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特許7540837硬化性組成物およびその硬化物を含む光学部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物およびその硬化物を含む光学部材
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/08 20060101AFI20240820BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08G75/08
G02B1/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021561750
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2020006625
(87)【国際公開番号】W WO2020242127
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0061427
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジュン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンスク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンファ・ジュン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-001465(JP,A)
【文献】特開2000-256554(JP,A)
【文献】特開2014-047333(JP,A)
【文献】特開2011-212850(JP,A)
【文献】特開2015-199841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G75/00- 75/32
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピスルフィド化合物;チオール化合物;および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物;を含み、
前記チオール化合物および前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である、高屈折率光学部材形成用硬化性組成物であって、
前記エピスルフィド化合物は下記化学式1で表される化合物を含み、前記チオール化合物は下記化学式2または3で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含み、前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は下記化学式4および5で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含む、高屈折率光学部材形成用硬化性組成物:
【化1】
前記化学式1において、
およびR はそれぞれ独立して水素または炭素数1~10のアルキルであり、
およびR はそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
aは0~4の整数であり、
bは0~6の整数である。
【化2】
前記化学式2において、
およびR はそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
cは0~4の整数であり、
dは0~6の整数であり、
【化3】
前記化学式3において、
A環は窒素(N)および硫黄(S)原子のうち1個以上を含む5員または6員の芳香族ヘテロ環であり、
eは1~3の整数である。
【化4】
前記化学式4において、
およびR はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
fおよびgはそれぞれ独立して1~7の整数であり、
hおよびiはそれぞれ独立して0~6の整数であり、
f+hは7以下であり、g+iは7以下であり、
【化5】
前記化学式5において、
Ar およびAr はそれぞれ独立して1個以上の水酸基が置換された炭素数6~60のアリールであり、
およびR 10 はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
mおよびnはそれぞれ独立して0~4の整数である
【請求項2】
前記チオール化合物および前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~8:2である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エピスルフィド化合物は、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパンおよび1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタンからなる群より選ばれた少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記チオール化合物は下記化合物より選ばれた少なくとも一つを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物:
【化6】
【請求項5】
前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は下記化合物より選ばれた少なくとも一つを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物:
【化7】
【請求項6】
触媒をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
-5℃の温度で12時間維持された後の粘度が4000cP以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
エピスルフィド化合物;チオール化合物;および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物;の硬化物を含み、
前記チオール化合物および前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である、光学部材であって、
前記エピスルフィド化合物は下記化学式1で表される化合物を含み、前記チオール化合物は下記化学式2または3で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含み、前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は下記化学式4および5で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含む、光学部材:
【化8】
前記化学式1において、
およびR はそれぞれ独立して水素または炭素数1~10のアルキルであり、
およびR はそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
aは0~4の整数であり、
bは0~6の整数である。
【化9】
前記化学式2において、
およびR はそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
cは0~4の整数であり、
dは0~6の整数であり、
【化10】
前記化学式3において、
A環は窒素(N)および硫黄(S)原子のうち1個以上を含む5員または6員の芳香族ヘテロ環であり、
eは1~3の整数である。
【化11】
前記化学式4において、
およびR はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
fおよびgはそれぞれ独立して1~7の整数であり、
hおよびiはそれぞれ独立して0~6の整数であり、
f+hは7以下であり、g+iは7以下であり、
【化12】
前記化学式5において、
Ar およびAr はそれぞれ独立して1個以上の水酸基が置換された炭素数6~60のアリールであり、
およびR 10 はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
mおよびnはそれぞれ独立して0~4の整数である
【請求項9】
屈折率が1.65以上である、請求項に記載の光学部材。
【請求項10】
透過率が80%以上である、請求項又はに記載の光学部材。
【請求項11】
ヘイズ(Haze)が1%以下である、請求項から1のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項12】
黄色度(YI;Yellow Index)が1~30である、請求項から1のいずれか一項に記載の光学部材。
【請求項13】
ウェアラブルデバイスのレンズ用である、請求項から1のいずれか一項に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2019年5月24日付韓国特許出願第10-2019-0061427号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は高屈折率光学部材形成用硬化性組成物およびその硬化物を含む光学部材に関する。
【背景技術】
【0003】
最近仮想現実デバイス(Virtual Reality Device)および拡張現実デバイス(Augmented Reality Device)などを用いて、ユーザーに3次元の画像を提供する装置の開発が行われている。仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイスは、一般的なメガネのようなレンズに回折導光パターンを形成して所望するイメージをユーザーが見えるようにすることができる。
【0004】
一般的に、仮想現実デバイスまたは拡張現実デバイス用途のレンズは屈折率が高いガラスを使用する。ガラスは高い屈折率、光透過度、平坦度、強度およびキズ防止効果を有することができるが、破損時にユーザーの眼球に致命的な損傷を与えることがあり、密度が高いため重量が重いので長時間着用するには不便である。
【0005】
これに対して、高屈折プラスチックの場合、ガラスレンズに比べて軽いため着用しやすく、破損しにくく、破損してもガラスレンズに比べて相対的に安全で、かつ多様な色の実現が可能である。しかし、ガラスレンズに比べて高屈折率と高アッベ数の実現が難しい問題があり、その改善のための研究が必要な実情である。
【0006】
また、高屈折プラスチック形成用硬化溶液は硬化剤および/または触媒を含むことにより、硬化反応速度が速くなって粘度が急激に増加する傾向を示す。そのため、硬化溶液製造後短時間で硬化液を使い果たさなければならず、残った溶液をさらに保管することが難しい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長期保管が可能であり、急速な硬化による脈理現象を防止できる高屈折率光学部材形成用硬化性組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、従来のレンズなどに使われるガラスあるいは強化ガラスに比べて軽く、強度および硬度に優れ、かつ多様な色の実現が可能であり、高屈折率の実現が可能な光学部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、エピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物を含み、前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である硬化性組成物を提供する。
【0010】
また、本明細書では、エピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の硬化物を含み、前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である光学部材を提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態による硬化性組成物およびその硬化物を含む光学部材についてより詳細に説明する。
【0012】
本明細書で使われる用語は単に例示的な実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではなく、単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0013】
本明細書で使われる「含む」ことの意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0014】
本明細書で使われる「エピスルフィド化合物」の定義は、1個以上のエピスルフィドを含む化合物を意味し、この際、エピスルフィドはエポキシドの酸素(O)原子が硫黄(S)原子に置換された化合物を意味する。
【0015】
本明細書で使われる「チオール化合物」の定義は、1個以上のチオール基(-SH)を含む化合物を意味する。
【0016】
本明細書における「硬化」は、熱硬化および光硬化の両方をいずれも含む意味であり、「硬化性組成物」は熱硬化および/または光硬化が可能な組成物を意味する。
【0017】
本明細書における高屈折は350~800nmの波長領域または532nmの波長で約1.6以上を意味する。
【0018】
発明の一実施形態によれば、エピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物を含み、前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である硬化性組成物が提供される。
【0019】
従来、硬化液に含まれる硫黄原子の含有量を高めるほど、硬化液の硬化物である光学部材の屈折率が高い傾向を示すことが確認され、したがってチオール化合物などを硬化剤として硬化液に含めていた。しかし、チオール化合物を使用した硬化液の場合、混合直後に硬化反応が行われて粘度が急激に増加し、また急速な硬化によって脈理現象が発生し、このような組成物で形成された光学部材は光学特性および物理的物性などが劣る問題があった。
【0020】
しかし、本発明者らは、エピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物を含み、かつチオール化合物と2個以上の水酸基を含む芳香環化合物を特定重量比に制御する場合、混合直後に急速な硬化反応が起きないため長期保管が可能であり、急速な硬化による脈理現象も発生せず、このような硬化性組成物の硬化物である光学部材は、高屈折率を示しながらも、機械的物性および光学的物性に優れ、従来使用されていたガラスやプラスチック素材に代わる光学材料を提供できる事実を発見し、本発明に至った。
【0021】
そのため、前記硬化性組成物およびその硬化物を含む光学部材は、既存のガラスまたは光学ガラスに代わり、製品や商業分野、例えば、ディスプレイ用基板、ディスプレイ用保護フィルム、タッチパネル、ウェアラブルデバイスのレンズなどに有用に適用することが可能である。
【0022】
前記一実施形態による硬化性組成物に含まれる前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1,7:3~8.5:1.5、または7:3~8:2であり得る。前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比が7:3未満であれば高屈折率を実現することが難しく、9:1を超えると前記硬化性組成物の硬化時に硬化速度の制御が難しいため脈理現象が発生し、硬化性組成物の長期保管が難しい。
【0023】
前記硬化性組成物に含まれるエピスルフィド化合物は下記化学式1で表される化合物を含み得る。
【化1】
前記化学式1において、
およびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~10のアルキルであり、
およびRはそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
aは0~4の整数であり、
bは0~6の整数であり得る。
【0024】
前記化学式1で表されるエピスルフィド化合物は、分子の両末端にエピスルフィドが連結された脂肪族鎖状骨格を有しており、脂肪族鎖内ではアルキレン基が硫黄(S)原子によって連結されるチオエーテル(thio ether)形態の繰り返し単位を備えることができる。
【0025】
前記エピスルフィド化合物は上述した特定の化学構造によって分子内に原子屈折が大きい硫黄(S)原子を高い含有量で含み得、このような高い硫黄原子含有量によって硬化物の屈折率を高めることができる。
【0026】
また、前記エピスルフィド化合物は開環重合によって硬化が可能であり、エピスルフィド基の開環重合によって形成されるアルキレンスルフィド基は、硬化物の高屈折率をさらに高めることができる。
【0027】
一方、前記化学式1において、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0028】
また、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、またはイソブチレンであり得るが、これに限定されるものではない。
【0029】
また、aおよびbはそれぞれ独立して0または1であり得る。
【0030】
化学式1のaは、チオエーテル繰り返し単位に含まれたアルキレン基の炭素数に関するものであり、aが過度に大きい場合、分子内に炭素鎖の長さが長くなることにより、硬化時に硬化物のガラス転移温度が低くなり、そのため硬化物の耐熱性が低下する問題が発生し得、また、相対的な硫黄の含有量が低くなることにより硬化物の屈折率が低くなる問題が発生し得る。
【0031】
化学式1のbは、アルキレン基が硫黄(S)原子によって連結されるチオエーテル(thio ether)繰り返し単位の繰り返し数であり、bが過度に大きい場合、分子の鎖長が長くなることにより硬化時に硬化物のガラス転移温度が低くなり、そのため硬化物の耐熱性が低下する問題が発生し得る。
【0032】
また、前記化学式1で表される化合物を単独で使用するか、あるいは2種以上混合して使用することもできる。
【0033】
前記エピスルフィド化合物は、例えば、ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(β-エピチオプロピルチオ)エタン、1,3-ビス(β-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4-ビス(β-エピチオプロピルチオ)ブタンなどからなる群より選ばれた少なくとも一つを含み得るが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
前記エピスルフィド化合物の含有量は、全体硬化性組成物100重量%に対して、50~99重量%、60~95重量%、または70~90重量%であり得る。前記エピスルフィド化合物の含有量が過度に多いと、相対的にチオール化合物などの硬化物の含有量が少なくなり、未硬化の副生成物などが発生し、これによって硬化物である光学部材のガラス転移温度を低下させて黄色度(YI;Yellow Index)を高める問題がある。反面、前記エピスルフィド化合物の含有量が過度に少ないと、相対的にチオール化合物などの硬化剤の含有量が多くなり、硬化剤が硬化性組成物内に十分に溶解されないか、或いは未硬化の副生成物などが発生し、これによって硬化物である光学部材のガラス転移温度を低下させて黄色度(YI;Yellow Index)を高める問題がある。
【0035】
前記硬化性組成物に含まれるチオール化合物は下記化学式2または3で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含み得る。
【化2】
前記化学式2において、
およびRはそれぞれ独立して単結合または炭素数1~10のアルキレンであり、
cは0~4の整数であり、
dは0~6の整数であり、
【化3】
前記化学式3において、
A環は窒素(N)および硫黄(S)原子のうち1個以上を含む5員または6員の芳香族ヘテロ環であり、
eは1~3の整数であり得る。
【0036】
具体的には、前記化学式2で表されるチオール化合物は、分子の両末端にチオール基(-SH)が連結された脂肪族鎖状骨格を有しており、脂肪族鎖内では、アルキレン基が硫黄(S)原子によって連結されるチオエーテル(thio ether)形態の繰り返し単位を備えることができる。
【0037】
一方、化学式3で表されるチオール化合物は、窒素(N)および/または硫黄(S)のようなヘテロ原子を含む、5員または6員芳香環に、1個以上のチオール基が連結され得る。
【0038】
前記化学式2または3で表されるチオール化合物は、前記エピスルフィド化合物との硬化反応、すなわち、エピスルフィド基の開環重合反応において、エピスルフィド基と反応してジスルフィド結合などを形成して硬化物を生成でき、分子内に原子屈折が大きい硫黄(S)原子を高い含有量で含んで硬化物の屈折率をさらに高めることができる。
【0039】
ただし、前記エピスルフィド化合物およびチオール化合物のみを含む硬化性組成物の場合、屈折率は高いが、急速な硬化反応が行われて長期保管が難しく脈理現象が発生する問題がある。しかし、前記一実施例による硬化性組成物は、前記2個の水酸基を含む芳香環化合物を特定含有量で含むことによって、高い屈折率、優れた光学特性および機械的特性を維持しながらも、急速な硬化による問題を防止することができる。
【0040】
一方、前記化学式2において、RおよびRはそれぞれ独立して単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、またはイソブチレンであり得るが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、cおよびdはそれぞれ独立して0または1であり得る。
【0042】
化学式2のcは、チオエーテル繰り返し単位に含まれたアルキレン基の炭素数に関するものであり、cが過度に大きい場合、分子内の炭素鎖の長さが長くなることにより、硬化時に硬化物のガラス転移温度が低くなり、そのため硬化物の耐熱性が低下する問題が発生し得、また、相対的な硫黄の含有量が低くなることにより硬化物の屈折率が低くなる問題が発生し得る。
【0043】
化学式1のdは、アルキレン基が硫黄(S)原子によって連結されるチオエーテル(thio ether)繰り返し単位の繰り返し数であり、dが過度に大きい場合、分子の鎖長が長くなることにより、硬化時に硬化物のガラス転移温度が低くなり、そのため硬化物の耐熱性が低下する問題が発生し得る。
【0044】
また、前記化学式3において、A環はピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、チオフェン、チアゾールまたはチアジアゾールであり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
また、eは2または3であり得る。
【0046】
また、前記化学式2または3で表される化合物を単独で使用するか、あるいは2種以上混合して使用することもできる。
【0047】
前記チオール化合物は、例えば、下記化合物より選ばれた少なくとも一つを含み得る。
【化4】
【0048】
前記チオール化合物の含有量は、全体硬化性組成物100重量%に対して、1~30重量%、5~25重量%、または7~10重量%であり得る。前記チオール化合物の含有量が過度に多いと固形のチオール化合物が硬化性組成物に十分に溶解されず、相対的にエピスルフィド化合物などの他の組成の含有量が少なくなり、未硬化の副生成物などが発生し、これによって硬化物である光学部材のガラス転移温度を低下させて黄色度(YI;Yellow Index)を高める問題がある。反面、前記チオール化合物の含有量が過度に少ないと、相対的にエピスルフィド化合物などの他の組成の含有量が多くなり、未硬化の副生成物などが発生し、これによって硬化物である光学部材のガラス転移温度を低下させて黄色度(YI;Yellow Index)を高める問題がある。
【0049】
前記硬化性組成物に含まれる2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は下記化学式4および5で表される化合物より選ばれる少なくとも一つを含み得る。
【化5】
前記化学式4において、
およびRはそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
fおよびgはそれぞれ独立して1~7の整数であり、
hおよびiはそれぞれ独立して0~6の整数であり、
f+hは7以下であり、g+iは7以下であり、
【化6】
前記化学式5において、
ArおよびArはそれぞれ独立して1個以上の水酸基が置換された炭素数6~60のアリールであり、
およびR10はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、炭素数1~40のアルキル、炭素数1~40のアルコキシ、炭素数3~40のシクロアルキル、炭素数1~40のアルケニル、炭素数6~60のアリール、またはO、N、SiおよびSのうち1個以上を含む炭素数1~40のヘテロアリールであり、
mおよびnはそれぞれ独立して0~4の整数であり得る。
【0050】
具体的には、前記化学式4で表される2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は、2個のナフタレンが連結された骨格を有しており、それぞれのナフタレンに1個以上の水酸基が連結され得る。
【0051】
一方、化学式5で表される2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は、フルオレンの9位において1個以上の水酸基が置換されたアリール基で2個の置換された形態を示すことができる。
【0052】
前記化学式4または5で表される前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は、前記エピスルフィド化合物およびチオール化合物との硬化反応において、2個以上の水酸基がエピスルフィド化合物と開環重合反応して架橋が行われ、チオール化合物に比べて遅い反応速度、例えば、1/1,000の反応速度で開環重合反応が起きることによって硬化反応速度を制御することができる。また、前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物において、芳香環は脂肪族水酸基に比べて遅い反応速度、例えば、1/2の反応速度で開環重合反応が起きることによって硬化反応速度を制御できるので、硬化性組成物の混合後にも急速な硬化反応が起きることを防止して長期保管、例えば、0℃の温度条件で7日以上硬化反応が行われないようにすることができ、さらに、急速な硬化による脈理現象を防止することができる。
【0053】
また、前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は、芳香族官能基の共役(Conjugation)系によって硬化物の高屈折率を実現することができ、また、このような芳香族官能基によって、硬化組成物で前記芳香環化合物を含むことにより硫黄原子の含有量が減少しても、屈折率減少を最小化させることができ、さらに、前記硬化物のガラス転移温度(Tg)を増加させて機械的特性を向上させることができる。
【0054】
一方、前記化学式4において、RおよびRはそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、メチルまたはエチルであり得るが、これに限定されるものではない。
【0055】
また、fおよびgはそれぞれ独立して1または2であり得る。
【0056】
また、hおよびiはそれぞれ独立して0または1であり得る。
【0057】
また、前記化学式5において、ArおよびArはそれぞれ独立して1または2個の水酸基が置換されたフェニルまたはナフタレニルであり得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、RおよびR10はそれぞれ独立して重水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、ニトロ、アミノ、メチルまたはエチルであり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、mおよびnはそれぞれ独立して0または1であり得る。
【0060】
また、前記化学式4または5で表される化合物を単独で使用するか、あるいは2種以上を混合して使用することもできる。
【0061】
前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物は、例えば、下記化合物より選ばれた少なくとも一つを含み得る。
【化7】
【0062】
前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の含有量は、全体硬化性組成物100重量%に対して、0.1~10重量%、0.5~5重量%、または1~3重量%であり得る。前記2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の含有量が過度に多いと、硬化性組成物に十分に溶解されないか、或いは硬化後の屈折率が低下する問題があり、過度に少ないと硬化反応速度を制御できない問題がある。
【0063】
前記一実施形態による硬化性組成物は触媒をさらに含み得る。
【0064】
前記触媒は硬化性組成物の硬化反応を促進する役割をするものであれば、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミンなどのアミン化合物;アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0065】
前記触媒の含有量は、全体硬化性組成物100重量%に対して、0.001~10重量%、0.01~5重量%、または0.1~1重量%であり得る。前記触媒の含有量が過度に多いと、硬化反応が急速に進行され、過熱による硬化性組成物取り扱いの安全上の問題があり、長期保管が難しく、脈理現象が発生し得る。一方、触媒の含有量が過度に少ないと、未硬化によって光学および機械的物性が低下し得る。
【0066】
また、前記硬化性組成物は、この他にも、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料など、本発明が属する技術分野で、ディスプレイ用基板に特定機能を付与するために使われるその他の添加剤をさらに含むこともできる。
【0067】
また、前記硬化性組成物は長期保管が可能であり、特に、触媒が含まれた状態でも長期保管が可能である。また、急速な硬化によって発生する脈理現象を抑制することができる。具体的には、前記硬化性組成物は-5~0℃の温度で12時間維持された後、常温(25℃)で測定した粘度が4000cP以下、3000cP以下、2500cP以下、2000cP以下、1000cP以下、500cP以下、300cP以下、100~200cPであり得る。
【0068】
発明の他の実施形態によれば、エピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の硬化物を含み、前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1である光学部材を提供する。
【0069】
前記光学部材に含まれた前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3~9:1、7:3~8.5:1.5、または7:3~8:2であり得る。前記チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物の重量比は7:3未満であれば高屈折率を実現することが難しく、9:1を超えると脈理現象が発生し得る。
【0070】
その他、前記光学部材に含まれるエピスルフィド化合物、チオール化合物および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物、添加剤などについては、上述した硬化性組成物について説明したものに代わる。
【0071】
このような光学部材は、上述した硬化性組成物を硬化させる方法によって製造されることができる。具体的には、上述した硬化性組成物または前記硬化性組成物に各種添加剤を含む均一な組成物を製造し、前記組成物を、ガラス、金属、または高分子樹脂などの成分で製造されたモールドと樹脂性のガスケットを組み合わせた型枠の内部に注入し、加熱して硬化させることができる。この時、成形後最終的に製造された樹脂の取り出しを容易にするためにあらかじめモールドを離型処理したり、上述した組成物に離型剤をさらに添加して使用することもできる。
【0072】
硬化反応の温度は、使用する化合物の種類および含有量などによって変わるが、一般的に約50~約120℃、または約60~約100℃で行い、硬化時間は約0.1~約72時間、または約0.5~約24時間で行うことができる。
【0073】
硬化反応は、上述した所定の重合温度を一定時間の間維持する工程、昇温工程、および降温工程などを組み合わせて行うことができ、反応終了後、約50~約150℃、または約80~約120℃の温度条件で、約10分~約3時間で後処理して変形を防止することができる。
【0074】
重合後離型された光学部材は、以後、染色、コーティング、などの工程により多様な機能性を備えることもできる。
【0075】
前記他の実施形態による光学部材は、屈折率が1.65以上、1.650~1.800、1.700~1.800、または1.700~1.750であり得る。
【0076】
また、前記光学部材は、透過率、具体的には、厚さが1mmである時JIS K 7361に従って測定された透過率値が80%以上、80~99%、または85~90%で、非常に高い透過率を有することができる。
【0077】
また、前記光学部材は、ヘイズ、具体的には厚さが1mmである時JIS K 7136に従って測定されたヘイズ値が1%以下、0.01~1%、または0.01~0.5%で、非常に低いヘイズ値を有することができる。
【0078】
また、前記光学部材は、黄色度(YI;Yellow Index)、具体的にはASTM E313-1973に従って測定された黄色度が1~30、2~22、2.1~10、2.2~5、または2.3~4で、低い黄色度を示すことができる。
【0079】
前記他の実施形態による光学部材はウェアラブルデバイスに含まれ得、具体的には、ウェアラブルデバイスのレンズ用としてガラスまたは強化ガラスに代えて使われることができる。
【0080】
すなわち、前記光学部材はガラスと同様の高屈折特性を有しながらも、ガラスあるいは強化ガラスに比べて軽く、強度および硬度などの機械的物性に加え、前述したように光学的物性に優れるため、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスなどのようなウェアラブルデバイスのレンズとして使われることができる。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、長期保管が可能であり、急速な硬化による脈理現象を防止できる硬化性組成物を提供することができ、前記硬化性組成物の硬化物を含み、従来のレンズなどに使われるガラスあるいは強化ガラスに比べて軽く、強度および硬度に優れ、多様な色の実現が可能であり、高屈折率の実現が可能な光学部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたことに過ぎなく、発明の権利範囲はこれによって定まるものではない。
【0083】
実施例1
エピスルフィド化合物である下記70A 90g、チオール化合物である下記70B 9g、および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物である下記A1 1gを、20℃で1時間の間激しく混合した後、気孔大きさが1μmであるガラスフィルター(glass filter)を用いて濾過し、気孔大きさが0.45μmであるPVDFフィルター(PVDF filter)を用いてもう一度濾過を行った。その後、触媒としてN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン0.5gを添加し、5分間混合して硬化性組成物を製造した。
【0084】
横及び縦が10cmである、LCDガラス(LCD Glass)両側面に1mm厚さのスライドガラスを置いて、LCDガラス中央に上述した混合液約5gを塗布した後、他のLCDガラスで覆って、鋳型を準備した。これをオーブンに入れ、約60℃で約10時間、約90℃で約4時間の間硬化反応を行った。オーブンから取り出した後、LCDガラスを除去して平坦なプラスチック試験片(光学部材)を得た。プラスチック試験片の厚さは約1mmであり、このような厚さはミツトヨ社の厚み測定機(Model:ID-C112XBS)を用いて測定した。
【0085】
実施例2~8および比較例1~3
前記エピスルフィド化合物、チオール化合物、および2個以上の水酸基を含む芳香環化合物として下記表1に記載された化合物および含有量を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で硬化性組成物およびその硬化物であるプラスチック試験片(光学部材)を製造した。
【化8】
【0086】
【表1】
【0087】
物性評価
【0088】
1.光学特性(透過率、ヘイズおよび黄色度)の評価
前記試験片に対して、1mm基準厚さに硬化した硬化物の厚さ方向に、日本電色工業株式会社製のCOH-400分光計を用いて透過率、ヘイズ、および黄色度を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0089】
2.硫黄原子含有量の測定
前記試験片に対して元素分析法を用いて硫黄原子の含有量を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0090】
3.屈折率の測定
前記試験片に対して、Ellipso Technology社のspectroscopic ellipsometryを用いて532nm波長での屈折率値を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0091】
4.長期保管前後の粘度測定
前記硬化性組成物の製造直後、東機産業社のViscometer TV-22粘度計を用いて常温(25℃)で粘度を測定し、その結果を下記表2の[粘度-初期]に示した。その後、硬化性組成物を-5℃の温度で12時間維持した後、同様の方法で常温(25℃)で粘度を測定し、その結果を下記表2の[粘度-12時間後]に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
前記表2を参照すると、本願発明の実施例による硬化物を含む試験片は、透過率が非常に高く、ヘイズおよび黄色度値が低いながらも、相対的に高い屈折率を有することが分かる。また、本願発明の実施例による硬化性組成物は、12時間保管後でも硬化が起きないので、製造直後使用せずとも長期保管が可能であることが分かる。特に、実施例5および6の場合、12時間保管後でも粘度が500cP以下で非常に低いということを確認した。
【0094】
一方、前記比較例1~3の硬化性組成物の場合、12時間保管後いずれも硬化が起き、長期保管が不可能であることを確認した。そのため、比較例1~3の硬化性組成物をレンズなどに活用することが難しい問題があり、急速な硬化によって脈理現象が発生することが予測され得る。
【0095】
また、比較例4および5の硬化性組成物の場合、12時間保管後、高屈折レンズなどへの成形が不可能なほどに粘度が高くなるか硬化が起きることを確認した。そのため、比較例4および5の硬化性組成物をレンズなどに活用することが難しい問題があり、急速な硬化によって脈理現象が発生することが予測され得る。
【0096】
さらに、比較例6および7の硬化性組成物の場合、硬化物を含む試験片のヘイズおよび黄色度が高く、また、屈折率も1.70未満で低いためウェアラブルデバイスの高屈折レンズ形成用組成物として活用するには適しないことを確認した。