(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240820BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/316 P
H01L21/316 X
H01L21/31 C
C23C16/42
(21)【出願番号】P 2021004433
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】石井 亨
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 裕志
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 雄一郎
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-022653(JP,A)
【文献】特開2019-165078(JP,A)
【文献】特表2017-531920(JP,A)
【文献】特開2010-245449(JP,A)
【文献】特開2020-191340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を600℃以上の第1の温度に加熱した状態で、プラズマを用いたALDにより前記基板上にシリコン酸化膜を堆積させる工程と、
前記シリコン酸化膜を堆積させる工程を終了させた後、前記シリコン酸化膜を、前記第1の温度よりも高い第2の温度でアニールする工程と、を有
し、
前記アニールする工程において、前記シリコン酸化膜を850℃で60分アニールする、
シリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項2】
前記シリコン酸化膜を堆積させる工程は、
前記基板にシリコン含有ガスを吸着させる工程と、
前記基板に第1の酸化ガスを供給して前記基板に吸着した前記シリコン含有ガスを酸化し、前記シリコン酸化膜を前記基板上に堆積させる工程と、
前記シリコン酸化膜にプラズマにより活性化した第2の酸化ガスを供給し、前記シリコン酸化膜を改質する工程と、を含み、
前記基板に前記シリコン含有ガスを吸着させる工程、前記シリコン酸化膜を前記基板上に堆積させる工程及び前記シリコン酸化膜を改質する工程を繰り返す請求項1に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項3】
前記第1の酸化ガスはオゾンであり、
前記第2の酸化ガスは酸素を含む請求項
2に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項4】
前記第2の酸化ガスは、酸素と水素を含む混合ガスである請求項
3に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項5】
前記シリコン含有ガスは、アミノシランガスである請求項2~
4のいずれか一項に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項6】
前記アミノシランガスは、トリス(ジメチルアミノ)シランガスである請求項
5に記載のシリコン酸化膜の成膜方法。
【請求項7】
処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板を載置可能な回転テーブルと、
前記回転テーブル内に設けられ、前記基板を600℃以上の
第1の温度に加熱可能なヒータと、
前記回転テーブルにシリコン含有ガスを供給可能なシリコン含有ガス供給部と、
前記回転テーブルに酸化ガスを供給可能な酸化ガス供給部と、
前記回転テーブルに水素と酸素を含む混合ガスを供給可能な混合ガス供給手段と、
前記混合ガスをプラズマにより活性化するプラズマ発生器と、を含む成膜装置と、
前記成膜装置から成膜処理後の前記基板を搬送可能な搬送ステーションと、
前記搬送ステーションにより搬入された前記成膜処理後の前記基板を
、前記第1の温度よりも高い第2の温度でアニールするアニール装置と、を含
み、
前記アニール装置は、前記成膜処理後の前記基板を、850℃で60分アニールする、
成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に形成される凹部の内面に所望の分布で水酸基を吸着させた後、第1の反応ガスを基板に供給し、その後第2の反応ガスを基板に供給し、第1の反応ガスと第2の反応ガスとを反応させて反応生成物を生成させ、反応生成物による膜を堆積させる成膜方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる成膜方法においては、水酸基を生成する際に、プラズマを用いるが、プラズマはプロセス全体を低温で実施することを目的として使用される場合が多く、400℃前後の温度でプラズマ工程を実施する場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高温でのプラズマ改質とアニールを組み合わせることにより、熱酸化膜と同程度に均質な膜質を有するシリコン酸化膜を成膜する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係るシリコン酸化膜の成膜方法は、基板を600℃以上の第1の温度に加熱した状態で、プラズマを用いたALDにより前記基板上にシリコン酸化膜を堆積させる工程と、
前記シリコン酸化膜を堆積させる工程を終了させた後、前記シリコン酸化膜を、前記第1の温度よりも高い第2の温度でアニールする工程と、を有し、
前記アニールする工程において、前記シリコン酸化膜を850℃で60分アニールする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、熱酸化膜と同程度の均一な膜質を有するシリコン酸化膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態による成膜装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1の成膜装置の真空容器内の構成を示す概略平面図である。
【
図4】
図1の成膜装置の真空容器内に回転可能に設けられる回転テーブルの同心円に沿った、当該真空容器に概略断面図である。
【
図6】
図1の成膜装置に設けられるプラズマ発生源を示す概略断面図である。
【
図7】
図1の成膜装置に設けられるプラズマ発生源を示す他の概略断面図である。
【
図8】
図1の成膜装置に設けられるプラズマ発生源を示す概略上面図である。
【
図9】本発明の実施形態による成膜方法を説明するための模式図である。
【
図10】
図9に引き続き、本発明の実施形態による成膜方法を説明するための他の模式図である。
【
図11】アニール装置を設ける場合の全体構成の一例を示し図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0010】
[成膜装置]
始めに、本発明の実施形態による成膜方法を実施するのに好適な成膜装置について説明する。
図1から
図3までを参照すると、この成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(
図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0011】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(
図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0012】
回転テーブル2の表面部には、
図2及び
図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお
図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えてウエハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0013】
図2及び
図3は、真空容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。
図2及び
図3に示すように、回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる反応ガスノズル31、反応ガスノズル32、分離ガスノズル41,42、及びガス導入ノズル92が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向(
図3の矢印A))に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、ガス導入ノズル92、分離ガスノズル41、反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、及び反応ガスノズル32がこの順番で配列されている。これらのノズル92、31、32、41、42は、各ノズル92、31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート92a、31a、32a、41a、42a(
図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように取り付けられている。
【0014】
なお、ガス導入ノズル92の上方には、
図3において、破線にて簡略化して示すようにプラズマ発生源80が設けられている。プラズマ発生源80については後述する。
【0015】
本実施形態においては、反応ガスノズル31は、不図示の配管及び流量制御器などを介して、第1の反応ガスとしてのSi(シリコン)含有ガスの供給源(図示せず)に接続されている。反応ガスノズル32は、不図示の配管及び流量制御器などを介して、第2の反応ガスとしての酸化ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量制御バルブなどを介して、分離ガスとしての窒素(N2)ガスの供給源(図示せず)に接続されている。
【0016】
本実施形態においては、Si含有ガスとして有機アミノシランガスが用いられ、酸化ガスとしてO3(オゾン)ガスが用いられている。
【0017】
反応ガスノズル31、32には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔33が、反応ガスノズル31、32の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。反応ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。反応ガスノズル32の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたSi含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0018】
図2及び
図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、分離ガスノズル41、42とともに分離領域Dを構成するため、後述のとおり、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。また、凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0019】
図4は、反応ガスノズル31から反応ガスノズル32まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられているため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。また、高い天井面45の下方の空間に反応ガスノズル31、32がそれぞれ設けられている。これらの反応ガスノズル31、32は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、
図4に示すように、反応ガスノズル31が設けられる、高い天井面45の下方の空間を参照符号481で表し、反応ガスノズル32が設けられる、高い天井面45の下方の空間を参照符号482で表す。
【0020】
また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル41、42には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔41h(
図4参照)が、分離ガスノズル41、42の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。
【0021】
天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42の吐出孔42hからN2ガスが供給されると、このN2ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、N2ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るN2ガスが、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の領域P1からのSi含有ガスと、第2の領域P2からの酸化ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、真空容器1内においてSi含有ガスと酸化ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0022】
なお、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、供給する分離ガス(N2ガス)の供給量などを考慮し、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。
【0023】
一方、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(
図2及び
図3)が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
【0024】
先に参照した
図1は、
図3のI-I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している。一方、
図5は、天井面44が設けられている領域を示す断面図である。
図5に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0025】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては
図4に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、
図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、
図1から
図3に示すように、それぞれ、第1の排気口610及び第2の排気口620が形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図1に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお
図1中、参照符号650は圧力制御器である。
【0026】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、
図1及び
図4に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている(
図5)。このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられ、内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0027】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるN
2ガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図5には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英で作製することができる。
【0028】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0029】
さらに、真空容器1の側壁には、
図2、
図3に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉される。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0030】
次に、
図6から
図8までを参照しながら、プラズマ発生源80について説明する。
図6は、回転テーブル2の半径方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図であり、
図7は、回転テーブル2の半径方向と直交する方向に沿ったプラズマ発生源80の概略断面図であり、
図8は、プラズマ発生源80の概略を示す上面図である。図示の便宜上、これらの図において一部の部材を簡略化している。
【0031】
図6を参照すると、プラズマ発生源80は、高周波透過性の材料で作製され、上面から窪んだ凹部を有し、天板11に形成された開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81と、フレーム部材81の凹部内に収容され、上部が開口した略箱状の形状を有するファラデー遮蔽板82と、ファラデー遮蔽板82の底面上に配置される絶縁板83と、絶縁板83の上方に支持され、略八角形の上面形状を有するコイル状のアンテナ85とを備える。
【0032】
天板11の開口部11aは複数の段部を有しており、そのうちの一つの段部には全周に亘って溝部が形成され、この溝部に例えばO-リングなどのシール部材81aが嵌め込まれている。一方、フレーム部材81は、開口部11aの段部に対応する複数の段部を有しており、フレーム部材81を開口部11aに嵌め込むと、複数の段部のうちの一つの段部の裏面が、開口部11aの溝部に嵌め込まれたシール部材81aと接し、これにより、天板11とフレーム部材81との間の気密性が維持される。また、
図6に示すように、天板11の開口部11aに嵌め込まれるフレーム部材81の外周に沿った押圧部材81cが設けられ、これにより、フレーム部材81が天板11に対して下方に押し付けられる。このため、天板11とフレーム部材81との間の気密性がより確実に維持される。
【0033】
フレーム部材81の下面は、真空容器1内の回転テーブル2に対向しており、その下面の外周には全周に亘って下方に(回転テーブル2に向かって)突起する突起部81bが設けられている。突起部81bの下面は回転テーブル2の表面に近接しており、突起部81bと、回転テーブル2の表面と、フレーム部材81の下面とにより回転テーブル2の上方に空間(以下、内部空間S)が画成されている。なお、突起部81bの下面と回転テーブル2の表面との間隔は、分離空間H(
図4)における
天板11の回転テーブル2の上面に対する高さh1とほぼ同じであって良い。
【0034】
また、この内部空間Sには、突起部81bを貫通したガス導入ノズル92が延びている。ガス導入ノズル92には、本実施形態においては、
図6に示すように、アルゴン(Ar)ガスが充填されるアルゴンガス供給源93aと、酸素(O
2)ガスが充填される酸素ガス供給源93bと、アンモニア(NH
3)ガスが充填されるアンモニアガス供給源93cとが接続されている。アルゴンガス供給源93a、酸素ガス供給源93b、及びアンモニアガス供給源93cから、対応する流量制御器94a、94b、及び94cにより流量制御されたArガス、O
2ガス、及びNH
3ガスが、所定の流量比(混合比)で内部空間Sに供給される。
【0035】
また、ガス導入ノズル92には、その長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)で複数の吐出孔92hが形成されており、吐出孔92hから上述のArガス等が吐出される。吐出孔92hは、
図7に示すように、回転テーブル2に対して垂直な方向から回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって傾いている。このため、ガス導入ノズル92から供給されるガスは、回転テーブル2の回転方向と逆の方向に、具体的には、突起部81bの下面と回転テーブル2の表面との間の隙間に向かって吐出される。これにより、回転テーブル2の回転方向に沿ってプラズマ発生源80よりも上流側に位置する天井面45の下方の空間から反応ガスや分離ガスが、内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。また、上述のとおり、フレーム部材81の下面の外周に沿って形成される突起部81bが回転テーブル2の表面に近接しているため、ガス導入ノズル92からのガスにより内部空間S内の圧力を容易に高く維持することができる。これによっても、反応ガスや分離ガスが内部空間S内へ流れ込むのが抑止される。
【0036】
ファラデー遮蔽板82は、金属などの導電性材料から作製され、図示は省略するが接地されている。
図8に明確に示されるように、ファラデー遮蔽板82の底部には、複数のスリット82sが形成されている。各スリット82sは、略八角形の平面形状を有するアンテナ85の対応する辺とほぼ直交するように延びている。
【0037】
また、ファラデー遮蔽板82は、
図7及び
図8に示すように、上端の2箇所において外側に折れ曲がる支持部82aを有している。支持部82aがフレーム部材81の上面に支持されることにより、フレーム部材81内の所定の位置にファラデー遮蔽板82が支持される。
【0038】
絶縁板83は、例えば石英ガラスにより作製され、ファラデー遮蔽板82の底面よりも僅かに小さい大きさを有し、ファラデー遮蔽板82の底面に載置される。絶縁板83は、ファラデー遮蔽板82とアンテナ85とを絶縁する一方、アンテナ85から放射される高周波を下方へ透過させる。
【0039】
アンテナ85は、平面形状が略八角形となるように銅製の中空管(パイプ)を例えば3重に巻き回すことにより形成される。パイプ内に冷却水を循環させることができ、これにより、アンテナ85へ供給される高周波によりアンテナ85が高温に加熱されるのが防止される。また、アンテナ85には立設部85aが設けられており、立設部85aに支持部85bが取り付けられている。支持部85bにより、アンテナ85がファラデー遮蔽板82内の所定の位置に維持される。また、支持部85bには、マッチングボックス86を介して高周波電源87が接続されている。高周波電源87は、例えば13.56MHzの周波数を有する高周波を発生することができる。
【0040】
このような構成を有するプラズマ発生源80によれば、マッチングボックス86を介して高周波電源87からアンテナ85に高周波電力を供給すると、アンテナ85により電磁界が発生する。この電磁界のうちの電界成分は、ファラデー遮蔽板82により遮蔽されるため、下方へ伝播することはできない。一方、磁界成分はファラデー遮蔽板82の複数のスリット82sを通して内部空間S内へ伝播する。この磁界成分により、ガス導入ノズル92から所定の流量比(混合比)で内部空間Sに供給されるArガス、O2ガス、及びNH3ガス等のガスからプラズマが発生する。このようにして発生するプラズマによれば、ウエハW上に堆積される薄膜への照射損傷や、真空容器1内の各部材の損傷などを低減することができる。
【0041】
また、本実施形態による成膜装置には、
図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の成膜方法を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0042】
[成膜方法]
次に、本発明の実施形態による成膜方法について上述の成膜装置を用いて行う場合を例にとり説明する。本実施形態では、ウエハWとしてシリコンウエハを使用することとし、そのシリコンウエハには、
図9(a)に示すように、トレンチTが形成されている。本実施形態に係る成膜方法は、ウエハのトレンチTの有無に関わらず適用することができるが、本実施形態においては、ウエハWの表面にトレンチTが形成されている例を挙げて説明する。
【0043】
反応ガスノズル31からアミノシランガス、例えば3DMAS(トリス(ジメチルアミノ)シランガス)が供給され、反応ガスノズル32から酸化ガスとしてO3ガスが供給され、ガス導入ノズル92からArガス、O2ガス及びH2の混合ガス(以下、Ar/O2/H2ガスと記す)が供給されることとする。
【0044】
先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10(
図3)により搬送口15(
図2及び
図3)を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。
【0045】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640により到達可能真空度にまで真空容器1内を排気した後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN
2ガスを所定の流量で吐出し、分離
ガス供給管51及びパージガス供給管72からもN
2ガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力制御手段650(
図1)により真空容器1内を予め設定した処理圧力に制御する。次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば20rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば600℃に加熱する。
【0046】
従来、プラズマプロセスは低温で行うのが一般的であり、300℃~450℃の温度範囲で行われる場合が多かった。それ以上高い温度の場合には、温度を650℃以上の高温にし、熱酸化によるプロセスを用いて、プラズマを用いない場合が多かった。つまり、低温プラズマか高温熱酸化のいずれかが選択されていた。
【0047】
しかしながら、本実施形態に係る成膜方法では、600℃以上という高温でプラズマプロセスを行う。これにより、プラズマプロセスで行われる膜の改質を促進することができる。即ち、プラズマによる酸化ガスの活性化に加えて、熱酸化の効果を得ることができる。なお、温度は、600℃以上であれば種々の温度に設定できるが、本実施形態においては、高温プラズマプロセスに加えて成膜後にアニールプロセスを実施するため、750℃未満、好ましくは700℃以下の範囲内で設定することが好ましい。
【0048】
この後、反応ガスノズル31(
図2及び
図3)からシリコン含有ガスとしてアミノシランガス、例えば3DMASを供給し、反応ガスノズル32から酸化ガスとしてO
3ガスを供給する。また、ガス導入ノズル92から改質ガスとしてAr/O
2/H
2ガスを供給し、プラズマ発生源80のアンテナ85に対して13.56MHzの周波数を有する高周波を例えば1400Wの電力で供給する。これにより、プラズマ発生源80(
図6)と回転テーブル2との間の内部空間Sにおいて酸素プラズマが生成される。この酸素プラズマ中には、酸素イオンや酸素ラジカルなどの活性種や、高エネルギー粒子が生成されている。
【0049】
回転テーブル2の回転により、ウエハWは、第1の処理領域P1、分離領域D、第2の処理領域P2、内部空間S(の下方の領域)、及び分離領域Dをこの順に繰り返して通過する(
図3参照)。
【0050】
図9(b)に示すように、第1の処理領域P1において、ウエハWの表面UやトレンチTの内面に有機アミノシランガスの分子Msが吸着し、有機アミノシランの分子層61が形成される。
【0051】
図9(c)に示すように、分離領域Dを通過した後、第2の処理領域P2において、ウエハWの表面UやトレンチTの内面に吸着したアミノシランガスがO
3ガス分子Moにより酸化される。
【0052】
これにより、
図9(d)に示すように、トレンチTの内面に沿ってシリコン酸化膜62が成膜される。アミノシランガスが酸化される際には、副生成物としてOH基Hyが生成され、生成されたOH基Hyはシリコン酸化膜62の表面に吸着することとなる。
【0053】
なお、3DMASガスは、600℃の温度でもCVD反応が発生せず、ALDプロセスを実施できるので、本実施形態においては好適に用いることができる。
【0054】
ウエハWが、第1の処理領域P1、分離領域D、及び第2の処理領域P2を通過した後には、
図9(d)に示すように、ウエハWの表面UやトレンチTの内面にはシリコン酸化膜62が成膜され、このシリコン酸化膜62の表面にはOH基Hyが吸着している。
【0055】
次いで、
図10(a)に示すように、ウエハWが内部空間Sに至り、ウエハWが酸素プラズマPlに曝される。ここで、シリコン酸化膜62の酸化が促進され、膜質が向上する。また、
図10(a)に示すように、酸素プラズマPl中には水素含有ガスから生成されたOH基Hyが含まれている。このため、酸素プラズマPlにより生成されたOH基Hyがシリコン酸化膜62の表面上に均一に吸着し得る。
【0056】
このため、
図10(b)に示すように、ウエハWが第1の処理領域Pに再び至ると、反応ガスノズル31からの有機アミノシランガスの分子MsもまたトレンチTの内面において均一に吸着する。
【0057】
よって、
図10(c)に示すように、吸着した有機アミノシランガスがO
3ガスにより酸化されて成膜されるシリコン酸化膜62もトレンチTの内面において均一に成膜され得る。
【0058】
このようなシーケンスを繰り返し、
図10(d)に示すようにトレンチTにシリコン酸化膜62が充填されてゆく。
【0059】
図10(e)のように、トレンチTにシリコン酸化膜62が最終的に充填され、トレンチTの埋め込みが完了する。
【0060】
ここで堆積したシリコン酸化膜は、400℃の低温プラズマで成膜を行った場合よりもウェットエッチングレートが低く、品質の良い膜である。
【0061】
しかしながら、このレベルは、従来の低温プラズマプロセスにより成膜よりは膜質が向上しているものの、熱酸化により生成されたシリコン酸化膜と比較すると、膜質が依然劣っている場合が多い。即ち、熱酸化膜と比較すると、酸化が不十分である場合が多々ある。
【0062】
よって、本実施形態に係る成膜方法では、トレンチTを埋め込んだ後、アニールを行ってシリコン酸化膜62を加熱処理する。アニールは、成膜温度よりも高い温度で行う。即ち、成膜温度が600℃の場合には、アニール温度は600℃を超える温度で行う。しかしながら、成膜温度とアニール温度が50℃以下では、アニールを実施しても大きな効果が得られない場合が多いので、成膜温度よりも100℃以上高い温度に設定してアニールを行うことが好ましく、更に好ましくは成膜温度よりも150℃以上高い温度でアニールを行うことが好ましく、成膜温度よりも200℃以上高い温度でアニールを行うことが一層好ましい。
【0063】
例えば、600℃で成膜を行った場合、700℃以上の温度でアニールを行うことが好ましく、750℃以上の温度でアニールを行うことが更に好ましく、800℃以上の温度でアニールを行うことが一層好ましい。
【0064】
アニール処理は、真空容器1内で行ってもよいし、別のアニール装置内で行ってもよい。真空容器1内で行う場合には、ヒータユニット7の温度を600℃を超える温度、例えば800℃に設定して加熱することになる。
【0065】
しかしながら、プラズマ処理を行う成膜装置においては、そのようなアニールレベルの高温を想定して装置を製造していない場合も多い。そのような場合には、真空容器1からウエハWを取り出し、アニール装置に移送してアニール処理を行う。
【0066】
[成膜システム]
図11は、アニール装置を設ける場合の成膜システムの全体構成の一例を示し図である。
図11(a)は、成膜装置及びアニール装置の全体構成の一例を示した図である。
【0067】
図11(a)に示されるように、クラスター型の成膜装置に、本実施形態に係る成膜装置120と、アニール装置140が配置されている。また、成膜装置120とアニール装置140との間に、搬送ステーション130が設けられている。成膜処理が終了したウエハWは、搬送ステーション130を介してアニール装置140に搬送される。そして、アニール装置で加熱処理される。
【0068】
図11(b)は、アニール装置の一例を示した断面図である。
図11(b)に示されるように、複数枚のウエハWを処理容器141内に積載し、ヒータ142で加熱することにより、ウエハWをアニールすることができる。アニール後は、搬送ステーション130を介してウエハWを搬出すればよい。
【0069】
このように、成膜装置120とアニール装置140とを近隣に配置し、搬送ステーション130のような搬送手段を用いてウエハWを成膜装置120からアニール装置140に移送し、アニール処理を行えばよい。
【0070】
このような処理を行うことにより、ウエハW上のシリコン酸化膜62を熱酸化膜と同程度の均一な品質とすることができる。
【0071】
[実施例]
以下、本実施形態に係る成膜方法を実施した実施例について説明する。
【0072】
[実施例1]
図12は、実施例1の結果を示した図である。実施例1においては、平坦面上にALDでシリコン酸化膜を成膜した場合において、400℃の低温プラズマと600℃の高温プラズマとで膜質を比較した。
【0073】
図12の左側が600℃で3DMASをシリコン含有ガスとして用いてALDを行った結果を示しており、右側が400℃でDIPAS(di-isopropylamino silane、ジイソプロピルアミノシラン)をシリコン含有ガスとして用いてALDを行った結果を示している。
【0074】
図12において、PDAと記載されているのは、Post Deposition Anneal であり、成膜後のアニールという意味である。また、縦軸はウェットエッチングレート[Å/min]を示しており、成膜後にウェットエッチングを行い、エッチングレートが低ければより高密度で高品質な膜であることを意味する。条件としては、ウエハWの平坦面上にALD成膜を実施した例を示しており、プラズマのガスはAr/O
2/H
3の混合ガスを用いた。圧力は1.2[Torr]、回転テーブル2の回転速度は20[rpm]である。
【0075】
成膜後のアニール無し同士で比較すると、600℃の高温プラズマプロセスの方が、プラズマなし、4000Wの高周波出力とした場合のいずれにおいても400℃の低温プラズマプロセスよりもエッチングレートが低い。よって、従来の400℃の低温プラズマよりも、600℃の高温プラズマの方が膜質が良いことが示された。
【0076】
また、750℃の成膜後アニールを行った場合、プラズマプロセスを行わない場合は、400℃のプロセスの方がエッチングレートが低いが、高温プラズマと低温プラズマとの比較においては、やはり高温プラズマと成膜後アニールの併用の方が、低温プラズマと成膜後アニールよりもエッチングレートが低くなっていることが分かる。
【0077】
このように、600℃で行う高温プラズマは、400℃で行う低温プラズマよりも、成膜後アニールがある場合もない場合も、膜質が良好であることが示された。
【0078】
[実施例2]
図13は、実施例2の結果を示した図である。実施例2においては、窪みパターンが形成されたウエハWにALDでシリコン酸化膜を成膜した場合において、400℃の低温プラズマと600℃の高温プラズマとで膜質を比較した。成膜条件は実施例1と同様であるが、トレンチTの深さに応じてエッチングレートを測定している。測定点は、左から、トップ、トップから50nmの深さ、トップから200nmの深さ、トップから500nmの深さ、トップから1000nmの深さ、トップから2000nmの深さ、トップから3000nmの深さ、トップから5000nmの深さ、トップから7000nmの深さの点である。
【0079】
左側の欄の、600℃の高温プラズマで成膜後アニールがない場合と、400℃の低温プラズマで成膜後アニールがない場合とを比較すると、600℃の高温プラズマの方が、エッチングレートが低い値となっており、膜質が良いことを示している。
【0080】
また、右側の750℃の成膜後アニールを実施した場合においても、やはり600℃の高温プラズマプロセスの方が400℃の低温プラズマプロセスのエッチングレートよりも低くなっており、良質な膜であることが示されている。
【0081】
このように、実施例2によれば、平坦面上の成膜と同様に、窪みパターン内への成膜においても、600℃の高温プラズマプロセスの方が、400℃の低温プラズマプロセスよりも膜質が良好であることが示された。
【0082】
[実施例3]
図14は、実施例3の実施結果を示した図である。
図14においては、熱酸化膜との比較において、成膜後アニールの温度によりエッチングレートがどのように変化するかを示している。熱酸化膜のエッチングレートは、左端に示すように1として正規化している。
【0083】
成膜後のアニールが、750℃で60分の実施では4.8であり、800℃で60分の実施では3.7である。また、850℃で60分の実施では2.4である。これらは、プラズマプロセスを行わなかった場合の結果であり、アニールの特性を示している。アニールのみでは、2.4が最も低い値であり、熱酸化膜の1とは開きがある。しかしながら、
図14の最も右側に示すように、600℃の高温プラズマプロセスを併用して850℃の成膜後アニールを行うと、エッチングレートが1.3まで低下し、熱酸化膜にかなり近づく。
【0084】
このように、実施例3によれば、高温プラズマプロセスと成膜後アニールとを併用すると、熱酸化膜のレベルの膜質にまでシリコン酸化膜の膜質を向上できることが示された。
【0085】
[実施例4]
図15は、実施例4の実施結果を示した図である。実施例4においては、実施例3と同様に熱酸化膜のエッチングレートを1とし、600℃の高温プラズマプロセスにおいて、高周波電源の出力がどのような影響を与えるかを調べた。
【0086】
図15において、最も左側は熱酸化膜のエッチングレートである。次のグラフは、成膜後のアニールを行わずに高周波電源の出力を徐々に上げていった例を示している。プラズマをオフとしていた場合、7.2だったエッチングレートが、高周波電力の出力を3000Wにした所、1.3まで低下した、また、5000Wまで増加させても、1.3でエッチングレートは変わらなかった。
【0087】
次いで、成膜後のアニールを750℃で実施した場合、プラズマなしではエッチングレートが5.5であった。プラズマなしで成膜後のアニールの温度を800℃に上げると、4.2まで低下した。そして、アニールの温度を850℃まで上げると、エッチングレートは2.5まで低下した。次いで、成膜後アニールを850℃のまま、プラズマの高周波電源の出力を3000Wとして600℃の高温プラズマプロセスを実施した所、1.2までエッチングレートが低下した。更に、高周波電源の出力を5000Wまで増加させた所、1.1まで低下し、熱酸化膜のエッチングレートに極めて近くなった。
【0088】
このように、実施例4によれば、600℃の高温プラズマプロセスと成膜後のアニールの温度を上げていき、850℃まで持っていくと、熱酸化膜のレベルの膜質を実現できることが示された。
【0089】
[実施例5]
図16は、実施例5の実施結果を示した図である。実施例5においては、成膜後のアニールの効果と高温プラズマの効果を測定した。
【0090】
図16(a)は、プラズマを発生させずに、成膜後のアニールの効果測定を行った例である。
図16(a)に示されるように、アニールなしではエッチングレートは非常に高いが、800℃で成膜後にアニールを行った場合、850℃で成膜後にアニールを行った場合には、エッチングレートが大きく低下したことが示されている。また、パターンが形成されたウエハについて測定を行っており、測定点は、トップ、トップから50nmの深さ、トップから150nmの深さ、トップから1600-2000nmの深さの底面側の4点で行った。
【0091】
図16(a)において、破線の3nm/minのエッチングレートは熱酸化膜のエッチングレートであり、これよりも低くなると合格ラインである。
図16(a)に示される通り、成膜後のアニールのみでは、熱酸化膜の基準まで到達することはできなかった。
【0092】
図16(b)は、5000Wの高周波電源の出力で高温プラズマプロセスを行った場合を示した図である。まず、
図16(b)に示されるように、高温プラズマプロセスを導入した段階で、エッチングレートはかなり低下する。しかしながら、合格ラインはトップのみ到達で、他の測定点では到達していない。
【0093】
800℃の0成膜後アニールを行うと、トップ以外の3点は合格ラインに到達した。次いで、成膜後アニールの温度を850℃まで上げると、全ての測定点で合格ラインをクリアすることができた。
【0094】
このように、実施例5によれば、5000Wという高出力で高温プラズマプロセスを行い、アニールを850℃といった高温に設定すれば、熱酸化膜のレベルよりも良好な膜質のシリコン酸化膜を成膜することが可能であることが示された。
【0095】
以上説明した通り、本実施形態に係る成膜方法によれば、600℃以上の高温プラズマプロセスでALDを実施し、それよりも高い温度で成膜後にアニールを行うことにより、熱酸化膜のレベルの膜質にまでシリコン酸化膜の膜質を向上させることができる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、4・・・凸状部、5・・・突出部、7・・・ヒータユニット、10・・・搬送アーム、11・・・天板、12・・・容器本体、15・・・搬送口、21・・・コア部、24・・・凹部(基板載置部)、31,32・・・反応ガスノズル、41,42・・・分離ガスノズル、43・・・溝部、44・・・(低い)天井面、45・・・(高い)天井面、51・・・分離ガス供給管、610,620・・・排気口、640・・・真空ポンプ、72,73・・・パージガス供給管、80・・・プラズマ発生源、82・・・ファラデー遮蔽板、85・・・アンテナ、87・・・高周波電源、92・・・ガス導入ノズル、C・・・中心領域、D・・・分離領域、E1,E2・・・排気領域、S・・・内部空間、Ms・・・有機アミノシランガス(第1の反応ガス)の分子、Mo・・・オゾンガス(第2の反応ガス)の分子、Hy・・・OH基、T・・・トレンチ、W・・・ウエハ