(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】太陽光発電装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/054 20140101AFI20240821BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240821BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L31/04 620
G02B5/22
G02B5/26
(21)【出願番号】P 2020167869
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196550(WO,A1)
【文献】特開2018-151626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、床側に位置する下側面と、天井側に位置する上側面と、を有する光導波部と、
前記第2主面と対向する光学素子群と、
前記下側面と対向し、入射光のうちの紫外線を受光して発電する第1太陽電池と、
前記上側面と対向し、入射光のうちの赤外線を受光して発電する第2太陽電池と、
を備え、
前記光学素子群は、
第1螺旋ピッチのコレステリック液晶を有し、前記光導波部を介した入射光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する第1光学素子と、
前記第1光学素子に重なり、前記第1螺旋ピッチとは異なる第2螺旋ピッチのコレステリック液晶を有し、前記光導波部を介した入射光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する第2光学素子と、を備え、
前記第1光学素子は、前記光導波部と前記光学素子群との境界面に対して傾斜した第1反射面を有し、
前記境界面に対する前記第1反射面の傾斜角度は、前記第1太陽電池側に鋭角であり、
前記第2光学素子は、前記境界面に対して傾斜した第2反射面を有し、
前記境界面に対する前記第2反射面の傾斜角度は、前記第2太陽電池側に鋭角である、太陽光発電装置。
【請求項2】
さらに、紫外線カット層及び赤外線カット層の少なくとも一方の光学層を備え、
前記光学素子群は、前記光導波部と前記光学層との間に位置している、請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項3】
さらに、紫外線カット層及び赤外線カット層が重なった光学層を備え、
前記光学素子群は、前記光導波部と前記光学層との間に位置している、請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項4】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、第1旋回方向に旋回した前記コレステリック液晶を有し、前記第1旋回方向の第1円偏光を反射する、請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項5】
前記第1光学素子は、第1旋回方向に旋回した前記コレステリック液晶を有し、前記第1旋回方向の第1円偏光を反射し、
前記第2光学素子は、前記第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回した前記コレステリック液晶を有し、前記第2旋回方向の第2円偏光を反射する、請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項6】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の各々は、
第1旋回方向に旋回した前記コレステリック液晶を有し、前記第1旋回方向の第1円偏光を反射する第1層と、
前記第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回した前記コレステリック液晶を有し、前記第2旋回方向の第2円偏光を反射する第2層と、を有している、請求項1に記載の太陽光発電装置。
【請求項7】
前記光導波部において、前記第1主面は屋外側に位置し、前記第2主面は屋内側に位置している、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽光発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽光発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明な太陽電池が種々提案されている。例えば、透明な色素増感型太陽電池を表示装置の表面に配置した太陽電池付き表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、効率的に発電することが可能な太陽光発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の太陽光発電装置は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、床側に位置する下側面と、を有する光導波部と、前記第2主面と対向し、コレステリック液晶を有し、前記第1主面からの入射光のうち紫外線の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する光学素子と、前記下側面と対向し、前記紫外線を受光して発電する太陽電池と、を備え、前記光学素子は、前記光導波部と前記光学素子との境界面に対して傾斜した反射面を有し、前記境界面に対する前記反射面の傾斜角度は、前記太陽電池側に鋭角である。
【0006】
本実施形態の太陽光発電装置は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、天井側に位置する上側面と、を有する光導波部と、前記第2主面と対向し、コレステリック液晶を有し、前記第1主面からの入射光のうち赤外線の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する光学素子と、前記上側面と対向し、前記赤外線を受光して発電する太陽電池と、を備え、前記光学素子は、前記光導波部と前記光学素子との境界面に対して傾斜した反射面を有し、前記境界面に対する前記反射面の傾斜角度は、前記太陽電池側に鋭角である。
【0007】
本実施形態の太陽光発電装置は、
第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面と、床側に位置する下側面と、天井側に位置する上側面と、を有する光導波部と、前記第2主面と対向する光学素子群と、前記下側面と対向し、入射光のうちの紫外線を受光して発電する第1太陽電池と、前記上側面と対向し、入射光のうちの赤外線を受光して発電する第2太陽電池と、を備え、前記光学素子群は、第1螺旋ピッチのコレステリック液晶を有し、前記光導波部を介した入射光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する第1光学素子と、前記第1光学素子に重なり、前記第1螺旋ピッチとは異なる第2螺旋ピッチのコレステリック液晶を有し、前記光導波部を介した入射光の少なくとも一部を前記光導波部に向けて反射する第2光学素子と、を備え、前記第1光学素子は、前記光導波部と前記光学素子群との境界面に対して傾斜した第1反射面を有し、前記境界面に対する前記第1反射面の傾斜角度は、前記第1太陽電池側に鋭角であり、前記第2光学素子は、前記境界面に対して傾斜した第2反射面を有し、前記境界面に対する前記第2反射面の傾斜角度は、前記第2太陽電池側に鋭角である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、光学素子3の構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、太陽光発電装置100を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る光学素子3を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、変形例2に係る光学素子3を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る太陽光発電装置100の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1構成例において可視光V及び赤外線Iが透過する様子を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第2構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第3構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る太陽光発電装置100の主要部を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、第4構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、第4構成例において可視光V及び紫外線Uが透過する様子を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第5構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、第6構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図16A】
図16Aは、第7構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図16B】
図16Bは、変形例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図17は、第7構成例において可視光Vが透過する様子を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第7構成例において紫外線Uが選択反射される様子を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第8構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図20A】
図20Aは、変形例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図20B】
図20Bは、変形例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図21】
図21は、第9構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【
図22】
図22は、第10構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向を第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向を第2方向A2と称し、X軸に沿った方向を第3方向A3と称する。第1方向A1、第2方向A2、及び、第3方向A3は互いに直交する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0011】
(基本構成例)
図1は、本実施形態の太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。太陽光発電装置100は、光導波部1と、光学素子3と、太陽電池5と、を備えている。
【0012】
光導波部1は、光を透過する透明部材、例えば、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板によって構成されている。光導波部1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。光導波部1は任意の形状を取り得る。例えば、光導波部1は、湾曲していてもよい。光導波部1の屈折率は、例えば、空気の屈折率よりも大きい。光導波部1は、例えば、建造物の窓ガラス、車両の風防ガラス等として機能する。
【0013】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長帯の紫外線、及び、第3波長帯より長波長帯の赤外線を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0014】
光導波部1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面F1と、第2主面F2と、側面F3と、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面F3は、第1方向A1に沿って延びた面である。
図1に示す例では、側面F3は、X-Z平面と略平行な面であるが、側面F3は、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0015】
光学素子3は、第1方向A1において、光導波部1の第2主面F2と対向している。光学素子3は、第1主面F1から入射した光LTiの少なくとも一部を光導波部1に向けて反射するものである。一例では、光学素子3は、入射した光LTiのうち、第1円偏光及び第1円偏光とは逆回りの第2円偏光の少なくとも一方を反射する液晶層31を備えている。光学素子3によって反射される第1円偏光及び第2円偏光は、例えば、紫外線及び赤外線といった不可視光であるが、可視光であってもよい。なお、本明細書において、光学素子3における「反射」とは、光学素子3の内部における回折を伴うものである。
【0016】
なお、光学素子3は、例えば、可撓性を有していてもよい。また、光学素子3は、光導波部1の第2主面F2と接触していてもよいし、光学素子3と光導波部1との間に接着層等の透明な層が介在していてもよい。光学素子3と光導波部1との間に介在する層の屈折率は、光導波部1の屈折率とほぼ同等であることが好ましい。
光学素子3は、薄膜として構成される。例えば、別途フィルム状に形成された光学素子3が光導波部1に接着される場合もあり得るし、光導波部1に直接材料を塗布してフィルム状の光学素子3が形成される場合もあり得る。
【0017】
太陽電池5は、第2方向A2において、光導波部1の側面F3と対向している。太陽電池5は、光を受光して、受光した光のエネルギーを電力に変換するものである。つまり、太陽電池5は、受光した光によって発電する。太陽電池の種類は、特に限定されず、太陽電池5は、例えば、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機物系太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池、又は、量子ドット型太陽電池である。シリコン系太陽電池としては、アモルファスシリコンを備えた太陽電池や、多結晶シリコンを備えた太陽電池などが含まれる。ここに示した太陽電池5は、受光素子の一例である。受光素子の他の例として、光センサが挙げられる。つまり、太陽電池5は、光センサに置換されてもよい。
【0018】
次に、
図1に示す例において、太陽光発電装置100の動作について説明する。
【0019】
光導波部1の第1主面F1に入射する光LTiは、例えば、太陽光である。つまり、光LTiは、可視光の他に、紫外線及び赤外線を含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、光導波部1に対して略垂直に入射するものとする。なお、光導波部1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。例えば、互いに異なる複数の入射角度をもって光導波部1に光LTiが入射してもよい。
【0020】
光LTiは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して光学素子3に入射する。そして、光学素子3は、光LTiのうち、一部の光LTrを光導波部1及び太陽電池5に向けて反射し、他の光LTtを透過する。ここでは、光導波部1及び光学素子3における吸収等の光損失は無視している。光学素子3で反射される光LTrは、例えば、所定波長の第1円偏光に相当する。また、光学素子3を透過する光LTtは、所定波長の第2円偏光と、所定波長とは異なる波長の光を含んでいる。ここでの所定波長とは、例えば紫外線、あるいは、赤外線である。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0021】
光学素子3は、第1円偏光を、光導波部1における光導波条件を満足する進入角θで、光導波部1に向けて反射する。ここでの進入角θとは、光導波部1の内部で全反射を起こす臨界角θc以上の角度に相当する。進入角θは、光導波部1に直交する垂線に対する角度を示す。
【0022】
光LTrは、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を伝搬する。
太陽電池5は、側面F3から出射した光LTrを受光し、発電する。
【0023】
図2は、光学素子3の構造を模式的に示す断面図である。なお、光導波部1は二点鎖線で示している。
光学素子3は、複数の螺旋状構造体311を有している。複数の螺旋状構造体311の各々は、第1方向A1に沿って延びている。つまり、複数の螺旋状構造体311の各々の螺旋軸AXは、光導波部1の第2主面F2に対して略垂直である。螺旋軸AXは、第1方向A1に略平行である。複数の螺旋状構造体311の各々は、螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(360度)を示す。複数の螺旋状構造体311の各々は、複数の要素315を含んでいる。複数の要素315は、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられている。
【0024】
光学素子3は、第2主面F2に対向する第1境界面317と、第1境界面317の反対側の第2境界面319と、第1境界面317と第2境界面319との間の複数の反射面321と、を有している。第1境界面317は、光導波部1を透過し第2主面F2から出射した光LTiが光学素子3に入射する面である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、螺旋状構造体311の螺旋軸AXに対して略垂直である。第1境界面317及び第2境界面319の各々は、光導波部1(あるいは第2主面F2)に略平行である。
【0025】
第1境界面317は、螺旋状構造体311の両端部のうちの一端部e1に位置する要素315を含んでいる。第1境界面317は、光導波部1と光学素子3との境界に位置している。第2境界面319は、螺旋状構造体311の両端部のうちの他端部e2に位置する要素315を含んでいる。第2境界面319は、光学素子3と空気層との境界に位置している。
【0026】
図2に示す例では、複数の反射面321は、互いに略平行である。反射面321は、第1境界面317及び光導波部1(あるいは第2主面F2)に対して傾斜しており、一定方向に延びる略平面形状を有している。反射面321は、ブラッグの法則に従って、第1境界面317から入射した光LTiのうち一部の光LTrを選択反射する。具体的には、反射面321は、光LTrの波面WFが反射面321と略平行になるように、光LTrを反射する。更に具体的には、反射面321は、第1境界面317に対する反射面321の傾斜角度φに応じて光LTrを反射する。
【0027】
反射面321は、次のように定義できる。すなわち、光学素子3において選択的に反射される所定波長の光(例えば円偏光)が感じる屈折率は、光が光学素子3の内部を進行するのに伴って徐々に変化する。このため、光学素子3においてフレネル反射が徐々に起こる。そして、複数の螺旋状構造体311において光が感じる屈折率が最も大きく変化する位置で、フレネル反射が最も強く起こる。つまり、反射面321は、光学素子3においてフレネル反射が最も強く起こる面に相当する。
【0028】
複数の螺旋状構造体311のうち、第2方向A2に隣接する螺旋状構造体311の各々の要素315の配向方向は互いに異なっている。また、複数の螺旋状構造体311のうち、第2方向A2に隣接する螺旋状構造体311の各々の空間位相は互いに異なっている。反射面321は、要素315の配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。つまり、複数の反射面321の各々は、第1境界面317あるいは光導波部1に対して傾斜している。
【0029】
なお、反射面321の形状は、
図2に示したような平面形状に限らず、凹状や凸状の曲面形状であってもよく、特に限定されるものではない。また、反射面321の一部に凸凹を有していたり、反射面321の傾斜角度φが均一でなかったり、複数の反射面321が、規則的に整列していなかったりしてもよい。複数の螺旋状構造体311の空間位相分布に応じて、任意の形状の反射面321を構成することができる。
【0030】
本実施形態では、螺旋状構造体311は、コレステリック液晶である。要素315の各々は、液晶分子に相当する。
図2では、図面の簡略化のため、1つの要素315は、X-Y平面内に位置する複数の液晶分子のうち、平均的配向方向を向いている液晶分子を代表して示している。
【0031】
螺旋状構造体311であるコレステリック液晶は、選択反射帯域Δλに含まれる所定波長λの光のうち、コレステリック液晶の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を反射する。例えば、コレステリック液晶の旋回方向が右回りの場合、所定波長λの光のうち、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。同様に、コレステリック液晶の旋回方向が左回りの場合、所定波長λの光のうち、左回りの円偏光を反射し、右回りの円偏光を透過する。
【0032】
コレステリック液晶の螺旋のピッチをP、液晶分子の異常光に対する屈折率をne、液晶分子の常光に対する屈折率をnoと記載すると、一般的に、垂直入射した光に対するコレステリック液晶の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」で示される。なお、詳細には、コレステリック液晶の選択反射帯域Δλは、「no*P~ne*P」の範囲に対して、反射面321の傾斜角度φや、第1境界面317への入射角度などに応じて変化する。
【0033】
光学素子3がコレステリック液晶によって構成される場合、例えば、光学素子3は薄膜として形成される。例えば、光学素子3は、複数の螺旋状構造体311を重合させることによって形成される。具体的には、光学素子3は、複数の要素(液晶分子)315を重合させることによって形成される。例えば、複数の液晶分子に光を照射することによって、複数の液晶分子を重合させる。
【0034】
又は、光学素子3は、所定の温度又は所定の濃度において液晶状態を示す高分子液晶材料を、液晶状態において複数の螺旋状構造体311を形成するように配向制御し、その後、配向を維持したまま固体に転移させることで形成される。
【0035】
光学素子3において、隣り合う螺旋状構造体311は、重合又は固体への転移によって、螺旋状構造体311の配向を維持したまま、つまり、螺旋状構造体311の空間位相を維持したまま、互いに結合している。その結果、光学素子3において、各液晶分子の配向方向が固定されている。
【0036】
図3は、太陽光発電装置100を模式的に示す平面図である。
図3には、螺旋状構造体311の空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、螺旋状構造体311に含まれる要素315のうち、第1境界面317に位置する要素315の配向方向として示している。
【0037】
第2方向A2に沿って並んだ螺旋状構造体311の各々について、第1境界面317に位置する要素315の配向方向は互いに異なる。つまり、第1境界面317における螺旋状構造体311の空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだ螺旋状構造体311の各々について、第1境界面317に位置する要素315の配向方向は略一致する。つまり、第1境界面317における螺旋状構造体311の空間位相は、第3方向A3において略一致する。
【0038】
特に、第2方向A2に並んだ螺旋状構造体311に着目すると、各要素315の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第1境界面317において、第2方向A2に沿って並んだ複数の要素315の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数の螺旋状構造体311の空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、
図2に示した光学素子3のように、第1境界面317及び光導波部1に対して傾斜する反射面321が形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、要素315の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。
【0039】
なお、ここでの要素315の配向方向とは、螺旋状構造体311がコレステリック液晶の場合、X-Y平面における液晶分子の長軸方向に相当する。
【0040】
ここで、
図3に示すように、第1境界面317において、第2方向A2に沿って要素315の配向方向が180度だけ変化するときの2つの螺旋状構造体311の間隔を螺旋状構造体311の周期Tと定義する。なお、
図3においてDPは要素315の旋回方向を示している。
図2に示した反射面321の傾斜角度φは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。
【0041】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る光学素子3を模式的に示す断面図である。
図4に示す変形例1は、上記の
図2に示した構成例と比較して、螺旋状構造体311の螺旋軸AXが光導波部1あるいは第2主面F2あるいは第1境界面317に対して傾斜している点で相違している。また、
図4に示す変形例1では、第1境界面317あるいはX-Y平面内での螺旋状構造体311の空間位相は略一致している。その他、変形例1に係る螺旋状構造体311は、上記した構成例に係る螺旋状構造体311と同様の特性を有している。
このような変形例1では、光学素子3は、光導波部1を介して入射した光LTiのうち、一部の光LTrを螺旋軸AXの傾斜に応じた反射角で反射し、その他の光LTtを透過する。
【0042】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る光学素子3を模式的に示す断面図である。
図5に示す変形例2は、上記の
図4に示した変形例1と比較して、第1境界面317あるいはX-Y平面内での螺旋状構造体311の空間位相が第2方向A2に沿って異なる点で相違している。その他、変形例1に係る螺旋状構造体311は、上記した構成例に係る螺旋状構造体311と同様の特性を有している。
このような変形例2では、光学素子3は、光導波部1を介して入射した光LTiのうち、一部の光LTrを螺旋軸AXの傾斜に応じた反射角で反射し、その他の光LTtを透過する。
【0043】
以下に、いくつかの実施形態について説明する。なお、各実施形態においては、螺旋状構造体がコレステリック液晶であるものとして説明する。
【0044】
《実施形態1》
図6は、実施形態1に係る太陽光発電装置100の主要部を模式的に示す断面図である。なお、光導波部1は二点鎖線で示している。
【0045】
ここでは、建造物に取り付けられた太陽光発電装置100を想定し、太陽光発電装置100は図中のY軸が鉛直線に沿うように設置されたものとする。このとき、窓ガラスとしての光導波部1は屋外側に配置され、光学素子3は屋内側に配置されている。窓ガラスがペアガラスやトリプルガラスといった多層ガラスとして構成されている場合には、光導波部1は、最も屋外側に配置される。
【0046】
このような光導波部1において、第1主面F1は屋外側に位置し、第2主面F2は屋内側に位置している。ここで、鉛直下方つまり床側を「下」とし、鉛直上方つまり天井側を「上」とする。
【0047】
光導波部1は、側面F3の一部として、下側面F31と、上側面F32と、を有している。下側面F31は、屋内にいる人間が太陽光発電装置100を介して屋外を観察したときに、地平線よりも下側に位置する側面に相当する。上側面F32は、屋内にいる人間が太陽光発電装置100を介して屋外を観察したときに、地平線よりも上側に位置する側面に相当する。
【0048】
光学素子3において、反射面321は、Y軸に対して傾斜している。
図6に示す例では、連続する反射面321は、床側において屋内側に近接し、天井側において屋外側に近接するように傾斜している。あるいは、Y軸と交差する反射面321において、反射面321とY軸との交点Cよりも床側の反射面321は屋内側に向かって延び、交点Cよりも天井側の反射面321は屋外側に向かって延びている。このため、反射面321の法線Nは、屋内側では上方に傾き、屋外側では下方に傾いている。
【0049】
ここで、光学素子3におけるコレステリック液晶311の選択反射帯域が中心波長λ0を含む帯域Δλ0に設定されている場合について検討する。尚、選択反射帯域Δλ0は、螺旋ピッチPが小さいほど紫外線寄りの帯域とされ、螺旋ピッチPが大きいほど赤外線寄りの帯域とされる。螺旋ピッチPと選択反射帯域Δλ0との関係は、反射面321への光の入射角度および反射面321の光導波部1と光学素子3との界面に対する角度にも依存するが、一例として、螺旋ピッチPが150nm~250nmのときの選択反射帯域Δλ0は紫外線の帯域とされ、螺旋ピッチPが250nm~500nmのときの選択反射帯域Δλ0は可視光の帯域とされ、螺旋ピッチPが500nm~900nmのときの選択反射帯域Δλ0は赤外線の帯域とされる。
【0050】
選択反射帯域Δλ0の光が太陽光発電装置100に垂直入射した場合、反射面321の法線Nに対する入射角度はθ0である。選択反射帯域Δλ0の光が太陽光発電装置100に対して斜め方向から入射した場合、選択反射帯域はシフトする。ここで、反射面321の法線Nに対する入射角度がθ0よりも大きい場合に選択反射帯域は短波長側へシフトし、反射面321の法線Nに対する入射角度がθ0よりも小さい場合に選択反射帯域は長波長側へシフトするように反射面321の角度が設定される。尚、反射面321の法線Nに対する入射角度が法線Nよりも下側になると選択反射帯域は短波長側へシフトするようになる。
【0051】
従って、太陽光のように太陽光発電装置100に対して斜め上方向から光が入射する場合、法線Nに対する入射角度θ1は、入射角度θ0よりも大きい。この場合、太陽光発電装置100に入射した光の選択反射帯域Δλ1の中心波長λ1は、中心波長λ0より短波長である。つまり、選択反射帯域Δλ1は、選択反射帯域Δλ0よりも短波長側にシフトしている。
【0052】
また、太陽光発電装置100に対して斜め下方向から光が入射する場合、法線Nに対する入射角度θ2は、入射角度θ0よりも小さい。この場合、太陽光発電装置100に入射した光の選択反射帯域Δλ2の中心波長λ2は、中心波長λ0より長波長である。つまり、選択反射帯域Δλ2は、選択反射帯域Δλ0よりも長波長側にシフトしている。
【0053】
図6に示す光学素子3が適用された太陽光発電装置100においては、選択反射帯域Δλ0は紫外線の帯域に設定されることが望ましい。すなわち、発電に利用される太陽光は、太陽光発電装置100に対して斜め上方向から入射する。しかも、光学素子3の選択反射帯域Δλ0は、斜め上方向から入射する光に関して、短波長側にシフトする。このため、選択反射帯域Δλ0が紫外線の帯域に設定されることにより、選択反射帯域Δλ0が短波長側にシフトした場合に、可視光(特に青成分)がほとんど選択反射帯域に含まれることがない。これにより、太陽光発電装置100の表面の色付きを抑制することができる。また、太陽光発電装置100を透過した光の着色を抑制することができる。したがって、透明窓ガラスとしての外観の品位低下が抑制される。
【0054】
《実施形態1-第1構成例》
図7は、第1構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図7に示す第1構成例の太陽光発電装置100において、太陽電池51は、光導波部1の下側面F31と対向するように配置されている。実施形態1で説明する光学素子3Uは、上記の光学素子3と同等の機能を発揮するものである。光学素子3Uにおいて、反射面321は、第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321の傾斜角度φ1は、太陽電池51側(あるいは第1境界面317の法線N1より下側)に鋭角である。あるいは、第1境界面317の法線N1と反射面321とのなす角度α1は、法線N1より下側に鋭角である。
【0055】
図7では、光学素子3Uに含まれるコレステリック液晶311に関して、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311を拡大して模式的に示している。コレステリック液晶311は、選択反射帯域として紫外線Uを反射するべく、Z軸に沿って第1螺旋ピッチP1を有している。光学素子3Uにおいて、コレステリック液晶311の第1螺旋ピッチP1は、Z軸に沿ってほとんど変化することなく一定である。
【0056】
このようなコレステリック液晶311は、例えば、選択反射帯域である紫外線Uの第1円偏光U1を反射するように構成されている。上記の通り、第1旋回方向が左回りの場合、コレステリック液晶311は、紫外線Uのうち、左回りの第1円偏光U1を反射する。また、第1旋回方向が右回りの場合、コレステリック液晶311は、紫外線Uのうち、右回りの第1円偏光U1を反射する。
【0057】
このような第1構成例の太陽光発電装置100において、斜め上方向から太陽光が入射した場合、太陽光のうち紫外線Uは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して光学素子3Uに入射する。そして、光学素子3Uは、反射面321において、紫外線Uのうち、第1円偏光U1を光導波部1及び太陽電池51に向けて反射する。また、光学素子3Uは、紫外線Uの第2円偏光U2を透過する。反射された第1円偏光U1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を下側に伝搬する。太陽電池51は、下側面F31から出射した紫外線Uを受光して発電する。
【0058】
次に、太陽光に含まれる可視光V及び赤外線Iについて、
図8を参照しながら説明する。可視光V及び赤外線Iは、光導波部1を透過した後に光学素子3Uに入射する。光学素子3Uは、
図7に示したように選択反射帯域Δλ0が紫外線Uとなるように第1螺旋ピッチP1が設定されているため、可視光V及び赤外線Iについて、ほとんど反射・回折することなく、透過する。このため、第1構成例では、可視光V及び赤外線Iは、発電に利用されない。
【0059】
このような第1構成例によれば、紫外線Uを利用して効率よく発電することができる。また、太陽光発電装置100は、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々を透過する。このため、太陽光発電装置100を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽光発電装置100における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
【0060】
《実施形態1-第2構成例》
図9は、第2構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図9に示す第2構成例は、
図7に示した第1構成例と比較して、太陽光発電装置100が紫外線カット層UCを備えた点で相違している。紫外線カット層UCは、光学素子3Uの屋内側の面つまり第2境界面319と対向するように配置されている。つまり、光学素子3Uは、光導波部1と紫外線カット層UCとの間に位置している。
【0061】
また、第2構成例の太陽光発電装置100は、太陽電池51の他に、太陽電池52を備えている。太陽電池52は、光導波部1の上側面F32と対向するように配置されている。
【0062】
このような第2構成例の太陽光発電装置100において、第1円偏光U1及び第2円偏光U2を含む紫外線Uは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して光学素子3Uに入射する。そして、光学素子3Uは、反射面321において第1円偏光U1を光導波部1及び太陽電池51に向けて反射し、第2円偏光U2を透過する。反射された第1円偏光U1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を下側に伝搬する。太陽電池51は、下側面F31から出射した紫外線Uを受光して発電する。
【0063】
一方、光学素子3Uを透過した第2円偏光U2は、紫外線カット層UCに入射し、紫外線カット層UCの内部において反射を繰り返しながら、再び光学素子3Uに入射する。光学素子3Uにおいて、第1境界面317側からの入射光と、第2境界面319側からの入射光とでは、反射回折される方向が逆となる。つまり、紫外線カット層UCから光学素子3Uに入射した光は、反射面321において、光導波部1及び太陽電池52に向けて反射される。この反射光は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を上側に伝搬する。太陽電池52は、上側面F32から出射した紫外線Uを受光して発電する。
【0064】
このような第2構成例によれば、紫外線Uの第1円偏光U1のみならず第2円偏光U2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、紫外線Uの屋内への透過を抑制することができる。
【0065】
《実施形態1-第3構成例》
図10は、第3構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図10に示す第3構成例は、
図7に示した第1構成例と比較して、光学素子3Uが、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Aを有する第1層3Aと、第1旋回方向とは逆回りの第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Bを有する第2層3Bと、を有している点で相違している。第1層3A及び第2層3Bは、Z軸に沿って重なっている。なお、第1層3Aと第2層3Bとの間には、配向膜等の薄膜が介在していてもよい。第1層3Aは、光導波部1と第2層3Bとの間に位置している。第1境界面317は光導波部1と第1層3Aとの間に位置し、第2境界面319は第1層3Aと第2層3Bとの間に位置している。
【0066】
第1層3Aにおける反射面321Aは、第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321Aの傾斜角度φAは、太陽電池51側に鋭角である。第1層3Aに含まれるコレステリック液晶311Aは、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回している。このようなコレステリック液晶311Aは、選択反射帯域のうち、第1旋回方向の第1円偏光を反射するように構成されている。
【0067】
第2層3Bにおける反射面321Bは、第2境界面319に対して傾斜している。第2境界面319に対する反射面321Bの傾斜角度φBは、太陽電池51側に鋭角である。傾斜角度φBは、傾斜角度φAと同一でもよいし、傾斜角度φAと異なっていてもよい。つまり、反射面321Bは、反射面321Aと平行である場合もあり得るし、反射面321Aとは平行でない場合もあり得る。第2層3Bに含まれるコレステリック液晶311Bは、拡大して模式的に示すように、第2旋回方向に旋回している。このようなコレステリック液晶311Bは、選択反射帯域のうち、第2旋回方向の第2円偏光を反射するように構成されている。
【0068】
コレステリック液晶311A及び311Bは、ともに選択反射帯域として紫外線Uを反射するべく、Z軸に沿って第1螺旋ピッチP1を有している。つまり、コレステリック液晶311A及びコレステリック液晶311Bのそれぞれの螺旋ピッチは、実質同等である。これにより、第1層3Aのコレステリック液晶311Aは紫外線Uのうちの第1円偏光U1を反射し、第2層3Bのコレステリック液晶311Bは紫外線Uのうちの第2円偏光U2を反射する。
【0069】
このような第3構成例によれば、紫外線Uの第1円偏光U1のみならず第2円偏光U2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、紫外線Uの屋内への透過を抑制することができる。
【0070】
《実施形態2》
図11は、実施形態2に係る太陽光発電装置100の主要部を模式的に示す断面図である。なお、光導波部1は二点鎖線で示している。
第2実施形態においても第1実施形態と同様に、太陽光発電装置100は図中のY軸が鉛直線に沿うように設置されたものとする。
【0071】
光学素子3において、反射面321は、Y軸に対して傾斜している。
図11に示す例では、連続する反射面321は、床側において屋外側に近接し、天井側において屋内側に近接するように傾斜している。あるいは、Y軸と交差する反射面321において、反射面321とY軸との交点Cよりも床側の反射面321は屋外側に向かって延び、交点Cよりも天井側の反射面321は屋内側に向かって延びている。このため、反射面321の法線Nは、屋外側では上方に傾き、屋内側では下方に傾いている。
【0072】
このような光学素子3におけるコレステリック液晶311の選択反射帯域が中心波長λ0を含む帯域Δλ0に設定されている場合について検討する。
【0073】
選択反射帯域Δλ0の光が太陽光発電装置100に垂直入射した場合、反射面321の法線Nに対する入射角度はθ0である。選択反射帯域Δλ0の光が太陽光発電装置100に対して斜め方向から入射した場合、実施形態1と同様に、選択反射帯域はシフトする。ここで、反射面321の法線Nに対する入射角度がθ0よりも大きい場合に選択反射帯域は短波長側へシフトし、反射面321の法線Nに対する入射角度がθ0よりも小さい場合に選択反射帯域は長波長側へシフトするように反射面321の角度が設定される。尚、反射面321の法線Nに対する入射角度が法線Nよりも上側になると選択反射帯域は短波長側へシフトするようになる。
【0074】
太陽光のように太陽光発電装置100に対して斜め上方向から光が入射する場合、法線Nに対する入射角度θ1は、入射角度θ0よりも小さい。この場合、太陽光発電装置100に入射した光の選択反射帯域Δλ1の中心波長λ1は、中心波長λ0より長波長である。つまり、選択反射帯域Δλ1は、選択反射帯域Δλ0よりも長波長側にシフトしている。
【0075】
また、太陽光発電装置100に対して斜め下方向から光が入射する場合、法線Nに対する入射角度θ2は、入射角度θ0よりも大きい。この場合、太陽光発電装置100に入射した光の選択反射帯域Δλ2の中心波長λ2は、中心波長λ0より短波長である。つまり、選択反射帯域Δλ2は、選択反射帯域Δλ0よりも短波長側にシフトしている。
【0076】
図11に示す光学素子3が適用された太陽光発電装置100においては、選択反射帯域Δλ0は赤外線の帯域に設定されることが望ましい。すなわち、発電に利用される太陽光は、太陽光発電装置100に対して斜め上方向から入射する。しかも、光学素子3の選択反射帯域Δλ0は、斜め上方向から入射する光に関して、長波長側にシフトする。このため、選択反射帯域Δλ0が赤外線の帯域に設定されることにより、選択反射帯域Δλ0が長波長側にシフトした場合に、可視光(特に赤成分)がほとんど選択反射帯域に含まれることがない。これにより、太陽光発電装置100の表面の色付きを抑制することができる。また、太陽光発電装置100を透過した光の着色を抑制することができる。したがって、透明窓ガラスとしての外観の品位低下が抑制される。
【0077】
《実施形態2-第4構成例》
図12は、第4構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図12に示す第4構成例の太陽光発電装置100において、太陽電池52は、光導波部1の上側面F32と対向するように配置されている。実施形態2で説明する光学素子3Iは、上記の光学素子3と同等の機能を発揮するものである。光学素子3Iにおいて、反射面321は、第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321の傾斜角度φ2は、太陽電池52側(あるいは第1境界面317の法線N2より上側)に鋭角である。あるいは、第1境界面317の法線N2と反射面321とのなす角度α2は、法線N1より上側に鋭角である。
【0078】
図12では、光学素子3Iに含まれるコレステリック液晶311に関して、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311を拡大して模式的に示している。コレステリック液晶311は、選択反射帯域として赤外線Iを反射するべく、Z軸に沿って第2螺旋ピッチP2を有している。光学素子3Iにおいて、コレステリック液晶311の第2螺旋ピッチP2は、Z軸に沿ってほとんど変化することなく一定である。
【0079】
このようなコレステリック液晶311は、例えば、選択反射帯域である赤外線Iの第1円偏光I1を反射するように構成されている。上記の通り、第1旋回方向が左回りの場合、コレステリック液晶311は、赤外線Iのうち、左回りの第1円偏光I1を反射する。また、第1旋回方向が右回りの場合、コレステリック液晶311は、赤外線Iのうち、右回りの第1円偏光I1を反射する。
【0080】
このような第4構成例の太陽光発電装置100において、斜め上方向から太陽光が入射した場合、太陽光のうち赤外線Iは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して光学素子3Iに入射する。そして、光学素子3Iは、反射面321において、赤外線Iのうち、第1円偏光I1を光導波部1及び太陽電池52に向けて反射する。また、光学素子3Iは、赤外線Iの第2円偏光I2を透過する。反射された第1円偏光I1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を上側に伝搬する。太陽電池52は、上側面F32から出射した赤外線Iを受光して発電する。
【0081】
次に、太陽光に含まれる可視光V及び紫外線Uについて、
図13を参照しながら説明する。可視光V及び紫外線Uは、光導波部1を透過した後に光学素子3Iに入射する。光学素子3Iは、
図12に示したように赤外線Iを反射するように第2螺旋ピッチP2が設定されているため、可視光V及び紫外線Uについて、ほとんど反射・回折することなく、透過する。このため、第4構成例では、可視光V及び紫外線Uは、発電に利用されない。
【0082】
このような第4構成例によれば、赤外線Iを利用して効率よく発電することができる。また、太陽光発電装置100は、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々を透過する。このため、太陽光発電装置100を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽光発電装置100における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
【0083】
《実施形態2-第5構成例》
図14は、第5構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図14に示す第5構成例は、
図12に示した第4構成例と比較して、太陽光発電装置100が赤外線カット層ICを備えた点で相違している。赤外線カット層ICは、光学素子3Iの屋内側の面つまり第2境界面319と対向するように配置されている。つまり、光学素子3Iは、光導波部1と赤外線カット層ICとの間に位置している。
【0084】
また、第5構成例の太陽光発電装置100は、太陽電池52の他に、太陽電池51を備えている。太陽電池51は、光導波部1の下側面F31と対向するように配置されている。
【0085】
このような第5構成例の太陽光発電装置100において、第1円偏光I1及び第2円偏光I2を含む赤外線Iは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して光学素子3Iに入射する。そして、光学素子3Iは、反射面321において第1円偏光I1を光導波部1及び太陽電池52に向けて反射し、第2円偏光I2を透過する。反射された第1円偏光I1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を上側に伝搬する。太陽電池52は、上側面F32から出射した赤外線Iを受光して発電する。
【0086】
一方、光学素子3Iを透過した第2円偏光I2は、赤外線カット層ICに入射し、赤外線カット層ICの内部において反射を繰り返しながら、再び光学素子3Iに入射する。光学素子3Iにおいて、第1境界面317側からの入射光と、第2境界面319側からの入射光とでは、反射回折される方向が逆となる。つまり、赤外線カット層ICから光学素子3Iに入射した光は、反射面321において、光導波部1及び太陽電池51に向けて反射される。この反射光は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を下側に伝搬する。太陽電池51は、下側面F31から出射した赤外線Iを受光して発電する。
【0087】
このような第5構成例によれば、赤外線Iの第1円偏光I1のみならず第2円偏光I2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、赤外線Iの屋内への透過を抑制することができる。
【0088】
《実施形態2-第6構成例》
図15は、第6構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図15に示す第6構成例は、
図12に示した第4構成例と比較して、光学素子3Iが、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Cを有する第1層3Cと、第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Dを有する第2層3Dと、を有している点で相違している。第1層3C及び第2層3Dは、Z軸に沿って重なっている。なお、第1層3Cと第2層3Dとの間には、配向膜等の薄膜が介在していてもよい。第1層3Cは、光導波部1と第2層3Dとの間に位置している。第1境界面317は光導波部1と第1層3Cとの間に位置し、第2境界面319は第1層3Cと第2層3Dとの間に位置している。
【0089】
第1層3Cにおける反射面321Cは、第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321Cの傾斜角度φCは、太陽電池52側に鋭角である。第1層3Cに含まれるコレステリック液晶311Cは、拡大して模式的に示すように、第1旋回方向に旋回している。このようなコレステリック液晶311Cは、選択反射帯域のうち、第1旋回方向の第1円偏光を反射するように構成されている。
【0090】
第2層3Dにおける反射面321Dは、第2境界面319に対して傾斜している。第2境界面319に対する反射面321Dの傾斜角度φDは、太陽電池52側に鋭角である。傾斜角度φDは、傾斜角度φCと同一でもよいし、傾斜角度φCと異なっていてもよい。つまり、反射面321Dは、反射面321Cと平行である場合もあり得るし、反射面321Cとは平行でない場合もあり得る。第2層3Dに含まれるコレステリック液晶311Dは、拡大して模式的に示すように、第2旋回方向に旋回している。このようなコレステリック液晶311Dは、選択反射帯域のうち、第2旋回方向の第2円偏光を反射するように構成されている。
【0091】
コレステリック液晶311C及び311Dは、ともに選択反射帯域として赤外線Iを反射するべく、Z軸に沿って第2螺旋ピッチP2を有している。つまり、コレステリック液晶311C及びコレステリック液晶311Dのそれぞれの螺旋ピッチは、実質同等である。これにより、第1層3Cのコレステリック液晶311Cは赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射し、第2層3Dのコレステリック液晶311Dは赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射する。
【0092】
このような第6構成例によれば、赤外線Iの第1円偏光I1のみならず第2円偏光I2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、赤外線Iの屋内への透過を抑制することができる。
【0093】
《実施形態3》
以下に説明する実施形態3に係る太陽光発電装置100は、光導波部1と、複数の光学素子を備えた光学素子群3Gと、光導波部1の下側面F31と対向する第1太陽電池51と、光導波部1の上側面F32と対向する第2太陽電池52と、を備えている。
光学素子群3Gは、選択反射帯域が互いに異なる複数の光学素子を含んでいる。一例では、光学素子群3Gは、選択反射帯域が紫外線Uである第1光学素子3Uと、選択反射帯域が赤外線Iである第2光学素子3Iと、を含んでいる。
第1太陽電池51及び第2太陽電池52は、吸収波長のピークが異なることが望ましい。一例では、第1太陽電池51は紫外線に対する感度が高くなるように構成され、第2太陽電池52は赤外線に対する感度が高くなるように構成されている。
以下、いくつかの構成例について説明する。
【0094】
《実施形態3-第7構成例》
図16Aは、第7構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
第7構成例の太陽光発電装置100において、光学素子群3Gは、第2主面F2と対向するように配置されている。第1光学素子3U及び第2光学素子3Iは、Z軸に沿って重なっている。なお、第1光学素子3Uと第2光学素子3Iとの間には、配向膜等の薄膜が介在していてもよい。
図16Aに示す例では、第2光学素子3Iが光導波部1と第1光学素子3Uとの間に位置しているが、
図16Bに示す例のように第1光学素子3Uが光導波部1と第2光学素子3Iとの間に位置していてもよい。なお、以下では、
図16Aに示した構成に基づいて説明する。
【0095】
第1光学素子3Uの反射面321Uは、光導波部1と光学素子群3Gとの間の第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321Uの傾斜角度φ1は、第1太陽電池51側に鋭角である。第1光学素子3Uに含まれるコレステリック液晶311Uは、例えば第1旋回方向に旋回し、選択反射帯域として紫外線Uを反射するべく、Z軸に沿って第1螺旋ピッチP1を有している。このようなコレステリック液晶311Uは、例えば、選択反射帯域である紫外線Uの第1円偏光U1を反射するように構成されている。
【0096】
第2光学素子3Iの反射面321Iは、第1境界面317に対して傾斜している。第1境界面317に対する反射面321Iの傾斜角度φ2は、第2太陽電池52側に鋭角である。第2光学素子3Iに含まれるコレステリック液晶311Iは、例えば第1旋回方向に旋回し、選択反射帯域として赤外線Iを反射するべく、Z軸に沿って第2螺旋ピッチP2を有している。第2螺旋ピッチP2は第1螺旋ピッチP1とは異なり、第2螺旋ピッチP2は第1螺旋ピッチP1より大きい(P1<P2)。このようなコレステリック液晶311Iは、例えば、選択反射帯域である赤外線Iの第1円偏光I1を反射するように構成されている。
【0097】
なお、第1光学素子3Uの詳細は実施形態1で述べた通りであり、第2光学素子3Iの詳細は実施形態2で述べた通りである。
【0098】
第1太陽電池51は下側面F31と対向するように配置され、第2太陽電池52は上側面F32と対向するように配置されている。第1太陽電池51及び第2太陽電池52の各々は、例えば、シリコン系太陽電池である。一例では、第1太陽電池51はアモルファスシリコンを備え、第2太陽電池52は多結晶シリコンを備えている。
【0099】
多結晶シリコンとアモルファスシリコンとを比較した場合、それぞれの吸収波長のピークが異なる。すなわち、アモルファスシリコンの吸収波長のピークは約450nm付近であり、多結晶シリコンの吸収波長のピークは約700nm付近である。つまり、アモルファスシリコンは、多結晶シリコンと比較して、紫外線Uの吸収率が高い。このため、第1太陽電池51は、紫外線Uによる発電に好適である。また、多結晶シリコンは、アモルファスシリコンと比較して、赤外線Iの吸収率が高い。このため、第2太陽電池52は、赤外線Iによる発電に好適である。なお、第1太陽電池51及び第2太陽電池52の各々の構成は、これらに限定されるものではない。
【0100】
このような第7構成例の太陽光発電装置100において、斜め上方向から太陽光が入射した場合、太陽光のうち赤外線Iは、第1主面F1から光導波部1の内部に進入して、第2主面F2を介して第2光学素子3Iに入射する。そして、第2光学素子3Iは、反射面321Iにおいて、赤外線Iのうち、第1円偏光I1を光導波部1及び第2太陽電池52に向けて反射する。第2光学素子3Iは、赤外線Iの第2円偏光I2を透過する。また、第1光学素子3Uも、第2円偏光I2を透過する。反射された第1円偏光I1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を上側に伝搬する。第2太陽電池52は、上側面F32から出射した赤外線Iを受光して発電する。
【0101】
次に、太陽光に含まれる可視光Vについて、
図17を参照しながら説明する。可視光Vは、光導波部1を透過した後に第2光学素子3Iに入射する。第2光学素子3Iは、
図16に示したように赤外線Iを反射するように第2螺旋ピッチP2が設定されているため、可視光Vについて、ほとんど反射・回折することなく、透過する。可視光Vは、第2光学素子3Iを透過した後に第1光学素子3Uに入射する。第1光学素子3Uは、
図16に示したように紫外線Uを反射するように第1螺旋ピッチP1が設定されているため、可視光Vについて、ほとんど反射・回折することなく、透過する。このため、第7構成例では、可視光Vは、発電に利用されない。
【0102】
次に、太陽光に含まれる紫外線Uについて、
図18を参照しながら説明する。紫外線Uは、光導波部1を透過した後に第2光学素子3Iに入射する。第2光学素子3Iは、紫外線Uについて、ほとんど反射・回折することなく、透過する。紫外線Uは、第2光学素子3Iを透過した後に第1光学素子3Uに入射する。
【0103】
第1光学素子3Uは、反射面321Uにおいて、紫外線Uのうち、第1円偏光U1を光導波部1及び第1太陽電池51に向けて反射する。また、第1光学素子3Uは、第2円偏光U2を透過する。反射された第1円偏光U1は、第2主面F2から光導波部1の内部に進入し、光導波部1において反射を繰り返しながら光導波部1の内部を下側に伝搬する。第1太陽電池51は、下側面F31から出射した紫外線Uを受光して発電する。
【0104】
このような第7構成例によれば、赤外線I及び紫外線Uを利用して効率よく発電することができる。また、太陽光発電装置100は、可視光Vのほとんどの成分を透過する。このため、太陽光発電装置100を透過した光の着色を抑制することができる。また、太陽光発電装置100における可視光Vの透過率の低下を抑制することができる。
また、
図16Bに示したように、紫外線Uを反射するべく構成された第1光学素子3Uが光導波部1と第2光学素子3Iとの間に設けられることにより、第2光学素子3Iの紫外線による劣化が抑制される。
【0105】
《実施形態3-第8構成例》
図19は、第8構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図19に示す第8構成例は、
図16Aに示した第7構成例と比較して、太陽光発電装置100が光学素子群3Gに対向する光学層OLを備えた点で相違している。光学層OLは、屋内側に位置している。つまり、光学素子群3Gは、光導波部1と光学層OLとの間に位置している。
【0106】
第8構成例の光学層OLは、紫外線カット層UC及び赤外線カット層ICを備えている。紫外線カット層UCは、赤外線カット層ICに重なっている。
図19に示す例では、紫外線カット層UCが光学素子群3Gと赤外線カット層ICとの間に位置しているが、赤外線カット層ICが光学素子群3Gと紫外線カット層UCとの間に位置していてもよい。
【0107】
なお、紫外線カット層UCの詳細は実施形態1で述べた通りであり、赤外線カット層ICの詳細は実施形態2で述べた通りである。
【0108】
このような第8構成例によれば、紫外線Uの第1円偏光U1及び第2円偏光U2を利用して発電することができる。加えて、赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、紫外線U及び赤外線Iの屋内への透過を抑制することができる。
【0109】
この第8構成例では、光学層OLが紫外線カット層UC及び赤外線カット層ICの双方を備えている場合について説明したが、光学層OLは紫外線カット層UC及び赤外線カット層ICのいずれか一方を備えたものであってもよい。
【0110】
例えば、
図20Aに示す変形例では、太陽光発電装置100は、光学層として紫外線カット層UCを備えている。紫外線カット層UCは、光学素子群3Gと対向するように配置されている。これにより、紫外線Uの第1円偏光U1及び第2円偏光U2を利用して発電できるとともに、紫外線Uの屋内への透過を抑制することができる。
【0111】
また、
図20Bに示す変形例では、太陽光発電装置100は、光学層として赤外線カット層ICを備えている。赤外線カット層ICは、光学素子群3Gと対向するように配置されている。これにより、赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を利用して発電できるとともに、赤外線Iの屋内への透過を抑制することができる。
【0112】
《実施形態3-第9構成例》
図21は、第9構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図21に示す第9構成例は、
図16Aに示した第7構成例と比較して、第1光学素子3Uが第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Uを有し、第2光学素子3Iが第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Iを有している点で相違している。つまり、コレステリック液晶311U及びコレステリック液晶311Iは、互いに逆回りに旋回している。
【0113】
第1光学素子3Uは、反射面321Uにおいて、紫外線Uのうち、第1旋回方向の第1円偏光U1を反射し、第2旋回方向の第2円偏光U2を透過する。第2光学素子3Iは、反射面321Iにおいて、赤外線Iのうち、第2旋回方向の第2円偏光I2を反射し、第1旋回方向の第1円偏光I1を透過する。
このような第9構成例においても、上記の第7構成例と同様の効果が得られる。
【0114】
《実施形態3-第10構成例》
図22は、第10構成例に係る太陽光発電装置100を模式的に示す断面図である。
図22に示す第10構成例は、
図16Aに示した第7構成例と比較して、第1光学素子3U及び第2光学素子3Iの各々が第1層及び第2層を有している点で相違している。
【0115】
すなわち、第1光学素子3Uは、
図10に示した第3構成例と同様に構成され、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Aを有する第1層3Aと、第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Bを有する第2層3Bと、を有している。コレステリック液晶311A及びコレステリック液晶311Bは、それぞれ同等の第1螺旋ピッチP1を有している。これにより、第1層3Aのコレステリック液晶311Aは紫外線Uのうちの第1円偏光U1を反射し、第2層3Bのコレステリック液晶311Bは紫外線Uのうちの第2円偏光U2を反射する。
【0116】
第2光学素子3Iは、
図15に示した第6構成例と同様に構成され、第1旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Cを有する第1層3Cと、第2旋回方向に旋回したコレステリック液晶311Dを有する第2層3Dと、を有している。コレステリック液晶311C及びコレステリック液晶311Dは、それぞれ同等の第2螺旋ピッチP2を有している。これにより、第1層3Cのコレステリック液晶311Cは赤外線Iのうちの第1円偏光I1を反射し、第2層3Dのコレステリック液晶311Dは赤外線Iのうちの第2円偏光I2を反射する。
【0117】
このような第10構成例によれば、紫外線Uの第1円偏光U1及び第2円偏光U2を利用して発電することができる。加えて、赤外線Iの第1円偏光I1及び第2円偏光I2を利用して発電することができる。また、太陽光発電装置100において、紫外線U及び赤外線Iの屋内への透過を抑制することができる。
【0118】
なお、第8構成例、第9構成例、及び、第10構成例の各々について、
図16Bに示したように、第1光学素子3Uが光導波部1と第2光学素子3Iとの間に設けられてもよい。
【0119】
以上説明したように、本実施形態によれば、効率的に発電することが可能な太陽光発電装置を提供することができる。
【0120】
本明細書において、光学素子3の一例として、ブレーズ型について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、バイナリーパターンを有する回折層が適用されてもよい。
図1等において、光導波部1及び光学素子3を導波する光の様子を矢印で示しているが、この矢印は概念的に示しているものである。例えば、光導波部1を導波する光のうち、光学素子3の表面で反射される光の様子を矢印で示しているが、実際には、一部の光は、光学素子3に染み出したり、漏れ出たり、光学素子3の内部にとどまる場合もあり得る。
【0121】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
100…太陽光発電装置
1…光導波部 F1…第1主面 F2…第2主面
F3…側面 F31…下側面、F32…上側面
3…光学素子 311…螺旋状構造体(コレステリック液晶) 321…反射面
5…太陽電池