(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-19
(45)【発行日】2024-08-27
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成用化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/732 20060101AFI20240820BHJP
C07C 69/736 20060101ALI20240820BHJP
C07D 307/88 20060101ALI20240820BHJP
C07D 493/10 20060101ALI20240820BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240820BHJP
C07D 311/82 20060101ALI20240820BHJP
C07D 233/74 20060101ALI20240820BHJP
C07D 239/62 20060101ALI20240820BHJP
C07D 251/34 20060101ALI20240820BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20240820BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240820BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20240820BHJP
G03F 7/11 20060101ALN20240820BHJP
【FI】
C07C69/732 Z CSP
C07C69/736
C07D307/88
C07D493/10
C07D519/00
C07D311/82
C07D233/74
C07D239/62
C07D251/34 G
C07D405/14
C07D487/04 136
C08G59/20
G03F7/11 503
G03F7/11 502
(21)【出願番号】P 2023000343
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019236335の分割
【原出願日】2019-12-26
【審査請求日】2023-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】中原 貴佳
(72)【発明者】
【氏名】美谷島 祐介
(72)【発明者】
【氏名】野田 和美
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-080542(JP,A)
【文献】特開2015-044963(JP,A)
【文献】特開2016-141757(JP,A)
【文献】特開2015-021062(JP,A)
【文献】特開2011-231137(JP,A)
【文献】特開2014-019813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00-409/44
C07D 233/00-233/96、239/00-239/96、
251/00-253/10、307/00-307/94、
309/00-315/00、401/00-421/14、
477/00-498/22、503/00-505/24、
513/00-521/00
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
G03C 3/00
G03F 7/004-7/04、7/06、7/075-7/115、
7/16-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層レジスト法において被加工基板上に形成するレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用化合物であって、下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする
レジスト下層膜形成用化合物。
【化1】
(上記一般式(1)中、Xは
下記一般式(5)で表される有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1は下記一般式(2)~(4)の少なくとも1つ以上の構造を含む。)
【化2】
(上記一般式(2)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
aおよびR
bは水素原子または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
cは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し1≦n2+n3≦7の関係を満た
し、n4は1~10の整数を表す。)
【化3】
(上記一般式(3)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
dおよびR
eは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
fは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m3およびm4は0または1の整数を表し、n5およびn6は1~7の整数を表し、1≦n5+n6≦7の関係を満たす。l1は0または1を表し、l1=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l1=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化4】
(上記一般式(4)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
gおよびR
hは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、m5およびm6は0または1の整数を表し、n7およびn8は1~7の整数を表し1≦n7+n8≦7の関係を満たす。l2は0または1を表し、l2=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l2=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化5】
(上記一般式(5)中、m7およびm8は0を表し、Wは単結合または下記(6’)に示す構造のいずれかである。**は前記R
1
基への接合部位を表し、n9およびn10はそれぞれ独立に0から4の整数を表し、n9+n10は1以上8以下である。)
【化6】
(上記一般式(6’)中、Ri、Rj、Rk、Rl、RmおよびRnは互いに独立に水素原子、またはフッ素置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基もしくはフェニル基を表し、RiとRjとが結合して環状化合物を形成してもよい)
【請求項2】
多層レジスト法において被加工基板上に形成するレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用化合物であって、下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とするレジスト下層膜形成用化合物。
【化7】
(上記一般式(1)中、Xは炭素数2~50のn1価の有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1
は下記一般式(2)の構造を含む。)
【化8】
(上記一般式(2)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
a
およびR
b
は水素原子または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
aおよびR
bの少なくとも一方が、炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表
し、R
c
は水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し1≦n2+n3≦7の関係を満たし、n4は1~10の整数を表す。)
【請求項3】
多層レジスト法において被加工基板上に形成するレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用化合物であって、以下に示す化合物(A1)、(A3)、及び(A5)~(A29)のいずれかであることを特徴とする
レジスト下層膜形成用化合物。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機膜形成材料、有機膜の形成方法、パターン形成方法および化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、基板の加工中にレジスト膜もダメージを受け、基板加工中にレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向がある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、さらに中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。さらに、酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングに対しては、ケイ素含有レジスト中間膜は、有機下層膜に対して良好なエッチング選択比を取ることができるため、ケイ素含有中間層膜パターンは酸素ガス又は水素ガスを用いたエッチングによって下層膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができれば、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。
【0008】
上述のような有機下層膜はすでに多数の技術が公知(例えば、特許文献1)となっているが、近年、ドライエッチング耐性に加え、優れた埋め込み特性、平坦化特性あるいは基板への密着性の必要性が高まってきている。例えば、下地の被加工基板にホールやトレンチ等の微小パターン構造体がある場合、パターン内を空隙なく膜で埋め込む埋め込み特性が必要になる。また、下地の被加工基板に段差がある場合や、パターン密集部分とパターンのない領域が同一ウエハー上に存在する場合、下層膜によって膜表面を平坦化させる必要がある。下層膜表面を平坦化させることによって、その上に成膜する中間層やフォトレジストの膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンやその後の被加工基板の加工工程のマージンを拡大することができる。さらに、当該有機下層膜上に無機ハードマスクを形成する場合、基板との密着力が必要である。密着力が向上することによりCVD法やALD法を用いた無機ハードマスクを有機膜直上に形成する際の膜剥がれを防止しプロセス裕度に優れた有機膜が形成可能となる。
【0009】
下層膜材料の埋め込み/平坦化特性を向上させる手法として、ポリエーテルポリオール等の液状添加剤の添加が提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法により形成した有機膜には、エッチング耐性に劣るポリエーテルポリオール単位が大量に含まれるため、エッチング耐性が大幅に低下してしまい、3層レジスト用下層膜としては不適である。また、下層膜材料の基板との密着力を向上させる方法として、ラクトン環構造を構成成分とするレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献3)。しかしながら、該レジスト下層膜材料は、基板への密着性が最先端デバイスにおける要求に対して不十分という問題点がある。このように、優れた埋め込み/平坦化特性/基板との密着力と十分なエッチング耐性を両立したレジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法が求められている。
【0010】
また、埋め込み特性/平坦化特性/基板との密着力に優れた有機膜材料の用途は、3層レジスト用下層膜に限定されず、例えばナノインプリンティングによるパターニングに先立つ基板平坦化等、半導体装置製造用平坦化材料としても広く適用可能である。さらに、半導体装置製造工程中のグローバル平坦化にはCMPプロセスが現在一般的に用いられているが、CMPは高コストプロセスであり、これに代わるグローバル平坦化法を担う材料としても期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-205685号公報
【文献】特許第4784784号公報
【文献】特許第3985165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明では、下記一般式(1)で示される化合物および有機溶剤を含む有機膜形成材料を提供する。
【化1】
(上記一般式(1)中、Xは炭素数2~50のn1価の有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1は下記一般式(2)~(4)の少なくとも1つ以上である。)
【化2】
(上記一般式(2)中、*(アスタリスク)は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
aおよびR
bは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
cは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し、1≦n2+n3≦7の関係を満たし、n4は1~10の整数を表す。)
【化3】
(上記一般式(3)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
dおよびR
eは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
fは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m3およびm4は0または1の整数を表し、n5およびn6は1~7の整数を表し、1≦n5+n6≦7の関係を満たす。l1は0または1を表し、l1=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l1=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化4】
(上記一般式(4)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
gおよびR
hは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、m5およびm6は0または1の整数を表し、n7およびn8は1~7の整数を表し1≦n7+n8≦7の関係を満たす。l2は0または1を表し、l2=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l2=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【0014】
このような柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもつ化合物を含む有機膜形成材料であれば、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性を両立でき、基板との密着力に優れるとともに、良好な耐熱性やドライエッチング耐性を有する有機膜を形成可能な有機膜形成材料となる。
【0015】
上記一般式(1)中の有機基Xが下記一般式(5)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)および(15)のいずれかであることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(5)中、m7およびm8はそれぞれ独立して0または1を表し、Wは単結合または下記(6)に示す構造のいずれかである。R
1は前記R
1基であり、n9およびn10はそれぞれ独立に0から4の整数を表し、n9+n10は1以上8以下である。)
【化6】
(上記一般式(6)中、n11は0から3の整数を表し、Ri、Rj、Rk、Rl、RmおよびRnは互いに独立に水素原子、またはフッ素置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基もしくはフェニル基を表し、RiとRjとが結合して環状化合物を形成してもよい)
【化7】
(上記一般式(7)中、R
1は前記R
1基であり、Roは水素原子、メチル基またはフェニル基を表す。)
【化8】
(上記一般式(8)~(12)中、R
1は前記R
1基であり、Rp、Rq、Rr、Rs,Rt,RuおよびRvはそれぞれ水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルケニル基、または芳香環上に置換基を有してよいベンジル基もしくはフェニル基を表す。Yは、前記R
1基、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、(12)式中の4つのYのうち少なくとも2つは前記R
1基である。)
【化9】
(上記一般式(13)中のRwは炭素数1~20の直鎖、分岐状、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、上記一般式(14)中のRxは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。上記一般式(13)~(15)中のR
1は前記R
1基である)
【0016】
このような有機膜形成化合物を用いた有機膜材料は高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性と良好な基板との密着性を併せ持つ有機膜が形成可能であり、特に要求性能に合わせて有機基Xの構造を適宜選択することによりエッチング耐性、光学定数(n/k)といった諸物性についても制御が可能となる。
【0017】
さらに、上記一般式中のR
1基が下記一般式(2)~(4)で表されるいずれか1種以上と下記一般式(16)および(17)で表されるいずれか1種以上とで構成されることが好ましい。
【化10】
(上記一般式(16)中のR
2は炭素数1~30の直鎖、分岐、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、R
2基を構成するメチレン基が酸素原子またはカルボニル基に置換されていても良い。)
【化11】
(上記一般式(17)中のR
3は水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を表し、R
4は炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、または炭素数1~10のアルカノイルオキシ基を表す。n11は0~2を表し、n12およびn13は芳香環上の置換基の数を表し、n12およびn13は0~7の整数を表し、かつ、n12+n13は0以上7以下の関係を満たす。)
【0018】
このような化合物を含む有機膜形成材料であれば、芳香環または炭化水素構造を有する末端基を組み合わせて用いることにより耐熱性、エッチング耐性、埋め込み特性/平坦化特性、基板との密着性、光学定数(n/k)の制御などの諸物性を要求性能に応じて調整および/または改善することができる。
【0019】
また、前記有機膜形成材料が、界面活性剤、架橋剤、及び可塑剤のうち1種以上を更に含有するものであることが好ましい。
【0020】
本発明の有機膜形成材料は、その目的に応じて、上記成分のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0021】
さらに前記有機溶剤が、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0022】
このような有機膜形成用組成物であれば、上記に記載の重合体に高沸点溶剤の添加による膜の熱流動性が付与されることで、更に高度な埋め込み特性/更に高度な平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0023】
このように、本発明の有機膜形成材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いることで、高いドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料を提供することが可能となる。また、多層レジストプロセス以外の半導体装置製造工程における平坦化に適用可能な、優れた埋め込み特性/優れた平坦化特性/基板との優れた密着力を有する半導体装置製造用平坦化材料を提供することが可能となる。
【0024】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機平坦膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上記有機膜形成材料を回転塗布し、該基板を100℃以上600℃以下の温度で、10秒~600秒の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0025】
このように、前記有機膜形成材料をコーティングし、該有機膜材料を100℃以上600℃以下の温度で、10秒~600秒間の範囲で熱処理することにより、架橋反応を促進させ、上層膜とのミキシングを防止することができる。
【0026】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機平坦膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上記有機膜形成材料を回転塗布し、該基板を酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0027】
本発明の有機膜形成材料をこのような酸素濃度の雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した有機膜を得ることができる。
【0028】
このとき、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体または段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の有機膜形成材料は、埋め込み特性/平坦化特性/基板との密着力に優れるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である
【0030】
また、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に、上記有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングして、該レジスト中間層膜にパターンを転写し、該パターンが転写された前記レジスト中間層膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0031】
このような多層レジストプロセスにおいて、本発明の有機膜形成材料を用いたパターン形成方法であれば、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0032】
また、このとき、前記得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして行う前記レジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0033】
ケイ素原子を含むレジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、レジスト中間層膜をエッチングマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことができる。
【0034】
また、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に、上記有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)を形成し、該有機反射防止膜上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記レジスト中間層膜とをエッチングして、該有機反射防止膜および該レジスト中間層膜にパターンを転写し、該パターンが転写された前記レジスト中間層膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0035】
さらに、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に、請求項1~5のいずれか1項に記載の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜およびケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして、該無機ハードマスク中間膜にパターンを転写し、該パターンが形成された前記無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが形成された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0036】
このように、レジスト下層膜の上にレジスト中間層膜を形成してもよいが、レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれるいずれかの無機ハードマスク中間膜を形成することもできる。さらに、無機ハードマスク中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成することもできる。無機ハードマスク中間膜としてケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0037】
また、本発明のパターン形成方法においては、前記無機ハードマスク中間膜を、CVD法又はALD法によって形成することができる。
【0038】
本発明のパターン形成方法においては、CVD法又はALD法によって形成された無機ハードマスク中間膜と、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜との組み合わせが可能である。
【0039】
また、前記回路パターンの形成が、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによる回路パターン形成であることが好ましい。
【0040】
また、レジスト上層膜の前記回路パターン形成方法が、アルカリ現像又は有機溶剤による現像を含むことが好ましい。
【0041】
また、前記被加工体として、半導体装置基板、又は金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜もしくは金属酸化窒化膜(例えば該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの)を用いることが好ましい。
【0042】
また、前記被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0043】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0044】
さらに、本発明では、下記一般式(1)で示される化合物を提供する。
【化12】
(上記一般式(1)中、Xは炭素数2~50のn1価の有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1は下記一般式(2)~(4)の少なくとも1つ以上である。)
【化13】
(上記一般式(2)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
aおよびR
bは水素原子または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
cは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し1≦n2+n3≦7の関係を満たす、n4は1~10の整数を表す。)
【化14】
(上記一般式(3)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
dおよびR
eは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
fは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m3およびm4は0または1の整数を表し、n5およびn6は1~7の整数を表し、1≦n5+n6≦7の関係を満たす。l1は0または1を表し、l1=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l1=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化15】
(上記一般式(4)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
gおよびR
hは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、m5およびm6は0または1の整数を表し、n7およびn8は1~7の整数を表し1≦n7+n8≦7の関係を満たす。l2は0または1を表し、l2=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l2=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【0045】
本発明の柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端基に有する化合物であれば、有機膜形成材料の成分として用いた際に高い耐熱性、優れた埋め込み特性/優れた平坦化特性が付与されるとともに基板への優れた密着力を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜材料となる。
【0046】
本発明の化合物において、上記一般式(1)中の有機基Xが下記一般式(5)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)および(15)のいずれかであることが好ましい。
【化16】
(上記一般式(5)中、m7およびm8はそれぞれ独立して0または1を表し、Wは単結合または下記(6)に示す構造のいずれかである。R
1は前記R
1基であり、n9およびn10はそれぞれ独立に0から4の整数を表し、n9+n10は1以上8以下である。)
【化17】
(上記一般式(6)中、n11は0から3の整数を表し、Ri、Rj、Rk、Rl、RmおよびRnは互いに独立に水素原子、またはフッ素置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基もしくはフェニル基を表し、RiとRjとが結合して環状化合物を形成してもよい)
【化18】
(上記一般式(7)中、R
1は前記R
1基であり、Roは水素原子、メチル基またはフェニル基を表す。)
【化19】
(上記一般式(8)~(12)中、R
1は前記R
1基であり、Rp、Rq、Rr、Rs,Rt,RuおよびRvはそれぞれ水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルケニル基、または芳香環上に置換基を有してよいベンジル基もしくはフェニル基を表す。Yは、前記R
1基または水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、(12)式中の4つのYのうち少なくとも2つは前記R
1基である。)
【化20】
(上記一般式(13)中のRwは炭素数1~20の直鎖、分岐状、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、上記一般式(14)中のRxは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。上記一般式(13)~(15)中のR
1は前記R
1基である)
【0047】
このような化合物であれば有機基Xの構造を適宜選択することにより有機膜材料の成分として用いた際の耐熱性、エッチング耐性、埋め込み特性/平坦化特性、基板との密着性、光学定数(n/k)の制御などの諸物性を要求性能に応じて調整することができる。
【0048】
上記一般式(1)中のR
1が上記一般式(2)~(4)で表されるいずれか1種以上と下記一般式(16)および(17)で表されるいずれか1種以上とで構成されることが好ましい。
【化21】
(上記一般式(16)中のR
2は炭素数1~30の直鎖、分岐、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、R
2基を構成するメチレン基が酸素原子またはカルボニル基に置換されていても良い。)
【化22】
(上記一般式(17)中のR
3は水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を表し、R
4は炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、または炭素数1~10のアルカノイルオキシ基を表す。n11は0~2を表し、n12およびn13は芳香環上の置換基の数を表し、n12およびn13は0~7の整数を表し、かつ、n12+n13は0以上7以下の関係を満たす。)
【0049】
このような化合物であれば、芳香環構造、炭化水素末端基の構造を組み合わせて用いることができ、有機膜形成材料の成分として用いた際に耐熱性、エッチング耐性、埋め込み/平坦化特性、基板との密着性、光学定数(n/k)の制御などの諸物性を要求性能に応じて調整することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明であれば、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜形成材料の成分として有用な化合物、及びこの化合物を含む有機膜形成材料を提供できる。また、この有機膜材料は、優れた埋め込み特性/優れた平坦化特性/基板との優れた密着力を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性等の他の特性を損なうことがない有機膜形成材料となるため、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、又はケイ素含有中間層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。
【0051】
また、本発明の有機膜の形成方法であれば、被加工基板上に十分に硬化し、かつ、平坦な有機膜を形成することができる。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例の説明図である。
【
図2】実施例及び比較例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
【
図3】実施例及び比較例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【
図4】実施例及び比較例における密着性測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、半導体装置等の製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト工程等で用いられるレジスト下層膜材料、また半導体装置製造用平坦化材料等として有効な有機膜形成材料、及びこれを用いた有機膜の形成方法、及び本有機膜形成材料を用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等の露光に好適なパターン形成方法、及び前記有機膜材料の成分として有用な化合物に関するものである。
【0054】
上述のように、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜形成材料が求められていた。
【0055】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される化合物を含む有機膜形成材料であれば、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性および基板への優れた密着力を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成材料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0056】
即ち、本発明は下記一般式(1)で示される化合物および有機溶剤を含む有機膜材料である。
【化23】
(上記一般式(1)中、Xは炭素数2~50のn1価の有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1は下記一般式(2)~(4)の少なくとも1つ以上である。)
【化24】
(上記一般式(2)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
aおよびR
bは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
cは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し、1≦n2+n3≦7の関係を満たし、n4は1~10の整数を表す。)
【化25】
(上記一般式(3)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
dおよびR
eは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
fは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m3およびm4は0または1の整数を表し、n5およびn6は1~7の整数を表し、1≦n5+n6≦7の関係を満たす。l1は0または1を表し、l1=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l1=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化26】
(上記一般式(4)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
gおよびR
hは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、m5およびm6は0または1の整数を表し、n7およびn8は1~7の整数を表し1≦n7+n8≦7の関係を満たす。l2は0または1を表し、l2=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l2=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【0057】
このような有機膜形成材料であれば、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を有する末端基構造の作用により耐熱性と高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性とを両立し、かつ、基板との密着力に優れた有機膜を形成することができる有機膜形成材料となる。また、このような有機膜形成材料は、高いドライエッチング耐性を示すこともできる。
【0058】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<有機膜形成用化合物>
本発明の有機膜形成材料が含む化合物、すなわち有機膜形成用の化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
【化27】
(上記一般式(1)中、Xは炭素数2~50のn1価の有機基であり、n1は2~10の整数を示し、R
1は下記一般式(2)~(4)の少なくとも1つ以上である。)
【化28】
(上記一般式(2)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
aおよびR
bは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
cは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m1およびm2は0または1の整数を表し、n2およびn3は1~7の整数を表し、1≦n2+n3≦7の関係を満たし、n4は1~10の整数を表す。)
【化29】
(上記一般式(3)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
dおよびR
eは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、R
fは水素原子、メチル基またはフェニル基を表し、m3およびm4は0または1の整数を表し、n5およびn6は1~7の整数を表し、1≦n5+n6≦7の関係を満たす。l1は0または1を表し、l1=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l1=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【化30】
(上記一般式(4)中、*は前記有機基Xへの結合部位を表し、R
gおよびR
hは水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和の炭化水素基を表し、m5およびm6は0または1の整数を表し、n7およびn8は1~7の整数を表し1≦n7+n8≦7の関係を満たす。l2は0または1を表し、l2=1のとき酸素原子がエーテル結合として芳香環間の橋掛け構造を形成し、l2=0のときは、芳香環間の橋掛け構造となるエーテル結合が存在しない。)
【0060】
上記一般式(1)中の有機基Xとしては、具体的には以下のものなどを例示できる。下記式中のR
1は前記R
1基であり、n9およびn10はそれぞれ独立に0から4の整数を表し、n9+n10は1以上8以下である。
【化31】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
上記一般式(1)中の有機基Xの中でも下記一般式(5)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)および(15)のいずれかであることが好ましい。
【化35】
(上記一般式(5)中、m7およびm8はそれぞれ独立して0または1を表し、Wは単結合または下記(6)に示す構造のいずれかである。R
1は前記R
1基であり、n9およびn10はそれぞれ独立に0から4の整数を表し、n9+n10は1以上8以下である。)
【化36】
(上記一般式(6)中、n11は0から3の整数を表し、Ri、Rj、Rk、Rl、RmおよびRnは互いに独立に水素原子、またはフッ素置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基もしくはフェニル基を表し、RiとRjとが結合して環状化合物を形成してもよい)
【化37】
(上記一般式(7)中、R
1は前記R
1基であり、Roは水素原子、メチル基またはフェニル基を表す。)
【化38】
(上記一般式(8)~(12)中、R
1は前記R
1基であり、Rp、Rq、Rr、Rs,Rt,RuおよびRvはそれぞれ水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、炭素数2~10のアルケニル基、または芳香環上に置換基を有してよいベンジル基もしくはフェニル基を表す。Yは、前記R
1基、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルキニル基、または炭素数2~10のアルケニル基を表し、(12)式中の4つのYのうち少なくとも2つは前記R
1基である。)
【化39】
(上記一般式(13)中のRwは炭素数1~20の直鎖、分岐状、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、上記一般式(14)中のRxは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。上記一般式(13)~(15)中のR
1は前記R
1基である)
【0065】
上記一般式(5)で示される有機基Xの中でも、下記が耐熱性およびエッチング耐性の観点から特に好ましい。
【化40】
【0066】
上記一般式(7)で示される有機基Xの中でも、下記が耐熱性、エッチング耐性および硬化性の観点から特に好ましい。
【化41】
【0067】
本発明では、上記一般式(8)~(12)のいずれかで示される有機基Xの中でも、下記がエッチング耐性、光学特性および密着性の観点から特に好ましい。
【化42】
【0068】
本発明では、上記一般式(13)~(15)のいずれかで示される有機基Xの中でも、下記が平坦化/埋め込み特性および密着性の観点から特に好ましい。
【化43】
【0069】
次にR
1基に関しては、上記一般式(2)で表される末端基構造としては下記などが例示できる。これらの中でもm1=0、m2=0、n4=2かつR
cがメチル基となるものが原料入手の容易さおよび平坦化/埋め込み特性の観点から特に好ましい。
【化44】
【0070】
上記一般式(3)で表される末端基構造としては下記などが例示できる。これらの中でもm3=0、m4=0、R
fが水素原子であるものが原料入手および平坦化/埋め込み特性の観点から特に好ましい。
【化45】
【0071】
上記一般式(4)で表される末端基構造としては下記などが例示できる。下記の中でもm5=0、m6=0であるものが原料入手および平坦化/埋め込み特性の観点から特に好ましい。
【化46】
【0072】
【0073】
さらに、上記一般式中のR
1基が
上記一般式(2)~(4)で表されるいずれか1種以上と下記一般式(16)および(17)で表されるいずれか1種以上とで構成することができる。
【化48】
(上記一般式(16)中のR
2は炭素数1~30の直鎖、分岐、または環状の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、R
2基を構成するメチレン基が酸素原子またはカルボニル基に置換されていても良い。)
【化49】
(上記一般式(17)中のR
3は水素原子、または炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基を表し、R
4は炭素数1~10の直鎖もしくは分岐状の炭化水素基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、または炭素数1~10のアルカノイルオキシ基を表す。n11は0~2を表し、n12およびn13は芳香環上の置換基の数を表し、n12およびn13は0~7の整数を表し、かつ、n12+n13は0以上7以下の関係を満たす。)
【0074】
上記一般式(16)で表される末端基構造としては下記などを例示することができる。下記式中のn14は0~30の整数、n15は0~20の整数を表す。
【化50】
【0075】
【0076】
【0077】
上記一般式(17)で表される末端基構造としては下記などを例示することができる。下記式中のn16は0~9の整数を表す。
【化53】
【0078】
これらの化合物を含む有機膜材料であれば、上記一般式(16)および/または(17)で表される末端基構造を組み合わせることにより、耐熱性及びエッチング耐性、埋め込み特性/平坦化特性、基板との密着力などの諸物性を要求性能に応じて調整することが可能となる。また、光学定数(n/k)の制御も可能となるため、特に多層ArFリソグラフィーにおける露光時において、適度な光学定数を付与することが可能となり、反射光を抑制でき、解像性に優れたものとなる。
【0079】
なお、本発明の有機膜形成用化合物の分子量は、2,500以下であることが好ましい。このような分子量であれば、有機膜形成用化合物の熱流動性が更に良好なものとなるため、組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。なお、分子量は、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として求めることができる。
【0080】
このような化合物を含む有機膜形成材料を半導体装置等の製造工程における微細加工に適用される多層レジスト膜形成に用いられるレジスト下層膜材料に用いることで、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料、レジスト下層膜形成方法、及びパターン形成方法を提供することが可能となる。また、本発明では、多層レジストプロセス以外の半導体装置製造工程における平坦化に適用可能な、優れた埋め込み特性/優れた平坦化特性/基板との優れた密着力を有する半導体装置製造用平坦化材料を提供することが可能となる。
【0081】
[化合物の製造方法]
本発明の有機膜材料に用いられる化合物は構造に応じて最適な方法を選択して製造することができる。以下、上記一般式(1)で示される有機膜形成用の化合物を合成する方法の一例について詳述する。なお、有機膜形成用の化合物の製造方法は、これらに限定されるものではない。
【0082】
上記有機膜形成用の化合物は、例えば、下記(18)~(20)に示すエポキシ化合物とカルボン酸化合物との付加反応により合成することができる。下記式中のn1~n8、m1~m6、R
a~R
h、l1、l2およびXは前記と同じ。
【化54】
【化55】
【化56】
【0083】
上記エポキシ化合物とカルボン酸化合物の量比は、エポキシ化合物中のエポキシ基1モルに対して、カルボン酸化合物中のカルボキシル基が、好ましくは0.3~2.0モル、より好ましくは0.5~1.5モル、更に好ましくは0.75~1.25モルとなる量とすることが好ましい。このようにエポキシ基量に対するカルボキシル基量が適度なものであれば、未反応のエポキシ基が残存して有機膜形成用組成物の保存安定性が損なわれる恐れがなく、未反応のカルボン酸化合物が残存してアウトガスの原因となることを防止できる。
【0084】
また、要求される性能、例えば光学定数(n/k)、熱流動性、エッチング耐性、耐熱性、溶剤溶解性、密着性等を改善するために、複数種のエポキシ化合物又は複数種のカルボン酸化合物を併用してもよい。なお、その場合も、エポキシ基とカルボキシ基の量との比は上記の範囲内とすることが好ましい。
【0085】
本発明の有機膜形成用の化合物は、通常、無溶媒又は溶媒中で反応触媒存在下、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下で、上記エポキシ化合物とカルボン酸化合物とを反応させることで得ることができる。
【0086】
このとき用いられる溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類を例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して、0~2,000質量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0087】
反応触媒としては、具体的には、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、N-ラウリルピリジニウムクロリド、N-ラウリル4-ピコリニウムクロリド、N-ラウリルピコリニウムクロリド、トリメチルフェニルアンモニウムブロミド、N-ベンジルピコリニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩;トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミントリス(3,6-ジオキサヘプチル)アミン、トリス(3,6-ジオキサオクチル)アミン等の第3級アミン類等が挙げられる。触媒の使用量は、原料に対して0.001~100質量%が好ましく、より好ましくは0.005~50質量%の範囲である。反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温から150℃が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0088】
反応方法としては、エポキシ化合物、カルボン酸化合物、及び触媒を一括で仕込む方法、エポキシ化合物とカルボン酸化合物とを溶媒に分散又は溶解後、触媒を一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法、又は触媒を溶媒に分散又は溶解後、エポキシ化合物とカルボン酸化合物とを一括添加又は溶媒で希釈し滴下する方法が挙げられる。反応終了後、有機膜形成用組成物としてそのまま用いてもよいが、系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために、有機溶剤へ希釈後、分液洗浄を行って回収することもできる。
【0089】
このとき使用する有機溶剤としては、化合物を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類;及びこれらの混合物等を挙げることができる。この際に使用する洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0090】
分液洗浄の際に系内の未反応のカルボン酸化合物又は酸性成分を除去するために、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0091】
更に、分液洗浄の際に系内の金属不純物又は塩基成分を除去するために、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類;シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0092】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0093】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。中性水としては、上述の脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、塩基成分、酸性成分を十分に除去するために、複数回行うことが好ましい。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0094】
更に、分液洗浄後の反応生成物は、減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいため操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないため経済的である。
【0095】
このとき使用する溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0096】
さらに本発明の有機膜形成材料で用いられる化合物を製造する際には、要求される性能に合わせてエポキシ化合物とカルボン酸化合物とは別のカルボン酸化合物を適宜組み合わせて用いることも可能である。具体的には、埋め込み特性/平坦化特性の向上に寄与する柔軟な炭化水素構造や、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造、密着性を改善させるため極性基を有する構造などを任意の割合で組み合わせて有機膜形成用化合物を合成することで光学定数(n/k)の制御が可能となり、埋め込み/平坦化特性、耐熱性、エッチング耐性を高い次元で両立することが可能である。
【0097】
この際用いるカルボン酸成分としては、特に下記一般式で示されるカルボン酸化合物(21)および/またはカルボン酸化合物(22)を組み合わせることが好ましく、下記のカルボン酸化合物(21)とカルボン酸化合物(22)とを複数同時に組み合わせることも可能である。カルボン酸化合物(21)とカルボン酸化合物(22)とを前記カルボン酸化合物と組み合わせて用いた場合の仕込み量としては、全体のカルボン酸の仕込み量の総和を100モル%とした場合、それぞれ1~99モル%の範囲で調整することができ、要求性能によって仕込量は変化するがエッチング耐性、耐熱性、流動性付与の観点からカルボン酸化合物(21)および(22)を組み合わせて用いる際は10~50モル%の範囲で調整することが好ましい。下記式中のn11、n12、n13、R
2、R
3およびR
4は前記と同じ。
【化57】
【化58】
【0098】
上記のカルボン酸(21)、(22)を用いた場合の反応、回収方法は、エポキシ化合物と反応する化合物として前記のカルボン酸化合物を用いた場合の反応方法と回収方法と同様である。
【0099】
さらに本発明の有機膜材料に用いられる化合物を得る別法として、上記一般式(2)で示される末端基構造を持つ化合物を例とすると、下記に示すようにエポキシ化合物と水酸基を置換基に有するカルボン酸との反応により中間体を得(STEP1)、その後さらに置換反応により水酸基の水素原子をRaおよびRbのそれぞれに変換する方法(STEP2)でも得ることも可能である。上記一般式(3)または(4)の末端構造を有する化合物も、同様の反応に基づく方法で得ることができる。
【0100】
【0101】
上記の置換基を導入する反応であれば特に限定は無いが、下記のようなハロゲン化物またはトシレート、メシレートと塩基触媒を用いた置換反応等が例示できる。下記式中のZはハロゲン、トシル基またはメシル基を表し、RはRa、Rb、Rd、Re、RgおよびRhのいずれかを表す。
【0102】
【0103】
置換反応に用いられる塩基触媒としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等、これらを単独または混合して用いることができる。
【0105】
化合物の反応方法および回収方法は、エポキシ化合物と反応する化合物として前記のカルボン酸化合物を用いた場合の反応方法と回収方法と同様である。
【0106】
この方法で得られる有機膜材料に用いられる化合物の調製には種々のハロゲン化物やトシレートおよびメシレートを要求性能に合わせて単独または複数組み合わせて用いることが可能である。例えば、埋め込み特性/平坦化特性の向上に寄与する構造、硬化性能を向上させる構造などを持つ構造を任意の割合で組み合わせることができる。
【0107】
以上のように、本発明の有機膜形成用化合物であれば、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を有する末端基構造の作用により高度な埋め込み/平坦化特性、基板への密着性を有するとともに、良好な耐熱性やドライエッチング耐性を有する有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0108】
[有機膜形成材料]
また、本発明では、有機膜形成材料であって、上述の本発明の有機膜形成用化合物及び有機溶剤を含有する有機膜形成材料を提供する。有機膜形成材料は、有機膜形成用組成物ということもできる。なお、本発明の有機膜形成材料において、本発明の有機膜形成用化合物を単独又は複数組み合わせて用いることができる。
【0109】
本発明の有機膜形成材料には更に別のポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、本発明の有機膜形成材料と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。このような材料としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジメチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004-205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005-250434号公報記載のアセナフチレン共重合体、特開2006-227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006-293298号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006-285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010-122656号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008-158002号公報記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、本発明の有機膜材料100質量部に対して0~1,000質量部が好ましく、より好ましくは0~500質量部である。
【0110】
本発明の有機膜形成材料において使用可能な有機溶剤としては、前記のベースポリマー(有機膜形成用化合物)、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0091)~(0092)段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0111】
このような材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の有機膜形成用化合物を含有するため、良好なドライエッチング耐性を有するとともに耐熱性及び高度な埋め込み/高度な平坦化特性を併せ持つ有機膜形成材料となる。
【0112】
さらに、本発明の有機膜組成物には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤との混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成用化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコール、モノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0113】
上記、高沸点溶剤の沸点は、有機膜組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、200℃~300℃であることがさらに好ましい。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高すぎることなくベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0114】
また、上記、高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性を付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
【0115】
有機溶剤は、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0116】
このような有機膜形成材料(有機膜形成用組成物)であれば、上記の有機膜形成用化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
【0117】
本発明の有機膜形成材料においては、硬化反応を更に促進させるために酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の(0061)~(0085)段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0118】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、前記有機膜形成用化合物100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0119】
本発明の有機膜形成材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の(0142)~(0147)記載のものを用いることができる。
【0120】
また、本発明の有機膜形成材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、多核フェノール類のメチロールまたはメトキシメチル型架橋剤、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0121】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。多核フェノール類のメトキシメチル型架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどビスフェノール類のテトラメチロール化体およびテトラメトキシメチル化体、トリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンなどのトリスフェノール類のヘキサメトキシメチル化体およびこれらの部分縮合体などが例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0122】
上記の架橋剤の中でも多核フェノール類のメトキシメチル型架橋剤が好ましく、トリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が熱硬化性の観点から特に好ましい。これらの架橋剤を用いる場合、硬化反応促進剤となる酸発生剤は使用しないことが好ましい。硬化促進剤と組み合わせることにより、熱または光の作用に酸が発生するともに急激な硬化反応が起きるため、化合物自身の流動性の恩恵を受けることなく硬化してしまい、硬化性は改善するが埋め込み特性/平坦性特性の劣化に繋がるため酸発生剤と組み合わせて用いることは好ましくない。
【0123】
また、本発明の有機膜形成材料には、平坦化特性/埋め込み特性を更に向上させるために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。
【0124】
また、本発明の有機膜形成材料には、埋め込み特性/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0125】
【化61】
(式中、R
6は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Y
1は炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0126】
【化62】
(式中、R
6aは炭素数1~4のアルキル基である。Y
aは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0127】
なお、本発明の有機膜形成材料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。該有機膜形成材料はレジスト下層膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料の用途に用いることができる。
【0128】
また、本発明の有機膜形成材料は、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有無機ハードマスク中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用レジスト下層膜材料として、極めて有用である。
【0129】
[半導体装置製造用基板]
また、本発明では、基板上に、上記の有機膜形成材料が硬化した有機膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供することができる。
【0130】
本発明の有機膜形成材料が硬化した有機膜であれば、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦性不足による有機膜表面の凹凸、無機ハードマスクを有機膜直上に形成する際の膜剥がれのない有機膜となる。このような有機膜で平坦化された半導体装置製造用基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0131】
[有機膜形成方法]
本発明では、上述の有機膜形成材料を用い、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜又は半導体製造用平坦化膜(有機平坦膜)として機能する有機膜を形成する方法を提供する。
【0132】
本発明の有機膜の形成方法は、例えば、半導体装置の製造工程で適用される有機平坦膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を回転塗布し、該基板を100℃以上600℃以下の温度で、10秒~600秒の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とする有機膜の形成方法である。
【0133】
本発明の有機膜形成方法では、上記の有機膜形成材料を、スピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。ベークは100℃以上600℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは200℃以上500℃以下、10~300秒の範囲内で行う。デバイスダメージやウエハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウエハープロセスでの加熱温度の上限は、600℃以下とすることが好ましく、より好ましくは500℃以下である。
【0134】
また、本発明の有機膜形成方法では、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を、上記同様スピンコート法(回転塗布)等でコーティングし、該有機膜形成材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機膜を形成することもできる。
【0135】
本発明の有機膜材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。
【0136】
ベーク中の雰囲気としては空気中でもよいし、N2、Ar、He等の不活性ガスを封入してもよい。また、ベーク温度等は、上記と同様とすることができる。
【0137】
このような本発明の有機膜形成方法は、その優れた埋め込み/平坦化特性により、被加工基板の凹凸に係らず平坦な硬化膜を得ることができるため、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に平坦な硬化膜を形成する場合に、極めて有用である。
【0138】
[パターン形成方法]
本発明では、このような有機膜形成材料を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、パターン形成方法であって、被加工体上に、本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングして、該レジスト中間層膜にパターンを転写し、該パターンが転写された前記レジスト中間層膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。このパターン形成方法は、例えば、被加工基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜(ケイ素含有レジスト中間層膜)を形成し、該レジスト中間層膜上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記レジスト中間層膜をエッチングして、レジスト中間層膜パターンを形成し、該得られたレジスト中間層膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成するパターン形成方法である。
【0139】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記3層レジストプロセスにおいて、レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0140】
上記3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間層膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜も好ましく用いられる。この中間層膜は、有機反射防止膜(BARC)として機能することができる。レジスト中間層膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0141】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間層膜の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。
【0142】
あるいは、本発明のレジストプロセスでは、ケイ素含有レジスト中間層膜上に、レジスト中間層膜とは別の、有機反射防止膜を形成し、4層膜構造を形成してもよい。すなわち、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に、本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記レジスト中間層膜とをエッチングして、該有機反射防止膜および該レジスト中間層膜にパターンを転写し、該パターンが転写された前記レジスト中間層膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成するパターン形成方法も提供する。
【0143】
また、中間層膜として無機ハードマスク中間膜を形成してもよく、この場合には、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成することができる。すなわち、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に、本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜およびケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして、該無機ハードマスク中間膜にパターンを転写し、該パターンが形成された前記無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが形成された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成するパターン形成方法も提供する。
【0144】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)を形成できる。例えばケイ素窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号に記載されている。無機ハードマスク中間膜の膜厚は5~200nmが好ましく、より好ましくは10~100nmである。また、無機ハードマスク中間膜としては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300~500℃となるために、下層膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いる有機膜形成材料は、高い耐熱性を有しており300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスク中間膜と、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0145】
また、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスとしても好適で、この場合、少なくとも、被加工基板上に本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングして無機ハードマスク中間膜パターンを形成し、該得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングしてレジスト下層膜パターンを形成し、さらに、該得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして前記被加工基板をエッチングして前記被加工基板にパターンを形成することができる。すなわち、本発明では、パターン形成方法であって、被加工体上に本発明の有機膜形成材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜およびケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上に、フォトレジスト組成物を含むレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜とをエッチングして、前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写し、該パターンが形成された無機ハードマスクをマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングして、該レジスト下層膜にパターンを転写し、さらに、該パターンが形成された前記レジスト下層膜をマスクにして前記被加工体をエッチングして、該被加工体にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0146】
上記のように、無機ハードマスク中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成してもよいが、無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。特に、無機ハードマスク中間膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0147】
前記3層および4層レジストプロセスにおけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、さらに、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0148】
レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0149】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0150】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0151】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層および4層レジストプロセスにおけるレジスト中間層膜や無機ハードマスク中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。これにより、レジスト中間層膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンを形成する。
【0152】
次いで、得られたレジスト中間層膜パターンや無機ハードマスク中間膜パターンや有機反射防止膜パターンをマスクにして、レジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0153】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層および4層レジストプロセスにおけるケイ素含有中間層膜パターンは基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間層膜パターンの剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0154】
本発明の有機膜材料によって得られるレジスト下層膜は、これら被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
【0155】
なお、被加工基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層が成膜されたもの等が用いられる。被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0156】
本発明のパターン形成方法では、被加工体として、半導体装置基板、または例えば該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。すなわち、前記被加工体が、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜または金属酸化窒化膜であることが好ましい。
【0157】
また、被加工体として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、またはこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0158】
3層レジストプロセスの一例について、
図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
3層レジストプロセスの場合、
図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上に本発明の有機膜材料を用いてレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0159】
次いで、
図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(
図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜4をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン4aを形成する(
図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(
図1(E))。さらにレジスト中間層膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(
図1(F))。
【0160】
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間層膜4が無機ハードマスク中間膜であり、有機反射防止膜(BARC)を敷く場合はレジスト中間層膜4とレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してレジスト中間層膜4のエッチングを行うことができる。
【0161】
このように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例】
【0162】
以下、合成例、比較合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0163】
合成例 有機膜形成材料用の化合物の合成
有機膜形成材料用の重合体(A1)~(A29)の合成には、下記に示すエポキシ化合物(化合物群B:(B1)~(B14))、カルボン酸化合物(化合物群C:(C1)~(C9))を用いた。
【0164】
【0165】
下記以外は購入した試薬を使用した。
(B1)EXA-850CRP(DIC(株)製)エポキシ当量:172
(B2)HP-4700(DIC(株)製)エポキシ当量:165
(B3)HP-4770(DIC(株)製)エポキシ当量:205
(B5)1032H60(三菱ケミカル(株)製)エポキシ当量:167
(B10)DAG-G(四国化成工業(株)製)エポキシ当量:168
(B11)TG-G(四国化成工業(株)製)エポキシ当量:92
(B13)エポライトMF(共栄化学工業(株)製)エポキシ当量:140
(B14)PETG(昭和電工(株)製) エポキシ当量:90
【0166】
【0167】
[合成例1]化合物(A1)の合成
【化65】
エポキシ化合物(B1)15.0g、カルボン酸化合物(C1)25.0g、及び2-メトキシ-1-プロパノール200gを窒素雰囲気下、内温100℃で均一溶液としたのち、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.00gを加え内温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン300mlを加え、2%NaHCO
3水溶液100g、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し化合物(A1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=920、Mw/Mn=1.04であった。
【0168】
[合成例2~27]化合物(A2)~(A27)の合成
表1に示されるエポキシ化合物およびカルボン酸化合物を使用した以外は、合成例1と同じ反応条件で、表2~7に示されるような化合物(A2)~(A27)を生成物として得た。これらの化合物の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、表2~7に示した。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
[合成例28]化合物(A28)の合成
【化66】
合成例2で合成した化合物(A2)を20.0g、炭酸カリウム13.5g及びジメチルホルムアミド100gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした後、プロパルギルブロミド12.8gを追加し、内温50℃で24時間反応を行った。室温まで冷却しメチルイソブチルケトン300mlを加え、超純水100gで2回、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100gで5回の順に洗浄した。有機層を減圧乾固し化合物(A28)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2230、Mw/Mn=1.38であった。
【0177】
[合成例29]化合物(A29)の合成
【化67】
合成例4で合成した化合物(A4)を20.0g、炭酸カリウム11.6g及びジメチルホルムアミド100gを窒素雰囲気下、内温50℃で均一分散液とした後、プロパルギルブロミド11.0gを追加し、内温50℃で24時間反応を行った。室温まで冷却しメチルイソブチルケトン300mlを加え、超純水100gで2回、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100gで5回の順に洗浄した。有機層を減圧乾固し化合物(A29)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1310、Mw/Mn=1.28であった。
【0178】
[比較合成例1]比較化合物(R1)の合成
エポキシ化合物(B2)20.0g、ブトキシ安息香酸23.3g、及び2-メトキシ-1-プロパノール200gを窒素雰囲気下、内温100℃で均一溶液としたのち、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.00gを加え内温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン300mlを加え、2%NaHCO
3水溶液100g、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し化合物(R1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1930、Mw/Mn=1.32であった。
【化68】
【0179】
[比較合成例2]比較化合物(R2)の合成
エポキシ化合物(B2)20.0g、4-ヒドロキシ安息香酸16.7g、及び2-メトキシ-1-プロパノール200gを窒素雰囲気下、内温100℃で均一溶液としたのち、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.00gを加え内温120℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン300mlを加え、2%NaHCO3水溶液100g、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し化合物(R2)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=1610、Mw/Mn=1.35であった。
【化69】
【0180】
有機膜形成材料(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)の調整
上記化合物(A-1)~(A-29)及び比較化合物(R-1)~(R-2)及び高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃、架橋剤としてXL1およびXL2、熱酸発生剤としてAG1を用い、PF636(OMNOVA社製)0.1質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)または2-メトキシ-1-プロパノール(PGME)を用いて、表8に示す割合で溶解させた後、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形用組成物(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)をそれぞれ調製した。
【表8】
【0181】
上記ULD、比較例UDLに用いた架橋剤(XL1、XL2)、熱酸発生剤(AG1)の構造式を以下に示す。
【化70】
【0182】
実施例1 密着性および埋め込み特性評価(実施例1-1~1-31、比較例1-1~1-2)
図2のように、上記の有機膜形成材料(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ2.0μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理したSiO
2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、表9に示す条件で焼成し、有機膜8を形成した。使用した基板は
図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜で充填されているかどうかを確認した。結果を表9に示す。埋め込み特性に劣る有機膜形成材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。また、密着性が不足する場合は断面で基板からの剥がれが確認される。密着性および埋め込み特性が良好な有機膜形成材料を用いた場合は、本評価において、
図2(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜が充填される。
【0183】
【0184】
表9に示されるように、本発明の有機膜形成材料(UDL1~UDL-31)を用いた実施例1-1~1-31では、剥がれおよびボイドの発生がなくホールパターンを充填することが可能であり、基板に対する良好な密着性、および優れた埋め込み特性を有することが確認出来た。一方、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもたない比較化合物R1を含む比較例UDL1を用いた比較例1-1では、密着性が不足しパターン基板上での剥がれが観察された。また、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもたない比較化合物R2を含む比較例UDL2を用いた比較例1-2においては、密着性不足による剥がれは観察されなかったが埋め込み特性の不足によりボイドの発生が観察された。この結果から、本発明の有機膜形成用化合物は、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもつことで、この末端構造を持たない化合物よりも、基板に対する良好な密着性および優れた埋め込み特性を達成できることがわかる。
【0185】
実施例2 平坦化特性評価(実施例2-1~2-31、比較例2-1~2-2)
有機膜形成材料(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(
図3(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、表10に示す条件で焼成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差(
図3(K)中のdelta10)を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表10に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚200nmの有機膜形成材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【0186】
【0187】
表10に示されるように、本発明の有機膜形成材料を用いた実施例2-1~2-31では、比較例2-1~2-2と比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく平坦化特性に優れることが確認された。先に述べたように、比較例2-1および2-2は、本発明の有機膜形成材料を用いる代わりに、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもたない化合物を含む材料を用いた例である。この結果から、本発明の有機膜形成用化合物は、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもつことで、この末端構造を持たない化合物よりも、優れた平坦化特性を達成できることがわかる。また、高沸点溶剤を添加した実施例2-30および2-31と添加していない実施例2-28および2-29を比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることが確認された。特に比較例2-1および2-2においては架橋剤と酸発生剤を組み合わせて用いるため、熱による酸発生による急激な硬化により流動性が阻害されているため平坦性が劣化していることがわかる。
【0188】
実施例3 密着性試験(実施例3-1~3-31、比較例3-1~3-2)
上記の有機膜形成材料(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)を、SiO2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて大気中、表11に示す条件で焼成することにより膜厚200nmの有機膜を形成した。この有機膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。
【0189】
図4に密着性測定方法を示す説明図を示す。
図4の11はシリコンウエハー(基板)、12は硬化皮膜、13は接着剤付きアルミピン、14は支持台、15はつかみであり、16は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど有機膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表11に示す。
【0190】
【0191】
表11に示されるように、本発明の有機膜形成材料を用いた実施例3-1~3-31は、密着性および埋め込み特性評価試験で剥がれを生じた比較例UDL-1を用いた比較例3-1と比べると優れた密着力を有することがわかる。また、実施例3-1~3-31は、比較例UDL-2を用いた比較例3-2と比べても優れた密着力を有することがわかる。比較例UDL-1および2は、先に述べたように、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもたない化合物を含む材料を用いた例である。この結果から、本発明の有機膜形成用化合物は、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもつことで、この末端構造を持たない化合物よりも、基板に対する良好な密着性を達成できることがわかる。
【0192】
実施例4 パターンエッチング試験(実施例4-1~4-31、比較例4-1~4-2)
上記で調製した有機膜形成材料(UDL-1~31、比較例UDL-1~2)でHMDS処理済みの膜厚200nmのSiO2膜が形成されたトレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有するSiO2基板上に塗布し、大気中、Bare Si基板上で膜厚200nmになるように表10に示す条件で焼成することによりレジスト下層膜を形成した。その上にケイ素含有レジスト中間層膜材料(SOG-1)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0193】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表12の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0194】
【0195】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)の構造式を以下に示す。
【化71】
【0196】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表13の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0197】
【0198】
用いたポリマー(PP1)の構造式を以下に示す。
【化72】
【0199】
ケイ素含有レジスト中間層膜材料(SOG-1)としては、ArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)で示されるポリマー、及び架橋触媒(CAT1)を、FC-4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に、表14に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト中間層材料(SOG-1)を調製した。
【0200】
【0201】
用いたArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)、架橋触媒(CAT1)の構造式を以下に示す。
【化73】
【0202】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ピッチ100nmでレジスト線幅を50nmから30nmまでのポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0203】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてケイ素含有中間層膜の加工、ケイ素含有中間層膜をマスクにして下層膜の加工、下層膜をマスクにしてSiO2膜の加工を行った。
【0204】
エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのSOG膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CF4ガス流量 15sccm
O2ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0205】
SOG膜の下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
O2ガス流量 45sccm
時間 120sec
【0206】
SiO2膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
C5F12ガス流量 20sccm
C2F6ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
O2 60sccm
時間 90sec
【0207】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察し、形状を比較し、表15にまとめた。
【0208】
【0209】
表15に示されるように、本発明の有機膜形成材料(実施例4-1~4-31)の結果の通り、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方、比較例4-1~4-2においては、これらで用いた比較例UDL-1および比較例UDL-2が密着性および埋め込み特性評価試験の結果の通り埋め込み特性および密着性が不足しているため、パターン加工時にパターン倒れが発生してしまいパターンを形成することができなかった。繰り返しになるが、比較例UDL-1および2は、先に述べたように、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもたない化合物を含む材料を用いた例である。この結果から、本発明の有機膜形成用化合物は、柔軟鎖で連結されたビスフェノール誘導体を末端構造としてもつことで、この末端構造を持たない化合物よりも、微細なパターンを高精度で実現できることがわかる。
【0210】
以上のことから、本発明の有機膜形成材料であれば、高度な埋め込み特性/高度な平坦化特性/基板との優れた密着力を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0211】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0212】
1…基板、 2…被加工層、 2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、 3…有機膜(レジスト下層膜)、 3a…有機膜パターン、 4…ケイ素含有レジスト中間層膜、 4a…ケイ素含有レジスト中間層膜パターン、 5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン(レジストパターン)、 6…露光部分、 7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…有機膜、 9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…有機膜、 delta10…トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜10の段差、 11…シリコンウエハー、 12…硬化被膜、 13…接着剤付きアルミピン、 14…支持台、 15…つかみ、 16…引張方向。