(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】複素環化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07C 255/60 20060101AFI20240821BHJP
C07D 213/82 20060101ALI20240821BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20240821BHJP
A61K 31/455 20060101ALI20240821BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240821BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240821BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240821BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240821BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240821BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C07C255/60 CSP
C07D213/82
C07D409/12
A61K31/277
A61K31/44
A61K31/455
A61P43/00 111
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/06
A61P25/04
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2020568192
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002216
(87)【国際公開番号】W WO2020153414
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019010536
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】大黒 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 信
(72)【発明者】
【氏名】味上 達
(72)【発明者】
【氏名】森本 真二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】大仁 將揮
(72)【発明者】
【氏名】久保 修
(72)【発明者】
【氏名】菊地 史朗
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 明憲
(72)【発明者】
【氏名】ピュナー フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】笠原 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 正鷹
(72)【発明者】
【氏名】池田 周平
(72)【発明者】
【氏名】山口 扶美恵
(72)【発明者】
【氏名】中村 実
(72)【発明者】
【氏名】湯川 猛史
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-528992(JP,A)
【文献】特開平05-213882(JP,A)
【文献】国際公開第2004/054977(WO,A1)
【文献】Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2009年,19,P.5864-5868
【文献】REGISTRY(STN)[online],2011-2012年[検索日 2020.04.02], CAS登録番号 1406153-87-4,1349423-75-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 255/
C07D 213/
C07D 409/
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中:
環Aは、
(1)C
1-3アルキル基、
(2)C
1-3ハロアルキル基、
(3)無置換
C
3-10
シクロアルキル基、
(4)無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基、および
(5)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし4個の置換基
で置換された6員芳香環を示し;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または無置換または
1個のフッ素原子で置換されたC
1-3アルキル基を示し;
R
3は、
(1)
【化2】
で表される基(式中:
R
4は、
(1)C
1-3ハロアルキル基、
(2)無置
換C
3-7シクロアルキル基、および
(3)無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し;
Yは、窒素原子またはCR
6を示し、
R
6は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
Zは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)、または
(2)
【化3】
で表される基(式中:
R
5は:
(1)C
1-3ハロアルキル基、
(2)無置
換C
3-7シクロアルキル基、および
(3)無置
換C
1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し、
環Bは、無置換または1個のハロゲン原子
で置換されたチオフェン環を示す。)を示す。]で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
環Aが:
(1)C
1-3アルキル基、
(2)C
3-10シクロアルキル基、
(3)無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基、および
(4)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換された6員芳香環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
(1)
【化4】
で表される基(式中:
R
4は、C
1-3ハロアルキル基または無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基であり、
Yは、窒素原子またはCR
6であり、
R
6は、水素原子であり、
Zは、ハロゲン原子または水素原子である。);または
(2)
【化5】
で表される基(式中:
R
5は、C
1-3ハロアルキル基であり、
環Bは、無置換または1個のハロゲン原子で置換されたチオフェン環である。)
である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子である、請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R
3が:
【化6】
で表される基(式中:
R
4は、無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基であり;
Yは、窒素原子であり;および
Zは、ハロゲン原子である。)
である、請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
R
3が:
【化7】
で表される基(式中:
R
4は、C
1-3ハロアルキル基または無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基であり;
Yは、CR
6であり;および
R
6およびZの一方はハロゲン原子であり、他方は水素原子である。)
である、請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
環Aが:
(1)C
1-3アルキル基;
(2)C
3-10シクロアルキル基;
(3)無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基;および
(4)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換された6員芳香環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
【化8】
で表される基(式中:
R
4は、無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基であり;
Yは、窒素原子であり;および
Zは、ハロゲン原子である。)
である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
環Aが:
(1)メチル;
(2)シクロプロピル;
(3)無置換または
2ないし3個のフッ素原子で置換されたメトキシまたはエトキシ;および
(4)フッ素原子または臭素原子
から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換されたベンゼン環またはピリジン環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
【化9】
で表される基(式中:
R
4は、無置換または
2ないし3個のフッ素原子で置換されたメトキシであり;
Yは、窒素原子であり;および
Zは、フッ素原子である。)
である、請求項6記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
環Aが:
(1)C
1-3アルキル基;
(2)C
3-10シクロアルキル基;
(3)無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基;および
(4)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換された6員芳香環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
【化10】
で表される基(式中:
R
4は、C
1-3ハロアルキル基または無置換または
2ないし3個のハロゲン原子で置換されたC
1-6アルコキシ基であり;
Yは、CR
6であり;
R
6は、水素原子であり;および
Zは、水素原子またはハロゲン原子である。)
である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項9】
環Aが:
(1)メチル;
(2)シクロプロピル;
(3)無置換または
2ないし3個のフッ素原子で置換されたメトキシまたはエトキシ;および
(4)フッ素原子または臭素原子
から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換されたベンゼン環またはピリジン環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
【化11】
で表される基(式中:
R
4は、トリフルオロメチルまたは無置換または
2ないし3個のフッ素原子で置換されたメトキシであり;
Yは、CR
6であり;
R
6は、水素原子であり;および
Zは、水素原子またはフッ素原子である。)
である、請求項8記載の化合物またはその塩。
【請求項10】
環Aが、メトキシおよびフッ素原子から選ばれる1ないし2個の置換基
で置換されたベンゼン環またはピリジン環であり;
R
1およびR
2が、それぞれ水素原子であり;
R
3が:
【化12】
で表される基(式中:
R
4は、無置換または
2ないし3個のフッ素原子で置換されたメトキシであり;
Yは、窒素原子であり;および
Zは、フッ素原子である。)
である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
N-[(2-ブロモ-5-シアノフェニル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド;
N-[(2-ブロモ-5-シアノフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(2-ブロモ-5-シアノフェニル)メチル]-4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロベンズアミド;
N-[(5-シアノ-2-シクロプロピルフェニル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド;
N-[(5-シアノ-2-シクロプロピルフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-シクロプロピルフェニル)メチル]-4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロベンズアミド;
N-[(5-シアノ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-メチルフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-メトキシフェニル)メチル]-4-(ジフルオロメトキシ)-3-フルオロベンズアミド;
N-[(5-シアノ-2-メトキシフェニル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド;
N-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-{[5-シアノ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]メチル}-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-{[5-シアノ-2-(2,2-ジフルオロエトキシ)フェニル]メチル}-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(3-シアノ-6-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボキサミド;
N-[(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(3-シアノ-6-フルオロ-2-メチルフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(6-シアノ-3-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-メチル]-5-フルオロ-6-メトキシピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(2-シアノ-3-フルオロ-5-メトキシピリジン-4-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-4-フルオロ-2-メトキシフェニル)-メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(3-シアノ-5-メトキシフェニル)-メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-フルオロ-3-メトキシフェニル)-メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(5-シアノ-2-フルオロ-3-メトキシフェニル)-メチル]-5-フルオロ-6-メトキシピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(6-シアノ-3-メトキシ-2-メチルピリジン-4-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(2-シアノ-5-メトキシピリジン-4-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド;
N-[(2-シアノ-5-メトキシピリジン-4-イル)メチル]-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド;または
N-[(2-シアノ-5-メトキシピリジン-4-イル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンズアミド;
あるいはそれらのいずれかの塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミドまたはその塩。
【請求項13】
N-[(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミドまたはその塩。
【請求項14】
請求項1記載の化合物またはその塩を含有する医薬。
【請求項15】
NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗薬である請求項14記載の医薬。
【請求項16】
うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療剤である請求項14記載の医薬。
【請求項17】
うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療に使用するための、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項18】
請求項1記載の化合物またはその塩の有効量を含有する、哺乳動物におけるNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗剤。
【請求項19】
請求項1記載の化合物またはその塩の有効量を含有する、哺乳動物におけるうつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療剤。
【請求項20】
うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療剤を製造するための、請求項1記載の化合物またはその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NR2Bサブユニットを含むN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の拮抗作用を有し得、うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、認知症周辺症状等の予防または治療剤として有用であることが期待される複素環化合物に関する。
【0002】
(発明の背景)
脳や脊髄などの中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質はグルタミン酸であり、その情報伝達はイオンチャネル共役型受容体であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体、ガンマ-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルオキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)/カイニン酸(KA)受容体及び代謝型グルタミン酸受容体によって行われている。このうち、NMDA受容体はカルシウムイオンをはじめとする陽イオンに対する透過性が高く、神経細胞を脱分極させることによって興奮性神経伝達を仲介する。加えて、NMDA受容体を介して細胞内に流入したカルシウムは二次メッセンジャーとしての機能を果たし、細胞内リン酸化シグナルの変化や遺伝子の転写・翻訳調整などの作用を介して、可塑的な神経機能変化を引き起こすことから、NMDA受容体は中枢神経系機能調節に重要な役割を果たしている。
NMDA受容体はNR1、NR2A、NR2B、NR2C、NR2D、NR3A、NR3Bサブユニットのうち2ないし3サブユニットが会合した4量体で構成される受容体であり、興奮性神経伝達を担う受容体としての機能を有するためにはNR1サブユニットの存在が必須である。NR1サブユニットは機能を有するNMDA受容体全てに含まれるため、中枢神経系に広く分布している一方、NR2サブユニットの分布および発現時期はサブユニット毎に異なる。例えば、NR2AおよびNR2Cサブユニットは出生直前になって初めて検出されるのに対し、NR2BおよびNR2Dサブユニットは胎生初期から観察される。また、例えばNR2Aサブユニットは脳に広く分布しているのに対して、NR2Bサブユニットは前脳部に、NR2Cサブユニットは小脳に限局して発現している(非特許文献1)。
本発明において標的としているNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は、成体げっ歯類の脳において大脳皮質(特に第2ないし3層)、海馬、扁桃体、視床の腹側核、及び嗅球に高発現している。また、脊髄においては脊髄後角(特に第二層)に限局している(非特許文献2)。また、単一細胞内において、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体はシナプス後肥厚に最も高発現しており、またシナプス外領域にも発現が認められる(非特許文献3)。このことは、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体が広く脳内で機能を有し、中枢疾患の予防や治療において有効であることを示唆している。
【0003】
特許文献1には、抗菌作用を有し、農薬等として有用な下記化合物が開示されている。
【0004】
【0005】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献2には、カルシトニン遺伝子-関連ペプチド(CGPR)受容体拮抗作用を有し、片頭痛、神経系疾患等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0006】
【0007】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献3には、CGPR受容体拮抗作用を有し、片頭痛、神経系疾患等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0008】
【0009】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献4には、細胞増殖抑制作用を有し、癌(血液癌等)等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0010】
【0011】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献5には、FXa阻害作用を有し、血液凝固抑制、血栓・塞栓の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0012】
【0013】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献6には、FXa阻害作用を有し、抗血栓等に有用な下記化合物が開示されている。
【0014】
【0015】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献7には、PPAR作動作用を有し、インスリン抵抗性の改善、糖尿病、X症候群、消化器炎症性疾患等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0016】
【0017】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献8には、PPARγ作動作用を有し、消化器疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、膵炎、胃炎等)等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0018】
【0019】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献9には、FXa阻害作用を有し、抗血栓等に有用な下記化合物が開示されている。
【0020】
【0021】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献10には、PPAR阻害作用を有し、インスリン抵抗性の改善、糖尿病、X症候群等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0022】
【0023】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献11には、Enhancer of zeste homolog(EZH)阻害作用を有し、癌(CNSを含む)等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0024】
【0025】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
特許文献12には、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体特異的ネガティブアロステリックモジュレーター作用を有し、うつ病、双極性障害、偏頭痛、疼痛、認知症周辺症状等の予防・治療等に有用な下記化合物が開示されている。
【0026】
【0027】
[式中、各記号は当該文献で定義されている通り。]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】WO2017/174158
【文献】WO2017/027343
【文献】WO2017/027345
【文献】WO2012/158691
【文献】WO2008/111299
【文献】US2002/0151534
【文献】WO02/081428
【文献】WO02/080899
【文献】WO02/072558
【文献】WO01/025181
【文献】WO2014/172044
【文献】WO2016/104434
【非特許文献】
【0029】
【文献】ニューロン(Neuron)12巻、529-540頁、1994年
【文献】ザ ジャーナル オブ コンパラティブ ニューロロジー(J. Comp. Neurol.)338巻、377-390頁、1993年
【文献】モレキュールズ アンド セルズ(Mol. Cells)7巻、64-71頁、1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有し得、うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、認知症周辺症状等の予防または治療剤として有用であることが期待される複素環化合物、及びそれを含有する医薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の式(I)で示される化合物が、優れたNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]式(I):
【0032】
【0033】
[式中、
環Aは、
(1)C1-3アルキル基、
(2)C1-3ハロアルキル基、
(3)置換されていてもよい環状基、
(4)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、および
(5)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし4個の置換基でさらに置換された6員芳香環を示し;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基を示し;
R3は、
(1)
【0034】
【0035】
で表される基(式中、
R4は、
(1)C1-3ハロアルキル基、
(2)置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基、および
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し、
Yは、窒素原子またはCR6を示し、
R6は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
Zは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)、または
(2)
【0036】
【0037】
で表される基(式中、
R5は、
(1)C1-3ハロアルキル基、
(2)置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基、および
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し、
環Bは、1個のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいチオフェン環を示す。)を示す。]で表される化合物またはその塩(本明細書中、「化合物(I)」と略記する場合がある)。
[2]環Aが、
(1)C1-3アルキル基、
(2)C3-10シクロアルキル基、
(3)1ないし3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、および
(4)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし2個の置換基でさらに置換された6員芳香環であり;
R1およびR2が、それぞれ水素原子であり;
R3が、
(1)
【0038】
【0039】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基または1ないし3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基であり、
Yは、窒素原子またはCR6であり、
R6は、水素原子であり、
Zは、ハロゲン原子または水素原子である。);または
(2)
【0040】
【0041】
で表される基(式中、
R5は、C1-3ハロアルキル基であり、
環Bは、1個のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいチオフェン環である。)
である;[1]記載の化合物またはその塩。
[3]N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミドまたはその塩。
[4]N-[(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミドまたはその塩。
[5][1]記載の化合物またはその塩を含有する医薬。
[6]NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗薬である[5]記載の医薬。
[7]うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療剤である[5]記載の医薬。
[8]うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療に使用するための、[1]記載の化合物またはその塩。
[9][1]記載の化合物またはその塩の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗方法。
[10][1]記載の化合物またはその塩の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるうつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療方法。
[11]うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療剤を製造するための、[1]記載の化合物またはその塩の使用。
【発明の効果】
【0042】
本発明によって、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有し得、うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、認知症周辺症状等の予防または治療剤として有用であることが期待される複素環化合物、及びそれを含有する医薬が提供される。
【0043】
(発明の詳細な説明)
以下、本明細書中で用いられる各置換基の定義について詳述する。特記しない限り各置換基は以下の定義を有する。
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2-ブロモエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、2,2―ジフルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4-トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5-トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6-トリフルオロヘキシルが挙げられる。
本明細書中、「C2-6アルケニル基」としては、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニルが挙げられる。
本明細書中、「C2-6アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニルが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC3-10シクロアルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC3-10シクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、ジフルオロシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリール基」としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリルが挙げられる。
本明細書中、「C7-16アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フェニルプロピルが挙げられる。
【0044】
本明細書中、「C1-6アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、4,4,4-トリフルオロブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルキルオキシ基」としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、4,4,4-トリフルオロブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキル-カルボニル基」としては、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、3-メチルブタノイル、2-メチルブタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキル-カルボニル基が挙げられる。具体例としては、アセチル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイルが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルコキシ-カルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリール-カルボニル基」としては、例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイルが挙げられる。
本明細書中、「C7-16アラルキル-カルボニル基」としては、例えば、フェニルアセチル、フェニルプロピオニルが挙げられる。
本明細書中、「5ないし14員芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイルが挙げられる。
本明細書中、「3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、モルホリニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピロリジニルカルボニルが挙げられる。
【0045】
本明細書中、「モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基」としては、例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N-エチル-N-メチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基」としては、例えば、ベンジルカルバモイル、フェネチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキルスルホニル基が挙げられる。具体例としては、メチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、4,4,4-トリフルオロブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリールスルホニル基」としては、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニルが挙げられる。
【0046】
本明細書中、「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、アシル基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオカルバモイル基、置換されていてもよいスルファモイル基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいスルファニル(SH)基、置換されていてもよいシリル基が挙げられる。
本明細書中、「炭化水素基」(「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」を含む)としては、例えば、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルケニル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基が挙げられる。
【0047】
本明細書中、「置換されていてもよい炭化水素基」としては、例えば、下記の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
[置換基群A]
(1)ハロゲン原子、
(2)ニトロ基、
(3)シアノ基、
(4)オキソ基、
(5)ヒドロキシ基、
(6)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、
(7)C6-14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフトキシ)、
(8)C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)、
(9)5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、
(10)3ないし14員非芳香族複素環オキシ基(例、モルホリニルオキシ、ピペリジニルオキシ)、
(11)C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、
(12)C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ)、
(13)C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、
(14)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、
(15)C6-14アリール-カルバモイルオキシ基(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)、
(16)5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、
(17)3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、モルホリニルカルボニルオキシ、ピペリジニルカルボニルオキシ)、
(18)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、
(19)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)、
(20)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基、
(21)5ないし14員芳香族複素環基、
(22)3ないし14員非芳香族複素環基、
(23)ホルミル基、
(24)カルボキシ基、
(25)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、
(26)C6-14アリール-カルボニル基、
(27)5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、
(28)3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、
(29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、
(30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル)、
(31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、
(32)カルバモイル基、
(33)チオカルバモイル基、
(34)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、
(35)C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、
(36)5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル、チエニルカルバモイル)、
(37)3ないし14員非芳香族複素環カルバモイル基(例、モルホリニルカルバモイル、ピペリジニルカルバモイル)、
(38)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、
(39)C6-14アリールスルホニル基、
(40)5ないし14員芳香族複素環スルホニル基(例、ピリジルスルホニル、チエニルスルホニル)、
(41)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基、
(42)C6-14アリールスルフィニル基(例、フェニルスルフィニル、1-ナフチルスルフィニル、2-ナフチルスルフィニル)、
(43)5ないし14員芳香族複素環スルフィニル基(例、ピリジルスルフィニル、チエニルスルフィニル)、
(44)アミノ基、
(45)モノ-またはジ-C1-6アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ)、
(46)モノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、
(47)5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、
(48)C7-16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ)、
(49)ホルミルアミノ基、
(50)C1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、
(51)(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例、N-アセチル-N-メチルアミノ)、
(52)C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、
(53)C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、
(54)C7-16アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基(例、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、
(55)C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、
(56)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ、トルエンスルホニルアミノ)、
(57)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、
(58)C2-6アルケニル基、
(59)C2-6アルキニル基、
(60)C3-10シクロアルキル基、
(61)C3-10シクロアルケニル基、及び
(62)C6-14アリール基。
【0048】
「置換されていてもよい炭化水素基」における上記置換基の数は、例えば、1ないし5個、好ましくは1ないし3個である。置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
本明細書中、「複素環基」(「置換されていてもよい複素環基」における「複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、(i)芳香族複素環基、(ii)非芳香族複素環基および(iii)7ないし10員複素架橋環基が挙げられる。
【0049】
本明細書中、「芳香族複素環基」(「5ないし14員芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環基が挙げられる。
該「芳香族複素環基」の好適な例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5ないし6員単環式芳香族複素環基;
ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3-b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環基が挙げられる。
【0050】
本明細書中、「非芳香族複素環基」(「3ないし14員非芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環基が挙げられる。
該「非芳香族複素環基」の好適な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環基;
ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、4H-キノリジニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル、テトラヒドロベンゾアゼピニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロフェナントリジニル、ヘキサヒドロフェノチアジニル、ヘキサヒドロフェノキサジニル、テトラヒドロフタラジニル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロキナゾリニル、テトラヒドロシンノリニル、テトラヒドロカルバゾリル、テトラヒドロ-β-カルボリニル、テトラヒドロアクリジニル、テトラヒドロフェナジニル、テトラヒドロチオキサンテニル、オクタヒドロイソキノリルなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環基が挙げられる。
【0051】
本明細書中、「7ないし10員複素架橋環基」の好適な例としては、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニルが挙げられる。
本明細書中、「含窒素複素環基」としては、「複素環基」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。
本明細書中、「置換されていてもよい複素環基」としては、例えば、前記した置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい複素環基が挙げられる。
「置換されていてもよい複素環基」における置換基の数は、例えば、1ないし3個である。置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
本明細書中、「アシル基」としては、例えば、「ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基およびカルバモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルケニル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、5ないし14員芳香族複素環基および3ないし14員非芳香族複素環基から選ばれる1または2個の置換基」をそれぞれ有していてもよい、ホルミル基、カルボキシ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルフィノ基、スルホ基、スルファモイル基、ホスホノ基が挙げられる。
また、「アシル基」としては、炭化水素-スルホニル基、複素環-スルホニル基、炭化水素-スルフィニル基、複素環-スルフィニル基も挙げられる。
ここで、炭化水素-スルホニル基とは、炭化水素基が結合したスルホニル基を、複素環-スルホニル基とは、複素環基が結合したスルホニル基を、炭化水素-スルフィニル基とは、炭化水素基が結合したスルフィニル基を、複素環-スルフィニル基とは、複素環基が結合したスルフィニル基を、それぞれ意味する。
「アシル基」の好適な例としては、ホルミル基、カルボキシ基、C1-6アルキル-カルボニル基、C2-6アルケニル-カルボニル基(例、クロトノイル)、C3-10シクロアルキル-カルボニル基(例、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、シクロヘプタンカルボニル)、C3-10シクロアルケニル-カルボニル基(例、2-シクロヘキセンカルボニル)、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル)、C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-カルバモイル基(例、ジアリルカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-カルバモイル基(例、シクロプロピルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル)、チオカルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-チオカルバモイル基(例、メチルチオカルバモイル、N-エチル-N-メチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-チオカルバモイル基(例、ジアリルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-チオカルバモイル基(例、シクロプロピルチオカルバモイル、シクロヘキシルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-チオカルバモイル基(例、フェニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-チオカルバモイル基(例、ベンジルチオカルバモイル、フェネチルチオカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環チオカルバモイル基(例、ピリジルチオカルバモイル)、スルフィノ基、C1-6アルキルスルフィニル基(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル)、スルホ基、C1-6アルキルスルホニル基、C6-14アリールスルホニル基、ホスホノ基、モノ-またはジ-C1-6アルキルホスホノ基(例、ジメチルホスホノ、ジエチルホスホノ、ジイソプロピルホスホノ、ジブチルホスホノ)が挙げられる。
【0053】
本明細書中、「置換されていてもよいアミノ基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、C1-6アルキルスルホニル基およびC6-14アリールスルホニル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいアミノ基が挙げられる。
置換されていてもよいアミノ基の好適な例としては、アミノ基、モノ-またはジ-(ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル)アミノ基(例、メチルアミノ、トリフルオロメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、ジブチルアミノ)、モノ-またはジ-C2-6アルケニルアミノ基(例、ジアリルアミノ)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、モノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、モノ-またはジ-C7-16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ)、モノ-またはジ-(ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル)-カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例、ベンゾイルアミノ)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルボニルアミノ基(例、ベンジルカルボニルアミノ)、モノ-またはジ-5ないし14員芳香族複素環カルボニルアミノ基(例、ニコチノイルアミノ、イソニコチノイルアミノ)、モノ-またはジ-3ないし14員非芳香族複素環カルボニルアミノ基(例、ピペリジニルカルボニルアミノ)、モノ-またはジ-C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、カルバモイルアミノ基、(モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル)アミノ基(例、メチルカルバモイルアミノ)、(モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル)アミノ基(例、ベンジルカルバモイルアミノ)、C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、C6-14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ)、(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例、N-アセチル-N-メチルアミノ)、(C1-6アルキル)(C6-14アリール-カルボニル)アミノ基(例、N-ベンゾイル-N-メチルアミノ)が挙げられる。
【0054】
本明細書中、「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいカルバモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいカルバモイル基の好適な例としては、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-カルバモイル基(例、ジアリルカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-カルバモイル基(例、シクロプロピルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-カルバモイル基(例、アセチルカルバモイル、プロピオニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-カルバモイル基(例、ベンゾイルカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル)が挙げられる。
【0055】
本明細書中、「置換されていてもよいチオカルバモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいチオカルバモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいチオカルバモイル基の好適な例としては、チオカルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-チオカルバモイル基(例、メチルチオカルバモイル、エチルチオカルバモイル、ジメチルチオカルバモイル、ジエチルチオカルバモイル、N-エチル-N-メチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-チオカルバモイル基(例、ジアリルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-チオカルバモイル基(例、シクロプロピルチオカルバモイル、シクロヘキシルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-チオカルバモイル基(例、フェニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-チオカルバモイル基(例、ベンジルチオカルバモイル、フェネチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-チオカルバモイル基(例、アセチルチオカルバモイル、プロピオニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-チオカルバモイル基(例、ベンゾイルチオカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環チオカルバモイル基(例、ピリジルチオカルバモイル)が挙げられる。
【0056】
本明細書中、「置換されていてもよいスルファモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいスルファモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいスルファモイル基の好適な例としては、スルファモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、N-エチル-N-メチルスルファモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-スルファモイル基(例、ジアリルスルファモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-スルファモイル基(例、シクロプロピルスルファモイル、シクロヘキシルスルファモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-スルファモイル基(例、フェニルスルファモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-スルファモイル基(例、ベンジルスルファモイル、フェネチルスルファモイル)、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-スルファモイル基(例、アセチルスルファモイル、プロピオニルスルファモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-スルファモイル基(例、ベンゾイルスルファモイル)、5ないし14員芳香族複素環スルファモイル基(例、ピリジルスルファモイル)が挙げられる。
【0057】
本明細書中、「置換されていてもよいヒドロキシ基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、C1-6アルキルスルホニル基およびC6-14アリールスルホニル基から選ばれる置換基」を有していてもよいヒドロキシ基が挙げられる。
置換されていてもよいヒドロキシ基の好適な例としては、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基(例、アリルオキシ、2-ブテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ)、C3-10シクロアルキルオキシ基(例、シクロヘキシルオキシ)、C6-14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフチルオキシ)、C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ)、C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、ピバロイルオキシ)、C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルボニルオキシ基(例、ベンジルカルボニルオキシ)、5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ピペリジニルカルボニルオキシ)、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、tert-ブトキシカルボニルオキシ)、5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、カルバモイルオキシ基、C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルバモイルオキシ基(例、ベンジルカルバモイルオキシ)、C1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ)、C6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ)が挙げられる。
【0058】
本明細書中、「置換されていてもよいスルファニル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基および5ないし14員芳香族複素環基から選ばれる置換基」を有していてもよいスルファニル基、ハロゲン化されたスルファニル基が挙げられる。
置換されていてもよいスルファニル基の好適な例としては、スルファニル(-SH)基、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基(例、アリルチオ、2-ブテニルチオ、2-ペンテニルチオ、3-ヘキセニルチオ)、C3-10シクロアルキルチオ基(例、シクロヘキシルチオ)、C6-14アリールチオ基(例、フェニルチオ、ナフチルチオ)、C7-16アラルキルチオ基(例、ベンジルチオ、フェネチルチオ)、C1-6アルキル-カルボニルチオ基(例、アセチルチオ、プロピオニルチオ、ブチリルチオ、イソブチリルチオ、ピバロイルチオ)、C6-14アリール-カルボニルチオ基(例、ベンゾイルチオ)、5ないし14員芳香族複素環チオ基(例、ピリジルチオ)、ハロゲン化チオ基(例、ペンタフルオロチオ)が挙げられる。
【0059】
本明細書中、「置換されていてもよいシリル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基およびC7-16アラルキル基から選ばれる1ないし3個の置換基」を有していてもよいシリル基が挙げられる。
置換されていてもよいシリル基の好適な例としては、トリ-C1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、tert-ブチル(ジメチル)シリル)が挙げられる。
【0060】
本明細書中、「炭化水素環」としては、例えば、C6-14芳香族炭化水素環、C3-10シクロアルカン、C3-10シクロアルケンが挙げられる。
本明細書中、「C6-14芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルカン」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケン」としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
本明細書中、「複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、芳香族複素環および非芳香族複素環が挙げられる。
【0061】
本明細書中、「芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環が挙げられる。該「芳香族複素環」の好適な例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジンなどの5ないし6員単環式芳香族複素環;
ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾピリジン、チエノピリジン、フロピリジン、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、イミダゾピラジン、イミダゾピリミジン、チエノピリミジン、フロピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、オキサゾロピリミジン、チアゾロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、ナフト[2,3-b]チオフェン、フェノキサチイン、インド-ル、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β-カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジンなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環が挙げられる。
【0062】
本明細書中、「非芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環が挙げられる。該「非芳香族複素環」の好適な例としては、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、チアゾリン、チアゾリジン、テトラヒドロイソチアゾール、テトラヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロピリミジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、モルホリン、チオモルホリン、アゼパン、ジアゼパン、アゼピン、アゾカン、ジアゾカン、オキセパンなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環;
ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロナフト[2,3-b]チオフェン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、4H-キノリジン、インドリン、イソインドリン、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン、テトラヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロキノキサリン、テトラヒドロフェナントリジン、ヘキサヒドロフェノチアジン、ヘキサヒドロフェノキサジン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロナフチリジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロ-β-カルボリン、テトラヒドロアクリジン、テトラヒドロフェナジン、テトラヒドロチオキサンテン、オクタヒドロイソキノリンなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環が挙げられる。
本明細書中、「含窒素複素環」としては、「複素環」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。
【0063】
本明細書中、「C1-3アルキル基」としては、上記「C1-6アルキル基」のうち炭素数が1~3のものが挙げられる。
本明細書中、「C1-3ハロアルキル基」としては、1ないし7個、好ましくは1ないし5個の上記「ハロゲン原子」を有する上記「C1-3アルキル基」が挙げられる。
本明細書中、「C3-7シクロアルキル基」としては、上記「C3-10シクロアルキル基」のうち炭素数が3~7のものが挙げられる。
本明細書中、「環状基」としては、上記「C3-10シクロアルキル基」、「C3-10シクロアルケニル基」、「C6-14アリール基」および「複素環基」が挙げられる。
本明細書中、「6員芳香環」としては、ベンゼン環および上記「芳香族複素環」のうち6員のものが挙げられる。
【0064】
以下に、式(I)中の各記号の定義について詳述する。
【0065】
環Aは、
(1)C1-3アルキル基、
(2)C1-3ハロアルキル基、
(3)置換されていてもよい環状基、
(4)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基、および
(5)ハロゲン原子
から選ばれる1ないし4個の置換基でさらに置換された6員芳香環を示す。
【0066】
環Aで示される「6員芳香環」としては、ベンゼン環およびピリジン環が好ましい。
環Aの置換基である「置換されていてもよい環状基」における「環状基」としては、C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)が好ましい。ここで「環状基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
環Aの置換基である「置換されていてもよいC1-6アルコキシ基」における「C1-6アルコキシ基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
【0067】
環Aは、好ましくは、
(1)C1-3アルキル基(例、メチル)、
(2)置換されていてもよい環状基(例、C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル))、
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、および
(4)ハロゲン原子(例、フッ素原子、臭素原子)
から選ばれる1ないし4個の置換基でさらに置換された6員芳香環(例、ベンゼン環、ピリジン環)であり、より好ましくは、
(1)C1-3アルキル基(例、メチル)、
(2)C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、
(3)1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、および
(4)ハロゲン原子(例、フッ素原子、臭素原子)
から選ばれる1ないし3個の置換基でさらに置換された6員芳香環(例、ベンゼン環、ピリジン環)である。
ここで、6員芳香環における置換基のうち、少なくとも1個は、環A上のシアノ基に対してパラ位に存在することが好ましい。
【0068】
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基を示す。
R1およびR2は、好ましくは、それぞれ水素原子である。
【0069】
R3は、
(1)
【0070】
【0071】
で表される基(式中、
R4は、
(1)C1-3ハロアルキル基、
(2)置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基、および
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し、
Yは、窒素原子またはCR6を示し、
R6は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
Zは、水素原子またはハロゲン原子を示す。)、または
(2)
【0072】
【0073】
で表される基(式中、
R5は、
(1)C1-3ハロアルキル基、
(2)置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基、および
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基
から選ばれる置換基を示し、
環Bは、1個のハロゲン原子でさらに置換されていてもよいチオフェン環を示す。)を示す。
【0074】
R4で示される「置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基」における「C3-7シクロアルキル基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
R4で示される「置換されていてもよいC1-6アルコキシ基」における「C1-6アルコキシ基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
【0075】
R4は、好ましくは、置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、より好ましくは、1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)である。
R4の他の好ましい態様は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)である。
【0076】
Yは、好ましくは窒素原子である。
R6は、好ましくは、水素原子である。
Zは、好ましくはハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0077】
R5で示される「置換されていてもよいC3-7シクロアルキル基」における「C3-7シクロアルキル基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
R5で示される「置換されていてもよいC1-6アルコキシ基」における「C1-6アルコキシ基」は、前記した置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基を有していてもよい。このような「置換基」としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子)が好ましい。
【0078】
R5は、好ましくはC1-3ハロアルキル基(例、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル)である。
環Bは、好ましくは、1個のハロゲン原子(例、フッ素原子)でさらに置換されたチオフェン環である。
【0079】
R3は、好ましくは、
【0080】
【0081】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子またはCR6であり、
R6は、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)である。)であり、より好ましくは、
【0082】
【0083】
で表される基(式中、
R4は、1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子であり、
Zは、ハロゲン原子(例、フッ素原子)である。)である。
【0084】
R3の他の好ましい態様は、
【0085】
【0086】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、CR6であり、
R6あるいはZのいずれか一方はハロゲン原子(例、フッ素原子)であり、他方は水素原子である。)である。
【0087】
化合物(I)の好適な例としては、以下の化合物が挙げられる。
[化合物I-1]
環Aが、
(1)C1-3アルキル基(例、メチル)、
(2)置換されていてもよい環状基(例、C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル))、
(3)置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、および
(4)ハロゲン原子(例、フッ素原子、臭素原子)
から選ばれる1ないし4個の置換基でさらに置換された6員芳香環(例、ベンゼン環、ピリジン環)であり;
R1およびR2が、それぞれ水素原子であり;
R3が、
(1)
【0088】
【0089】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子またはCR6であり、
R6は、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)
である。);または
(2)
【0090】
【0091】
で表される基(式中、
R5は、C1-3ハロアルキル基(例、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル)であり、
環Bは、1個のハロゲン原子(例、フッ素)でさらに置換されていてもよいチオフェン環である。)
である;
化合物(I)。
【0092】
[化合物I-2]
環Aが、
(1)C1-3アルキル基(例、メチル)、
(2)C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、
(3)1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ)、および
(4)ハロゲン原子(例、フッ素原子、臭素原子)
から選ばれる1ないし2個の置換基でさらに置換された6員芳香環(例、ベンゼン環、ピリジン環)であり;
R1およびR2が、それぞれ水素原子であり;
R3が、
(1)
【0093】
【0094】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子またはCR6であり、
R6は、水素原子であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)である。);または
(2)
【0095】
【0096】
で表される基(式中、
R5は、C1-3ハロアルキル基(例、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル)であり、
環Bは、1個のハロゲン原子(例、フッ素)でさらに置換されていてもよいチオフェン環である。)
である;
化合物(I)。
【0097】
[化合物I-3]
R3が、
【0098】
【0099】
で表される基(式中、
R4は、1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子であり、
Zは、ハロゲン原子(例、フッ素原子)である。)である;
上記[化合物I-2]。
【0100】
[化合物I-4]
R3が
【0101】
【0102】
で表される基(式中、
R4は、C1-3ハロアルキル基(例、トリフルオロメチル)または1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、CR6であり、
R6は、水素原子であり、
Zは、水素原子またはハロゲン原子(例、フッ素原子)である。)である;
上記[化合物I-2]。
【0103】
[化合物I-5]
環Aが、
(1)C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)、および
(2)フッ素原子
から選ばれる1ないし2個の置換基でさらに置換されたベンゼン環あるいはピリジン環であり;
R1およびR2が、それぞれ水素原子であり;
R3が、
(1)
【0104】
【0105】
で表される基(式中、
R4は、1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素原子)で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基(例、メトキシ)であり、
Yは、窒素原子であり、
Zは、フッ素原子である。)である;
化合物(I)。
【0106】
化合物(I)の具体例としては、後述の実施例1~30の化合物が挙げられる。
【0107】
式(I)で表される化合物の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、このような塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩が挙げられる。
【0108】
無機塩基との塩の好適な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;アンモニウム塩が挙げられる。
【0109】
有機塩基との塩の好適な例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。
【0110】
無機酸との塩の好適な例としては、塩化水素、臭化水素、硝酸、硫酸、リン酸との塩が挙げられる。
【0111】
有機酸との塩の好適な例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。
【0112】
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、アルギニン、リジン、オルニチンとの塩が挙げられる。
【0113】
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩が挙げられる。
【0114】
化合物(I)は、プロドラッグとして用いてもよい。
化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(I)に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物である。
【0115】
化合物(I)のプロドラッグとしては、
化合物(I)のアミノ基がアシル化、アルキル化またはリン酸化された化合物(例、化合物(I)のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化またはtert-ブチル化された化合物);
化合物(I)のヒドロキシ基がアシル化、アルキル化、リン酸化またはホウ酸化された化合物(例、化合物(I)のヒドロキシ基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化またはジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物);化合物(I)のカルボキシ基がエステル化またはアミド化された化合物(例、化合物(I)のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化またはメチルアミド化された化合物)等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
【0116】
また、化合物(I)のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で化合物(I)に変化するものであってもよい。
本明細書において、プロドラッグは塩を形成していてもよく、かかる塩としては、前述の式(I)で示される化合物の塩として例示したものが挙げられる。
【0117】
また、化合物(I)は、同位元素(例、3H、13C、14C、18F、35S、125I)等で標識されていてもよい。
同位元素で標識または置換された化合物(I)は、例えば、陽電子断層法(Positron Emission Tomography:PET)において使用するトレーサー(PETトレーサー)として用いることができ、医療診断などの分野において有用であり得る。
さらに、化合物(I)は、水和物であっても、非水和物であっても、無溶媒和物であっても、溶媒和物であってもよい。
さらに、1Hを2H(D)に変換した重水素変換体も、化合物(I)に包含される。
さらに、化合物(I)は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
【0118】
化合物(I)またはそのプロドラッグ(以下、単に本発明化合物と略記することがある)は、そのまま、または薬理学的に許容し得る担体等と混合して医薬組成物(本明細書中、「本発明の医薬」と略記することがある)とすることにより、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル)に対して、後述する各種疾患の予防または治療剤として用い得る。
【0119】
薬理学的に許容し得る担体としては、製剤素材として慣用の各種有機または無機担体物質が用いられ得、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合され得る。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用い得る。
【0120】
賦形剤の好適な例としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、D-ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
【0121】
滑沢剤の好適な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカが挙げられる。
【0122】
結合剤の好適な例としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0123】
崩壊剤の好適な例としては、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0124】
溶剤の好適な例としては、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油が挙げられる。
【0125】
溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0126】
懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子;ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0127】
等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール、D-ソルビトール、ブドウ糖が挙げられる。
【0128】
緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液が挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコールが挙げられる。
【0129】
防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸が挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩が挙げられる。
【0130】
着色剤の好適な例としては、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号等の食用色素)、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩)、天然色素(例、β-カロチン、クロロフィル、ベンガラ)が挙げられる。
【0131】
甘味剤の好適な例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアが挙げられる。
【0132】
本発明の医薬の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、バッカル錠等を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、エアゾール剤、フィルム剤(例、口腔内崩壊フィルム、口腔粘膜貼付フィルム)等の経口剤;および注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤)、外用剤(例、経皮吸収型製剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤が挙げられる。本発明化合物および本発明の医薬は経口的または非経口的(例、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内、腹腔内、腫瘍内部、腫瘍の近位等への投与および直接的な病巣への投与)に投与され得る。
【0133】
これらの製剤は、速放性製剤または徐放性製剤等の放出制御製剤(例、徐放性マイクロカプセル)であってもよい。
【0134】
本発明の医薬は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法により製造し得る。
【0135】
なお、本発明の医薬中の本発明化合物の含量は、剤形、本発明化合物の投与量等により異なるが、例えば、約0.1~100重量%であり得る。
【0136】
経口剤を製造する際には、必要により、味のマスキング、腸溶性または持続性を目的として、コーティングを行ってもよい。
【0137】
コーティングに用いられるコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤が挙げられる。
【0138】
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウから選ばれる1種または2種以上を併用してもよい。
【0139】
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)〕、ポリビニルピロリドン等の合成高分子;プルラン等の多糖類が挙げられる。
【0140】
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL-30D55(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)〕等のアクリル酸系高分子;セラック等の天然物が挙げられる。
【0141】
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)〕、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)〕等のアクリル酸系高分子が挙げられる。
【0142】
上記したコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、コーティングの際に、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄のような遮光剤を用いてもよい。
【0143】
本発明化合物は、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有する。ここで、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用は、例えば、該受容体活性化(例えば、グルタミン酸による細胞内カルシウムイオン(Ca2+)流入)の抑制効果によって確認される。
なお、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は、1つのNR2Bサブユニットを含み、さらにNR1、NR2A、NR2B、NR2C、NR2D、NR3AおよびNR3Bから選ばれる2ないし3種のサブユニット3つを含む、合計4つのサブユニットで構成される受容体である。
NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は、好ましくは、NR1とNR2Bのヘテロ2量体と、NR2A、NR2B、NR2CおよびNR2Dから選ばれる1種のサブユニットとNR1のヘテロ2量体とからなる4つのサブユニットで構成される受容体である。
NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は、より好ましくは、NR1とNR2Bのヘテロ2量体2セットからなる4つのサブユニットで構成される受容体である。
また、本発明化合物は、毒性(例、心毒性、急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、生殖毒性、肺毒性、癌原性)が低いこと、副作用(例、精神異常作用(psychotomimetic side effect))が少ないことが期待され、哺乳動物に対し、各種疾患の予防または治療剤、または診断薬として用い得る。
本発明化合物は、Ames試験(エームズ試験)における変異原性が低く、hERG(human Ether-a-go-go Related Gene)阻害作用が低いことが期待される。また、本発明化合物は、BCRP(Breast Cancer Resistance Protein)トランスポーターを介した脳外排出が少なく、抱合代謝に対する安定性に優れていることが期待される。
【0144】
本発明化合物は、中枢及び末梢疾患の予防または治療剤として用い得る。本発明化合物は、例えば、
(1)精神疾患[例、大うつ病(難治性大うつ病、治療抵抗性うつ病を含む)、小うつ病性障害、双極性うつ病、再発性うつ病、産後うつ病、ストレス性障害、精神病(妄想性障害および統合失調症を含む)に併発する大うつ病性障害、躁病または混合気分エピソード、軽躁気分エピソード、非定型な特徴を伴ううつ病エピソード、憂鬱な特徴を伴ううつ病エピソード、緊張性の特徴を伴ううつ病エピソード、脳卒中後のうつエピソード(以上、本明細書において、単に「うつ病」と表すこともある。)、気分変調障害、情動障害(季節性情動障害など)、せん妄、認知症周辺症状(精神症状もしくは行動異常)、不安、全般性不安障害、不安症候群、気分障害、気分循環性障害、月経前不快気分障害、パニック障害、恐怖症、社会性恐怖症、社会性不安障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、外傷後ストレス障害、妄想型またはうつ病型の統合失調感情障害、妄想型の人格障害、タウレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、レット症候群、適応障害、双極性障害(I型双極性障害およびII型双極性障害を含む)、神経症、統合失調症(例:陽性症状、陰性症状、記憶障害、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症、未分化統合失調症、残遺型統合失調症)、統合失調症様障害、慢性疲労症候群、不安神経症、強迫神経症、恐慌性障害、てんかん、小児の難治性てんかん症候群、ウエスト症候群、不安症状、不快精神状態、情緒異常、感情循環気質、神経過敏症、失神、耽溺、性欲低下、注意欠陥多動性障害(ADHD)、精神病性障害(例、短期精神病性障害、共有精神病性障害)、アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚剤、肥満症、吸入薬、オピオイドまたはフェンシクリジンにより誘発される精神病、妄想性障害、ヌーナン症候群、アンジェルマン症候群、プラダー・ウィリー症候群、ベックウィズ・ヴィーディマン症候群、シルバー・ラッセル症候群、結節性硬化症、ウィリアムズ症候群、カルマン症候群、ルビンスタイン・タイビー症候群]、運動障害、精神遅滞、偏執傾向、
(2)神経変性疾患[例、アルツハイマー病、アルツハイマー型老人性認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多発脳梗塞性認知症、前頭側頭認知症、パーキンソン型前頭側頭認知症、アルコール性認知症または他の薬物関連認知症、頭蓋内腫瘍または脳外傷に付随する認知症、ハンチントン病またはパーキンソン病に付随する認知症、脳外傷に付随する神経変性、脳卒中に付随する神経変性、脳梗塞に付随する神経変性、低血糖に付随する神経変性、てんかん発作に付随する神経変性、神経毒中毒症に付随する神経変性、多系統萎縮症、脊髄損傷、エイズ関連認知症、進行性核上麻痺、ピック症候群、ニーマン-ピック症候群、大脳皮質基底核変成症、ダウン症、血管性認知症、脳炎後のパーキンソン病、レヴィー小体認知症、HIV性認知症、筋萎縮性脊髄側索硬化症(ALS)、運動神経原性疾患(MND)、クロイツフェルト・ヤコブ病又はプリオン病、脳性麻痺、進行性核上麻痺、多発性硬化症、ニューロミオパチー]、
(3)健忘障害、軽度認知障害、学習障害(例、読字障害、算数障害、書字表出障害)、加齢に伴う認知・記憶障害[例、加齢性記憶障害、老人性認知症]、
(4)睡眠障害[例、内在因性睡眠障害(例、精神生理性不眠など)、外在因性睡眠障害、概日リズム障害(例、時間帯域変化症候群(時差ボケ)、交代勤務睡眠障害、不規則型睡眠覚醒パターン、睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、非24時間睡眠覚醒など)、睡眠時随伴症、内科又は精神科障害(例、慢性閉塞性肺疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管性認知症、統合失調症、うつ病、不安神経症)に伴う睡眠障害、ストレス性不眠症、不眠症、不眠性神経症、睡眠時無呼吸症候群]、
(5)麻酔薬、外傷性疾患、又は神経変性疾患などに起因する呼吸抑制、
(6)疼痛[例、心因性疼痛(身体表現性障害、疼痛性障害、身体化障害、心気症、転換性障害、うつを伴う慢性痛)、炎症性疼痛、末梢神経障害性疼痛、中枢神経障害性疼痛、神経障害性疼痛、急性疼痛、難治性疼痛、癌性持続痛、癌性突出痛、癌性疼痛、持続痛、身体痛、突出痛、慢性疼痛、圧痛、全身痛、鈍痛、皮膚疼痛症、放散痛、疼痛、開胸術後疼痛症候群]、
(7)難聴[例、カナマイ難聴、ストマイ難聴、中毒性難聴、老年性難聴、特発性両側性感音難聴、突発性難聴、後天性聾唖、遺伝性難聴、器質性難聴、高音障害型難聴、職業性聴力損失、職業性難聴、低音障害型難聴]、
(8)外傷性脳損傷およびそれに伴う障害あるいは合併症、脳震盪後症候群、乳児のゆさぶられ症候群、脳卒中、加齢黄斑変性、眼球口蓋振戦、痙攣、幻肢痛、放射線性嗜眠症候群、神経性食欲不振、摂食障害、神経性無食欲症、過食症、その他の摂食障害、アルコール依存症、アルコール乱用、アルコール性健忘症、アルコール妄想症、アルコール嗜好性、アルコール離脱、アルコール性精神病、アルコール中毒、アルコール性嫉妬、アルコール性躁病、アルコール依存性精神障害、アルコール精神病、肝性脳症、薬物嗜好、薬物恐怖症、薬物狂、薬物乱用、薬物依存、薬物離脱、片頭痛(migraine、ミグレイン)、ストレス性頭痛、緊張性頭痛、糖尿病性ニューロパシー、肥満、糖尿病、筋肉痙攣、メニエール病、自律神経失調症、脱毛症、緑内障、高血圧、心臓病、頻脈、うっ血性心不全、過呼吸、気管支喘息、無呼吸、乳幼児突然死症候群、炎症性疾患、アレルギー疾患、全身性エリテマトーデス、インポテンス、更年期障害、不妊症、癌、HIV感染による免疫不全症候群、ストレスによる免疫不全症候群、脳脊髄膜炎、末端肥大症、失禁、メタボリック・シンドローム、骨粗しょう症、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ストレス性胃腸障害、神経性嘔吐、下痢、便秘、術後イレウス等の各種疾患の予防また治療薬として有用であり得る。
【0145】
特に、本発明化合物はうつ病(大うつ病、難治性大うつ病、治療抵抗性うつ病等を含む)、双極性障害、片頭痛、疼痛、または認知症周辺症状の予防または治療に有用であり得る。
大うつ病および双極性障害はともに気分障害に分類され、うつ状態もしくはうつ状態と躁状態を長期間に渡って呈する疾患である。近年、NMDA受容体拮抗薬であるケタミンの静脈内単回投与によって大うつ病および双極性障害に伴ううつ症状が急速かつ持続的に改善することが見出されている[セラピューティック アドバンシズ イン サイコファーマコロジー(Ther. Adv. Psychopharmacol.)4巻、75-99頁、2014年]。また、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗薬であるCP-101、606の静脈内持続投与によって治療抵抗性うつ症状が有意に改善することが報告されている[ジャーナル オブ クリニカル サイコファーマコロジー(J. Clin. Psychopharmacol.)28巻、631-637頁、2008年]。従って、本発明化合物は治療抵抗性うつ病の予防または治療薬として有望である。
【0146】
片頭痛は慢性で発作性の一次性頭痛である。発症機序は不明であるが、中枢神経処理の異常や三叉神経血管系の異常などに付随して発生すると考えられている。片頭痛、とくに前兆の病態生理研究においては大脳皮質拡延性抑制(Cortical spreading depression)現象が注目されている。げっ歯類を用いた実験的大脳皮質拡延性抑制試験において、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗薬であるCP-101、606やRo25-6981によって大脳皮質拡延性抑制の発生回数および深度が抑制されることが報告されている[ザ ジャーナル オブ ファーマコロジー アンド エクスペリメンタル セラピューティックス(J. Pharmacol. Exp. Ther.)321巻、564-572頁、2007年]。従って、本発明化合物は片頭痛の予防または治療薬として有望である。
【0147】
疼痛は、痛みが比較的短期間持続する急性疼痛と、3カ月間以上の持続または再発、急性組織損傷の回復後1カ月以上の持続、あるいは、治癒しない病変の随伴がみられる慢性疼痛に分類される。NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は痛みの受容において重要な役割を果たしている脊髄後角に高発現しており、その機能制御によって疼痛をコントロールすることが出来ることが示唆されている。実際に、NR2Bサブユニットの機能低下を起こす遺伝子改変操作によって痛覚閾値が上昇することが報告されており[ヨーロピアン ジャーナル オブ ニューロサイエンス(Eur. J. Neurosci.)32巻、798-810頁、2010年]、またNR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗薬であるイフェンプロジルによって痛覚閾値が上昇することが報告されている[ペイン(Pain)153巻、1022-1029頁、2012年]。従って、本発明化合物は疼痛の予防または治療薬として有望である。
【0148】
認知症とは、慢性的、全般的、通常は非可逆的な認知力の低下である。認知力の低下による患者の生活の質の低下が顕著であるが、認知症周辺症状(精神症状もしくは行動異常)もまた患者やその介護者の生活の質低下に大きく影響する要因であるとされている。認知症周辺症状に対する有効な治療的介入法は確立されていないものの、NMDA受容体の拮抗薬であるメマンチン投与によって認知症周辺症状が部分的に改善することが報告されている[ジ アヌルズ オブ ファーマコセラピー(Ann. Pharmacother.)42巻、32-38頁、2007年]。NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体は小脳を除く脳内に広く分布しているが、認知症周辺症状は小脳を除く脳部位の白質異常と関連することが報告されている[ジャーナル オブ ザ ニューロロジカル サイエンシズ(J. Neurol. Sci.)337巻、162-166頁、2014年]。従って、本発明化合物は認知症周辺症状の予防または治療薬として有望である。
【0149】
本発明化合物の投与量は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状などによっても異なり得るが、例えば、成人の患者に経口または非経口投与する場合、通常1回量として約0.01~100mg/kg体重、好ましくは0.1~50mg/kg体重、さらに好ましくは0.5~20mg/kg体重であり得、この量を1日1回~3回投与し得る。
【0150】
本発明化合物は、他の活性成分(以下、併用薬物と略記する)と併用して使用し得る。
併用薬物としては、例えば以下が挙げられる。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、ザナペジル)、抗認知症剤(例、メマンチン)、βアミロイド蛋白産生、分泌、蓄積、凝集および/または沈着抑制剤、βセクレターゼ阻害剤(例、6-(4-ビフェニリル)メトキシ-2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6-(4-ビフェニリル)メトキシ-2-(N,N-ジメチルアミノ)メチルテトラリン、6-(4-ビフェニリル)メトキシ-2-(N,N-ジプロピルアミノ)メチルテトラリン、2-(N,N-ジメチルアミノ)メチル-6-(4’-メトキシビフェニル-4-イル)メトキシテトラリン、6-(4-ビフェニリル)メトキシ-2-[2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル]テトラリン、2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]-6-(4’-メチルビフェニル-4-イル)メトキシテトラリン、2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]-6-(4’-メトキシビフェニル-4-イル)メトキシテトラリン、6-(2’,4’-ジメトキシビフェニル-4-イル)メトキシ-2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)フェニル]メトキシ-2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6-(3’,4’-ジメトキシビフェニル-4-イル)メトキシ-2-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、その光学活性体、その塩およびその水和物、OM99-2(国際公開01/00663))、γセクレターゼ阻害作用剤、βアミロイド蛋白凝集阻害作用剤(例、PTI-00703、ALZHEMED(NC-531)、PPI-368(特表平11-514333)、PPI-558(特表2001-500852)、SKF-74652(Biochem.J.(1999),340(1),283-289))、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素等、脳機能賦活薬(例、アニラセタム、ニセルゴリン)、パーキンソン病治療薬[(例、ドーパミン受容体作動薬(例、L-ドーパ、ブロモクリプチン、パーゴライド、タリペキソール、プラミペキソール、カベルゴリン、アマンタジン)、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(例、デプレニル、セルジリン(セレギリン)、レマセミド、リルゾール)、抗コリン剤(例、トリヘキシフェニジル、ビペリデン)、COMT阻害剤(例、エンタカポン)]、筋萎縮性側索硬化症治療薬(例、リルゾール等、神経栄養因子)、認知症の進行に伴う異常行動、徘徊等の治療薬(例、鎮静剤、抗不安剤)、アポトーシス阻害薬(例、CPI-1189、IDN-6556、CEP-1347)、神経分化・再生促進剤(例、レテプリニム、キサリプローデン(Xaliproden;SR-57746-A)、SB-216763、Y-128、VX-853、prosaptide、5,6-ジメトキシ-2-[2,2,4,6,7-ペンタメチル-3-(4-メチルフェニル)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル]イソインドリン、5,6-ジメトキシ-2-[3-(4-イソプロピルフェニル)-2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル]イソインドリン、6-[3-(4-イソプロピルフェニル)-2,2,4,6,7-ペンタメチル-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-5-イル]-6,7-ジヒドロ-5H-[1,3]ジオキソロ[4,5-f]イソインドールおよびその光学活性体、塩、水和物)、非ステロイド系抗炎症薬(メロキシカム、テノキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、インドメタシン等)、ステロイド薬(デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾン等)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)、抗サイトカイン薬(例、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬)、尿失禁・頻尿治療剤(例、塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン、塩酸プロピベリン)、ホスホジエステラーゼ阻害薬(例、(クエン酸)シルデナフィル)、ドーパミン作動薬(例、アポモルフィン)、抗不整脈薬(例、メキシレチン)、性ホルモンまたはその誘導体(例、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール)、骨粗鬆症治療剤(例、アルファカルシドール、カルシトリオール、エルカトニン、サケカルシトニン、エストリオール、イプリフラボン、パミドロン酸二ナトリウム、アレンドロン酸ナトリウム水和物、インカドロン酸二ナトリウム)、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム受容体拮抗薬、不眠症治療薬(例、ベンゾジアゼピン系薬剤、非ベンゾジアゼピン系薬剤、メラトニン作動薬、オレキシン受容体拮抗薬)、統合失調症治療薬(例、ハロペリドールなどの定型抗精神病薬;クロザピン、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬;代謝型グルタミン酸受容体またはイオンチャネル共役型グルタミン酸受容体に作用する薬剤;ホスホジエステラーゼ阻害薬)、ベンゾジアゼピン系薬剤(クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、クロラゼブ酸カリウム、ロラゼパム、クロナゼパム、アルプラゾラム等)、L-型カルシウムチャネル阻害薬(プレガバリン等)、三環系又は四環系抗うつ薬(塩酸イミプラミン、塩酸アミトリプチリン、塩酸クロミプラミン、ミアンセリン塩酸塩、セチプチリンマレイン酸塩等)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(マレイン酸フルボキサミン、塩酸フロキセチン、シタロプラム臭化水素酸塩、エスシタロプラムシュウ酸塩、塩酸セルトラリン、パロキセチン塩酸塩水和物等)、セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(塩酸ベンラファキシン、塩酸デュロキセチン、デスベンラファキシン等)、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(メシル酸レボキセチン等)、ミルタザピン、塩酸トラゾドン、塩酸ブプロピオン、5-HT1A作動薬(塩酸ブスピロン、クエン酸タンドスピロン、塩酸オセモゾタン等)、5-HT2A拮抗薬、5-HT2A逆作動薬、5-HT3拮抗薬(シアメマジン等)、心臓選択的ではないβ阻害薬(塩酸プロプラノロール、塩酸オキシプレノロール等)、ヒスタミンH1拮抗薬、CRF拮抗薬、その他の抗不安薬(メプロバメート等)、タキキニン拮抗薬、代謝型グルタミン酸受容体に作用する薬剤、CCK拮抗薬、β3アドレナリン拮抗薬(塩酸アミベグロン等)、GAT-1阻害薬、N-型カルシウムチャネル阻害薬、2型炭酸脱水素酵素阻害薬、NMDAグリシン部位作動薬、NMDA拮抗薬(メマンチン、ケタミン、エスケタミン等)、末梢性ベンゾジアゼピン受容体作動薬、バソプレッシン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、オピオイド拮抗薬、オピオイド作動薬、ウリジン、ニコチン酸受容体作動薬、サイロイドホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、MAO阻害薬(硫酸フェネルジン、硫酸トラニルシプロミン、モクロベミド等)、双極性障害治療薬(炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、リルゾール、フェルバメート等)、カンナビノイドCB1拮抗薬、FAAH阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬、抗ADHD薬(塩酸メチルフェニデート、塩酸メタンフェタミン等)、アルコール依存症治療薬、自閉症治療薬、慢性疲労症候群治療薬、痙攣治療薬、線維筋痛症治療薬、頭痛治療薬、禁煙のための治療薬、重症筋無力症治療薬、脳梗塞治療薬、躁病治療薬、過眠症治療薬、疼痛治療薬、気分変調症治療薬、自律神経失調症治療薬、男性及び女性の性機能障害治療薬、片頭痛治療薬、病的賭博治療薬、下肢静止不能症候群治療薬、物質依存症治療薬、アルコール関連症の治療薬、過敏性腸症候群治療薬、コレステロール低下薬のような脂質異常症治療薬(スタチン類)、フィブレート(クロフィブレート等)、スクワレン合成阻害薬)、異常行動治療薬又は痴呆症による放浪癖の抑制薬(鎮静薬、抗不安薬等)、抗肥満薬、糖尿病治療薬、糖尿病性合併症治療剤、高血圧治療薬、低血圧治療薬、利尿剤、化学療法剤、免疫療法剤、抗血栓剤、抗癌剤、抗体医薬、核酸又は核酸誘導体、アプタマー薬など。
【0151】
上記併用薬物は、2種以上を適宜の割合で組み合わせて用いてもよい。
さらに、本発明化合物を上記各疾患に適用する際に、生物製剤(例、抗体医薬、核酸又は核酸誘導体、アプタマー薬、ワクチン製剤)と併用することも可能であり、また、遺伝子治療法等と併用すること、薬剤を用いない精神科領域での治療法と併用することも可能である。
薬剤を用いない精神科領域での治療法としては、修正電気痙攣療法、脳深部刺激療法、反復経頭蓋磁気刺激療法、認知行動療法を含む心理療法等が挙げられる。
また、本発明化合物は、心臓再生、腎再生、膵再生、血管再生等各種臓器再生法や骨髄細胞(骨髄単核細胞、骨髄幹細胞)を利用した細胞移植療法、組織工学を利用した人工臓器(例、人工血管、心筋細胞シート)と併用し得る。
【0152】
本発明化合物と併用薬物とを組み合わせることにより、
(1)本発明化合物又は併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減し得る、
(2)患者の症状(軽症、重症など)に応じて、本発明化合物と併用する薬物を選択し得る、
(3)本発明化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を長く設定し得る、
(4)本発明化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図り得る、
(5)本発明化合物と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる、等の優れた効果を得られ得る。
【0153】
以下、本発明化合物と併用薬物を併用して使用することを「本発明の併用剤」と称する。
本発明の併用剤の使用に際しては、本発明化合物と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明化合物又はその医薬組成物と併用薬物又はその医薬組成物とを、投与対象に対し、同時(本発明化合物と併用薬物とが単一の製剤となっていてもよく、別々の製剤であってもよい)に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。時間差で投与する場合、本発明化合物と併用薬物の投与順序はいずれが先でもよい。また、併用薬物を連続で一定期間投与したのちに、本発明化合物を投与してもよい。
併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
併用薬物の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬物の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0154】
本発明化合物の製造法について以下に説明する。
【0155】
以下の製造方法における各工程で用いられた原料や試薬、ならびに得られた化合物は、それぞれ塩を形成していてもよい。このような塩としては、例えば、前述の本発明化合物の塩と同様のもの等が挙げられる。
【0156】
各工程で得られた化合物が遊離化合物である場合には、自体公知の方法により、目的とする塩に変換することができる。逆に各工程で得られた化合物が塩である場合には、自体公知の方法により、遊離体または目的とする他の種類の塩に変換することができる。
【0157】
各工程で得られた化合物は反応液のままか、または粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィーなどの分離手段により単離および/または精製することができる。
【0158】
各工程の原料や試薬の化合物が市販されている場合には、市販品をそのまま用いることができる。
【0159】
各工程の反応において、反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは10分~8時間である。
【0160】
各工程の反応において、反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常-78℃~300℃、好ましくは-78℃~150℃である。
【0161】
各工程の反応において、圧力は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常1気圧~20気圧、好ましくは1気圧~3気圧である。
【0162】
各工程の反応において、例えば、Biotage社製InitiatorなどのMicrowave合成装置を用いることがある。反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載がない場合、通常室温~300℃、好ましくは50℃~250℃である。反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは1分~8時間である。
【0163】
各工程の反応において、試薬は、特に記載が無い場合、基質に対して0.5当量~20当量、好ましくは0.8当量~5当量が用いられる。試薬を触媒として使用する場合、試薬は基質に対して0.001当量~1当量、好ましくは0.01当量~0.2当量が用いられる。試薬が反応溶媒を兼ねる場合、試薬は溶媒量が用いられる。
【0164】
各工程の反応において、特に記載が無い場合、これらの反応は、無溶媒、あるいは適当な溶媒に溶解または懸濁して行われる。溶媒の具体例としては、実施例に記載されている溶媒、あるいは以下が挙げられる。
アルコール類:メタノール、エタノール、tert-ブチルアルコール、2-メトキシエタノールなど;
エーテル類:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタンなど;
芳香族炭化水素類:クロロベンゼン、トルエン、キシレンなど;
飽和炭化水素類:シクロヘキサン、ヘキサンなど;
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなど;
ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、四塩化炭素など;
ニトリル類:アセトニトリルなど;
スルホキシド類:ジメチルスルホキシドなど;
芳香族有機塩基類:ピリジンなど;
酸無水物類:無水酢酸など;
有機酸類:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など;
無機酸類:塩酸、硫酸など;
エステル類:酢酸エチルなど;
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトンなど;
水。
上記溶媒は、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0165】
各工程の反応において塩基を用いる場合、例えば、以下に示す塩基、あるいは実施例に記載されている塩基が用いられる。
無機塩基類:水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなど;
有機塩基類:トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、イミダゾール、ピペリジンなど;金属アルコキシド類:ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシドなど;
アルカリ金属水素化物類:水素化ナトリウムなど;
金属アミド類:ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなど;
有機リチウム類:n-ブチルリチウムなど。
【0166】
各工程の反応において酸または酸性触媒を用いる場合、例えば、以下に示す酸や酸性触媒、あるいは実施例に記載されている酸や酸性触媒が用いられる。
無機酸類:塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸など;
有機酸類:酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸など;
ルイス酸:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨウ化亜鉛、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄など。
【0167】
各工程の反応は、特に記載の無い限り、自体公知の方法、例えば、第5版実験化学講座、13巻~19巻(日本化学会編);新実験化学講座、14巻~15巻(日本化学会編);精密有機化学 改訂第2版(L. F. Tietze,Th. Eicher、南江堂);改訂 有機人名反応 そのしくみとポイント(東郷秀雄著、講談社);ORGANIC SYNTHESES Collective Volume I~VII(John Wiley & Sons Inc.);Modern Organic Synthesis in the Laboratory A Collection of Standard Experimental Procedures(Jie Jack Li著、OXFORD UNIVERSITY出版);Comprehensive Heterocyclic Chemistry III、Vol.1~Vol.14(エルゼビア・ジャパン株式会社);人名反応に学ぶ有機合成戦略(富岡清監訳、化学同人発行);コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(VCH Publishers Inc.)1989年刊などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
【0168】
各工程において、官能基の保護または脱保護反応は、自体公知の方法、例えば、Wiley-Interscience社2007年刊「Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed.」(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著);Thieme社2004年刊「Protecting Groups 3rd Ed.」(P.J.Kocienski著)などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
アルコールなどの水酸基やフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、メトキシメチルエーテル、ベンジルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテルなどのエーテル型保護基;酢酸エステルなどのカルボン酸エステル型保護基;メタンスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステル型保護基;tert-ブチルカルボネートなどの炭酸エステル型保護基などが挙げられる。
アルデヒドのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルアセタールなどのアセタール型保護基;1,3-ジオキサンなどの環状アセタール型保護基などが挙げられる。
ケトンのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルケタールなどのケタール型保護基;1,3-ジオキサンなどの環状ケタール型保護基;O-メチルオキシムなどのオキシム型保護基;N,N-ジメチルヒドラゾンなどのヒドラゾン型保護基などが挙げられる。
カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチルエステルなどのエステル型保護基;N,N-ジメチルアミドなどのアミド型保護基などが挙げられる。
チオールの保護基としては、例えば、ベンジルチオエーテルなどのエーテル型保護基;チオ酢酸エステル、チオカルボネート、チオカルバメートなどのエステル型保護基などが挙げられる。
アミノ基や、イミダゾール、ピロール、インドールなどの芳香族ヘテロ環の保護基としては、例えば、ベンジルカルバメートなどのカルバメート型保護基;アセトアミドなどのアミド型保護基;N-トリフェニルメチルアミンなどのアルキルアミン型保護基、メタンスルホンアミドなどのスルホンアミド型保護基などが挙げられる。
保護基の除去は、自体公知の方法、例えば、酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウム、トリアルキルシリルハライド(例えば、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルブロミド)を使用する方法や還元法などを用いて行うことができる。
【0169】
各工程において、還元反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素テトラメチルアンモニウムなどの金属水素化物類;ボランテトラヒドロフラン錯体などのボラン類;ラネーニッケル;ラネーコバルト;水素;ギ酸;トリエチルシランなどが挙げられる。炭素-炭素二重結合あるいは三重結合を還元する場合は、パラジウム-カーボンやLindlar触媒などの触媒を用いる方法がある。
【0170】
各工程において、酸化反応を行う場合、使用される酸化剤としては、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどの過酸類;過塩素酸テトラブチルアンモニウムなどの過塩素酸塩類;塩素酸ナトリウムなどの塩素酸塩類;亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸類;ヨードシルベンゼンなどの高原子価ヨウ素試薬;二酸化マンガン、過マンガン酸カリウムなどのマンガンを有する試薬;四酢酸鉛などの鉛類;クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジョーンズ試薬などのクロムを有する試薬;N-ブロモスクシンイミド(NBS)などのハロゲン化合物類;酸素;オゾン;三酸化硫黄・ピリジン錯体;四酸化オスミウム;二酸化セレン;2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
【0171】
各工程において、ラジカル環化反応を行う場合、使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物;4-4’-アゾビス-4-シアノペンタン酸(ACPA)などの水溶性ラジカル開始剤;空気あるいは酸素存在下でのトリエチルホウ素;過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、使用されるラジカル反応試剤としては、トリブチルスタナン、トリストリメチルシリルシラン、1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、ジフェニルシラン、ヨウ化サマリウムなどが挙げられる。
【0172】
各工程において、Wittig反応を行う場合、使用されるWittig試薬としては、アルキリデンホスホラン類などが挙げられる。アルキリデンホスホラン類は、自体公知の方法、例えば、ホスホニウム塩と強塩基を反応させることで調製することができる。
【0173】
各工程において、Horner-Emmons反応を行う場合、使用される試薬としては、ジメチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチルなどのホスホノ酢酸エステル類;アルカリ金属水素化物類、有機リチウム類などの塩基が挙げられる。
【0174】
各工程において、Friedel-Crafts反応を行う場合、使用される試薬としては、ルイス酸と酸クロリドとの組み合せ、あるいはルイス酸とアルキル化剤(例、ハロゲン化アルキル類、アルコール、オレフィン類など)との組み合わせが挙げられる。あるいは、ルイス酸の代わりに、有機酸や無機酸を用いることもでき、酸クロリドの代わりに、無水酢酸などの酸無水物を用いることもできる。
【0175】
各工程において、芳香族求核置換反応を行う場合、試薬としては、求核剤(例、アミン類、イミダゾールなど)と塩基(例、有機塩基類など)が用いられる。
【0176】
各工程において、カルボアニオンによる求核付加反応、カルボアニオンによる求核1,4-付加反応(Michael付加反応)、あるいはカルボアニオンによる求核置換反応を行う場合、カルボアニオンを発生するために用いる塩基としては、有機リチウム類、金属アルコキシド類、無機塩基類、有機塩基類などが挙げられる。
【0177】
各工程において、Grignard反応を行う場合、Grignard試薬としては、フェニルマグネシウムブロミドなどのアリールマグネシウムハライド類;メチルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムハライド類が挙げられる。Grignard試薬は、自体公知の方法、例えばエーテルあるいはテトラヒドロフランを溶媒として、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと、金属マグネシウムとを反応させることにより調製することができる。
【0178】
各工程において、Knoevenagel縮合反応を行う場合、試薬としては、二つの電子求引基に挟まれた活性メチレン化合物(例、マロン酸、マロン酸ジエチル、マロノニトリルなど)および塩基(例、有機塩基類、金属アルコキシド類、無機塩基類)が用いられる。
【0179】
各工程において、Vilsmeier-Haack反応を行う場合、試薬としては、塩化ホスホリルとアミド誘導体(例、N,N-ジメチルホルムアミドなど)が用いられる。
【0180】
各工程において、アルコール類、アルキルハライド類、スルホン酸エステル類のアジド化反応を行う場合、使用されるアジド化剤としては、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、トリメチルシリルアジド、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。例えば、アルコール類をアジド化する場合、ジフェニルホスホリルアジドと1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を用いる方法やトリメチルシリルアジドとルイス酸を用いる方法などがある。
【0181】
各工程において、還元的アミノ化反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素、ギ酸などが挙げられる。基質がアミン化合物の場合は、使用されるカルボニル化合物としては、パラホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、シクロヘキサノンなどのケトン類が挙げられる。基質がカルボニル化合物の場合は、使用されるアミン類としては、アンモニア;メチルアミンなどの1級アミン;ジメチルアミンなどの2級アミンなどが挙げられる。
【0182】
各工程において、光延反応を行う場合、試薬としては、アゾジカルボン酸エステル類(例、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)など)およびトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類が用いられる。
【0183】
各工程において、エステル化反応、アミド化反応、あるいはウレア化反応を行う場合、使用される試薬としては、酸クロリド、酸ブロミドなどのハロゲン化アシル体;酸無水物、活性エステル体、硫酸エステル体など活性化されたカルボン酸類が挙げられる。カルボン酸の活性化剤としては、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl)などのカルボジイミド系縮合剤;4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド-n-ハイドレート(DMT-MM)などのトリアジン系縮合剤;1,1-カルボニルジイミダゾール(CDI)などの炭酸エステル系縮合剤;ジフェニルリン酸アジド(DPPA);ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP試薬);ヨウ化2-クロロ-1-メチル-ピリジニウム(向山試薬);塩化チオニル;クロロギ酸エチルなどのハロギ酸低級アルキル;O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU);硫酸;あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。カルボジイミド系縮合剤を用いる場合、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの添加剤をさらに反応に加えてもよい。
【0184】
各工程において、カップリング反応を行う場合、使用される金属触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、塩化1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)などのパラジウム化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)などのニッケル化合物;塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)などのロジウム化合物;コバルト化合物;酸化銅、ヨウ化銅(I)などの銅化合物;白金化合物などが挙げられる。さらに反応に塩基を加えてもよく、このような塩基としては、無機塩基類などが挙げられる。
【0185】
各工程において、チオカルボニル化反応を行う場合、チオカルボニル化剤としては、代表的には五硫化二リンが用いられるが、五硫化二リンの他に、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド(Lawesson試薬)などの1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド構造を持つ試薬を用いてもよい。
【0186】
各工程において、Wohl-Ziegler反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、N-ヨードコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)、N-クロロコハク酸イミド(NCS)、臭素、塩化スルフリルなどが挙げられる。さらに、熱、光、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤を反応に加えることで、反応を加速させることができる。
【0187】
各工程において、ヒドロキシ基のハロゲン化反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、ハロゲン化水素酸と無機酸の酸ハロゲン化物、具体的には、塩素化では、塩酸、塩化チオニル、オキシ塩化リンなど、臭素化では、48%臭化水素酸などが挙げられる。また、トリフェニルホスフィンと四塩化炭素または四臭化炭素などとの作用により、アルコールからハロゲン化アルキル体を得る方法を用いてもよい。あるいは、アルコールをスルホン酸エステルに変換の後、臭化リチウム、塩化リチウムまたはヨウ化ナトリウムと反応させるような2段階の反応を経てハロゲン化アルキル体を合成する方法を用いてもよい。
【0188】
各工程において、Arbuzov反応を行う場合、使用される試薬としては、ブロモ酢酸エチルなどのハロゲン化アルキル類;トリエチルホスファイトやトリ(イソプロピル)ホスファイトなどのホスファイト類が挙げられる。
【0189】
各工程において、スルホン酸エステル化反応を行う場合、使用されるスルホニル化剤としては、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物などが挙げられる。
【0190】
各工程において、加水分解反応を行う場合、試薬としては、酸または塩基が用いられる。また、tert-ブチルエステルの酸加水分解反応を行う場合、副生するtert-ブチルカチオンを還元的にトラップするためにギ酸やトリエチルシランなどを加えることがある。
【0191】
各工程において、脱水反応を行う場合、使用される脱水剤としては、硫酸、五酸化二リン、オキシ塩化リン、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、アルミナ、ポリリン酸などが挙げられる。
【0192】
化合物(I)は、化合物(1)から以下の製造工程A、あるいはこれに準ずる方法に従い製造することができる。
[製造工程A]
【0193】
【0194】
(式中のRaは水素原子またはC1-6アルコキシ基またはフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基であり、Xaはハロゲン原子であり、環A、R1、R2、およびR3は前記と同じ意味を持つ。)
【0195】
化合物(2)は、化合物(1)をシアノ化反応に付すことによって製造することができる。用いるシアノ化試薬としては、シアン化亜鉛等が挙げられ、用いる金属触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。化合物(3)は、化合物(2)をカルボアニオンによる求核付加反応または還元反応に付すことによって製造することができる。求核付加反応に用いる試薬としては、有機リチウム試薬、グリニャール試薬(有機マグネシウムハロゲン化物)等が挙げられる。化合物(4)は、化合物(3)をアジド化反応に付すことにより製造することができる。化合物(5)は、化合物(4)を還元反応に付すことにより製造することができる。用いる試薬としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。また化合物(5)は、化合物(4)を還元反応に付した後、保護基導入および脱保護反応を経由することにより製造することができる。保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。化合物(I)は、化合物(5)を化合物(6)とのアミド化反応に付すことにより製造することができる。
【0196】
また化合物(I)は、化合物(7)から以下の製造工程B、あるいはこれに準ずる方法に従い製造することができる。
[製造工程B]
【0197】
【0198】
(式中のRbは水素原子またはC1-6アルコキシ基またはフッ素原子で置換されていてもよいC1-3アルキル基であり、Xbはハロゲン原子であり、環A、R1、R2、およびR3は前記と同じ意味を持つ。)
【0199】
化合物(8)は、化合物(7)をカルボアニオンによる求核付加反応または還元反応に付すことによって製造することができる。化合物(9)は、化合物(8)をアジド化反応に付すことにより製造することができる。化合物(10)は、化合物(9)を還元反応に付すことにより製造することができる。また化合物(10)は、化合物(9)を還元反応に付した後、保護基導入および脱保護反応を経由することにより製造することができる。化合物(11)は、化合物(10)を化合物(6)とのアミド化反応に付すことにより製造することができる。化合物(I)は、化合物(11)をシアノ化反応に付すことにより製造することができる。
製造工程Bの各工程は、製造工程Aの各工程と同様の方法により行なうことができる。
【0200】
このようにして得られた化合物(I)において、分子内の官能基は、自体公知の化学反応を組み合わせることにより目的の官能基に変換することもできる。ここで、化学反応の例としては、酸化反応、還元反応、アルキル化反応、アシル化反応、ウレア化反応、加水分解反応、アミノ化反応、エステル化反応、アリールカップリング反応、脱保護反応等が挙げられる。
【0201】
上記製造法により得られた化合物(I)は、公知の手段、例えば、溶媒抽出、溶液のpH変換、転溶、晶出、再結晶、クロマトグラフィーによって単離精製することができる。
【0202】
化合物(I)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体を含有する場合には、これらも化合物(I)として含有されるとともに、自体公知の合成手法、分離手法によりそれぞれを単品として得ることができる。例えば、化合物(I)に光学異性体が存在する場合には、該化合物から分割された光学異性体も化合物(I)に包含される。
ここで、光学異性体は自体公知の方法により製造することができる。
【0203】
化合物(I)は、結晶であってもよい。
化合物(I)の結晶(以下、本発明の結晶と略記することがある)は、化合物(I)に自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
本発明の結晶は、物理化学的性質(例、融点、溶解度、安定性)および生物学的性質(例、体内動態(吸収性、分布、代謝、排泄)、薬効発現)に優れ、医薬として有用であることが期待される。
【実施例】
【0204】
本発明は、更に以下の実施例、試験例および製剤例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【0205】
実施例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出は、特に言及しない限り、TLC(Thin Layer Chromatography,薄層クロマトグラフィー)による観察下に行った。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製の60 F254を用い、展開溶媒として、カラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いた溶媒を用いた。また、検出にはUV検出器を採用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいて、NHと記載した場合はアミノプロピルシラン結合シリカゲルを用いた。分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において、C18と記載した場合はオクタデシル結合シリカゲルを用いた。溶出溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。
【0206】
1H NMRの解析にはACD/SpecManager(商品名)ソフトウエアなどを用いた。水酸基やアミノ基などのプロトンピークが非常に緩やかなピークについては記載していないことがある。
MSは、LC/MSにより測定した。イオン化法としては、ESI法、または、APCI法を用いた。データは実測値(found)を示す。通常、分子イオンピークが観測されるがフラグメントイオンとして観測されることがある。塩の場合は、通常、フリー体の分子イオンピークもしくはフラグメントイオンピークが観測される。
元素分析値(Anal.)は計算値(Calcd)と実測値(Found)として示す。
【0207】
以下の実施例においては下記の略号を使用する。
mp:融点
MS:マススペクトル
M:モル濃度
CDCl3:重クロロホルム
DMSO-d6:重ジメチルスルホキシド
1H NMR:プロトン核磁気共鳴
LC/MS:液体クロマトグラフ質量分析計
ESI:electrospray ionization、エレクトロスプレーイオン化
APCI:atomospheric pressure chemical ionization、大気圧化学イオン化
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩
DPPA:ジフェニル ホスホルアジダート
TFA:トリフルオロ酢酸
DIPEA:N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
HOBt:1H-ベンゾトリアゾール-1-オール
HOBt・H2O:1H-ベンゾトリアゾール-1-オール水和物
THF:テトラヒドロフラン
WSC・HCl:N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩
Boc2O:ジ-tert-ブチル ジカルボナート
DBU:2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1,2-a]アゼピン
TEA:トリエチルアミン
Pd(PPh3)4:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
【0208】
実施例1
N-[(2-ブロモ-5-シアノフェニル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド
A) 3-(アジドメチル)-4-ブロモベンゾニトリル
4-ブロモ-3-(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(3.42 g)とDBU (4.86 ml)とTHF (35 ml)の混合物に、DPPA (6.94 mL)を0 ℃で加え、混合物を室温で4時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (3.71 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.63 (2H, s), 7.76-7.82 (1H, m), 7.94 (1H, d, J = 8.3 Hz), 8.02 (1H, d, J = 2.3 Hz).
【0209】
B) 3-(アミノメチル)-4-ブロモベンゾニトリル
3-(アジドメチル)-4-ブロモベンゾニトリル (3.71 g)とTHF (40 ml)と水 (10 ml)の混合物に、トリフェニルホスフィン (4.52 g) を室温で加え、混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (2.87 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 1.99 (2H, br s), 3.76 (2H, s), 7.64 (1H, dd, J = 8.1, 2.1 Hz), 7.80 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.96-7.99 (1H, m).
【0210】
C) N-[(2-ブロモ-5-シアノフェニル)メチル]-3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)ベンズアミド
3-(アミノメチル)-4-ブロモベンゾニトリル (0.301 g)とDMF (2 ml)と3-フルオロ-4-(トリフルオロメトキシ)安息香酸 (0.032 g)とTEA (0.398 ml)とHATU (0.814 g)の混合物を室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.562 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.54 (2H, d, J = 5.6 Hz), 7.69-7.90 (5H, m), 8.03 (1H, dd, J = 11.3, 1.9 Hz), 9.25 (1H, t, J = 5.6 Hz).
【0211】
実施例7
N-[(5-シアノ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
A) N-[(5-ブロモ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロニコチン酸 (1.04 g)とDMF (10 ml)と(5-ブロモ-2-メトキシフェニル)メタンアミン (1.08 g)とTEA (1.39 ml)とHATU (2.85 g)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (1.51 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 3.83 (3H, s), 4.44 (2H, d, J = 6.0 Hz), 6.99 (1H, d, J = 9.0 Hz), 7.34 (1H, d, J = 2.6 Hz), 7.43 (1H, dd, J = 8.8, 2.4 Hz), 7.55-8.05 (1H, m), 8.34 (1H, dd, J = 10.5, 1.9 Hz), 8.60 (1H, d, J = 1.9 Hz), 9.10 (1H, t, J = 5.6 Hz).
【0212】
B) N-[(5-シアノ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
N-[(5-ブロモ-2-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド (0.810 g)、Pd(PPh3)4(0.231 g)、シアン化亜鉛 (0.352 g)とDMF (12 ml)の混合物を110 ℃で1時間マイクロウェーブ照射した。混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NH、酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.242 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 3.92 (3H, s), 4.46 (2H, d, J = 5.6 Hz), 7.20 (1H, d, J = 8.7 Hz), 7.51-8.08 (3H, m), 8.35 (1H, dd, J = 10.9, 1.9 Hz), 8.61 (1H, d, J = 1.9 Hz), 9.13 (1H, s).
【0213】
実施例9
N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
A) 5-ホルミル-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル
5-ブロモ-2-メトキシニコチンアルデヒド (1.70 g)、Pd(PPh3)4 (0.909 g)、シアン化亜鉛 (1.386 g)とDMF (14 ml)の混合物を110 ℃で1時間マイクロウェーブ照射した。同じ反応をもう一度実施した(合計2 バッチ)。混合物を合わせてろ過し、ろ液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (2.16 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.10 (3H, s), 8.53 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.97 (1H, d, J = 2.6 Hz), 10.18 (1H, s).
【0214】
B) 5-(ヒドロキシメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル
5-ホルミル-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル (2.15 g)とエタノール (25 ml)の混合物にテトラヒドロホウ酸ナトリウム (0.752 g)を0 ℃で加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。反応液に0 ℃で飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮し、標題化合物 (2.18 g)を得た。
MS: [M+H]+ 165.1.
【0215】
C) 5-(アジドメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル
5-(ヒドロキシメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル (2.15 g)とDPPA (5.91 mL)とDBU (4.15 mL)とTHF (30 ml)の混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (2.63 g)を得た。
MS: [M+H]+ 190.1.
【0216】
D) 5-(アミノメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル
5-(アジドメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル (2.50 g)とトリフェニルホスフィン (4.16 g) とTHF (20 ml)と水 (5 ml)の混合物を室温で終夜撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/酢酸エチル)で精製し、標題化合物 (1.50 g)を得た。
MS: [M+H]+ 164.1.
【0217】
E) N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロニコチン酸 (1.87 g)と5-(アミノメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル (1.47 g)とWSC・HCl (2.59 g)とHOBt (1.46 g)とTEA (3.77 ml)とDMF (20 ml)との混合物を室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、析出固体をろ取後、酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化し、標題化合物 (2.73 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.01 (3H, s), 4.43 (2H, br s), 7.56-8.14 (2H, m), 8.35 (1H, dd, J = 10.5, 1.9 Hz), 8.62 (2H, dd, J = 8.3, 1.9 Hz), 9.21 (1H, brs).
【0218】
実施例12
N-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
A) 3-(アジドメチル)-4-フルオロベンゾニトリル
4-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)ベンゾニトリル(0.507 g)とTHF (6 ml)の混合物に、DBU (0.758 ml)とDPPA (0.865 mL)を0 ℃で加えた。混合物を室温で5時間撹拌し、減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.533 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.59 (2H, s), 7.54 (1H, dd, J = 9.4, 8.7 Hz), 7.94-8.02 (1H, m), 8.05 (1H, dd, J = 6.8, 1.9 Hz).
【0219】
B) tert-ブチル [(5-シアノ-2-フルオロフェニル)メチル]カルバマート
3-(アジドメチル)-4-フルオロベンゾニトリル (0.531 g)とTHF (10 ml)と水 (0.5 ml)の混合物に、トリフェニルホスフィン (0.870 g) を0 ℃で加えた。混合物を室温で18時間撹拌後、Boc2O (0.770 mL)を加え、混合物を室温で30分撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.602 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 1.39 (9H, s), 4.20 (2H, br d, J = 6.0 Hz), 7.38-7.55 (2H, m), 7.69-7.79 (1H, m), 7.81-7.90 (1H, m).
【0220】
C) 3-(アミノメチル)-4-フルオロベンゾニトリル 塩酸塩
tert-ブチル [(5-シアノ-2-フルオロフェニル)メチル]カルバマート (0.600 g)と酢酸エチル (7 ml)の混合物に、4 M塩化水素/酢酸エチル (8.99 ml)を0 ℃で加えた。混合物を室温で20時間撹拌後、析出固体をろ取し、酢酸エチルで洗浄し、標題化合物 (0.409 g)を得た。
MS: [M+H]+ 151.4.
【0221】
D) N-[(5-シアノ-2-フルオロフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロニコチン酸 (0.111 g)とDMF (3 ml)と3-(アミノメチル)-4-フルオロベンゾニトリル 塩酸塩 (0.100 g)とDIPEA (0.281 ml)とWSC・HCl (0.134 g)とHOBt (0.094 g)の混合物を室温で3時間撹拌した。反応液に水を加え、析出固体をろ取し、水で洗浄し、標題化合物 (0.142 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.55 (2H, br s), 7.47 (1H, dd, J = 10.0, 8.5 Hz), 7.80 (1H, t, J = 72.0 Hz), 7.83-7.98 (2H, m), 8.33 (1H, dd, J = 10.7, 2.1 Hz), 8.59 (1H, d, J = 2.3 Hz), 9.29 (1H, br s).
【0222】
実施例16
N-[(5-シアノ-2-メトキシピリジン-3-イル)メチル]-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-カルボキサミド
5-(トリフルオロメチルチオフェン)-2-カルボン酸 (0.105 g)と5-(アミノメチル)-6-メトキシピリジン-3-カルボニトリル (0.087 g)とWSC・HCl (0.153 g)とHOBt (0.086 g)とTEA (0.223 ml)とDMF (20 ml)との混合物を室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.072 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ4.01 (3H, s), 4.41 (2H, s), 7.80 (1H, dd, J = 4.1, 1.1 Hz), 7.91 (1H, dd, J = 4.1, 1.1 Hz), 8.05 (1H, d, J = 2.3 Hz), 8.64 (1H, d, J = 1.9 Hz), 9.32 (1H, br s).
【0223】
実施例17
N-[(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
A) 2-フルオロ-3-ホルミル-4-メトキシベンゾニトリル
ジイソプロピルアミン (11.1 ml)とTHF (100 ml)の混合物に1.6 M ブチルリチウムヘキサン溶液 (45.5 ml)を-78 ℃で10分間かけて加え、混合物を0 ℃で20分間撹拌した。混合物を-78 ℃に冷却後、2-フルオロ-4-メトキシベンゾニトリル(10.0 g)を加えた。混合物を-78 ℃で1時間攪拌後、DMF (15.4 ml)を加えた。混合物を-78 ℃で1時間攪拌後、反応を酢酸エチルと2 M塩酸を加えて停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下濃縮した。得られた固体を酢酸エチル/ヘプタンで再結晶し、標題化合物 (8.60 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 4.02 (3H, s), 7.27 (1H, dd, J = 9.0, 0.8 Hz), 8.17 (1H, dd, J = 9.0, 7.5 Hz), 10.24 (1H, d, J = 1.5 Hz).
【0224】
B) 3-(アジドメチル)-2-フルオロ-4-メトキシベンゾニトリル
2-フルオロ-3-ホルミル-4-メトキシベンゾニトリル (5.02 g)とエタノール (30 ml)とTHF (30 ml)の混合物にテトラヒドロホウ酸ナトリウム (0.318 g)を0 ℃で加え、混合物を同温度で20分間撹拌した。反応を飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下濃縮し、2-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシベンゾニトリル (4.63 g)を粗生成物として得た。このようにして得られた2-フルオロ-3-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシベンゾニトリル (4.63 g)とTHF (50 ml)の混合物にDPPA (6.59 mL)とDBU (5.78 mL) を0 ℃で加え、混合物を室温で5時間撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (5.27 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 3.97 (3H, s), 4.46 (2H, d, J = 1.9 Hz), 7.18 (1H, d, J = 8.7 Hz), 7.98 (1H, dd, J = 8.7, 7.9 Hz).
【0225】
C) tert-ブチル [(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]カルバマート
3-(アジドメチル)-2-フルオロ-4-メトキシベンゾニトリル (5.51 g)とTHF (60 ml)と水(3 ml)の混合物に、トリフェニルホスフィン (7.71 g) を加えた。混合物を室温で18時間撹拌後、Boc2O (6.83 mL)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。混合物を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (6.88 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 1.36 (9H, s), 3.90 (3H, s), 4.14 (2H, br d, J = 4.9 Hz), 6.99-7.11 (2H, m), 7.84 (1H, dd, J = 8.7, 7.5 Hz).
【0226】
D) 3-(アミノメチル)-2-フルオロ-4-メトキシベンゾニトリル塩酸塩
tert-ブチル [(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]カルバマート (6.88 g)と酢酸エチル (50 ml)の混合物に、4 M塩化水素/酢酸エチル (150 ml)を加えた。混合物を室温で1.5時間撹拌後、析出固体をろ過、酢酸エチルで洗浄、乾燥し、標題化合物 (4.58 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 3.97 (3H, s), 4.01 (2H, d, J = 1.5 Hz), 7.17 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.95-8.20 (4H, m).
【0227】
E) N-[(3-シアノ-2-フルオロ-6-メトキシフェニル)メチル]-6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロピリジン-3-カルボキサミド
6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロニコチン酸 (1.05 g)と3-(アミノメチル)-2-フルオロ-4-メトキシベンゾニトリル塩酸塩 (1.05 g)とWSC・HCl (1.21 g)とHOBt (0.851 g)とDIPEA (2.54 ml)とDMF (10 ml)との混合物を室温で18時間撹拌した。反応液に水を加え、析出固体をろ取後、乾燥し、標題化合物 (1.58 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ3.93 (3H, s), 4.49 (2H, d, J = 4.1 Hz), 7.10 (1H, d, J = 8.7 Hz), 7.78 (1H, t, J = 72.0 Hz), 7.89 (1H, dd, J = 8.7, 7.9 Hz), 8.27 (1H, dd, J = 10.7, 2.1 Hz), 8.52 (1H, d, J = 1.9 Hz), 8.88 (1H, t, J = 4.9 Hz).
【0228】
実施例化合物を以下の表に示す。表中のMSは実測値を示す。上記の実施例に示した方法またはそれらに準じた方法に従って、以下の表中の実施例2~6、8、10、11、13~15、18~30の化合物を製造した。
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
試験例1
NR2B Ca2+インフラックスアッセイ
本発明化合物が有する「NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用」を確認するため、「NR1とNR2Bのヘテロ2量体2セットからなる4つのサブユニットで構成されるNMDA受容体」を発現するヒト胎児腎細胞、具体的にはヒトglutamate ionotropic receptor NMDA type subunit 1(GRIN1)とヒトglutamate ionotropic receptor NMDA type subunit 2B(GRIN2B)を発現するHEK293細胞を用いて、該受容体の活性化抑制効果を測定した。
GRIN1とGRIN2Bを発現するHEK293細胞は、ChanTest社から購入した(Human NMDA (NR1/NR2B) Receptor-expressing, stable replicating cell line (HEK293) カタログ番号CT6121)。
なお、NMDA受容体活性化の指標としては、グリシンおよびグルタミン酸がそれぞれNR1およびNR2Bに結合することにより引き起こされる細胞内カルシウムイオン(Ca2+)流入を用いた。
GRIN1とGRIN2Bを発現するHEK293細胞を、細胞培養用フラスコ内で、10%FBS(ウシ胎児血清、アウスジーン)、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、500μg/mL ネオマイシン、100μg/mL Zeocin(Invitrogen社登録商標)、5μg/mL ブラストシジンの添加されたDMEM/F-12(コスモバイオ、10-092-CM)培地を用いてインキュベーター(37℃、5%CO2下)で培養した。
アッセイ前日に細胞をトリプシンによりフラスコからはがし、8×105cells/mLとなるように、播種用培地(10%FBS、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシンの添加されたDMEM(インビトロジェン、31053))で懸濁し、384ウェルプレート(ファルコン、356663)へ20000cells/wellとなるよう1ウェルあたり25μLずつ播種し、インキュベータにて一晩培養した。アッセイ当日、テトラサイクリン(和光純薬、209-16561)を播種用培地にて2μg/mLとなるように希釈し、細胞の播種してあるプレートへ25μL/wellを添加し、2時間インキュベータで培養した。その後、培地を除去し、50μL/wellのアッセイバッファー(137mM NaCl、4mM KCl、1.8mM CaCl2、10mM HEPES(pH7.2)、10mM Glucose、0.1% BSA)で洗浄した。次にローディングバッファー(アッセイバッファーに2.5μM Fluo-4AM、2mM Amaranth、1mM Tartrazineを加えたもの)を25μL/well添加し、インキュベータにて30分、室温にて15分インキュベートした。実施例化合物を30μM(最終濃度10μM)になるように上記アッセイバッファーで希釈した溶液を25μL/well添加し、15分間室温にて静置した。FDSS7000EX/μCELL(浜松ホトニクス)にて30μM グルタミン酸、30μM グリシンを含むアッセイバッファーを25μL/well添加し、Excitation 480nm、Emission 540nmの波長の蛍光シグナルを3秒おきに5分間測定した。阻害活性は、各ウェルの蛍光値の積算値に対して、グルタミン酸、グリシンを含まないアッセイバッファーを添加したウェルの蛍光値の積算値を100%阻害とする相対活性値(阻害率)として算出した。結果を表2に示す。
【0236】
【0237】
上記した表2に示されるように、本発明化合物は、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体において、細胞内カルシウムイオン(Ca2+)流入を抑制した。すなわち、本発明化合物が、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有することが確認された。
【0238】
試験例2
in vivo [3H]MK-801結合試験
本発明化合物が有する「NR2Bサブユニットを含むNMDA 受容体の生体内における機能的拮抗作用」を確認するために、NMDA受容体の開口部に結合する化合物であるMK-801((5R,10S)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-5,10-エピミノジベンゾ[a,d][7]アンヌレン)のトリチウムラベル体([3H]MK-801)を用いて、結合試験を行った。
Sprague Dawleyラット(体重180-260 g)に実施例化合物(1 mg/kg/2 mL, 0.5% MC水)もしくはvehicle (kg/2 mL, 0.5% MC水)を経口投与(p.o.)し、一定時間後(最高血中濃度到達時間後付近)に[3H]MK-801(20 μCi/kg/mL, 室町機械)を尾静脈内投与し、その10分後に断頭により安楽死させ、開頭し、海馬を採取した。採取した海馬に組織重量の30倍量(組織1 gあたり30 mL)の氷冷した20 mM Hepes (pH7.5, Hampton Research)を加え、ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン)で10秒間ホモジナイズした。ホモジネートのうち600 μLを事前に0.5% polyethyleneimine(富士フィルム和光純薬株式会社)で処理したGF/Bワットマンガラスフィルター(GEヘルスケア)をセットしたマニフォールドフィルトレーションシステム(ミリポア)に添加し吸引ろ過した。フィルターは5 mLの氷冷した生理食塩水(大塚製薬株式会社)で4回洗浄した後にシンチレーションバイアルに入れ、液体シンチレーターA(富士フィルム和光純薬株式会社) 10 mLを加え、リキッドシンチレーションカウンター(ALOKA LSC-6100)で残存放射活性を測定した。また、ガラスフィルターろ過前のホモジネート100 μLについても同様に残存放射活性を測定した。[フィルター中の残存放射活性/ホモジネート100 μL中の残存放射活性]を算出することで、[3H]MK-801の投与量による補正を行い、この値を各個体の海馬組織に発現するNMDA 受容体における[3H]MK-801の結合割合とした。その上で、Vehicle投与群での[3H]MK-801の結合割合を100%とし、過剰量のMK-801マレイン酸塩 (2 mg/kg/2 mL, 0.5% MC水)を皮下投与した群における[3H]MK-801の結合割合を0%とした。実施例化合物を経口投与した群における[3H]MK-801の結合割合と、vehicle群(100%)の差を、実施例化合物による[3H]MK-801の結合阻害率としてデータ解析を行った。結果を表3に示す。
【0239】
【0240】
製剤例1(カプセルの製造)
1)実施例1の化合物 30 mg
2)微粉末セルロース 10 mg
3)乳糖 19 mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1 mg
計 60 mg
1)、2)、3)および4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0241】
製剤例2(錠剤の製造)
1)実施例1の化合物 30 g
2)乳糖 50 g
3)トウモロコシデンプン 15 g
4)カルボキシメチルセルロースカルシウム 44 g
5)ステアリン酸マグネシウム 1 g
1000錠 計 140 g
1)、2)、3)の全量および30gの4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの4)および1gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり実施例1の化合物30mgを含有する錠剤1000錠を得る。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明化合物は、NR2Bサブユニットを含むNMDA受容体の拮抗作用を有し得、うつ病、双極性障害、片頭痛、疼痛、認知症周辺症状等の予防または治療剤として有用であることが期待される。
【0243】
本出願は、日本で出願された特願2019-010536を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。