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特許7541307診断装置、診断システム、ベースボード、診断方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】診断装置、診断システム、ベースボード、診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240821BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020011986
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021021718
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2019138521
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】オグントインボ ボラジ
(72)【発明者】
【氏名】唐鎌 考寛
(72)【発明者】
【氏名】川田 達也
(72)【発明者】
【氏名】片山 昇
(72)【発明者】
【氏名】簡 文啓
(72)【発明者】
【氏名】小林 輪
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-266814(JP,A)
【文献】特開2010-286426(JP,A)
【文献】特開2003-050257(JP,A)
【文献】特開平07-083973(JP,A)
【文献】実開昭61-000073(JP,U)
【文献】特開2003-223918(JP,A)
【文献】特開平11-032442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の劣化状態を診断する診断装置であって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、
前記電源ラインの電圧を検出可能な電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するノイズ電圧検出手段と、
を備え、
前記交流電圧印加部は、前記ノイズ電圧検出手段によって検出された前記ノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の診断装置において、
前記電源ラインに発生している周波数成分のうち、前記交流電圧印加部が印加する交流電圧の周波数範囲以外の周波数成分を減衰させるフィルタを更に備える、診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の診断装置において、
前記交流電圧印加部は、
複数の周波数の交流電圧を前記電源ラインに印加し、
前記複数の周波数の交流電圧のそれぞれの周波数の交流電圧において、所定の数の波長分だけ交流電圧を印加すると、印加する交流電圧の周波数を次の周波数に切り替える、診断装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の診断装置において、
前記判定手段は、前記回路モジュールのインピーダンスを用いて機械学習された学習モデルに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する、診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の診断装置において、
前記学習モデルのハイパーパラメータは、前記回路モジュールの模擬回路のインピーダンスを用いて最適化されている、診断装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の診断装置において、
前記判定手段が前記学習モデルの機械学習を行うための学習用データは、温度を変化させて生成され、
前記学習用データは、温度とは関連づけられていないデータとして、前記学習モデルの機械学習に用いられる、診断装置。
【請求項7】
電気機器の劣化状態を診断する診断システムであって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、
前記電源ラインの電圧を検出可能な電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するノイズ電圧検出手段と、
を備え、
前記交流電圧印加部は、前記ノイズ電圧検出手段によって検出されたノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、診断システム。
【請求項8】
電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、前記電源ラインの電圧を検出可能な電圧検出部と、前記電圧検出部が検出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するノイズ電圧検出手段と、を備え、前記交流電圧印加部が、前記ノイズ電圧検出手段によって検出されたノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、前記電気機器の劣化状態を診断する診断システムを構成する診断装置であって、
前記交流電圧印加部、前記インピーダンス算出手段、前記判定手段、前記電圧検出部、及び前記ノイズ電圧検出手段のうち少なくとも前記電圧検出部、前記ノイズ電圧検出手段、及び交流電圧印加部を備える、診断装置。
【請求項9】
気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、前記電源ラインの電圧を検出可能な電圧検出部と、前記電圧検出部が検出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するノイズ電圧検出手段と、を備え、前記交流電圧印加部が、前記ノイズ電圧検出手段によって検出されたノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、前記電気機器の劣化状態を診断する診断システムを構成するベースボードであって、
前記交流電圧印加部、前記インピーダンス算出手段、前記判定手段、前記電圧検出部、及び前記ノイズ電圧検出手段のうち少なくとも前記電圧検出部、前記ノイズ電圧検出手段、及び交流電圧印加部を備える、ベースボード。
【請求項10】
電気機器の劣化状態を診断する診断方法であって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加又は交流電流を流すステップと、
前記電気機器が稼働中に交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するステップと、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定するステップと、
前記電源ラインの電圧を検出するステップと、
出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するステップと、
を含み、
前記電源ラインに印加される交流電圧の振幅は、出されたノイズ電圧の最大値より小さい、診断方法。
【請求項11】
電気機器の劣化状態を診断する診断装置であって、前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部を備える診断装置を、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、
前記電源ラインの電圧を検出可能な電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した前記電源ラインの電圧に基づいて前記電源ラインに発生するノイズ電圧の最大値を検出するノイズ電圧検出手段と、
として機能させ、
前記交流電圧印加部は、前記ノイズ電圧検出手段によって検出されたノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断システム、ベースボード、診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路に交流電圧を印加してインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて電気回路の劣化状態を診断する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャパシタに交流電圧を印加してインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいてキャパシタの劣化を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-47283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、劣化診断をする対象をキャパシタという特定の回路素子に限定しており、汎用性が高いものではなかった。また、特許文献1に記載の技術は、キャパシタが使用されていない状態においてインピーダンス測定をすることを前提とするものであり、稼働中の回路で使用中のキャパシタの劣化状態を精度良く診断することはできなかった。
【0006】
したがって、電気機器の劣化状態の診断に関する技術には改善の余地があった。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、電気機器の劣化状態の診断に関する技術を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る診断装置は、
電気機器の劣化状態を診断する診断装置であって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、を備え、
前記交流電圧印加部は、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する。
【0009】
本発明の一実施形態に係る診断システムは、
電気機器の劣化状態を診断する診断システムであって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、を備え、
前記交流電圧印加部は、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る診断装置は、
電気機器の劣化状態を診断する診断システムであって、前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、を備え、前記交流電圧印加部が、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、診断システムを構成するために、
前記交流電圧印加部、前記インピーダンス算出手段、及び前記判定手段のうち少なくとも1つを備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係るベースボードは、
電気機器の劣化状態を診断する診断システムであって、前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部と、前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、を備え、前記交流電圧印加部が、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する、診断システムを構成するために、
前記交流電圧印加部、前記インピーダンス算出手段、及び前記判定手段のうち少なくとも1つを備える。
【0012】
本発明の一実施形態に係る診断方法は、
電気機器の劣化状態を診断する診断方法であって、
前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加又は交流電流を流すステップと、
前記電気機器が稼働中に交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するステップと、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定するステップと、を含み、
前記電源ラインに印加される交流電圧の振幅は、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅である。
【0013】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
電気機器の劣化状態を診断する診断装置であって、前記電気機器に含まれている回路モジュールに接続している電源ラインに交流電圧を印加可能又は交流電流を流すことが可能である交流電圧印加部を備える診断装置を、
前記電気機器が稼働中に前記交流電圧印加部によって交流電圧を印加された前記電源ラインの電圧及び電流に基づいて、前記回路モジュールのインピーダンスを算出するインピーダンス算出手段と、
算出された前記インピーダンスに基づいて、前記回路モジュールの劣化状態を判定する判定手段と、として機能させ、
前記交流電圧印加部は、前記電気機器に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を前記電源ラインに印加する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、電気機器の劣化状態の診断に関する技術が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る診断システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る診断装置が電気機器に組み込まれている様子を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る診断装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図1に示す端末装置の概略構成を示すブロック図である。
図5】回路モジュールに交流電圧が印加されている様子を示す図である。
図6】インピーダンス算出時の電圧信号及び電流信号の例を示す図である。
図7】ナイキスト線図の一例を示す図である。
図8】回路モジュールの等価回路の一例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係る診断装置の動作を示すフローチャートである。
図10】ハイパーパラメータが最適化されていない状態における判定結果の一例を示す図である。
図11】ハイパーパラメータが最適化されている状態における判定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る診断システム1について説明する。診断システム1は、電気機器10の劣化状態を診断するシステムである。診断システム1は、診断装置20と、端末装置30と、を備える。図1に示す例においては、診断装置20は、劣化状態を診断する対象である電気機器10に組み込まれている。図1においては、1つの電気機器10に1つの診断装置20が組み込まれている構成を示しているが、1つの電気機器10に複数の診断装置20が組み込まれている構成であってもよい。また、複数の電気機器10のそれぞれに1つ以上の診断装置20が組み込まれている構成であってもよい。
【0018】
診断装置20と端末装置30とは、ネットワーク40を介して通信可能である。ネットワーク40は、無線通信可能なネットワークであってもよいし、有線通信可能なネットワークであってもよい。または、ネットワーク40は、無線通信可能なネットワークと、有線通信可能なネットワークとの両方を含むネットワークであってよい。
【0019】
電気機器10は、診断システム1又は診断装置20による劣化状態の診断の対象となる機器である。電気機器10は、電気を用いて動作する任意の機器であってよい。電気機器10は、例えば、プラント内に設置された機器を制御可能なPLC(Programmable Logic Controller)、センサ、インバータ、監視用パソコン等の直流回路が組み込まれた機器全般であってよい。
【0020】
診断装置20は、電気機器10の劣化状態を診断可能な装置である。診断装置20は、電気機器10に予め組み込まれていてもよいし、出荷後の電気機器10に増設装置として組み込まれてもよい。
【0021】
端末装置30は、診断装置20から電気機器10の劣化状態の情報を受信可能な情報処理装置である。端末装置30は、汎用の情報処理装置であってもよいし、診断システム1に専用の情報処理装置であってもよい。端末装置30が汎用の情報処理装置である場合、端末装置30は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC(Personal Computer)、デスクトップPC又はサーバ等であってよい。端末装置30が診断装置20から電気機器10の劣化状態の情報を受信することで、端末装置30の操作者は、電気機器10の遠隔地においても、電気機器10の劣化状態を知ることができる。
【0022】
図2を参照して、診断装置20が電気機器10に組み込まれている様子を示す。図2に示す例においては、電気機器10は、回路モジュール11-1~11-Nと、ベースボード12と、を備える。以後、回路モジュール11-1~11-Nについて特に区別する必要がない場合は、単に回路モジュール11と記載する場合がある。
【0023】
図2においては、電気機器10がN個の回路モジュール11-1~11-Nを備える場合を示しているが、電気機器10が備える回路モジュール11の個数は任意の個数であってよい。
【0024】
回路モジュール11は、ある特定の機能を実現するための回路を含む。回路モジュール11は、例えば、電源モジュール、CPU(Central Processing Unit)モジュール、I/Oモジュール、アナログ入力モジュール、デジタル入力モジュール又はモータ制御モジュール等であってよい。回路モジュール11は、回路構成要素として、例えば、抵抗、キャパシタ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ又はトランス等を含んでよい。
【0025】
回路モジュール11は、電源ライン13及びGNDライン14を介してベースボード12と接続している。電源ライン13は、回路モジュール11が生成した直流電圧、又は、回路モジュール11に供給される直流電圧が印加されている配線である。例えば回路モジュール11-1が電源モジュールである場合、回路モジュール11-1は、回路モジュール11-1が生成した直流電圧が印加されている電源ライン13を介してベースボード12と接続している。また、例えば回路モジュール11-2がCPUモジュールである場合、回路モジュール11-2は、回路モジュール11-2に供給される直流電圧が印加されている電源ライン13を介してベースボード12と接続している。
【0026】
ベースボード12は、各回路モジュール11と電気的に接続している。各回路モジュール11は、ベースボード12を介して相互に電気的に接続していてよい。例えば、回路モジュール11-1と、回路モジュール11-2とは、ベースボード12を介して電気的に接続していてよい。図2においては、回路モジュール11とベースボード12とを接続する配線として、電源ライン13及びGNDライン14のみを示しているが、回路モジュール11とベースボード12とを接続する配線として信号ラインが更にあってもよい。
【0027】
図2に示す例においては、診断装置20は、回路モジュール11-1とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出できるように、電気機器10の内部に設置されている。この場合、診断装置20は、回路モジュール11-1の劣化状態を診断することができる。図2に示す構成は一例であり、診断装置20は、他の回路モジュール11とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出できるように設置されていてもよい。また、複数の診断装置20が電気機器10の内部に設置されていてもよい。
【0028】
図2においては、診断装置20が電気機器10の内部に設置されている場合を示しているが、診断装置20の設置場所は電気機器10の内部に限られない。劣化状態の診断対象である回路モジュール11とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出可能であれば、診断装置20は電気機器10の外部に設置されていてもよい。
【0029】
(診断装置のハードウェア構成)
図3を参照して、診断装置20のハードウェア構成について説明する。診断装置20は、交流電圧印加部21と、電圧検出部22と、電流検出部23と、フィルタ24と、通信部25と、記憶部26と、制御部27と、を備える。
【0030】
交流電圧印加部21は、電源ライン13に交流電圧を印加可能な電圧印加手段である。交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加すると、電源ライン13には交流電流が流れる。交流電圧印加部21は、電源ライン13に交流電流を流すことが可能な電流印加手段であってもよい。交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すと、電源ライン13には交流電圧が印加される。すなわち、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加しても、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流しても、電源ライン13には同じ事象が発生する。したがって、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加可能であることと、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すことが可能であることとは同義である。以後、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加するものとして説明する。ただし、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すと読み替えても同じ効果が得られる。この場合も、電源ライン13には結果的に交流電圧が印加されることになるからである。
【0031】
交流電圧印加部21は、交流電圧を発生可能な信号発生器を含む。交流電圧印加部21は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、診断対象である回路モジュール11が接続しているGNDライン14とに接続している。交流電圧印加部21は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に交流電圧を印加可能である。
【0032】
電圧検出部22は、電源ライン13の電圧を検出可能な電圧検出手段である。電圧検出部22は、任意の形式の電圧センサであってよい。電圧検出部22は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、診断対象である回路モジュール11が接続しているGNDライン14とに接続している。電圧検出部22は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13の電圧を検出する。
【0033】
電流検出部23は、電源ライン13に流れる電流を検出可能な電流検出手段である。電流検出部23は、任意の形式の電流センサであってよい。電流検出部23は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に接続している。電流検出部23は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に流れる電流を検出する。
【0034】
フィルタ24は、所定の周波数範囲以外の周波数成分の信号を減衰させることが可能なフィルタである。フィルタ24は、例えばバンドパスフィルタ又はローパスフィルタであってよい。フィルタ24は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に発生しているノイズ電圧の周波数成分のうち、所定の周波数範囲以外の周波数成分を減衰させる。ここで、所定の周波数範囲は、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の周波数の範囲である。例えば、交流電圧印加部21が10Hzから100kHzまでの間の複数の周波数の交流電圧を電源ライン13に印加する場合、所定の周波数範囲は10Hz~100kHzである。フィルタ24は、例えば、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、診断対象である回路モジュール11が接続しているGNDライン14との間に並列に接続されていてよい。また、フィルタ24は、例えば、交流電圧印加部21の前段又は後段に配置されていてもよい。交流電圧印加部21の前段に配置する場合、フィルタ24は、ローパスフィルタであってよい。
【0035】
フィルタ24がバンドパスフィルタである場合、フィルタ24は、複数のバンドパスフィルタを切り替える構成であってもよい。この場合、フィルタ24は、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の周波数に応じて、使用するバンドパスフィルタを切り替えてよい。
【0036】
フィルタ24がローパスフィルタであり、ローパスフィルタが交流電圧印加部21の前段に配置されている場合、フィルタ24は1つのローパスフィルタで構成することができる。この場合、フィルタ24をシンプルな構成で実現することができる。
【0037】
通信部25は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部25は、ネットワーク40を介して端末装置30と通信する通信インタフェースを含む。
【0038】
記憶部26は、1つ以上のメモリである。本実施形態において、「メモリ」は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部26は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部26は、例えば診断装置20に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して診断装置20に外部から接続される構成も可能である。
【0039】
制御部27は、1つ以上のプロセッサである。本実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部27は、診断装置20全体の動作を制御する。診断装置20の動作の詳細については後述する。
【0040】
(端末装置のハードウェア構成)
図4を参照して、端末装置30のハードウェア構成について説明する。端末装置30は、通信部31と、記憶部32と、表示部33と、制御部34と、を備える。
【0041】
通信部31は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部31は、ネットワーク40を介して診断装置20と通信する通信インタフェースを含む。
【0042】
記憶部32は、1つ以上のメモリである。記憶部32は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部32は、例えば端末装置30に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して端末装置30に外部から接続される構成も可能である。
【0043】
表示部33は、任意のディスプレイである。表示部33は、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイ等であってよい。
【0044】
制御部34は、1つ以上のプロセッサである。制御部34は、端末装置30全体の動作を制御する。
【0045】
(診断装置のソフトウェア構成)
図3を参照して、診断装置20のソフトウェア構成について説明する。診断装置20の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部26に記憶されている。当該1つ以上のプログラムは、制御部27によって読み込まれると、制御部27をインピーダンス算出手段271、判定手段272、ノイズ電圧検出手段273及びパラメータ推定手段274として機能させる。
【0046】
制御部27の各手段の概要について説明する。
【0047】
インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22が検出した電源ライン13の電圧と、電流検出部23が検出した電源ライン13の電流とに基づいて、電源ライン13に接続している回路モジュール11のインピーダンスを算出する手段である。
【0048】
判定手段272は、インピーダンス算出手段271によって算出されたインピーダンスに基づいて、回路モジュール11の劣化状態を判定する手段である。
【0049】
ノイズ電圧検出手段273は、電気機器10が稼働中に電圧検出部22が検出した電源ライン13の電圧に基づいて、電源ライン13に発生しているノイズ電圧の最大値を検出する手段である。
【0050】
パラメータ推定手段274は、インピーダンス算出手段271によって算出されたインピーダンスに基づいて、等価回路として表した回路モジュール11の各回路構成要素のパラメータを推定する。
【0051】
(診断装置の動作)
以下、診断装置20の動作について説明する。本実施形態においては、図2に示すように、診断装置20が回路モジュール11-1を劣化状態の診断対象としている場合を例に挙げて説明する。
【0052】
交流電圧印加部21は、制御部27からの指示に基づいて、電気機器10が稼働中に、回路モジュール11-1が接続されている電源ライン13に交流電圧を印加する。図5に、回路モジュール11-1が接続されている電源ライン13に交流電圧V(以下、単に「電圧V」とも記載する)が印加されている際の概念図を示す。図5に示すように、電源ライン13に電圧Vが印加されると、電源ライン13に交流電流I(以下、単に「電流I」とも記載する)が流れる。
【0053】
電源ライン13に流れる電流Iは、電源ライン13が接続されている回路モジュール11-1のインピーダンスZに依存する。インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22が検出した電圧Vと、電流検出部23が検出した電流Iとに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZを、以下の数式(1)により計算する。
Z=V/I (1)
【0054】
図6に、電圧検出部22が検出した電圧Vと、電流検出部23が検出した電流Iとの一例を示す。インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22が検出した電圧Vの振幅|V|と、電流検出部23が検出した電流Iの振幅|I|とに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZの絶対値|Z|を、以下の数式(2)により計算してよい。
|Z|=|V|/|I| (2)
【0055】
また、インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22が検出した電圧Vの位相ArgVと、電流検出部23が検出した電流Iの位相ArgIとに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZの位相θを、以下の数式(3)により計算してよい。
θ=ArgV-ArgI (3)
【0056】
交流電圧印加部21は、制御部27からの指示に基づいて、電気機器10が稼働中に複数の周波数の交流電圧を電源ライン13に印加する。交流電圧印加部21が印加する複数の周波数は、回路モジュール11-1のインピーダンスZを測定するための適切な周波数として予め設定された周波数であってよい。例えば、交流電圧印加部21は、10Hz~100kHzの周波数の範囲に含まれる複数の周波数の交流電圧を電源ライン13に印加する。
【0057】
インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22及び電流検出部23が、それぞれ少なくとも1波長分の電圧及び電流を検出していれば、インピーダンスを算出することができる。交流電圧印加部21は、インピーダンス算出手段271がインピーダンスの平均値を算出できるように、所定の数の波長分の交流電圧を電源ライン13に印加してよい。交流電圧印加部21は、例えば、10波長分の交流電圧を電源ライン13に印加してよい。このように、複数の波長分の電圧及び電流を用いてインピーダンスの平均値を算出することで、インピーダンス算出手段271は、高い精度で電源ライン13のインピーダンスを算出することができる。
【0058】
交流電圧印加部21は、例えば10波長分の交流電圧を電源ライン13に印加する場合、ある周波数で10波長分の交流電圧を印加すると、次の設定の周波数で10波長分の交流電圧を印加する。このように、どのような周波数設定においても所定の数の波長分の交流電圧を印加することにより、交流電圧印加部21は、測定時間を最適化することができ、どの周波数設定においても、必要十分な時間でインピーダンスの平均値を算出することができる。
【0059】
例えば、交流電圧印加部21がどのような周波数設定に対しても一定の時間だけ、ある周波数の交流電圧を電源ライン13に印加する場合を考える。この場合、例えば交流電圧印加部21が印加する交流電圧の周波数が低い場合は、少ない波長分の交流電圧しか電源ライン13に印加することができず、インピーダンス算出手段271がインピーダンスの平均値を高い精度で算出できないことが起こりうる。また、例えば交流電圧印加部21が印加する交流電圧の周波数が高い場合は、非常に多くの波長分の交流電圧が電源ライン13に印加され、インピーダンス算出手段271がインピーダンスの平均値を算出するために必要な時間よりも過度に長い時間を測定にかけてしまうことが起こりうる。
【0060】
これに対し、どのような周波数設定においても所定の数の波長分の交流電圧を印加することにより、交流電圧印加部21は、測定時間を最適化することができ、どの周波数設定においても、必要十分な時間でインピーダンスの平均値を算出することができる。
【0061】
交流電圧印加部21は、電気機器10の動作に影響を与えない程度の、電気機器10に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を電源ライン13に印加する。このように、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の振幅を、電気機器10の動作に影響を与えない程度の振幅とすることにより、交流電圧印加部21は、電気機器10が稼働中であっても、電気機器10の動作に影響を与えずに電源ライン13に交流電圧を印加することができる。
【0062】
交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の振幅は、例えば、電源ライン13の直流電圧の大きさに応じて定まる大きさの振幅であってよい。例えば、電気機器10がPLCである場合、電源ライン13の直流電圧は24V程度のものが多い。この場合、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の振幅は、直流24Vの±0.1%(24mV)程度を上限として、印加する位置を考慮しつつ決定してもよい。
【0063】
また、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の振幅は、例えば、電気機器10が稼働中に電源ライン13に発生するノイズ電圧の最大値より小さい大きさの振幅であってよい。このように、電気機器10が稼働中に電源ライン13に元々発生しているノイズ電圧の最大値より小さい振幅の交流電圧であれば、電気機器10が稼働中に電源ライン13に印加されても電気機器10の動作に影響を与えない。
【0064】
電気機器10が稼働中に電源ライン13に発生するノイズ電圧の大きさは、電気機器10が実際に使用される環境において電気機器10が稼働しているときに、ノイズ電圧検出手段273が検出して、記憶部26に記憶しておいてよい。あるいは、ノイズ電圧の大きさは、電気機器10の仕様に応じて定まる値として、あらかじめ記憶部26に記憶しておいてもよい。また、ノイズ電圧検出手段273は、記憶部26に記憶したこれらのノイズ電圧に基づいて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。この際、ノイズ電圧検出手段273は、例えば、記憶部26に記憶したこれらのノイズ電圧に基づいて、学習機能を用いて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。
【0065】
インピーダンス算出手段271は、複数の周波数において算出したインピーダンスを複素平面上にプロットして、ナイキスト線図を作成してよい。図7に、インピーダンス算出手段271が作成したナイキスト線図の一例を示す。なお、図7に示すナイキスト線図は、等価回路が図8に示す構成となる回路モジュール11のインピーダンスを、インピーダンス算出手段271が算出した場合のナイキスト線図である。
【0066】
図7に示す複素平面は、横軸をRe(Z)とし、縦軸を-Im(Z)としたものである。図7に示す例においては、交流電圧印加部21は、f1~f5の5つの周波数において、交流電圧を電源ライン13に印加している。そして、インピーダンス算出手段271は、f1~f5の5つの周波数それぞれに対して5つのインピーダンスZ1~Z5を算出し、この5つのインピーダンスZ1~Z5を複素平面にプロットすることでナイキスト線図を作成している。
【0067】
図7に示す例においては、Z1は周波数が低いときのインピーダンスであり、Z5は周波数が高いときのインピーダンスである。図8に示す等価回路を参照すると、周波数が低いときはキャパシタCpがオープンに近づくため、周波数が低いときの等価回路のインピーダンスは、Rs+Rpに近づく。また、周波数が高いときはキャパシタCpがショートに近づくため、周波数が高いときの等価回路のインピーダンスはRsに近づく。図7を参照すると、周波数が低いところではインピーダンスがRs+Rpに近づき、周波数が高いところではインピーダンスがRsに近づいている。
【0068】
パラメータ推定手段274は、等価回路モデルと与えられた等価回路のパラメータとを用いて演算を行い、ナイキスト線図をシミュレーションする機能を有する。さらに、パラメータ推定手段274は、インピーダンス算出手段271によって作成された実測のナイキスト線図との誤差が小さくなるように、等価回路モデルのパラメータを少しずつ変更しながらナイキスト線図のシミュレーションを繰り返す。これにより、パラメータ推定手段274は、実際の等価回路のパラメータを推定する。
【0069】
回路モジュール11の等価回路は、回路モジュール11の回路構成に基づいて予め作成され、記憶部26に記憶されている。また、回路モジュール11の等価回路のパラメータの初期値も、予め記憶部26に記憶されている。
【0070】
判定手段272は、回路モジュール11の等価回路の各回路構成要素について、パラメータ推定手段274が推定したパラメータと、パラメータの初期値との差分を算出する。ここで、「パラメータの初期値」は、例えば電気機器10がPLCである場合、新品のPLCのパラメータの値であってよい。判定手段272は、算出した差分を、各回路構成要素について設定されている閾値と比較する。判定手段272は、ある回路構成要素について算出したパラメータの差分が閾値より大きい場合、その回路構成要素が劣化していると判定する。なお、推定したパラメータに対して、判定手段272が差分を算出する対象は、パラメータの初期値に限定されない。例えば、判定手段272は、推定したパラメータと、パラメータの直近過去の値との差分を算出してもよいし、又は、推定したパラメータと、パラメータの直近過去の複数のデータの平均値との差分を算出してもよい。
【0071】
判定手段272は、回路モジュール11の等価回路の各回路構成要素について、劣化しているか否かの判定結果を、通信部25によって端末装置30に送信してよい。
【0072】
端末装置30は、判定手段272による判定結果を、診断装置20から受信する。端末装置30は、受信した判定結果を、表示部33に表示させてもよい。このように、判定手段272による判定結果を診断装置20から受信することにより、端末装置30の操作者は、遠隔地においても電気機器10に劣化があるか否かを把握することができる。
【0073】
続いて、図9に示すフローチャートを参照して、本発明の一実施形態に係る診断装置20の動作について説明する。
【0074】
図9に示すフローチャートは、診断装置20が診断対象である電気機器10を診断する処理を示すものである。診断装置20は、図9に示す処理を定期的に実行してもよいし、ユーザからの指示に応じてオンデマンドで実行してもよい。定期的に実行する場合、診断装置20は、例えば、一週間に1回、又は一ヶ月に1回等の頻度で、図9に示す処理を実行してよい。
【0075】
ステップS101:制御部27は、診断対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に印加する交流電圧の周波数を、印加予定の複数の周波数のうちの最初の周波数に設定する。
【0076】
ステップS102:交流電圧印加部21は、制御部27から指示された周波数の交流電圧を、電源ライン13に印加する。
【0077】
ステップS103:電圧検出部22は、電源ライン13の電圧を検出する。電流検出部23は、電源ライン13に流れる電流を検出する。
【0078】
ステップS104:インピーダンス算出手段271は、電圧検出部22が検出した電圧と、電流検出部23が検出した電流とに基づいて、診断対象である回路モジュール11のインピーダンスを算出する。この際、インピーダンス算出手段271は、所定の数の波長分だけ印加された交流電圧に対して電圧検出部22が検出した電圧と、電流検出部23が検出した電流とに基づいて、インピーダンスの平均値を算出してもよい。インピーダンス算出手段271は、算出したインピーダンスを記憶部26に記憶する。
【0079】
ステップS105:制御部27は、電源ライン13に印加する予定の複数の周波数が全て電源ライン13に印加されたかを判定する。まだ全ての周波数が電源ライン13に印加されていない場合(ステップS105のNo)、制御部27は、ステップS106に進む。全ての周波数が電源ライン13に印加されている場合、制御部27は、ステップS107に進む。
【0080】
ステップS106:制御部27は、電源ライン13に印加する交流電圧の周波数を次の周波数に設定し、ステップS102に戻る。
【0081】
ステップS107:インピーダンス算出手段271は、記憶部26に記憶されている複数のインピーダンスに基づいて、ナイキスト線図を作成する。
【0082】
ステップS108:パラメータ推定手段274は、ステップS107において作成されたナイキスト線図との誤差が小さくなるように、等価回路モデルのパラメータを少しずつ変更しながらナイキスト線図のシミュレーションを繰り返す。これにより、パラメータ推定手段274は、回路モジュール11の等価回路のパラメータを推定する。
【0083】
ステップS109:判定手段272は、回路モジュール11の等価回路の各回路構成要素について、パラメータ推定手段274が推定したパラメータと、パラメータの初期値との差分を算出する。
【0084】
ステップS110:判定手段272は、ステップS109において等価回路の各回路構成要素について算出した差分が、各回路構成要素について設定されている閾値より大きいか判定する。差分が閾値以下である場合(ステップS110のNo)、判定手段272はステップS111に進む。差分が閾値より大きい場合(ステップS110のYes)、判定手段272はステップS112に進む。
【0085】
ステップS111:判定手段272は、差分が閾値より大きい回路構成要素がない場合、劣化した回路構成要素はないと判定する。
【0086】
ステップS112:判定手段272は、差分が閾値より大きい回路構成要素がある場合、劣化した回路構成要素があると判定する。
【0087】
ステップS111又はステップS112の後、判定手段272は、劣化した回路構成要素があるかないかの判定結果を、通信部25によって端末装置30に送信してもよい。
【0088】
(機械学習を用いた判定)
【0089】
判定手段272は、インピーダンス算出手段271によって算出されたインピーダンスに基づいて回路モジュール11の劣化状態を判定する際、回路モジュール11のインピーダンスを用いて機械学習された学習モデルに基づいて、回路モジュール11の劣化状態を判定してよい。このように、機械学習された学習モデルを用いて判定することで、判定手段272は、回路モジュール11の劣化状態の判定精度を向上させることができる。
【0090】
回路モジュール11を実際に動作させた状態で、回路モジュール11のインピーダンスを測定したインピーダンスのデータは、判定手段272が回路モジュール11の劣化状態の判定の際に用いる学習モデルを機械学習させるための学習用データとして用いることができる。
【0091】
回路モジュール11のインピーダンスを測定する際は、回路モジュール11を動作させた状態で回路モジュール11に交流電圧を印加し、そのときに検出される電圧及び電流に基づいて、インピーダンスを測定する。回路モジュール11のインピーダンスを測定する際は、複数の周波数の交流電圧を、回路モジュール11に印加してよい。回路モジュール11に印加する交流電圧の周波数の範囲は、例えば、10Hz~100kHzの範囲であってよい。
【0092】
正常動作をすることが確認されている回路モジュール11を用いて、回路モジュール11のインピーダンスを測定すると、測定されたインピーダンスのデータは、回路モジュール11の正常時のインピーダンスに相当する学習用データとすることができる。
【0093】
異常動作をすることが確認されている回路モジュール11を用いて、回路モジュール11のインピーダンスを測定すると、測定されたインピーダンスのデータは、回路モジュール11の異常時のインピーダンスに相当する学習用データとすることができる。
【0094】
判定手段272が回路モジュール11の劣化状態を判定する際に用いる学習モデルは、回路モジュール11を用いて測定された学習用データを用いて機械学習されてよい。学習モデルは、回路モジュール11の正常時のインピーダンスに相当する学習用データと、回路モジュール11の異常時のインピーダンスに相当する学習用データとを用いて機械学習される。
【0095】
判定手段272は、インピーダンス算出手段271によって算出されたインピーダンスに基づいて回路モジュール11の劣化状態を判定する際、回路モジュール11のインピーダンスを用いて機械学習された学習モデルの代わりに、回路モジュール11の模擬回路を用いて機械学習された学習モデルに基づいて、回路モジュール11の劣化状態を判定してもよい。
【0096】
回路モジュール11の模擬回路は、回路モジュール11の等価回路に相当する回路を、実際の回路素子を用いて基板などに実装した回路である。模擬回路に含まれる回路素子は、例えば、抵抗、キャパシタ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ及びトランスなどであってよい。模擬回路は、例えば、汎用のプリント基板に、汎用の、抵抗、キャパシタ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ及びトランスなどを実装したものであってよい。
【0097】
模擬回路は、回路モジュール11に発生することが想定される故障を模擬することができるように構成されている。
【0098】
例えば、回路モジュール11の等価回路にキャパシタが含まれていて、回路モジュール11の故障として、キャパシタの内部抵抗が増加する故障が発生することが想定される場合を考える。この場合、模擬回路は、キャパシタと抵抗とが直列接続された構成を含む。模擬回路に含まれるこのキャパシタは、故障が想定されるキャパシタに対応する。このキャパシタに直列接続された抵抗は、故障が想定されるキャパシタの内部抵抗に対応する。内部抵抗に対応する抵抗は、抵抗値を変えることが可能となっている。内部抵抗に対応する抵抗は、抵抗値として、少なくとも、正常時におけるキャパシタの内部抵抗の抵抗値と、故障時に想定されるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とを切り替えることが可能となっている。模擬回路に含まれる、キャパシタの内部抵抗に対応する抵抗の抵抗値を、故障時に想定されるキャパシタの内部抵抗の抵抗値に切り替えた状態にすることを、「模擬故障」とも称する。
【0099】
模擬回路を実際に動作させた状態で、模擬回路のインピーダンスを測定したインピーダンスのデータは、判定手段272が回路モジュール11の劣化状態の判定の際に用いる学習モデルを機械学習させるための学習用データとして用いることができる。
【0100】
模擬回路のインピーダンスを測定する際は、模擬回路を動作させた状態で模擬回路に交流電圧を印加し、そのときに検出される電圧及び電流に基づいて、インピーダンスを測定する。模擬回路のインピーダンスを測定する際は、複数の周波数の交流電圧を、模擬回路に印加してよい。模擬回路に印加する交流電圧の周波数の範囲は、例えば、10Hz~100kHzの範囲であってよい。
【0101】
模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、正常時におけるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で、模擬回路のインピーダンスを測定すると、測定されたインピーダンスのデータは、回路モジュール11の正常時のインピーダンスに相当する学習用データとすることができる。
【0102】
模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、故障時に想定されるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で、模擬回路のインピーダンスを測定すると、測定されたインピーダンスのデータは、回路モジュール11の異常時のインピーダンスに相当する学習用データとすることができる。
【0103】
判定手段272が回路モジュール11の劣化状態を判定する際に用いる学習モデルは、模擬回路を用いて測定された学習用データを用いて機械学習されてもよい。学習モデルは、模擬回路を用いて測定された、回路モジュール11の正常時のインピーダンスに相当する学習用データと、模擬回路の模擬故障を用いて測定された、回路モジュール11の異常時のインピーダンスに相当する学習用データとを用いて機械学習される。
【0104】
学習用データの数を増やすため、回路モジュール11又は模擬回路が設置されている環境の温度を変化させて、様々な温度で回路モジュール11又は模擬回路のインピーダンスを測定してよい。例えば、回路モジュール11又は模擬回路を恒温槽に入れることで、回路モジュール11又は模擬回路が設置されている環境の温度を変化させることができる。温度を変化させる範囲は、回路モジュール11が設置される環境の温度として想定される温度の範囲であってよい。温度を変化させる範囲は、例えば、10℃~50℃の範囲などであってよい。
【0105】
模擬回路で測定する学習用のデータを増やす場合、模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、正常時におけるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で、温度を変化させて、模擬回路のインピーダンスを測定することで、正常時のインピーダンスに相当する学習用データを複数個取得することができる。また、模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、故障時に想定されるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で、温度を変化させて、模擬回路のインピーダンスを測定することで、異常時のインピーダンスに相当する学習用データを複数個取得することができる。
【0106】
温度を変化させて取得した学習用データは、温度とは関連づけられていないデータとして、学習モデルの機械学習に用いてよい。すなわち、学習モデルの機械学習に学習用データを用いる際に、学習用データの中に、学習用データを取得した際の温度の情報を含めなくてよい。これは、温度を変化させる範囲が、回路モジュール11が設置される環境の温度として想定される温度の範囲であるため、例えば、正常時におけるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で、温度を変化させて取得した学習用データは、全て正常時の学習用データとしてよいからである。このように温度の情報を学習用データに含めないことで、学習用データから温度のパラメータの分だけ次元を減らすことが可能となり、機械学習の処理のスピードを速くすることが可能となる。
【0107】
回路モジュール11又は模擬回路を用いて取得された正常時の学習用データと異常時の学習用データとに基づいて機械学習された学習モデルは、診断装置20の記憶部26に格納されていてよい。判定手段272は、記憶部26に格納されている学習モデルに基づいて、回路モジュール11の劣化状態を判定する。
【0108】
機械学習のアルゴリズムは、例えば、OCSVM(One Class Support Vector Machine)であってよい。この場合、機械学習のアルゴリズムは、ハイパーパラメータと称されるパラメータを有する。ハイパーパラメータは、ニュー(ν)及びガンマ(γ)をパラメータとして含む。ニューは、学習用データに含まれる異常データの割合に関連するパラメータである。ガンマは、境界面の複雑さを決定するパラメータであり、ガンマが大きくなると境界面の複雑さが増す。
【0109】
判定手段272が用いる学習モデルのハイパーパラメータは、模擬回路を用いて取得された正常時の学習用データと異常時の学習用データとに基づいて最適化されていてよい。ハイパーパラメータを最適化することで、判定手段272は、回路モジュール11の劣化状態を判定する際の精度をさらに向上させることができる。
【0110】
図10及び図11を参照して、ハイパーパラメータが最適化されていない状態とハイパーパラメータが最適化されている状態の判定精度の違いについて説明する。図10は、ハイパーパラメータが最適化されていない状態における判定結果の一例を示す図である。図11は、ハイパーパラメータが最適化されている状態における判定結果の一例を示す図である。
【0111】
図10及び図11において、横軸は、データ番号を示す。データ番号は、模擬回路を用いて取得された複数のインピーダンスのデータの各データに付された番号である。例えば、データ番号が「1」であるとは、1番目に取得されたデータであることを示す。図10及び図11に示す例において、データ番号が1~38のデータは、模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、正常時におけるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で測定したインピーダンスのデータである。データ番号が39~73のデータは、模擬回路に含まれる抵抗の抵抗値を、故障時に想定されるキャパシタの内部抵抗の抵抗値とした状態で測定したインピーダンスのデータである。
【0112】
図10及び図11において、縦軸は、機械学習のアルゴリズムが出力する正常度の値を示す。判定手段272は、正常度が所定の閾値以上である場合、インピーダンスが正常であると判定する。判定手段272は、正常度が所定の閾値より小さい場合、インピーダンスが異常であると判定する。
【0113】
図10及び図11に示されている、白丸、黒丸、白三角、及び黒三角の記号は、それぞれ以下の内容であることを意味する。
白丸:正常なインピーダンスを測定したデータが正常と判定されている
黒丸:正常なインピーダンスを測定したデータが異常と判定されている
白三角:異常なインピーダンスを測定したデータが異常と判定されている
黒三角:異常なインピーダンスを測定したデータが正常と判定されている
すなわち、白丸及び白三角の割合が、黒丸及び黒三角の割合よりも高いほど、判定精度は高い。
【0114】
図10は、ハイパーパラメータが最適化されていない状態における判定結果の一例を示す図である。図10に示す例では、ハイパーパラメータは、それぞれ以下のように設定されている。
ニュー(ν):0.3
ガンマ(γ):0.1
図10を参照すると、黒丸及び黒三角の数が多い。すなわち、判定精度が低い。
【0115】
図11は、ハイパーパラメータが最適化されている状態における判定結果の一例を示す図である。図11に示す判定において、ハイパーパラメータは、それぞれ以下のように設定されている。
ニュー(ν):0.01
ガンマ(γ):0.5
図11を参照すると、黒丸は1個しかなく、黒三角の数は0個である。すなわち、判定精度が高い。このように、ハイパーパラメータを最適化することで、判定精度を向上させることができる。
【0116】
以上述べたように、本実施形態に係る診断装置20によれば、インピーダンス算出手段271が回路モジュール11のインピーダンスを算出する際に、電気機器10に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧が交流電圧印加部21によって電源ライン13に印加される。このように、交流電圧印加部21が、電気機器10の動作に影響を与えない程度の、電気機器10に応じて定まる大きさの振幅の交流電圧を電源ライン13に印加するため、診断装置20は、電気機器10が稼働中に、算出したインピーダンスに基づいて電気機器10の劣化状態を診断することができる。したがって、電気機器10の劣化状態の診断に関する技術を改善することができる。
【0117】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段及びステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0118】
例えば、診断システム1が複数の情報処理装置を備え、上述した実施形態に係る診断装置20又は端末装置30の各構成又は各手段が、当該複数の情報処理装置に分散配置された構成も可能である。例えば、当該複数の情報処理装置のうち、第1の情報処理装置が、インピーダンス算出手段271、判定手段272、ノイズ電圧検出手段273及びパラメータ推定手段274のうちの一部の手段として機能し、第2の情報処理装置が、残りの手段として機能してもよい。上記の複数の手段の分散配置の例はこれに限られず、任意の数の情報処理装置に対して任意に分散させて配置することができる。
【0119】
また、端末装置30の記憶部32が、制御部34をインピーダンス算出手段271、判定手段272、ノイズ電圧検出手段273及びパラメータ推定手段274として機能させるプログラムの少なくとも1つを記憶していてもよい。この場合、端末装置30が、診断装置20の代わりに、インピーダンス算出手段271、判定手段272、ノイズ電圧検出手段273及びパラメータ推定手段274のうちの少なくとも1つの手段による機能を実行してもよい。
【0120】
また、上述した実施形態において、診断装置20が電気機器10のベースボード12と一体として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 診断システム
10 電気機器
11 回路モジュール
12 ベースボード
13 電源ライン
14 GNDライン
20 診断装置
21 交流電圧印加部
22 電圧検出部
23 電流検出部
24 フィルタ
25 通信部
26 記憶部
27 制御部
271 インピーダンス算出手段
272 判定手段
273 ノイズ電圧検出手段
274 パラメータ推定手段
30 端末装置
31 通信部
32 記憶部
33 表示部
34 制御部
40 ネットワーク
図1
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