(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】多層素材の物性予測システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023518854
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 KR2022012494
(87)【国際公開番号】W WO2023027444
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113913
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138918
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0086176
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ナム・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ダム・ヒョク・イム
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-141920(JP,A)
【文献】特開2001-104522(JP,A)
【文献】特開2015-182393(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層(k)の弾性係数(E
k)、ポアソン比(ν
k)、せん断係数(G
k)、厚さ(Z
k)、積層角度(θ
k)、および多層素材の総厚さ(h)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された入力値を適用して、多層素材の物性を算出する制御部と、
前記制御部に連結されているディスプレイと、
前記制御部に連結されている保存部と、を含み、
前記制御部は、
入力された各層(k)の弾性係数(E
k
)、ポアソン比(ν
k
)およびせん断係数(G
k
)のうちいずれか1つ以上を適用して、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
)を算出し、
前記剛性マトリクス([Q]
k
)に各層(k)の積層角度(θ
k
)を反映して、各層(k)の剛性マトリクスを再設定し、
各層(k)の厚さ(Z
k
)情報を伝達されて再設定された剛性マトリクスの値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y
、[B]
x,y
、[D]
x,y
)を算出し、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y
、[B]
x,y
、[D]
x,y
)に対する逆行列([a]
x,y
、[b]
x,y
、[c]
x,y
、[d]
x,y
)を設定し、
多層素材の総厚さhと前記逆行列([a]
x,y
、[b]
x,y
、[c]
x,y
、[d]
x,y
)の値を用いて 多層素材の弾性係数(/E
x,y
)、せん断係数(/G
x,y
)およびポアソン比(/ν
x,y
)のうちいずれか1つ以上を算出する、多層素材の物性予測システム。
【請求項2】
前記入力部に入力される入力値は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E
k
1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν
k
1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G
k
1,2)、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)(x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味する)、および
各層(k)の厚さ(Z
k)のうちいずれか1つ以上を含み、
前記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の弾性係数(/E
x,y)、せん断係数(/G
x,y)およびポアソン比(/ν
x,y)のうちいずれか1つ以上を算出する、請求項1に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記弾性係数(E
k
1,2)、ポアソン比(ν
k
1,2)、せん断係数(G
k
1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q]
k
1,2)を算出し、
前記剛性マトリクス([Q]
k
1,2)に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)を再設定し、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクスの値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)を算出し、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対する逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を設定し、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(/E
x,y)、せん断係数(/G
x,y)、ポアソン比(/ν
x,y)を算出する、請求項2に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項4】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層(k)の弾性係数(E
k
)、ポアソン比(ν
k
)、せん断係数(G
k
)、厚さ(Z
k
)、積層角度(θ
k
)、および多層素材の総厚さ(h)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された入力値を適用して、多層素材の物性を算出する制御部と、
前記制御部に連結されているディスプレイと、
前記制御部に連結されている保存部と、を含み、
前記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の弾性係数(/E
x,y
)、せん断係数(/G
x,y
)およびポアソン比(/ν
x,y
)のうちいずれか1つ以上を算出し、
前記入力部に入力される入力値として、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の熱膨張係数(α
k
1,2)と、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の水分膨張係数(β
k
1,2)と、
温度変化値(ΔT)と、
湿度変化値(ΔC)と、をさらに含み、
前記制御部は、入力部に入力された入力値を処理して、各層(k)の変形率(ε
k
x,y)と各層(k)の(応力σ
k
x,y)を算出する、多層素材の物性予測システム。
【請求項5】
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G
k
1,2)、多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)、各層(k)の厚さ(Z
k)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の熱膨張係数(α
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の水分膨張係数(β
k
1,2)、温度(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を入力する入力部と、
前記入力部に連結され、多層素材物性算出部と各層の変形率および応力算出部を含む制御部と、
前記制御部に連結されているディスプレイと、
前記制御部に連結されている保存部と、を含む、請求項
4に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記弾性係数(E
k
1,2)、ポアソン比(ν
k
1,2)、せん断係数(G
k
1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q]
k
1,2)を算出し、
前記剛性マトリクス([Q]
k
1,2)に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)を再設定し、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクスの値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)を算出し、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対する逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を設定し、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(/E
x,y)、せん断係数(/G
x,y)、ポアソン比(/ν
x,y)を算出する、請求項
5に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記各層(k)の熱膨張係数(α
k
1,2)、水分膨張係数(β
k
1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e
k
1,2)を算出し、
前記フリーラミナ熱水変形率(e
k
1,2)に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して、各層(k)の熱水変形率変形(e
k
x,y,s)を算出し、
前記各層(k)の熱水変形率変形(e
k
x,y,s)と、前記各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)と、各層(k)の厚さ(Z
k)に基づいて多層素材で発生する熱水力(M
HT
x,y,s)および熱水モーメント(M
HT
x,y,s)を算出し、
前記熱水力(M
HT
x,y,s)および熱水モーメント(M
HT
x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成し、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対する逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を用いて中間面の変形率(ε
0
x,yおよび曲率k
x,y,s)を算出し、
前記中間面の変形率(ε
0
x,y)および曲率(k
x,y,s)と、各層(k)の厚さ(Z
k)情報を用いて、各層(k)の変形率(ε
k
x,y)を算出し、
前記各層(k)の変形率(ε
k
x,y)と、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)を用いて各層(k)の応力(σ
k
x,y)を算出することを特徴とする、請求項
6に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項8】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層(k)の弾性係数(E
k)、ポアソン比(ν
k)、せん断係数(G
k)、厚さ(Z
k)、積層角度(θ
k)、および多層素材の総厚さ(h)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
出力値を算出する段階と、を含
み、
前記出力値を算出する段階は、
入力された各層(k)の弾性係数(E
k
)、ポアソン比(ν
k
)およびせん断係数(G
k
)のうちいずれか1つ以上を適用して、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
)を算出する段階と、
前記剛性マトリクス([Q]
k
)に各層(k)の積層角度(θ
k
)を反映して、各層(k)の剛性マトリクスを再設定する段階と、
各層(k)の厚さ情報(Z
k
)を伝達されて再設定された剛性マトリクスの値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y
、[B]
x,y
、[D]
x,y
)を算出する段階と、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y
、[B]
x,y
、[D]
x,y
)に対する逆行列([a]
x,y
、[b]
x,y
、[c]
x,y
、[d]
x,y
)を設定する段階と、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]
x,y
、[b]
x,y
、[c]
x,y
、[d]
x,y
)の値を用いて多層素材の弾性係数(/E
x,y
)、せん断係数(/G
x,y
)およびポアソン比(/ν
x,y
)のうちいずれか1つ以上を算出する段階と、を含む、多層素材の物性予測方法。
【請求項9】
前記入力値が入力される段階で、入力値は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E
k
1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν
k
1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G
k
1,2)、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)、および
各層(k)の厚さ(Z
k)のうちいずれか1つ以上を含む、請求項
8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項10】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層(k)の弾性係数(E
k
)、ポアソン比(ν
k
)、せん断係数(G
k
)、厚さ(Z
k
)、積層角度(θ
k
)、および多層素材の総厚さ(h)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して、多層素材の弾性係数(/E
x,y
)、せん断係数(/G
x,y
)およびポアソン比(/ν
x,y
)のうちいずれか1つ以上を出力値を算出する段階と、を含み、
前記入力値が入力される段階で、入力値は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の熱膨張係数(α
k
1,2)と、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の水分膨張係数(β
k
1,2)と、
温度変化値(ΔT)と、
湿度変化値(ΔC)と、をさらに含み、
前記出力値を算出する段階は、入力部に入力された入力値を処理して、各層(k)の変形率(ε
k
x,y)と各層(k)の応力(σ
k
x,y)を算出することを含む、多層素材の物性予測方法。
【請求項11】
前記入力値が入力される段階は、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G
k
1,2)、多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)、各層(k)の厚さ(Z
k)を入力する段階(S11)を含む、請求項
10に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項12】
前記出力値を算出する段階は、
前記弾性係数(E
k
1,2)、ポアソン比(ν
k
1,2)、せん断係数(G
k
1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q]
k
1,2)を算出する段階(S12)と、
前記剛性マトリクス([Q]
k
1,2)に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)を再設定する段階(S14)と、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクスの値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)を算出する段階(S15)と、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対する逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を設定する段階(S16)と、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(/E
x,y)、せん断係数(/G
x,y)、ポアソン比(/ν
x,y)を算出する段階(S17)と、を含む、請求項
8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項13】
前記入力値が入力される段階は、各層(k)の熱膨張係数(α
k
1,2)、水分膨張係数(β
k
1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を入力する段階(S21)を含む、請求項
8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項14】
前記出力値を算出する段階は、
前記各層(k)の熱膨張係数(α
k
1,2)、水分膨張係数(β
k
1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e
k
1,2)を算出する段階(S22)と、
前記フリーラミナ熱水変形率に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して、各層(k)の熱水変形率変形(e
k
x,y,s)を算出する段階(S23)と、
前記各層(k)の熱水変形率変形(e
k
x,y,s)と、前記各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)と、各層(k)の厚さ(Z
k)に基づいて多層素材で発生する熱水力(M
HT
x,y,s)および熱水モーメント(M
HT
x,y,s)を算出する段階(S24)と、
前記熱水力(M
HT
x,y,s)および熱水モーメント(M
HT
x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成する段階(S25)と、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対する逆行列([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を用いて中間面の変形率(ε
0
x,y)および曲率(k
x,y,s)を算出する段階(S26)と、
前記中間面の変形率(ε
0
x,y)および曲率(k
x,y,s)と、各層(k)の厚さ(Z
k)の情報を用いて、各層(k)の変形率(ε
k
x,y)を算出する段階(S27)と、
前記各層(k)の変形率と、各層(k)の剛性マトリクス([Q]
k
x,y)を用いて各層(k)の応力(σ
x,y)を算出する段階(S28)と、をさらに含む、請求項
8に記載の多層素材の物性予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年8月27日付の韓国特許出願第10-2021-0113913号、2021年10月19日の韓国特許出願第10-2021-0138918号および2022年7月13日付の韓国特許出願第10-2022-0086176号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、多層素材の物性予測システムおよび方法に関し、より具体的には、多層素材の開発時に、その物性をあらかじめ予測できるシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高分子フィルムは、非繊維性平板状のプラスチック成形物を言い、軽く、遮断性が良く、透明性にも優れ、価格も相対的に安いため、包装材、生活用品、電子機器、自動車、航空機など多くの分野において使用されている。
【0004】
例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成高分子が高分子フィルムに加工されて国内外で広く使用されており、現在は、数多くの合成高分子を単独でまたはブレンドして高分子フィルム用材料として用いている。
【0005】
多層フィルムは、フィルムの多機能化を目的として種類が異なるフィルムを積層した複合フィルムであり、例えば、ポリエチレン(PE)の優れた機械的特性とセロハンの印刷美麗性を組み合わせたフィルムとナイロンとビニルアルコール‐エチレン共重合体などの組み合わせによる各種多層フィルムが包装用材料として使用されている。
【0006】
このような多層フィルムを素材として開発する場合に、全体積層体の弾性係数(Elastic modulus)、せん断係数(Shear modulus)、ポアソン比(Poisson’s ratio)などのような物性を予測する必要がある。
【0007】
上記弾性係数(Elastic modulus)を「E」とし、せん断係数(Shear modulus)を「G」とし、ポアソン比(Poisson’s ratio)を「ν」とすると、これらの間の関係は、次の通りである。
【0008】
G=E/{2(1+ν)}
【0009】
材料は、弾性範囲内では、横変形(荷重と直角方向の変形)と縦変形(荷重方向の変形)は相互比例する性質があり、この2個の変形の比は、弾性限度内では、材料によって一定の値を有し、この比をポアソン比(Poisson’s ratio)という。
【0010】
また、弾性係数(Elastic modulus)とは、弾性物質が応力(stress)を受けたときに起こる変形率(strain)の程度を示すものであり、上記弾性係数(Elastic modulus)を「E」とし、応力(stress))を「σ」とし、変形率(strain)を「ε」とすると、これらの間の関係は、次の通りである。
【0011】
E=σ/ε
【0012】
一方、多層フィルム素材は、製造工程で機械方向(Machine Direction、MD)および横軸方向(Transverse Direction、TD)に異方性を示すので、素材の堅固な(robust)設計のためには、多層フィルムの全体積層体の均質化された剛性だけでなく、外力の発生時に各フィルム層の応力(stress)および変形率(strain)に対する予測が必要である。
【0013】
従来、個別フィルムを積層した多層フィルムを製造した後、当該物性を評価している。しかしながら、物性評価のために多様な組み合わせの多層フィルムを全部製造および評価することは、時間的および費用的観点から損失が大きい。したがって、多層フィルムを直接製造することなく、当該物性をあらかじめ予測できる方法に対する必要性が高いのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、前述のような技術的課題を解決するためのものであって、積層構造を有する多層素材を開発する場合に、全体積層体の弾性係数(Elastic modulus)、せん断係数(Shear modulus)、ポアソン比(Poisson’s ratio)などのような物性を予測することができ、多層素材の全体積層体の均質化された剛性だけでなく、環境的要因である温度変化、湿度変化を考慮した膨張応力を含む外力の発生時に各層の応力(stress)および変形率(strain)に対する予測を行うことができる、多層素材の物性予測システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、多層素材の物性予測システムを提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測システムは、
n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νk、せん断係数Gk、厚さZk、積層角度θk、および多層素材の総厚さhのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して多層素材の物性を算出する制御部と、
上記制御部に連結されているディスプレイと、
上記制御部に連結されている保存部と、を含む。
【0016】
また、上記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0017】
また、本発明は、上記で説明した多層素材の物性予測方法を提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材において、
各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νk、せん断係数Gk、厚さZk、積層角度θk、および多層素材の総厚さhのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を出力値を算出する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、多層素材の開発時に、全体積層体の弾性係数(Elastic modulus)、せん断係数(Shear modulus)、ポアソン比(Poisson’s ratio)などのような物性を予測することができ、多層素材の全体積層体の均質化された剛性だけでなく、環境的要因である温度変化、湿度変化を考慮した膨張応力を含む外力の発生時に各層の応力および変形率に対する予測を行うことができる、効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る多層素材の物性予測システムの構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る多層素材の物性予測システムの入力画面の構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る多層素材の物性予測システムの出力画面の構成図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記目的を達成するための手段として、本発明は、多層素材の物性予測システムを提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測システムは、
n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νk、せん断係数Gk、厚さZk、積層角度θk、および多層素材の総厚さhのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して多層素材の物性を算出する制御部と、
上記制御部に連結されているディスプレイと、
上記制御部に連結されている保存部と、を含む。
【0021】
また、上記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0022】
具体的な実施形態において、上記制御部は、
入力された各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νkおよびせん断係数Gkのうちいずれか1つ以上を適用して、各層kの剛性マトリクス[Q]kを算出し、
上記各層kの剛性マトリクス[Q]kに対する逆行列[S]kを設定し、
上記剛性マトリクス[Q]kに各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクスを再設定し、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出し、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定し、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0023】
一実施形態において、上記入力部に入力される入力値は、
各層kの機械方向(Machine Direction、MD)1および横軸方向(Transverse Direction、TD)2の弾性係数Ek
1,2、
各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比νk
1,2、
各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数Gk
1,2、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θk、ここで、x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味し、および
各層kの厚さZkのうちいずれか1つ以上を含む。
【0024】
また、上記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0025】
別の一実施形態において、上記制御部は、
上記弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数Gk
1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2を算出し、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2に対する逆行列[S]k
1,2を設定し、
上記剛性マトリクス[Q]k
1,2に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを再設定し、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出し、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定し、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを算出する。
【0026】
別の一実施形態において、上記入力部に入力される入力値として、各層kの機械方向1および横軸方向2の熱膨張係数αk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2の水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCをさらに含む。また、上記制御部は、入力部に入力された入力値を処理して、各層kの変形率εk
x,yと各層kの応力σk
x,yを算出する。
【0027】
具体的な実施形態において、本発明による多層素材の物性予測システムは、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数Ek
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比νk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数Gk
1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θk、各層kの厚さZk、各層kの機械方向1および横軸方向2の熱膨張係数αk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2の水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する入力部と、
上記入力部に連結され、多層素材物性算出部と各層の変形率および応力算出部を含む制御部と、
上記制御部に連結されているディスプレイと、
上記制御部に連結されている保存部と、を含む。
【0028】
また、上記制御部は、上記弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数Gk
1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2を算出し、上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2に対する逆行列[S]k
1,2を設定し、上記剛性マトリクス[Q]k
1,2に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを再設定し、各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出し、上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定し、多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0029】
具体的な例において、上記制御部は、
上記各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率ek
1,2を算出し、
上記フリーラミナ熱水変形率ek
1,2に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sを算出し、
上記各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sと、上記各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yと、各層kの厚さZkを基に多層素材で発生する熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sを算出し、
上記熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成し、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sを算出し、
上記中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sと、各層kの厚さZk情報を活用して各層kの変形率εk
x,yを算出し、
上記各層kの変形率εk
x,yと、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを利用して各層kの応力σk
x,yを算出する。
【0030】
また、本発明は、上記で説明した多層素材の物性予測方法を提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予想方法において、
各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νk、せん断係数Gk、厚さZk、積層角度θk、および多層素材の総厚さhのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して、多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を出力値を算出する段階と、を含む。
【0031】
具体的な実施形態において、上記出力値を算出する段階は、
入力された各層kの弾性係数Ek、ポアソン比νkおよびせん断係数Gkのうちいずれか1つ以上を適用して、各層kの剛性マトリクス[Q]kを算出する段階と、
上記各層kの剛性マトリクス[Q]kに対する逆行列[S]kを設定する段階と、
上記剛性マトリクス[Q]kに各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクスを再設定する段階と、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出する段階と、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定する段階と、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,yおよびポアソン比/νx,yのうちいずれか1つ以上を算出する段階と、を含む。
【0032】
別の1つの具体的な実施形態において、上記入力値が入力される段階で、
入力値は、
各層kの機械方向(Machine Direction、MD)1および横軸方向(Transverse Direction、TD)2の弾性係数Ek
1,2、
各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比νk
1,2、
各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数Gk
1,2、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θk、および
各層kの厚さZkのうちいずれか1つ以上を含む。
【0033】
具体的な例において、上記入力値が入力される段階で、
入力値は、各層kの機械方向1および横軸方向2の熱膨張係数αk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2の水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCをさらに含んでもよい。
【0034】
この場合、上記出力値を算出する段階は、入力部に入力された入力値を処理して、各層kの変形率εk
x,yと各層kの応力σk
x,yを算出する。
【0035】
一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記入力値が入力される段階は、各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数Ek
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比νk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数Gk
1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θk、各層kの厚さZkを入力する段階S11を含む。
【0036】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記出力値を算出する段階は、
上記弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数Gk
1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2を算出する段階S12と、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2に対する逆行列[S]k
1,2を設定する段階S13と、
上記剛性マトリクス[Q]k
1,2に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを再設定する段階S14と、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出する段階S15と、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定する段階S16と、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを算出する段階S17と、を含む。
【0037】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記入力値が入力される段階は、
各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する段階S21を含む。
【0038】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記出力値を算出する段階は、
上記各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率ek
1,2を算出する段階S22と、
上記フリーラミナ熱水変形率に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sを算出する段階S23と、
上記各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sと、上記各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yと、各層kの厚さZkを基に多層素材で発生する熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sを算出する段階S24と、
上記熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成する段階S25と、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sを算出する段階S26と、
上記中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sと、各層kの厚さZk情報を活用して各層kの変形率εk
x,yを算出する段階S27と、
上記各層kの変形率(strain)と、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを利用して各層kの応力σx,yを算出する段階S28と、を含む。
【0039】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するために、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明することとする。本発明の目的、作用、効果を含んでその他他の目的、特徴点など、および動作上のメリットが好ましい実施形態の説明によりさらに明確になるだろう。
【0040】
参考として、ここで開示される実施形態は、様々な実施可能な例のうち、当業者の理解を助けるために最も好ましい実施形態を選定して提示したものであり、本発明の技術的思想が必ず提示された実施形態のみにより限定または制限されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で均等物ないし代替物を含む多様な変化と付加および変更が可能である。
【0041】
また、本願の明細書および請求範囲に使用された用語や単語の表現は、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて定義されたものであり、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されるべきものではなく、本発明の技術的思想に符合する意味や概念と解釈すべきである。一例として、単数の表現は、文脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含み、方向に関する表現は、説明上の便宜のために図面上に表現された位置を基準として設定し、「連結される」または「接続される」という表現は、直接的な連結または接続だけでなく、中間に他の構成要素を媒介とする連結または接続を含む。また、「~部」という表現は、ハードウェアを利用して実現されるユニット、ソフトウェアを利用して実現されるユニット、ハードウェアやソフトウェア両方を利用して実現されるユニットなどを含み、1個のユニットは、1個以上のハードウェアまたはソフトウェアを利用して実現されることもでき、2個以上のユニットが1個のハードウェアまたはソフトウェアを利用して実現されることもできる。
【0042】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの構成図である。
【0043】
図1に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの構成は、ユーザが各層kの機械方向(Machine Direction、MD)(以下「1」と設定し、主方向を意味する)および横軸方向(Transverse Direction、TD)(以下「2」と設定する)の弾性係数(Elastic modulus)e
k
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比(Poisson’s ratio)ν
k
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数(Shear modulus)G
k
1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ
k、各層kの厚さZ
k、各層kの機械方向1および横軸方向2の熱膨張係数α
k
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2の水分膨張係数β
k
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力するための入力部10と、上記入力部10に連結されており、全体積層体物性算出部21と各層の変形率および応力算出部22を含む制御部20と、上記制御部20に連結されているディスプレイ30と、上記制御部20に連結されている保存部40と、を含んでなる。
【0044】
本発明において、多層素材(multilayer material)というのは、2個以上の素材が積層された構造を有する積層体を意味するものであり、高分子などの多層フィルムを意味し得、FRP(fiber reinforced plastic)およびアルミニウムパウチのような異種素材間の複合素材などを意味し得る。例えば、上記多層素材は、多層フィルムを意味し得る。
【0045】
一方、上記入力部10は、ユーザが実際物性値を入力するためのものであるが、必ずこれに限定されるものではない。例えば、上記入力部10は、入力部10に入力するための情報などが保存されたデータベース(DB)に接続することもできる。
【0046】
また、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比(Poisson’s ratio)νk
1,2において、ν12は、素材が機械方向1に力が加えられたとき(loading)、横軸方向2の変形に関連したポアソン比を意味し、ν21は、素材が横軸方向2に積載(loading)されたとき、機械方向1の変形に関連したポアソン比を意味する。一方、上記素材が等方性物質の場合には、ν12=ν21=νでありうる。
【0047】
一方、上記角度θkは、多層素材のx方向に対して各層の反時計周り方向の角度を意味し得る。
【0048】
また、上記各層kの厚さZkというのは、多層素材で全体積層体の厚さ中心から座標情報を意味し得る。
【0049】
図2は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの入力画面の構成図である。
【0050】
一方、上記角度θkは、多層素材のx方向に対して各層の反時計周り方向の角度を意味し得る。
【0051】
また、上記各層kの厚さZkというのは、多層素材で全体積層体の厚さ中心から座標情報を意味し得る。
【0052】
図2は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの入力画面の構成図である。
【0053】
図2に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの入力画面の構成は、各層別に名前入力欄111、厚さ入力欄112、角度入力欄113が配置されている積層情報入力部11と、各層別に機械方向(MD)弾性係数入力欄121、横軸方向(TD)弾性係数入力欄122、ポアソン比入力欄123、熱膨張率入力欄124が配置されている剛性予測入力部12と、サンプルの縦横長さ入力欄131が配置されているサンプルサイズ入力部13と、X軸引張力入力欄141、Y軸引張力入力欄142、せん断力入力欄143、温度変化量入力欄144が配置されている外力入力部14と、を含んでなる。
【0054】
本発明の第1実施形態の入力画面では、多層素材が3個の層からなるものと設定されているが、4個以上の層からなる入力画面を提供することもできる。
【0055】
図3は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの出力画面の構成図である。
【0056】
図3に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測システムの出力画面は、剛性均質化結果31としてx方向弾性係数、y方向弾性係数、ポアソン比、せん断係数、体積弾性率、熱膨張率を出力し、反りプロット(Warpage plot)32を出力し、厚さによるx方向変形率33、厚さによるx方向応力34、厚さによるy方向変形率35、厚さによるy方向応力36を出力する。
【0057】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
図4に示されたように、本発明の第2実施形態による多層素材の物性予測方法は、次のように行うことが可能である。
【0058】
2個以上の素材が積層された多層素材について、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数(Elastic modulus)ek
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比(Poisson’s ratio)νk
1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数(Shear modulus)Gk
1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θk、各層kの厚さZkを入力する段階S11を経る。
【0059】
次に、上記弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数(Shear modulus)Gk
1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス(stiffness matrix)[Q]k
1,2を下記式(1)のように算出する段階S12を行う。
【0060】
【0061】
等方性物質の場合に、G=E/2(1+ν)である。
【0062】
このように算出した各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2に対する逆行列である[S]k
1,2(compliance matrix)を設定する段階S13を行う。
【0063】
上記導き出された剛性マトリクス[Q]k
1,2に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを下記式(2)のように再設定する段階S14を行う。
【0064】
【0065】
また、各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを下記式(3)のように算出する段階S15を行う。
【0066】
【0067】
式(3)中、kは、各層を意味し、全体n個層で形成され、nは、2~10の範囲の整数である。
【0068】
このように算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列である[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y(compliance matrix)を下記式(4)のように設定する段階S16を行う。
【0069】
【0070】
全体積層体である多層素材の総厚さhと上記設定された逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して全体積層体である多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを下記式(5)のように算出する段階S17を行う。
【0071】
【0072】
上記各層kの弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数Gk
1,2を入力する段階S11で、上記せん断係数Gk
1,2は、等方性物質の弾性係数Eとせん断係数Gとポアソン比ν間の次の関係式を利用して制御部20により弾性係数Ek
1,2およびポアソン比νk
1,2から算出される。
【0073】
G=E/{2(1+ν)}
【0074】
一方、ユーザが各層kのG12値を知っていると、自動で計算せずに、当該値をQ66に入力して使用することができる。ただし、一般的に各層kのせん断係数の測定が非常に難しいので、これを等方性物質と仮定し、弾性係数Eとポアソン比νから計算するように仮定したものであってもよい。
【0075】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
図5に示されたように、本発明の第3実施形態による多層素材の物性予測方法は、次のように行うことが可能である。
【0076】
2個以上の素材が積層された多層素材について、
各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する段階S21を経た後、
入力された各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)ek
1,2を下記式(6)のように算出する段階S22を行う。
【0077】
【0078】
このように算出したフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)に各層kの積層角度θkを反映して、各層kの熱水変形率変形(hygrothermal strain transformation)ek
x,y,sを下記式(7)のように算出する段階S23を行う。
【0079】
【0080】
上記各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sと、上記第2実施形態で算出した各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yと、各層kの厚さZkを基に全体積層体である多層素材で発生する熱水力(hygrothermal force)MHT
x,y,sおよび熱水モーメント(hygrothermal moment)MHT
x,y,sを下記式(8)のように算出する段階S24を行う。
【0081】
【0082】
上記で算出した熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sに機械的荷重(mechanical loading)の外力N、Mを加えることにより、全体力(Total force)/Nおよび全体モーメント(Total moment)/Mを下記式(9)のように構成する段階S25を行う。
【0083】
【0084】
次に、上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列である[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y(compliance matrix)を利用して中間面(midplane)の変形率(strain)ε0
x,yおよび曲率(curvature)kx,y,sを下記式(10)のように算出する段階S26を行う。
【0085】
【0086】
上記中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sと、入力部10を通じて入力された各層kの厚さZk情報を活用して、各層kの変形率(strain)εk
x,yを下記式(11)のように算出する段階S27を行う。
【0087】
【0088】
また、上記各層kの変形率(strain)と、第2実施形態で算出した各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを利用して各層kの応力(stress)σk
x,yを下記式(12)のように算出する段階S28を行う。
【0089】
【0090】
<第4実施形態>
上記した構成による、本発明の実施形態による多層素材の物性予測システムおよび方法の作用は、次の通りである。
【0091】
多層素材の物性予測のために、ユーザは、ディスプレイ30に示された入力画面を見ながら入力部10を利用して各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2の弾性係数Ek
1,2、各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2のポアソン比νk
1,2、各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2のせん断係数Gk
1,2、多層素材のx方向に対する各層k(k=1、2、3)の機械方向1の角度θk、各層kの厚さZkを入力する(S11)。
【0092】
ディスプレイ30で提供される入力画面には、
図2に示されたように、各層別に名前入力欄111、厚さ入力欄112、角度入力欄113が配置されている積層情報入力部11と、各層別に機械方向(MD)弾性係数入力欄121、横軸方向(TD)弾性係数入力欄122、ポアソン比入力欄123、熱膨張率入力欄124が配置されている剛性予測入力部12と、サンプルの縦横長さ入力欄131が配置されているサンプルサイズ入力部13と、X軸引張力入力欄141、Y軸引張力入力欄142、せん断力入力欄143、温度変化量入力欄144が配置されている外力入力部14が提供され、入力画面に示されていない情報は、入力部10を通じて入力された情報から制御部20が自動で算出して保存部40に保存する。例えば、入力画面および入力部10を通じて各層別に機械方向(MD)弾性係数E
k
1、横軸方向(TD)弾性係数E
k
2、ポアソン比ν
k
1,2が入力されると、制御部20は、次の等方性物質の弾性係数Eとせん断係数Gとポアソン比ν間の関係式を利用して自動でせん断係数G
k
1,2を算出した後、これを保存部40に保存する。
【0093】
G=E/{2(1+ν)}
【0094】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記弾性係数Ek
1,2、ポアソン比νk
1,2、せん断係数Gk
1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス(stiffness matrix)[Q]k
1,2を次の式(1)のように算出する(S12)。
【0095】
【0096】
式(1)中、等方性物質の場合に、G=E/2(1+ν)である。
【0097】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記で算出した各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q]k
1,2に対する逆行列(inverse matrix)[S]k
1,2を求めて、コンプライアンスマトリクス(compliance matrix)として設定する(S13)。これは、特異行列(singular matrix)の剛性マトリクス(stiffness matrix)を逆行列(inverse matrix)が存在する可逆行列(invertible matrix)に変換するためである。
【0098】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記導き出された各層kの剛性マトリクス[Q]k
1,2に多層素材の積層角度θkを反映して、各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを下記式(2)のようにxまたはy方向に再設定する(S14)。
【0099】
【0100】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを下記式(3)のように算出する(S15)。
【0101】
【0102】
式(3)中、kは、各層を意味し、全体n個層で形成され、nは、2~10の範囲の整数である。
【0103】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを下記式(4)のように設定する(S16)。
【0104】
【0105】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、各層kの厚さ情報から全体積層体である多層素材の総厚さhを求めた後、上記で設定された逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して全体積層体である多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを下記式(5)のように算出する(S17)。
【0106】
【0107】
次に、ユーザは、ディスプレイ30に示された入力画面(不図示)を見ながら入力部10を利用して各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力し(S21)、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、これを読み込む。
【0108】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、入力された各層kの熱膨張係数αk
1,2、水分膨張係数βk
1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)ek
1,2を下記式(6)のように算出する(S22)。
【0109】
【0110】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、算出したフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)に各層kの積層角度を反映して、各層kの熱水変形率変形(hygrothermal strain transformation)ek
x,y,sを下記式(7)のように算出する(S23)。
【0111】
【0112】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、上記各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sと、第2実施形態で各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yと各層の厚さZkを基に全体積層体である多層素材で発生する熱水力(hygrothermal force)MHT
x,y,sおよび熱水モーメント(hygrothermal moments)MHT
x,y,sを下記式(8)のように算出する(S24)。
【0113】
これは、各層kの熱水変形率変形ek
x,y,sによる応力を合算して、全体積層体である多層素材で発生する熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sを求めるためである。
【0114】
【0115】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、上記算出した熱水力MHT
x,y,sおよび熱水モーメントMHT
x,y,sに機械的荷重(mechanical loading)の外力N、Mを加えることにより、全体力(Total force)/Nおよび全体モーメント(Total moment)/Mを下記式(9)のように構成する(S25)。
【0116】
【0117】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面(midplane)の変形率(strain)ε0
x,yおよび曲率(curvature)kx,y,sを下記式10のように算出する(S26)。
【0118】
【0119】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、上記中間面の変形率ε0
x,yおよび曲率kx,y,sと、入力部10を通じて入力された各層kの厚さZk情報を活用して、各層kの変形率(strain)εk
x,yを下記式11のように算出する(S27)。
【0120】
【0121】
次に、制御部20の各層の変形率および応力算出部22は、上記各層kの変形率(strain)と、第2実施形態で算出した各層kの剛性マトリクス[Q]k
x,yを利用して各層kの応力(stress)σk
x,yを下記式(12)のように算出する(S28)。
【0122】
【0123】
制御部20は、このように算出した各層kの変形率(strain)εk
x,yおよび応力(stress)σk
x,yを保存部40に保存すると同時に、ディスプレイ30を通じて出力する。
【0124】
ディスプレイ30で提供される出力画面には、
図3に示されたように、剛性均質化結果32としてx方向弾性係数(Elastic modulus)、y方向弾性係数(Elastic modulus)、ポアソン比(Poisson’s ratio)、せん断係数(Shear modulus)、体積弾性率(Bulk modulus)、熱膨張率(Thermal expansion rate)が出力され、3Dの反りプロット(Warpage plot)32が出力され、厚さ(Thickness)によるx方向変形率33、厚さ(Thickness)によるx方向応力34、厚さ(Thickness)によるy方向変形率35、厚さ(Thickness)によるy方向応力36が出力される。
【0125】
一方、上記機械方向(MD)弾性係数、横軸方向(TD)弾性係数は、ユーザが全体積層体を基準として定義した面内(in‐plane)弾性係数を意味するものであり、通常、最終多層素材が受ける力を考慮して定義することができる。一方、最終多層素材を構成している各層kの主方向Dir‐1、2(機械方向または横軸方向)は、ユーザが定義した最終多層素材の基準軸Dir‐x、yと必ず一致するものではない。
【0126】
本発明において、多層素材の設計時に要求される物性に合致するように積層順序または角度などを調節することができるので、本発明において、このような多層設計の構成が可能に入力された各層の角度を利用して行列を再設定し、全体積層素材の基準軸x、y方向に各層の剛性行列を変換することができる。これによって、出力部で出力される弾性係数は、このような最終積層素材のx、y方向に対する物性でありうる。
【0127】
<第5実施形態>
本発明の一実施形態において、入力部に入力される入力値をすぐに入手できない場合には、他の物性数値を利用して変換する過程を通じて導き出すことができる。
【0128】
一実施形態において、各層kの弾性係数Ekと各層kのポアソン比νkを入力する過程で、ラメ第1係数λk、せん断係数Gkおよび体積弾性係数Kkのうちいずれか1つ以上の物性数値を利用して算出可能である。例えば、下記数式1~9を利用して弾性係数Ekとポアソン比νkに変換することが可能である。
【0129】
入手可能な組み合わせが(λk,Gk)であるとき、下記数式1による。
【0130】
【0131】
入手可能な組み合わせが(λk,Ek)であるとき、下記数式2による。
【0132】
【0133】
入手可能な組み合わせが(λk,νk)であるとき、下記数式3による。
【0134】
【0135】
入手可能な組み合わせが(λk,Kk)であるとき、下記数式4による。
【0136】
【0137】
入手可能な組み合わせが(Gk,Ek)であるとき、下記数式5による。
【0138】
【0139】
入手可能な組み合わせが(Gk,νk)であるとき、下記数式6による。
【0140】
【0141】
入手可能な組み合わせが(Gk,Kk)であるとき、下記数式7による。
【0142】
【0143】
入手可能な組み合わせが(Kk,Ek)であるとき、下記数式8による。
【0144】
【0145】
入手可能な組み合わせが(Kk,νk)であるとき、下記数式9による。
【0146】
【0147】
上記の数式1~9は、例示に該当し、必要に応じて2以上の数式を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0148】
10 入力部
20 制御部
21 全体積層体物性算出部
22 各層の変形率および応力算出部
30 ディスプレイ
40 保存部