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特許7540986有機膜形成材料、パターン形成方法ならびに化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】有機膜形成材料、パターン形成方法ならびに化合物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240820BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240820BHJP
   C07D 209/40 20060101ALI20240820BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C09K3/00 K
C07D209/40 CSP
G03F7/26 511
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021166208
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056788
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】小林 直貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖之
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225615(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146670(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0044876(US,A1)
【文献】特開昭61-077046(JP,A)
【文献】特表2016-508507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C09K 3/00
C07D 209/40
G03F 7/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機膜形成材料であって、
下記一般式(1)で示される化合物および有機溶剤を含有するものであることを特徴とする有機膜形成材料。
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化2】
【請求項2】
前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成材料。
【化3】
(前記一般式(3)中、R、R、W、l、pは前記と同じである。m’は1又は2の整数を示す。)
【請求項3】
前記化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成材料。
【請求項4】
前記有機溶剤が、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機膜形成材料。
【請求項5】
更に酸発生剤、架橋剤、界面活性剤および可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機膜形成材料。
【請求項6】
被加工体上に請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
被加工体上に請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARC膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
被加工体上に請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
被加工体上に請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARC膜と前記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記レジスト上層膜のパターン形成方法を、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることを特徴とする請求項6から請求項10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることを特徴とする請求項6から請求項11のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記被加工体を、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜または金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものとすることを特徴とする請求項6から請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記金属を、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、コバルト、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、マンガン、モリブデン、ルテニウムまたはこれらの合金とすることを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする化合物。
【化4】
(前記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化5】
【請求項16】
前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項15に記載の化合物。
【化6】
(前記一般式(3)中、R、R、W、l、pは前記と同じである。m’は1又は2の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜形成材料、パターン形成方法、及び上記材料に好適に用いられる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、より高いドライエッチング耐性がレジスト組成物に求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂と変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保が重要である。
【0006】
このような問題を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングによるパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。上述のようなレジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のものなど、すでに多くのものが公知となっている。
【0008】
一方、近年においては、マルチゲート構造等の新構造を有する半導体装置の製造検討が活発化しており、これに呼応し、レジスト下層膜に対して従来以上の優れた平坦化特性及び埋め込み特性の要求が高まってきている。例えば、下地の被加工基板にホール、トレンチ、フィン等の微小パターン構造体がある場合、レジスト下層膜によってパターン内を空隙なく膜で埋め込む(gap-filling)特性が必要になる。また、下地の被加工基板に段差がある場合や、パターン密集部分とパターンのない領域が同一ウエハー上に存在する場合、レジスト下層膜によって膜表面を平坦化(planarization)する必要がある。下層膜表面を平坦化することによって、その上に成膜するレジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンやその後の被加工基板の加工工程でのマージン低下を抑制することができる。
【0009】
また、埋め込み/平坦化特性に優れた有機膜材料は、多層レジスト用下層膜に限定されず、例えばナノインプリンティングによるパターニングに先立つ基板平坦化等、半導体装置製造用平坦化材料としても広く適用可能である。更に、半導体装置製造工程中のグローバル平坦化にはCMPプロセスが現在一般的に用いられているが、CMPは高コストプロセスであり、これに代わるグローバル平坦化法を担う材料としても期待される。
【0010】
凹凸のある半導体基板を平坦化するための平坦化膜形成のために、芳香族化合物とカルボニル基などの炭素酸素間二重結合をもつ化合物との反応により得られる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献2)。しかしながら、該材料は、基板中の幅の広いトレンチ部位での平坦化性能などが最先端デバイスにおける要求に対しては不十分であり、より広範な基板構造上での平坦性に優れるレジスト下層膜材料が求められてきている。
【0011】
また、上記の通り被加工基板の構造は複雑化しており、さらに被加工基板の表面も歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等も検討されており、多種多様な非加工基板表面形状および材質に対して成膜されることが想定される。そのためプロセスマージンを確保するため優れた埋め込み、平坦化特性だけでなく被加工基板の材質、形状の依存性なく成膜できることも重要な特性となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2004-205685号公報
【文献】WO2019―225615号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板への成膜性、密着性が良好な有機下層膜を形成できる化合物、ならびに該化合物を含有する有機膜形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、
有機膜形成材料であって、
下記一般式(1)で示される化合物および有機溶剤を含有するものである有機膜形成材料を提供する。
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化2】
【0015】
上記一般式(1)で示される本発明の化合物は耐熱性、溶解性に優れるため化合物単体で有機膜材料とすることが可能であり、高分子量体に比べ熱流動性に優れるため有機膜をレジスト下層膜として用いた際にパターン基板に対する埋め込み/平坦化特性にも優れる。上記化合物は、分子内に環状アミド構造を有すため耐熱性を損なわず、基板への密着性や成膜性なども改善することが可能である。さらにWで示されるリンカー部分を適宜選択することにより光学特性やエッチング耐性といった有機膜をレジスト下層膜として用いた場合の諸物性を要求性能に合わせて調整することも可能である。
【0016】
また、前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【化3】
(前記一般式(3)中、R、R、W、l、pは前記と同じである。m’は1又は2の整数を示す。)
【0017】
このような構造を導入することで熱流動性を向上させ埋め込み/平坦化性能をさらに向上させることができる。
【0018】
更に、前記化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることが好ましい。
【0019】
上記化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0020】
加えて、前記有機溶剤が、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0021】
上記有機溶剤が上記混合物であれば、上記化合物に高沸点溶剤の添加による有機膜の熱流動性が付与されることで、有機膜形成材料は高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つものとなる。
【0022】
更に酸発生剤、架橋剤、界面活性剤および可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0023】
上記添加剤を含む有機膜形成材料であれば、塗布性、埋め込み/平坦化特性のより優れたものとなる。
【0024】
本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
パターン形成方法を提供する。
【0025】
上記3層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0026】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARC膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
パターン形成方法を提供する。
【0027】
上記4層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンをより一層高精度で形成することができる。
【0028】
更に、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
パターン形成方法を提供する。
【0029】
この3層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0030】
加えて、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に上記の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、
該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記BARC膜と前記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
パターン形成方法を提供する。
【0031】
この4層レジストプロセスによるパターン形成方法により、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0032】
この場合、前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0033】
上記無機ハードマスクをCVD法あるいはALD法によって形成すると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0034】
また、前記レジスト上層膜のパターン形成方法を、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることが好ましい。
【0035】
上記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として上記方法を用いると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0036】
更に、前記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることが好ましい。
【0037】
現像方法として、アルカリ現像または有機溶剤による現像を用いると、被加工基板に微細なパターンをより高精度で形成することができる。
【0038】
加えて、前記被加工体を、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜または金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものとすることが好ましい。
【0039】
本発明では、上記被加工基板として、例えば、上記のものを用いることができる。
【0040】
また、前記金属を、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、コバルト、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、マンガン、モリブデン、ルテニウムまたはこれらの合金とすることが好ましい。
【0041】
上記金属としてこれらのものを用いることができる。このように、本発明の有機膜形成材料を用いてパターン形成を行うと、被加工基板に上層フォトレジストのパターンを高精度で転写、形成することが可能になる。
【0042】
本発明では下記一般式(1)で示されるものである化合物を提供する。
【化4】
(前記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化5】
【0043】
一般式(1)で示される化合物であれば耐熱性、埋め込み/平坦化特性、および成膜性に優れた有機膜を形成可能な有機膜形成材料用の化合物となる。
【0044】
更に、前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(3)で示されるものであることが好ましい。
【化6】
(前記一般式(3)中、R、R、W、l、pは前記と同じである。m’は1又は2の整数を示す。)
【0045】
このような化合物であれば有機膜形成材料用の化合物の埋め込み/平坦化特性をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように、本発明の化合物は耐熱性に優れ、埋め込み/平坦化性能および成膜性に優れた有機膜を形成するために有用である。また、この化合物を含む有機膜形成材料は、耐熱性、埋め込み/平坦化特性などの諸特性を兼ね備え、加工基板の依存性なく成膜可能な有機膜を形成するのに有用な材料となる。そのため、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジストプロセス又はケイ素含有レジスト中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスといった多層レジストプロセスにおける有機膜形成材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
図2】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
図3】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
図4】実施例における密着性測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
上述の通り、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングプロセスにおいて、幅の広いトレンチ構造(wide trench)など特に平坦化が困難な部分を有する被加工基板上であっても、成膜性、平坦性に優れた有機膜を形成できる有機膜形成材料、これを用いたパターン形成方法、ならびにこのような有機膜形成材料に好適な化合物が求められていた。
【0049】
本発明者は、本発明の特定のヘテロ環構造により主骨格を形成する化合物が埋め込み/平坦化特性に優れた有機膜を形成するために有用なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0050】
即ち、本発明は、有機膜形成材料であって、
下記一般式(1)で示される化合物および有機溶剤を含有するものである有機膜形成材料である。
【化7】
(前記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化8】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
<有機膜形成材料用化合物>
本発明の有機膜形成材料用の化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化9】
(上記一般式(1)中、Rは下記式(2)のいずれかであり、Rはニトロ基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~4のアルキルオキシ基、炭素数2~4のアルキニルオキシ基、炭素数2~4のアルケニルオキシ基、炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。nは0または1を表し、mは1~3の整数を表し、pは0または1を表し、lは0~2の整数を表す。Wは炭素数2~40の2価の有機基である。)
【化10】
【0053】
上記一般式(1)中のWは炭素数2~40の2価の有機基であり、具体的には下記に示される構造などを例示することができる。これらの中でも原料入手の容易さ、熱流動性の付与の観点からアルキレン基が好ましい。
【0054】
【化11】
【0055】
上記一般式(1)中のRは下記式(2)のいずれかである。熱硬化性、流動性付与の観点からエチニル基、またはプロパルギルオキシ基が好ましい。
【化12】
【0056】
はニトロ基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子、水酸基、メトキシ基やエトキシ基などの炭素数1~4のアルキルオキシ基、プロパルギルオキシ基などの炭素数2~4のアルキニルオキシ基、アリルオキシ基などの炭素数2~4のアルケニルオキシ基、メチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1~6の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基を表す。
【0057】
上記一般式(1)としては具体的に下記などを例示できる。R、R2、W、lは上記と同じである。
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
なお、mは1~3の整数、pは0または1を満たす値であればm、pは特に限定されないが、m=1又は2、p=0であることが好ましい。
【0060】
さらに上記化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化15】
(上記一般式(3)中、R、R、W、l、pは上記と同じである。m’は1又は2の整数を示す。)
【0061】
上記一般式(3)の化合物としては具体的に下記などを例示できる、この中でもプロパルギルオキシ基またはエチニル基を置換基として持つ化合物が熱流動性、硬化性の観点から特に好ましい。下記一般式中のW、R、lは上記と同じである。
【0062】
【化16】
【0063】
加えて、上記一般式(1)で表される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることが好ましい。
【0064】
上記化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0065】
本発明の化合物は、芳香環を多数含む構造であるため耐熱性やエッチング耐性に優れ、さらに流動性および硬化性を付与する置換基、成膜性や密着性を付与する複素環構造、また、流動性をさらに高めるためのリンカー構造を組み合わせることが可能であり有機膜形成化合物として有用となる。
【0066】
[化合物の製造方法]
本発明の一般式(1)で示される化合物の製造方法の一例として、2つの脱離基Xを有するX-W―Xで示される化合物とインドール-2,3-ジオン類を原料として塩基触媒を用いた置換反応等により中間体であるビス(インドール-2,3-ジオン)類を得る工程(STEP1)、続くRを置換基として持つアニリンまたはアミノナフタレン類を原料とする酸触媒を用いた脱水縮合反応により目的の化合物を得る工程(STEP2)などが例示できる。STEP1、STEP2に用いる反応には単独または2種以上の原料を用いることも可能であり、これらは要求される特性に応じて適宜選択し組み合わせることができる。R、R、W、n、m、l、pは上記と同じであり、Xはハロゲン化物またはトシレート、メシレートである。
【0067】
【化17】
【0068】
STEP1で示される中間体ビス(インドール-2,3-ジオン)類を得る反応の塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これの触媒の使用量は原料のインドール-2,3-ジオン類のモル数に対して好ましくは0.1~20モル、より好ましくは0.2~10モルの範囲である。
【0069】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等、これらを単独または混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲で使用でき、反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温~150℃が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0070】
反応方法としてはインドール-2,3-ジオン類、X-W―Xで示される化合物を溶媒中に一括で仕込む方法、インドール-2,3-ジオン類、X-W―Xで示される化合物を各々または混合し、分散または溶解したものを滴下して仕込む方法、インドール-2,3-ジオン類、X-W―Xで示される化合物のいずれか一方を溶媒中に分散または溶解後、溶剤に分散または溶解したもう一方を滴下して仕込む方法などがある。また、インドール-2,3-ジオン類、X-W―Xで示される化合物をそれぞれ複数種類仕込む場合は、あらかじめ混合し反応させる方法、個別に順次反応させることもできる。触媒を用いる場合は、インドール-2,3-ジオン類またはX-W―Xで示される化合物に一括に仕込む方法、触媒をあらかじめ分散または溶解した後に滴下する方法などが挙げられる。得られた中間体のビス(インドール-2,3-ジオン)類の反応溶液はSTEP2の脱水縮合反応に続けて進むこともできるが、反応中間体として系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄や貧溶剤で晶出して粉体として回収することもできる。
【0071】
STEP2で示される脱水縮合反応に用いられる酸触媒として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類を用いることができる。これの触媒の使用量は中間体のビス(インドール-2,3-ジオン)類のモル数に対して0.1~20モル、好ましくは0.2~10モルの範囲である。
【0072】
用いられる溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲で使用でき、反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温~150℃が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0073】
反応方法としては、ビス(インドール-2,3-ジオン)類、アニリンまたはアミノナフタレン類と触媒である酸触媒を一括で仕込む方法、ビス(インドール-2,3-ジオン)類、アニリンまたはアミノナフタレン類を分散または溶解後、触媒を一括または分割により添加する方法や溶剤で希釈し滴下する方法、触媒を分散後または溶解後、ビス(インドール-2,3-ジオン)類、アニリンまたはアミノナフタレン類をそれぞれ一括または分割により添加する方法や、溶剤で希釈し滴下する方法がある。このときアニリンまたはアミノナフタレン類の反応性にもよるがビス(インドール-2,3-ジオン)類を1モルとしたとき、アニリンまたはアミノナフタレン類は2モル以上用いることが好ましい。反応終了後、反応に使用した触媒を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い目的物を回収できる。
【0074】
この時使用する有機溶剤としては、目的物を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に制限はないが、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物などを挙げることが出来る。この際に使用する洗浄水は、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0075】
分液洗浄の際に系内の酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0076】
更に、分液洗浄の際に系内の金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0077】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0078】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0079】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0080】
このときの溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0081】
[化合物の製造方法の別法]
また、本発明の有機膜形成材料に用いられる上記一般式(1)で表される化合物の製造方法の別法として、下記に示すようなイミン化合物を、インドール-2,3-ジオン類とアニリン類またはアミノナフタレン類との酸触媒を用いた脱水縮合反応により中間体として得る工程(STEP1)、さらに脱離基Xを有するX-W-Xで表される化合物を原料とする塩基触媒を用いた置換反応(STEP2)を行う方法により得ることができる。この場合、単独または2種以上のX-W-Xを用いることも可能であり、例えば、極性構造を一部導入することにより成膜性や膜の基板への密着力を制御することも可能となる。R、R、W、X、n、m、l、pは上記と同じ。
【0082】
【化18】
【0083】
(STEP1)脱水縮合反応、(STEP2)の置換反応は、それぞれ上記一般式(1)の化合物の製造方法に記載の反応方法、回収方法によって行うことができる。
【0084】
この方法で得られる有機膜形成材料に用いられる化合物の調製には種々のハロゲン化物やトシレートおよびメシレートを要求性能に合わせて単独または複数組み合わせて用いることが可能である。例えば平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造などを持つものを任意の割合で組み合わせることができる。そのためこれらの化合物を用いた有機膜形成材料は埋め込み/平坦化特性および成膜性だけでなく、エッチング耐性や光学特性を高い次元で両立することが可能となる。
【0085】
以上のように、本発明の有機膜形成材料用化合物であれば、優れた埋め込み/平坦化特性および成膜性を発現できる有機膜形成材料を与えるものとなる。
【0086】
<有機膜形成材料>
また、本発明では、有機膜形成材料であって、上述の本発明の有機膜形成材料用の化合物および有機溶剤を含有する有機膜形成材料を提供する。なお、本発明の上記化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
[有機溶剤]
本発明の有機膜形成材料において使用可能な有機溶剤としては、上記の化合物及び含まれる場合には後述の界面活性剤、可塑剤、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。上記有機溶剤の配合量は、上記化合物100質量部に対して好ましくは200~10,000質量部、より好ましくは300~5,000質量部である。
【0088】
このような有機膜形成材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の有機膜形成材料用化合物を含有するため、耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成材料となる。
【0089】
さらに、本発明の有機膜形成材料には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点の有機溶剤(高沸点溶剤)を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成材料用化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0090】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成材料を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、200℃~300℃であることがより好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高すぎることなくベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0091】
また、上記、高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、ベーク時に十分な熱流動性を付与することができ、膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりすることもない。
【0092】
このような有機膜形成材料であれば、上記の有機膜形成材料に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成材料となる。
【0093】
[酸発生剤]
本発明の有機膜形成材料においては、硬化反応を更に促進させるために酸発生剤を添加することができる。上記酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0094】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記酸発生剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100質量部に対して好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0095】
[界面活性剤]
本発明の有機膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することができる。上記界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。上記界面活性剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100質量部に対して好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部である。
【0096】
[架橋剤]
また、本発明の有機膜形成材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、架橋剤を添加することもできる。上記架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、多核フェノール類のメチロールまたはアルコキシメチル型架橋剤、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。上記架橋剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~50質量部である。
【0097】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0098】
多核フェノール系架橋剤(多核フェノール類のメチロールまたはアルコキシメチル型架橋剤)としては、具体的には下記一般式(6)で示される化合物を例示することができる。
【化19】
(式中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。Rは水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。qは1~5の整数である。)
【0099】
Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qとしては具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンからq個の水素原子を除いた基を例示できる。Rは水素原子、又は、炭素数1~20のアルキル基である。炭素数1~20のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、エイコサニル基を例示でき、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0100】
上記一般式(6)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できる。この中でも有機膜の硬化性および膜厚均一性向上の観点からトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。Rは上記と同じである。
【0101】
【化20】
【0102】
【化21】
【0103】
[可塑剤]
また、本発明の有機膜形成材料には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~30質量部である。
【0104】
また、本発明の有機膜形成材料には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0105】
【化22】
(式中、Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Yは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0106】
【化23】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基である。Zは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。jは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0107】
[その他の成分]
本発明の有機膜形成材料には更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、本発明の有機膜形成材料と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。
【0108】
このような材料としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジメチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004-205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005-250434号公報記載のアセナフチレン共重合体、特開2006-227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006-293298号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006-285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010-122656号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008-158002号公報記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0109】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、上記化合物100質量部に対して0~1,000質量部が好ましく、より好ましくは0~500質量部である。
【0110】
これらの成分を配合した上記有機膜形成材料は有機膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料の用途に用いることができる。
【0111】
また、本発明の有機膜形成材料は、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有無機ハードマスク又は中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用有機膜材料として、極めて有用である。
【0112】
(有機膜形成方法)
本発明では、上述の有機膜形成材料を用い、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜の有機膜又は半導体製造用平坦化膜として機能する有機膜を形成する方法を提供する。
【0113】
本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法では、上記の有機膜形成材料を、スピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上600℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上500℃以下、10~300秒の範囲内で行う。デバイスダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、600℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。
【0114】
また、本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法では、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を、上記同様スピンコート法等でコーティングし、上記有機膜形成材料を、酸素濃度0.1体積%以上21体積%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機膜を形成することもできる。
【0115】
本発明の有機膜形成材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。ベーク中の雰囲気としては空気中でも構わないが、酸素を低減させるためにN、Ar、He等の不活性ガスを封入しておくことは、有機膜の酸化を防止するために好ましい。酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールする必要があり、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である(体積基準)。ベーク中の有機膜の酸化を防止すると、吸収が増大したりエッチング耐性が低下したりすることがないため好ましい。
【0116】
このような本発明の有機膜形成材料を用いた有機膜形成方法は、その優れた埋め込み/平坦化特性により、被加工基板の凹凸に係らず平坦な硬化膜を得ることができるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に平坦な硬化膜を形成する場合に、極めて有用である。
【0117】
なお、この有機膜又は半導体装置製造用平坦化膜等の有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0118】
(パターン形成方法)
本発明では、このような有機膜形成材料を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、
被加工体(被加工基板)上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、
該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜に回路パターン(レジストパターン)を形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクにして上記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をエッチングマスクにして上記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
パターン形成方法を提供する。
【0119】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記3層レジストプロセスにおいて、ケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして行う有機膜のドライエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0120】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間膜としては、ポリシロキサンベースの中間膜も好ましく用いられる。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0121】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、
被加工体(被加工基板)上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、
該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造(多層レジスト膜)とし、
該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜に回路パターン(レジストパターン)を形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記BARC膜と上記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターン転写し、
該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をエッチングマスクにして上記有機膜にエッチングでパターン転写し、
さらに、該パターンが転写された有機膜をエッチングマスクにして上記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0122】
また、ケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成してもよく、この場合には、少なくとも、
被加工体(被加工基板)上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、
該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜に回路パターン(レジストパターン)を形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをエッチングマスクにして上記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をエッチングマスクにして上記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0123】
上記のように、有機膜の上に無機ハードマスクを形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、有機膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いる有機膜形成材料は、高い耐熱性を有しており300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0124】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、
被加工体(被加工基板)上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜を形成し、
該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、
該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、
該BARC上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造(多層レジスト膜)とし、
該レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜に回路パターン(レジストパターン)を形成し、
該パターンが形成されたレジスト上層膜をエッチングマスクにして上記BARC膜と上記無機ハードマスクをエッチングしてパターンを転写し、
該パターンが形成された無機ハードマスクをエッチングマスクにして上記有機膜をエッチングしてパターンを転写し、
さらに、該パターンが形成された有機膜をエッチングマスクにして上記被加工体をエッチングして該被加工体にパターンを形成する
ことで、基板に半導体装置回路パターンを形成できる。
【0125】
上記のように、ケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスクの上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、ケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスクの上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0126】
上記3層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0127】
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0128】
上記レジスト上層膜のパターン形成方法として、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティングまたはこれらの組み合わせによるパターン形成とすることが好ましい。
【0129】
また、上記パターン形成方法における現像方法を、アルカリ現像または有機溶剤による現像とすることが好ましい。
【0130】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト中間膜や無機ハードマスクのエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて上層レジストパターンをマスクにして行う。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスクパターンを形成する。
【0131】
次いで、得られたケイ素含有レジスト中間膜パターンや無機ハードマスクパターンをマスクにして、有機膜のエッチング加工を行う。
【0132】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層レジストプロセスにおけるケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0133】
本発明の有機膜形成材料によって得られる有機膜は、これら被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
【0134】
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0135】
被加工基板(被加工体)としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0136】
なお、被加工基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、コバルト、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、マンガン、モリブデン、ルテニウム、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0137】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0138】
3層レジストプロセスの一例について、図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明の有機膜形成材料を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0139】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜5の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジスト上層膜パターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をエッチング加工してケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジスト上層膜パターン5aを除去後、この得られたケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する(図1(E))。さらにケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、被加工層に形成されるパターン2aを形成する(図1(F))。
【0140】
無機ハードマスクを用いる場合、ケイ素含有レジスト中間膜4が無機ハードマスクであり、BARCを敷く場合はケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行うことができる。
【0141】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例
【0142】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0143】
合成例 有機膜形成材料用化合物の合成
【0144】
有機膜形成材料用の化合物(A1)~(A9)の合成には下記に示すアニリン類またはアミノナフタレン類(B1)~(B5)、ビス(インドール-2,3-ジオン)類として化合物(C1)~(C3)を用いた。また比較例用化合物(R1)~(R3)には原料(D1)~(D4)を用いた。なお、(D4)は37%水溶液を用いた。
【0145】
アニリン類またはアミノナフタレン類:
【化24】
【0146】
ビス(インドール-2,3-ジオン)類:
【化25】
【0147】
比較例用化合物原料:
【化26】
【0148】
上記で示したビス(インドール-2,3-ジオン)類は下記のように合成した。
【0149】
(合成例1)
化合物(C1)の合成
【化27】
窒素雰囲気下、インドール-2,3-ジオン73.6g、炭酸カリウム207.3g、DMF(ジメチルホルムアミド)900gを加え、内温50℃で均一分散液とした。1,4-ジブロモブタン205.1gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応終了後、純水5000mlに反応液を注ぎ込み結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し、純水1000mlで3回洗浄、続いてメタノール1000mlで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(C1)を得た。
【0150】
(合成例2)
化合物(C2)の合成
【化28】
窒素雰囲気下、インドール-2,3-ジオン73.6g、炭酸カリウム207.3g、DMF900gを加え、内温50℃で均一分散液とした。あらかじめDMF500gで溶解した1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼン250.8gの混合液をゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応終了後、純水6000mlに反応液を注ぎ込み結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し、純水1000mlで3回洗浄、続いてメタノール1000mlで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(C2)を得た。
【0151】
(合成例3)
化合物(C3)の合成
【化29】
窒素雰囲気下、7-(トリフルオロメチル)インドール-2,3-ジオン107.6g、炭酸カリウム207.3g、DMF900gを加え、内温50℃で均一分散液とした。1,6-ジブロモヘキサン231.8gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応終了後、純水6000mlに反応液を注ぎ込み結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し、純水1000mlで3回洗浄、続いてメタノール1000mlで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(C3)を得た。
【0152】
化合物(A1)~(A9)、比較例用化合物(R1)~(R3)の合成
【0153】
(合成例4)
化合物(A1)の合成
【化30】
窒素雰囲気下、化合物(B1)9.3g、化合物(C1)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH(メタノール)200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A1):Mw=640、Mw/Mn=1.01
【0154】
(合成例5)
化合物(A2)の合成
【化31】
窒素雰囲気下、化合物(B2)12.5g、化合物(C1)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A2):Mw=740、Mw/Mn=1.03
【0155】
(合成例6)
化合物(A3)の合成
【化32】
窒素雰囲気下、化合物(B3)7.4g、化合物(C1)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A3):Mw=590、Mw/Mn=1.01
【0156】
(合成例7)
化合物(A4)の合成
【化33】
窒素雰囲気下、化合物(B1)8.2g、化合物(C2)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A4)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A4):Mw=690、Mw/Mn=1.02
【0157】
(合成例8)
化合物(A5)の合成
【化34】
窒素雰囲気下、化合物(B3)6.5g、化合物(C2)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A5)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A5):Mw=630、Mw/Mn=1.02
【0158】
(合成例9)
化合物(A6)の合成
【化35】
窒素雰囲気下、化合物(B4)7.3g、化合物(C2)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A6)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=660、Mw/Mn=1.03
【0159】
(合成例10)
化合物(A7)の合成
【化36】
窒素雰囲気下、化合物(B2)8.5g、化合物(C3)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A7)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A7):Mw=890、Mw/Mn=1.04
【0160】
(合成例11)
化合物(A8)の合成
【化37】
窒素雰囲気下、化合物(B3)5.0g、化合物(C3)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A8)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A8):Mw=720、Mw/Mn=1.02
【0161】
(合成例12)
化合物(A9)の合成
【化38】
窒素雰囲気下、化合物(B5)8.3g、化合物(C3)10.0g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)120gを加え100℃で均一溶液とした後、酢酸2.0gをゆっくりと滴下し、100℃で8時間反応を行った。反応終了後、氷浴で冷却し結晶を析出させた。MeOH200gを加え攪拌し分散させた後、沈降した結晶をろ過で分別し、MeOH100gで3回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで化合物(A9)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A9):Mw=890、Mw/Mn=1.03
【0162】
(合成例13)
比較例用化合物(R1)の合成
【化39】
窒素雰囲気下、化合物(D1)31.8g、化合物(D4)4.9g、シュウ酸5.0g、ジオキサン50gを加え、内温100℃で24時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK(メチルイソブチルケトン)500mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行った。有機層を回収し、内温150℃、2mmHgまで減圧し水分、溶剤を減圧除去し、比較例用化合物(重合体)(R1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R1):Mw=3200、Mw/Mn=4.88
【0163】
(合成例14)
比較例用化合物(R2)の合成
【化40】
窒素雰囲気下、化合物(D2)42.3g、化合物(D4)5.7g、シュウ酸5.0g、ジオキサン60gを加え、内温100℃で24時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却しMIBK500mlを加え、純水100mlで6回洗浄を行った。有機層を回収し、内温150℃、2mmHgまで減圧し水分、溶剤を減圧除去し、比較例用化合物(重合体)(R2)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R2):Mw=2600、Mw/Mn=3.55
【0164】
(合成例15)
比較例用化合物(R3)の合成
【化41】
窒素雰囲気下、インドール-2,3-ジオン3.1g、化合物(D3)10.0g、メタンスルホン酸3.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテル16.1g、3-メルカプトプロピオン酸3.4gを加え、140℃まで加熱し還流下4時間反応を行った。反応終了後、メタノール/純水=1/1(重量比)200gに反応液を滴下し晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、純水100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を60℃で真空乾燥することで比較例用化合物(重合体)(R3)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R3):Mw=8500、Mw/Mn=2.30
【0165】
実施例に用いた化合物(A1)~(A9)および比較例用化合物(R1)~(R3)のMw、Mw/Mnの結果一覧を表1~3に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)の調製
上記化合物(A1)~(A9)、比較例用化合物(R1)~(R3)、上記合成例に記載の原料(D1)、(D2)、架橋剤(XL)、熱酸発生剤(TAG)、高沸点溶剤として1,6-ジアセトキシヘキサン(S1):沸点260℃、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(S2):沸点242℃を用い、PF-6320(オムノバ社製)を0.1質量%含むシクロヘキサノン(CyHO)を用いて表4に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)をそれぞれ調製した。
【0170】
以下に有機膜形成材料に用いた化合物、架橋剤、および熱酸発生剤の構造式を示す。
【0171】
(化合物)
【化42】
【0172】
(架橋剤)
【化43】
【0173】
(熱酸発生剤)
【化44】
【0174】
【表4】
【0175】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-13、比較例1-1~1-9)
上記で調製したUDL-1~13、比較UDL-1~9をシリコン基板上に塗布し、大気中、表5に示した温度で60秒間ベークした後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、PGMEA処理前後の膜厚を測定した。成膜後の膜厚とPGMEA処理後の膜厚を用いて残膜率を求めた。その結果を表5に示す。
【表5】
【0176】
表5に示されるように、本発明の化合物を用いた有機膜(実施例1-1~1-13)は、PGMEA処理後の残膜率が99.5%以上あり、熱処理により架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。実施例1-1~13および比較例1-7~9を比較すると本発明の化合物は単分子に関わらず十分な硬化性を発揮しているにも関わらず、本発明の化合物ではない単分子化合物のみを用いた比較例1-7、1-8では硬化性不足、耐熱性不足または分子量が小さいために昇華などによる要因により溶剤耐性が取れておらず、比較例1-9のように溶剤耐性を確保するには架橋剤を添加する必要があった。また、比較例1-5、1-6においては重合体を用いているにも関わらず、重合体単独では硬化性を発現しておらず、溶剤耐性を確保するには架橋剤、熱酸発生剤の添加が必要であった。また、比較例1-2、4は本発明の化合物ではない単分子化合物を含み重合体の配合量が少ないため十分な溶剤耐性が示されなかった。
【0177】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-13、比較例2-1~2-9)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、表6に記載の温度で60秒間ベークして200nmの塗布膜を形成し、膜厚Aを測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2体積%以下に管理された窒素気流下400℃でさらに20分間焼成して膜厚Bを測定した。これらの結果を表6に示す。
【0178】
【表6】
【0179】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成材料により形成された有機膜(実施例2-1~2-13)は、400℃での長時間ベーク後も膜厚減少が2%未満となり、本発明の有機膜形成材料は耐熱性が優れていることがわかる。特に置換基としてプロパルギルオキシ基およびエチニル基が導入された化合物においては99%以上の残膜率を保持しており特に耐熱性に優れることがわかる。一方、比較例2-1~2-9においてはいずれも残膜率が低く、中でも比較例1の結果で溶剤耐性が得られなかったものについては残膜率が著しく低い値になった。特に本発明の化合物ではない単分子化合物を用いた比較例2-7、2-8においてはほとんど有機膜が残っておらず、架橋剤を添加または重合体を用いることで溶剤耐性を確保できた比較例2-1、2-3、2-6、2-9においても本発明の実施例に比べて残膜率が低い値となり、本発明の化合物を用いた有機膜が耐熱性に優れることがわかる。
【0180】
実施例3 成膜性評価(実施例3-1~3-13、比較例3-1~3-9)
上記で調製した有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)をそれぞれ表7に示すBare-Si基板、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理をした基板、SiON処理をした基板上にそれぞれ塗布し、大気中、表7記載の温度で60秒間ベークして膜厚100nmの有機膜を形成し、形成後の有機膜を光学顕微鏡(Nikon社製ECLIPSE L200)を用いて塗布異常がないか観察を行った。なお、本評価では、塗布性の優劣を評価するために膜厚を薄くしており、成膜異常が発生しやすい厳しい評価条件となっている。
【0181】
【表7】
【0182】
表7に示されるように、本発明の有機膜形成材料により形成された有機膜(実施例3-1~3-13)は、基板依存性なく成膜性を確保できていることがわかる。それに対し比較例3-7、3-8においては比較例1、2の通り、単分子化合物の硬化性、耐熱性不足および昇華物発生により成膜性は確保できなかった。また、比較例3-1~3-4、3-9の通り、架橋剤、重合体の添加、重合体単独でも成膜性は基板によっては確保できなかった。この結果の比較により、本発明の化合物では、環状アミド構造が密着性基として機能し成膜性改善に寄与していることが推察できる。同様の傾向として環状アミド構造を有する重合体を用いた比較例3―5においては、硬化性がなく耐熱性に劣る重合体単独では成膜性を確保できなかったが、架橋剤を添加し硬化膜とした比較例3-6では成膜性は改善していることからも推察できる。
【0183】
実施例4 埋め込み特性評価(実施例4-1~4-13、比較例4-1~4-9)
上記で調製した有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、大気中、表8に記載の温度で60秒焼成し、有機膜を形成した。使用した基板は図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜8で充填されているかどうかを確認した。結果を表8に示す。埋め込み特性に劣る有機膜形成材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜形成材料を用いた場合は、本評価において、図2(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0184】
【表8】
【0185】
表8の実施4-1~4-13で示されるように、本発明の化合物を用いた場合、いずれの有機膜材料も、ボイドなくホールパターンを充填することが可能であり、埋め込み特性に優れることが分かった。一方、比較例4-1~4-5、4-7、4-8においては比較例1、2の結果の通り、耐熱性が不足するため熱分解に起因するボイドの発生により埋め込み不良が発生していると考えられる。また、比較例4-6においては溶剤耐性及び耐熱性が確保できているが重合体を用いているため、単一分子に比べ熱流動性が劣る上に、熱酸発生剤の作用により急激な硬化反応が起きたため、熱流動性が不足し埋め込み不良によるボイドが発生したと考えられる。一方で比較例4-9においては単一化合物を用いているため、架橋剤を用いているが熱流動性の寄与により埋め込み性は確保できていることがわかる。
【0186】
実施例5 平坦化特性評価(実施例5-1~5-13、比較例5-1~5-9)
上記で調製した有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1~9)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(図3(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.1μm)を有する下地基板9(SiOウエハー基板)上に塗布し、大気中、表9に記載の温度で60秒ベークし、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差、図3(K)中のdelta 10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表9に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.2μmの有機膜材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【0187】
【表9】
【0188】
表9の実施例5-1~5-13で示されるように、本発明の化合物を用いた場合、いずれの有機膜材料も、比較例5-1~5-9に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが分かる。特に化合物中にプロパルギルオキシ基およびエチニル基を用いた実施例では平坦性が良好な結果が得られていることがわかる。これは実施例2の耐熱試験の結果より耐熱性が優れており、ベーク時に生じる膜のシュリンクが抑制されていることが要因と推察できる。それに対し、比較例5-1~5-5、5-7、5-8においては比較例2の耐熱性試験の結果の通り、耐熱性が不足しておりベーク時に膜シュリンクが大きいため段差との膜厚が生じ平坦化特性が劣化していると考えられる。比較例5-6、5-9においては溶剤耐性を確保するため架橋剤を用いることで急激な硬化反応により熱流動性の恩恵を受けられず良好な平坦化特性が得られなかったと考えられる。また、比較例5-6においては重合体を用いているためそもそもの熱流動性が乏しいことが、重合体でない単一分子を用いている比較例5-9との比較により平坦化特性が劣化していることから推察することができる。更に、高沸点溶剤を添加した実施例5-10~5-13と添加してない実施例5-1、5-3、5-4、5-5と比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることも分かる。
【0189】
実施例6 密着性試験(実施例6-1~6-13、比較例6-1~6-4)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1、3、6、9)を、SiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、表10記載の温度で60秒ベークすることにより膜厚200nmの有機膜を形成した。この有機膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。なお、比較例1で溶剤耐性が確保できなかった比較UDL-2、4、5、7、8については密着性試験を実施できなかった。
【0190】
図4に密着性測定方法を示す説明図を示す。図4の11はシリコンウエハー(基板)、12は硬化皮膜、14は接着剤付きアルミピン、13は支持台、15はつかみであり、16は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど密着膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表10に示す。
【0191】
【表10】
【0192】
表10の実施6-1~6-13で示されるように、本発明の化合物を用いた有機膜材料は比較例6-1、6-2、6-4に比べて高い密着力を示していることがわかる。また、比較例6-3においては類似する環状アミド構造を有すため高い密着力を示していた。この結果からも、本発明の化合物、重合体に導入された環状アミド構造の作用により密着力が向上し、実施例3の結果の通り優れた成膜性が発現されたと考えられる。
【0193】
実施例7 パターン形成試験(実施例7-1~7-13、比較例7-1~7-4)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~13、比較UDL-1、3、6、9)をHMDS処理済みの膜厚200nmのSiO膜が形成されたトレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するBare Si基板上に塗布し、大気中、Bare Si基板上で膜厚200nmになるように表14に示す条件で焼成することにより有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にケイ素含有レジスト中間膜材料(SOG-1)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間膜を形成し、レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。なお、比較例1で溶剤耐性が確保できなかった比較UDL―2、4、5、7、8についてはケイ素含有レジスト中間膜を形成できないためパターン形成試験を実施できなかった。
【0194】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表11の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0195】
【表11】
【0196】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)の構造式を以下に示す。
【化45】
【0197】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表12の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0198】
【表12】
【0199】
用いたポリマー(PP1)の構造式を以下に示す。
【化46】
【0200】
ケイ素含有レジスト中間膜材料(SOG-1)としてはArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)で示されるポリマー、及び架橋触媒(CAT1)を、FC-4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表13に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト中間膜材料(SOG-1)を調製した。
【0201】
【表13】
【0202】
用いたArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)、架橋触媒(CAT1)の構造式を以下に示す。
【化47】
【0203】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ピッチ100nmでレジスト線幅を50nmから30nmまでのポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0204】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜の加工、ケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜、有機膜をマスクにしてSiO膜の加工を行った。
【0205】
エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのSOG膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 15sccm
ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0206】
SOG膜の有機膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0207】
SiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
ガス流量 60sccm
時間 90sec
【0208】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察し、形状を比較し、表14にまとめた。
【0209】
【表14】
【0210】
表14に示されるように、本発明の有機膜形成材料(実施例7-1~7-13)の結果の通り、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例7-1、7-2、7-3においては成膜時に発生したピンホールによりパターン加工時にパターン倒れが発生してしまいパターンを形成することができなかった。比較例7-4においても成膜時に発生したピンホールによりパターン加工時にパターン倒れが発生してしまいパターンが形成することができなかった。
【0211】
以上のことから、本発明の有機膜形成材料であれば、成膜性及び密着性が良好で、埋め込み/平坦化特性に優れるため多層レジスト法に用いる有機膜材料(レジスト下層膜)として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0212】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0213】
1…基板、 2…被加工層、 2a…被加工層に形成されるパターン、 3…有機膜、
3a…有機膜パターン、 4…ケイ素含有レジスト中間膜、
4a…ケイ素含有レジスト中間膜パターン、 5…レジスト上層膜、
5a…レジスト上層膜パターン、 6…所用部分(露光部分)、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…有機膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…有機膜、
delta 10…トレンチ部分と非トレンチ部分のレジスト下層膜の膜厚の差、
11…シリコンウエハー、 12…硬化皮膜、 14…接着剤付きアルミピン、
13…支持台、 15…つかみ、 16…引張方向。
図1
図2
図3
図4