(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20240820BHJP
C08F 20/06 20060101ALI20240820BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240820BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240820BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240820BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240820BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CEY
C08F20/06
C08L1/02
C08L33/04
C08K7/02
B01J20/26 D
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2022574596
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2021095105
(87)【国際公開番号】W WO2022108430
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0154962
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158413
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジヘ・リュ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518815(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051734(WO,A1)
【文献】特開2019-065414(JP,A)
【文献】特開2019-001872(JP,A)
【文献】特開2020-059956(JP,A)
【文献】特表2012-512739(JP,A)
【文献】特開2019-006899(JP,A)
【文献】特開平06-184320(JP,A)
【文献】セルロースナノファイバー1本の強度解析,科学研究費助成事業 研究成果報告書,日本,2017年06月17日,第1頁~第4頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28
C08J99/00
C08F2/00-2/60
C08F251/00-283/00
C08F283/02-289/00
C08F291/00-297/08
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00
C08F301/00
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および溶媒を混合して第1単量体混合物を製造する段階;
b)前記第1単量体混合物を剪断混合しながら、幅が3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであり、引張強度が2,000MPa以上のナノセルロース繊維および界面活性剤を投入して第2単量体混合物を製造する段階;
c)前記第2単量体混合物に重合開始剤を投入して第3単量体混合物を製造する段階;
d)前記第3単量体混合物を重合して含水ゲル状重合体を製造する段階;
e)前記含水ゲル状重合体をチョッピングする段階;
f)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を製造する段階;および
g)表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階;を含
み、
b)段階の剪断混合は剪断速度6s
-1
以上で行われる、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記ナノセルロース繊維は引張強度が3,000MPa~20,000MPaである、請求項
1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ナノセルロース繊維は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.001~10重量部で含まれる、請求項1
または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は炭素数10~30の脂肪酸ナトリウム、スルホン酸塩、またはソルビタンエステルである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~1重量部で含まれる、請求項1から
4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粒子;
前記ベース樹脂粒子の表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層;および
前記ベース樹脂
粒子に混入された、幅が3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであり、引張強度が2,000MPa以上のナノセルロース繊維を含み、
ゲル強度が10,000Pa以上である、高吸水性樹脂。
【請求項7】
前記高吸水性樹脂は、高吸水性樹脂100重量%中のナノセルロース繊維の含有量が0.0001~10重量%である、請求項
6に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
EDANA法WSP 241.3に従って測定した遠心分離保水能(CRC)が24~45g/gである、請求項
6または
7に記載の高吸水性樹脂。
【請求項9】
EDANA法WSP 242.3に従って測定した0.7psiの加圧吸収能(AUL)が23~40g/gである、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
JIS K 7224に従って測定した吸収速度(vortex time)が55秒以下である、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項11】
0.3psiの吸引力が18g/g以上である、請求項
6から
10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年11月18日付韓国特許出願第10-2020-0154962号および2021年11月17日付韓国特許出願第10-2021-0158413号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は優れた吸収性能を維持しながらも、初期吸収速度が向上した高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer,SAP)とは、自重の5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、生理用品として実用化され始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品の他に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出ないなどの優れた吸収特性を示す必要がある。また、最近では水分など目標溶液をより迅速に吸収、および貯蔵する吸収速度がさらに求められている。基本的に水系溶液に対する高吸水性樹脂の吸収は樹脂表面で起きるので、吸収速度を向上させるためには高吸水性樹脂の表面積を広げる方法が考慮され得る。そのため、以前から高吸水性樹脂の粒度を減少させるか、多孔性構造を形成する方法などが吸収速度を高めるための方法として考慮された。
【0005】
一例として、高吸水性樹脂に多孔性構造を形成するために発泡剤を添加して高吸水性樹脂を製造する方法が提案された。しかし、発泡剤の含有量が高いほど吸収速度は一定水準まで改善されるが、過多な発泡によって高吸水性樹脂の微粉発生量が増加して、ゲル強度が低下する問題がある。また、高吸水性樹脂は粒度が減少することにより基本的な吸収特性が減少する傾向がある。そこで、従来に知られている方法としては基本的な吸収能を維持しながらも吸収速度を向上させることに限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記のような従来技術の問題を解決するためのものであり、保水能などの基本的な吸収性能に優れ、改善されたゲル強度および初期吸収速度を示す高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明は、
a)水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および溶媒を混合して第1単量体混合物を製造する段階;
b)前記第1単量体混合物を剪断混合しながら、幅が3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであり、引張強度が2,000MPa以上のナノセルロース繊維および界面活性剤を投入して第2単量体混合物を製造する段階;
c)前記第2単量体混合物に重合開始剤を投入して第3単量体混合物を製造する段階;
d)前記第3単量体混合物を重合して含水ゲル状重合体を製造する段階;
e)前記含水ゲル状重合体をチョッピングする段階;
f)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を製造する段階;および
g)表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階;を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粒子;
前記ベース樹脂粒子の表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層;および
前記ベース樹脂に混入された、幅が3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであり、引張強度が2,000MPa以上のナノセルロース繊維を含み、
ゲル強度が10,000Pa以上である、高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による高吸水性樹脂の製造方法によれば、遠心分離保水能など基本的な吸収性能に優れながらも、改善されたゲル強度および初期吸収速度を示す高吸水性樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0011】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物なし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0012】
本明細書で、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された重合体を乾燥および粉砕して粒子(particle)またはパウダー(powder)形態にしたものであり、表面改質または表面架橋が行われていない状態の重合体を意味する。
【0013】
以下、本発明の高吸水性樹脂の製造方法についてより詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法は、
a)水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および溶媒を混合して第1単量体混合物を製造する段階;
b)前記第1単量体混合物を剪断混合しながら、幅が3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであり、引張強度が2,000MPa以上のナノセルロース繊維および界面活性剤を投入して第2単量体混合物を製造する段階;
c)前記第2単量体混合物に重合開始剤を投入して第3単量体混合物を製造する段階;
d)前記第3単量体混合物を重合して含水ゲル状重合体を製造する段階;
e)前記含水ゲル状重合体をチョッピングする段階;
f)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を製造する段階;および
g)表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する段階;を含む。
【0015】
以下、本発明の各段階をより詳細に説明する。
【0016】
先に、a)水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、および溶媒を混合して第1単量体混合物を製造する。
【0017】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体を特に制限なく使用することができる。ここにはアニオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選ばれるいずれか一つ以上の単量体を使用することができる。
【0018】
具体的には(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアニオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選ばれたいずれか一つ以上を使用することができる。
【0019】
さらに好ましくはアクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を使用できるが、このような単量体を使用してより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能である。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として使用する場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)などの塩基性化合物で中和させて使用することができる。
【0020】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む第3単量体混合物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%であり得、重合時間および反応条件などを考慮した適切な濃度であり得る。ただし、前記単量体の濃度が過度に低いと高吸水性樹脂の収率が低く経済性に問題が生じ得、逆に濃度が過度に高いと単量体の一部が析出されるか重合された含水ゲル状重合体の粉砕時の粉砕効率が低く現れるなど工程上問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0021】
前記内部架橋剤としては前記水溶性エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有し、かつエチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解によって形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0022】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタアクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選ばれた一つ以上を使用することができる。
【0023】
また、前記内部架橋剤としてはエポキシ基を1以上含むエポキシ化合物を使用することができる。この時、前記エポキシ化合物はエポキシ基の他に水溶性エチレン系不飽和単量体と反応できる官能基を1以上さらに含むこともできる。具体的な例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの多価エポキシ系化合物が挙げられる。
【0024】
このような内部架橋剤は2以上組み合わせて使用することができ、水溶性エチレン系不飽和単量体100重量%に対して約0.01~約0.5重量%の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。
【0025】
前記溶媒は上述した成分を溶解できれば、その構成の限定なく使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどより選ばれた1種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、水を溶媒として使用することができる。
【0026】
前記溶媒はa)段階だけでなく、b)およびc)の第2,第3単量体混合物を製造する段階で追加で投入されることができる。第1~第3単量体混合物に添加される原料物質、すなわち、水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤、ナノセルロース繊維、界面活性剤、重合開始剤、およびその他添加剤は前記溶媒と混合された溶液の形態で準備されることができ、このような溶液相の原料が第1~第3単量体混合物の製造時に投入されることができる。最終的に製造された第3単量体混合物中の溶媒の含有量は、前記原料物質を除いた残量で含まれ得る。
【0027】
次に、b)前記第1単量体混合物を剪断混合しながら、界面活性剤およびナノセルロース繊維を投入して第2単量体混合物を製造する。
【0028】
前記ナノセルロース繊維は高吸水性樹脂の製造時に添加され、高吸水性樹脂粒子の機械的強度を向上させて粒子内の多孔性構造を形成する。また、高吸水性樹脂の製造時に添加されたナノセルロース繊維は高吸水性樹脂粒子に含まれた架橋重合体の架橋構造内部および外部に均一に混入され、毛細管作用により周囲の水分を迅速に吸収して高吸水性樹脂粒子内部に伝達する。このように多孔性構造および混入されたナノセルロース繊維によって、本発明により製造された高吸水性樹脂は保水能などの基本的な吸収物性に優れるだけでなく、向上した初期吸収速度を示すことができる。
【0029】
前記ナノセルロース繊維はセルロース鎖が束をなして密に結合したナノサイズの棒状の繊維を意味する。この時、繊維が「ナノサイズ」とは幅が約100nm以下を満たすものを意味する。
【0030】
本発明で、前記ナノセルロース繊維としては幅が50nm以下であるものを使用する。好ましくは、前記ナノセルロース繊維としては3nm~50nmであり、長さが1μm~5μmであるものを使用する。
【0031】
仮に、ナノセルロース繊維の幅が3nm未満であるか、長さが1μm未満の場合、粉砕過程でナノセルロース繊維が高吸水性樹脂と分離、または剥離される問題があり得る。
【0032】
また、ナノセルロース繊維の幅が50nmを超えるか、長さが5μmを超えると高吸水性樹脂内に均一な分散が難しく、互いに固まる現象が現れ得るので、前記範囲を満たすことが好ましい。前記セルロース繊維の幅および長さは光学または電子顕微鏡を用いて測定されることができる。具体的には、繊維100個を無作為に選択して光学または電子顕微鏡により個別繊維の幅および長さを測定し、その平均値を導き出してナノセルロース繊維の幅と長さを確認することができる。
【0033】
具体的には、前記ナノセルロース繊維は幅が5nm以上であり、かつ40nm以下、または35nm以下のものであり得る。また、前記ナノセルロース繊維は長さが1.2μm以上、または1.5μm以上であり、かつ4.5μm以下、または4.0μm以下であり得る。
【0034】
前記ナノセルロース繊維は機械的な強度に優れ、高吸水性樹脂の粒子強度およびゲル強度を向上させることができる。具体的には、前記ナノセルロース繊維は引張強度が2,000MPa以上、または3,000MPa以上、または4,000MPa以上、または6,000MPa以上であり、かつ20,000MPa以下、17,000MPa以下、または15,000MPa以下の範囲であり得る。ナノセルロース繊維の引張強度が2,000MPa未満の場合、粒子強度およびゲル強度の向上効果を確保できず、20,000MPaを超える場合、高吸水性樹脂の製造工程における取り扱いが難しい問題があり得る。前記ナノセルロース繊維の引張強度は、ASTM C1557-14(Standard Test Method for Tensile Strength and Young’s Modulus of Fibers)に従って測定することができる。
【0035】
前記ナノセルロース繊維は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.001重量部以上、0.01重量部以上、または0.1重量部以上であり、かつ10重量部以下、または5重量部以下、または1重量部以下で投入されることができる。
【0036】
ナノセルロース繊維の投入量が前記範囲を満たす時、製造される高吸水性樹脂100重量%中のナノセルロース繊維の含有量が0.0001~10重量%範囲であり得る。
【0037】
仮に、高吸水性樹脂100重量%中のナノセルロース繊維の含有量が0.0001重量%未満であれば多孔性構造が生成されにくく、ゲル強度および高吸水性樹脂粒子の強度が不充分であり、吸収速度向上効果を確保することが難しい。また、高吸水性樹脂100重量%中のナノセルロース繊維の含有量が10重量%を超えるとナノセルロース繊維の固まる現象が発生し、高吸水性樹脂内に多孔性構造が形成されにくいので好ましくない。
【0038】
一方、第1単量体混合物にナノセルロース繊維を投入するとき、ナノセルロース繊維が均一に分散できるように界面活性剤を共に投入する。
【0039】
前記界面活性剤は炭素数10以上、好ましくは炭素数10~50のアニオン系、カチオン系、両性系、または非イオン性界面活性剤を単独でまたは組み合わせて使用することができる。好ましくは、前記界面活性剤は炭素数10~30の脂肪酸ナトリウム、スルホン酸塩、またはソルビタンエステルなどの非イオン性界面活性剤を使用することができ、より好ましくは、Span(登録商標) 20(モノラウリン酸ソルビタン、sorbitan monolaurate)、またはSpan(登録商標) 80(モノオレイン酸ソルビタン、sorbitan monooleate)などのソルビタンエステル化合物を使用することができる。このような非イオン性界面活性剤は上述した溶媒を使用する単量体混合物に対して分散性が高くて使用が容易で好ましい。
【0040】
前記効果を確保するために、界面活性剤は水溶性エチレン系不飽和単量体100重量部に対して0.01~1重量部、または0.05~0.5重量部で使用することができる。
【0041】
本発明の一実施形態では前記ナノセルロース繊維および界面活性剤の投入時、ナノセルロースがより均一に分散できるように高剪断混合を実施する。
【0042】
前記高剪断混合は剪断速度6s-1以上、7s-1以上、または10s-1以上であり、かつ30s-1以下、または20s-1以下の機械的力を加えて混合することを意味し、前記高剪断混合は攪拌軸による回転や圧力差による混合、流速による混合などの方法により行われる。本発明の一実施形態によれば、ホモジナイザーを用いた高速攪拌で高剪断混合が行われるが、高剪断混合方法および使用機器はこれに限定されない。
【0043】
上記のように高剪断混合中にナノセルロース繊維を投入して分散させると、ナノセルロース繊維が固まらず、均一に単量体混合物中に分布され得、そのため、重合時に重合体内に微細気孔を形成することができ、製造される高吸水性樹脂がより均一な物性を示すことができる。
【0044】
次に、c)第2単量体混合物に重合開始剤を投入して第3単量体混合物を製造する。
【0045】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法で重合時に使用される重合開始剤は高吸水性樹脂の製造に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。
【0046】
具体的には、前記重合開始剤は重合方法によって熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0047】
前記光重合開始剤は紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用することができる。
【0048】
前記光重合開始剤としては例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl dimethyl ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれる一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p.115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0049】
前記光重合開始剤は第3単量体混合物中の約0.01~約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0050】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選ばれる一つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」,p.203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0051】
前記熱重合開始剤は前記第3単量体混合物中の約0.001~約0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起きず、熱重合開始剤の追加による効果がわずかであり、熱重合開始剤の濃度が過度に高いと高吸水性樹脂の分子量が小さくて物性が不均一になる。
【0052】
一方、前記第1~第3単量体混合物の製造時、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0053】
次に、d)前記第3単量体混合物を重合して含水ゲル状重合体を製造する。
【0054】
前記第3単量体混合物の重合は通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定はない。
【0055】
具体的には、重合方法は重合エネルギ源によって大きく熱重合および光重合に分けられ、通常熱重合を行う場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行い、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行うが、上述した重合方法は一例であり、本発明は上述した重合方法に限定されない。
【0056】
一例として、前述したように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合を行って得られた含水ゲル状重合体は反応器に備えられた攪拌軸の形態によって、反応器排出口に排出される含水ゲル状重合体は数センチメートルないし数ミリメートル形態であり得る。具体的には、得られる含水ゲル状重合体の大きさは注入される単量体混合物の濃度および注入速度などによって多様に現れるが、通常重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0057】
また、前述したように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル状重合体の形態はベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは注入される単量体混合物の濃度および注入速度に応じて変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体混合物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体混合物を供給する場合、生産効率が低いため好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合は過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにわたって均一に起きない。
【0058】
このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は約40~約80重量%であり得る。一方、本明細書全体における「含水率」は、全体含水ゲル状重合体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は常温で約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0059】
次に、e)前記製造された含水ゲル状重合体をチョッピングする(chopping)段階を行う。
【0060】
この時、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)およびディスクカッター(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選ばれるいずれか一つを含み得るが、上述した例に限定されない。
【0061】
この時、e)段階は含水ゲル状重合体の粒径が約2~約20mmになるように行われ得る。
【0062】
粒径を2mm未満に粗粉砕するのは含水ゲル状重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れ得る。一方、粒径20mm超に粗粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかである。
【0063】
好ましくは、e)段階は含水ゲル状重合体の粒度が1~15mm範囲になるように行われる。前記粒度範囲で、乾燥段階の効率が増大することができる。含水ゲル状重合体の粒度が1mm未満になるように粉砕するのは含水ゲル状重合体の高い含水率のため技術的困難性があり、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れ得る。含水ゲル状重合体の粒度が15mmを超える場合は乾燥段階の効率が落ちる。
【0064】
次に、f)前記混合物を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂を製造する。
【0065】
この時、前記乾燥段階の乾燥温度は約150~約200℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が200℃を超える場合、過度に重合体表面のみ乾燥され、後に行われる粉砕工程で微粉が発生し得、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましい前記乾燥は約150~約200℃の温度であり、さらに好ましくは約160~約180℃の温度で行われる。
【0066】
一方、乾燥時間の場合は工程効率などを考慮して、約20分~約1時間の間行われるが、これに限定されない。
【0067】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常用いられる方法であれば、その構成の限定なく選択して用いることができる。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は約0.1~約10重量%であり得る。
【0068】
次に、前記乾燥段階を経て得られた乾燥された混合物を粉砕する。
【0069】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用できるが、上述した例に本発明が限定されるものではない。
【0070】
このような粉砕段階以後に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、一般的に粉砕後に得られる重合体粉末を粒径によって分級する。好ましくは粒径が約150μm未満である粒子、約150~約850μmである粒子、粒径が850μmを超える粒子で分級する。
【0071】
次に、g)表面架橋剤の存在下で前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成する表面架橋段階を行う。
【0072】
前記表面架橋段階は表面架橋剤の存在下でベース樹脂粒子表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕された重合体粒子の表面には表面架橋層(表面改質層)が形成される。
【0073】
一般的に、表面架橋剤は高吸水性樹脂粒子の表面に塗布されるので表面架橋反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起き、これは粒子内部には実質的に影響を及ぼさないが、粒子の表面上での架橋結合性は改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂粒子は内部でよりも表面付近でより高い架橋結合度を有する。
【0074】
前記表面架橋剤としては従来から高吸水性樹脂の製造に使用された表面架橋剤を特に制限なくすべて使用することができる。そのより具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選ばれた1種以上のポリオール;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選ばれた1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノン化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;あるいは環状ウレア化合物;などが挙げられる。
【0075】
このような表面架橋剤はベース樹脂100重量部に対して約0.01~5重量部の含有量で使用することができる。表面架橋剤の含有量の範囲を上述した範囲に調節して優れた吸収諸般物性を示す高吸水性樹脂を提供することができる。
【0076】
前記表面架橋剤は前記ベース樹脂と乾式で混合されるか、表面架橋溶液の形態で投入されることができる。前記表面架橋溶液の溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロピレングリコールおよびこれらの組み合わせが使用可能であるが、これに制限されるものではない。
【0077】
一方、前記表面架橋段階では上述した表面架橋剤以外に、必要に応じて多価金属塩、無機充填剤、増粘剤などをさらに含むことができる。このような添加剤はベース樹脂と乾式で混合されるか、表面架橋溶液に添加された形態で混合されることができる。
【0078】
前記多価金属塩としては例えば、アルミニウム塩、より具体的にはアルミニウムの硫酸塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩および塩酸塩からなる群より選ばれた1種以上をさらに含むことができる。
【0079】
このような多価金属塩は追加で使用することにより、一実施形態の方法で製造された高吸水性樹脂の通液性などをより向上させることができる。このような多価金属塩は前記表面架橋剤とともに表面架橋溶液に添加されることができ、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~4重量部の含有量で使用することができる。
【0080】
前記無機充填剤としてはシリカ、アルミニウムオキシド、またはシリケートを含むことができる。前記無機充填剤は前記ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、0.01~0.5重量部で含まれ得る。このような無機充填剤は潤滑剤として作用して高吸水性樹脂表面に表面架橋溶液の塗布効率を向上させることができ、製造された高吸水性樹脂の通液性などをより向上させることができる。
【0081】
前記表面架橋段階で増粘剤を追加で含むことができる。このように増粘剤の存在下でベース樹脂粉末の表面を追加で架橋すると粉砕後にも物性低下を最小化することができる。具体的には、前記増粘剤としては多糖類およびヒドロキシ含有高分子より選ばれた1種以上を使用することができる。前記多糖類としてはガム系増粘剤とセルロース系増粘剤などを使用することができる。前記ガム系増粘剤の具体的な例としては、キサンタンガム(xanthan gum)、アラビアガム(arabic gum)、カラヤガム(karaya gum)、トラガントガム(tragacanth gum)、ガティガム(ghatti gum)、グアガム(guar gum)、ローカストビーンガム(locust bean gum)およびサイリウムシードガム(psyllium seed gum)などが挙げられ、前記セルロース系増粘剤の具体的な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。一方、前記ヒドロキシ含有高分子の具体的な例としてはポリエチレングリコールおよびポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0082】
前記表面架橋反応は、粉砕された含水ゲル状重合体、表面架橋剤および繊維の混合物に熱を加えて昇温することによって行われることができる。
【0083】
前記表面架橋段階は185℃以上、好ましくは185~約230℃の温度で約10~約90分、好ましくは約20~約70分間加熱させることによって行われる。架橋反応温度が185℃未満であるか反応時間が過度に短い場合、表面架橋剤が含水ゲル状重合体と充分に反応できない問題があり得、230℃を超えるか反応時間が過度に長い場合、含水ゲル状重合体が分解されて物性低下の問題が発生し得る。
【0084】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを使用できるが、本発明はこれに限定されるものではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、上述した例に本発明が限定されるものではない。
【0085】
前記のような表面架橋反応段階によって、前記重合体の表面には表面改質層が形成されることができる。
【0086】
前記本発明の製造方法で製造される高吸水性樹脂は多孔性構造を有しながらも、高いゲル強度を示す。そこで、本発明により製造された高吸水性樹脂は基本的な吸収能に優れながらもゲル強度および粒子強度に優れ、顕著に向上した初期吸収速度を示す。
【0087】
そこで、本発明の一実施形態によれば、水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粒子;前記ベース樹脂粒子の表面に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層;および前記ベース樹脂に混入された、幅が50nm以下であるナノセルロース繊維を含む高吸水性樹脂が提供される。
【0088】
前記高吸水性樹脂はベース樹脂に混入されたナノセルロース繊維によって、既存の高吸水性樹脂と比較して向上したゲル強度を示す。具体的には前記高吸水性樹脂はゲル強度が10,000Pa以上、または10,200Pa以上であり、かつ20,000Pa以下であり得る。高吸水性樹脂のゲル強度測定法は下記の実施例で具体的に説明する。
【0089】
前記高吸水性樹脂100重量%中のナノセルロース繊維の含有量は0.0001重量%以上、0.0005重量%以上、または0.001重量%以上であり、かつ10重量%以下、5重量%以下、または1重量%以下であり得る。
【0090】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3に従って測定した遠心分離保水能(CRC)が約25g/g以上、28g/g以上、または約30g/g以上であり、かつ約45g/g以下、40g/g以下、または約35g/g以下の範囲を有することができる。
【0091】
前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP 242.3に従って測定した0.7psiの加圧吸収能(AUL)が20g/g以上、または23g/g以上であり、かつ40g/g以下、または30g/g以下であり得る。
【0092】
前記高吸水性樹脂は日本産業規格(JIS K 7224)に従って測定した吸収速度(vortex time)が45秒以下、40秒以下、または35秒以下であり得る。前記吸収速度は低いほど優れるものであり、その下限値は制限されないが、一例として10秒以上、または20秒以上であり得る。
【0093】
前記高吸水性樹脂は0.3psi吸引力が18g/g以上、20g/g以上、または21g/g以上であり、かつ30g/g以下であり得る。前記0.3psiの吸引力測定法は下記の実施例で具体化することができる。
【0094】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。また、以下の実施例、比較例で含有量を示す「%」および「部」は特記しない限り、質量基準である。
【0095】
[実施例]
実施例1
アクリル酸、苛性ソーダおよび架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5重量%(アクリル酸100重量%に対して)を含む中和度72%、単量体濃度が43重量%である第1単量体混合物を製造した。
【0096】
前記第1単量体混合物1kgをホモジナイザー(IKA社、1500rpm、剪断速度10s-1)で混合しながら、非イオン性界面活性剤としてSpan20 0.3gおよびナノセルロース繊維(幅5nm、長さ3μm、引張強度10,000MPa)が0.3%濃度で含まれた水分散液30gを投入して5分間混合して第2単量体混合物を製造した。
【0097】
前記第2単量体混合物を継続して攪拌しながら、0.20%アスコルビン酸溶液31.0g、1.1%過硫酸ナトリウム溶液33g、0.16%過酸化水素溶液32gを順次投入し混合して第3単量体混合物を製造した。
【0098】
前記第3単量体混合物を、重合と同時にニーディングができる重合器の供給部を介して投入して重合を実施した。この時、重合器の温度は900℃に維持した。全体重合時間は30分間実施し、最終形成された重合体の含水率は51%であった。
【0099】
次に、前記含水ゲル重合体に対して190℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル粉砕機で粉砕した。その次に、シーブ(sieve)を用いて平均粒径が150μm未満である重合体と平均粒径が150μm~850μmである重合体を分級した。前記分級された粒度150μm~850μmの重合体をベース樹脂とした。
【0100】
その後、前記ベース樹脂に表面処理溶液(ベース樹脂100重量%に対してエチレンカーボネート1.0重量%、水3.5重量%、プロピレングリコール0.8重量%)を噴射し、190~210℃の温度で40分間ベース樹脂の表面架橋反応を行った。
【0101】
その後、55℃まで自然冷却して、乾燥した後、シーブ(sieve)を用いて平均粒径大きさが150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の粒径150μm以下粒子の含有量は2%未満であった。
【0102】
実施例2
ナノセルロース繊維0.3%水分散液の投入量を60gに増量したことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0103】
実施例3
第1単量体混合物にナノセルロース繊維および界面活性剤を投入するとき、ホモジナイザーの剪断速度を20s-1にしたことを除いては実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0104】
比較例1
アクリル酸、苛性ソーダおよび架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5重量%(アクリル酸100重量%に対して)を含む中和度72%、単量体濃度が43重量%である第1単量体混合物を製造した。
【0105】
前記第1単量体混合物1kgに、0.20%アスコルビン酸溶液31.0g、1.1%過硫酸ナトリウム溶液33g、0.16%過酸化水素溶液32gを順次投入し混合して第2単量体混合物を製造した。前記第2単量体混合物を、重合と同時にニーディングが可能な重合器の供給部を介して投入して重合を実施した。この時、重合器の温度は900℃に維持した。全体重合時間は30分間実施し、最終形成された重合体の含水率は51%であった。
【0106】
次に、前記含水ゲル重合体に対して190℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル粉砕機で粉砕した。その次に、シーブ(sieve)を用いて平均粒径が150μm未満である重合体と平均粒径が150μm~850μmである重合体を分級した。前記分級された粒度150μm~850μmの重合体をベース樹脂とした。
【0107】
その後、前記ベース樹脂に表面処理溶液(ベース樹脂に対してエチレンカーボネート1.0重量%、水3.5重量%、プロピレングリコール0.8重量%)を噴射し、190~210℃の温度で40分間ベース樹脂の表面架橋反応を行った。
【0108】
その後、55℃まで自然冷却して、乾燥した後、シーブ(sieve)を用いて平均粒径が150~850μmである表面処理された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の粒径150μm以下粒子の含有量は2%未満であった。
【0109】
比較例2
第1単量体混合物にナノセルロース繊維および界面活性剤を投入するときホモジナイザーを用いた高剪断混合を実施しなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0110】
比較例3
幅100nm、長さ3μm、引張強度10,000MPaのナノセルロース繊維を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0111】
比較例4
幅5nm、長さ7μm、引張強度10,000MPaのナノセルロース繊維を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0112】
比較例5
幅5nm、長さ3μm、引張強度1,000MPaのナノセルロース繊維を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0113】
実験例:高吸水性樹脂の物性評価
前記各実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して下記方法で物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0114】
(1)遠心分離保水能(CRC, Centrifugal Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3に従って測定した。
【0115】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得た樹脂で、#40-50のふるいで分級した樹脂を得た。このような樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を用いず、同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次の数式1によりCRC(g/g)を算出した。
【0116】
[数式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0117】
(2)0.7psi加圧吸収能(0.7AUL, Absorbency under Load)
各樹脂の0.7psiの加圧吸収能を、EDANA法WSP 242.3に従って測定した。加圧吸収能測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級分を使用した。
【0118】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400mesh金網を取り付けた。常温および湿度50%の条件下で金網上に吸水性樹脂W3(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さくて円筒の内壁との間隙がなく上下動きの妨げを受けないようにした。この時、前記装置の重量W4(g)を測定した。
【0119】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間の間吸収させた。1時間後測定装置を持ち上げて、その重量W5(g)を測定した。
【0120】
得られた各質量を用いて次の数式2により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0121】
[数式2]
0.7AUP(g/g)=[W5(g)-W4(g)]/W3(g)
【0122】
(3)吸収速度(vortex time、秒)
JIS K 7224標準に従って測定した。より具体的には、25℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れ、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消えるまでの時間を秒単位で測定して算出した。
【0123】
(4)0.3psi加圧吸引力
実施例および比較例の0.3psi加圧吸引力は韓国公開特許第10-2016-0147283号の
図1に示す測定装置(X)を用いてEDANA法WSP 242.3を変形した下記の方法で測定した。
【0124】
測定装置(X)はビュレット部1、導管2、測定台3、測定台3上に置かれた測定部4からなっている。ビュレット部1は、ビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、空気導入管11の上部はコック13が取り付けられている。ビュレット部1から測定台3までは、導管2が取り付けられており、導管2の直径は10mmである。測定台3の中央部には、直径3mmの穴が開いており、導管2が連結されている。測定部4は、円筒40と、この円筒40の底部に貼着されたナイロンメッシュ41と、重り42を備えている。円筒40の内径は、2.46cmである。ナイロンメッシュ41は、325メッシュ(目開き45μm)で形成されている。そして、ナイロンメッシュ41の上に所定量の高吸水性樹脂5が均一に散布されるようになっている。前記重り42は、高吸水性樹脂5の上に置かれ、高吸水性樹脂5に対して0.3psiの荷重を均一に加えることができるようになっている。
【0125】
前記円筒40のナイロンメッシュ41の上に0.16g(±0.02g)の高吸水性樹脂5を均一に撒布して、この高吸水性樹脂5の上に重り42を配置した。測定部4は、その中心部が測定台3中心部の導管口に一致するようにした。
【0126】
一方、ビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)をビュレット10の上部から入れ、空気導入管11の位置(高さ)が測定台3、上部より5cm低いように測定台3の高さを調整した。
【0127】
コック12とコック13を同時に開けて高吸水性樹脂5の吸水を開始して、吸水開始から、60分間経過後における高吸水性樹脂の0.3psi荷重下での生理食塩水の吸引力を、次の数式3により求めた。
【0128】
[数式3]
0.3吸引力(g/g)=(W7(g)-W6(g))/高吸水性樹脂の質量(0.16(g))
【0129】
前記数式3において、
W6は吸水開始前の測定部4の質量(すなわち、高吸水性樹脂(0.16g)+円筒40+ナイロンメッシュ41+重り42の総質量)であり、
W7は吸水開始時点から60分経過後の測定部4の質量である。
【0130】
(5)ゲル強度
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、水平方向ゲル強度(Gel Strength)を測定した。
【0131】
先に、実施例および比較例の高吸水性樹脂試料(30~50Mesh)をふるいで濾して0.5gを称量した。称量した試料を生理食塩水50gに1時間の間十分に膨潤させた。その後、吸収されなかった溶媒はアスピレータ(aspirator)を用いて4分間除去して、表面に付いた溶媒は濾過紙にまんべんなく分布させて1回拭き取った。
【0132】
膨潤された高吸水性樹脂試料2.5gをレオメータ(Rheometer)と2個の平行板(直径25mm、下部に2mm程度のサンプルが抜け出ないようにする壁がある)の間に置いて、二つの平行板の間の間隔を1mmに調節した。この時、膨潤された高吸水性樹脂試料が平行板面にすべて接触するように約3Nの力で加圧して前記平行板の間の間隔を調節した。
【0133】
前記レオメータを用いて10rad/sの振動数(Oscilation frequency)で、剪断変形を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認した。一般的に膨潤された高吸水性樹脂試料で、剪断変形0.1%は前記線状粘弾性状態の区間内にある。
【0134】
一定の10rad/sの振動数(Oscilation frequency)で、線状粘弾性状態区間の剪断変形値で60秒間膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定した。この時、得られた貯蔵弾性率値を平均して、水平方向ゲル強度を求めた。参考までに、損失弾性率は貯蔵弾性率に比べて非常に小さい値で測定される。
【0135】
【0136】
前記表1を参照すると、実施例1~3の高吸水性樹脂は遠心分離保水能、加圧吸収能のような基本的な吸収物性に優れながらも、比較例に比べて顕著に向上した吸収速度および加圧下吸引力を示すことを確認することができる。これはナノセルロース繊維によって形成された多孔性構造および毛細管現象による吸収力向上の結果と見ることができる。また、実施例1~3の高吸水性樹脂はベース樹脂に混入されたナノセルロース繊維によって機械的強度が向上して、ゲル強度に優れることを確認することができる。