IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧

<>
  • 特許-嚥下困難者用食品の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】嚥下困難者用食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20240822BHJP
   A23L 29/206 20160101ALI20240822BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240822BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L29/206
A23L7/10 A
A23L3/36 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020095060
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021185839
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 かなえ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】日本食品科学工学会誌,2019年,vol.66, no.8,pp.290-298
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A23L 29/00-29/30
A23L 7/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1)高アミロース米の未α化米粉に、米粉重量に対し2~20倍の重量の水性原料を加えること、
工程2)85~135℃で3分~20分間加熱すること
工程3)米粉重量に対し60重量%以上の重量の糖を加えること、及び
工程4)冷凍すること、
を含む、嚥下困難者用食品の製造方法。
【請求項2】
糖が、単糖、二糖及び糖アルコールから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
糖が、砂糖、グルコース、スクロース、フルクトース及びソルビトールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程3)は、工程1の前から工程2の加熱終了前までの間に少なくとも1回行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
食品が、ゼリー状食品である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
食品が、冷凍食品である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下困難者用食品の製造方法に関し、詳しくは、高アミロース米の米粉を用いた冷凍可能な嚥下困難者用食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では高齢化の進行とともに食べることや飲み込むことに支障のある嚥下困難者が増加しており、軟らかくかつ付着性の低い飲み込みやすい物性の食品、いわゆる嚥下食の需要が高まっている。高アミロース米の米粉は、水を加えて加熱すると付着性の低いゼリー状を呈することから、嚥下食用の食品として期待される。
【0003】
高アミロース米の米粉から調製したゼリー状食品は、市販化、又は家庭における作り置き利用を考慮すると、冷凍等による長期保存後も物性を保持できることが求められる。
【0004】
特許文献1には、高アミロース米の炊飯米を高速せん断することでゲル食品素材を調整できることが記載されている。特許文献2には、アミロース含量が20~30%かつα化度が60~95%の範囲内であるα化米粉が記載されている。特許文献3記載の方法は、高アミロース米を材料とし、低温の湯を加えることで増粘あるいはゲル化特性を付与する食品の製造方法である。非特許文献1及び2には、高アミロース米の米粉に加水し、90~100℃の高温で加熱することにより調製したゲルが、嚥下困難者用食品に適合する物性を示すこと、冷蔵保存が可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-70663号公報
【文献】特開2017-212971号公報
【文献】特開2018-23330号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】芦田ら、高アミロース米の米粉から調製したゲルの物性(2019)日本食品科学工学会誌66(8),290-298(2019.8.15発行)
【文献】芦田ら、高アミロース米「北瑞穂」の米粉から得られるゲルの特性(2015)日本食品科学工学会第62回大会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び3は、米を対象としており、米粉を対象としていない。また、特許文献1~3には、冷凍保存に関するものではなく、冷凍保存した際の物性の変化に関し記載も示唆もされていない。非特許文献1及び2では、調製直後は滑らかな糊状であるものの、冷凍すると解凍した際の離水、スポンジ化等の物性変化が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、高アミロース米の米粉を原料として用いる、冷凍保存後解凍しても、なめらかで物性の変化が少なく嚥下食への利用に適した食品の提供を目的とする。
【0009】
本発明は、下記の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕工程1)高アミロース米の未α化米粉に、米粉重量に対し2~20倍の重量の水性原料を加えること、
工程2)85~135℃で3分~20分間加熱すること、及び
工程3)米粉重量に対し60重量%以上の重量の糖を加えること、
を含む、嚥下困難者用食品の製造方法。
〔2〕糖が、単糖、二糖及び糖アルコールから選ばれる少なくとも1つである、〔1〕に記載の方法。
〔3〕糖が、砂糖、グルコース、スクロース、フルクトース及びソルビトールからなる群より選ばれる1種以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕工程3)は、工程1の前から工程2の加熱終了前までの間に少なくとも1回行う、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕工程4)冷凍する工程をさらに含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕食品が、ゼリー状食品である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の方法。
〔7〕食品が、冷凍食品である、〔5〕又は〔6〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高アミロース米の米粉を原料として用いる、冷凍保存後解凍しても、なめらかで物性の変化が少なく、嚥下食への利用に適した食品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例において、冷凍解凍したゲルをスプーンで押しつぶした様子を示す写真図である。左は比較例1、中央は実施例1、右は実施例2の各サンプルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔食品の製造方法〕
本方法は、下記の工程1~3を含む。通常は、工程1、2の順に行い、工程3は任意の時期に少なくとも1回行う。さらに工程4を含んでもよく、その場合、通常、工程4は工程1~3の終了後に行う。
【0013】
(工程1:加水工程)
工程1では、高アミロース米の米粉に水を加える。
【0014】
-高アミロース米-
工程1で用いる米粉は、高アミロース米を原料とする米粉である。本明細書において高アミロース米とは、見かけのアミロース含有率が24%以上である高アミロース米である。アミロース含有率の上限は特に限定されず、30%を超えてもよい。見かけのアミロース含有率は、ヨウ素呈色法によって求めることができる。
【0015】
高アミロース米は、通常、ワキシー遺伝子(アミロースを合成する澱粉粒結合型澱粉合成酵素Iをコードする遺伝子)がWxa型であるものが多いが、Wxb型のものでも25%程度の高アミロース含有率を示す品種も存在し、これらも本明細書におけるアミロース米に包含される。国内の高アミロース米の品種としては、「北瑞穂」(主に北海道向け);「亜細亜のかおり」、「越のかおり」、「あみちゃんまい」、「夢十色」(主に東日本向け);「ふくのこ」「ミズホチカラ」(西日本向け)等が挙げられるが、これらに限定されず、外国の多種多様な高アミロース米品種でもよい。また、高アミロース米は、ジャポニカ種、インディカ種及びジャバニカ(ジャパニカ)種のいずれでもよい。
【0016】
-未α化米粉-
本明細書において未α化米粉は、α化(糊化)米粉以外の米粉である。未α化米粉としては、例えば、上新粉、新粉、並新粉、上用粉が挙げられる。米粉の粒度は、特に限定されない。高アミロース米の未α化米粉は、1種単独でもよいし、高アミロース米の品種、収穫年度、栽培方法、米粉の製造方法、物性(例えば粒度)が異なる2以上の組み合わせでもよい。
【0017】
-水性原料-
水性原料としては、例えば、水が挙げられる。水は、水道水、天然水、ミネラルウォーター、精製水(例えば、イオン交換水、蒸留水)、その他の食品用に用いられる水のいずれでもよい。水以外の水性原料としては、液状の食品又は食品原料であればよく、例えば、牛乳、豆乳、果汁、乳飲料、茶、コーヒー、出汁、スープ及びこれらの水溶液が挙げられる。
【0018】
-加水量-
加水量は、米粉の重量に対し通常2倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは8倍以上である。これにより、均一なスラリーを得ることができる。上限は、特に限定されないが、通常20倍以下、好ましくは16倍以下、より好ましくは12倍以下である。よって、加水量は通常は2~20倍、好ましくは5~16倍、より好ましくは8~12倍である。
【0019】
加水時、又は加水後加熱(工程2)前に、予め撹拌(例えば、手作業による撹拌、機械による撹拌)してもよい。
【0020】
(工程2:加熱工程)
工程2では、工程1で得られる米粉と水の組成物を加熱する。加熱処理の条件は、米粉の原料である高アミロース米(例えば、品種、栽培方法)により適宜決定できるが、一例を挙げると以下のとおりである。
【0021】
-温度-
加温処理の際の温度は、通常、85℃超、好ましくは90℃以上、好ましくは93℃以上である。これにより、粘度を十分に上昇させ、糊化させることができる。上限は、通常135℃以下である。従って、温度は、通常、85℃を超える温度、好ましくは85~135℃、より好ましくは90~120℃、よりさらに好ましくは93~100℃である。
【0022】
-加熱時間-
加熱処理の時間は、通常3分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは8分以上である。上限は、通常20分以下であればよく、特に限定されない。
【0023】
-加熱の方法-
加熱の方法は特に限定されず、例えば、恒温槽、鍋、電磁調理器(例えば、電子レンジ)等を用いて工程1で得られた組成物を直接加温する方法、組成物を予め小容器又は袋(例えば、パウチ袋)に入れ、これを湯煎する方法が挙げられ、作業性が良好なため後者が好ましい。加温処理は、組成物を撹拌(例えば、手作業による撹拌、機械による撹拌)しながら行ってもよい。
【0024】
加熱終了後は、通常は常温(例えば、約20℃(15~25℃))まで冷却する。
【0025】
(工程3:糖添加工程)
工程3では、系内に糖を添加する。これにより、冷凍時に氷柱の成長を抑えることが可能となり、解凍後もゲル物性を保ったままの食品が製造できる。
【0026】
-糖-
糖としては、例えば、単糖(例えば、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース、フルクトース(果糖))、二糖(例えば、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース)、オリゴ糖(例えば、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール)、砂糖(例えば、上白糖、三温糖、赤糖、黒糖、グラニュー糖)が挙げられる。
【0027】
-糖の添加量-
糖の添加量は、米粉重量に対し通常60重量%以上、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは75重量%以上である。これにより、凍結解凍後にもゲルが維持され、触れてもゲルが崩れにくくなり得る。上限は、100重量%でもよく、通常は95重量%以下である。
【0028】
冷却して得られる組成物は、付着性の低いゼリー状を呈し得るので、嚥下困難者(例えば、高齢者、病人、障がい者)のための食品として好適に利用できる。嚥下食は均一な物性が求められるため、高アミロース米の米粉を用いた嚥下食の調製時には、加熱時に手作業または機械で撹拌したり、袋に入れて加熱して冷却前に袋を揉んで均一化したりする必要がある。
【0029】
(工程4:冷凍工程)
工程4では、工程1~3で得られる米粉の水分散液を冷凍する。工程1~3を経て得られる米粉の水スラリーは、安定して粘度を維持でき、冷凍後解凍しても離水が生じにくくスポンジ状になる等の劣化が抑制され品質を維持できる。そのため工程4を経ることにより、長期保存(例えば、冷凍した状態で半年以上)が可能である。冷凍処理の温度は、通常、-18℃以下である。冷凍処理の時間は、水分散液が固体となるまでの時間以上であればよい。
【0030】
(米粉及び水以外の他の原料)
食品への風味付け、保存性向上等の目的のため、米粉、水性原料以外の他の原料を用いてもよい。例えば、塩、胡椒、油脂、動物性クリーム(生クリーム、ホイップなど)、スキムミルク、植物性(例:豆乳、ココナツ、アーモンドなどの豆)クリーム、植物性タンパク(豆類など)、植物性デンプン(コーンスターチ、タピオカスターチなど)、穀物・野菜・果実類、卵、ココア、果汁(レモン果汁など)、タンパク質(肉、魚、それらの加工品、大豆等植物加工品)、酒、香料、香辛料、甘味料(砂糖、グラニュー糖、ハチミツなど)、豆乳、添加剤(酸味料、着色料、保存料、膨化剤(発泡剤)など)、及びこれらから選ばれる2以上の組み合わせが挙げられる。
他の原料は、工程1~3のいずれの段階で系内に添加してもよい。例えば、米粉に添加、加温処理の前に添加、加温処理の間に添加、加温処理後(冷却前)に添加、糖と共に添加、及びこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。添加後は必要に応じて撹拌してもよい。
【0031】
(嚥下困難者用食品)
上記工程1~3、並びに必要に応じて行う工程4を経て、食品が得られる。食品は、ゲル状を示し、嚥下困難者用食品として有用である。食品は、消費者庁「えん下困難者用食品の許可基準」(平成30年8月8日 消食表第403号)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_180808_0005.pdf)嚥下困難者用食品の規格(許可基準I~IIIのいずれか)を満たすことが好ましく、許可基準IIIを満たすことが好ましく、許可基準IIを満たすことがより好ましく、許可基準Iを満たすことがさらに好ましい。具体的には、常温で均質であり、硬さ(一定速度で圧縮したときの抵抗、以下同じ)が3×102~2×104、付着性が1.5×103以下であることが好ましく、硬さが1×103~1.5×104N/m2、付着性が1×103J/m3以下、凝集性が0.2~0.9であることがより好ましく、硬さが2.5×103~1×104、付着性が4×102以下がさらに好ましい。食品としては、例えば、ゼリー、ウイロウ、羊羹、ババロアが挙げられる。
【実施例
【0032】
参考例1(高アミロース米の米粉から調製できるゼリー状食品の特性)
高アミロース米「北瑞穂」の米粉(見かけのアミロース含有率:30%)2.5gに10倍量の水を加えて撹拌しながら95℃まで加熱し、10分間保持した後、ステンレスシャーレに移して粗熱を取った。その後、4℃下で冷蔵してゲルを得た。ゲルの外観はゼリー状であり、スプーンで押すと滑らかにつぶれる質感を示した。ゲルの物性を消費者庁「えん下困難者用食品の許可基準」の「えん下困難者用食品(とろみ調整用食品を含む。)の試験方法」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/food_labeling_cms206_200401_04-3.pdf)に基づき硬さ、付着性、凝集性を以下の手順で測定した。試料を直径40mm、高さ15mmの容器に高さ15mmに充填し、直線運動により物質の圧縮応力を測定することが可能な装置(クリープメーターRE2-33005C、山電)を用いて、直径20mm、高さ8mmの樹脂製のプランジャーを用い、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮測定した。測定温度は常温(20±2℃)とした。2回圧縮して得られる抵抗値のチャートから硬さ、付着性、凝集性を読み取った。また、ゲルを容器から取り出し、外観、並びにスプーンと指で完全に押しつぶした際のばらけ具合を4段階で評価した。結果を表1に示した。表1から明らかなように、本例で得られたゲルは許可基準(II)の範囲内の物性を示し、スプーンで押すと滑らかにつぶれた。
【0033】
比較例1
参考例1と同じ高アミロース米「北瑞穂」の米粉2.5gに、10倍量の水を加えて撹拌しながら95℃まで加熱し、10分間保持した後、ステンレスシャーレに入れて粗熱を取った。その後、-30℃で冷凍した。冷凍したゲルを30℃下で解凍したところ、スポンジ状になり離水し、スプーンで押すとバラバラに砕けた(図1左)。これは一旦4℃に冷却して得たゲルを-30℃に冷凍した場合でも、解凍の条件が室温下や70℃、湯煎であっても同様であった。30℃で解凍したゲルの物性を嚥下困難者用食品の許可基準に基づき測定(参考例1と同様の条件)した結果を表1に示す。冷凍解凍によりバラバラになったゲルは硬さの大幅な上昇が認められた。
【0034】
実施例1~12及び比較例2~13(糖類の添加)
参考例1と同じ米粉2.5gに10倍量の水を加えたものに、各種の糖を添加して撹拌しながら95℃まで加熱し、10分間保持した後、ステンレスシャーレに移して粗熱を取った。その後、4℃下で冷蔵してゲルを得た。また、粗熱を取った後に-30℃下で冷凍した後に、30℃下で解凍し、さらに常温(20℃)に戻した。嚥下困難者用食品の許可基準に基づき測定した4℃で保存および冷凍解凍したゲルの物性(参考例1と同様に測定)を表1に示す。
【0035】
糖の添加量20%、40%の場合と比較して、60%、80%の場合には、硬さ、凝集性、付着性ともバランスよく良好であり、ゲル状を示していた。上白糖を用いた場合、米粉に対し当該重量の60%重量を添加した場合にゲル状を示すが押すとややばらける傾向にあったが(図1中央)、当該重量の80%重量を添加した場合にはゲル状を示しスプーンで押してもばらけることがなく滑らかにつぶれる質感を示した(図1右)。グルコース(ぶどう糖)・スクロース(ショ糖)・マルトース(麦芽糖)を添加する場合は60重量%以上、フルクトース(果糖)・ソルビトールの場合は80重量%以上の量を添加することで、冷凍解凍後も硬さはほぼ変わらず、スプーンで押すとばらけることがなく滑らかにつぶれるゲルになった(表1)。比較例でみられたバラバラになったゲルに認められるような硬さの大幅な上昇は、実施例におけるなめらかなゲルでは認められなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
(表1の脚注)
◎:より滑らかなゲル状;〇:滑らかなゲル状;△:やや滑らかなゲル状;×:ゲル状を示す場合もあるが押すとばらける
【0038】
比較例14(食塩の添加)
参考例1において、調整後ゲルの総重量の0.3%重量の食塩(米粉2.5gに対し0.0825g)を添加した。4℃下で冷蔵したゲルおよび-30℃下冷凍後に解凍したゲルを、常温(20℃)に戻して嚥下困難者用食品の許可基準に基づき物性を測定(参考例1と同様に測定)した(表2)。冷蔵したゲルはゼリー状を示しスプーンで押すと滑らかにつぶれたが、冷凍解凍後のゲルはスポンジ状を示しスプーンで押すとバラバラに砕けた(表2)。
【0039】
【表2】
図1