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特許7540813接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240820BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/60 311T
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2024522612
(86)(22)【出願日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2024000043
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2023001038
(32)【優先日】2023-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243333(JP,A)
【文献】特開2015-8228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの被接合物同士を接合する接合方法であって、
前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程と、
前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む、
接合方法。
【請求項2】
前記水分除去工程において、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方を減圧雰囲気下に放置する、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記水分除去工程において、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方を加熱することにより前記少なくとも一方の接合面に付着した水分を除去する、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記ガス曝露工程の前に行われ、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を活性化する活性化処理工程を更に含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記活性化処理工程において、前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面へ粒子ビームを照射する、
請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記2つの被接合物は、互いに線膨張係数が異なる、
請求項1からのいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記接合面には、金属層と絶縁体層とが露出している、
請求項1からのいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記金属層は、Auから形成されている、
請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記2つの被接合物のいずれか一方は、基板であり、他方はチップであり、
前記活性化処理工程において、前記チップの前記接合面側とは反対側が貼着されたシートの前記チップの接合面に対して粒子ビームを照射することにより前記チップの接合面を活性化させる、
請求項4に記載の接合方法。
【請求項10】
2つの被接合物を接合する接合方法であって、
前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方は、シートに貼着されたチップであり、
前記チップの接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む、
接合方法。
【請求項11】
前記2つの被接合物のうちの他方は、基板であり、
前記基板の実装面に対してプラズマへの曝露または粒子ビームの照射を行うことにより前記実装面を活性化する第1活性化処理工程を更に含む、
請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記基板の実装面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程を更に含む、
請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記チップの接合面に対して粒子ビームの照射を行うことにより前記接合面を活性化する第2活性化処理工程を更に含む、
請求項10から12のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項14】
前記チップの接合面に対して粒子ビームの照射を行うことにより前記接合面を活性化する第2活性化処理工程を更に含み、
前記第2活性化処理工程において、前記チップの接合面に対して、前記第1活性化処理工程で前記基板の実装面に対して粒子ビームを照射する場合の粒子ビームの強度に比べて低い強度の粒子ビームを照射する、
請求項11または12に記載の接合方法。
【請求項15】
2つの被接合物を接合する接合システムであって、
前記2つの被接合物の少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスを供給する不飽和炭化水素ガス供給部と、
前記少なくとも一方の接合面へオゾンガスを供給するオゾンガス供給部と、
前記2つの被接合物のうちのいずれか一方を支持するステージと、
前記ステージに対向して配置され、前記2つの被接合物のうちの他方を支持するヘッドと、
前記ステージと前記ヘッドとの少なくとも一方を、前記ステージと前記ヘッドとが互いに近づく第1方向または前記ステージと前記ヘッドとが離れる第2方向へ移動させる駆動部と、
前記不飽和炭化水素ガス供給部、前記オゾンガス供給部および前記駆動部それぞれの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記不飽和炭化水素ガス供給部および前記オゾンガス供給部を制御して前記少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給した後、減圧雰囲気で維持した状態で、前記駆動部を制御して前記ステージと前記ヘッドとの少なくとも一方を前記第1方向へ移動させることにより前記2つの被接合物を接合する、
接合システム。
【請求項16】
減圧雰囲気下で、前記2つの被接合物それぞれの互いに接合される少なくとも一方の接合面を加熱する被接合物加熱部を更に備え、
前記制御部は、減圧雰囲気で維持され且つ前記2つの被接合物が離間した状態で、前記被接合物加熱部を制御して前記2つの被接合物それぞれの前記接合面の少なくとも一方を加熱した後、前記不飽和炭化水素ガス供給部および前記オゾンガス供給部を制御して前記少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給する、
請求項15に記載の接合システム。
【請求項17】
前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の前記接合面を活性化する活性化処理を行う活性化処理部を更に備え、
前記制御部は、前記少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給する前に、減圧雰囲気で維持した状態で、前記活性化処理部を制御して、前記接合面に対して前記活性化処理を行う、
請求項15または16に記載の接合システム。
【請求項18】
前記活性化処理部は、前記接合面へ粒子ビームを照射する粒子ビーム源を有する、
請求項17に記載の接合システム。
【請求項19】
前記不飽和炭化水素ガス供給部から供給される不飽和炭化水素ガスと、前記オゾンガス供給部から供給されるオゾンガスと、を混合してから前記少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとの混合ガスを供給するガス供給ヘッドを更に備える、
請求項15または16に記載の接合システム。
【請求項20】
2つの被接合物を接合する接合システムであって、
前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方は、シートに貼着されたチップであり、
前記チップの接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露した後、前記2つの被接合物同士を仮接合する、
接合システム。
【請求項21】
前記2つの被接合物のうちの他方は、基板であり、
前記基板の実装面に対してプラズマへの曝露または粒子ビームの照射を行うことにより前記実装面を活性化する、
請求項20に記載の接合システム。
【請求項22】
対象物に不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを照射する照射装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記対象物を支持するステージと、
不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射する列状に配置された複数の放射口を有するガス供給ヘッドと、前記ガス供給ヘッドを前記複数の放射口の並び方向と直交する方向に沿って前記対象物に対して相対的に移動させるガス供給ヘッド搬送部と、を有するガス供給部と、を備える、
照射装置。
【請求項23】
前記対象物へ粒子ビームを照射することにより、前記対象物を活性化する活性化処理を行う粒子ビーム源を更に備え、
前記粒子ビーム源と前記ガス供給ヘッドとは、前記並び方向と直交する方向に隣接して配置される、
請求項22に記載の照射装置。
【請求項24】
前記対象物へ粒子ビームを照射することにより、前記対象物を活性化する活性化処理を行う粒子ビーム源を更に備え、
前記粒子ビーム源は、前記粒子ビームを放射する第1モードと、不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射する第2モードと、のいずれかで動作する、
請求項22に記載の照射装置。
【請求項25】
前記ステージは、2つの前記対象物のいずれか一方を支持し、
2つの前記対象物の他方を、前記一方に対向した姿勢で支持するヘッドを更に備え、
前記ガス供給部は、2つの前記対象物それぞれへ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射する前記ガス供給ヘッドを2つ有し、2つの前記ガス供給ヘッドそれぞれから2つの前記対象物それぞれへ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射しながら、2つの前記ガス供給ヘッドを2つの前記対象物に対して相対的に移動させる、
請求項22から24のいずれか1項に記載の照射装置。
【請求項26】
被接合物を活性化する活性化処理装置であって、
前記被接合物の接合面に対して粒子ビームを照射することにより前記被接合物の接合面を活性化させる粒子ビーム源と、前記被接合物の接合面に対して不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給することにより前記被接合物の接合面を活性化させるガス供給ヘッドと、を備え、
前記粒子ビーム源から照射される粒子ビームにより前記被接合物の接合面の活性化処理を実行した後、前記ガス供給ヘッドから供給される不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスにより前記被接合物の接合面の活性化処理を実行する、
活性化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに接合する2つのウェハそれぞれの接合面に酸素ラジカルを照射した後、窒素ラジカルを照射することにより親水化処理を行い、その後、2つのウェハ同士を接合する接合方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。ところが、特許文献1に記載された接合方法では、ウェハの接合面に生成される、ウェハ同士の接合に寄与するOH基の量を増加させることにより、ウェハ同士の接合強度を高めることができる。
【0003】
一方、被成膜基体の被成膜面に酸化膜を形成する装置として、チャンバ内に酸化膜の基となる原料ガスとともに不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを導入することにより、チャンバ内にOHラジカルのような反応活性種を生成し、生成した反応活性種を原料ガスと混合して反応させることにより、反応生成物である酸化膜を効率的に形成する装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-079316号公報
【文献】特開2021-050364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、特許文献2に記載されたOHラジカルを生成する技術を、ウェハ同士の接合方法に適用することにより、ウェハの接合面に生成されるOH基の量を増加させることで、ウェハ同士の接合強度を高めることができることを見いだした。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、2つの被接合物を強固に接合することができる接合方法、接合システム、照射装置および活性化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る接合方法は、
2つの被接合物同士を接合する接合方法であって、
前記2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、
前記少なくとも一方の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程と、
前記2つの被接合物同士を仮接合する仮接合工程と、を含む。
【0008】
他の観点から見た本発明に係る接合システムは、
2つの被接合物を接合する接合システムであって、
前記2つの被接合物の少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスを供給する不飽和炭化水素ガス供給部と、
前記少なくとも一方の接合面へオゾンガスを供給するオゾンガス供給部と、
前記2つの被接合物のうちのいずれか一方を支持するステージと、
前記ステージに対向して配置され、前記2つの被接合物のうちの他方を支持するヘッドと、
前記ステージと前記ヘッドとの少なくとも一方を、前記ステージと前記ヘッドとが互いに近づく第1方向または前記ステージと前記ヘッドとが離れる第2方向へ移動させる駆動部と、
前記不飽和炭化水素ガス供給部、前記オゾンガス供給部および前記駆動部それぞれの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記不飽和炭化水素ガス供給部および前記オゾンガス供給部を制御して前記少なくとも一方の接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給した後、減圧雰囲気で維持した状態で、前記駆動部を制御して前記ステージと前記ヘッドとの少なくとも一方を前記第1方向へ移動させることにより前記2つの被接合物を接合する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つの被接合物のうちの少なくとも一方の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露した後、2つの被接合物同士を仮接合する。これにより、2つの被接合物の少なくとも一方の接合面に比較的多くのOH基が生成された状態で、2つの被接合物同士を仮接合することができるので、その分、2つの被接合物同士を多くの水素結合を介して仮接合することができる。従って、2つの被接合物を接合したときの2つの被接合物同士の接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る接合装置の概略正面図である。
図2】実施の形態1に係る接合装置の一部を示す図である。
図3】実施の形態1に係る接合装置の動作説明図である。
図4】実施の形態1に係る接合装置の動作説明図である。
図5】実施の形態1に係る接合方法の流れを示すフローチャートである。
図6A】実施の形態1に係る接合方法の水分除去工程を示す図である。
図6B】実施の形態1に係る接合方法の活性化処理工程を示す図である。
図6C】実施の形態1に係る接合方法のガス曝露工程を示す図である。
図7A】実施の形態1に係る接合方法の仮接合工程を示す図である。
図7B】実施の形態1に係る接合方法の熱処理工程を示す図である。
図8A】従来例に係る接合方法の基板の接合面に水分を付着させる工程を示す図である。
図8B】従来例に係る接合方法の基板の接合面同士を接触させる工程を示す図である。
図8C】従来例に係る接合方法の仮接合工程を示す図である。
図8D】従来例に係る接合方法の熱処理工程を示す図である。
図9A】実施の形態1に係る接合方法の活性化処理工程を示す図である。
図9B】実施の形態1に係る接合方法の活性化処理工程後の基板の様子を示す図である。
図10】本発明の実施の形態2に係るチップ接合システムの概略構成図である。
図11】実施の形態2に係るチップ接合システムの一部を側方から見た概略構成図である。
図12A】実施の形態2に係るボンディング装置のヘッドを示す断面図である。
図12B】実施の形態2に係るボンディング装置のヘッドを示す平面図である。
図13】実施の形態2に係る活性化処理装置の概略構成図である。
図14】実施の形態2に係るチップ接合方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図15A】実施の形態2に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略側面図である。
図15B】実施の形態2に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略平面図である。
図16A】実施の形態2に係る活性化処理装置において、シートを反転させる様子を示す概略側面図である。
図16B】実施の形態2に係る活性化処理装置において、エチレンガスおよびオゾンガスに曝露する様子を示す概略側面図である。
図17】変形例に係る接合方法の流れを示すフローチャートである。
図18】変形例に係る接合装置の動作説明図である。
図19】変形例に係る接合方法の流れを示すフローチャートである。
図20】変形例に係る接合方法の流れを示すフローチャートである。
図21】変形例に係る接合方法の流れを示すフローチャートである。
図22A】変形例に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略側面図である。
図22B】変形例に係る活性化処理装置において、粒子ビームを照射する様子を示す概略平面図である。
図23】変形例に係る接合システムの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る接合装置について、図を参照しながら説明する。本実施の形態に係る接合装置は、減圧雰囲気にあるチャンバ内で、2つの基板の接合面を加熱した後、活性化処理を行い、その後、基板同士を接触させて加圧および加熱することにより、2つの基板を接合する。ここで、基板W1、W2としては、例えば、Si基板、SiOガラス基板等のガラス基板、酸化物基板(例えば、酸化ケイ素(SiO)基板、サファイア基板を含むアルミナ基板(Al)、酸化ガリウム(Ga)等)、窒化物基板(例えば、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN))、GaAs基板、炭化ケイ素(SiC)基板、タンタル酸リチウム(Lt:LiTaO)基板、ニオブ酸リチウム基板(Ln:LiNbO)、ダイヤモンド基板などのいずれかからなる被接合物である。
【0012】
なお、互いに接合する基板W1、W2が、それぞれ、互いに線膨張係数が異なる材料から形成されていてもよい。例えば基板W1がサファイア基板であり、基板W2がSi基板であってもよい。また、基板W1、W2として、接合面にAu、Cu、Al、Ti等の金属から形成された電極が設けられた基板であってもよい。例えば接合面に金属層と絶縁体層とが露出している基板であってもよい。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る接合装置1は、チャンバ120と、ステージ141と、ヘッド142と、ステージ駆動部143と、ヘッド駆動部144と、基板加熱部1411、1421と、位置ずれ量測定部150と、粒子ビーム源161、162と、を備える。なお、以下の説明において、適宜図2の±Z方向を上下方向、XY方向を水平方向として説明する。また、接合装置1は、チャンバ120に配置されたカバー122A、122Bと、カバー122A、122Bを加熱するカバー加熱部123A、123Bと、を備える。カバー122A、122Bは、それぞれ、ステージ141、ヘッド142の周囲の活性化処理工程における活性化処理領域を含む形で配置されている。更に、接合装置1は、不飽和炭化水素ガス供給部171と、オゾンガス供給部172と、制御部9と、を備える。チャンバ120は、排気管121bと排気弁121cとを介して真空ポンプ121aに接続されている。排気弁121cを開状態にして真空ポンプ121aを作動させると、チャンバ120内の気体が、排気管121bを通してチャンバ120外へ排出され、チャンバ120内の気圧が低減(減圧)される。なお、チャンバ120内の気圧は、10-5Pa以下にすることができる。また、排気弁121cの開閉量を変動させて排気量を調節することにより、チャンバ120内の気圧(真空度)を調節することができる。
【0014】
ステージ141とヘッド142とは、チャンバ120内において、Z方向において互いに対向するように配置されている。ステージ141は、その上面で基板W1を支持し、ヘッド142は、その下面で基板W2を支持する。なお、ステージ141の上面とヘッド142の下面とは、基板W1、W2のステージ141、ヘッド142との接触面が鏡面でステージ141、ヘッド142から剥がれにくい場合を考慮して、粗面加工が施されていてもよい。ステージ141およびヘッド142は、それぞれ基板W1、W2を保持する保持機構(図示せず)を有する。保持機構は、静電チャック、機械式クランプ等を有する。
【0015】
ステージ駆動部143は、ステージ141をXY方向へ移動させたり、Z軸周りに回転させたりすることができる。ヘッド駆動部144は、矢印AR1に示すようにヘッド142を昇降させる昇降駆動部1441と、ヘッド142をXY方向へ移動させるXY方向駆動部1442と、ヘッド142をZ軸周りの回転方向に回転させる回転駆動部1443と、を有する。また、ヘッド駆動部144は、ヘッド142のステージ141に対する傾きを調整するためのピエゾアクチュエータ1444と、ヘッド142に加わる圧力を測定するための圧力センサ1445と、を有する。XY方向駆動部1442および回転駆動部1443が、X方向、Y方向、Z軸周りの回転方向において、ヘッド142をステージ141に対して相対的に移動させることにより、ステージ141に保持された基板W1とヘッド142に保持された基板W2とのアライメントが可能となる。なお、ステージ駆動部143は、ステージ141の鉛直下方に配置された構成に限定されるものではなく、例えば、ステージ141の鉛直下方に圧力を受けるバックアップ部(図示せず)を設け、ステージ駆動部143が、ステージ141の外周部に配置し、ステージ141の側方からステージ141を駆動する構成であってもよい。
【0016】
昇降駆動部1441は、ヘッド142を鉛直下方向へ移動させることにより、ヘッド142をステージ141に近づける。また、昇降駆動部1441は、ヘッド142を鉛直上方向に移動させることにより、ヘッド142をステージ141から遠ざける。そして、昇降駆動部1441は、基板W1、W2同士が接触した状態においてヘッド142に対してステージ141に近づく方向への駆動力を作用させると、基板W2が基板W1に押し付けられる。また、昇降駆動部1441には、ヘッド142に対してステージ141に近づく方向へ作用させる駆動力を測定する圧力センサ1441aが設けられている。圧力センサ1441aによる測定値から、昇降駆動部1441により基板W2が基板W1に押し付けられたときに基板W1、W2の接合面に作用する圧力が検出できる。圧力センサ1441aは、例えば圧電素子を有する。
【0017】
ピエゾアクチュエータ1444と圧力センサ1445との組は、ヘッド142とXY方向駆動部1442との間に複数組配置されている。圧力センサ1445は、ピエゾアクチュエータ1444の上端部とXY方向駆動部1442の下側との間に介在している。ピエゾアクチュエータ1444は、各別に上下方向に伸縮可能であり、これらが伸縮することにより、ヘッド142のX軸周りおよびY軸周りの傾きとヘッド142の上下方向の位置とが微調整される。また、圧力センサ1445は、例えば圧電素子を有し、ヘッド142の下面における複数箇所での加圧力を測定する。そして、複数の圧力センサ1445で測定された加圧力が等しくなるように複数のピエゾアクチュエータ411それぞれを駆動することにより、ヘッド142の下面とステージ141の上面とを平行に維持しつつ基板W1、W2同士を接触させることができる。
【0018】
基板加熱部1411、1421は、例えば前述の保持機構が静電チャックの場合、ステージ141、ヘッド142における、基板W1、W2が当接する面側から見て保持機構の裏側に埋め込まれた電熱ヒータを有する第1被接合物加熱部である。基板加熱部1411、1421は、ステージ141、ヘッド142に支持されている基板W1、W2に熱を伝達することにより基板W1、W2を加熱する。また、基板加熱部1411、1421の発熱量を調節することにより、基板W1、W2またはそれらの接合面の温度を調節できる。位置ずれ量測定部150は、基板W1、W2それぞれに設けられた位置合わせ用のマーク(アライメントマーク)の位置を認識することにより、基板W1の基板W2に対する水平方向の位置ずれ量を測定する。位置ずれ量測定部150は、例えば基板W1、W2を透過する光(例えば赤外光)を用いて基板W1、W2のアライメントマークを認識する。ステージ駆動部143は、位置ずれ量測定部150により測定された位置ずれ量に基づいて、ステージ141を水平方向に移動させたり回転させたりすることにより、基板W1、W2の相互間の位置合わせ動作(アライメント動作)を実行する。この位置ずれ量測定部150による位置ずれ量の測定およびステージ駆動部143のアライメント動作は、いずれも制御部9の制御下において実行される。
【0019】
粒子ビーム源161、162は、それぞれ、例えば高速原子ビーム(FAB、Fast Atom Beam)源であり、例えば図2に示すように、放電室1601と、放電室1601内に配置される電極1602と、ビーム源駆動部1603と、アルゴンガスを放電室1601内へ供給するガス供給部1604と、を有する活性化処理部である。放電室1601の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口1601aが設けられている。放電室1601は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室1601は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口1601aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部1603は、放電室1601内にアルゴンガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極1602と放電室1601の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部1603は、放電室1601内にアルゴンガスのプラズマを発生させた状態で、放電室1601の周壁と電極1602との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中のアルゴンイオンが、放電室1601の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口1601aへ向かうアルゴンイオンは、FAB放射口1601aを通り抜ける際、FAB放射口1601aの外周部の、炭素材料から形成された放電室1601の周壁から電子を受け取る。そして、このアルゴンイオンは、電気的に中性化されたアルゴン原子となって放電室1601外へ放出される。
【0020】
ここで、粒子ビーム源161、162は、例えば図3に示すように、それぞれ、矢印AR21に示すように、基板W1、W2の接合面へ粒子ビームを照射させながら矢印AR22に示すように移動していく。ここで、粒子ビーム源161、162は、その粒子ビーム単体の投影面内における移動方向での強度にバラツキがあるため、基板W1、W2全体に確実に粒子ビームを照射するために、粒子ビーム源161、162の移動方向における基板W1の両端縁の外側のカバー122A、122B部分を含む領域まで粒子ビームを照射する。また、粒子ビーム源161の放電室1601の長手方向、即ち、X軸方向における両端部における粒子ビームの強度が低下する傾向にある。そこで、放電室1601のX軸方向の長さは、例えば図4に示すように、Z軸方向において基板W1、W2と重なるように配置された状態で、基板W1、W2のX軸方向全体を覆い且つ基板W1、W2におけるX軸方向の長さよりも長い長さに設定されている。または、基板W1、W2が平面視円形であるのに対して粒子ビーム源161、162の照射領域は平面視矩形状であるため、基板W1、W2以外の領域が照射される訳である。ここで、接合装置1は、例えば粒子ビーム源161、162を矢印AR22に示すように+Y方向へ移動させながら粒子ビームを基板W1、W2の接合面に照射した後、粒子ビーム源161、162を-Y方向へ移動させながら基板W1、W2の接合面に粒子ビームを照射する。この粒子ビーム源161、162の移動速度は、例えば1.2乃至14.0mm/secに設定される。また、粒子ビーム源161、162への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。そして、粒子ビーム源161、162それぞれの放電室1601内へ導入されるアルゴンガスの流量は、例えば50sccmに設定される。
【0021】
図1に戻って、カバー122A、122Bは、例えば金属から形成され、それぞれ、チャンバ120内におけるステージ141、ヘッド142の周囲に配置されている。カバー加熱部123Aは、例えば電熱ヒータを有し、カバー122Aにおける-Z方向側においてカバー122Aに近接して配置されている。このカバー122Aは、ステージ141に固定されており、ステージ141とともに移動する。また、カバー加熱部123Bも、例えば電熱ヒータを有し、カバー122Bにおける+Z方向側においてカバー122Bに近接して配置されている。このカバー122Bは、ヘッド142に固定されており、ヘッド142とともに移動する。
【0022】
不飽和炭化水素ガス供給部171は、不飽和炭化水素ガス貯留部1711と、供給弁1712と、供給管1713と、を有する。不飽和炭化水素ガスとしては、エチレンのような2重結合を有する炭化水素(アルケン)、アセチレンのような3重結合を有する炭化水素(アルキン) を採用することができる。また、不飽和炭化水素ガスとしては、エチレン、アセチレンの他にブチレン等の低分子量の不飽和炭化水素、即ち、炭素数が4以下の不飽和炭化水素を採用してもよい。ここで、不飽和炭化水素ガス供給部171からチャンバ120内へ供給される不飽和炭化水素ガスの流量は、特に限定されるものではない。
【0023】
オゾンガス供給部172は、オゾン発生源1721と、チャンバ120内に連通しオゾン発生源1721で発生したオゾンガスをチャンバ120内へ導入する供給管1722と、を有する。オゾン発生源1721としては、周知のオゾナイザを採用することができる。オゾン発生源1721で生成されるオゾンガスのオゾン濃度は高いほど好ましい。これは、オゾン濃度が100vol%に近いほど、反応活性種であるOHをより高密度にチャンバ120内に給できるからである。また、オゾン濃度が高いほど、即ち、酸素分子の濃度が低いほど 、オゾンが分離して発生する原子状の酸素の寿命が長くなる傾向があることからも、高濃度のオゾンガスを用いることが好ましい。すなわち、オゾン濃度を高くすることで、酸素分子の濃度が低くなり、原子状の酸素が酸素分子との衝突によって失活することが抑制される。また、オゾンガスのチャンバ120への供給量は、前述の不飽和炭化水素ガスのチャンバ120への供給量の2倍以上とすることが好ましい。これは、不飽和炭化水素ガスがOH基へ分解する分解ステップが複数ステップから構成され、オゾン分子と不飽和炭化水素分子との比率を等しくした場合に、反応に必要なオゾン分子が不足し、OH基が十分な量得られない虞があるためである。
【0024】
制御部9は、例えばプログラマブルロジックコントローラである。制御部9は、圧力センサ148、位置ずれ量測定部150等から入力される測定信号に基づいて、基板W1、W2同士を圧接する際の圧力を算出したり、基板W1、W2の相対的な位置ずれ量を算出したりする。また、制御部9は、算出した圧力または位置すれ量に基づいて、ステージ駆動部143、ヘッド駆動部144へ制御信号を出力することによりステージ駆動部143、ヘッド駆動部144の動作を制御する。更に制御部9は、基板加熱部1411、1421、粒子ビーム源161、162、不飽和炭化水素ガス供給部171、オゾンガス供給部172へ制御信号を出力することによりこれらの動作を制御する。
【0025】
次に、本実施の形態に係る接合システムを用いた基板W1、W2同士を接合する接合方法について、図5および図6を参照しながら説明する。ここで、基板W1はステージ141に保持され、基板W2はヘッド142に保持されているものとする。まず、接合装置1は、減圧雰囲気下において2つの基板W1、W2を加熱することにより基板W1、W2の接合面に付着した水分を除去する水分除去工程を行う(ステップS1)。ここで、減圧雰囲気とは、例えばチャンバ120内の気圧が10-6Pa以下の状態である。また、接合装置1は、基板加熱部1411、1421により、ステージ141、ヘッド142に支持されている基板W1、W2に熱を伝達することにより基板W1、W2の温度を例えば60℃よりも高い温度にまで加熱する。これにより、図6Aに示すように、基板W1、W2の接合面に付着した水分が蒸発することにより接合面から除去される。
【0026】
図5に戻って、次に、接合装置1は、減圧雰囲気下において2つの基板W1、W2それぞれの接合面を活性化する活性化処理工程を行う(ステップS2)。ここでは、接合装置1が、図6の矢印AR21に示すように、粒子ビーム源161、162から放射される粒子ビームを基板W1、W2の接合面へ照射しならが、粒子ビーム源161、162を矢印AR22に示すように接合面と水平に移動させることにより、基板W1、W2の接合面に対して活性化処理を行う。なお、熱処理工程の後、活性化処理工程の前に、基板W1、W2の温度を60℃以下の温度に冷却する冷却工程を行ってもよい。
【0027】
図5に戻って、続いて、接合装置1は、チャンバ120内に不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとを導入することにより、2つの基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露するガス曝露工程を行う(ステップS3)。このとき、図6Cに示すように、チャンバ120内に導入されたオゾンガスおよび不飽和炭化水素ガスが混合されて反応し、OHラジカルが発生し、発生したOHラジカルが基板W1、W2の接合面と結合してOH基として存在することになる。
【0028】
図5に戻って、その後、接合装置1は、チャンバ120内を減圧雰囲気で維持した状態で、基板W1、W2の接合面同士を接触させて基板W1、W2同士を仮接合する仮接合工程を行う(ステップS4)。ここでは、接合装置1のヘッド駆動部144が、まず、基板W2を支持したヘッド142を、基板W1を支持したステージ141に近づけて両基板W1、W2を接近させる。そして、ヘッド駆動部144は、両基板W1、W2が互いに近接した状態において、位置ずれ量測定部150により測定される位置ずれ量に基づいて、両基板W1、W2のアライメント動作を実行する。このように、ヘッド駆動部144が、活性化処理工程の後にアライメント動作を実行することにより、基板W1、W2の位置ずれを低減することができる。その後、ヘッド駆動部144は、ヘッド142を再びステージ141に近づけることにより、2つの基板W1、W2を接触させて2つの基板W1、W2を仮接合する。このとき、図7Aに示すように、基板W1、W2の接合面同士は、OH基を介した水素結合により結合された状態となる。
【0029】
図5に戻って、次に、接合装置1は、互いに仮接合された基板W1、W2を加熱する熱処理を実行することにより、基板W1、W2同士を本接合する熱処理工程を行う(ステップS5)。これにより、図7Bに示すように、基板W1、W2の接合面同士の結合が水素結合から酸素原子を介した共有結合に変化して基板W1、W2同士が堅固に接合される。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態に係る接合方法によれば、2つの基板W1、W2それぞれの接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスが混在する雰囲気に曝露するガス曝露工程を行った後、2つの基板W1、W2同士を仮接合する。これにより、2つの基板W1、W2それぞれの接合面に比較的多くのOH基が生成された状態で、基板W1、W2同士を仮接合することができるので、その分、基板W1、W2同士を多くの水素結合を介して仮接合することができる。従って、互いに仮接合された基板W1、W2に対して熱処理工程を行うことにより基板W1、W2同士を本接合したときの基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。
【0031】
また、本実施の形態に係る接合方法によれば、チャンバ120内の減圧下において、活性化処理工程およびガス曝露工程を行った後の水分が除去された状態で、基板W1、W2同士を接合する。このため、互いに接合された基板W1、W2の間に空気および水分が介在することを抑制できるので、その分、基板W1、W2の間に介在する空気の巻き込みに起因したボイド並びに水分に起因したマイクロボイドの発生が抑制される。
【0032】
更に、本実施の形態に係る接合方法では、基板W1、W2が、それぞれ、接合面に金属層と絶縁体層とが露出している場合、活性化処理工程において、接合面における金属層が露出した部分および絶縁体層が露出した部分を活性化した後、ガス曝露工程において、絶縁体層が露出した部分にOH基を生成する。これにより、金属層が活性化した状態を維持しながら基板W1、W2同士を接合することができる。即ち、接合面における活性化された金属層が露出した部分同士を、OH基を介さずに接合しつつ、接合面における絶縁体層が露出した部分同士を、OH基を介して仮接合した状態とすることができる。従って、基板W1、W2同士を堅固に接合することができる。
【0033】
ところで、従来の接合方法では、基板W1、W2の接合面に水分を付着することによりOH基を生成する必要があった。このため、基板W1、W2の接合面または基板W1、W2内の水分を除去することが難しかった。これに対して、本実施の形態に係る接合方法では、チャンバ120内において、水分除去工程において、基板W1、W2を加熱することにより基板W1、W2の接合面に付着した水分を除去した後、活性化処理工程、ガス曝露工程、仮接合工程および熱処理工程まで行う。これにより、チャンバ120内へ基板W1、W2を投入した後、基板W1、W2同士を接合するまでの間、途中で基板W1、W2をチャンバ120外へ取り出す必要がない。従って、基板W1、W2の接合を効率的に行うことができる。なお、熱処理工程は、チャンバ120内で行う必要は無く、仮接合工程の後、チャンバ120外へ取り出してから行ってもよい。また、基板W1、W2内に存在する水分も除去することができるので、基板W1、W2同士を互いに接合したときの接合界面に基板W1、W2内に存在する水分に起因した酸化物の生成が抑制される。従って、互いに接合された基板W1、W2同士の接合強度を高めることができる。
【0034】
また、従来の接合方法では、図8Aに示すように、基板W1、W2の接合面を水洗浄する洗浄装置を用いて、基板W1、W2の接合面に強制的に水分を付着させた後、図8Bに示すように、基板W1、W2の水分が付着した接合面同士を大気中で接触させる。その後、図8Cに示すように、基板W1、W2を大気中で加熱することにより、基板W1、W2の接合面にOH基を生成させる。このとき、基板W1、W2それぞれの接合面に生成されたOH基により仮接合した状態となる。その後、図8Dに示すように、大気中で、基板W1、W2を更に加熱することにより基板W1、W2同士を接合した状態となる。この接合方法では、基板W1、W2の接合面に水分が付着した状態を維持する必要があるため、基板W1、W2を大気中に配置する必要がある。
【0035】
これに対して、本実施の形態に係る接合方法では、基板W1、W2の接合面に水分を付着させる工程を行うこと無く、基板W1、W2同士をいわゆる親水化接合することができる。従って、チャンバ130内を比較的高い真空度で維持することができるので、粒子ビーム161、162を用いた活性化処理工程を採用しつつ、親水化接合を実現することができる。また、水分除去工程において、基板W1、W2を加熱することにより基板W1、W2の接合面に付着した水分を除去した場合でも、基板W1、W2同士を堅固に接合することができるので、粒子ビーム161、162を使用した活性化処理工程を併用することができる。特に、粒子ビーム161、162を使用した活性化処理工程を行う場合、基板W1、W2を加熱することにより基板W1、W2の接合面または基板W1、W2内の水分を除去する水分除去工程を行うことで、基板W1、W2同士の接合強度を高めることができるので好ましい。
【0036】
また、従来の接合方法では、図8Cに示すように、基板W1、W2の接合面同士をOH基により水素結合した状態にするために基板W1、W2を加熱する必要があり、且つ、図8Dに示すように、基板W1、W2の接合面同士を共有結合状態とするために、200℃以上の比較的高い温度で熱処理工程を行う必要があった。従って、例えば基板W1、W2の線膨張係数が互いに異なる材料(例えばサファイヤとSi)から形成されていた場合、互いに接合された基板W1、W2の反りまたは割れが発生してしまう虞があった。これに対して、本実施の形態に係る接合方法では、基板W1、W2の加熱を行うこと無く基板W1、W2の接合面同士をOH基により水素結合した状態にする仮接合工程を行うことができる。これにより、基板W1、W2に加わる熱負荷を低減することができるとともに熱処理工程における温度を低下させることができる。従って、前述のように基板W1、W2の線膨張係数が互いに異なる材料(例えばサファイヤとSi)から形成されていたとしても、基板W1、W2同士を歪みおよび割れ無く接合することができる。
【0037】
また、基板W1、W2として、例えば図9Aに示すように、接合面に金属層MEと絶縁体層INとが露出している基板を採用し、活性化処理工程においてArの粒子ビームを照射したとする。この場合、金属層MEが露出した部分が活性化される。次に、ガス曝露工程において、基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとに曝露すると、図9Bに示すように絶縁体層INが露出した部分にOH基が生成されるとともに、金属層MEが露出した部分は、活性化された状態が維持される。このとき、金属層MEがAu層である場合、金属層MEが露出した部分にはOH基が生成されず、活性化された状態が維持されるので好ましい。
【0038】
また、従来は、2つの基板W1、W2それぞれの接合面をプラズマに曝露したり或いは接合面に粒子ビームを照射することにより活性化する活性化処理工程を行った後、2つの基板W1、W2それぞれの接合面にラジカルを照射するラジカル処理を行う方法が提供されていた。但し、この方法では、2つの基板W1、W2それぞれの接合面に水を付着させたり、2つの基板W1,W2を、水分を含んだ大気に曝露させたりする必要があった。これに対して、本実施の形態では、2つの基板W1、W2それぞれの接合面を活性化する活性化処理工程を行った後、2つの基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露するガス曝露工程を行い、その後、基板W1、W2同士を真空中で接合する。これにより、基板W1、W2を一度接合装置1に投入した後は、大気に曝露することなく、活性化処理工程から接合工程までの一連の工程を行うことができるので、基板W1、W2の間への水分、不純物等の巻き込みを抑制することができる。また、ガス曝露工程では、ラジカル処理を行った場合に比べて、基板W1、W2の接合面に生成されるOH基の量を増加させることができるので、その分、基板W1、W2同士を堅固に接合することができる。また、互いに接合された基板W1、W2の間に介在する水分は、互いに接合された基板W1、W2の接合強度を低下させる要因となっていた。これに対して、本実施の形態に係る接合方法では、互いに接合された基板W1、W2間への水分の介在を抑制できるので、互いに接合された基板W1、W2の接合強度を高めることができる。
【0039】
(実施の形態2)
本実施の形態に係るチップ接合システムは、基板上にチップを接合するシステムである。チップとしては、例えば半導体基板をダイシングすることにより生成される半導体チップである。ここで、ダイシングとは、複数の電子部品が作り込まれた半導体基板を縦方向および横方向に切削し半導体チップ化する処理である。また、チップとしては、その基板に接合される接合面に絶縁体材料のみが露出したチップまたは絶縁体材料と導電性材料とが露出したチップが挙げられる。ここで、絶縁体材料としては、例えばSiO、Al等の酸化物、SiN、AlN等の窒化物、SiONのような酸窒化物、或いは樹脂が挙げられる。また、導電性材料としては、Si、Ge等の半導体材料、Cu、Al、はんだ等の金属が挙げられる。つまり、チップは、その接合面に互いに材料が異なる複数種類の領域が形成されたものであってもよい。具体的には、チップが、その接合面に電極と絶縁膜とが設けられたものであり、絶縁膜が、SiO、Al等の酸化物またはSiN、AlN等の窒化物から形成されているものであってもよい。このチップ接合システムは、基板におけるチップが実装される実装面とチップの接合面とについて活性化処理を行った後、チップを基板に接触、または加圧して接合する。その後、または同時に加熱することにより、チップを基板に強固に接合する。
【0040】
図10に示すように、本実施の形態に係るチップ接合システム2001は、チップ供給装置2010と、チップ搬送装置2039と、ボンディング装置2030と、活性化処理装置2060と、搬送装置2070と、搬出入ユニット2080と、洗浄装置2085と、制御部2090と、を備える。搬送装置2070は、基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する環状のリング状の保持枠RI1を掴むアームを有する搬送ロボット2071を有する。ここで、シートTEは、例えば樹脂から形成されている。搬送ロボット2071は、矢印AR2011に示すように、搬出入ユニット2080から受け取った基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を、活性化処理装置2060、洗浄装置2085、ボンディング装置2030、チップ供給装置2010それぞれへ移載する位置へ移動可能となっている。
【0041】
搬送ロボット2071は、搬出入ユニット2080から基板WTを受け取ると、受け取った基板WTを掴んだ状態で活性化処理装置2060へ移載する位置へ移動し、基板WTを活性化処理装置2060へ移載する。また、搬送ロボット2071は、活性化処理装置2060において基板WTの実装面WTfの活性化処理が完了した後、活性化処理装置2060から基板WTを受け取り、受け取った基板WTを洗浄装置2085へ移載する。更に、搬送ロボット2071は、洗浄装置2085において基板WTの水洗浄が完了した後、洗浄装置2085から基板WTを受け取り、受け取った基板WTを掴んだ状態で基板WTを反転させた後、ボンディング装置2030へ移載する位置へ移動する。そして、搬送ロボット2071は、基板WTをボンディング装置2030へ移載する。
【0042】
また、搬送ロボット2071は、搬出入ユニット2080からチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を受け取ると、受け取った保持枠RI1を掴んだ状態で保持枠RI1を活性化処理装置2060へ移載する位置へ移動し、保持枠RI1を活性化処理装置2060へ移載する。更に、搬送ロボット2071は、活性化処理装置2060においてシートTEに貼着されたチップCPの接合面の活性化処理が完了した後、活性化処理装置2060から保持枠RI1を受け取り、受け取った保持枠RI1をチップ供給装置2010へ移載する。また、搬送装置2070内には、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ(図示せず)が設置されている。これにより、搬送装置2070内は、パーティクルが極めて少ない大気圧環境になっている。
【0043】
洗浄装置2085は、基板WTを支持するステージ2852と、ステージ2852を回転駆動するステージ駆動部2853と、ステージ2852の鉛直上方に配置され鉛直下方に向かって水を吐出する洗浄ヘッド2851と、を有する。洗浄装置2085は、ステージ2852に基板WTが支持された状態でステージ駆動部2853によりステージ2852を回転させつつ、洗浄ヘッド2851から水を基板WTに向けて吐出することにより基板WTを水洗浄する。
【0044】
チップ供給装置2010は、基板をダイシングすることにより生成された複数のチップCPの中から1つのチップCPを切り出し、ボンディング装置2030へチップCPを供給する。チップ供給装置2010は、図11に示すように、チップ供給部2011を有する。チップ供給部2011は、前述の保持枠RI1を保持する枠保持部2119と、複数のチップCPの中から1つのチップCPをピックアップするピックアップ機構2111と、カバー2114と、を有する。また、チップ供給部2011は、保持枠RI1をXY方向またはZ軸周りに回転する方向へ駆動する保持枠駆動部2113を有する。枠保持部2119は、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された面が鉛直上方(+Z方向)側となる姿勢で保持枠RI1を保持する。
【0045】
ピックアップ機構2111は、複数のチップCPのうちの1つのチップCPを、シートTEにおける複数のチップCP側とは反対側から切り出すことにより1つのチップCPをシートTEから離脱した状態にする。ここで、ピックアップ機構2111は、チップCPの接合面CPf側とは反対側を保持して、チップCPを切り出す。ピックアップ機構2111は、ニードル2111aを有し、矢印AR2014に示すように鉛直方向へ移動可能となっている。カバー114は、複数のチップCPの鉛直上方を覆うように配置され、ピックアップ機構2111に対向する部分に孔2114aが設けられている。ニードル2111aは、例えば4つ存在する。但し、ニードル2111aの数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。ピックアップ機構2111は、シートTEにおける鉛直下方(-Z方向)からニードル2111aをシートTEに突き刺してチップCPを鉛直上方(+Z方向)へ持ち上げることによりチップCPを供給する。そして、シートTEに貼着された各チップCPは、ニードル2111aによりカバー2114の孔2114aを通じて1個ずつカバー2114の上方へ突き出され、チップ搬送装置2039に受け渡される。保持枠駆動部2113は、保持枠RI1をXY方向またはZ軸周りに回転する方向へ駆動することにより、ニードル2111aの鉛直下方に位置するチップCPの位置を変化させる。
【0046】
チップ搬送装置(ターレットとも称する)2039は、チップ供給部2011から供給されるチップCPを、ボンディング装置2030のボンディング部2033のヘッド2033HにチップCPを移載する移載位置Pos1まで搬送する。チップ搬送装置2039は、図10に示すように、2つの長尺のプレート2391と、プレート2391の先端部に設けられたチップ保持部2393と、2つのプレート391を一斉に回転駆動するプレート駆動部2392と、を有する。2つのプレート2391は、チップ供給部2011とヘッド2033Hとの間に位置する他端部を基点として一端部が旋回する。2つのプレート2391は、例えばそれらの長手方向が互いに90度の角度をなすように配置されている。なお、プレート2391の数は、2枚に限定されるものではなく、3枚以上であってもよい。チップ保持部2393は、例えばベルヌーイチャックを有し、チップCPを吸着保持する。ここで、ピックアップ機構2111とヘッド2033Hとは、Z軸方向において、プレート2391が回転したときにチップ保持部2393の先端部が描く軌跡OB1と重なる位置に配置されている。チップ搬送装置2039は、ピックアップ機構2111からチップCPを受け取ると、矢印AR2012に示すように、プレート391を軸AX周りに旋回させることによりチップCPをヘッド2033Hと重なる移載位置Pos1まで搬送する。
【0047】
ボンディング装置2030は、ステージユニット2031と、ヘッド2033Hを有するボンディング部2033と、ヘッド2033Hを駆動するヘッド駆動部2036と、を有する。ヘッド2033Hは、例えば図12Aに示すようにチップツール2411と、ヘッド本体部2413と、チップ支持部2432aと、支持部駆動部2432bと、を有する。チップツール2411は、例えばシリコン(Si)から形成されている。ヘッド本体部2413は、チップCPをチップツール411に吸着保持させるための吸着部を有する保持機構2440と、チップツール2411を真空吸着によりヘッド本体部2413に固定するための吸着部(図示せず)と、を有する。また、ヘッド本体部2413には、セラミックヒータやコイルヒータ等が内蔵されている。チップツール2411は、ヘッド本体部2413の保持機構2440に対応する位置に形成された貫通孔2411aと、チップ支持部2432aが内側に挿入される貫通孔2411bと、を有する。
【0048】
チップ支持部2432aは、例えば筒状の吸着ポストであり、ヘッド2033Hの先端部に設けられ鉛直方向へ移動自在となっている。チップ支持部2432aは、チップCPの接合面CPf側とは反対側を支持する。チップ支持部2432aは、例えば図12Bに示すように、中央部に1つ設けられている。
【0049】
支持部駆動部2432bは、チップ支持部2432aを鉛直方向へ駆動するとともに、チップ支持部2432aの先端部にチップCPが載置された状態でチップ支持部2432aの内側を減圧することによりチップCPをチップ支持部2432aの先端部に吸着させる。支持部駆動部2432bは、チップ搬送装置2039のチップ保持部2393がチップCPを保持した状態でヘッド33Hへの移載位置(図10のPos1参照)に位置した状態で、チップ支持部2432aを鉛直上方へ移動させることでチップ支持部2432aの先端部をチップCPの接合側とは反対側に当接させて吸着保持する。この状態で、チップ保持部2393がチップCPの吸着保持を解除すると、チップCPがチップ保持部2393からヘッド2033Hへ移載される。
【0050】
ヘッド駆動部2036は、移載位置Pos1(図11参照)において移載されたチップCPを保持するヘッド2033Hを鉛直上方(+Z方向)へ移動させることによりヘッド2033Hをステージ2315に近づけて基板WTの実装面WTfにチップCPを実装する。より詳細には、ヘッド駆動部2036は、チップCPを保持するヘッド2033Hを鉛直上方(+Z方向)へ移動させることによりヘッド2033Hをステージ2315に近づけて基板WTの実装面WTfにチップCPを接触させて基板WTに接合させる。ここにおいて、基板WTの実装面WTfとチップCPにおける基板WTに接合される接合面CPfとは、活性化処理装置2060により活性化処理が施されている。また、基板WTの実装面WTfは、活性化処理が施された後、洗浄装置2085により水洗浄がなされている。従って、基板WTの実装面WTfにチップCPの接合面CPfを接触させることにより、チップCPが基板WTに水酸基(OH基)を介していわゆる親水化接合される。
【0051】
ステージユニット2031は、基板WTにおけるチップCPが実装される実装面WTfが鉛直下方(-Z方向)を向く姿勢で基板WTを保持するステージ2315と、ステージ2315を駆動するステージ駆動部2320と、を有する。ステージ2315は、X方向、Y方向および回転方向に移動できる。これにより、ボンディング部2033とステージ2315との相対位置関係を変更することができ、基板WT上における各チップCPの実装位置を調整することができる。
【0052】
活性化処理装置2060は、基板WTの実装面WTfまたはチップCPの接合面CPfを活性化する活性化処理を行う。活性化処理装置2060は、基板WTまたはチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を対向配置することなく一つの処理面にセットし活性化処理する。即ち、活性化処理装置2060は、2枚の基板WTまたは2つのチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠112を対向させた状態での活性化処理は行わない。対向配置して処理すると一方の基板WTまたはチップCPの材料が他方のチップCPまたは基板WTへ付着することにより結果的に複数材料が混ざってしまう。活性化処理装置2060は、図13に示すように、チャンバ2064と、保持枠RI1を支持する支持部2062と、粒子ビーム源2061と、ビーム源搬送部2063と、不飽和炭化水素ガス供給部171と、オゾンガス供給部172と、ガス供給ヘッド2069と、を有する。なお、図13において、実施の形態1と同様の構成については図1と同一の符号を付している。チャンバ2064は、排気管2651を介して真空ポンプ2652に接続されている。そして、真空ポンプ2652が作動すると、チャンバ2064内の気体が、排気管2651を通してチャンバ2064外へ排出され、チャンバ2064内の気圧が低減(減圧)される。
【0053】
支持部2062は、保持枠RI1または基板WTを吸着保持する保持部2621と、カバー2622と、保持部2621を支持し矢印AR2033に示すように保持部2621をその厚さ方向に直交する1つの軸周りに回転駆動する保持部駆動部2623と、を有する。また、支持部2062は、基板WTが投入された場合、保持部2621により基板WTを吸着保持した状態で基板WTを支持する。支持部2062は、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を対向配置することなく、一つの処理面にセットされた状態で保持枠RI1を支持する。カバー2622は、例えばガラスから形成され、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1が保持部2621に保持された状態で、シートTEのチップCPが貼着された一面側におけるチップCPが貼着された部分の外側の領域および保持枠RI1を覆っている。ここで、複数のチップCPが、平面視円形の基板(図示せず)をダイシングしたものである場合、シートTEにおける平面視円形の領域に貼着された状態となっている。この場合、カバー2622は、シートTEにおける複数のチップCPが貼着された平面視円形の領域の外側の領域を覆う形状のものが採用される。これにより、粒子ビーム源2061により、シートTEにおけるチップCPが貼着された部分を除く部分に粒子ビームが照射されることが抑制される。
【0054】
粒子ビーム源2061は、例えば高速原子ビーム源であり、放電室2612と、放電室2612内に配置される電極2611と、ビーム源駆動部2613と、Arガスまたは窒素ガスを放電室2612内へ供給するガス供給部2614と、を有する。放電室2612の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口2612aが設けられている。放電室2612は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室2612は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口2612aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部2613は、放電室2612内に窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極2611と放電室2612の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部2613は、放電室2612内に窒素ガスのプラズマを発生させた状態で、放電室2612の周壁と電極2611との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中の窒素イオンが、放電室2612の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口2612aへ向かう窒素イオンは、FAB放射口2612aを通り抜ける際、FAB放射口2612aの外周部の、炭素材料から形成された放電室2612の周壁から電子を受け取る。そして、この窒素イオンは、電気的に中性化された窒素原子となって放電室2612外へ放出される。但し、窒素イオンの一部は、放電室2612の周壁から電子を受け取ることができず、窒素イオンのまま放電室2612の外へ放出される。
【0055】
ここで、粒子ビーム源2061は、シートTEに貼着された少なくとも1つのチップCPそれぞれの接合面CPfのうちの少なくとも1つを含む仮想平面に対する粒子ビームの入射角度が30度以上80度以下となるように設定されている。これにより、粒子ビームが直接シートTEに照射されることが抑制される。従って、粒子ビームがシートTEに照射されることに起因したシートTEからの不純物の発生が抑制されるので、シートTEから発生した不純物によるチップCPの接合面CPfの損傷が抑制されるという利点がある。
【0056】
ビーム源搬送部2063は、長尺でありチャンバ2064に設けられた孔2064aに挿通され一端部で粒子ビーム源2061を支持する支持棒2631と、支持棒2631の他端部で支持棒2631を支持する支持体2632と、支持体2632を駆動する支持体駆動部2633と、を有する。また、ビーム源搬送部2063は、チャンバ2064内の真空度を維持するためにチャンバ2064の孔2064aの外周部と支持体2632との間に介在するベローズ2634を有する。支持体駆動部2633は、矢印AR2031に示すように、支持体2632を支持棒2631がチャンバ2064内へ挿脱される方向へ駆動することにより、矢印AR2032に示すようにチャンバ2064内において粒子ビーム源2061の位置を変化させる。ここで、ビーム源搬送部2063は、粒子ビーム源2061を、その複数のFAB放射口2612aの並び方向に直交する方向へ移動させる。
【0057】
ところで、粒子ビーム源2061は、前述のように、一直線上に並設された複数のFAB放射口2612aを有する。そして、粒子ビーム源2061は、複数のFAB放射口2612aの並び方向に直交する方向へ移動される。これにより、粒子ビームが照射される領域の形状は、矩形状となる。これに対して、複数のチップCPが、平面視円形の基板(図示せず)をダイシングしたものである場合、シートTEにおける平面視円形の領域に貼着された状態となっている。従って、シートTEに貼着された複数のチップCP全体に粒子ビームを照射しようとすすると、粒子ビームが照射される領域を複数のチップCPが貼着された平面視円形の領域を含む矩形状の領域に設定する必要がある。この場合、前述のカバー2622が無い構成では、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠RI1に粒子ビームが照射されることになりシートTEからの不純物が発生し易くなる。これに対して、本実施の形態では、カバー2622がシートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠RI1を覆っている。これにより、シートTEにおける複数のチップCPの外側の領域または保持枠RI1へ照射される粒子ビームが遮断され、シートTEまたは保持枠RI1からの不純物の発生が抑制される。
【0058】
ガス供給ヘッド2069は、不飽和炭化水素ガス供給部171およびオゾンガス供給部172に接続されている。そして、不飽和炭化水素ガス供給部171は、不飽和炭化水素ガス貯留部1711に貯留された不飽和水素ガスを、供給管1713を通じて、ガス供給ヘッド2069内へ供給する。オゾンガス供給部172は、オゾン発生源1721で発生したオゾンガスを、供給管1722を通じて、ガス供給ヘッド2069内へ供給する。また、活性化処理装置2060は、矢印AR2039に示すように、チャンバ2064内において、ガス供給ヘッド2069を支持部2062に近づく方向または遠ざかる方向へ移動させるヘッド昇降駆動部(図示せず)を有する。
【0059】
制御部2090は、例えばMPU(Micro Processing Unit)とインタフェースとを有し、インタフェースを介して、ヘッド駆動部2036、ステージ駆動部2320、プレート駆動部2392、ピックアップ機構2111、保持枠駆動部2113、洗浄ヘッド2851、ステージ駆動部2853、ビーム源駆動部2613、ビーム源搬送部263、保持部駆動部2623、不飽和炭化水素ガス供給部171、オゾンガス供給部172および搬送ロボット2071それぞれへ制御信号を出力する。
【0060】
次に、本実施の形態に係るチップ接合システム2001の動作について図14乃至図16Bを参照しながら説明する。なお、基板WT、チップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1は、搬出入ユニット2080から投入されるものとする。まず、チップ接合システム2001は、図14に示すように、搬出入ユニット2080から投入された基板WTを活性化処理装置2060へ投入することにより基板WTの実装面WTfに対して活性化処理を施す活性化処理工程を実行する(ステップS201)。ここで、活性化処理装置2060は、まず、支持部2062に基板WTの実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢で支持させた状態で、粒子ビーム源2061から粒子ビームを実装面WTfへ照射させる。ここで、活性化処理装置2060は、例えば図15Aおよび図15Bの矢印AR2034に示すように、粒子ビーム源2061を、基板WTの実装面WTfへ粒子ビームを照射させながらX軸方向へ移動させていく。ここで、活性化処理装置2060は、例えば粒子ビーム源2061を+X方向へ移動させながら粒子ビームを基板WTの実装面WTf全体に照射した後、粒子ビーム源2061を-X方向へ移動させながら基板WTの実装面WTfに粒子ビームを照射する。そして、粒子ビーム源2061から基板WTの実装面WTfへ粒子ビームが照射しつつ、粒子ビーム源2061を1往復させる。次に、活性化処理装置2060は、保持部2621に保持された基板WTを反転させることにより、基板WTの実装面WTfが鉛直上方を向く姿勢にする。次に、活性化処理装置2060は、ガス供給ヘッド2069を基板WTに近づける。ここで、ガス供給ヘッド2069と基板WTの実装面WTfとの間の距離は、50mm以下であることが好ましい。そして、活性化処理装置2060は、基板WTの実装面WTfをガス供給ヘッド2069から供給される不飽和水素ガスおよびオゾンガスに曝露する不飽和炭化水素ガス曝露工程を実行する(ステップS202)。
【0061】
次に、チップ接合システム2001は、活性化処理装置2060から活性化処理が施された基板WTを、洗浄装置2085へ投入して、基板WTの実装面WTfを水洗浄する水洗浄工程を実行する(ステップS203)。ここで、洗浄装置2085は、ステージ2852に基板WTが支持された状態でステージ駆動部2853によりステージ2852を回転させつつ、洗浄ヘッド2851から水を基板WTに向けて吐出することにより基板WTを水洗浄する。これにより、基板WTの実装面WTfに水酸基(OH基)または水分子が比較的多く付着した状態となる。
【0062】
続いて、チップ接合システム2001は、ボンディング装置2030のステージ2315に基板WTを保持させて基板WTにチップCPを接合するための準備を行う基板準備工程を実行する(ステップS204)。このとき、搬送ロボット2071が、洗浄装置2085から基板WTをその実装面WTfが鉛直上方を向く姿勢で受け取る。その後、搬送ロボット2071は、受け取った基板WTを反転させて、基板WTをその実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢で保持する。そして、搬送ロボット2071は、基板WTをその実装面WTfが鉛直下方を向く姿勢のままボンディング装置2030のステージ2315へ移載する。
【0063】
その後、チップ接合システム2001は、搬出入ユニット80から投入されたチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を活性化処理装置2060へ投入することによりチップCPの接合面CPfに対して活性化処理を施す活性化処理工程を実行する(ステップS205)。ここで、活性化処理装置2060は、まず、図16Aに示すように、支持部2062にシートTEに貼着されたチップCPの接合面CPfが鉛直上方を向く姿勢で支持させる。次に、活性化処理装置2060は、図14に示すように、チップCPの接合面CPfを不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露する不飽和炭化水素ガス曝露工程を実行する(ステップS206)。ここで、活性化処理装置2060は、図16Aの矢印AR2035に示すように、ガス供給ヘッド2069をチップCPに近づける。このとき、ガス供給ヘッド2069とチップCPの接合面CPfとの間の距離は、50mm以下であることが好ましい。そして、活性化処理装置2060は、図16Bに示すように、チップCPの接合面CPfをガス供給ヘッド2069から供給される不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露する。
【0064】
図14に戻って、続いて、チップ接合システム2001は、チップ供給装置2010のチップ供給部2011にチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を保持させて基板WTにチップCPを接合するための準備を行うチップ準備工程を実行する(ステップS207)。このとき、搬送ロボット2071が、活性化処理装置2060からシートTEを保持する保持枠RI1をチップCPの接合面CPfが鉛直上方を向く姿勢で受け取る。その後、搬送ロボット2071は、受け取った保持枠RI1をそのままチップ供給装置2010のチップ供給部11へ移載する。
【0065】
その後、チップ接合システム2001は、チップCPを基板WTの実装面WTfに接触させることにより基板WTに接合する仮接合工程を実行する(ステップS206)。ここでは、チップ接合システム2001が、まず、チップ搬送装置2039の1つのプレート2391をチップ供給部2011の方向へ向けた状態にする。次に、ピックアップ機構2111が鉛直上方へ移動することにより、1つのチップCPをシートTEにおける複数のチップCP側とは反対側から切り出し、1つのチップCPをシートTEから離脱した状態にする。そして、チップ搬送装置2039は、チップ保持部2393によりピックアップ機構2111のニードル2111aの先端部で保持されたチップCPを吸着保持する。
【0066】
続いて、チップ接合システム2001が、プレート2391を旋回させて、チップ保持部2393を、ボンディング部2033のヘッド2033Hの鉛直上方の移載位置Pos1に配置する。即ち、チップ搬送装置2039は、チップ供給部2011から受け取ったチップCPをヘッド2033HにチップCPを移載する移載位置Pos1まで搬送する。そして、ヘッド駆動部2036は、ボンディング部2033を鉛直上方へ移動させてヘッド2033Hをチップ搬送装置39のチップ保持部393へ近づける。次に、支持部駆動部2432bは、チップ支持部2432aを鉛直上方へ移動させてチップCPに当接させる。続いて、チップ搬送装置2039は、チップ保持部393によるチップCPの吸着保持を解除することにより、チップCPをチップ支持部2432aに移載する。その後、支持部駆動部2432bは、チップ支持部2432aを鉛直下方へ移動させる。これにより、ヘッド2033Hの先端部にチップCPが保持された状態となる。
【0067】
その後、チップ接合システム2001は、ステージ2315を駆動するとともにボンディング部2033を回転させることにより、チップCPと基板WTとの相対的な位置ずれを補正するアライメントを実行する。そして、チップ接合システム2001は、ヘッド2033Hを上昇させることにより、チップCPを基板WTに接合する。ここにおいて、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとは、水酸基(OH基)を介して親水化接合した状態となる。
【0068】
次に、チップCPが実装された状態の基板WTは、チップ接合システム2001から取り出され、その後、熱処理装置(図示せず)に投入されて、互いに仮接合された基板WTとチップCPを加熱する熱処理を実行することにより、基板WTにチップCPを本接合する熱処理工程が行われる(ステップS209)。熱処理装置は、例えば温度350℃、1時間の条件で基板WT、チップCPの熱処理を行う。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態に係るチップ接合システム2001によれば、活性化処理装置2060において、支持部2062が、チップCPが貼着されたシートTEにおけるチップCPが貼着された一面側を粒子ビーム源2061側に対向させた姿勢で保持する。そして、粒子ビーム源2061が、シートTEに貼着された状態のチップCPの接合面CPfに向けて粒子ビームを照射する。即ち、シートTEに貼着されたチップCPにおける接合面CPfに対して粒子ビームを照射することにより接合面CPfを活性化させる。その後、チップCPの接合面CPfをエチレンガスおよびオゾンガスに曝露する。これにより、基板WTの実装面WTfとチップCPの接合面CPfとに比較的多くのOH基が生成された状態で、基板WTにチップCPを仮接合することができるので、その分、基板WTとチップCPとを多くの水素結合を介して仮接合することができる。従って、互いに仮接合された基板WTとチップCPとに対して熱処理工程を行うことにより基板WTとチップCPとを本接合したときの基板WTとチップCPとの接合強度を高めることができる。
【0070】
ところで、シートTEに貼着されたチップCPに対して、プラズマへの曝露または粒子ビームの照射による活性化処理を行う場合、シートTE自体がプラズマに曝露されたり粒子ビームの照射を受けたりするため、シートTEから不純物が発生してしまう。そして、この不純物により、チップCPの接合面CPfに汚染物質が付着したり、活性化処理装置2060のチャンバ2064内が汚染されたりしてしまう。これに対して、本実施の形態では、チップ接合面活性化処理工程において、チップCPが貼着されたシートTEのプラズマへの曝露或いは粒子ビームの照射を行わないため、シートTEから発生した不純物に起因したチャンバ2064内の汚染を抑制できる。
【0071】
また、本実施の形態では、活性化処理装置2060が、基板WTの実装面、チップCPの接合面に不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを供給する際、ガス供給ヘッド2069を基板WT、チップCPに近づける。これにより、ガス供給ヘッド2069から放射されたオゾンが消滅する前に基板WTの実装面WTf、チップCPの接合面CPfに到達させることができる。従って、基板WTの実装面WTf、チップCPの接合面CPfに適切にOH基を生成することができる。ここで、ガス供給ヘッド2069と基板WTの実装面WTf、チップCPの接合面CPfとの間の距離は50mm以下であることが好ましい。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、2つの基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露するガス曝露工程を行った後、基板W1、W2を大気に曝露する大気曝露工程を行う接合方法であってもよい。この場合、図17に示すように、まず、接合装置1は、基板W1、W2それぞれを再び接合装置1のステージ141、ヘッド142に保持させてから、減圧雰囲気下において2つの基板W1、W2それぞれの接合面を活性化する活性化処理工程を行う(ステップS21)。次に、接合装置1は、チャンバ120内に不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとを導入することにより、2つの基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露するガス曝露工程を行う(ステップS22)。続いて、基板W1、W2をチャンバ120外へ取り出して基板W1、W2の接合面を大気に曝露する大気曝露工程を行う(ステップS23)。その後、接合装置1は、チャンバ120内を減圧雰囲気で維持した状態で、基板W1、W2の接合面同士を接触させて基板W1、W2同士を仮接合する仮接合工程を行う(ステップS24)。このとき、基板W1、W2の接合面同士は、OH基を介した水素結合により結合された状態となる。次に、接合装置1は、互いに仮接合された基板W1、W2を加熱する熱処理を実行することにより、基板W1、W2同士を本接合する熱処理工程を行う(ステップS5)。これにより、基板W1、W2の間に介在する水分が蒸発して除去されるとともに、基板W1、W2の接合面同士の結合が水素結合から酸素原子を介した共有結合に変化して基板W1、W2同士が堅固に接合される。
【0073】
本構成によっても基板W1、W2同士を堅固に接合することができる。また、本構成によれば、基板W1、W2を処理の途中で大気に曝露した状態で搬送しても基板W1、W2の接合面にはガス曝露工程において既にOH基が生成されているので、その後、減圧雰囲気で仮接合工程を行っても基板W1、W2同士を堅固に接合することができる。
【0074】
実施の形態において、接合装置が、例えば図18に示すように、実施の形態で説明した粒子ビーム源161、162と隣接して配置されたオゾン供給部3172を有する粒子ビーム源ユニット2161、2162を備えるものであってもよい。この場合、粒子ビーム源ユニット3161、3162は、それぞれ、活性化処理工程において、矢印AR21に示すように、粒子ビーム源161、162から基板W1、W2の接合面へ粒子ビームを照射させながら矢印AR22に示すように移動し、ガス曝露工程において、矢印AR23に示すように、オゾン供給部3172から基板W1、W2の接合面へオゾンガスを吐出しながら矢印AR22に示すように移動していくようにすればよい。
【0075】
また、実施の形態において、粒子ビーム源161、162のガス供給部1604が、アルゴンガスまたはオゾンガスを放電室1601内へ供給するものであってもよい。そして、粒子ビーム源161、162では、活性化処理工程において、ガス供給部1604が、アルゴンガスを放電室1601へ供給しつつ、ビーム源駆動部1603が、放電室1601内にアルゴンガスのプラズマを発生させるとともに、電極1602と放電室1601の周壁との間に直流電圧を印加する。そして、ガス曝露工程において、ガス供給部1604が、オゾンガスを放電室1601へ供給しつつ、ビーム源駆動部1603が、放電室1601内のプラズマの発生を停止させるとともに、電極1602と放電室1601の周壁との間に直流電圧の印加を停止する。つまり、粒子ビーム源161、162が、活性化処理工程において、放電室1601のFAB放射口1601aから粒子ビームを放射するモードで動作し、ガス曝露工程において、FAB放射口1601aからオゾンガスを吐出するモードで動作する。
【0076】
本構成によれば、オゾンガス供給部172を別途設ける必要が無くなるので、その分、接合装置の小型化を図ることができる。
【0077】
実施の形態では、カバー122A、122Bが、それぞれ、チャンバ120内におけるステージ141、ヘッド142の周囲に配置されている例について説明したが、これに限らず、例えばチャンバ120内におけるカバー122Aまたはヘッド142の周囲のみに配置されていてもよい。
【0078】
実施の形態では、水分除去工程において、基板W1、W2を加熱することにより基板W1、W2の接合面に付着した水分を除去する例について説明したが、水分を除去する方法はこれに限定されるものではなく、基板W1、W2を減圧雰囲気下に放置することにより、基板W1、W2の接合面に付着した水分を常温で蒸発させて除去するものであってもよい。即ち、基板W1、W2を加熱することなく基板W1、W2をチャンバ120の内側に配置した状態で、チャンバ120内の真空度を高めることで基板W1、W2の接合面に付着した水分を除去するものであってもよい。また、実施の形態に係る接合方法において、例えば水分除去工程を省略した接合方法であってもよい。
【0079】
実施の形態では、活性化処理工程を含む接合方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば図19に示すように、実施の形態で説明した接合方法について、活性化処理工程を省略した接合方法であってもよい。或いは、例えば図20に示すように、前述の図9を用いて説明した変形例に係る接合方法について、活性化処理工程を省略した接合方法であってもよい。また、図21に示すように、実施の形態で説明した接合方法において、水分除去工程および活性化処理工程を省略した接合方法であってもよい。この接合方法では、チャンバ120内を減圧雰囲気で維持した状態で基板W1、W2の接合面を不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスに曝露した後、そのまま基板W1、W2同士を仮接合することができる。
【0080】
実施の形態において、不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射する列状に配置された複数の放射口を有し、複数の放射口の並び方向が基板W1、W2の接合面と平行になる姿勢で配置されるガス供給ヘッドと、ガス供給ヘッドを基板W1、W2の接合面に沿って移動させるガス供給ヘッド搬送部と、を有するガス供給部を備えるものであってもよい。また、ガス供給部は、基板W1、W2それぞれの接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射するガス供給ヘッドを2つ有するものであってもよい。そして、ガス供給ヘッド搬送部が、2つのガス供給ヘッドそれぞれから基板W1、W2それぞれの接合面へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射しながら、2つのガス供給ヘッドを基板W1、W2の接合面に沿って移動させるものであってもよい。また、実施の形態において、不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射する列状に配置された複数の放射口を有する1つのガス供給ヘッドと、ガス供給ヘッドを複数の放射口の並び方向と直交するに沿って基板W1、W2に対して相対的に移動させるガス供給ヘッド搬送部と、を有するガス供給部と、を備えるものであってもよい。この場合、ステージ141に基板W1、W2のうちのいずれか一方を支持した状態で、ガス供給部から基板W1、W2へ不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスを放射することによりガス曝露工程を行った後、ステージ141に他方を支持した状態で、同様のガス曝露工程を行うようにすればよい。即ち、基板W1、W2に対して1枚ずつ順次ガス曝露工程を行うようにすればよい。
【0081】
実施の形態2では、基板WTの実装面WTfに対しては、プラズマへの曝露または粒子ビームの照射による活性化処理工程を行った後、エチレンガスおよびオゾンガスに曝露する工程を行い、チップCPの接合面CPfに対しては、エチレンガスおよびオゾンガスに曝露する工程のみを行う例について説明した。但し、これに限らず、例えば、エチレンガスおよびオゾンガスに曝露する工程の前に、粒子ビームを利用した活化処理工程を行ってもよい。この場合、ここで、活性化処理装置2060は、まず、支持部2062に、保持枠RI1をシートTEにおけるチップCPが貼着された一面側を粒子ビーム源2061側に対向させた姿勢、即ち、鉛直下方を向く姿勢で支持させる。そして、活性化処理装置2060は、粒子ビーム源2061からシートTEに貼着された状態のチップCPそれぞれの接合面CPfに向けて粒子ビームを照射する。ここで、活性化処理装置2060は、複数のチップCPが貼着されたシートTEを保持する保持枠RI1を1つだけ準備し、準備した保持枠RI1に保持されたシートTEに貼着されたチップCPに対して粒子ビームを照射する。また、活性化処理装置2060は、例えば図22Aおよび図22Bの矢印AR2034に示すように、粒子ビーム源2061を、チップCPの接合面CPfへ粒子ビームを照射させながらX軸方向へ移動させていく。ここで、活性化処理装置2060は、例えば粒子ビーム源2061を+X方向へ移動させながら粒子ビームをテープTEに貼着された全てのチップCPの接合面CPfに照射した後、粒子ビーム源2061を-X方向へ移動させながらチップCPの接合面CPfに粒子ビームを照射する。更に、図22Aに示す粒子ビームの照射軸J1と仮想平面S1の法線方向N1とのなす角度(入射角度)θ1は、30度以上80度以下となるように設定される。
【0082】
ところで、プラズマへの曝露による活性化処理工程に比べて粒子ビームを利用した活性化処理工程の場合は、たとえシートTEに粒子ビームが照射されたとしても、シートTEから生じた不純物CPA1は、チップCPから離れる方向へ飛ばされ、チップCPの接合面CPf側へ戻ってこない。このため、チップCPの接合面CPfに付着することなく、チャンバ2064内の汚染に止まる。また、エチレンガスおよびオゾンガスに曝露する工程の前に、粒子ビームを利用した活性化処理工程を行ったほうが、当該活性化処理を行わない場合に比べて、チップCPと基板WTとの接合強度が高まる。従って、チレンガスおよびオゾンガスに曝露する工程の前に、チャンバ2064内の汚染を鑑みて、照射強度を低く抑えた粒子ビームをチップCPの接合面CPfに照射することが好ましい。
【0083】
実施の形態1において、例えば図23に示すように、接合装置4001のチャンバ120が、活性化処理装置4060のチャンバ2064に接続されており、チャンバ2064からチャンバ120へ活性化処理がなされた基板W1、W2を搬送する搬送装置(図示せず)を備えるものであってもよい。なお、図23において、実施の形態1、2と同様の構成については図1および図13と同一の符号を付している。ここで、搬送装置は、基板W1、W2の活性化処理装置2060のチャンバ2064内への搬送、接合装置4001のチャンバ120からの基板W1、W2の搬出も行う。この場合、活性化処理装置3060において活性化処理が行われた後、活性化された基板W1、W2が接合装置4001のチャンバ120内へ搬送され、その後、接合装置4001が、基板W1、W2同士を接合する。
【0084】
実施の形態1において、不飽和炭化水素ガス供給部171から供給される不飽和炭化水素ガスと、オゾンガス供給部172から供給されるオゾンガスと、を混合してから基板W1、W2の接合面へ不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとの混合ガスを供給するガス供給ヘッドを備えるものであってもよい。ここで、ガス供給ヘッド内における不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが混合される位置から基板W1、W2の接合面との間の距離は、50mm以下であることが好ましい。これにより、ガス供給ヘッド内で混合された不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとを、オゾンガスが消滅する前に基板W1、W2の接合面に到達させることができる。従って、基板W1、W2の接合面に適切にOH基を生成することができる。また、ガス供給ヘッドとしては、複数のノズルを有し、不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとを複数のノズルそれぞれの出口近傍で混合する構造を有するものが好ましい。
【0085】
ところで、不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが相異なる供給口から基板W1、W2へ供給される場合、基板W1、W2内において不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとの比率のばらつきが生じてしまい、互いに接合された基板W1、W2の接合強度のばらつきの原因となる虞があった。これに対して、本構成によれば、不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとをガス供給ヘッド内において混合させてから基板W1、W2の接合面へ供給する。これにより、基板W1、W2の接合面内における不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとの比率のばらつきを低減することができる。従って、互いに接合された基板W1、W2の接合強度のばらつきを抑制することができる。
【0086】
実施の形態2において、基板WTの実装面WTfに対して活性化処理を施す活性化処理工程において、プラズマへの曝露または粒子ビームの照射による活性化処理のみを行い、不飽和炭化水素ガスおよびオゾンガスへ曝露する工程を行わなくてもよい。
【0087】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0088】
本出願は、2023年1月6日に出願された日本国特許出願特願2023-001038号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2023-001038号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、例えばCMOS(Complementary MOS)イメージセンサやメモリ、演算素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造に好適である。
【符号の説明】
【0090】
1:接合装置、9,2090:制御部、120:チャンバ、121a:真空ポンプ、121b:排気管、121c:排気弁、122A、122B:カバー、123A、123B:カバー加熱部、141:ステージ、142:ヘッド、143:ステージ駆動部、144:ヘッド駆動部、150:位置ずれ量測定部、161,162:粒子ビーム源、171:不飽和炭化水素ガス供給部、172,3172:オゾンガス供給部、411,1444:ピエゾアクチュエータ、1411,1421:基板加熱部、1441:昇降駆動部、1441a,1445:圧力センサ、1442:XY方向駆動部、1443:回転駆動部、1601:放電室、1601a:FAB放射口、1602:電極、1603:ビーム源駆動部、1604:ガス供給部、1711:不飽和炭化水素ガス貯留部、1712:供給弁、1713,1722:供給管、1721:オゾン発生源、2001:チップ接合システム、2010:チップ供給装置、2030:ボンディング装置、2039:チップ搬送装置、2060:活性化処理装置、2069:ガス供給ヘッド、2070:搬送装置、2080:搬出入ユニット、2085:洗浄装置、3161,3162:粒子ビーム源ユニット、W1,W2:基板
【要約】
接合方法は、2つの基板(W1、W2)を接合する接合方法であって、2つの基板(W1、W2)それぞれの接合面を不飽和炭化水素ガスとオゾンガスとが存在する雰囲気に曝露するガス曝露工程と、基板(W1、W2)の接合面に付着している水分を除去する水分除去工程と、2つの基板(W1、W2)同士を仮接合する仮接合工程と、を含む。また、ガス曝露工程の前に、2つの基板(W1、W2)の接合面を活性化する活性化処理工程を行う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23