃~35℃)まで冷却した後に加えて混合する。ショートニングを、常温を超える温度に加熱した場合、油脂の結晶が溶解してしまい、再度冷却した場合に加熱前とは異なる粗大な結晶を生じる場合があり、これが製造される香辛料ペースト調味料組成物の食感をぼそぼそと滑らかでないものに低下させる場合がある。
【0059】
本発明において「達温」とは、組成物自体の温度を意味する。加熱の温度は、60℃達温以上、例えば、60℃を超える、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、100℃以上、105℃以上、110℃以上、115℃以上又は120℃以上の達温まで加熱する。加熱の温度の上限は特に限定されないが、160℃以下とすることができる。60℃を超える達温まで加熱することによって、製造される香辛料ペースト調味料組成物に香辛料の良好な風味を付与することができ、より好ましくは90℃以上の達温まで、さらに好ましくは100℃以上の達温まで加熱することによって、カラメル化やメイラード反応等が起こり調理感が増して風味を増すことができ、香辛料のより良好な風味を付与することができる。60℃達温未満又は160℃達温以上の加熱によっては、香辛料の風味が十分に感じられない場合や、加熱によって焦げを生じ苦み等の異味が感じられる場合がある。
【0060】
加熱は所定の達温まで達した後、その温度で0~15分、好ましくは0~10分、さらに好ましくは0~5分保持することができる。加熱の終了後、組成物を室温又は冷蔵下で冷却する。また、得られた組成物は容器に充填することができる。容器の形態は特に限定されないが、パウチ、缶、瓶、チューブ、ボトル等の形状とすることができる。容器の大きさは特に限定されないが、例えば、10~500mL(典型的には10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、95mL、100mL、150mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL又は500mL)の大きさとすることができる。容器は可撓性容器であることが好ましい。「可撓性容器」とは、力を加えて変形させることができ、かつその力を抜くと元の形状に戻ることが可能な変形容易かつ保形性のある容器を意味し、具体的にはチューブ及びプラスチックボトル等の柔軟性のある容器が挙げられる。可撓性容器に香辛料ペースト調味料組成物を充填することによって、当該容器を指で押すことによって香辛料ペースト調味料組成物を絞り出すことができ使い勝手良い。容器への充填は、組成物を室温又は冷蔵下で冷却する工程の前に行っても良いし、あるいは当該工程の後に行ってもよい。
【0061】
本発明はまた、上記製造方法によって製造された香辛料ペースト調味料組成物に関する。本発明の香辛料ペースト調味料組成物は、香辛料、及び油脂、ならびに必要に応じて上記のその他の成分を上記の量にて含み、加熱して用いられるだけでなく、加熱することなくそのまま食した場合においても、香辛料の良好な風味とコクを感じることができ、また、十分な滑らかさを有し、口どけもよく良好な食感を有し、さらに、高い分離安定性を有する。本発明の香辛料ペースト調味料組成物は容器に充填された形態で提供することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。
【0063】
1.香辛料ペースト調味料組成物の調製
下記表1-1,1-2の組成にしたがって、各成分を混合し80℃達温まで加熱混合し、次いで5℃まで冷却混合して各香辛料ペースト調味料組成物を製造した。油系増粘剤はポリグリセリン脂肪酸エステル(製品名:TAISET AD(太陽化学株式会社))を使用した。粘度は25℃でのせん断速度1(1/s)にて測定した値を示す。得られた組成物を以下の実験に用いた。なお、表中の各成分の量は質量比にて示し、各実験の結果も併記する。
【0064】
【0065】
【0066】
2.分離安定性の評価
実施例及び比較例の香辛料ペースト調味料組成物をそれぞれ、50mLのファルコンチューブに40g充填し、表面を平らにし、40℃で2週間保管した。その後、各組成物について、表層の分離した液状油脂の量を観察し、その幅が25mm未満の場合に「〇」、25mm以上の場合に「×」と評価した。
【0067】
3.口どけの評価
専門パネラー4人が実施例及び比較例の香辛料ペースト調味料組成物をそれぞれ食し、各組成物について口どけを◎(とても口どけが良い)、○(口どけが良い)、△(口どけが良いとは言えない)×(口どけが良くなく、製品には不適)で評価した。
【0068】
4.スパイス感の評価
専門パネラー4人が実施例及び比較例の香辛料ペースト調味料組成物をそれぞれ食し、各組成物について香辛料の風味を◎(スパイス感が強い)、○(スパイス感がある)、△(スパイス感はあるが十分ではない)、×(スパイス感が弱い)で評価した。
【0069】
5.結果
固形油脂を含まず、香辛料ペースト調味料組成物の25℃における粗脂肪分のSFCが0.5%である場合には(比較例1)、保管後、表層に液状油脂の分離が認められ、分離安定性が乏しいことが確認された。
一方、固形油脂を含み、当該SFCが0.5%超である香辛料ペースト調味料組成物においては(実施例1~14)、保管後に液状油脂の分離は認められず、高い分離安定性を有することが確認された。この結果は、香辛料ペースト調味料組成物の分離安定性に、粗脂肪分のSFCが影響を与えることを示す。
【0070】
6.加熱温度によるスパイス感への影響
下記表2の組成にしたがって各成分を混合し、加熱なし、あるいは60℃、80℃、100℃、120℃、140℃、又は160℃達温まで加熱混合し、次いで5℃まで冷却混合して各香辛料ペースト調味料組成物を製造した。油系増粘剤はポリグリセリン脂肪酸エステル(製品名:TAISET AD(太陽化学株式会社))を使用した。なお、表中の各成分の量は質量比にて示す。
【0071】
【0072】
専門パネラー4人が製造された香辛料ペースト調味料組成物をそれぞれ食し、各組成物について各香辛料の風味について、◎(スパイス感が強い)、○(スパイス感がある)、△(スパイス感はあるが十分ではない)、×(スパイス感が弱い)で評価した。
【0073】
結果を下記表3に示す。香辛料ペースト調味料組成物の製造において、加熱せず得られた組成物についてはいずれの香辛料についても、良好な香辛料の風味が感じられなかった。一方、60℃~80℃達温で加熱して得られた組成物については、加熱せず得られた組成物と異なり良好な香りが感じられた。さらに、100℃~140℃達温で加熱して得られた組成物については、調理感がつき風味が増して特に良好な香りが感じられた。
【0074】
特に、香辛料がコショウである場合、60℃達温で加熱することによって、コショウの埃っぽさが少なくなりクリアな香りを付与することができ、100℃達温で加熱することによって、コショウの埃っぽさがなくなり、調理香を付与することができた。一方、160℃達温で加熱して得られた組成物については、焦げ臭が感じられた。また、香辛料がトウガラシである場合、60℃達温で加熱することによって、青臭い香りが少し弱まり、トウガラシの甘い香りを付与することができ、100℃を超える達温まで加熱することによって、重甘い焙煎香を付与することができた。さらに、香辛料がオニオンである場合、60℃達温で加熱することによって、生っぽい香りは弱くすることができ、80℃達温で加熱することによって、調理感のある香りを付与することができ、100℃達温で加熱することによって、香ばしい焙煎香を付与することができた。
【0075】
【0076】
以上の結果より、香辛料、及び油脂を含み、その25℃における粗脂肪分のSFCが0.5%とする香辛料ペースト調味料組成物の製造において、60℃達温以上で加熱、混合することによって、分離安定性が高く、口どけもよく、かつ香辛料の良好な風味とコクを有する香辛料ペースト調味料組成物が得られることが確認された。