(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240822BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
(21)【出願番号】P 2020191017
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】広城 幸吉
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133551(JP,A)
【文献】米国特許第06124214(US,A)
【文献】特開平11-179304(JP,A)
【文献】特開平08-064566(JP,A)
【文献】特開平10-223585(JP,A)
【文献】特開2020-077813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸処理液を貯留するように構成された処理槽と、
シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持して、前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬するように構成された保持部材と、
前記基板が前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で前記保持部材を振動させるように構成された振動部とを備え
、
前記保持部材は、
水平方向に沿って延びると共に、前記基板を支持するように構成されたアーム部と、
上下方向に沿って延びる背板部とを含み、
前記背板部は、
前記処理槽のリン酸処理液による前記基板の処理中にリン酸処理液の液面よりも上方に露出する上端部と、
前記アーム部の一端部が接続される下端部とを含み、
前記振動部は、前記上端部に取り付けられており、前記背板部を介して振動を前記アーム部に伝達するように構成されている、基板処理装置。
【請求項2】
前記上端部は、上端面から上方に突出した突出部を含み、
前記振動部は、前記突出部の外表面に沿って取り付けられている、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記保持部材は、水平方向に沿って延びると共に、前記基板を支持するように構成された別のアーム部を含み、
前記別のアーム部の一端部は、前記背板部の前記下端部と接続されており、
前記振動部は、
前記上端部のうち前記アーム部に対応する部分に取り付けられた第1の振動部と、
前記上端部のうち前記別のアーム部に対応する部分に取り付けられた第2の振動部とを含み、
前記第1の振動部は、前記背板部を介して振動を前記アーム部に伝達するように構成されており、
前記第2の振動部は、前記背板部を介して振動を前記別のアーム部に伝達するように構成されている、請求項
1又は
2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の振動部は、第1の周波数で前記アーム部を振動させるように構成されており、
前記第2の振動部は、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で前記別のアーム部を振動させるように構成されている、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の振動部は、前記第2の振動部が前記別のアーム部を振動させるのとは異なるタイミングで、前記アーム部を振動させるように構成されている、請求項
3又は
4に記載の装置。
【請求項6】
前記保持部材は、上下方向に沿って延びる別の背板部をさらに含み、
前記別の背板部は、
前記処理槽のリン酸処理液による前記基板の処理中にリン酸処理液の液面よりも上方に露出する別の上端部と、
前記アーム部の他端部が接続される別の下端部とを含み、
前記振動部は、前記別の上端部に取り付けられた第3の振動部を含む、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記下端部は、前記振動部によって前記背板部に付与された振動を前記アーム部に向けて反射させるように構成された反射面を含む、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記反射面は平坦面又は曲面を含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記反射面は第1の平坦面を含み、
前記第1の平坦面と水平面とがなす角θが式1を満たす、請求項
7又は
8に記載の装置。
35°≦θ≦55° ・・・(1)
【請求項10】
前記反射面は、前記第1の平坦面の上方に位置する第2の平坦面をさらに含み、
前記第2の平坦面と水平面とがなす角φが式2を満たす、請求項
9に記載の装置。
θ<φ<90° ・・・(2)
【請求項11】
前記処理槽内のリン酸処理液におけるシリコン濃度を測定するように構成された測定部と、
制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記測定部によって測定されたシリコン濃度が所定の閾値以上となった場合に、前記振動部を駆動するように構成されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
リン酸処理液を貯留するように構成された処理槽と、
シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持して、前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬するように構成された保持部材と、
前記基板が前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で前記保持部材を振動させるように構成された振動部と、
前記処理槽内のリン酸処理液におけるシリコン濃度を測定するように構成された測定部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記測定部によって測定されたシリコン濃度が所定の閾値以上となった場合に、前記振動部を駆動するように構成されている、基板処理装置。
【請求項13】
前記振動部は、前記保持部材を20kHz以上の周波数で超音波振動させるように構成されている、請求項1
~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記保持部材は、ビッカース硬さが1000HV以上の材質によって構成されている、請求項1
~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記保持部材は、石英、アモルファルカーボン及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの材質によって構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記振動部は、発振周波数を所定の範囲内で時間変化させるように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持部材が保持する第1の工程と、
リン酸処理液を貯留した処理槽に前記保持部材を投入して、前記基板を前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬させる第2の工程と、
前記基板が前記処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で、振動部によって前記保持部材を振動させる第3の工程とを含
み、
前記第3の工程は、前記処理槽内のリン酸処理液におけるシリコン濃度が所定の閾値以上となった場合に、前記保持部材を振動させることを含む、基板処理方法。
【請求項18】
請求項
17に記載の方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板に形成された配線パターンの損傷を抑制し且つ基板に付着したパーティクルを除去するための基板洗浄装置を開示している。当該基板洗浄装置は、洗浄液を貯留するように構成された洗浄槽と、洗浄槽の底部外面に取り付けられた振動子と、洗浄槽内において基板が洗浄液に浸漬された状態で基板を保持するように構成された保持部材とを含む。
【0003】
振動子は、駆動源によって超音波振動するように構成されている。振動子が振動すると、洗浄槽の底部を介して、洗浄槽内の洗浄液に超音波が伝播する。これにより、超音波によって洗浄液中にキャビテーションが発生し、保持部材によって洗浄液内に保持されている基板に付着したパーティクルが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数のシリコン窒化膜(SiN)及び多数のシリコン酸化膜(SiO2)が積層された基板をリン酸処理液に浸漬して、シリコン窒化膜を選択的にエッチングする処理が知られている。シリコン窒化膜のエッチングの進行に伴い、リン酸処理液中のシリコン濃度が高まり、シリコン酸化膜上にシリコン酸化物が析出する場合が考えられる。
【0006】
そこで、本開示は、シリコン酸化物の析出を効果的に抑制することが可能な基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板処理装置の一例は、リン酸処理液を貯留するように構成された処理槽と、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持して、処理槽のリン酸処理液中に浸漬するように構成された保持部材と、基板が処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で保持部材を振動させるように構成された振動部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、シリコン酸化物の析出を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、基板処理システムの一例を示す上面図である。
【
図2】
図2は、基板処理システムにおいて処理される基板の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、液処理装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の液処理装置の内槽及び保持部を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5は、保持部の一例を模式的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、基板処理システムの主要部の一例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、基板のエッチング処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、シリコン窒化膜がエッチングされる様子を説明するための図である。
【
図11】
図11は、保持部の他の例を模式的に示す正面図である。
【
図12】
図12は、保持部の他の例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、保持部の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、保持部の他の例の一部を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[基板処理システムの構成]
まず、
図1~
図8を参照して、基板処理システム1の構成について説明する。基板処理システム1は、
図1に示されるように、キャリア搬入出部2と、ロット形成部3と、ロット載置部4と、ロット処理部5と、コントローラCtr(制御部)とを含む。
【0012】
キャリア搬入出部2は、ステージ2aと、載置台2bと、搬送機構2cと、ストック2dとを含む。ステージ2aは、複数のキャリア6を載置可能に構成されている。載置台2bは、一つのキャリア6を載置可能に構成されている。搬送機構2cは、ステージ2aと載置台2bとの間に位置している。搬送機構2cは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、ステージ2a、載置台2b及びストック2dの間でキャリア6を搬送するように構成されている。ストック2dは、キャリア6を一時的に保管するように構成されている。
【0013】
ここで、キャリア6は、複数(例えば25枚)の基板Wを水平姿勢で上下に並べて収容可能に構成されている。本明細書において、水平姿勢とは、基板Wの主面が水平方向に沿った状態の姿勢をいうものとする。基板Wは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。基板Wは、一部が切り欠かれた切欠部を有していてもよい。切欠部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。基板Wの直径は、例えば200mm~450mm程度であってもよい。
【0014】
基板Wは、半導体装置(例えば、3D NANDメモリ等)の製造過程における中間体であってもよい。基板Wは、
図2に例示されるように、半導体基板(シリコンウエハ)W1と、複数のシリコン窒化膜(SiN)W2と、複数のシリコン酸化膜(SiO
2)W3とを含んでいてもよい。複数のシリコン窒化膜W2と複数のシリコン酸化膜W3とは、半導体基板W1上において交互に積層されており、積層体W4を構成していてもよい。積層体W4は、積層体W4の積層方向に延びるように積層体W4に埋設された複数のピラーW5と、積層体W4の積層方向に延びるように積層体W4を貫通する複数の開口部W6とを含んでいてもよい。
【0015】
ロット形成部3は、1つ又は複数のキャリア6から複数の基板Wを取り出して、一つのロットを形成するように構成された基板搬送機構3aを含む。当該一つのロットを構成する複数(例えば50枚)の基板Wは、ロット処理部5において同時に処理される。基板搬送機構3aは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの搬送中に、水平姿勢と垂直姿勢との間で基板Wの姿勢を変更させるように構成されている。本明細書において、垂直姿勢とは、基板Wの主面が鉛直方向に沿った状態の姿勢をいうものとする。
【0016】
基板搬送機構3aは、例えば、載置台2bに載置されているキャリア6から一つの基板Wを取り出して、その姿勢を垂直姿勢に変更し、垂直姿勢の基板Wをロット載置部4に搬送する。基板搬送機構3aは、これを繰り返して、ロット載置部4において一つのロットを形成する。一方、基板搬送機構3aは、例えば、ロット載置部4に載置されているロットから一つの基板Wを取り出して、その姿勢を水平姿勢に変更し、水平姿勢の基板Wを載置台2bに載置されているキャリア6に搬送する。基板搬送機構3aは、これを繰り返して、ロットを構成する全ての基板Wを一つ又は複数のキャリア6内に収納する。
【0017】
ロット載置部4は、ロット形成部3とロット処理部5との間で搬送されるロットを一時的に載置する載置台4aを含む。載置台4aは、ロット処理部5で処理される前のロットを載置するように構成された処理前ロット載置台4bと、ロット処理部5で処理された後のロットを載置するように構成された処理後ロット載置台4cとを含んでいてもよい。
【0018】
ロット処理部5は、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚の基板Wを1ロットとして、エッチング、洗浄、乾燥などの処理を行うように構成されている。ロット処理部5は、搬送機構7と、乾燥処理装置8と、洗浄処理装置9と、複数の液処理装置10(基板処理装置)とを含む。
【0019】
搬送機構7は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、ロット載置部4、乾燥処理装置8、洗浄処理装置9及び複数の液処理装置10の間で、ロットの搬送を行うように構成されている。搬送機構7は、レール7aと、移動体7bと、保持体7cとを含む。レール7aは、ロット載置部4とロット処理部5との間を延びるように配置されている。移動体7bは、レール7aに沿って移動可能に構成されている。保持体7cは、移動体7bに設けられており、ロット(垂直姿勢で前後に配置された複数の基板W)を保持するように構成されている。
【0020】
乾燥処理装置8は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、乾燥用の処理ガス(例えば、イソプロピルアルコールなど)を用いて、基板Wの乾燥処理を行うように構成されている。洗浄処理装置9は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、洗浄用の処理液及び乾燥ガスを用いて、保持体7cの洗浄処理を行うように構成されている。
【0021】
液処理装置10は、基板Wのシリコン窒化膜W2を選択的にエッチング処理するように構成されている。液処理装置10は、
図3に示されるように、処理槽20と、保持部30と、循環部40と、リン酸水溶液供給部50と、シリコン供給部60と、純水供給部70と、測定部80とを含む。
【0022】
処理槽20は、内槽21と、外槽22とを含む。内槽21は、リン酸処理液Lを貯留するように構成されている。内槽21の上部は上方に向けて開放されている。そのため、内槽21のリン酸処理液Lに基板Wを上方から浸漬することが可能である。外槽22は、内槽21を取り囲むように設けられている。外槽22は、内槽21から溢れて流入したリン酸処理液Lを一時的に貯留するように構成されている。
【0023】
保持部30は、
図3~
図6に示されるように、保持部材100と、振動部200とを含む。保持部材100は、搬送機構7から1つのロットを受け取り、当該ロットを構成する複数の基板Wを垂直姿勢で保持するように構成されている。
【0024】
保持部材100は、図示しない駆動機構に接続されている。保持部材100は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、上下動するように構成されている。保持部材100は、例えば、保持している複数の基板Wが内槽21のリン酸処理液Lに浸漬される降下位置と、保持している複数の基板Wが内槽21の上方に位置する上昇位置との間で移動可能である。降下位置において、保持部材100によって保持されている複数の基板Wは、内槽21のリン酸処理液Lによってエッチング処理される。一方、上昇位置において、保持部材100によって保持されている複数の基板Wは、搬送機構7による授受が行われる。
【0025】
保持部材100は、ビッカース硬さが1000HV以上の材質によって構成されていてもよい。保持部材100は、例えば、石英、アモルファルカーボン及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの材質によって構成されていてもよい。
【0026】
保持部材100は、背板部110と、複数のアーム部120とを含む。背板部110は、上下方向に沿って延びる平板状を呈している。背板部110は、
図5及び
図6に示されるように、上端部111と、下端部112とを含む。
【0027】
上端部111は、保持部材100が降下位置に位置する状態において、内槽21のリン酸処理液Lの液面よりも上方に露出する部分である。すなわち、保持部材100に保持されている複数の基板Wが内槽21のリン酸処理液Lによってエッチング処理されているときに、上端部111は、内槽21のリン酸処理液Lの液面よりも上方に露出している。
【0028】
下端部112は、
図5に示されるように、正面から見て、中央部が下方に向けて突出した山型状を呈していてもよい。下端部112は、
図5及び
図6に示されるように、複数のアーム部120の一端部が接続される接続部としても機能する。下端部112は、
図6に示されるように、振動部200によって背板部110に付与された振動(詳しくは後述する)をアーム部120に向けて反射させるように構成された反射面Sを含んでいてもよい。反射面Sは、振動の反射対象となる少なくとも一つのアーム部120に対応して設けられていてもよいし、下端部112の幅方向全体に沿って延びるように設けられていてもよい。
【0029】
反射面Sは、アーム部120側に向けて傾斜した曲面であってもよいし、アーム部120側に向けて傾斜した平坦面であってもよい。反射面Sが平坦面である場合、
図6に例示されるように、水平面(アーム部120の延在方向)と反射面Sとがなす角θが、35°≦θ≦55°の範囲を満たすように設定されていてもよい。
【0030】
複数のアーム部120はそれぞれ、下端部112に接続されており、水平方向に沿って延びている。複数のアーム部120は、
図4及び
図5に示されるように、背板部110の幅方向において所定間隔をもって並んでいる。
図4及び
図6に示されるように、アーム部120の上面には、アーム部120の延在方向に並ぶ複数の凹溝120aが略等間隔で設けられている。垂直姿勢の基板Wの周縁部が凹溝120a内に配置されることにより、垂直姿勢を維持したまま、基板Wがアーム部120によって保持される。すなわち、アーム部120は、垂直姿勢の複数の基板Wを、アーム部120の延在方向に整列させた状態で支持可能である。
【0031】
図4及び
図5に示されるように、複数のアーム部120は、アーム部121と、アーム部122と、アーム部123と、アーム部124とを含んでいてもよい。アーム部121~124は、背板部110の幅方向に並んでいる。
図5に示されるように、アーム部121,122は、背板部110の幅方向において、背板部110の中央部に位置している。アーム部123,124は、背板部110の幅方向において、背板部110の側縁部で且つアーム部121,122よりも上方に位置している。基板Wは、アーム部121~124のうち少なくともいずれか2つと常に当接していてもよい。アーム部121~124のうち常には基板Wと当接しないアーム部は、基板Wの傾きや倒れを防止する補助的なアーム部として機能してもよい。
【0032】
振動部200は、保持部材100を振動させるように構成されている。振動部200は、20kHz以上の周波数で保持部材100を超音波振動させるように構成されていてもよい。振動部200は、
図3~
図6に示されるように、複数の振動子210と、複数の発振器220とを含んでいてもよい。
【0033】
複数の振動子210は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって構成された圧電素子であってもよい。複数の振動子210は、背板部110の上端部111に取り付けられている。複数の振動子210は、例えば、上端部111の上端面に取り付けられていてもよい。
図4~
図6に示されるように、複数の振動子210は、振動子211と、振動子212とを含んでいてもよい。
【0034】
振動子211は、上端部111のうち、アーム部121の鉛直上方に対応する部分に配置されていてもよい。振動子211は、例えば、上端部111の上端面のうち、アーム部121の鉛直上方に対応する領域に配置されていてもよい。そのため、振動子211が駆動すると、振動子211の振動は、背板部110を通じて反射面Sで反射し、アーム部121に伝達する。振動子212は、上端部111のうち、アーム部122の鉛直上方に対応する部分に配置されていてもよい。振動子212は、例えば、上端部111の上端面のうち、アーム部122の鉛直上方に対応する領域に配置されていてもよい。そのため、振動子212が駆動すると、振動子212の振動は、背板部110を通じて反射面Sで反射し、アーム部122に伝達する。
【0035】
複数の発振器220は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、対応する振動子210を所定の発振周波数で振動させるように構成されている。複数の発振器220は、例えば、対応する振動子210に交流電圧を印可するように構成された交流電源であってもよい。
【0036】
複数の発振器220は、
図4~
図6に示されるように、発振器221と、発振器222とを含んでいてもよい。発振器221は、振動子211に接続されており、振動子211を所定の周波数で振動させるように構成されていてもよい。発振器222は、振動子212に接続されており、振動子212を所定の周波数で振動させるように構成されていてもよい。
【0037】
ここで、
図6を参照して、発振器221によって振動子211が駆動されたとき、振動子211の振動が保持部材100を伝達する様子を説明する。振動子211が駆動すると、縦波の振動が、背板部110内を上端部111から下端部112へと、指向性をもって伝達する(
図6の矢印Ar1参照)。当該縦波は、反射面Sにおいて反射し横波に変換された後、アーム部121に伝達する。その後、当該横波は、アーム部121内をアーム部121の基端部から先端部へと伝達する(
図6の矢印Ar2参照)。これに伴い、アーム部121に支持されている複数の基板Wが振動される。
【0038】
図示はしていないが、発振器222によって振動子212が駆動されたときも、発振器221によって振動子211が駆動されたときと同様である。すなわち、振動子212が駆動すると、縦波の振動が、背板部110内を上端部111から下端部112へと、指向性をもって伝達する。当該縦波は、反射面Sにおいて反射し横波に変換された後、アーム部122に伝達する。その後、当該横波は、アーム部122内をアーム部122の基端部から先端部へと伝達する。これに伴い、アーム部122に支持されている複数の基板Wが振動される。
【0039】
循環部40は、外槽22内のリン酸処理液Lを内槽21に供給するように構成されている。循環部40は、
図3に示されるように、ノズル41と、循環路42と、ポンプ43と、ヒータ44と、フィルタ45とを含む。
【0040】
ノズル41は、内槽21の下部に配置されており、リン酸処理液Lを内槽21内に吐出するように構成されている。循環路42は、外槽22とノズル41とを接続する配管である。循環路42には、上流側(外槽22側)から順に、ポンプ43、ヒータ44及びフィルタ45が設けられている。
【0041】
ポンプ43は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、外槽22から内槽21へと循環路42を通じてリン酸処理液Lを圧送するように構成されている。ヒータ44は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、リン酸処理液Lを所定の設定温度に加熱するように構成されている。フィルタ45は、リン酸処理液Lに含まれている異物(例えば、パーティクルなど)を捕集するように構成されている。
【0042】
リン酸水溶液供給部50は、供給源51と、供給路52と、バルブ53とを含む。供給源51は、リン酸(H3PO4)水溶液を貯留するように構成されている。供給路52は、供給源51と外槽22とを接続する配管である。供給路52には、バルブ53が設けられている。バルブ53は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて開度が制御され、供給路52を流体的に開放又は閉鎖するように構成されている。コントローラCtrがバルブ53の開度を調節することにより、供給路52を流通するリン酸水溶液の流量が調節される。バルブ53の開放時、リン酸水溶液は、供給源51から供給路52を通じて外槽22へと供給される。
【0043】
シリコン供給部60は、供給源61と、供給路62と、バルブ63とを含む。供給源61は、シリコン(Si)含有化合物水溶液を貯留するように構成されている。供給路62は、供給源61と外槽22とを接続する配管である。供給路62には、バルブ63が設けられている。バルブ63は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて開度が制御され、供給路62を流体的に開放又は閉鎖するように構成されている。コントローラCtrがバルブ63の開度を調節することにより、供給路62を流通するシリコン含有化合物水溶液の流量が調節される。バルブ63の開放時、シリコン含有化合物水溶液は、供給源61から供給路62を通じて外槽22へと供給される。
【0044】
純水供給部70は、供給源71と、供給路72と、バルブ73とを含む。供給源71は、純水(DIW)を貯留するように構成されている。供給路72は、供給源71と外槽22とを接続する配管である。供給路72には、バルブ73が設けられている。バルブ73は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて開度が制御され、供給路72を流体的に開放又は閉鎖するように構成されている。コントローラCtrがバルブ73の開度を調節することにより、供給路72を流通する純水の流量が調節される。バルブ73の開放時、純水は、供給源71から供給路72を通じて外槽22へと供給される。
【0045】
リン酸水溶液と、シリコン含有化合物水溶液とが外槽22に供給されると、これらが混合され、エッチング液が生成される。当該エッチング液は、シリコン窒化膜W2を選択的にエッチングするように構成されている。リン酸水溶液と、シリコン含有化合物水溶液とは、外槽22とは別体の混合タンクにおいて混合され、エッチング液が生成されてもよい。当該エッチング液は、混合タンクから外槽22に供給されてもよい。エッチング液は、外槽22において純水とも混合されることにより、シリコン濃度及びリン酸濃度が調節される。エッチング液は、図示しない温調部(例えばヒータなど)によって、所定温度に調節されてもよい。
【0046】
シリコン濃度は、既存のリン酸水溶液にダミー基板を浸漬させてシリコンを溶解させる方法(シーズニング)によって調節されてもよい。シリコン濃度は、コロイダルシリカなどのシリコン含有化合物をリン酸水溶液に溶解させる方法によって調節されてもよい。シリコン濃度は、リン酸水溶液にシリコン含有化合物水溶液を添加する方法によって調節されてもよい。
【0047】
測定部80は、循環路42(例えば、ポンプ43とヒータ44との間)に接続されている。測定部80は、循環路42を流れるリン酸処理液Lのシリコン濃度を測定するように構成されている。そのため、測定部80は、結果として、内槽21(処理槽20)内のリン酸処理液Lのシリコン濃度を測定している。測定部80は、取得したシリコン濃度の値をコントローラCtrに送信するように構成されている。
【0048】
[コントローラの詳細]
コントローラCtrは、
図7に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0049】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、基板処理システム1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。基板処理システム1の各部は、本明細書において、例えば、保持部30、循環部40、リン酸水溶液供給部50、シリコン供給部60、純水供給部70、測定部80などであってもよい。
【0050】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶してもよい。記憶部M2は、例えば、測定部80によって測定されたシリコン濃度の値を記憶してもよい。
【0051】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、基板処理システム1の各部を動作させるための動作信号を生成するように構成されていてもよい。処理部M3は、例えば、測定部80によって測定されたシリコン濃度の値を記憶部M2から読み出して、当該値が所定の閾値以上であるか否かを判断するように構成されていてもよい。
【0052】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を基板処理システム1の各部に送信するように構成されている。指示部M4は、例えば、シリコン濃度の値が閾値未満であると処理部M3が判断したときには振動部200を制御せず、シリコン濃度の値が閾値以上であると処理部M3が判断したときには振動部200を制御するように構成されていてもよい。
【0053】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、ハードウェア上の構成として、例えば
図8に示される回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3(記憶部)と、ストレージC4(記憶部)と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能する。ドライバC5は、基板処理システム1の各部をそれぞれ駆動する回路である。入出力ポートC6は、ドライバC5と基板処理システム1の各部との間で、信号の入出力を行う。
【0054】
基板処理システム1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。後者の場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つ又は複数のコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を含んでいてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0055】
[基板処理方法]
続いて、
図9を参照して、基板処理システム1による基板Wの処理方法(シリコン窒化膜W2のエッチング方法)について説明する。まず、コントローラCtrがロット形成部3を制御して、基板搬送機構3aが、複数の基板Wから一つのロットを形成し、当該一つのロットを処理前ロット載置台4bに載置する(
図9のステップS10参照)。次に、コントローラCtrが搬送機構7を制御して、保持体7cが処理前ロット載置台4bから当該一つのロットを取り出し、移動体7bが保持体7cと共に当該一つのロットを液処理装置10に搬送する(
図9のステップS11参照)。この際、保持体7cは、当該一つのロットを、上昇位置にある保持部材100に受け渡す。
【0056】
次に、コントローラCtrが保持部30を制御して、保持部材100を上昇位置から降下位置に移動させる。これにより、保持部材100によって保持されている複数の基板Wが、内槽21のリン酸処理液L内に浸漬され(
図9のステップS12参照)、基板Wに設けられているシリコン窒化膜のエッチング処理が行われる。このとき、振動子210が取り付けられている背板部110の上端部111は、リン酸処理液Lの液面よりも上方に位置している。
【0057】
次に、コントローラCtrは、測定部80によって測定されたシリコン濃度が所定の閾値以上であるか否かを判断する(
図9のステップS13参照)。シリコン濃度が所定の閾値以上であるとコントローラCtrが判断した場合には(
図9のステップS13でYES)、コントローラCtrが振動部200を制御して、発振器220が、対応する振動子210を振動させる(
図9のステップS14参照)。これにより、振動子210の振動が、背板部110を介して対応するアーム部120に伝達し、アーム部120に支持されている複数の基板Wが振動する。
【0058】
一方、シリコン濃度が所定の閾値未満であるとコントローラCtrが判断した場合には(
図9のステップS13でNO)、コントローラCtrは、振動部200を制御しない。すなわち、振動部200による保持部材100の振動が行われない。
【0059】
その後、コントローラCtrは、所定の処理時間が経過したか否かを判断する(
図9のステップS15参照)。所定の処理時間が経過したとコントローラCtrが判断した場合には(
図9のステップS15でYES)、シリコン窒化膜W2のエッチング処理が完了したため、基板処理が終了する。一方、所定の処理時間が経過していないとコントローラCtrが判断した場合には(
図9のステップS15でNO)、ステップS13以下の工程が繰り返し実行される。
【0060】
[作用]
ここで、
図10を参照して、シリコン窒化膜W2のエッチングの過程について説明する。シリコン窒化膜W2のエッチングが開始されると、シリコン窒化膜W2のうち開口部W6に近い部分から順にエッチングされる。エッチングによりリン酸処理液L内に溶出したシリコン窒化膜W2のシリコン成分は、シリコン窒化膜W2がエッチングされることで形成される隙間Dから開口部W6に排出され、開口部W6から基板Wの外へ排出される。
【0061】
開口部W6内及び隙間D内のリン酸処理液Lが新しいリン酸処理液Lに置換されることで、エッチングが進行する。そのため、エッチング処理が進むにつれて、隙間Dの長さが長くなり、最終的にシリコン窒化膜W2が除去される。すなわち、リン酸処理液Lに溶出したシリコン窒化膜W2のシリコン成分が基板Wの外まで排出される距離が長くなる。したがって、リン酸処理液L中のシリコン濃度は、隙間Dの奥側ほど高くなる傾向にあると共に、開口部W6の奥側(半導体基板W1に近い側)ほど高くなる傾向にある。その結果、シリコン酸化物Rがシリコン酸化膜W3上に析出することがある。
【0062】
特に近年、3D NANDメモリの記憶容量を高めるために、シリコン窒化膜W2及びシリコン酸化膜W3のさらなる多層化が求められている。そこで、シリコン窒化膜W2のエッチングの選択性をより高めるために、リン酸処理液L中のシリコン濃度を上げる対応が考えられる。しかしながら、この場合、シリコン酸化物Rがシリコン酸化膜W3上により析出しやすくなる。したがって、シリコン窒化膜W2及びシリコン酸化膜W3のさらなる多層化と、シリコン窒化膜W2の選択的なエッチングとの両立が困難であった。
【0063】
しかしながら、以上の例によれば、振動部200によって保持部材100が振動することに伴い、保持部材100に保持されている基板Wも振動する。すなわち、振動部200の振動が、保持部材100を介して、基板Wに直接伝達する。そのため、シリコン窒化膜W2のエッチングが進行しても、シリコン成分がリン酸処理液L中に拡散しやすくなる。また、基板Wの振動によって、基板W上に形成されているシリコン酸化膜W3と、リン酸処理液L中のシリコン成分とが結合し難くなる。したがって、シリコン酸化物Rの析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0064】
なお、上述のとおり、特許文献1は、洗浄槽の底部外面に取り付けられた振動子によって、洗浄槽内の洗浄液に超音波を伝播させるものである。この目的は、超音波によって洗浄液中にキャビテーションを発生させ、保持部材によって洗浄液内に保持されている基板に付着したパーティクルを除去することにある。しかしながら、洗浄液中には、キャビテーションに伴って衝撃波も発生する。そのため、基板上に形成されているパターンが衝撃波によって倒壊してしまう懸念がある。
【0065】
しかしながら、以上の例によれば、リン酸処理液Lではなく、振動部200によって保持部材100を直接振動させている。そのため、リン酸処理液L中における衝撃波の発生が大幅に抑制される。したがって、基板Wがパターンを含む場合であっても、当該パターンが極めて倒壊し難くなる。
【0066】
以上の例によれば、振動部200は、20kHz以上の周波数で保持部材100を超音波振動させうる。この場合、振動数が極めて高い超音波振動によって保持部材100が振動する。そのため、シリコン成分のリン酸処理液L中への拡散が促進されると共に、シリコン酸化膜W3とリン酸処理液L中のシリコン成分とがいっそう結合し難くなる。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0067】
以上の例によれば、保持部材100は、ビッカース硬さが1000HV以上の材質によって構成されうる。また、保持部材100は、例えば、石英、アモルファルカーボン及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの材質によって構成されうる。これらの場合、保持部材100が、十分硬く、振動によって変形し難い。そのため、振動部200において発生した振動が、保持部材100を介して基板Wに効率的に伝わる。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0068】
以上の例によれば、振動子210は、リン酸処理液Lの液面よりも上方に露出する上端部111に取り付けられている。そのため、振動子210が、リン酸処理液Lからの熱の影響を受け難くなる。そのため、振動子210を効率的に駆動させることが可能となる。
【0069】
以上の例によれば、保持部材100は、上下方向に沿って延びる背板部110と、水平方向に延び且つ背板部110の下端部112に接続されたアーム部120とを含む。この場合、保持部材100のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0070】
以上の例によれば、振動子211の振動が背板部110を通じてアーム部121に伝達し、振動子212の振動が背板部110を通じてアーム部122に伝達する。この場合、基板Wを支持する複数のアーム部121,122がそれぞれ振動しうる。そのため、複数のアーム部121,122に支持される基板Wが、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0071】
以上の例によれば、下端部112は、振動部200によって背板部110に付与された振動をアーム部120に向けて反射させるように構成された反射面Sを含みうる。この場合、振動部200からの振動が、背板部110から反射面Sを介して、アーム部120に向かいやすくなる。そのため、アーム部120に支持される基板Wが、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0072】
以上の例によれば、反射面Sが平坦面である場合、水平面(アーム部120の延在方向)と平坦面とがなす角θが、35°≦θ≦55°の範囲を満たすように設定されうる。この場合、振動部200からの振動が、背板部110から反射面Sを介して、アーム部120にいっそう向かいやすくなる。そのため、アーム部120に支持される基板Wが、さらに効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物Rの析出をさらに効果的に抑制することが可能となる。
【0073】
以上の例によれば、シリコン濃度が所定の閾値以上であるとコントローラCtrが判断した場合、コントローラCtrが振動部200を制御して、発振器220が、対応する振動子210を振動させている。そのため、リン酸処理液Lのシリコン濃度が、シリコン酸化物Rの析出が懸念される程度に高まったときに、振動部200による保持部材100の振動が自動的に実行される。したがって、常に振動部200を駆動させる必要がなくなる。したがって、省エネ化を図りつつ、シリコン酸化物Rの析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0074】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0075】
(1)内槽21のリン酸処理液L内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を吹き込んで(いわゆるバブリング)、リン酸処理液Lに多数の気泡を生成した状態で、基板Wのエッチング処理を行ってもよい。この場合も、シリコン成分がリン酸処理液L中に拡散しやすくなる。そのため、シリコン酸化物Rの析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0076】
なお、特許文献1のように洗浄槽内の洗浄液に超音波を伝播させる場合、洗浄液に気泡が存在していると、超音波が気泡で反射して、基板に振動がほとんど到達しない。しかしながら、以上の例では、振動部200によって保持部材100を直接振動させている。そのため、不活性ガスによるリン酸処理液Lのバブリングも併用することができる。
【0077】
(2)シリコン濃度に関する閾値は、エッチング処理される基板Wのシリコン窒化膜W2及びシリコン酸化膜W3の積層数に応じて、設定されてもよい。例えば、シリコン窒化膜W2及びシリコン酸化膜W3の積層数が多いほど、リン酸処理液L中のシリコン濃度が高くなりやすいので、当該閾値が小さく設定されてもよい。
【0078】
(3)シリコン濃度に関する閾値は、不活性ガスによるリン酸処理液Lのバブリングの有無に応じて、設定されてもよい。例えば、当該バブリングが行われると、シリコン成分がリン酸処理液L中に拡散しやすくなり、リン酸処理液L中のシリコン濃度が低くなりやすいので、当該閾値が大きく設定されてもよい。
【0079】
(4)シリコン濃度に関する閾値は、リン酸処理液LへのSiO2析出防止剤の添加量に応じて、設定されてもよい。例えば、SiO2析出防止剤の添加量が多いほど、シリコン酸化物Rの析出が抑制されるので、当該閾値が大きく設定されてもよい。SiO2析出防止剤は、リン酸処理液Lに溶解したシリコンイオンを、溶解したままの状態で安定化させ、シリコン酸化物Rの析出を抑止する成分を含むものであってもよい。SiO2析出防止剤は、例えば、フッ素成分を含むヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)水溶液であってもよい。水溶液中のヘキサフルオロケイ酸を安定化させるため、SiO2析出防止剤は、アンモニア等の添加物をさらに含んでいてもよい。
【0080】
(5)シリコン濃度に関する閾値が複数設定されてもよい。例えば、第1の閾値と、第1の閾値よりも大きい第2の閾値とが設定されてもよい。シリコン濃度が第1の閾値未満であるとコントローラCtrが判断した場合には、コントローラCtrは、振動部200を制御しなくてもよい。シリコン濃度が第1の閾値以上で且つ第2の閾値未満であるとコントローラCtrが判断した場合には、コントローラCtrが振動部200を制御して、発振器220が、対応する振動子210を第1の周波数で振動させてもよい。シリコン濃度が第2の閾値以上であるとコントローラCtrが判断した場合には、コントローラCtrが振動部200を制御して、発振器220が、対応する振動子210を第2の周波数で振動させてもよい。この場合、第2の周波数は、第1の周波数よりも大きくてもよい。すなわち、測定部80によって測定されたシリコン濃度の高低に応じて、アーム部120を異なる振動モードで振動させてもよい。
【0081】
(6)振動部200は、基板Wを支持するアーム部120に対応して上端部111に配置された少なくとも一つの振動子210と、当該振動子210に接続された発振器220とを含んでいてもよい。振動部200が複数の振動子210を含む場合、振動部200は、当該複数の振動子210の2つ以上に接続された発振器220を含んでいてもよい。この場合、当該発振器220は、当該発振器220に接続された2つ以上の振動子210を同じ周波数で且つ同じタイミングで発振させてもよい。
【0082】
(7)振動部200は、複数の振動子210と、複数の発振器220とを含んでおり、これらが一対一で対応するように接続されていてもよい。例えば、
図11に例示されるように、複数の振動子210は、振動子211,212に加えて、振動子213,214を含んでいてもよい。振動子213は、上端部111のうち、アーム部123の鉛直上方に対応する部分に配置されていてもよい。振動子214は、上端部111のうち、アーム部124の鉛直上方に対応する部分に配置されていてもよい。
【0083】
複数の発振器220は、発振器221,222に加えて、発振器223,224を含んでいてもよい。発振器223は、振動子213に接続されており、振動子213を所定の周波数で振動させるように構成されていてもよい。発振器224は、振動子214に接続されており、振動子214を所定の周波数で振動させるように構成されていてもよい。
【0084】
図11の例において、各発振器221~224は、対応する振動子211~214を同じ周波数で発振させてもよいし、異なる周波数で発振させてもよい。振動子211~214が異なる周波数で発振する場合、各アーム部121~124に向けて伝達する振動が重なり合ったとしても、基板Wの面内において定在波が生じ難くなる。そのため、基板Wの面内における振動の偏在が抑制される。したがって、基板Wの面内全体にわたって、シリコン酸化物Rの析出を均一に抑制することが可能となる。
【0085】
図11の例において、各発振器221~224は、対応する振動子211~214を同じタイミングで発振させてもよいし、異なるタイミングで発振させてもよい。振動子211~214が異なるタイミングで発振する場合も、基板Wの面内において定在波が生じ難くなる。そのため、基板Wの面内全体にわたって、シリコン酸化物Rの析出を均一に抑制することが可能となる。
【0086】
(8)発振器221,222はそれぞれ、対応する振動子211,212の発振周波数を所定の範囲内(例えば、振動子211,212の固有振動数の±10%以内)で時間変化させるように構成されていてもよい。すなわち、発振器221,222はそれぞれ、スイープ機能を有していてもよい。この場合、基板Wの面内において定在波が生じたとしても、発振周波数の時間変化に伴い、基板Wの面内における定在波の位置が変化する。そのため、基板Wの面内における振動の偏在が抑制される。したがって、基板Wの面内全体にわたって、シリコン酸化物R2の析出を均一に抑制することが可能となる。
【0087】
(9)
図12に例示されるように、下端部112の反射面Sは、複数の反射面S1,S2を含んでいてもよい。反射面S1が平坦面である場合、水平面(アーム部120の延在方向)と反射面S1とがなす角θが、35°≦θ≦55°の範囲を満たすように設定されていてもよい。反射面S2が平坦面である場合、水平面(アーム部120の延在方向)と反射面S2とがなす角φが、θ<φ<90°を満たすように設定されていてもよい。この場合、反射面S1において反射した振動(矢印Ar11参照)と、反射面S2において反射した振動(矢印Ar12参照)とが共に、アーム部120に向かいやすくなる。そのため、アーム部120に支持される基板Wが、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0088】
(10)
図13に例示されるように、保持部材100は、背板部130をさらに含んでいてもよい。背板部130は、上端部131と、下端部132とを含んでいてもよい。下端部132は、複数のアーム部120の他端部(先端部)が接続される接続部としても機能してもよい。複数の振動子210は、上端部131に設けられた振動子210を含んでいてもよい。この場合、上端部131に設けられた振動子210が駆動すると、縦波の振動が、背板部130内を上端部131から下端部132へと、指向性をもって伝達する(
図13の矢印Ar3参照)。当該縦波は、下端部132の反射面Sにおいて反射し横波に変換された後、アーム部120に伝達する。その後、当該横波は、アーム部120内をアーム部120の他端部(先端部)から一端部(基端部)へと伝達する(
図13の矢印Ar4参照)。これに伴い、アーム部120に支持されている複数の基板Wが振動される。したがって、アーム部120の一端部側における振動の強度が高まると共に、アーム部120の他端部側における振動の強度が高まる。その結果、基板Wがアーム部の任意の位置で支持されている場合でも、シリコン酸化物Rの析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0089】
(11)
図14に示されるように、背板部110の上端部111は、その上端面から上方に突出した突出部113を含んでおり、振動子210は、突出部113の外表面に沿って取り付けられていてもよい。この場合、振動子210からの振動が一つのアーム部120に向けて集中して伝達される(
図14の矢印Ar1参照)。そのため、アーム部120に支持される基板Wが、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物Rの析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0090】
[他の例]
例1.基板処理装置の一例は、リン酸処理液を貯留するように構成された処理槽と、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持して、処理槽のリン酸処理液中に浸漬するように構成された保持部材と、基板が処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で保持部材を振動させるように構成された振動部とを備える。この場合、振動部によって保持部材が振動することに伴い、保持部材に保持されている基板も振動する。そのため、シリコン窒化膜のエッチングが進行しても、シリコン成分がリン酸処理液中に拡散しやすくなる。また、基板の振動によって、基板上に形成されているシリコン酸化膜と、リン酸処理液中のシリコン成分とが結合し難くなる。したがって、シリコン酸化物の析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0091】
例2.例1の装置において、振動部は、保持部材を20kHz以上の周波数で超音波振動させるように構成されていてもよい。この場合、振動数が極めて高い超音波振動によって保持部材が振動する。そのため、シリコン成分のリン酸処理液中への拡散が促進されると共に、シリコン酸化膜とリン酸処理液中のシリコン成分とがいっそう結合し難くなる。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0092】
例3.例1又は例2の装置において、保持部材は、ビッカース硬さが1000HV以上の材質によって構成されていてもよい。この場合、保持部材が、十分硬く、振動によって変形し難い。そのため、振動部において発生した振動が、保持部材を介して基板に効率的に伝わる。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0093】
例4.例1~例3のいずれかの装置において、保持部材は、石英、アモルファルカーボン及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一つの材質によって構成されていてもよい。この場合、例3の装置と同様の作用効果が得られる。
【0094】
例5.例1~例4のいずれかの装置において、保持部材は、処理槽のリン酸処理液による基板の処理中にリン酸処理液の液面よりも上方に露出する上端部を含み、振動部は、上端部に取り付けられていてもよい。この場合、振動部が、リン酸処理液からの熱の影響を受け難くなる。そのため、振動部を効率的に駆動させることが可能となる。
【0095】
例6.例5の装置において、保持部材は、水平方向に沿って延びると共に、基板を支持するように構成されたアーム部と、上下方向に沿って延びる背板部とを含み、背板部は、上端部と、アーム部の一端部が接続される下端部とを含み、振動部は、背板部を介して振動をアーム部に伝達するように構成されていてもよい。この場合、水平方向に沿って延びるアーム部と上下方向に沿って延びる背板部との組み合わせにより、保持部材のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0096】
例7.例6の装置において、上端部は、上端面から上方に突出した突出部を含み、振動部は、突出部の外表面に沿って取り付けられていてもよい。この場合、振動部からの振動が一つのアーム部に向けて集中して伝達される。そのため、アーム部に支持される基板が、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0097】
例8.例6又は例7の装置において、保持部材は、水平方向に沿って延びると共に、基板を支持するように構成された別のアーム部を含み、別のアーム部の一端部は、背板部の下端部と接続されており、振動部は、上端部のうちアーム部に対応する部分に取り付けられた第1の振動部と、上端部のうち別のアーム部に対応する部分に取り付けられた第2の振動部とを含み、第1の振動部は、背板部を介して振動をアーム部に伝達するように構成されており、第2の振動部は、背板部を介して振動を別のアーム部に伝達するように構成されていてもよい。この場合、基板を支持する複数のアーム部がそれぞれ振動する。そのため、複数のアーム部に支持される基板が、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0098】
例9.例8の装置において、第1の振動部は、第1の周波数でアーム部を振動させるように構成されており、第2の振動部は、第1の周波数とは異なる第2の周波数で別のアーム部を振動させるように構成されていてもよい。この場合、第1の振動部からアーム部に向けて伝達する振動と、第2の振動部から別のアーム部に向けて伝達する振動とが重なり合ったとしても、基板の面内において定在波が生じ難くなる。そのため、基板の面内における振動の偏在が抑制される。したがって、基板の面内全体にわたって、シリコン酸化物の析出を均一に抑制することが可能となる。
【0099】
例10.例8又は例9の装置において、第1の振動部は、第2の振動部が別のアーム部を振動させるのとは異なるタイミングで、アーム部を振動させるように構成されていてもよい。この場合、例9と同様の作用効果が得られる。
【0100】
例11.例6~例10のいずれかの装置において、保持部材は、上下方向に沿って延びる別の背板部をさらに含み、別の背板部は、処理槽のリン酸処理液による基板の処理中にリン酸処理液の液面よりも上方に露出する別の上端部と、アーム部の他端部が接続される別の下端部とを含み、振動部は、別の上端部に取り付けられた第3の振動部を含んでいてもよい。ところで、一般に、振動の伝達距離が長くなるほど、振動が弱まる傾向にある。そのため、背板部に取り付けられた第1の振動部からアーム部に伝達される振動は、アーム部の他端部(別の背板部側の端部)が最も小さくなる傾向にある。しかしながら、例11によれば、アーム部の他端部が別の背板部に接続されている。そのため、別の背板部に取り付けられた第3の振動部からの振動は、別の背板部を介して、まずアーム部の他端部に入力される。したがって、アーム部の他端部側における振動の強度が高まる。その結果、基板がアーム部の任意の位置で支持されている場合でも、シリコン酸化物の析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0101】
例12.例6~例11のいずれかの装置において、下端部は、振動部によって背板部に付与された振動をアーム部に向けて反射させるように構成された反射面を含んでいてもよい。この場合、第1の振動部からの振動が、背板部から反射面を介して、アーム部に向かいやすくなる。そのため、アーム部に支持される基板が、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0102】
例13.例12の装置において、反射面は平坦面又は曲面を含んでいてもよい。
【0103】
例14.例12又は例14の装置において、反射面は第1の平坦面を含み、第1の平坦面と水平面とがなす角θが式1を満たしていてもよい。この場合、第1の振動部からの振動が、背板部から反射面を介して、アーム部にいっそう向かいやすくなる。そのため、アーム部に支持される基板が、さらに効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物の析出をさらに効果的に抑制することが可能となる。
35°≦θ≦55° ・・・(1)
【0104】
例15.例14の装置において、反射面は、第1の平坦面の上方に位置する第2の平坦面をさらに含み、第2の平坦面と水平面とがなす角φが式2を満たしていてもよい。この場合、第1の平坦面及び第2の平坦面においてそれぞれ反射した振動が共に、アーム部に向かいやすくなる。そのため、アーム部に支持される基板が、より効果的に振動する。したがって、シリコン酸化物の析出をより効果的に抑制することが可能となる。
θ<φ<90° ・・・(2)
【0105】
例16.例1~例15のいずれかの装置において、振動部は、発振周波数を所定の範囲内で時間変化させるように構成されていてもよい。この場合、基板の面内において定在波が生じたとしても、発振周波数の時間変化に伴い、基板の面内における定在波の位置が変化する。そのため、基板の面内における振動の偏在が抑制される。したがって、基板の面内全体にわたって、シリコン酸化物の析出を均一に抑制することが可能となる。
【0106】
例17.例1~例16のいずれかの装置は、処理槽内のリン酸処理液におけるシリコン濃度を測定するように構成された測定部と、制御部とをさらに備え、制御部は、測定部によって測定されたシリコン濃度が所定の閾値以上となった場合に、振動部を駆動するように構成されていてもよい。この場合、リン酸処理液のシリコン濃度が、シリコン酸化物の析出が懸念される程度に高まったときに、振動部による保持部材の振動が自動的に実行される。そのため、常に振動部を駆動させる必要がなくなる。したがって、省エネ化を図りつつ、シリコン酸化物の析出を効果的に抑制することが可能となる。
【0107】
例18.基板処理方法の一例は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜が形成された基板を保持部材が保持する第1の工程と、リン酸処理液を貯留した処理槽に保持部材を投入して、基板を処理槽のリン酸処理液中に浸漬させる第2の工程と、基板が処理槽のリン酸処理液中に浸漬されている状態で、振動部によって保持部材を振動させる第3の工程とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0108】
例19.例18の方法において、第3の工程は、処理槽内のリン酸処理液におけるシリコン濃度が所定の閾値以上となった場合に、保持部材を振動させることを含んでいてもよい。この場合、例17の装置と同様の作用効果が得られる。
【0109】
例20.コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例は、例18又は例19の方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録していてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)又は伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…基板処理システム、5…ロット処理部、10…液処理装置(基板処理装置)、20…処理槽、30…保持部、80…測定部、100…保持部材、110,130…背板部、111…上端部、112…下端部、113…突出部、120~124…アーム部、200…振動部、210~212…振動子、220~222…発振器、Ctr…コントローラ(制御部)、L…リン酸処理液、R…シリコン酸化物、RM…記録媒体、S,S1,S2…反射面、W…基板、W2…シリコン窒化膜、W3…シリコン酸化膜。