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特許7541919ゼロ変位シール装置を備えた流体ディスペンサ
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  • 特許-ゼロ変位シール装置を備えた流体ディスペンサ 図1
  • 特許-ゼロ変位シール装置を備えた流体ディスペンサ 図2
  • 特許-ゼロ変位シール装置を備えた流体ディスペンサ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ゼロ変位シール装置を備えた流体ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/30 20060101AFI20240822BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
B05B1/30
B05C5/00 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020512451
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018048543
(87)【国際公開番号】W WO2019046425
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/551,487
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ブレオー、 ジョン ピ-.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、 イヴァン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表昭57-501386(JP,A)
【文献】実開昭63-073175(JP,U)
【文献】実開昭63-077647(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18;
7/00- 9/08
B05C 5/00- 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を分配する流体ディスペンサであって、
前記流体を受け入れる第1の端部と前記流体を分配する第2の端部とを有し、前記第1の端部に隣接する受入れチャンバから前記第2の端部に隣接する分配チャンバへの流体流路を形成するディスペンサハウジングと、
ダイアフラムアセンブリであって、
前記受入れチャンバ内の第1のダイアフラムおよび前記分配チャンバ内の第2のダイアフラムであって、前記第1のダイアフラムは、第1の位置と第2の位置との間での移動のために前記第2のダイアフラムに動作可能に接続されている第1のダイアフラムおよび第2のダイアフラムと、
前記分配チャンバと連通して前記ディスペンサハウジングの前記第2の端部に隣接する変位チャンバであって、前記ダイアフラムアセンブリは、前記第1のダイアフラムが前記流体を前記流体流路に沿って前記受入れチャンバから前記分配チャンバへ移動させる前記第1の位置と、前記第2のダイアフラムが前記流体を前記分配チャンバから前記変位チャンバへ移動させる前記第2の位置との間を移動可能である、変位チャンバと、
前記ダイアフラムアセンブリが前記第2の位置へ移動したときに前記流体を分配する、前記変位チャンバと連通する分配ルアーと、
接続ロッドと、
を有するダイアフラムアセンブリと、
を有し、
前記第1および第2のダイアフラムは、それぞれ前記接続ロッドの各端部に取り付けられ、
前記ディスペンサハウジングに複数の空気接続穴が形成され、該空気接続穴を通して空気接続具の一部が挿入されて取り付けられている、流体ディスペンサ。
【請求項2】
前記第1の位置において、前記第1のダイアフラムは完全に広げられ、かつ前記第2のダイアフラムは完全に引き込まれる、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項3】
前記第2の位置において、前記第1のダイアフラムは完全に引き込まれ、かつ、前記第2のダイアフラムは完全に広げられている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項4】
前記流体ディスペンサは、前記流体流路を提供する流体チューブをさらに有する、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項5】
前記流体チューブは、前記流体チューブの端部が前記受入れチャンバおよび前記分配チャンバにそれぞれ隣接して水平に配置され、前記流体チューブの中間部が、前記流体チューブの中間部の各端部を前記流体チューブの端部の各端部に接続した状態で前記ディスペンサハウジング内に垂直に配置されるように構成され、配置される、請求項4に記載の流体ディスペンサ。
【請求項6】
前記ディスペンサハウジングの前記第1の端部から前記流体が入ると、前記流体は、前記流体チューブを通って移動して前記受入れチャンバ、前記分配チャンバおよび前記変位チャンバを満たす、請求項4に記載の流体ディスペンサ。
【請求項7】
前記流体ディスペンサは、前記ディスペンサハウジング内に配置され、前記変位チャンバの上方に位置する変位ロッドをさらに有する、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項8】
前記流体ディスペンサは、前記ディスペンサハウジング内に配置されたアクチュエータをさらに有する、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項9】
前記流体ディスペンサは、前記ディスペンサハウジング内に配置され、前記変位チャンバの上方に位置する変位ロッドをさらに有し、
前記流体ディスペンサが流体を分配すると、前記アクチュエータは、前記変位ロッドを前記変位チャンバ内に移動させ、前記変位チャンバ内の前記流体を前記流体ディスペンサから排出する、請求項8に記載の流体ディスペンサ。
【請求項10】
前記ディスペンサハウジングの前記第1の端部に入力接続穴が形成され、該入力接続穴を通して入力接続具の一部が挿入され、取り付けられている、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項11】
前記接続ロッドは、前記アクチュエータにボルト留めされている、請求項8に記載の流体ディスペンサ。
【請求項12】
前記流体は接着剤である、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項13】
前記流体はシアノアクリレートである、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項14】
前記第1および第2のダイアフラムは同一である、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項15】
前記受入れおよび分配チャンバは同一である、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【請求項16】
前記流体は嫌気硬化性である、請求項1に記載の流体ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ディスペンサに関し、より詳細には、ゼロ変位シール装置を備えて構成された精密流体ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シアノアクリレートや嫌気硬化性の接着剤など、接着剤を分配する様々な精密流体分配システムが存在する。一般的に、これらの分配システムは、容積式ポンプを利用して、分配する接着剤を送達する。容積式ポンプには通常、スライド/動的シールを含んでいる。流体分配システムによる繰り返しの分配中に、接着剤は硬化するか、スライド/動的シールと反応する。具体的には、接着剤がしばらくの間ポンプ部品と接触すると、接着剤の硬化が生じる。これにより、流体分配システムに障害が発生し、スライド/動的シールを交換するまで動作できなくなることがある。
【0003】
現在、上記のこの課題を解決するために、市販のセラミック容積式ポンプが利用できる。セラミック容積式ポンプでは、セラミックシリンダ内にセラミックピストンが取り付けられている。具体的には、ピストンは、シリンダとピストンとの間に送り出される酸性流体を用いてシールされ、接着剤が2つの部品同士接着しないようにする。したがって、このポンプは信頼性を有する。しかしながら、セラミック容積式ポンプは、操作が複雑で、かつ非常に高価である。さらに、ポンプは運転停止中に定期的なメンテナンスが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、現在、様々な精密流体分配システムが利用可能であるが、さらなる改善が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によれば、少用量の流体を分配する流体ディスペンサは、ディスペンサハウジング、ダイアフラムアセンブリ、変位(置換)チャンバ、および分配ルアーを含む。ディスペンサハウジングは、流体を受け入れる第1の端部と、流体を分配する第2の端部とを有する。ディスペンサハウジングは、第1の端部に隣接する受入れチャンバから第2の端部に隣接する分配チャンバまでの流体流路を形成する。ダイアフラムアセンブリは、受入れチャンバ内の第1のダイアフラムおよび分配チャンバ内の第2のダイアフラムを含み、第1のダイアフラムは、第2のダイアフラムに動作可能に接続される。ダイアフラムアセンブリは、第1のダイアフラムが流体を流体流路に沿って受入れチャンバから分配チャンバに移動させる第1の位置と、第2のダイアフラムが流体を分配チャンバから変位チャンバに移動させる第2の位置との間で移動可能である。変位チャンバは、分配チャンバと連通して、ハウジングの第2の端部に隣接して配置される。分配ルアーは、ダイアフラムアセンブリが第2の位置に移動すると少量の流体を分配する変位チャンバと連通している。
【0006】
本発明のこれらおよび他の態様は、図面および以下の詳細な説明を考慮してよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態による、流体ディスペンサの斜視図である。
図2】第1の/開位置での、図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】第2の/閉位置での、図1のA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態によれば、図1~3を参照すると、少量の正確な用量の流体(例えば、シアノアクリレートおよび嫌気性硬化性接着剤などの接着剤)を分配するように設計および構成された流体ディスペンサ10が示されている。流体ディスペンサ10は、以下でより詳細に説明するように、ディスペンサハウジング12と、ディスペンサハウジング12内に形成された変位チャンバ14と、少用量の流体を分配する分配ルアー16と、流体ディスペンサ10が安定した正確な量の流体を分配することを可能にする、ディスペンサハウジング12内に配置されたゼロ変位シールデバイス(ダイアフラムアセンブリ)18と、を含む。
【0009】
上方および下方などの方向を示す用語は、流体ディスペンサ10の分配ルアー16が下方を向いている方向を指す。 しかしながら、それによって、本発明は、特定の向きでの使用に限定されない。
【0010】
再び図1を参照すると、ディスペンサハウジング12は細長く、第1の端部20と第2の端部22との間に延びている。第1および第2の端部20、22は、以下に詳細に説明するように、それぞれ流体を受け入れるためおよび流体を分配するためのものである。流体入力接続穴24および複数の空気接続穴26が、それぞれディスペンサハウジング12の第1の端部28およびディスペンサハウジング12の中間部30に形成される。流体入力接続具32の一部および空気接続具34の一部は、それぞれ流体入力接続穴24および空気接続穴26に挿入され、取り付けられている。流体入力接続具32は、流体リザーバ(図示せず)と流体ディスペンサ10との間に流体経路を提供し、一方、空気は、複数の空気接続具26を介して、好ましくは60psiの空気圧で流体ディスペンサ10に供給される。 流体は、好ましくは5psiから50psiの間で加圧される。
【0011】
図2および図3を参照すると、受入れチャンバ36および分配チャンバ38が、分配される流体を収容するために流体ディスペンサ10内に形成されている。具体的には、受入れチャンバ36は、ディスペンサハウジング12の第1の端部20に隣接して形成され、分配チャンバ38は、ディスペンサハウジング12の第2の端部22に隣接して形成される。
【0012】
ディスペンサハウジング12はさらに、受入れチャンバ36から分配チャンバ38への流体流路を形成し、流体はそれらの間を移動する。より具体的には、ディスペンサハウジング12内に流体チューブ40が配置され、その中に流体流路を提供する。流体チューブ40は、図2および3に示すように、流体チューブ40の端部42が、ディスペンサハウジング12の第1端部28および第2端部44内に水平に配置され、かつ、流体チューブ40の中間部46が、流体チューブ40の中間部46の各端部が流体チューブ40の端部42の各端部に接続した状態で、ディスペンサハウジング12内で垂直に配置されるように、構成および配置される。したがって、流体リザーバ(図示せず)から流体入力接続具32を介してディスペンサハウジング12の第1の端部28に流体が入り、次いで、流体は流体チューブ40を介して流体流路に沿って移動し、受入れチャンバ36、分配チャンバ38および変位チャンバ14を満たす。
【0013】
再び図2および3を参照すると、ダイアフラムアセンブリ18は、ディスペンサハウジング12内に配置され、受入れチャンバ36および分配チャンバ38内に収容される流体の容積変位のためのデバイスとして機能する。ダイアフラムアセンブリ18は、受入れチャンバ36内に配置された第1のダイアフラム48および分配チャンバ38内に配置された第2のダイアフラム50の、実質的に同一の第1および第2のダイアフラム48、50を含む。この配置によって、受入れチャンバ36の下端および分配チャンバ38の上端がそれぞれ第1のダイアフラム48および第2のダイアフラム50によって形成されることが可能となる。
【0014】
第1のダイアフラム48は、第1の/開位置(図2)と第2の/閉位置(図3)との間の移動のために第2のダイアフラム50に動作可能に接続される。具体的には、第1および第2のダイアフラム48、50は、それぞれ、ディスペンサハウジング12内に垂直に配置されてアクチュエータ58にボルト留めされた接続ロッド56の各端部に接続される。アクチュエータストロークの長さは、 ストローク調整器59で調整することができる。第1および第2のダイアフラム48、50の動きは、以下により詳細に説明する。
【0015】
流体ディスペンサ10はさらに、ディスペンサハウジング12内に配置され、かつ、変位チャンバ14の上方に位置する変位ロッド60を含む。変位チャンバ14は、ディスペンサハウジング12の第2の端部22に隣接して形成され、分配チャンバ38と連通している。
【0016】
流体ディスペンサ10は、強度、重量、剛性などを含む、所望の用途に適した特性を有する1つまたは複数の材料からなる。受入れチャンバおよび分配チャンバは、それらが実質的に同一であるような構成およびサイズとされる。
【0017】
流体ディスペンサ10の動作において、流体ディスペンサ10が流体を分配する前、ダイアフラムアセンブリ18は、最初は、図2に示す第1 の/開位置にある。この位置では、分配される流体が分配チャンバ38内に収容されるように、第1のダイアフラム48は完全に広げられ、かつ、第2のダイアフラム50は完全に引き込まれている。
【0018】
流体ディスペンサ10が流体を分配すると、アクチュエータ58は、接続ロッド56を直線的に下方に動かして、第1および第2のダイアフラム48、50のそれぞれの位置を逆転させ、その結果、ダイアフラムアセンブリ18は、図3に示すように、第2の /閉位置に移行する。第2の位置では、第1のダイアフラム48は完全に引き込まれ、かつ、第2のダイアフラム50は完全に広げられ、その結果、受入れチャンバ36は、分配される流体で満たされ、分配チャンバ38内の流体は、第2のダイアフラム50が広げられることによって作用する力によって変位チャンバ14に移動する。したがって、分配チャンバ38内の流体容積は減少し、受入れチャンバ36内の流体容積は増加する。受入れおよび分配チャンバ36、38は実質的に同一であるので、流体ディスペンサ10が流体を分配するとき、受入れチャンバ36内の流体の容積変位は、分配チャンバ38内の流体の容積変位に等しい。
【0019】
さらに、流体ディスペンサ10が流体を分配すると、アクチュエータ58はまた、変位ロッド60を下方に移動させ、変位ロッド60を強制的に変位チャンバ14内に配置させる。したがって、変位ロッド60は、変位チャンバ14内の流体を、変位チャンバ14と連通している分配ルアー16に押す。 次に、分配ルアー16は、流体ディスペンサ10から流体を分配する。
【0020】
ダイアフラムアセンブリ18は、第1および第2のダイアフラム48、50がユニット化されているため、アクチュエータ58からのより高いエネルギー伝達を提供する。この単一化されたシール方法は、分配される流体の正確な容積を作り出し、また、第1および第2のダイアフラム48、50が一緒に動くときに、それらの間の力のバランスを作り出す。一方のダイアフラムの投影面積が増加し、もう一方のダイアフラムが減少すると、第1および第2のダイアフラム48、50を動かすのに必要な力はゼロに近づく。
【0021】
流体ディスペンサ10が流体を分配すると、アクチュエータ58は、ダイアフラムアセンブリ18を直線的に上方に動かし、ダイアフラムアセンブリ18を第1の位置に戻す。 上述したように、第1の位置では、第1のダイアフラム48は完全に広げられ、かつ、第2のダイアフラム50は完全に引き込まれる。 したがって、第1のダイアフラム48が広げられることによって作用する力により、受入れチャンバ36内の流体が、分配のための流体流路に沿って分配チャンバ38に移動することが可能になる。
【0022】
上記から、本発明による流体ディスペンサは、少用量の流体を分配すると同時に、分配される流体容積の精度および流体ディスペンサの寿命を向上させることが理解されよう。
【0023】
一般に、前述の説明は、解説的かつ例示的な目的で提供されており、 本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。 むしろ、当業者は、追加の修正および特定の状況への適応が、本明細書に示され、説明された本発明および本明細書に添付された特許請求の範囲に含まれることを理解するであろう。
図1
図2
図3