(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】濃度制御システム、濃度制御プログラム、及び濃度制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240820BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240820BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
C23C16/44 B
(21)【出願番号】P 2021000892
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-309075(JP,A)
【文献】特開2019-192865(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079766(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/085704(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する濃度制御システムであって、
前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系と、
前記材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整した後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整するように構成されている、濃度制御システム。
【請求項2】
前記目標濃度分布が一の前記供給エリアにピークを有しており、
前記制御装置が、前記一の供給エリアと隣り合う他の前記供給エリアの材料ガス流量を調整して、二次元濃度分布のピークを前記一の供給エリア内で移動させる、請求項1記載の濃度制御システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整して、前記供給エリアそれぞれにおいて算出された算出平均濃度を、前記目標濃度分布における前記供給エリアそれぞれの目標平均濃度に近づけるように制御する、請求項1又は2記載の濃度制御システム。
【請求項4】
前記複数の供給エリアが、前記チャンバの中心部に設定された中心エリアと、その中心エリアを取り囲む少なくも1つの環状エリアとからなる、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の濃度制御システム。
【請求項5】
前記中心エリア及び前記環状エリアが、前記チャンバの周方向に分割された複数の分割エリアからなり、
前記材料ガス供給系が、前記複数の分割エリアそれぞれに対応して設けられている、請求項4記載の濃度制御システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記材料ガス供給系を制御して、前記分割エリア別の材料ガス濃度を調整することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に近づけるように制御する、請求項5記載の濃度制御システム。
【請求項7】
前記チャンバが、
前記材料ガスが供給される内部空間を有したチャンバ本体と、
前記内部空間を覆うとともに、前記各供給エリアに対応した複数の供給ポートが形成された蓋部材と、
前記蓋部材の前記内部空間側に設けられ、前記複数の供給ポートを仕切る仕切部材とを有する、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載の濃度制御システム。
【請求項8】
前記ガス供給系が、
前記各供給エリアそれぞれに接続された材料ガス供給路と、
前記各材料ガス供給路に設けられた第1流体制御機器と、
前記各材料ガス供給路に接続された希釈ガス供給路と、
前記各希釈ガス供給路に設けられた第2流体制御機器とを有している、請求項1乃至7のうち何れか一項に記載の濃度制御システム。
【請求項9】
前記チャンバの周壁に形成された入射窓に向かって前記チャンバの周囲の複数箇所からレーザ光を射出するレーザ射出機構と、
前記複数箇所から射出されて前記チャンバ内を通過し、前記チャンバの周壁に形成された射出窓から射出する各レーザ光を検出するレーザ検出機構と、
前記レーザ検出機構により検出された前記各レーザ光の光強度信号を取得するとともに、その光強度信号に基づいて、前記チャンバ内における前記材料ガスの二次元濃度分布を算出する二次元濃度分布算出部とを有している、請求項1乃至8のうち何れか一項に記載の濃度制御システム。
【請求項10】
基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する濃度制御システムに用いられるプログラムであって、
前記濃度制御システムが、前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系と、前記材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する制御装置とを備え、
前記制御装置に、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整させた後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整させる、濃度制御プログラム。
【請求項11】
基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する方法であり、前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する濃度制御方法であって、
前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整した後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整する、濃度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度制御システム、濃度制御プログラム、及び濃度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造プロセスに用いられる材料ガスの濃度制御システムとしては、特許文献1に示すように、基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所望の目標濃度分布に制御するべくなされたものがある。
【0003】
具体的にこのシステムは、チャンバの内部空間が、シャワーヘッド(多数の小孔が形成された平板部材)によって、材料ガスが供給される上部空間と、基板を収容する下部空間とに仕切られており、さらに上方空間が仕切板によって複数の部屋に区切られている。そして、それぞれの部屋の下方に設定された供給エリアへの材料ガスの流量及び濃度を独立して制御できるようにすることで、下部空間に供給される材料ガスの二次元濃度分布を制御できるようにしている。
【0004】
ところで、目標濃度分布として、ある供給エリア(以下、一の供給エリアという)から供給される材料ガスの濃度を、他の供給エリアから供給される材料ガスの濃度よりも高くする、言い換えれば、目標濃度分布として、一の供給エリアにピークを持たせることが必要となる場合がある。
【0005】
しかしながら、一の供給エリアには、一の供給エリアに隣り合う他の供給エリアに供給される材料ガスの一部が流れ込むので、例えば他の供給エリアに供給する流量を変えれば、一の供給エリアに現れていたピークが移動してしまう。
【0006】
このことから、材料ガスの二次元濃度分布を所望の目標濃度分布に制御するためには、それぞれの供給エリアに供給される材料ガスの流量及び濃度を制御しなければならないが、これらの制御パラメータは互いに独立しておらず、相互に影響を及ぼし合うことから、制御が非常に困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであって、基板を収容するチャンバに供給される材料ガスの二次元濃度分布を、例えばピークのある所望の目標濃度分布に制御できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る濃度制御システムは、基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する濃度制御システムであって、前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系と、前記材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整した後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
このような濃度制御システムによれば、まず供給エリア別の材料ガス流量を調整することにより、二次元濃度分布のピークを目標濃度分布のピークの位置まで移動させることができ、その後、例えば材料ガス流量を固定したまま、供給エリア別の材料ガス濃度を調整することにより、ピークの位置を移動させずに或いは無視できる程度の移動に留まらせつつ、ピークの濃度値を変えることができる。その結果、チャンバに供給される材料ガスの二次元濃度分布を所望の目標濃度分布に制御することが可能となる。
【0011】
より具体的な態様としては、例えば目標濃度分布が一の供給エリアにピークを有する場合、前記制御装置が、前記一の供給エリアと隣り合う他の前記供給エリアの材料ガス流量を調整して、二次元濃度分布のピークを前記一の供給エリア内で移動させる態様を挙げることができる。
このような構成であれば、二次元濃度分布のピークを目標濃度分布のピークの位置に移動させることができる。
【0012】
二次元濃度分布をより精度良く目標濃度分布に制御するためには、前記制御装置が、前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整して、前記供給エリアそれぞれにおいて算出された算出平均濃度を、前記目標濃度分布における前記供給エリアそれぞれの目標平均濃度に近づけるように制御することが好ましい。
【0013】
本発明のアプリケーションの一例であるプラズマ処理においては、チャンバ内に発生させたプラズマの密度分布は必ずしも一様になるとは限らず、例えばチャンバの中心部と外周部とではプラズマ密度に差がある場合がある。このことに鑑みれば、材料ガスの目標濃度分布としては、チャンバの中心部や外周部にピークを持たせることが必要となる場合がある。なお、このように目標濃度分布のピークを所望の位置に持たせる必要性は、必ずしもプラズマ処理に限らず、例えばプラズマレスのエッチングやCVD等の種々の基板処理においても求められることである。
そこで、前記複数の供給エリアが、前記チャンバの中心部に設定された中心エリアと、その中心エリアを取り囲む少なくも1つの環状エリアとからなることが望ましい。
このような構成であれば、チャンバの中心部や環状エリアに二次元濃度分布のピークを持たすことができる。
【0014】
前記中心エリア及び前記環状エリアが、前記チャンバの周方向に分割された複数の分割エリアからなり、前記材料ガス供給系が、前記複数の分割エリアそれぞれに対応して設けられていることが望ましい。
これならば、中心エリアや環状エリアを複数の分割エリアに細分化しているので、二次元濃度分布のより細やかな制御が可能となる。
【0015】
より具体的な実施態様としては、前記制御装置が、前記材料ガス供給系を制御して、前記分割エリア別の材料ガス濃度を調整することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に近づけるように制御する態様を挙げることができる。
【0016】
複数の供給エリアを設定するための具体的な構成としては、前記チャンバが、前記材料ガスが供給される内部空間を有したチャンバ本体と、前記内部空間を覆うとともに、前記各供給エリアに対応した複数の供給ポートが形成された蓋部材と、前記蓋部材の前記内部空間側に設けられ、前記複数の供給ポートを仕切る仕切部材とを有する構成を挙げることができる。
【0017】
供給エリア別の材料ガス流量や材料ガス濃度を個別に調整するためには、前記ガス供給系が、前記各供給エリアそれぞれに接続された材料ガス供給路と、前記各材料ガス供給路に設けられた第1流体制御機器と、前記各材料ガス供給路に接続された希釈ガス供給路と、前記各希釈ガス供給路に設けられた第2流体制御機器とを有していることが好ましい。
【0018】
二次元濃度分布を得るための実施態様としては、前記チャンバの周壁に形成された入射窓に向かって前記チャンバの周囲の複数箇所からレーザ光を射出するレーザ射出機構と、前記複数箇所から射出されて前記チャンバ内を通過し、前記チャンバの周壁に形成された射出窓から射出する各レーザ光を検出するレーザ検出機構と、前記レーザ検出機構により検出された前記各レーザ光の光強度信号を取得するとともに、その光強度信号に基づいて、前記チャンバ内における前記材料ガスの二次元濃度分布を算出する二次元濃度分布算出部とを有している構成を挙げることができる。
【0019】
また、本発明に係る濃度制御プログラムは、基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する濃度制御システムに用いられるプログラムであって、前記濃度制御システムが、前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系と、前記材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する制御装置とを備え、前記制御装置に、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整させた後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整させることを特徴とするものである。
【0020】
さらに、本発明に係る濃度制御方法は、基板を収容するチャンバ内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御する方法であり、前記チャンバ内に設定された複数の供給エリアそれぞれに対応して設けられた材料ガス供給系を制御することで、前記二次元濃度分布を前記目標濃度分布に制御する濃度制御方法であって、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス流量を調整した後、前記材料ガス供給系を制御して前記供給エリア別の材料ガス濃度を調整することを特徴とする方法である。
【0021】
これらの濃度制御プログラムや濃度制御方法によれば、上述した濃度制御システムと同様の作用効果を発揮させることできる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、基板を収容するチャンバに供給される材料ガスの二次元濃度分布を所望の目標濃度分布に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態の濃度制御システムの構成を模式的に示す図。
【
図2】同実施形態のレーザ射出機構及びレーザ検出機構の構成を模式的に示す図。
【
図4】同実施形態のチャンバの構成を示す分解斜視図。
【
図5】同実施形態のチャンバに形成された光路を模式的に示す断面図。
【
図7】同実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図。
【
図9】同実施形態の制御装置の濃度制御動作を示すフローチャート。
【
図10】その他の実施形態における仕切部材の構成を模式的に示す斜視図。
【
図11】その他の実施形態における制御装置の濃度制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る濃度制御システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
本実施形態の濃度制御システムは、半導体製造プロセスに用いられるものであり、ウエハ等の基板に対してエッチング等の基板処理に資するものである。なお、基板への成膜や洗浄等の基板処理にこの濃度制御システムを用いても構わない。
【0026】
具体的にこの濃度制御システム100は、
図1に示すように、基板(不図示)を収容するチャンバ10と、チャンバ10に例えばCH
4などの材料ガスを供給する材料ガス供給路L1と、チャンバ10に供給された材料ガスを排出する材料ガス排出路L2とを具備している。なお、材料ガスとしては、CH
4に限らず、SiF
4やCF
xなど適宜変更して構わない。
【0027】
チャンバ10は、基板を収容する内部空間Sが形成されたものであり、この内部空間Sには基板を加熱するためのヒータHが設けられている。そして、この実施形態では、ヒータHによって基板を加熱するとともに、チャンバ10に材料ガスを供給しながら、該チャンバ10の内部空間Sにプラズマを発生させることで、上述した基板処理が行われる。なお、基板処理としては、必ずしも基板を加熱する必要やプラズマを発生させる必要はなく、チャンバ10としては、例えばプラズマレスの基板処理など種々の基板処理に用いて構わない。
【0028】
このチャンバ10には、材料ガスが供給される複数の供給ポートP1と、内部空間Sに供給された材料ガスを排出する排出ポートP2とが形成されている。
【0029】
材料ガス供給路L1は、一端が上述した供給ポートP1に接続されるとともに、他端が材料ガスのガス源Z1に接続されている。ここでは、複数の供給ポートP1それぞれに材料ガス供給路L1が接続されており、これら複数の材料ガス供給路L1は、互いに並列に設けられている。これにより、各材料ガス供給路L1を流れる材料ガスの流量等を独立して制御することができる。
【0030】
各材料ガス供給路L1には、1又は複数の開閉弁V1と、材料ガスの流量や圧力等の物理量を制御する第1流体制御機器MFC1とが設けられている。ここでの第1流体制御機器MFC1は、材料ガス供給路L1に流れる材料ガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラであり、材料ガス供給路L1に流れる実流量を算出し、その実流量が予め入力された目標流量に近づくように、流体制御弁(不図示)を制御するものである。
【0031】
また、各材料ガス供給路L1には、材料ガスを希釈する例えば窒素ガス等の希釈ガスが流れる希釈ガス供給路L3が接続されており、これら複数の希釈ガス供給路L3は、互いに並列に設けられている。これにより、各希釈ガス供給路L3を流れる希釈ガスの流量等を独立して制御することができる。
【0032】
各希釈ガス供給路L3は、一端が材料ガス供給路L1に接続されるとともに、他端が希釈ガスのガス源Z2に接続されており、1又は複数の開閉弁V2と、希釈ガスの流量や圧力等の物理量を制御する第2流体制御機器MFC2とが設けられている。ここでの第2流体制御機器MFC2は、上述した第1流体制御機器MFC1と同様、希釈ガスの流量を制御する差圧式又は熱式のマスフローコントローラであり、希釈ガス供給路L3に流れる実流量を算出し、その実流量が予め入力された目標流量に近づくように、流体制御弁(不図示)を制御するものである。
【0033】
材料ガス排出路L2は、一端が上述した排出ポートP2に接続されており、他端がチャンバ10の外部に位置する例えば吸引ポンプPに接続されている。この材料ガス排出路L2には、調圧弁等の調圧手段V3や開閉弁V4が設けられている。
【0034】
本実施形態の濃度制御システム100は、
図2に示すように、チャンバ10の周囲の複数箇所からチャンバ10内にレーザ光を射出するレーザ射出機構20と、複数箇所から射出されてチャンバ10内を通過した各レーザ光を検出するレーザ検出機構30と、レーザ検出機構30により検出された各レーザ光の光強度信号を取得して、濃度制御システム100の動作を制御する制御装置40とをさらに具備している。
【0035】
まず、チャンバ10をより詳細について説明すると、本実施形態のチャンバ10は、
図3~
図5に示すように、上述した内部空間Sを有するチャンバ本体11と、内部空間Sを上方から覆う上側蓋部材12と、上側蓋部材12の下方に設けられて多数の小孔h1が形成された多孔部材13と、多孔部材13の下方に設けられて内部空間Sを下方から覆う下側蓋部材14とを有している。
【0036】
チャンバ本体11は、
図4に示すように、例えば回転体形状の内部空間Sを形成する内周面111と、レーザ光を透過させる入射窓W1及び射出窓W2が形成された外周面112とを有している。また、チャンバ本体11の底壁の中央部には、上述した排出ポートP2が1つ形成されている。なお、排出ポートP2の数や配置は適宜変更して構わない。
【0037】
本実施形態のチャンバ本体11は、外周面112が多角形状をなしており、外周面112のうちの互いに対向する一対の辺部の一方に入射窓W1が形成され、他方に射出窓W2が形成されている。ここでの外周面112は八角形であり、連続する半数(4つ)の辺部に入射窓W1が形成され、それ以外の連続する半数(4つ)の辺部に射出窓W2が形成されている。なお、外周面の形状はこれに限られるものではなく適宜変更して良いし、入射窓W1や射出窓W2の数は配置も適宜変更して構わない。
【0038】
さらにチャンバ本体11には、
図5に示すように、内周面111と外周面112とを貫通するレーザ光路Xが形成されている。ここでは、外周面112の1つの辺部に対して複数本のレーザ光路Xが形成されており、これら複数本のレーザ光路Xが対向する辺部まで延びている。つまり、外周面112の互いに対向する一対の辺部に対して複数本のレーザ光路Xが形成されており、ここでは一対の辺部に対して8本、合計32本のレーザ光路Xが形成されている。なお、一対の辺部に対する本数や合計本数は適宜変更して構わない。
【0039】
これらのレーザ光路Xは、いずれも同一平面状に形成されている。具体的には、各レーザ光路Xは、内部空間Sの中心軸Oに直交する平面に沿って、言い換えれば内部空間Sに収容された基板に沿って形成されている。
【0040】
上側蓋部材12は、
図3及び
図4に示すように、チャンバ10の上壁を構成しており、上述した複数の供給ポートP1が形成された例えば円形平板状のものである。複数の供給ポートP1は、例えば上面視において列状に配置されており、ここでは5つの供給ポートP1が配置されている。ただし、供給ポートP1の数や配置は適宜変更して構わない。
【0041】
多孔部材13は、
図3及び
図4に示すように、上側蓋部材12の下方に隙間を隔てて配置されたものである。これにより、内部空間Sは多孔部材13よりも上方の上部空間S1と、多孔部材13よりも下方の下部空間S2とに仕切られている。この多孔部材13は、厚み方向に貫通する多数の小孔h1が形成された所謂シャワーヘッドとも称されるものであり、供給ポートP1から上部空間S1に供給された材料ガスが、これら多数の小孔h1に分散しながら下部空間S2の全体に行き渡るようにしてある。
【0042】
下側蓋部材14は、
図3及び
図4に示すように、内部空間Sに供給された材料ガスを排出ポートP2に導く複数の貫通孔h2が形成されており、ここでは基板(不図示)が載置される基板保持部材としても用いられる。この下側蓋部材14は、例えば円形平板状のものであり、下面には例えばカートリッジヒータ等のヒータHが複数設けられている。
【0043】
ここで、本実施形態の多孔部材13は、
図6に示すように、上側蓋部材12の下方に設けられて複数の供給ポートP1を仕切る仕切部材15を有している。
【0044】
仕切部材15は、上側蓋部材12と多孔部材13との間に介在して、複数の供給ポートP1を空間的に仕切るものであり、上側蓋部材12と多孔部材13とに当接する例えば平板状のものである。この仕切部材15は、ここでは多孔部材13と一体的に形成されているが、上側蓋部材12と一体的に設けられていても良いし、多孔部材13や上側蓋部材12とは別体のものであっても良い。
【0045】
この仕切部材15によって複数の供給ポートP1が空間的に仕切られることで、上部空間S1は複数の部屋aに仕切られる。ここでの仕切部材15は、上部空間S1を当該上部空間S1の中心部に位置する円状の部屋a1と、この円状の部屋a1を取り囲む少なくとも1つの環状の部屋a2とに仕切るものである。より具体的に説明すると、ここではリング状の仕切部材15が複数設けられており、これらの仕切部材15は、同心円状に位置するとともに、それぞれの仕切部材15の中心を中心軸Oが通過するように配置されている。
【0046】
かかる構成により、それぞれの供給ポートP1から供給された材料ガスは上部空間S1の何れか1つの部屋aにのみ供給され、各供給ポートP1から供給された材料ガスは、上部空間S1では混ざり合うことなく下部空間S2に導かれる。なお、この実施形態では、円状の部屋a1には1つの供給ポートP1が対応して設けられており、環状の部屋a2には複数(2つ)の供給ポートP1が対応して設けられている。
【0047】
この仕切部材15によって、チャンバ10内には、複数の部屋aに対応する複数の供給エリアαが設定される。より詳細に説明すると、各供給エリアαは、チャンバ10の下部空間S2に設定された領域であり、仕切部材15によって仕切られた上部空間S1の各部屋aの下方にそれぞれに位置する領域である。言い換えれば、それぞれの供給ポートP1から供給された材料ガスが、主として1つの供給エリアαに供給されるように構成されており、ここでの供給エリアαは、上部空間S1の部屋aと同様、チャンバにお中心部に設定された円状の中心エリアα1と、その中心エリアα1を取り囲む少なくとも1又は複数の環状エリアα2、α3とからなる。
【0048】
上述した構成において、下部空間S2に導かれた材料ガスは、下側蓋部材14の外周部に設けられた貫通孔h2に流れ込むことから、この材料ガスの流れの上流側に中心エリアα1が位置し、下流側に環状エリアα2、α3が位置していることになる。
【0049】
このようにチャンバ10内に複数の供給エリアαが設定されている構成において、
図1に示すように、それぞれの供給エリアαに独立して材料ガスを供給するための材料ガス供給系GSが設けられている。この材料ガス供給系GSは、上述した材料ガス供給路L1、第1流体制御機器MFC1、希釈ガス供給路L3、及び第2流体制御機器MFC2を有するものであり、複数の供給エリアαそれぞれに対応して設けられている。より詳細に説明すると、ある供給エリアαに対応する材料ガス供給系GSとは、主としてその供給エリアαに材料ガスを供給する1又は複数の供給ポートP1に接続された材料ガス供給路L1と、その材料ガス供給路L1に設けられた第1流体制御機器MFC1と、その材料ガス供給路L1に接続された希釈ガス供給路L3と、その希釈ガス供給路L3に設けられた第2流体制御機器MFC2とから構成されている。
【0050】
次に、レーザ射出機構20、レーザ検出機構30、及び制御装置40について説明する。
【0051】
レーザ射出機構20は、
図2に示すように、チャンバ10の周壁に形成された入射窓W1に向かってチャンバ10の周囲の複数箇所からレーザ光を射出するものである。具体的にこのレーザ射出機構20は、例えば半導体レーザ等のレーザ光源21と、レーザ光源21から射出されたレーザ光を複数のファイバに分光するファイバスプリッタ22とを有し、各ファイバの射出端部23が、内部空間Sを取り囲むように配置されている。ここでは、チャンバ10の外周面112が多角形状をなしており、外周面112の複数の辺部(具体的には4つの辺部)それぞれに対して、複数のファイバが設けられている。これにより、レーザ光源21から射出されたレーザ光は、四方から内部空間Sに向かって射出される。
【0052】
レーザ検出機構30は、
図2に示すように、複数箇所から射出されてチャンバ10内を通過し、チャンバ10の周壁に形成された射出窓W2から射出する各レーザ光を検出するものである。具体的にこのレーザ検出機構30は、各ファイバから射出されて内部空間Sを通過したレーザ光を検出する複数のレーザ検出器31を有しており、各レーザ検出器31は、内部空間Sを挟むようにファイバの射出端部23に対向配置されている。これらのレーザ検出器31により検出されたレーザ光の強度を示す光強度信号は、アンプA等を介して上述した制御装置40に出力される。
【0053】
制御装置40は、上述した材料ガス供給系GSを制御することで、チャンバ10内に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所定の目標濃度分布に制御するものである。
【0054】
より具体的説明すると、制御装置40は、物理的にはCPU、内部メモリ、入出力手段、AD変換器などを備えた専用乃至汎用のコンピュータであり、前記内部メモリに格納された濃度制御プログラムに基づいて、CPU及びその他の構成要素が協働することによって、
図7に示すように、目標濃度分布受付部41、二次元濃度算出部42、流量調整部43、及び濃度調整部44などの機能を発揮するように構成されたものである。
【0055】
目標濃度分布受付部41は、例えばエッチング等の基板処理のレシピに応じてユーザが予め定めた目標濃度分布を示す目標濃度分布データを受け付けるものである。なお、この目標濃度分布データは、例えば入力手段を介して制御装置40に入力されても良いし、有線又は無線により制御装置40に送信されても良い。濃度分布データとしては、
図8に示すように、チャンバ10の中心からの径方向に沿った距離Rと、その距離における目標濃度との相関を示すデータを挙げることができる。なお、この目標濃度分布の詳細については後述する。
【0056】
二次元濃度算出部42は、レーザ検出機構30により検出された光強度信号を取得するとともに、この光強度信号に基づいてチャンバ10内における二次元濃度分布を算出するものである。ここでいう二次元濃度分布とは、チャンバ10内におけるレーザ光に沿った平面内の濃度分布であり、言い換えればチャンバ10内に収容された基板に沿った濃度分布である。
【0057】
より具体的に説明すると、二次元濃度算出部42は、各レーザ検出器31により検出された光強度信号を所定の二次元濃度分布算出用アルゴリズムに基づいて演算処理することで、互いに直交する2軸で規定される領域の二次元濃度分布を算出するように構成されており、少なくとも上述した複数の供給エリアαの二次元濃度分布を算出する。
【0058】
流量調整部43は、目標濃度分布受付部41が受け付けた目標濃度分布データに基づいて、それぞれの供給エリアαに供給されるエリア別の材料ガス流量を制御するものであり、具体的には上述した材料ガス供給系GSを制御する。
【0059】
より具体的に説明すると、流量調整部43は、目標濃度分布データに基づいて、複数の第1流体制御機器MFC1や複数の第2流体制御機器MFC2それぞれの目標流量を決定し、その目標流量をそれぞれの第1流体制御機器MFC1や第2流体制御機器MFC2に入力して設定するものである。
【0060】
濃度調整部44は、目標濃度分布受付部41が受け付けた目標濃度分布データ、及び、二次元濃度算出部42により算出された二次元濃度分布に基づいて、上述した材料ガス供給系GSを制御する。
【0061】
より具体的に説明すると、濃度調整部44は、目標濃度分布データにおける各供給エリアαの濃度と、二次元濃度分布における各供給エリアαそれぞれの濃度とを比較して、各供給エリアαに対応する第1流体制御機器MFC1や第2流体制御機器MFC2の目標流量をフィードバック制御する。なお、ここでいう各供給エリアαに対応する第1流体制御機器MFC1や第2流体制御機器MFC2とは、各供給エリアαに対応する供給ポートP1(すなわち、各供給エリアαに主として材料ガスを供給する供給ポートP1)に接続された材料ガス供給路L1上の第1流体制御機器MFC1や、この材料ガス供給路L1に接続された希釈ガス供給路L3上の第2流体制御機器MFC2のことである。
【0062】
次に、目標濃度分布の詳細について説明する。
本実施形態の目標濃度分布は、
図8に示すように、上述した供給エリアαのうち、ある供給エリアα(以下、一の供給エリアαという)にピークRp(すなわち、濃度の最大値)を有しており、言い換えれば、一の供給エリアαの目標濃度がその他の供給エリアαの目標濃度よりも高くなるように設定された濃度分布である。
【0063】
この実施形態では、目標濃度分布のより具体的な一例として、
図8に示す濃度分布を取り上げて説明する。すなわち、複数の供給エリアαが、上述したように、中心エリアα1(以下、第1エリアα1という)と、この第1エリアα1を取り囲む環状エリアα2(以下、第2エリアα2という)と、この第2エリアα2を取り囲む環状エリアα3(以下、第3エリアα3という)からなり、目標濃度分布が、第2エリアα2にピークRpを有するものについて説明する。
【0064】
然して、本実施形態の制御装置40は、材料ガス供給系GSを制御して供給エリア別の材料ガス流量を調整した後、材料ガス供給系GSを制御して供給エリア別の材料ガス濃度を調整するように構成されている。
【0065】
以下では、制御装置40の具体的な濃度制御動作について、
図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
まず、目標濃度分布受付部41が目標濃度分布データを受け付けると、制御装置40は、供給エリア別の材料ガス流量や材料ガス濃度の初期値を設定するための初期制御態様を取る。
【0067】
具体的にこの初期制御態様において、制御装置40は、目標濃度分布データに基づいて、供給エリア別の材料ガス流量それぞれを所定の初期流量とし、且つ、供給エリア別の材料ガス濃度それぞれを所定の初期濃度とするように、材料ガス供給系GSを制御する(M1)。
【0068】
本実施形態では、それぞれの供給エリアα1~α3の初期流量が、互いに等しい流量に設定されている。
すなわち、本実施形態の制御装置40は、Q1=Q2=Q3=Qsとなるように材料ガス供給系GSを制御する。なお、Q1は第1エリアα1の材料ガス流量であり、Q2は第2エリアα2への材料ガス流量であり、Q3は第3エリアα3への材料ガス流量であり、Qsは予め設定された初期流量である。
【0069】
一方、それぞれの供給エリアα1~α3の初期濃度は、目標濃度分布データに基づいて設定されている。具体的には、目標濃度分布のピークを有する供給エリアα2の初期濃度は、目標濃度分布における当該供給エリアα2の平均濃度であり、その他の供給エリアα1、α3の初期濃度は、ゼロである。
すなわち、本実施形態の制御装置40は、C1=C3=0且つC2=C2tとなるように材料ガス供給系GSを制御する。なお、C1は第1エリアα1の材料ガス濃度であり、C2は第2エリアα2の材料ガス濃度であり、C3は第3エリアα3の材料ガス濃度である。また、C2tは目標濃度分布における第2エリアα2の平均濃度である。
【0070】
このように、初期制御態様において制御装置40は、Q1=Q2=Q3=Qs、C1=C3=0、且つC2=C2tとなるように第1流体制御機器MFC1及び第2流体制御機器MFC2に目標流量を設定する(M1)。
なお、Q1、Q2、及びQ3は、必ずしも同じ初期流量Qsに設定されている必要はなく、それぞれ別の初期流量に設定されていても良い。また、C1及びC3は、少なくともC2tよりも低い濃度であれば、必ずしもゼロである必要はないし、C1及びC3が必ずしも等しい必要もない。さらに、C2tは、目標濃度分布における第2エリアα2の平均濃度に限らず、例えば目標濃度分布における第2エリアα2の最大濃度であっても良い。
【0071】
次いで、流量調整部43が、材料ガス供給系GSを制御して、供給エリア別の材料ガス流量を調整する(M2、M2’)。
具体的に流量調整部43は、二次元濃度算出部42により算出される二次元濃度分布のピーク位置である実ピーク位置Rpmeasを、目標濃度分布のピーク位置である目標ピーク位置Rptに近づけるように、材料ガス供給系GSを制御する。なお、ここでの各ピーク位置Rpmeas、Rptは、内部空間Sの中心軸Oから各ピークまでの径方向に沿った距離である。
【0072】
より具体的に説明すると、流量調整部43は、目標濃度分布のピークが位置する第2エリアα2に隣り合う供給エリアの材料ガス流量を制御するように構成されており、具体的には第2エリアα2よりも内側、すなわち材料ガスの上流側に設定されている第1エリアα1の材料ガス流量を制御する。これにより、二次元濃度算出部42により算出される二次元濃度分布のピークが、第2エリアα2内で移動する。
【0073】
そこで、本実施形態の流量調整部43は、実ピーク位置Rpmeasが目標ピーク位置Rptに近づくように、第1エリアα1に対応して設けられた第1流体制御機器MFC1や第2流体制御機器MFC2に目標流量を設定する。なお、上述した初期制御態様において、第1エリアα1の初期濃度をゼロとしていることから、ここでの流量調整部43は、第1流体制御機器MFC1の目標流量をゼロとしたまま、第2流体制御機器MFC2の目標流量を変更することになる。
【0074】
このように第1エリアα1の材料ガス流量を調整することにより、実ピーク位置Rpmeasと目標ピーク位置Rptとの差が所定距離を下回った場合、その調整後の材料ガス流量が、供給エリア別の材料ガス流量Q1、Q2、Q3として決定(固定)される(M3)。
【0075】
一方、第1エリアα1の材料ガス流量Q1の調整のみでは、実ピーク位置Rpmeasと目標ピーク位置Rptとの差が所定距離を下回らない場合、流量調整部43は、実ピーク位置Rpmeasが目標ピーク位置Rptに近づくように、第2エリアα2の材料ガス流量Q2や第3エリアα3の材料ガス流量Q3を調整しても良い(M2’)。
【0076】
続いで、濃度調整部44が、材料ガス供給系GSを制御して、供給エリア別の材料ガス濃度を調整する。
具体的に濃度調整部44は、供給エリア別の材料ガス流量を変えることなく、供給エリア別の材料ガス濃度が、目標濃度分布における各供給エリア別の平均濃度に近づくように、材料ガス供給系GSを制御する(M4)。これにより、二次元濃度算出部42により算出される二次元濃度分布のピークや裾などの濃度値を変えることができる。
【0077】
そこで、本実施形態の濃度調整部44は、流量調整部43により調整された供給エリア別の材料ガス流量Q1、Q2、Q3を変えることなく、C1=C1t、C2=C2t、C3=C3tとなるように、第1流体制御機器MFC1や第2流体制御機器MFC2に目標流量を設定する。なお、C1t、C2t、C3tは、目標濃度分布における供給エリアα1~α3それぞれの平均濃度である。
【0078】
その後、濃度調整部44は、二次元濃度算出部42により算出される第1エリアα1の材料ガス濃度である第1算出濃度C1measが、目標濃度分布における第1エリアα1の平均濃度である第1目標濃度C1tに近づくように、第1エリアα1に対応する第1流体制御機器MFC1及び第2流体制御機器MFC2に設定する目標流量を例えばPID制御する(M5)。なお、ここでの第1算出濃度C1measは、第1エリアα1の平均濃度(算出平均濃度)であるが、例えば第1エリアα1のある点における代表濃度であっても良い。
【0079】
また、濃度調整部44は、二次元濃度算出部42により算出される第2エリアα2の材料ガス濃度である第2算出濃度C2measが、目標濃度分布における第2エリアα2の平均濃度である第2目標濃度C2tに近づくように、第2エリアα2に対応する第1流体制御機器MFC1及び第2流体制御機器MFC2に設定する目標流量を例えばPID制御する(M6)。なお、ここでの第2算出濃度C2measは、第2エリアα2の平均濃度(算出平均濃度)であるが、例えば第2エリアα1のある点における代表濃度であっても良い。
【0080】
さらに、濃度調整部44は、二次元濃度算出部42により算出される第3エリアα3の材料ガス濃度である第3算出濃度C3measが、目標濃度分布における第3エリアα3の平均濃度である第3目標濃度C3tに近づくように、第3エリアα3に対応する第1流体制御機器MFC1及び第2流体制御機器MFC2に設定する目標流量を例えばPID制御する(M7)。なお、ここでの第3算出濃度C3measは、第3エリアα3の平均濃度(算出平均濃度)であるが、例えば第3エリアα1のある点における代表濃度であっても良い。
【0081】
その後、制御装置40は、二次元濃度算出部42により算出された各供給エリアαの平均濃度C1meas~C3measそれぞれと、目標濃度分布における各供給エリアαの平均濃度C1t~C3tそれぞれとの例えば平方根二乗誤差等の差Eと、所定の閾値Ethとを比較して、差Eと閾値Ethと差分が所定値εを下回ったか否かを判断する(M8)。
【0082】
そして、制御装置40は、(M8)において差Eと閾値Ethとの差分が所定値εを下回っている場合には、濃度制御動作を終了し、(M8)において差Eと閾値Ethとの差分が所定値εを下回っていない場合には、(M5)~(M7)までの動作を繰り返す。
【0083】
このように構成された濃度制御システム100によれば、制御装置40が、まず供給エリア別の材料ガス流量Q1~Q3を調整することにより、二次元濃度分布の実ピーク位置Rpmeasを目標ピーク位置Rpt又はその近傍まで移動させることができ、その後、材料ガス流量Q1~Q3を固定したまま、供給エリア別の材料ガス濃度C1~C3を調整することにより、実ピーク位置Rpmeasの位置を移動させずに或いは無視できる程度の移動に留まらせつつ、二次元濃度分布の実ピーク位置Rpmeasや裾などの濃度値を変えることができる。
これにより、チャンバ10に供給される材料ガスの二次元濃度分布を所望の目標濃度分布に制御することが可能となり、例えばエッチング等の基板処理に資する。
【0084】
また、供給エリアαが、中心エリアたる第1エリアα1と、環状エリアたる第2エリアα2、第3エリアα3とからなるので、材料ガス濃度を内部空間Sの中心部と外周部とのそれぞれで制御することができ、二次元濃度分布のピークを例えばチャンバ10の中心部や外周部など、径方向における種々の位置に持たせることができ、二次元濃度分布をより所望の目標濃度分布に制御しやすくなる。
【0085】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0086】
例えば、
図10に示すように、前記実施形態の供給エリアαたる中心エリアα1及び環状エリアα2、α3が、チャンバ10の周方向に分割された複数の分割エリアα11~α1N、α21~α2N、α31~α3Nからなるものであり、これらの複数の分割エリアそれぞれに対応させた材料ガス供給系GSを設けても良い。なお、Nは周方向の分割数である。
【0087】
かかる構成において、制御装置40としては、前記実施形態の濃度制御動作における(M8)の後に、材料ガス供給系GSを制御して、分割エリア別の材料ガス濃度を調整することで、二次元濃度分布を目標濃度分布に制御しても良い。
【0088】
より具体的に説明するべく、第2エリアα2を複数に分割した第1分割エリアα21~第N分割エリアα2Nの濃度制御を取り上げて詳述する。
まず、濃度制御部44は、
図11に示すように、二次元濃度算出部42により算出される第1分割エリアα21の材料ガス濃度である第1分割算出濃度C21
measが、目標濃度分布における第1分割エリアα21の平均濃度である第1分割目標濃度C21
tに一致するように、第1分割エリアα21に対応する第1流体制御機器MFC1及び第2流体制御機器MFC2に設定する目標流量を例えばPID制御する(K1)。
【0089】
そして、濃度制御部44は、第1分割エリアα21と同様の濃度制御を、第2分割エリアα22~第N分割エリアα28に対しても行う(K2)~(KN)。
【0090】
その後、制御装置40は、二次元濃度算出部42により算出された各分割エリアα21~2Nの平均濃度C21meas~C2Nmeasそれぞれと、目標濃度分布における各分割エリアα21~2Nの平均濃度C21t~C2Ntそれぞれとの例えば平方根二乗誤差等の差E2と、所定の閾値E2thとを比較して、差E2と閾値E2thと差分が所定値ε2を下回ったか否かを判断する(KX)。
【0091】
そして、制御装置40は、(KX)において差E2と閾値E2thとの差分が所定値ε2を下回っている場合には、濃度制御動作を終了し、(KX)において差E2と閾値E2thとの差分が所定値ε2を下回っていない場合には、(K1)~(KN)までの動作を繰り返す。
【0092】
なお、制御装置40としては、第1エリアα1を分割した複数の分割エリアα11~α1Nや、第3エリアα3を分割した複数の分割エリアα31~α3Nに対しても、第2エリアα2を分割した複数の分割エリアα21~α2Nと同様の濃度制御をするように構成されていても良い。
【0093】
このように、中心エリアや環状エリアを複数の分割エリアに細分化して、それらの分割エリアを濃度制御することにより、二次元濃度分布を前記実施形態よりもさらに細やかに制御することができる。
【0094】
また、前記実施形態では、濃度制御動作を終了するか否かの判定(M8)において、各供給エリアαの平均濃度C1meas~C3measそれぞれと、目標濃度分布における各供給エリアαの平均濃度C1t~C3tそれぞれとの平方根二乗誤差Eを用いていたが、必ずしもこれに限らず、例えば各供給エリアαの平均濃度C1meas~C3measそれぞれと、目標濃度分布における各供給エリアαの平均濃度C1t~C3tそれぞれとの差|C1t-C1meas|、|C2t-C2meas|、|C3t-C3meas|が、何れも所定の閾値以下になっている場合に濃度制御動作を終了するようにしても良い。
【0095】
さらに、チャンバ10としては、前記実施形態では外周面112が多角形状であったが、外周面112は三角形状、矩形状、円形状、楕円形状など適宜変更して構わない。
【0096】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
100 ・・・濃度制御システム
10 ・・・チャンバ
GS ・・・材料ガス供給系
L1 ・・・材料ガス供給路
L2 ・・・材料ガス排出路
L3 ・・・希釈ガス供給路
S ・・・内部空間
P1 ・・・供給ポート
MFC1・・・第1流体制御機器
MFC2・・・第2流体制御機器
15 ・・・仕切部材
α ・・・供給エリア
20 ・・・レーザ射出機構
30 ・・・レーザ検出機構
40 ・・・制御装置
41 ・・・目標濃度分布受付部
42 ・・・二次元濃度算出部
43 ・・・流量調整部
44 ・・・濃度調整部