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特許75406513次元モデル生成装置および3次元モデル生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】3次元モデル生成装置および3次元モデル生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/55 20170101AFI20240820BHJP
【FI】
G06T7/55
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020168525
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060817
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-10-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年11月7日、令和元年度日本写真測量学会秋季学術講演会発表論文集に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年3月13日、日本写真測量学会北海道支部 令和元年度第38回学術講演会において発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年3月17日、2020年度精密工学会春季学術講演会講演論文集に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591074161
【氏名又は名称】アジア航測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金井 理
(72)【発明者】
【氏名】伊達 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 啓
(72)【発明者】
【氏名】水上 幸治
(72)【発明者】
【氏名】野中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】新名 恭仁
(72)【発明者】
【氏名】本間 亮平
【審査官】吉田 千裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-176087(JP,A)
【文献】多重撮影とヒストグラム均一化による低テクスチャ物体のSfM-MVS再構成処理の頑健性と精度向上,2019年度精密工学会春季大会,日本,公益社団法人精密工学会,2019年03月13日,89-90,https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2019S/0/2019S_89/_article/-char/ja/
【文献】Pixelwise View Selection for Unstructured Multi-View Stereo,Computer Vision - ECCV 2016 Conference paper,米国,springer.com,2016年09月17日,501-518,https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-319-46487-9_31
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像に対して、それぞれ複数のコントラスト強調処理を行うことで複数の強調画像を生成するコントラスト強調処理手段と、
前記コントラスト強調処理手段により生成された複数の強調画像に基づいて、前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップを生成する深度法線マップ生成手段と、
前記深度マップおよび前記法線マップを構成する画素ごとに、前記複数のコントラスト強調処理に対応するいずれかの画素を選択する画素選択手段と、
前記画素選択手段に選択より選択された画素に基づいて、3次元モデルを生成する3次元モデル生成手段と、
を備えたことを特徴とする3次元モデル生成装置。
【請求項2】
前記画素選択手段は、
前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、画素ごとに輝度値のゼロ平均正規化相互相関値に基づいてステレオマッチングコストCを算出し、前記算出したステレオマッチングコストCが最小となる深度マップおよび法線マップ上の画素を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の3次元モデル生成装置。
【請求項3】
前記画素選択手段は、
前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、(数式)を用いて算出したコストCが最小となる深度マップおよび法線マップの画素を選択する
C=1―輝度値のゼロ平均正規化相互相関値+重み付き再投影誤差 (数式)
ことを特徴とする請求項1記載の3次元モデル生成装置。
【請求項4】
前記複数のコントラスト強調処理がそれぞれ実行された前記深度マップおよび前記法線マップの優先順位が予め定められており、
前記画素選択手段は、
前記優先順位に従い、前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、無効画素が最小となるコントラスト強調処理に対応する深度マップおよび法線マップの画素を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の3次元モデル生成装置。
【請求項5】
前記画素選択手段は、
深度マップおよび法線マップそれぞれについて、マップ合成後の再構成点の投影元となった深度マップおよび法線マップそれぞれの画素数である支持画素数が最大となる深度マップおよび法線マップの画素を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の3次元モデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切に3次元モデルを生成する3次元モデル生成装置および3次元モデル生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の画像から3次元モデルを生成する技術であるSfM-MVS(Structure-from-Motion/Multi-view-Stereo)が、例えば、建設,土木,測量分野で地物の3次元計測に利用されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
しかし、対象が不適切な露光条件下で撮影された場合や、露光条件が適切であっても対象が単一色で塗装されている場合などで、撮影画像に低テクスチャ部が含まれることがある。
【0004】
このような場合、この低テクスチャ部に対する3次元モデルを生成しようとしても、輝度変化が乏しいため、異なる画素間の輝度情報整合性(photometric consistency)の評価指標値が不安定となってしまう。その結果、SfMに失敗したり、MVSで生成されたモデル上に欠損や精度劣化が生じることがある。
【0005】
そこで、Wallis filterや、ヒストグラム完全均一化などの前処理による画像のコントラスト強調を行った後、3次元モデルを生成する技術がある(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】織田和夫,“解説:Structure from Motion (SfM) 第一回 SfMの概要とバンドル調整”,[online],2016年,日本写真測量学会,インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsprs/55/3/55_206/_pdf>
【文献】阿久津啓,外3名,“多重撮影とヒストグラム均一化による低テクスチャ物体のSfM-MVS再構成処理の頑健性と精度向上”,[online],2019年,精密工学会,インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2019S/0/2019S_89/_pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、前処理による画像のコントラスト強調を行ったとしても、適切に3次元モデルを生成することが困難な場合があった。
【0008】
例えば、Wallis filterによるコントラスト強調を行った場合、元々の画像中で輝度変化に富んだ部分では逆効果となる場合があった。また、コントラスト強調の有無や強調手法の違いに応じて,SfMの成功率や,3次元モデルの生成が可能となる画像領域が異なってしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切に3次元モデルを生成する3次元モデル生成装置および3次元モデル生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明に係る3次元モデル生成装置の第1の特徴は、
複数の画像に対して、それぞれ複数のコントラスト強調処理を行うことで複数の強調画像を生成するコントラスト強調処理手段と、
前記コントラスト強調処理手段により生成された複数の強調画像に基づいて、前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップを生成する深度法線マップ生成手段と、
前記深度マップおよび前記法線マップを構成する画素ごとに、前記複数のコントラスト強調処理に対応するいずれかの画素を選択する画素選択手段と、
前記画素選択手段に選択より選択された画素に基づいて、3次元モデルを生成する3次元モデル生成手段と、
を備えたことにある。
【0011】
本発明に係る3次元モデル生成装置の第2の特徴は、
前記画素選択手段は、
前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、画素ごとに輝度値のゼロ平均正規化相互相関値に基づいてステレオマッチングコストCを算出し、前記算出したステレオマッチングコストCが最小となる深度マップおよび法線マップ上の画素を選択することにある。
【0012】
本発明に係る3次元モデル生成装置の第3の特徴は、
前記画素選択手段は、
前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、(数式)を用いて算出したコストCが最小となる深度マップおよび法線マップの画素を選択する
C=1―輝度値のゼロ平均正規化相互相関値+重み付き再投影誤差 (数式)
ことにある。
【0013】
本発明に係る3次元モデル生成装置の第4の特徴は、
前記複数のコントラスト強調処理がそれぞれ実行された前記深度マップおよび前記法線マップの優先順位が予め定められており、
前記画素選択手段は、
前記優先順位に従い、前記複数のコントラスト強調処理それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、無効画素が最小となるコントラスト強調処理に対応する深度マップおよび法線マップの画素を選択する
ことにある。
【0014】
本発明に係る3次元モデル生成装置の第5の特徴は、
前記画素選択手段は、
深度マップおよび法線マップそれぞれについて、マップ合成後の再構成点の投影元となった深度マップおよび法線マップそれぞれの画素数である支持画素数が最大となる深度マップおよび法線マップの画素を選択する
ことにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る3次元モデル生成装置および3次元モデル生成プログラムによれば、適切に地物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置の概略構成を示した概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置が備えるコントラスト強調手段105の処理内容を説明した説明図である。
図3】本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置が備える深度法線マップ生成手段による処理内容を説明した説明図である。
図4】本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置が備える画素選択手段による最小無効画素数法の処理内容を説明した説明図である。
図5】本発明の変形例1である3次元モデル生成装置が備える画素選択手段による最小コスト法の処理の処理内容を説明した説明図である。
図6】本発明の変形例2である3次元モデル生成装置が備える画素選択手段による最大支持画素数法の処理の処理内容を説明した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
以下、本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置の概略構成を示した概略構成図である。
【0021】
図1に示すように、3次元モデル生成装置1は、撮影装置2A~2Cと、モニタ3と接続されており、撮影装置2A~2Cにより撮像された対象物TGの画像データに基づいて、3次元モデルを生成し、生成した3次元モデルをモニタ3に表示させる。対象物TGは、例えば、建物、工場設備、橋梁、山、森、樹木など地上にある形状を有するものであればどのようなものでもよい。
【0022】
撮影装置2A~2Cは、同一の構成を有しているので、撮影装置2Aについて説明する。なお、ここでは、撮影装置2A~2Cの3台の撮影装置を備える構成としているが、2台でもよいし、4台以上でももちろんよい。
【0023】
撮影装置2Aは、カメラ21Aと、データ一時記憶部23Aとを有する。
【0024】
カメラ21Aは、カラーの静止画および動画を撮影可能なデジタルカメラであり、撮影した静止画像データまたは動画像データ(以下、元画像データという)をデータ一時記憶部23Aに記憶する。
【0025】
データ一時記憶部23Aは、カメラ21Aにて撮影された元画像データを記憶する。
【0026】
モニタ3は、3次元モデル生成装置1により生成された3次元モデルを表示する画面など各種画面を表示する。
【0027】
3次元モデル生成装置1は、画像データ取得手段101と、Sfm(Structure from Motion)処理手段102と、カメラパラメータ記憶部103と、画像データ記憶部104と、コントラスト強調手段105と、深度法線マップ生成手段106と、画素選択手段107と、3次元モデル生成手段108と、3次元モデル記憶部109と、表示制御手段110とを備える。
【0028】
画像データ取得手段101は、撮影装置2A~2Cのデータ一時記憶部23A~23Cに記憶された静止画像データまたは動画像データ(元画像データ)を取得する。例えば、ネットワークを経由して取得するようにしてもよいし、データ一時記憶部23A~23Cを撮影装置2A~2Cから取り外し、物理的に3次元モデル生成装置1に接続することにより取得するようにしてもよい。
【0029】
画像データ取得手段101は、取得した元画像データを画像データ記憶部104に記憶させ、また、Sfm処理手段102へ供給する。
【0030】
Sfm処理手段102は、撮影装置2A~2Cから取得した複数の元画像データに基づいて、Sfm(Structure from Motion)処理を実行することにより、タイポイント(疎な対応点)と、カメラパラメータとを推定する。Sfm(Structure from Motion)処理とは、自然特徴量を用いて画像間のタイポイントを探索するとともに、このタイポイントに基づいて再投影誤差の最小化によるカメラパラメータを推定する処理である。タイポイントは、カメラ21A~21Cにより撮影された元画像データを接合するために、重複する部分にそれぞれの画像データから明瞭に把握できるところを示した点である。カメラパラメータは、カメラの位置や姿勢などの外部パラメータと、焦点距離や光軸中心などの内部パラメータとが含まれている。
【0031】
カメラパラメータ記憶部103は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、Sfm処理手段102により推定されたタイポイントと、カメラパラメータとを記憶する。
【0032】
画像データ記憶部104は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、画像データ取得手段101から供給された元画像データを記憶する。
【0033】
コントラスト強調手段105は、カメラ21A~21Cにより撮影されたそれぞれの元画像データに対して、それぞれ複数のコントラスト強調処理を行うことで複数の強調画像データを生成する。ここでは、コントラスト強調処理として、ヒストグラム完全均一化と、ワリスフィルター(Wallis filter)とを実行する。詳細は後述する。
【0034】
深度法線マップ生成手段106は、コントラスト強調手段105により生成された複数の強調画像(ワリスフィルター強調画像および完全均一化強調画像データ)に基づいて、複数のコントラスト強調処理(ワリスフィルターおよびヒストグラム完全均一化)それぞれに対応した深度マップおよび法線マップを生成する。
【0035】
画素選択手段107は、深度マップおよび法線マップを構成する画素ごとに、複数のコントラスト強調処理(ワリスフィルターおよびヒストグラム完全均一化)に対応するいずれかの画素を選択する。
【0036】
画素選択手段107による選択処理には、最小無効画素数法による選択処理と、最小コスト法による選択処理と、最大支持画素数法による選択処理とのいずれかに基づいて実行される。ここでは、最小無効画素数法による選択処理を例に挙げて説明する。
【0037】
最小無効画素数法では、深度マップおよび法線マップの生成に用いられたワリスフィルターとヒストグラム完全均一化との優先順位が予め定められており、この優先順位に従い、ワリスフィルターとヒストグラム完全均一化それぞれに対応した深度マップおよび法線マップのうち、無効画素が最小となるコントラスト強調処理に対応する深度マップおよび法線マップの画素を選択する。詳細は後述する。
【0038】
3次元モデル生成手段108は、画素選択手段107により選択された画素に基づいて、深度マップおよび法線マップのマップ値を、カメラパラメータ記憶部103に記憶されたカメラパラメータを用いて、3次元の仮想空間上に投影することにより法線付き3次元モデルを生成する。
【0039】
3次元モデル記憶部109は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、3次元モデル生成手段108により生成された3次元モデルを記憶する。
【0040】
表示制御手段110は、3次元モデル記憶部109に記憶された3次元モデルに基づいて、モニタ3に3次元モデルを表示させる。
【0041】
次に、コントラスト強調手段105が実行する処理内容の詳細について説明する。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置1が備えるコントラスト強調手段105の処理内容を説明した説明図である。ここでは、撮影装置2Aおよび撮影装置2Bから元画像データを取得した場合について説明する。
【0043】
図2では、撮影装置2Aにより撮影された元画像データD11と、撮影装置2Bにより撮影された元画像データD12とを含む元画像データD10がコントラスト強調手段105に供給されている。
【0044】
コントラスト強調手段105は、その機能上、完全均一化手段105Aと、ワリスフィルター手段105Bとを備えている。
【0045】
完全均一化手段105Aは、元画像データD11について、輝度値0から順に、画像内の輝度ヒストグラムの全度数が一定値になるよう、ランダムに選択された画素の輝度値を反復的に変更することにより完全均一化強調画像データD21を生成する。同様に、完全均一化手段105Aは、元画像データD12から完全均一化強調画像データD22を生成する。
【0046】
これにより、画像全体の平均情報量が最大になり、各画素の特異性が増し、ステレオマッチング時の誤対応が抑制される。
【0047】
ワリスフィルター手段105Bは、ハイパスフィルタの一種である。8 bitカラー画像である元画像データD11,D12それぞれの画素位置(u,v)の各チャンネル輝度値I(u,v)に対するフィルタ後の輝度値I^' (u,v)を、下記の数式(1)で算出することによりワリスフィルター強調画像データD31,D32を生成する。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、σ_set はユーザ指定の強調度パラメータ、μ は対象画素 (u,v) を中心とする幅w×w 窓内の平均輝度値、σ は窓内の輝度値の標準偏差である。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置1が備える深度法線マップ生成手段106による処理内容を説明した説明図である。
【0051】
図3に示すように、深度法線マップ生成手段106は、深度マップ生成手段106Aと、法線マップ生成手段106Bとを有している。
【0052】
深度マップ生成手段106Aは、カメラパラメータ記憶部103に記憶されたカメラパラメータとタイポイントとに基づいて、画像データ記憶部104に記憶された元画像データD11,D12に対して、ステレオマッチングを用いて、それぞれに対応する元画像深度マップD41,D42を生成する。
【0053】
また、深度マップ生成手段106Aは、カメラパラメータ記憶部103に記憶されたカメラパラメータとタイポイントとに基づいて、完全均一化手段105Aにより生成された完全均一化強調画像データD21,D22に対して、ステレオマッチングを用いてそれぞれに対応する完全均一化深度マップD51,D52を生成する。
【0054】
さらに、深度マップ生成手段106Aは、カメラパラメータ記憶部103に記憶されたカメラパラメータとタイポイントとに基づいて、ワリスフィルター手段105Bにより生成されたワリスフィルター強調画像データD31,D32に対して、ステレオマッチングを用いてそれぞれに対応するワリスフィルター深度マップD61,D62を生成する。
【0055】
図示しないが、法線マップ生成手段106Bも、深度マップ生成手段106Aと同様に、元画像データD11,D21、完全均一化強調画像データD21,D22、およびワリスフィルター強調画像データD31,D32に対して、ステレオマッチングを用いて、それぞれに対応する元画像法線マップ、完全均一化法線マップ、およびワリスフィルター法線マップを生成する。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置1が備える画素選択手段107による最小無効画素数法の処理内容を説明した説明図である。
【0057】
図4に示すように、画素選択手段107は、最小無効画素数法による選択処理を行う。最小無効画素数法では、無効画素数を最小化するように、予め設定した深度マップおよび法線マップの選択優先順に応じて、画素単位で深度マップおよび法線マップの選択を行う。
【0058】
図4に示した例では、優先順を例えば、元画像深度マップD41,D42、完全均一化深度マップD51,D52、ワリスフィルター法線マップD61,D62としている。ここでは、それぞれの一部の画素群である3×3画素を例に挙げて説明する。
【0059】
画素選択手段107は、元画像深度マップD41の一部の画素群D411を抽出する。この画素群のうち、カラーで示したD411a,D411d,D411e,D411f,D411h,D411jが有効画素となり、黒で示したD411b,D411c,D411gが無効画素となる。
【0060】
画素選択手段107は、画素群D411と同一領域である完全均一化法線マップD51の一部の画素群D511を抽出する。この画素群のうち、画素群D411で無効画素であり、かつ画素群D511で有効画素であるのは、D511bである。
【0061】
そこで、画素選択手段107は、画素群D411の画素D411bと、画素群D511の画素D511bとを置き換えて、画素群D711を生成する。
【0062】
さらに、画素選択手段107は、画素群D411と同一領域であるワリスフィルター法線マップD61の一部の画素群D611を抽出する。この画素群のうち、画素群D711で無効画素であり、画素群D611で有効画素であるのは、D611gである。
【0063】
画素選択手段107は、画素群D711の画素D711gと、画素群D611の画素D611gとを置き換えて、画素群D712を生成する。なお、画素群D411の画素D411cは無効画素であるが、画素群D511の画素D511cも無効画素であり、画素群D611の画素D611cも無効画素である。そのため、画素群D712では、有効画素で補充することなく、画素D411cが採用される。
【0064】
これを、元画像深度マップD41,D42、完全均一化深度マップD51,D52、ワリスフィルター法線マップD61,D62の一部の画素だけではなく、全ての画素について行うことにより、選択画像を得ることができる。
【0065】
このようにして、画素選択手段107は、無効画素数を最小化するように、予め設定した深度マップの選択優先順に応じて、全ての画素について深度マップの選択を行う。なお、ここでは、深度マップについて説明したが、法線マップについても同様に選択を行う。
【0066】
これにより、優先順位に基づいて、複数の深度マップまたは法線マップの画素で補完するように、画素を選択することができるので、より有効画素を増加させた適切な3次元モデルを生成することができる。
【0067】
<変形例1>
上述した本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置1では、画素選択手段107が、最小無効画素数法による選択処理を行った。
【0068】
変形例1では、画素選択手段107が最小コスト法による選択処理を行う3次元モデル生成装置1を例に挙げて説明する。
【0069】
変形例1では、画素選択手段107は、元画像深度マップ、完全均一化深度マップ、ワリスフィルター法線マップそれぞれについて、画素単位で、輝度値のゼロ平均正規化相互相関値に基づいたステレオマッチングコストCが最小となる深度マップ上の画素を選択する。
【0070】
図5は、本発明の変形例1である3次元モデル生成装置1が備える画素選択手段107Aによる最小コスト法の処理の処理内容を説明した説明図である。
【0071】
図5に示すように、画素選択手段107Aは、元画像深度マップD41の一部の画素群D411と、画素群D411と同一領域である完全均一化法線マップD51の一部の画素群D511と、画素群D411と同一領域であるワリスフィルター法線マップD61の一部の画素群D611とを抽出する。
【0072】
また、画素選択手段107は、元画像深度マップ、完全均一化深度マップ、ワリスフィルター法線マップそれぞれについて、画素単位で、輝度値のゼロ平均正規化相互相関値に基づいたステレオマッチングコストCを、下記の数式(2)を用いて算出し、算出したステレオマッチングコストCが最小となる深度マップ上の画素を選択する。ステレオマッチングコストCは、値が小さいほど整合性が高いことを示している。
【0073】
C=1―輝度値のゼロ平均正規化相互相関値ρ +重み付き再投影誤差F (2)
【0074】
ここで、ρ は、下記の数式(3)を用いて算出される。wは、基準画像の画像位置を中心とする一定範囲内の画素集合であり、w は、基準画像に対応する画像m上の画素位置を中心とする一定範囲内の画素集合である。
【0075】
【数3】
【0076】
また、F は、下記の数式(4)を用いて算出される。ηは正規化定数であり、ここでは、η=0.5としている。また、φ =||xl-Hl m Hl xl||、最大再投影誤差φmax=3[画素]としている。φl mは再投影誤差であり、xlは元画像における画素位置(パッチ)、Hl m Hl xlは参照先の画像を逆投影変換することによって得られた画素位置(パッチ)である。
【0077】
=ηmin(φl m, φmax) (4)
【0078】
コスト画像D81,D82は、元画像深度マップD41,D42に基づいて、画素ごとにステレオマッチングコストCが小さい画素ほど青で示し、ステレオマッチングコストCが大きい画素ほど赤で示した画像である。同様に、コスト画像D91,D92は、完全均一化法線マップD51,D52に基づいて、画素ごとにステレオマッチングコストCが小さい画素ほど青で示し、ステレオマッチングコストCが大きい画素ほど赤で示した画像である。同様に、コスト画像D101,D102は、ワリスフィルター法線マップD61,D62に基づいて、画素ごとにステレオマッチングコストCが小さい画素ほど青で示し、ステレオマッチングコストCが大きい画素ほど赤で示した画像である。
【0079】
コストマップD111は、元画像深度マップD41の一部の画素群D411に対応する画素のステレオマッチングコストCを示したコストマップである。
【0080】
コストマップD111において、数値で示したD111a,D111d,D111e,D111f,D111h,D111jが有効画素となり、黒で示したD111b,D111c,D111gが無効画素となる。
【0081】
画素選択手段107は、コストマップD111と同一領域である完全均一化深度マップD51の一部の画素群D511に対応する画素のステレオマッチングコストCを示したD112を抽出する。
【0082】
また、画素選択手段107は、コストマップD111と同一領域であるワリスフィルター深度マップD51の一部の画素群D511に対応する画素のステレオマッチングコストCを示したD113を抽出する。
【0083】
そして、画素選択手段107は、コストマップD111と、コストマップD112と、コストマップD113とを画素単位で比較して、最もステレオマッチングコストCが小さい画素を選択する。
【0084】
図5に示した例では、例えば、画素D111dのステレオマッチングコストCは、“0.8”であり、画素D112dのステレオマッチングコストCは、“0.1”であり、画素D113dのステレオマッチングコストCは、“0.2”である。そこで、画素選択手段107は、最もステレオマッチングコストCが小さい画素D112dに対応する完全均一化深度マップD51の一部の画素群D511に対応する画素を選択する。
【0085】
なお、黒で示したD111cと、D112cと、D113cとは、無効であるので、いずれの画素も選択されない。
【0086】
このようにして、画素選択手段107は、元画像深度マップ、完全均一化深度マップ、ワリスフィルター法線マップそれぞれについて、画素単位で、輝度値のゼロ平均正規化相互相関値に基づいたステレオマッチングコストCが最小となるコストマップD114を生成する。
【0087】
そして、画素選択手段107は、ステレオマッチングコストCが最小となるように、コストマップD114に基づいて、元画像深度マップD41,D42、完全均一化深度マップD51,D52、ワリスフィルター法線マップD61,D62から画素を選択する。
【0088】
画素選択手段107は、これを、元画像深度マップD41,D42、完全均一化深度マップD51,D52、ワリスフィルター深度マップD61,D62の一部の画素だけではなく、全ての画素について行うことにより、選択画像D70Aを得る。なお、ここでは、深度マップについて説明したが、法線マップについても同様に選択を行う。
【0089】
これにより、元画像深度マップ、完全均一化深度マップ、ワリスフィルター深度マップのうち、画素単位で、ステレオマッチングコストCが最小となる深度マップ上の画素が選択されるとともに、元画像法線マップ、完全均一化法線マップ、ワリスフィルター法線マップのうち、画素単位で、ステレオマッチングコストCが最小となる法線マップ上の画素が選択されるので、これらを合成することにより、最も整合性の高い適切な3次元モデルを生成することができる。
【0090】
<変形例2>
上述した本発明の一実施形態である3次元モデル生成装置1では、画素選択手段107が、最小無効画素数法による選択処理を行った。
【0091】
変形例2では、画素選択手段107Bは、深度マップおよび法線マップそれぞれについて、マップ合成後の再構成点の投影元となった深度マップおよび法線マップそれぞれの画素数である支持画素数が最大となる深度マップおよび法線マップの画素を選択する。
【0092】
図6は、本発明の変形例2である3次元モデル生成装置1が備える画素選択手段107Bによる最大支持画素数法の処理の処理内容を説明した説明図である。なお、ここでは、カメラ21A~21Cの3台により撮影されているとする。
【0093】
図6に示すように、カメラ21A~21Cにおいて、再構成点Gがあるとする。再構成点Gとは、カメラ21A~21Cそれぞれについて撮影された画像中の深度を3次元空間上に投影することによって生成される点である。この再構成点の投影元となった画素(深度・法線)の数を支持画素数という。図6に示した例では、再構成点Gの投影元となった画素は、G1~G3の3つあるので、支持画素数は“3”となる。
【0094】
画素選択手段107Bは、この支持画素数を投影元の画素全てに代入することで、支持画素数マップを作成し、最小コスト法と同様に、画素ごとに、元画像深度マップD41,D42、完全均一化深度マップD51,D52、ワリスフィルター深度マップD61,D62のうち、最も支持画素数が大きい画素を選択する。
【0095】
なお、支持画素数が全て同一であった場合には、最小無効画素数法と同様に、予め設定した深度マップの選択優先順に応じて、画素を選択するようにしてもよい。
【0096】
また、ここでは、深度マップについて説明したが、法線マップについても同様に選択を行う。
【0097】
これにより、元画像深度マップ、完全均一化深度マップ、ワリスフィルター深度マップのうち、画素単位で、支持画素数が最大となる深度マップ上の画素が選択されるとともに、元画像法線マップ、完全均一化法線マップ、ワリスフィルター法線マップのうち、画素単位で、支持画素数が最大となる法線マップ上の画素が選択されるので、これらを合成することにより、最も整合性の高い適切な3次元モデルを生成することができる。
【0098】
なお、上述した実施形態は、コンピュータにインストールした地物検出プログラムを実行させることにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0099】
1 3次元モデル生成装置
2A~2C 撮影装置
3 モニタ
21A~21C カメラ
23A~23C データ一時記憶部
101 画像データ取得手段
102 Sfm処理手段
103 カメラパラメータ記憶部
104 画像データ記憶部
105 コントラスト強調手段
105A 完全均一化手段
105B ワリスフィルター手段
106 深度法線マップ生成手段
106A 深度マップ生成手段
106B 法線マップ生成手段
107,107A,107B 画素選択手段
108 3次元モデル生成手段
109 3次元モデル記憶部
110 表示制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6