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特許7541679偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20240822BHJP
   B42D 25/382 20140101ALI20240822BHJP
   H04N 1/32 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/382
H04N1/32 144
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021020517
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123294
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103980(JP,A)
【文献】特開2003-136828(JP,A)
【文献】特開2011-148129(JP,A)
【文献】特開2016-172340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0298204(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0255808(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0609031(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 25/382
H04N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に偽造防止画像が形成され、前記偽造防止画像は、不可視画像を形成する不可視画像領域と、可視画像を形成する可視画像領域と、前記不可視画像を隠蔽するカモフラージュ画像を形成するカモフラージュ画像領域からなり、
通常光下で肉眼視により可視画像が視認され、赤外線視により前記可視画像が消失して不可視画像が視認される偽造防止印刷物であって、
前記可視画像領域は、前記不可視画像領域及び/又は前記カモフラージュ画像領域と、少なくとも一部が共有するように形成され、
前記不可視画像は、赤外線吸収色素を含むブラック(K)インキによる第1のスクリーンからなる要素で形成され、
前記可視画像は、赤外線吸収色素をそれぞれ含まないシアン(C)インキによる第2のスクリーン、マゼンタ(M)インキによる第3のスクリーン、イエロー(Y)インキによる第4のスクリーンのうち、少なくともいずれか一つからなる要素で形成され、
前記カモフラージュ画像は、前記不可視画像を、前記不可視画像の最小濃度と最大濃度の範囲でネガポジ反転し、前記第2のスクリーン、前記第3のスクリーン及び前記第4のスクリーンからなる要素で形成した画像であり、かつ前記不可視画像と、肉眼視で等色として視認されることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記第1のスクリーン、前記第2のスクリーン、前記第3のスクリーン及び前記第4のスクリーンが、AMスクリーン及び/又はFMスクリーンにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記偽造防止印刷物に埋め込む前記不可視画像の濃度の最大値mと濃度の最小値nを設定するステップ1と、
前記可視画像の基となる元画像データを取得するステップ2と、
前記元画像データの全域に前記濃度の最大値mがあるか判定するステップ3と、
前記元画像データの全域に前記濃度の最大値mがない場合、前記元画像データの濃度の最小値を前記濃度の最大値mに変更するステップ4と、
前記元画像データをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に色分解したデータを生成するステップ5と、
前記不可視画像の基となる第1の不可視画像データを取得するステップ6と、
前記第1の不可視画像データが有する濃度の最大値を、前記濃度の最大値mに変更し、第1の不可視画像データの濃度の最小値を前記濃度の最小値nに変更し、グレースケール画像データを得るステップ7と、
前記第1の不可視画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に色分解した第2の不可視画像データと、前記第1の不可視画像データをブラック(K)に色分解した第3の不可視画像データを得るステップ8と、
ステップ5で色分解した前記元画像データから、前記第2の不可視画像データの濃度を差し引くステップ9と、
前記第2の不可視画像データが差し引かれた前記元画像データに、前記第3の不可視画像データを合成し、前記不可視画像、前記可視画像及び前記カモフラージュ画像からなる偽造防止印刷物画像データを生成するステップ10と、
を備えることを特徴とする、請求項1及び2記載の偽造防止印刷物用データの作成方法。
【請求項4】
請求項3記載の前記偽造防止印刷物用のデータ作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする、前記偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅券、各種証明書、重要書類等の偽造・改ざんの防止が求められる印刷物において、判別具を用いて容易に真偽判別することができる偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
旅券、各種証明書及び重要書類等の印刷物において、偽造及び改ざん防止効果を印刷物に付与し、高いセキュリティ性を持たせることは重要である。これらの印刷物の偽造及び改ざん防止効果を付与する一般的な方法として、印刷物に対して何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない不可視画像を出現させるものがある。代表的な例としては、カラー複写機で色が正常に再現されないような機能性インキの付与や、複写では再現が不可能な画線によって構成されたコピー防止画線等を印刷物に付与する方法がある。
【0003】
しかし、近年カラー複写機が高性能となり、複写の解像度や画像の再現性が向上したことにより、コピー防止画線による複写防止効果は陳腐化している。また、通常光下では不可視である蛍光インキ等の機能性インキを印刷物に用いることに関しても、蛍光インキの材料等が市販され、誰でも容易に手に入るようになったことにより偽造防止効果が低下している。
【0004】
本願発明者らは、前述の問題を解決すべく、特殊なインキを用いることなく、高解像度な複写機を用いた複写による偽造防止策として、通常光下において肉眼で観察した場合に階調画像が視認され、赤外線カメラといった判別具を用いて観察すると異なる階調画像を視認することが可能となる画線印刷物を出願している(特許文献1参照)。
【0005】
これは、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として、1つの可視画像領域と、可視画像領域に隣接する1つの不可視画像領域とが複数組配置され、各々の不可視画像領域の周囲が、複数の可視画像領域に囲まれ、可視画像領域は、不可視画像領域より面積が大きく、不可視画像領域は赤外線吸収色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と赤外線吸収色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の不可視画像領域における第2aの領域と第2bの領域との比率に応じて、複数の不可視画像領域における第2aの領域により階調画像が形成されていることを特徴とする画線印刷物である。具体的に、図1を用いて説明する。
【0006】
図1(a)は偽造防止画像(3a)の拡大図に相当し、図1(b)は偽造防止画像(3a)を通常光下において、肉眼で観察した場合に視認される可視画像を示し、図1(c)は偽造防止画像(3a)を構成する赤外吸収色素を含むインキで形成され、赤外線カメラといった判別具を用いて視認される不可視画像を示している。
【0007】
図1(a)に示されるように、偽造防止画像(3a)は、1つの可視画像領域(101a)と、可視画像領域に隣接する1つの不可視画像領域(101b)とを備えたユニットが複数組配置され、各々の不可視画像領域(101b)の周囲が、複数の可視画像領域(101a)に囲まれるように配置されている。また、不可視画像領域(101b)内には、カモフラージュ画像領域(101c)が存在する。
【0008】
そして可視画像領域(101a)は、不可視画像領域(101b)より大きい面積を有する。不可視画像領域(101b)は、赤外線吸収色素を含むブラック(K)のインキを用いて階調を再現する網点が形成される。そして、不可視画像領域(101b)内に存在するカモフラージュ画像領域(101c)に、赤外線吸収色素をそれぞれ含まないシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色によるインキを用いて、ブラック(K)のインキによる網点の周囲に、スクエア形状の網点が形成される。
【0009】
赤外線カメラ等の判別具で観察すると、ブラックインキで形成された画線によって構成された階調を有する画像(例えば、図1(c)で示された「NPB」の文字)が視認される。可視画像領域(101a)には、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキを用いて階調画像が形成されており、通常光下での肉眼視では図1(b)に示す可視画像として、カラーの階調画像が視認される。
【0010】
この印刷物を形成する網点は、一般的に特殊形状網点といわれるものが用いられている。特殊形状網点とは、一般的な家庭用プリンターで用いられている振幅変調(AM)スクリーンと称されるものと、誤差拡散法といった周波数変調(FM)スクリーンで形成される網点とは異なる網点であり、連続階調を再現するために用いられ、そのスクリーン形状自体にも意匠性や偽造防止効果がある。特許文献1で用いられているスクリーンは、AMスクリーンの要素もあるが、通常のAMスクリーンと異なる点がある。ここで、特殊形状網点との違いを説明するため、一般的な印刷で用いられるスクリーンについて説明する。
【0011】
AMスクリーンは、ハーフトーンセルと称される網点1つを描画する領域がマトリックス状に配置されて形成されており、ハーフトーンセルの内部には画像の濃淡を表現する網点が形成される。AMスクリーンの網点形状は、一般的には円形、楕円形、四角形、線形等、任意に設定することができ、画像の濃淡は、網点の大小によって表される。AMスクリーンであっても、一般的に用いられない形状の網点であれば、特殊形状網点や特殊形状スクリーンといわれる。AMスクリーンにはスクリーン角度というものがあり、モアレを防ぐ目的で印刷する色ごとに角度を変える。
【0012】
例えばCMYKで行うプロセス印刷においては、同じスクリーン形状を用いた上で、シアン15度、マゼンタ75度、イエロー0度、ブラック45度というように角度が異なっている。
【0013】
このように、AMスクリーンは図2に示すように、規則的に並んだ網点の大小によって階調を表すのに対し、FMスクリーンは図3に示されるように、不規則に並んだ同一の大きさの網点の密度を変化させることによって、階調を表現するものである。FMスクリーンの網点は、有効解像度における最小サイズの点に相当する。また、スクリーン角度が存在しない。
【0014】
AMスクリーンやFMスクリーンで画像を形成する際、画像の細かさを示す単位として、スクリーン線数(線/インチ)というものがあり、印刷の網点の並びを線上に見て、1インチ(2.54cm)に、いくつ網点が存在するかを示したものである。線数の値が多ければその分画像が細かくなる。
【0015】
AMスクリーンの線数について図2を用いて具体的に説明する。図2は、600dpiの画像解像度からなる縦横が20×20画素の大きさのドキュメントファイルを示す。なお、図2において1マス1画素(p)とする。網点面積率20%の網点を表現する際に、画像の濃度1%を1画素塗りつぶすことで表現する場合、0%を含めて101の階調を表現することができるハーフトーンセル1つ分の大きさは、10×10画素(p)となる。これにより、隣り合うハーフトーンセルにおいて、ハーフトーンセル内の同じ位置に表現する網点と網点との距離(d)は10画素(p)となり、これをインチ換算の線数で表すと60線/インチとなる。AMスクリーンでは、画像分解する能力、即ち、画像分解能は線数と同じであり、この場合の画像分解能は60dpiとなる。
【0016】
次に、FMスクリーンの画像分解能について説明する。図3は、600dpiの画像解像度のドキュメントファイルにおいて画像サイズが縦横20×20画素(p)によって構成されている場合に、20%の濃度をFMスクリーンで再現したものである。この画像は、80個の黒く塗りつぶされた画素(p)(ここでは網点と同義)がランダムに配置されることによって再現される。そして、FMスクリーンにおける画像分解能は有効解像度に合致し、600dpiの画像解像度からなるドキュメントファイルでは、画像分解能は600dpiとなる。したがってFMスクリーンは、同じ画像解像度であれば画像分解能がAMスクリーンより10倍の画像分解能を有する。画像分解能は線数と同じく、高いほどより高精細な印刷が可能となる。以上が一般的な印刷物を形成するスクリーンに関する基礎的な知識である。
【0017】
特許文献1においては、可視画像領域(101a)を形成している網点と、不可視画像領域(101b)を形成している網点は、上述したような形状の網点ではなく、それぞれの領域は異なるスクリーンによって形成され、図1のような配置で組み合わされることで特許文献1の印刷物を形成している。そして、スクリーン角度も各色0°である。このような網点は、一般的な家庭用プリンターには備わっておらず、一般的なAMスクリーンの形状とも異なる。したがって、特殊形状網点及び特殊形状スクリーンである。一般的なプリンターで、特許文献1の印刷物を出力する場合は、あらかじめデータ上で、画素群で構成された画像に対し、図1のようなスクリーンを適用し、特殊形状網点で構成された画像データを作製した後、プリンター上で適宜一般的なスクリーンを適用して出力することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特許第3544536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献1に記載された発明では、図1(c)に示された連続階調を成す不可視画像の解像度を確保するためには、不可視画像領域(101b)は必要最低限度の画素数を有する必要があった。しかしながら、解像度の低い出力デバイスでは、連続階調を設けるために必要な画素数を設定することができず、偽造防止画像(3a)の色再現性は極めて低いものであった。
【0020】
例えば、出力解像度が600dpiのカラープリンターにおいては、16階調の不可視画像を形成するためには不可視画像領域(101b)には少なくとも縦横4画素が必要であり、可視画像領域(101a)では少なくとも縦横8画素が必要となる。そこから換算される線数は60線/インチ相当の画像分解能となってしまい、解像度の低い不鮮明な画像として観察者に視認されていた。
【0021】
また、上述したとおり、特許文献1に記載された印刷物における網点形状は、特殊形状スクリーンによって形成されており、偽造抑止力があるものの、一般的なスクリーンでは形成することができないという作成上の制約があった。上述した方法で出力する方法については、高解像度な印刷が可能であるオフセット印刷などであれば、特殊形状スクリーンをそのまま出力することができることから、特許文献1の印刷物を高精細に印刷することができたが、解像度が低く、かつ特殊形状スクリーンをそのまま出力できない一般的な家庭用プリンター等では高精細な印刷物を出力することは困難であった。
【0022】
また、当然のことながら、プリンターの機種によって画像の出力解像度は異なるため、プリンターの出力解像度に合わせて、特殊形状スクリーンに用いる網点の線数を考慮して画像上に網点を形成した上で、改めてプリンターでAMスクリーンやFMスクリーンを適用して出力しなければならかった。そのため、特許文献1の画像を出力解像度が異なるプリンターで出力する場合、解像度に合わせて画像を作り直す必要があった。以上の理由から、一般的に使用されているプリンターで出力できるスクリーンで網点形状を形成する方法が望まれていた。
【0023】
本発明は上記事情に鑑み、特殊形状スクリーンを用いることなく、また出力デバイスの画像分解能に左右されることなく、高精細な不可視画像を実現することが可能な偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用のデータの作成方法及び作成用ソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の偽造防止印刷物は、基材上の少なくとも一部に偽造防止画像が形成され、偽造防止画像は、不可視画像を形成する不可視画像領域と、可視画像を形成する可視画像領域と、不可視画像を隠蔽するカモフラージュ画像を形成するカモフラージュ画像領域からなり、通常光下で肉眼視により可視画像が視認され、赤外線視により可視画像が消失して不可視画像が視認される偽造防止印刷物であって、可視画像領域は、不可視画像領域及び/又はカモフラージュ画像領域と、少なくとも一部が共有するように形成され、不可視画像は、赤外線吸収色素を含むブラック(K)インキによる第1のスクリーンからなる要素で形成され、可視画像は、赤外線吸収色素をそれぞれ含まないシアン(C)インキによる第2のスクリーン、マゼンタ(M)インキによる第3のスクリーン、イエロー(Y)インキによる第4のスクリーンのうち、少なくともいずれか一つからなる要素で形成され、カモフラージュ画像は、不可視画像を、不可視画像の最小濃度と最大濃度の範囲でネガポジ反転し、第2のスクリーン、第3のスクリーン及び第4のスクリーンからなる要素で形成した画像であり、かつ不可視画像と、肉眼視で等色として視認されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第1のスクリーン、第2のスクリーン、第3のスクリーン及び第4のスクリーンが、AMスクリーン及び/又はFMスクリーンにより形成されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の偽造防止印刷物用データの作成方法であって、偽造防止印刷物に埋め込む不可視画像の濃度の最大値mと濃度の最小値nを設定するステップ1と、可視画像の基となる元画像データを取得するステップ2と、元画像データの全域に濃度の最大値mがあるか判定するステップ3と、元画像データの全域に濃度の最大値mがない場合、元画像データの濃度の最小値を濃度の最大値mに変更するステップ4と、元画像データをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に色分解したデータを生成するステップ5と、不可視画像の基となる第1の不可視画像データを取得するステップ6と、第1の不可視画像データが有する濃度の最大値を、濃度の最大値mに変更し、第1の不可視画像データの濃度の最小値を濃度の最小値nに変更し、グレースケール画像データを得るステップ7と、第1の不可視画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)に色分解した第2の不可視画像データと、第1の不可視画像データをブラック(K)に色分解した第3の不可視画像データを得るステップ8と、ステップ5で色分解した元画像データから、第2の不可視画像データの濃度を差し引くステップ9と、第2の不可視画像データが差し引かれた元画像データに、第3の不可視画像データを合成し、不可視画像、可視画像及びカモフラージュ画像からなる偽造防止印刷物画像データを生成するステップ10と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェアであって、偽造防止印刷物用のデータの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、通常光下において、肉眼で偽造防止印刷物を観察した際には、階調を有する可視画像が視認され、赤外線視で観察した際には、通常光下で視認された可視画像が消失し、不可視画像が視認される偽造防止印刷物において、特殊な網点を用いることなく、また出力デバイスの画像分解能に左右されることのない高精細な不可視画像を実現する偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアを提供することができる。また、従来技術の印刷物を一般的な家庭用プリンターで出力する際は、あらかじめデータ上で、画素群で構成された画像データに対し、図1のようなスクリーンを適用し、特殊形状網点で構成された画像データを作成した後、プリンター上で適宜一般的なスクリーンを適用しなければ出力することができなかったが、本発明によれば、スクリーン自体は出力プリンターが適宜選択するので、従来よりも簡単に偽造防止印刷物が作成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来技術による偽造防止印刷物の構成を示した部分拡大図、通常光下において、肉眼視で視認される可視画像及び赤外線視で視認される不可視画像を示した図。
図2】振幅変調(AM)スクリーンの構成を示した図。
図3】周波数変調(FM)スクリーンの構成を示した図。
図4】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物について、通常光下において肉眼視で視認される可視画像及び赤外線視で視認される2階調の不可視画像を示した斜視図。
図5】本発明の他の実施の形態による偽造防止印刷物について、通常光下において肉眼視で視認される可視画像及び赤外線視で視認される階調を有する不可視画像を示した斜視図。
図6】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物の構成を示した部分拡大図、通常光下において肉眼視で視認される可視画像及び赤外線視で視認される画像を示した図。
図7】同実施の形態による偽造防止印刷画像を構成する可視画像、不可視画像及びカモフラージュ画像を示した図。
図8】従来技術による偽造防止印刷物の構成を示した図。
図9】本発明の一実施の形態によるスクリーン角度が、全て同じAMスクリーンを用いて要素が形成された偽造防止印刷物の構成を示した図。
図10】本発明の一実施の形態によるスクリーン角度の異なるAMスクリーンを用いて要素が形成された偽造防止印刷物の構成を示した図。
図11】本発明の一実施の形態によるFMスクリーンを用いて要素が形成された偽造防止印刷画像の構成を示した図。
図12】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置の構成を示したブロック図。
図13】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法の手順を示すフローチャート。
図14】濃度を補正する前の元画像データ及びその濃度値の分布を示すヒストグラムと、濃度を補正した元画像データ及びその濃度値の分布を示すヒストグラムを示した図。
図15】第1の不可視画像データ及びその濃度値の分布を示すヒストグラムと、濃度を補正して作成した第1の不可視画像データ及びその濃度値の分布を示すヒストグラムを示した図。
図16】第1の不可視画像データをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のみで色分解した第2の不可視画像データと、第1の不可視画像データをブラック(K)のみで色分解した第3の不可視画像データを示した図。
図17】元画像データと第2の不可視画像データと第3の不可視画像データを濃度調整・合成する処理を示した図。
図18】偽造防止画像データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成した画像データと、ブラック(K)で形成した画像データを示した図。
図19】偽造防止画像データを示した図。
図20】実施例1で用いる元画像データと、その濃度値の分布を示すヒストグラムを示した図。
図21】実施例1における偽造防止画像データをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成した画像データと、ブラック(K)で形成した画像データを示した図。
図22】実施例1における偽造防止画像データを示した図。
図23】実施例2における元画像データと、その濃度値の分布を示すヒストグラムと、選択範囲を指定した元画像データと、元画像データの選択範囲内の濃度値の分布を示すヒストグラムを示した図。
図24】実施例2における偽造防止画像データをシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成した画像データと、ブラック(K)で形成した画像データを示した図。
図25】実施例2における偽造防止画像データを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態による偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアについて、図面を参照して説明する。
【0031】
図4(a)に、本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物(1)を示す。この偽造防止印刷物(1)は、基材(2)上に偽造防止画像(3)を有する。この偽造防止画像(3)は連続階調の可視画像(4)を備え、通常光下で肉眼視(T1)により可視画像(4)が視認される。
【0032】
一方、偽造防止印刷物(1)に赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した判別具(6)を用いて赤外線視(T2)すると、図4(b)に示されるように、例えば2階調の不可視画像(5)が可視化され視認される。これにより、図4(a)で示された可視画像(4)は見えなくなると同時に、可視画像(4)と入れ替わるように2階調の不可視画像(5)が可視化される。
【0033】
次に、本発明の他の実施の形態による偽造防止印刷物(1)であって、不可視画像(5)が連続階調を有する例について説明する。図5(a)に示されるように、この偽造防止画像(3)は連続階調の可視画像(4)を備え、通常光下で肉眼視(T1)においては連続階調の可視画像(4)が視認される。
【0034】
一方、偽造防止印刷物(1)に赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した判別具(6)を用いて赤外線視(T2)すると、図5(b)に示されるように連続階調の不可視画像(5)が可視化される。これにより、図5(a)で示された可視画像(4)が見えなくなると同時に、入れ替わるように連続階調の不可視画像(5)が可視化され視認される。このように、本発明の実施の形態によれば、不可視画像(5)を2階調または連続階調のいずれによっても付与することが可能である。
【0035】
偽造防止印刷物(1)に用いられる基材(2)は、一般的に用いられる紙やフィルム、プラスチックシート等が利用可能であり、偽造防止印刷物(1)を赤外線視(T2)した際に、不可視画像(5)が視認できるような赤外特性を有する基材であれば、特に限定はなく、赤外線を反射、または、吸収しない基材であることが望ましい。
【0036】
偽造防止画像(3)を形成するインキとしては、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)を用いる。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)は赤外吸収色素を含んでいないインキであり、ブラック(K)はカーボンといった赤外吸収色素を含んでいるインキであることが必須であり、顔料系インキを用いる一般的なプリンターは、上述のインキの構成となっている。
【0037】
図6は、本実施の形態の偽造防止印刷物(1)における、偽造防止画像(3b)を示した図であり、図6(a)は偽造防止画像(3b)の一部を拡大した図で、図6(b)は偽造防止画像(3b)である。
【0038】
本実施の形態による偽造防止印刷物(1)では、図1に示した従来技術のように、可視画像領域(101a)と不可視画像領域(101b)と不可視画像領域(101b)内に存在するカモフラージュ画像領域(101c)とをそれぞれ所定の位置関係を持って異なる領域にマトリックス状に配置するものとは異なり、図6(a)に示された偽造防止画像(3b)のように、可視画像領域(201a)が、不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)の少なくとも一部が同じ領域を共有するように形成する。なお、図6(a)においては、実線で囲む一つの領域を可視画像領域(201a)、不可視画像領域(201b)及びカモフラージュ画像領域(201c)で共有している。領域を共有するとは、可視画像(4)を形成する網点を有する可視画像領域(201a)と、不可視画像(5)を形成する網点を有する不可視画像領域(201b)の少なくとも一部が重なっていることをいう。カモフラージュ画像領域(201c)は、偽造防止画像(3)から、最大網点面積率で形成された要素を有する不可視画像領域(201b)を除いた領域である。例えば、不可視画像(5)の最大の濃度を20%とした場合、不可視画像領域(201b)の中で網点面積率が20%である箇所の領域を、偽造防止画像(3)から除いた領域がカモフラージュ画像領域(201c)である。従来であれば可視画像(4)と不可視画像(5)、もしくは、可視画像(4)と後述するカモフラージュ画像(7)を形成するスクリーン同士が重なることはなかったが、本実施の形態による偽造防止印刷物(1)においては重なっている。
【0039】
このように相互の領域を共有するように形成することによって、不可視画像領域(201b)の画素数に制約がなくなり、プリンターが有する画像解像度において最大限の画像分解能で表現可能となる。また、図6の偽造防止画像(3b)のスクリーン形状は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のそれぞれのスクリーンの相対的な角度を0度として円形状の網点で構成したものとなっているが、この網点形状においても領域に関する制約がなくなり、任意に一般的なAMスクリーンやFMスクリーンを選択できる。同様に、AMスクリーンとFMスクリーン両方の利点をもつハイブリットスクリーンも選択することができる。つまり、網点形状やスクリーン角度に制限がない。これは、AMスクリーンやFMスクリーンによって形成される一般的な印刷物の形成方法と何ら変わりない構成である。また、一般的に用いられていない特殊形状スクリーンであっても、本実施の形態の偽造防止印刷物(1)に用いることができる。その場合、上述の方法によって可能であり、図1に示す従来の偽造防止印刷物(1)よりも、領域を共有することによって、より高精細な画像を形成することが可能である。
【0040】
図8に示す、従来技術による偽造防止画像(3a)と、図9に示す本実施の形態による偽造防止画像(3b)との違いについて、さらに詳細に説明する。
【0041】
図7に、可視画像(4)、赤外線視(T2)で視認される不可視画像(5)及び不可視画像(5)を隠蔽するためのカモフラージュ画像(7)を、簡易な図形を用いて示す。なお、可視画像(4)については、白い領域と斜線領域で図示しているが、白い領域についても、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)による要素(網点)が存在するが、カモフラージュ画像(7)を構成する要素して存在していることから、可視画像(4)では、省略して白い領域として示す。カモフラージュ画像(7)は、図示されたように不可視画像(5)と等色に視認されるものであって、カモフラージュ画像(7)の最大濃度が不可視画像(5)の最大濃度と同じであり、カモフラージュ画像(7)の最小濃度が不可視画像(5)の最小濃度と肉眼で観察されるように、ネガポジ反転された関係にある。図7では、可視画像(4)を二等辺三角形、不可視画像(5)を円としたが、それぞれに用いる画像は、文字や数字、多角形、直線、顔画像といった有意情報でもよく特に限定はない。
【0042】
可視画像(4)とカモフラージュ画像(7)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のそれぞれのスクリーンによって形成され、不可視画像(5)は、ブラック(K)のスクリーンで形成される。したがって、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)が等色というのは、不可視画像(5)を形成するブラック(K)と、カモフラージュ画像(7)を形成するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色が、肉眼で観察した際に等色にみえるという意味である。
【0043】
可視画像(4)とカモフラージュ画像(7)を形成する、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の網点面積率は、それぞれ0%~100%の範囲で任意に設定することができる。ブラック(K)の網点面積率は0~75%の範囲で設定できる。なお、ブラック(K)の網点の最大値が76%以上となってしまうと偽造防止印刷物(1)全体が黒く視認されるのみの画像となってしまい、可視画像(5)は視認できない。
【0044】
本実施の形態において、図7に示された可視画像(4)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)がそれぞれ50%の網点面積率で構成されており、その合成色により灰色に視認される。カモフラージュ画像(7)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)がそれぞれ0~20%の網点面積率で構成され、その合成色は灰色に視認される。不可視画像(5)は、ブラック(K)で網点面積率を0~20%で構成したものである。
【0045】
なお、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の割合は出力するプリンターによって異なるが、本実施例においては、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を同じ割合で形成した合成色は、ブラック(K)と肉眼で視認した際に等色となるとして説明するがその構成に限定したものではなく、プリンターが出力するインキの色によって適宜割合を調整し、合成色を形成してよい。
【0046】
カモフラージュ画像(7)と不可視画像(5)を形成する色が等色かどうかの判断は、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)を同じ位置で重ね合わせたとき、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)からなる画像が、不可視画像(5)の最大濃度で形成されたフラットな画像として肉眼で見た際に認識可能であれば、上述したとおり、カモフラージュ画像(7)は、不可視画像(5)と等色に視認されると判断でき、カモフラージュ画像(7)の最大濃度が不可視画像(5)の最大濃度と同じであるといえる。具体的には、図7に示す、不可視画像(5)である円形状のポジ画像と、カモフラージュ画像(7)である円形状のネガ画像がはめ合わさり、肉眼ではグレー一色で形成された画像に視認可能となることをフラットな画像として認識可能という。本実施の形態では、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)を同じ位置で重ね合わせたとき、ブラック(K)20%のフラットな画像として肉眼で視認できれば等色として視認されることとなる。
【0047】
以下、本実施の形態において、網点のことを要素と定義する。要素には、AMスクリーンによる網点やFMスクリーンによる網点を含むほか、線状の画線を含む。また、特殊形状スクリーンによる網点も含む。
【0048】
まず、従来技術による偽造防止印刷物の要素構成について説明する。図7に示された可視画像(4)及び不可視画像(5)を従来技術により配置したものが、図8に示された偽造防止画像(3a)である。図8(a)には、シアン(C)1色で形成された要素、図8(b)には、マゼンタ(M)1色で形成された要素、図8(c)には、イエロー(Y)1色で形成された要素、図8(d)には、ブラック(K)1色で形成された要素が示されており、図8(e)には、これらの4色の要素により形成された偽造防止画像(3a)が示されている。
【0049】
図8(e)における可視画像領域(101a)と不可視画像領域(101b)、可視画像領域(101a)とカモフラージュ画像領域(101c)とは、それぞれ異なる領域に完全に分離して形成され、所定の位置関係を持ってマトリックス状に配置されている。
【0050】
図7に示された可視画像(4)は、可視画像領域(101a)内に要素が形成されたものであり、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキにより形成されている。一方、不可視画像(5)は、不可視画像領域(101b)内に要素が形成されたものであり、図8(d)に示されたブラック(K)のインキにより形成されている。カモフラージュ画像(7)は、カモフラージュ画像領域(101c)に形成され、図8(a)~(c)に示されたようにシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキによる要素で形成される。
【0051】
本実施の形態による偽造防止印刷物(1)の要素構成について説明する。図7に示された可視画像(4)と不可視画像(5)及びカモフラージュ画像(7)が同一領域を共有するように配置したものが、図9に示された偽造防止画像(3b)であり、可視画像領域(201a)と不可視画像領域(201b)、可視画像領域(201a)とカモフラージュ画像領域(201c)とは、相互に画像を形成する領域を共有するように形成されている。
【0052】
図9は、偽造防止画像(3b)をAMスクリーンで形成しており、点線で示される四角形1つはAMスクリーンを構成するハーフトーンセルである。画像を形成する領域とは、要素(網点)が形成される可能性がある領域のことである。したがって、不可視画像領域(201b)と可視画像領域(201a)が共有するように形成されているとは、不可視画像領域(201b)と可視画像領域(201a)が少なくとも一部が重なっていることをいう。よって、要素(網点)が形成される可能性がある領域であることから、図9に示すAMスクリーンにおいては、点線で示される四角形1つはAMスクリーンを構成するハーフトーンセルであることから、いずれかのCMYのハーフトーンセルとKのハーフトーンセルが重なっていれば領域を共有するように形成される。
【0053】
このように、可視画像領域(201a)と、不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)を構成する領域同士が共有されていることが従来技術と異なる点であり、可視画像領域(201a)内と、不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)内に形成される要素同士の重なりは重要ではなく、要素の重なりは必須ではない。前述のとおり、点線で示される四角形1つはAMスクリーンにより形成されたハーフトーンセルであることから、図9(a)に示す、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)インキによる第2のスクリーンである、シアン(C)のハーフトーンセルで形成された要素、図9(b)に示す赤外線吸収色素を含まないマゼンタ(M)インキによる第3のスクリーンである、マゼンタ(M)のハーフトーンセルで形成された要素、及び図9(c)に示す、赤外線吸収色素を含まないイエロー(Y)インキによる第4のスクリーンである、イエロー(Y)のハーフトーンセルで形成された要素と、図9(d)に示す、赤外線吸収色素を含むブラック(K)インキによる第1のスクリーンである、ブラック(K)のハーフトーンスクリーンで形成された要素が、図9(e)に示すように重なることで、領域を共有するように形成される。
【0054】
また、カモフラージュ画像(7)を形成する、図9(e)に示すカモフラージュ画像領域(201c)は、偽造防止画像(3)から、最大網点面積率で形成された要素を有する不可視画像領域(201b)を除いた領域である。本実施の形態においては、不可視画像(5)の最大の濃度は20%であることから、不可視画像領域(201b)の中で網点面積率が20%である箇所の領域を、偽造防止画像(3)から除いた領域がカモフラージュ画像領域(201c)である。
【0055】
カモフラージュ画像領域(201c)と不可視画像領域(201b)が共有された箇所では、偽造防止印刷物(1)を通常光下で肉眼視(T1)した際、不可視画像(5)の最大の濃度と等色として視認されるよう、適宜カモフラージュ画像(7)を構成するスクリーンの要素が形成される。例えば、不可視画像(5)の濃度の最大値、即ち、不可視画像(5)を形成する網点面積率の最大値が20%である場合に、ある不可視画像領域(201b)に形成された網点の面積率が15%だったとした際は、不可視画像(5)の網点面積率の最大値20%から網点面積率15%を引くと、5%となる。この5%の濃度をカモフラージュ画像領域(201c)内で、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色によって形成する。本実施の形態では、シアン(C)5%、マゼンタ(M)5%、イエロー(Y)5%と網点面積率をすることにより、カモフラージュ画像領域(201c)と不可視画像領域(201b)が共有された箇所は、肉眼視(T1)で不可視画像(5)の濃度の最大値20%と等色としている。
【0056】
図9(a)~(d)に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)でそれぞれ形成された要素を示し、図9(e)にこれらの全色を重ね合わせた状態を示す。
【0057】
図9に示された本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物における要素は、AMスクリーンにより形成される。本発明における要素構成は、可視画像領域(201a)と不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)とで同じ領域を共有していることから、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれの要素の配置は、スクリーン角度および、スクリーン線数に関する制限はないが、本実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれの要素を形成するスクリーンを重ね合わせたときの相対的角度は、0度の関係にある。
【0058】
また、図9(e)において、カモフラージュ画像(7)と可視画像(4)とからなるスクリーンセル1(3b-1)は、c1+m1+y1の要素で構成されている。
【0059】
c1+m1+y1は、(シアン(C)の可視画像(4)の要素とカモフラージュ画像(7)の要素)+(マゼンタ(M)の可視画像(4)の要素とカモフラージュ画像(7)の要素)+(イエロー(Y)の可視画像(4)の要素とカモフラージュ画像(7)の要素)であり、シアン(C)(50%+20%)+マゼンタ(M)(50%+20%)+イエロー(Y)(50%+20%)であり、網点面積率70%のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色で灰色70%である。
【0060】
スクリーンセル2(3b-2)は、カモフラージュ画像(7)のみで構成され、c2+m2+y2の要素で構成されている。
【0061】
c2+m2+y2は、(シアン(C)のカモフラージュ画像(7)の要素)+(マゼンタ(M)のカモフラージュ画像(7)の要素)+(イエロー(Y)のカモフラージュ画像(7)の要素)であり、シアン(C)(20%)+マゼンタ(M)(20%)+イエロー(Y)(20%)であり、網点面積率20%のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色で灰色20%である。
【0062】
スクリーンセル3(3b-3)は、不可視画像(5)のみで構成され、k3(ブラック(K)の不可視画像(5)の要素)がブラック(K)(20%)であり、灰色20%である。
【0063】
スクリーンセル4(3b-4)は、不可視画像(5)と可視画像(4)からなり、c4+m4+y4+k4の要素で構成されている。
【0064】
c4+m4+y4+k4は、(シアン(C)の可視画像(4)の要素)+(マゼンタ(M)の可視画像(4)の要素)+(イエロー(Y)の可視画像(4)の要素)+(ブラック(K)の不可視画像(5)の要素)であり、シアン(C)(50%)+マゼンタ(M)(50%)+イエロー(Y)(50%)+ブラック(K)(20%)であり、網点面積率50%のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合成色+ブラック(K)20%であって、灰色50%+灰色20%であり、灰色70%である。
【0065】
スクリーンセル5(3b-5)は、不可視画像(5)と可視画像(4)とカモフラージュ画像(7)からなり、c5+m5+y5+k5の要素で構成されている。
【0066】
可視画像(8)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)がそれぞれ50%、不可視画像(5)は、ブラック(K)が10%、カモフラージュ画像(7)は、不可視画像(5)の最大濃度からブラック(K)を差し引いたものであり、10%である。
【0067】
カモフラージュ画像(7)は、シアン(C)(10%)+マゼンタ(M)(10%)+イエロー(Y)(10%)で形成し、その合成色は、灰色10%である。
【0068】
c5+m5+y5+k5は、(シアン(C)の可視画像(4)+カモフラージュ画像(7))+(マゼンタ(M)の可視画像(4)+カモフラージュ画像(7))+(イエロー(Y)の可視画像(4)+カモフラージュ画像(7))+ブラック(K)の不可視画像(5)であり、(C50%+M50%+Y50%)+(C10%+M10%+Y10%)+(K10%)であり、灰色50%+灰色10%+灰色10%であり、灰色70%である。
【0069】
図9の偽造防止画像(3b)が、基材(1)に形成された偽造防止印刷物(1)を肉眼視(T1)で観察した場合、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)による灰色20%と、可視画像(4)の灰色50%が合わさって、灰色70%の二等辺三角形の形状が視認でき、二等辺三角形以外の箇所は、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)による灰色20%が視認できる。言い換えると、濃度50%の灰色でできた二等辺三角形の画像に対し、濃度20%の灰色の色被りが起きている画像が視認できる。
【0070】
そして、赤外線視(T2)で偽造防止画像(3b)を視認した場合は、可視画像(4)とカモフラージュ画像(7)が消失し、画像中央に、不可視画像(5)である灰0~20%で構成された円形が視認できる。
【0071】
図9を構成するスクリーン角度は相対的にそれぞれ0度であったが、上述したようにスクリーン角度は本発明において限定はない。
【0072】
また、本実施の形態においては可視画像(4)が、不可視画像(5)とカモフラージュ画像(7)両方に重なって配置されているが、それに限定したものではなく、可視画像(4)は不可視画像(5)もしくはカモフラージュ画像(7)のどちらか一方に重なっている場合も本発明の偽造防止印刷物(1)である。
【0073】
図10に示す本発明の別の実施の形態による偽造防止印刷物(1)における要素は、AMスクリーンにより要素が形成されており、図10(a)~(d)にそれぞれ示されたシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の要素を形成するスクリーンの相対的角度は、シアン(C)が108度、マゼンタ(M)が162度、イエロー(Y)が90度、ブラック(K)が45度となっている。
【0074】
この角度設定は、一般に各色が重なった際にモアレが起こりにくい角度に基づいている。図10(e)には全色が重ねられた状態が示されており、それぞれの要素がそれぞれのスクリーン角度をもって重なり合っている。なお、スクリーン線数については、例えば150線/インチ、175線/インチ、200線/インチ等、全く制限はない。なお、本実施の形態における要素構成は、可視画像領域(201a)と、不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)とで同じ領域が共有されていることから、要素の形状に関しても全く制限はない。
【0075】
図10における、可視画像(4)、不可視画像(5)、カモフラージュ画像(7)を構成するシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれスクリーンの網点面積率は、スクリーン角度が異なるだけで図9と同じである。
【0076】
そして、図9と同様に、可視画像領域(201a)と不可視画像領域(201b)及び/又はカモフラージュ画像領域(201c)は、互いに共有された関係であり、可視画像(4)、不可視画像(5)、カモフラージュ画像(7)の関係も同様であることから、図10の偽造防止画像(3)を基材(2)に印刷した偽造防止印刷物(1)を観察した場合も図9と同様の観察効果を持つ。
【0077】
また、図9では、同じ位置に配置されたスクリーンセル内の要素は同じ位置に配置されていたが、図10の構成においては、スクリーン角度がそれぞれ異なっていることからそれぞれの領域内の要素同士は必ずしも重なっているわけではない。一方で、低濃度(0~10%)で、可視画像(4)を構成したり、もしくは不可視画像(5)や、カモフラージュ画像(7)を低濃度(0~10%)で構成したりしない限りは、可視画像(4)を構成する要素と、不可視画像(5)及び/又はカモフラージュ画像(7)を構成する要素の一部は重なる構成となる。本発明においては、それぞれの領域内の要素同士は重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0078】
図11に示す本発明の更に別の実施の形態における偽造防止画像(3b)の要素は、誤差拡散ディザによるFMスクリーンにより要素が表現されている。FMスクリーンは上述のように、微細な要素(ドット、網点と同義)の粗密によって連続階調を表現するものである。インクジェットプリンタ等のインクの液滴で連続階調を成すものは、基本的に図11に示されたような微細な要素によって印刷されている。図11(a)~(d)に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)による偽造防止画像(3b)を構成するそれぞれの画線を示しており、図11(e)にこれらの全色が重ねられた状態を示している。FMスクリーンによる微細な要素の粗密によって連続階調を表現する方式を採用することで、画像分解能の低い出力デバイス、例えば、出力解像度が360dpiのカラープリンターにおいても十分な分解能を有する写真画質を保持することができる。
【0079】
FMスクリーンで形成する場合、画像を形成する範囲であれば、どこにおいても要素が形成される可能性があることから、図7に示す可視画像(4)、不可視画像(5)及びカモフラージュ画像(7)の濃度を100%にした画像の範囲が、それぞれ可視画像領域(201a)、不可視画像領域(201b)及びカモフラージュ画像領域(201c)となる。また、可視画像(4)を形成する要素とカモフラージュ画像(7)を形成する要素を区別することは不可能であるが、偽造防止印刷物(1)が、従来技術の特殊形状スクリーンを用いたものではなく、CMYKインキによるFMスクリーンによって形成されていることが確認でき、かつ肉眼視(T1)では可視画像(4)が視認でき、不可視画像(5)は視認できず、赤外線視(T2)で可視画像(4)が消失し、不可視画像(5)が視認できるのであれば、本発明の偽造防止印刷物(1)である。
【0080】
FMスクリーンで偽造防止画像(3)を作成した場合でも、図9と同様な観察方法で観察すれば、上述のとおり、図9で観察した画像と同様の画像が視認できる。また、仮に図9で示した偽造防止印刷物と、図11で示す偽造防止印刷物が同じ出力解像度によって出力された場合は、図11のほうが、FMスクリーン由来の高い画像分解能によって図9を観察したものより高精細な画像が視認できる。
【0081】
本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法、作成装置及び作成用ソフトウェアについて説明する。
【0082】
このデータの作成方法、作成装置及び作成用ソフトウェアは、不可視画像の基画像となる写真等の連続階調を有する画像を連続階調の不可視画像(5)として偽造防止画像内に埋め込んで偽造防止印刷物用のデータを作成するものである。
【0083】
図12に示すように、本実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置は、入力手段(M1)、編集手段(M2)、出力手段(M3)、表示手段(M4)、通信インターフェース(M5)、データベース(M6)、記憶手段(M7)を備えている。
【0084】
入力手段(M1)は、可視画像入力手段(M1a)と不可視画像入力手段(M1b)と、濃度入力手段(M1c)を備える。可視画像入力手段(M1a)は、通信インターフェース(M5)から任意の画像を入力し、あるいはデータベース(M6)に予め記録された任意の画像を入力することで、可視画像(4)の基画像を取得する。不可視画像入力手段(M1b)は、同様に通信インターフェース(M5)から画像を取得し、あるいはデータベース(M6)から画像を入力することで、不可視画像(5)の基画像を取得する。濃度入力手段(M1c)は、偽造防止画像データを作成するのに必要な濃度データを直接入力する、あるいは通信インターフェース(M5)あるいはデータベース(M6)から濃度データを取得する。入力手段(M1)は通常マウスや、キーボード等によって実現される。
【0085】
編集手段(M2)は、出力レベル調整手段(M2a)と、CMYK画像・グレースケール画像変換手段(M2b)と、濃度調整・合成(M2c)、濃度比較手段(M2d)とを備えている。出力レベル調整手段(M2a)は、入力手段(M1)が取得した、可視画像用及び不可視画像用の基画像に相当する画像に対して出力レベルを調整する。CMYK画像・グレースケール画像変換手段(M2b)は、出力レベルが調整された画像における、CMY画像とグレースケール画像との間で変換処理を行う。濃度調整・合成(M2c)は、変換処理が行われた画像に対して、必要な濃度調整・合成処理を行う。濃度比較手段(M2d)は、濃度入力手段(M1c)から入力された濃度と、可視画像入力手段(M1a)から読み込んだ可視画像(4)の基画像の濃度を比較する。このような編集手段(M2)は、一般的に用いられる画像処理であり、画像処理が可能なPCによって実現できる。
【0086】
出力手段(M3)は、カラー・レーザープリンタ、カラー・インクジェットプリンタ等、画像データを与えられて印刷出力することが可能な印刷装置等であって、特に限定されるものではなく、記憶手段(M7)に格納した画像データを出力する。表示手段(M4)は、モニタとして使用可能な画像を表示する手段であって、特に限定されるものではない。また、データを送受信することが可能な手段である通信インターフェース(M5)は、通信プロトコルに限定されるものではない。
【0087】
記憶手段(M7)は、入力手段(M1)、通信インターフェース(M5)、データベース(M6)によって入力された画像データを格納すると共に、編集手段(M2)に必要なデータを記憶するものである。
【0088】
上述した偽造防止印刷物用データの作成装置を用いて、偽造防止印刷物用データを作成する方法について説明する。
【0089】
偽造防止印刷物用データの作成方法の処理フローについて、図13を用いて説明する。
【0090】
ステップ1において、不可視画像(5)の濃度の最大値「m」と最小値「n」を決定し、入力手段(M1)の濃度入力手段(M1c)を用いて直接記憶手段(M7)に格納、もしくは通信用インターフェース(M5)もしくはデータサーバ(M6)から入力手段(M1)により取得し、記憶手段(M7)に格納する。以下、偽造防止画像データが出力されるまで、記憶手段(M7)には適宜必要な画像データは格納されることとし、一般的な情報処理の範囲であることから詳細を省略する。
【0091】
不可視画像(5)について、設定できる濃度の最大値は、作成する偽造防止画像をどのように構成したいかによって異なる。例えば、フルカラーで階調が豊かな画像を作成したい場合であれば、不可視画像(5)の最大の濃度は20%程度が望ましい。20%を超えると偽造防止印刷物(1)が黒被りした印象の強い画像となり、画像のハイライトの再現性が悪くなるからである。逆に、全体的に黒被りした暗い画像を作成したい場合であれば、最大の濃度は20%~75%の範囲で設定することが可能である。最大値を76%以上に設定してしまうと可視画像(4)の階調が黒被りによって視認できなくなり、全体として黒いだけの画像となってしまうことから設定することはできない。
【0092】
不可視画像(5)の濃度の最小値「n」は0%から設定できるが、好ましくは10%程度に設定すると、偽造防止画像(3)を判別具(6)で観察した際、不可視画像(5)が良く観察できる。
【0093】
なお、設定する濃度の最大値「m」と濃度の最小値「n」の値が離れているほど、不可視画像(5)の階調は豊かになる一方、偽造防止画像(3)は黒の色被り成分が増える。したがって、偽造防止画像(3)をどのような画像とするかをあらかじめ想定し、濃度の最大値「m」と濃度の最小値「n」の値を設定する必要がある。
【0094】
ステップ2において、可視画像(4)の基画像となる図14(a)に示された元画像データ「I(x,y)」(8a)が、通信インターフェース(M5)又はデータベース(M6)から可視画像入力手段(M1a)に入力、もしくは直接可視画像入力手段(M1a)により入力され、記憶手段(M7)に格納される。元画像データ(8a)は、横軸(x)と縦軸(y)にマトリックス状の配置された画素からなるビットマップ形式によるもので、例えば24bitRGB画像であり、これを元画像データ「I(x,y)」(8a)とする。なお、元画像データ「I(x,y)」(8a)の画素数及び画像解像度は全く限定されるものではない。また、画像がどのように色分解されているかを示すカラーモードに特に限定はなく、RGB画像でも、CMYK画像でも、Lab画像でも、グレースケール画像でも、モノクロ2値画像でも問題はない。ただしモノクロ2値画像であった場合は、モノクロ2値画像以外に変換する。
【0095】
ステップ3では、元画像データ「I(x,y)」(8a)の全域において、ステップ1で設定した濃度の最大値「m」があるかを確認する。言い換えると、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値がステップ1で記憶手段(M7)に格納した、濃度の最大値「m」以上であるか濃度比較手段(M2d)を用いて判定する。元画像データ「I(x,y)」(8a)の全域とは、元画像データ「I(x,y)」(8a)を構成している画素全てという意味である。濃度比較手段(M2d)は、ステップ1で得た濃度の最大値「m」と、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値を取得し、比較することで、ステップ3の判定を行う。
【0096】
そして、元画像データ「I(x,y)」(8a)の全域に、濃度の最大値「m」がある場合にはステップ5に移行する。濃度の最大値「m」がない場合には、ステップ4に進む。この処理の意図は、元画像データ「I(x,y)」(8a)に不可視画像(5)を埋め込むことが可能な階調領域があるかどうかを判定するものである。
【0097】
仮に、ステップ1で不可視画像(5)の濃度の最大値「m」を20%として設定していたとすると、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値が20%であれば、濃度が最大20%である不可視画像(5)を埋め込むことが可能な階調領域が確保できていると判断し、ステップ5に進む。一方、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値が20%未満であれば、濃度が最大20%である不可視画像(5)を埋め込むことが可能な階調領域が確保されていないと判定しステップ4に進む。
【0098】
ステップ4は、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値を、ステップ1で設定した濃度の最大値「m」に変更した元画像データ「I(x,y)」(8b)を作成する。図14(b)は、濃度の最小値を濃度の最大値「m」に変更した元画像データ「I(x,y)」(8b)を示したもので、元画像データ「I(x,y)」(8a)に対し、出力レベル調整手段(M2a)を用いて出力レベルの調整を行う。
【0099】
24bitRGB画像のRGBそれぞれのチャンネルのグレーレベルは、0~255であり、仮に、不可視画像(5)の濃度の最大値を20%とすると、対応するグレーレベルは204であることから、元画像「I(x,y)」(8a)の出力レベルを調整することで、グレーレベルを0~204に圧縮する。図14(b)に示された元画像データ「I(x,y)」(8b)下部のヒストグラムから分かるとおり、グレーレベル0~204にのみ画素が存在するように圧縮し、調整される。圧縮とは205~255のグレーレベルに存在する画素をなくし、0~204のグレーレベルに振り分けることである。すなわち、元画像データ「I(x,y)」(8b)の濃度の最小値は20%となる。
【0100】
出力レベルの調整についてはヒストグラムを調整する方法の他、元画像データ「I(x,y)」(8a)のトーンカーブを変更し、元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度の最小値を濃度の最大値「m」にすることでも実現される。
【0101】
ステップ5は、ステップ2で得られた24bitRGB画像の元画像データ「I(x,y)」(8a)、またはステップ4で得られた24bitRGB画像の元画像データ「I(x,y)」(8b)において、編集手段(M2)におけるCMYK画像・グレースケール画像変換手段(M2b)を用いてCMYK画像に変換する。一般的なCMYK色分解はカラープロファイルと呼ばれる色変換テーブルに基づいて、印刷物として適切なシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色濃度に変換されるが、この際、ブラック版を生成させない処理とする。例えば、GCR色分解の「墨成分なし」と呼ばれる色分解等を用いる。すなわち、この色分解に求められるのは、赤外性吸収色素を含まないシアン、マゼンタ、イエローの3原色のみで元画像データ「I(x,y)」(8a)または元画像データ「I(x,y)」(8b)に有する色彩を表現できるように処理されることである(図示せず)。こうして色変換された画像は変換前と等色である。ただし、ステップ2で入力された元画像データ「I(x,y)」(8a)がCMYK画像であり、シアン、マゼンタ、イエローの3原色のみで色分解されている画像であれば、ステップ5の処理は省略できる。
【0102】
ステップ6では、不可視画像(5)の基となる図15(a)に示す、第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)を、通信インターフェース(M5)又はデータベース(M6)から不可視画像入力手段(M1b)を用いて記憶手段(M7)に格納、もしく直接不可視画像入力手段(M1b)から入力し、記憶手段(M7)に格納する。第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)は、横軸(x)と縦軸(y)にマトリックス状に配置された画素からなるビットマップ形式からなる画像データであり、基本的に24bitRGB画像である。なお、第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)の画素数及び画像解像度は何ら限定するものではないが、元画像データ「I(x,y)」(8a)または元画像データ「I(x,y)」(8b)と一致していることが望ましい。また、カラーモードに特に限定はなく、RGB画像でも、CMYK画像でも、Lab画像でも、グレースケール画像でも、モノクロ2値画像でも問題はない。ただし、モノクロ2値画像であった場合はグレースケール画像に変換する。
【0103】
ステップ7は、第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)の濃度を最大値「m」、最小値「n」に変更した図15(b)に示す、第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)を作成する。その意図するところは、不可視画像(5)の階調領域を設定することであり、ステップ6で取得された、図15(a)に示す第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)を、編集手段(M2)の出力レベル調整手段(M2a)で出力レベルの調整を行う。出力レベル調整手段(M2a)は一般的な画像処理方法にて実現され、画像のヒストグラムを変更する方法や、画像のトーンカーブを変更する方法等により実現される。24bitRGB画像のRGBそれぞれのチャンネルのグレーレベルは0~255であり、仮に不可視画像(5)の階調域を画線面積率0%~20%に相当するハイライト領域とすると、図15(b)に示された第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)のようにグレーレベルが204~255に圧縮される。
【0104】
次に、編集手段(M2)のCMYK画像・グレースケール画像変換手段(M2b)によって、第1の不可視画像データ「J1´(x,y)」(10)のカラーモードをグレースケール画像に変換する。ただし、ステップ6で入力された画像が、既にグレースケール画像であった場合はカラーモードを変換する必要がないので、この処理は省略できる。
【0105】
ステップ8は、第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)のカラーモードを、編集手段(M2)のCMYK画像・グレースケール画像変換手段(M2b)によって、CMYのみに色分解した、図16に示す、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)と、カラーモードをKのみに色分解した第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)を作成する。
【0106】
図16の第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)をCMYのみで色分解した画像データが、図16に示す、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)である。ステップ5の処理と同様に、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)はブラック版を生成しないように色分解がなされる。第2の画像データ「J(x,y)」(10a)のシアン版のデータは「Cj2(x,y)」であり、マゼンタ版のデータは「Mj2(x,y)」であり、イエロー版のデータは「Yj2(x,y)」である。この第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)は肉眼で視認した場合、仮に、不可視画像(5)を0~20%の画像とすると、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)のシアン版「Cj2(x,y)」とマゼンタ版「Mj2(x,y)」とイエロー版「Yj2(x,y)」の合成色によってグレースケール画像として肉眼で視認され、濃度も0~20%となる。
【0107】
もう一つの画像データとして、第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)をCMYK変換の際、Kのみで色分解した画像データが、図16に示す、第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)である。これはCMYK変換を行う際、ブラック版のみで変換を行うような色分解で行うことで実現される。図16の第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)のブラック版のデータ「KJ3(x,y)」の濃度は、不可視画像(5)を0~20%の画像とすると、0~20%の濃度によって形成される。
【0108】
また、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)と第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)の画像は出力手段(M3)で出力し、肉眼で視認した際、0~20%の濃度のグレースケール画像であり、それぞれ等色として視認される。
【0109】
ステップ9は、編集手段(M2)の濃度調整・合成手段(M2c)を用いて元画像データ「I(x,y)」(8a)から第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)の濃度を差し引く。差し引く画像処理に関しては、濃度を差し引くことができれば方法は限定しない。例えば、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)のCMYそれぞれの版面のデータを選択範囲として指定し、トーンカーブを調整する方法がある。ステップ9の詳細は、図17及び図18を用いて説明する。
【0110】
まず、図17について説明する。図17は、図19に示す偽造防止画像データ「I´(x,y)」(11)のCMYKデータを形成する処理を簡単に示した図である。図17(1)の(8b)は、ステップ6にて元画像データ(8a)を変換した元画像データ「I(x,y)」(8b)のシアン版のデータ「Ci(x,y)」、マゼンタ版のデータ「Mi(x,y)」及びイエロー版のデータ「Yi(x,y)」を示している。
【0111】
図17の(10a)は、ステップ8で作成された第1の不可視画像データ「J´(x,y)」(10)をCMYのみで色分解した第2の不可視画像データ「J(x,y)」のシアン版のデータ「Cj2(x,y)」、マゼンタ版のデータ「Mj2(x,y)」及びイエロー版のデータ「Yj2(x,y)」を示している。
【0112】
元画像データ(8b)から、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)において対応する同色の版面から濃度を差し引くと、図18(a)に示す偽造防止画像データ「I´(x,y)」(11a)のシアン版のデータ「Ci(x,y)」とマゼンタ版のデータ「Mi(x,y)」及びイエロー版のデータ「Yi(x,y)」ができあがる。
【0113】
図18(a)の偽造防止画像データ(11a)はステップ9及び後述するステップ10により画像が合成され、図19に示す完成した偽造防止画像データ「I′(x,y)」(11)のCMYデータの階調を示したものである。
【0114】
ここで、具体的にステップ9の濃度を差し引く処理について、元画像データ(8b)が有する1つの画素を例に挙げて説明する。元画像データ「I(x,y)」(8b)が有する1つの画素を構成するCMYの色が、それぞれシアン25%、マゼンタ80%、イエロー50%であったとする。
【0115】
次に、CMYのみで色分解した第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)も、前述と同じ座標にある画素を構成するCMYの色がそれぞれ14%だったとする。現実にはCMYの色を同じ濃度にした場合、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)と第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)が等色のグレーとして視認されず、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)は茶色がかったグレーに見えてしまうが、今回は説明を簡単にするため、CMYの色を同じ割合で含んだ際は、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)と第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)が等色のグレーとして視認されることとする。実際の第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)のカラーバランスは、出力環境のプロファイルによって左右されるため、適切なグレースケール画像が出るようカラープロファイルを適宜設定する。
【0116】
そして、ステップ9の処理として、同じ座標にある画素に対し、元画像データ「I(x,y)」(8b)を構成する画素の濃度から、第2の不可視画像データ(10a)を構成する画素の濃度をそれぞれの対応する色で差し引く。濃度を差し引いた後の偽造防止画像データ「I´(x,y)」(11)においては、
シアン版を構成する画素は25%-14%=11%
マゼンタ版を構成する画素は80%-14%=66%
イエロー版を構成する画素は50%-14%=36%
となる。これを各画素に対して行うことにより、図18(a)に示す偽造防止画像データ(16)のシアン版、マゼンタ版、イエロー版各色のデータができあがる。以上がステップ9の説明である。
【0117】
ステップ10では、編集手段(M2)の濃度調整・合成手段(M2c)を用いて、元画像データ「I(x,y)」(8b)のブラック版に、第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)のデータを置き換える。置き換える方法は、一般的な画像処理方法で実現され、第3の不可視画像データ「J(x,y)」のブラック版データ「Kj3(x,y)」を、元画像データ「I(x,y)」のブラック版データ「Ki(x,y)」に置き換えることで実現する。
【0118】
図18(b)の(11b)は、ステップ10の処理を行ってできた、図19に示される偽造防止画像データ「I´(x,y)」(11)のブラック版データ「Ki(x,y)」(11b)を示したものである。
以上が、図19に示す偽造防止印刷物データ(11)の作成方法である。
【0119】
なお、ステップ2の元画像データ「I(x,y)」(8a)を取得する段階で、すでにステップ1、ステップ3からステップ5までの処理がなされているような場合や、ステップ8で作製する第2の不可視画像データ「J(x,y)」、第3の不可視画像データ「J(x,y)」が入力手段(M1)から入力、もしくは通信インターフェース(M5)やデータベース(M6)から取得できるのであれば、ステップ9及びステップ10を実行するだけで、偽造防止印刷物データ(11)が作成可能であり、必ずしも全てのステップを実行しなくてもよい。また、ステップ2からステップ5の処理と、ステップ6からステップ8までの処理は同時に行ってもよい。もしくは、ステップ6からステップ8をステップ2からステップ5より先に行ってもよい。
【0120】
偽造防止印刷物(1)のデータが完成した後は、記憶手段(M7)に格納され、そこから出力手段(M3)を用いて出力する。上述したように、出力手段(M3)は赤外吸収色素を含有していないシアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)のインキと、赤外吸収色素を含むブラック(K)のインキによってフルカラーを出力できるカラープリンターであり、プリンター上で任意のスクリーンを設定することで基材(2)に出力し、偽造防止印刷物(1)ができる。
【0121】
なお、本実施の形態では元画像データ「I(x,y)」(8a)全体に不可視画像(5)を埋め込むとしたが、埋め込む領域を選択範囲(S)として指定し、その選択範囲(S)内だけ赤外画像(5)を埋め込む処理をしてもよい。
【0122】
その場合は、ステップ2の後に、元画像データ「I(x,y)」(13a)に不可視画像(5)を埋め込む領域である選択範囲データ(S)を、通信インターフェース(M5)又はデータベース(M6)から入力、もしくは、入力手段(M1)によって選択範囲データ(S)を設定する。選択範囲データ(S)は、元画像データ「I(x,y)」(8a)の中であれば好きな範囲に設定できる。
【0123】
例えば、本実施の形態では、元画像データ「I(x,y)」(8a)全体を選択範囲データ(S)としているが、元画像データ「I(x,y)」(8a)の顔画像以外の背景部を選択してもよい。他にも元画像データ「I(x,y)」(8a)の濃度が20%以上の所のみ不可視画像(5)を入力できる範囲として設定してもよい。
【0124】
このように、画像全体ではなく部分的に選択範囲データ(S)を選択した場合、ステップ3以降は選択範囲データ(S)の範囲にのみ画像処理を適用することで実現できる。
【0125】
偽造防止印刷物(1)のデータの作成用ソフトウェアについて説明する。本実施の形態によるデータの作成方法をコンピュータに実行させるソフトウェアにより、偽造防止印刷物(1)のデータを作成することができる。
【0126】
本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0127】
(実施例1)
本発明の実施例1について、図13図15図16図20図22を用いて説明をする。実施例1では、図22に示す偽造防止画像データI´(x,y)(13)を、プリンターを用いて基材(1)に印刷することで偽造防止印刷物(1)を作成する。基材(1)として一般的な白い色のコート紙(日本製紙株式会社製)を用いた。
【0128】
作成装置は、記憶手段(M7)、編集手段(M2)、表示手段(M4)を有するパソコン、入力手段(M1)であるマウス、キーボード、出力手段(M3)であるプリンター、データベース(M6)からなり、記憶手段(M7)においてはパソコン上のメモリを用い、編集手段(M2)は画像編集ソフトであるphotoshopを用いた。表示手段(M4)はパソコンのモニタ画面である。
【0129】
以下、図13のフローチャートに従い、偽造防止画像データ(13)を作成した。
【0130】
まず、ステップ1として、不可視画像(5)の濃度の最大値「m」を20%、濃度の最小値「n」を0%と設定した。
【0131】
ステップ2として、図20に示す元画像データ「I(x,y)」(12)をデータベース(M6)から入力手段(M1)を用いて入力し、photoshopで元画像データ「I(x,y)」(12)を開いた。元画像データ「I(x,y)」(12)の画像の大きさは531×531Pixelであり、画像解像度は300dpiであり、画像のカラーモードは24bitRGBである。
【0132】
ステップ3として、元画像データ「I(x,y)」(12)の全域に濃度の最大値「20%」があるかを判定した。元画像データ「I(x,y)」(12)の濃度の最小値が「20%」以上であることは、204~255階調、いわゆるハイライト領域に当たる箇所のヒストグラムに画素が存在していないことがわかる。このことから、図13のフローチャートに従い、ステップ4の処理を行わず、ステップ5の処理を行った。
【0133】
ステップ5として、元画像データ「I(x,y)」(12)のカラーモードをブラック版無し(墨版無しと同義)のCMYKに変換した。
【0134】
ステップ6として、図15(a)に示す第1の不可視画像データ 「J(x,y)」 (9)をデータベース(M6)から入力手段(M1)を用いて取得し、photoshop上で第1の不可視画像データ 「J(x,y)」を開いた。画像の大きさは531×531Pixelであり、画像解像度は300dpiであり、画像のカラーモードは24bitRGBである。
【0135】
ステップ7として、第1の不可視画像データ 「J(x,y)」(9)の濃度を、ステップ1で決めた濃度の最大値「20%」、濃度の最小値「0%」になるように、第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)のヒストグラムを調整し、図15(b)に示す第1の不可視画像データ 「J´(x,y)」(10)を作成した。
【0136】
ステップ8として、図16に示す、第1の不可視画像データ 「J(x,y)」(10)のカラーモードをブラック版無しのCMYKに色分解した、第2の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)と、第1の不可視画像データ 「J(x,y)」(10)のカラーモードをブラック版のみ(墨版のみと同義)のCMYKに色分解した、第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10b)を作成した。
【0137】
ステップ9として、元画像データ「I(x,y)」(12)から第2の不可視画像データ「J(x,y)」の濃度を差し引いた。その際、図22に示す偽造防止画像データ「I´(x,y)」(13)のシアン版「Ci(x,y)」、マゼンタ版「Mi(x,y)」及びイエロー版「Yi(x,y)」からなる画像(13a)を図21(a)に示す。
【0138】
ステップ10として、元画像データ「I(x,y)」(17)のブラック版に、第3の不可視画像データ「J(x,y)」(10a)のブラック版にある画像データを置き換えた。その際、偽造防止画像データ「I´(x,y)」(13)のブラック版「Ki(x,y)」(13b)を図21(b)に示す。この処理を終えると、図22に示す偽造防止画像データ「I´(x,y)」(13)が作成できた。
【0139】
その後、出力解像度が1200dpiであり、カラー複合機(RICOH Pro C7100S)及びカラー複合機用のCMYK粉体トナーを用い、200線/インチのAMスクリーンを用いて基材(1)に出力し、偽造防止印刷物(1)を作成した。その際、プリンターは、PC上で設定したCMYKの値をRGB変換せずにそのまま出力する設定で行った。
【0140】
これは、CMYKに色分解されている画像データを出力する際、プリンターで出力する都合上、画像データをRGB画像に色分解した後に、もう一度CMYK変換して出力してしまうプリンターであると、元の画像のCMYKの色と色分解が変わってしまうため、本発明の偽造防止印刷物(1)として出力できないからである。
【0141】
偽造防止印刷物(1)は、肉眼(T1)で視認した際は、可視画像(4)として傘の画像が視認でき、赤外線カメラなどの判別具(6)を用いて視認した際は、不可視画像(5)である顔画像が視認できた。
【0142】
(実施例2)
実施例2は、偽造防止印刷物(1)を作成する際、図23に示す元画像データ「I(x,y)」(14b)の点線部分で示すような選択範囲(S)を設定し、その選択範囲(S)内にのみ、図16に示す第2の不可視画像データ(10a)を差し引き、第3の不可視画像データ(10b)を合成する場合の実施例を説明する。
【0143】
図13に示すフローチャートに従い、実施例1、2と同様、ステップ1にて濃度の最大値「m」を20%、最小値を0%と設定した後、ステップ2にて、図23(a)に示す元画像データ「I(x,y)」(14a)を入力した。元画像データ「I(x,y)」(14a)の画像の大きさは531×531Pixelであり、画像解像度は300dpiであり、画像のカラーモードは24bitRGBである。
【0144】
ステップ3にて、元画像データ「I(x,y)」(14a)の全域に濃度の最大値20%があるかどうか判定した。図23(a)のヒストグラムを見ると204から255までの間、つまり濃度20%から0%の間に画素が存在していることがわかる。このことから元画像データ「I(x,y)」(14a)の全域に濃度の最大値20%が存在しないと判断し、ステップ4に進んでもよいが、ステップ4で元画像データ「I(x,y)」(14a)の濃度を調整した場合、元画像データ「I(x,y)」(14a)全体が、20%黒被りする画像データとなる。
【0145】
しかしながら、元画像データ「I(x,y)」(14a)の本来の階調を維持したい場合、元画像データ「I(x,y)」(14a)全体に20%黒被りさせたくない場合もある。例えば元画像データ「I(x,y)」(14a)は壁にかかっている時計の画像であるが、壁は主に黒成分を含んでおらず、20%黒被りさせてしまうと元々の壁の色が灰色がかってしまう。
【0146】
そのような場合、階調を変更したくない箇所を除いた選択範囲(S)を作成し、その範囲の中のみにステップ3以降の処理を行う方法がある。図23(b)は元画像データ「I(x,y)」(14a)の点線で囲んだ範囲を選択範囲(S)とし、その選択範囲(S)内のヒストグラムを示した図である。ヒストグラムを確認すると204~255の間に画素は存在しておらず、選択範囲(S)内において濃度の最小値は20%であり、ステップ1で設定した濃度の最大値20%が選択範囲(S)内に存在するということになる。
【0147】
選択範囲(S)は任意に決めることが可能であり、例えば作成者が実際に指定してもよいし、データサーバ(M6)から選択範囲(S)を指定できるデータを読み込んでもよい。選択範囲(S)を指定する際、実施例2のように、画像を構成する要素に選択範囲(S)を指定してもよいし、元画像データ「I(x,y)」(14a)の濃度の最小値が20%以上である箇所のみ選択範囲(S)として指定する方法でもよい。その場合、ステップ4で選択範囲(S)内の出力レベルを調整する必要がないため、元画像データ「I(x,y)」(14a)の元々の階調表現が変わらないメリットがある。
【0148】
実施例2では、選択範囲(S)内にステップ1で設定した濃度の最大値20%が選択範囲(S)内に存在することから、ステップ4をとばして、ステップ5に進み、元画像データ「I(x,y)」(14b)のカラーモードをブラック版なしのCMYKカラーモードに変換する。選択範囲(S)内が仮にステップ1で設定した濃度の最大値20%が選択範囲(S)内に存在しなければ、ステップ4の処理について、選択範囲(S)内を対象に行う。
【0149】
ステップ6で、図15(a)に示す、第1の不可視画像データ(9)を読み込む。第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)は、元画像データ「I(x,y)」(14a)と同じく解像度が300dpiで、画像の大きさ531×531Pixel、カラーモードは24bitRGBカラーである。画像取得後、選択範囲(S)を設定した場合の処理として、ステップ7に移る前に、選択範囲(S)以外の画像を第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)から消去する。そのために、選択範囲(S)を第1の不可視画像データ上に読み込み、選択範囲(S)外に存在する画素の濃度を0%に変更する。すると、第1の不可視画像データ「J(x,y)」(9)は、選択範囲(S)の範囲にのみ存在することとなる。
【0150】
その後のステップ7からステップ10までの処理を図13に示すフローチャートに従い処理を行うと、図25に示す偽造防止画像データ「I´(x,y)」(15)が作成できる。偽造防止画像データ「I´(x,y)」(15)のシアン版「Ci(x,y)」、マゼンタ版「Mi(x,y)」及びイエロー版(Yi(x,y))からなるデータ(15a)は、図24(a)に示してあり、偽造防止画像データ(18)のブラック版「Ki(x,y)」(15b)は図24(b)に示すとおりである。
【0151】
その後、図25の偽造防止画像データ「I´(x,y)」(15)を実施例1と同様に、出力解像度が1200dpiであり、カラー複合機(RICOH Pro C7100S)を用い、200線/インチのAMスクリーンを用いて基材(1)に出力し、偽造防止印刷物(1)を作成した。その際、プリンターは、PC上で設定したCMYKの値をRGB変換せずにそのまま出力する設定で行った。
【0152】
偽造防止印刷物(1)は、肉眼(T1)で視認した際は、可視画像(4)として時計の画像が視認でき、赤外線カメラなどの判別具(6)を用いて視認した際は、不可視画像(5)である顔画像が視認できた。
【符号の説明】
【0153】
1 偽造防止印刷物
2 基材
3 偽造防止画像
4 可視画像
5 不可視画像
6 判別具
7 カモフラージュ画像
3a (従来技術による)偽造防止画像
101a (従来技術による)可視画像領域
101b (従来技術による)不可視画像領域
101c (従来技術による)カモフラージュ画像領域
3b (本発明の一実施の形態による)偽造防止画像
201a (本発明の一実施の形態による)可視画像領域
201b (本発明の一実施の形態による)不可視画像領域
201c (本発明の一実施の形態による)カモフラージュ画像領域
3b-1 スクリーンセル1(カモフラージュ画像+可視画像)
3b-2 スクリーンセル2(カモフラージュ画像のみ)
3b-3 スクリーンセル3(赤外画像のみ)
3b-4 スクリーンセル4(可視画像+赤外画像)
3b-5 スクリーンセル5(可視画像+カモフラージュ画像+赤外画像)
c1 スクリーンセル1に形成されるシアンの画線
c2 スクリーンセル2に形成されるシアンの画線
c3 スクリーンセル3に形成されるシアンの画線
c4 スクリーンセル4に形成されるシアンの画線
c5 スクリーンセル5に形成されるシアンの画線
m1 スクリーンセル1に形成されるマゼンタの画線
m2 スクリーンセル2に形成されるマゼンタの画線
m3 スクリーンセル3に形成されるマゼンタの画線
m4 スクリーンセル4に形成されるマゼンタの画線
m5 スクリーンセル5に形成されるマゼンタの画線
y1 スクリーンセル1に形成されるイエローの画線
y2 スクリーンセル2に形成されるイエローの画線
y3 スクリーンセル3に形成されるイエローの画線
y4 スクリーンセル4に形成されるイエローの画線
y5 スクリーンセル5に形成されるイエローの画線
k1 スクリーンセル1に形成されるブラックの画線
k2 スクリーンセル2に形成されるブラックの画線
k3 スクリーンセル3に形成されるブラックの画線
k4 スクリーンセル4に形成されるブラックの画線
k5 スクリーンセル5に形成されるブラックの画線
8a 元画像データ「I(x,y)」
8b 濃度を調整した元画像データ「I(x,y)」
9 第1の不可視画像データ「J(x,y)」
10 濃度を調整した第1の不可視画像データ「J´(x,y)」
10a 第2の不可視画像データ 「J(x,y)」
10b 第3の不可視画像データ 「J(x,y)」
11 偽造防止画像データ「I′(x,y)」
11a 偽造防止画像データ「I′(x,y)」のCMY版による画像
11b 偽造防止画像データ「I′(x,y)」のK版による画像
j3(x,y) 「J(x,y)」におけるK版の画像データ
j2(x,y) 「J(x,y)」におけるC版の画像データ
j2(x,y) 「J(x,y)」におけるM版の画像データ
j2(x,y) 「J(x,y)」におけるY版の画像データ
i(x,y) 元画像データ「I(x,y)」におけるC版の画像データ
i(x,y) 元画像データ「I(x,y)」におけるM版の画像データ
i(x,y) 元画像データ「I(x,y)」におけるY版の画像データ
i(x,y) 元画像データ「I(x,y)」におけるK版の画像データ
12 実施例1における元画像データ「I(x,y)」
13a 実施例1における偽造防止画像データ「I′(x,y)」のCMY版による画像
13b 実施例1における偽造防止画像データ「I′(x,y)」のK版による画像
13 実施例1における偽造防止画像データ「I′(x,y)」
14a 実施例2における元画像データ「I(x,y)」
14b 実施例2における選択範囲を指定した元画像データ「I(x,y)」
15a 実施例2における偽造防止画像データ「I′(x,y)」のCMY版による画像
15b 実施例2における偽造防止画像データ「I′(x,y)」のK版による画像
15 実施例2における偽造防止画像データ「I′(x,y)」
T1 肉眼視
T2 赤外線視
M1 入力手段
M1a 可視画像入力手段
M1b 不可視画像入力手段
M1c 濃度入力手段
M2 編集手段
M2a 出力レベル調整手段
M2b CMYK画像・グレースケール画像変換手段
M2c 濃度調整・変換手段
M2d 濃度比較手段
M3 出力手段
M4 表示手段
M5 通信インターフェース
M6 データベース
M7 記憶手段
図1
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