(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240822BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240822BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L21/30 562
H01L21/30 564Z
H01L21/30 569Z
H01L21/304 643A
B05C11/08
(21)【出願番号】P 2021015737
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】飯野 正
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0251921(US,A1)
【文献】特開2003-347206(JP,A)
【文献】特開平03-278519(JP,A)
【文献】特開2015-065371(JP,A)
【文献】特開平06-037001(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099106(WO,A1)
【文献】特開2017-069403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027,21/304
B05C 11/08
G03F 7/16,7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するように構成された保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルを含む供給部と、
前記ノズルからダミー吐出された前記処理液を受容するように上方に向けて開放された開口を含む液受部と、
前記ノズルを支持するノズルアームを駆動することにより、前記保持部に保持されている前記基板の上方と前記液受部との間で前記ノズルを移動させるように構成された駆動部と、
前記液受部に配置された検出部と、
制御部とを備え、
前記検出部は、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が、前記液受部の内周面近傍の検出空間を通過したか否かを検出するように構成されており、
前記制御部は、
前記ノズルアームが、前記開口の内側において予め設定された原点位置に位置するように前記駆動部を制御する第1の処理と、
前記ノズルアームが前記原点位置に位置した状態で、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したことを前記検出部が検出した場合に、前記ノズルが異常状態にあると判断する第2の処理とを実行するように構成されている、基板処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記液受部の内周面から突出し且つ互いに離間するように前記液受部に設けられた一対の端子と、
前記一対の端子の間の電流又は電圧を計測するように構成された計測器とを含み、
前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記一対の端子を電気的に接続したときの前記計測器における値の変化に基づいて、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したか否かを検出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記液受部の内周面から突出し且つ上下方向に変位可能となるように前記液受部に設けられた変位部材と、
前記変位部材の変位を検出するように構成された変位検出器とを含み、
前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記変位部材と接触したときの前記変位検出器における検出結果に基づいて、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したか否かを検出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記液受部内に光を照射するように構成された投光器と、
前記投光器と対向し且つ前記投光器からの光と受光可能な位置に配置された受光器とを含み、
前記受光器による前記投光器からの受光の有無に基づいて、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したか否かを検出するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記液受部の内周面において前記検出部と略同じ高さに位置するように前記液受部に配置された別の検出部をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記液受部の水平位置、又は、前記液受部の内周面からの前記検出部の突出量を変化させるように構成された別の駆動部をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記ノズルから前記処理液を吐出させるように前記供給部を制御しつつ、前記原点位置から、前記ノズルから吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したことを前記検出部が検出する検出位置まで、前記ノズルアームを移動させるように、前記駆動部を制御する第3の処理と、
前記原点位置から前記検出位置まで前記ノズルアームが移動した移動距離を算出する第4の処理と、
前記ノズルが初期状態のときの前記原点位置から前記検出位置までの距離と、前記移動距離との差分値を算出する第5の処理と、
前記差分値が所定の許容範囲を超えている場合に、前記ノズルが異常状態にあると判断する第6の処理とをさらに実行するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記移動距離が前記許容範囲内にある場合に、前記差分値に基づいて前記原点位置を補正する第7の処理とをさらに実行するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記差分値と、前記差分値を算出した日時とを対応付けて時系列データとして記憶する第8の処理と、
前記時系列データに基づいて、前記ノズルの異常状態の種類を推定する第9の処理とをさらに実行するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1の処理、前記第3の処理及び前記第4の処理を含む一連の処理を定期的に実行するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ノズルが異常状態にあると判断した場合に警報を報知する第10の処理をさらに実行するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記液受部の内周面において前記検出部とは異なる高さに位置するように前記液受部に配置されたさらに別の検出部を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記検出部及び前記さらに別の検出部は、上下方向において並んで配置されており、
前記制御部は、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したことを前記検出部及び前記さらに別の検出部の一方が検出したが他方が検出しなかった場合に、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が鉛直方向に対して傾いていると判断する第11の処理を実行するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
保持部に保持されている基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルを支持するノズルアームを、液受部の開口であって、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液を受容するように上方に向けて開放された前記開口の内側において予め設定された所定の原点位置に配置する第1の工程と、
前記ノズルアームが前記原点位置に位置した状態で、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記液受部の内周面近傍の検出空間を通過したことを、前記液受部に配置された検出部が検出した場合に、前記ノズルが異常状態にあると判断する第2の工程とを含む、基板処理方法。
【請求項15】
前記ノズルから前記処理液を吐出させつつ、前記原点位置から、前記ノズルから吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したことを前記検出部が検出する検出位置まで、前記ノズルアームを移動させる第3の工程と、
前記原点位置から前記検出位置まで前記ノズルアームが移動した移動距離を算出する第4の工程と、
前記ノズルが初期状態のときの前記原点位置から前記検出位置までの距離と、前記移動距離との差分値を算出する第5の工程と、
前記差分値が所定の許容範囲を超えている場合に、前記ノズルが異常状態にあると判断する第6の工程とをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記移動距離が前記許容範囲内にある場合に、前記差分値に基づいて前記原点位置を補正する第7の工程とをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記差分値と、前記差分値を算出した日時とを対応付けて時系列データとして記憶する第8の工程と、
前記時系列データに基づいて、前記ノズルの異常状態の種類を推定する第9の工程とをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の工程、前記第3の工程及び前記第4の工程を含む一連の工程を定期的に実施する、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ノズルが異常状態にあると判断された場合に警報を報知する第10の工程をさらに含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ノズルアームが前記原点位置に位置した状態で、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が前記検出空間を通過したことを前記検出部及びさらに別の検出部の一方が検出したが他方が検出しなかった場合に、前記ノズルからダミー吐出された前記処理液が鉛直方向に対して傾いていると判断する第11の工程をさらに含み、
前記さらに別の検出部は、前記液受部の内周面において前記検出部とは異なる高さに位置し且つ前記検出部と上下方向において並ぶように前記液受部に配置されている、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板処理装置を開示している。当該基板処理装置は、基板を回転保持するように構成された吸引式スピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルと、基板の上方においてノズルを移動させるように構成された移動機構とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置のメンテナンス時において作業者が不意にノズルに接触したり、ノズルの移動に伴いノズルが偶発的に装置の他の要素と接触したりすることにより、ノズルに異常が生ずる(例えば、ノズルが変形する、ノズルの姿勢が変わるなど)ことがある。このとき、ノズルから吐出された処理液の基板に対する着液位置がずれ、設定とは異なった基板処理が実行される場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、ノズルの異常を検出することが可能な基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基板処理装置の一例は、基板を保持するように構成された保持部と、保持部に保持されている基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルを含む供給部と、ノズルからダミー吐出された処理液を受容するように上方に向けて開放された開口を含む液受部と、ノズルを支持するノズルアームを駆動することにより、保持部に保持されている基板の上方と液受部との間でノズルを移動させるように構成された駆動部と、液受部に配置された検出部と、制御部とを備える。検出部は、ノズルからダミー吐出された処理液が、液受部の内周面近傍の検出空間を通過したか否かを検出するように構成されている。制御部は、ノズルアームが、開口の内側において予め設定された原点位置に位置するように駆動部を制御する第1の処理と、ノズルアームが原点位置に位置した状態で、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部が検出した場合に、ノズルが異常状態にあると判断する第2の処理とを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る基板処理装置、基板処理方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、ノズルの異常を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、基板処理装置の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、処理ユニットの一例を模式的に示す上面図である。
【
図3】
図3は、液受部の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は
図3のIVA-IVA線断面図であり、
図4(b)は
図3のIVB-IVB線断面図である。
【
図5】
図5は、基板処理装置の主要部の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、初期計測処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、初期計測処理の手順の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、異常状態の検出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、異常状態の検出処理の手順の一例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、ノズルから斜めに吐出された処理液の角度の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0010】
[基板処理装置]
まず、
図1~
図5を参照して、基板処理装置1の構成について説明する。基板処理装置1は、例えば、基板Wに処理液Lを供給することで基板Wを処理するように構成されている。処理液Lは、例えば、基板Wの表面を洗浄するための洗浄液であってもよいし、基板Wの表面に残留する液、溶解成分、残渣などを洗い流すためのリンス液であってもよいし、基板Wの表面に成膜するための塗布液であってもよいし、レジスト膜を現像処理するための現像液であってもよい。すなわち、基板処理装置1は、基板洗浄装置であってもよいし、塗布・現像装置であってもよい。
【0011】
洗浄液は、例えば、アルカリ性又は酸性の薬液を含んでいてもよいし、有機溶剤を含んでいてもよい。アルカリ性の薬液は、例えば、SC-1液(アンモニア、過酸化水素及び純水の混合液)などを含んでいてもよい。酸性の薬液は、例えば、SC―2液(塩酸、過酸化水素水及び純水の混合液)、SPM(硫酸及び過酸化水素水の混合液)、HF/HNO3液(フッ酸及び硝酸の混合液)などを含んでいてもよい。有機溶剤は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)を含んでいてもよい。リンス液は、例えば、純水(DIW:deionized water)、オゾン水、炭酸水(CO2水)、アンモニア水などを含んでいてもよい。なお、上記の例のうち、例えば、SC-1液、SC―2液、SPM、炭酸水などは導電性を示す。一方、IPA、純水などは導電性を示さない。
【0012】
基板Wは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。基板Wは、一部が切り欠かれた切欠部を有していてもよい。切欠部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。基板Wは、例えば、半導体基板(シリコンウエハ)、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。基板Wの直径は、例えば200mm~450mm程度であってもよい。
【0013】
基板処理装置1は、
図1に例示されるように、処理ユニット2と、コントローラCtr(制御部)とを備える。処理ユニット2は、保持部10と、供給部20と、駆動部30と、液受部40と、複数の検出部50を含む。
【0014】
保持部10は、回転駆動部11と、シャフト12と、吸着部13とを含む。回転駆動部11は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、シャフト12を回転させるように構成されている。回転駆動部11は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。吸着部13は、シャフト12の先端部に設けられている。吸着部13は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、基板Wの裏面の一部又は全体を吸着保持するように構成されている。すなわち、保持部10は、基板Wの姿勢が略水平の状態で基板Wを保持しつつ、基板Wの表面に対して垂直な中心軸(回転軸)周りで基板Wを回転させるように構成されていてもよい。
【0015】
供給部20は、保持部10に保持されている基板Wの表面に処理液Lを供給するように構成されている。供給部20は、液源21と、ポンプ22と、バルブ23と、ノズル24と、配管25とを含む。液源21は、処理液Lを貯留するように構成されている。ポンプ22は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源21から吸引した処理液Lを、配管25及びバルブ23を介してノズル24に送り出すように構成されている。
【0016】
バルブ23は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、配管25における流体の流通を許容する開状態と、配管25における流体の流通を妨げる閉状態との間で遷移するように構成されている。ノズル24は、吐出口が下方に向けて開放されている。ノズル24は、ポンプ22によって送り出された処理液Lを、基板Wの表面に向けて吐出したり、液受部40にダミー吐出したりするように構成されている。配管25は、上流側から順に、液源21、ポンプ22、バルブ23及びノズル24を接続している。
【0017】
駆動部30は、保持部10に保持されている基板Wの上方と液受部40との間でノズル24を移動させるように構成されている。駆動部30は、
図1及び
図2に例示されるように、回転駆動部31と、旋回シャフト32と、ノズルアーム33と、エンコーダ34と、位置センサ35とを含む。
【0018】
回転駆動部31は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、旋回シャフト32を回転させるように構成されている。回転駆動部31は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。旋回シャフト32は、上下方向に延びる柱状部材(例えば、円柱状部材)であり、鉛直方向に沿って延びる回転軸周りに回転するように構成されている。
【0019】
ノズルアーム33は、ノズル24を支持するように構成されている。ノズルアーム33の基端部は、旋回シャフト32の外周面に接続されている。ノズルアーム33の先端部は、ノズル24を支持している。ノズルアーム33は、旋回シャフト32の径方向に沿って水平に延びている。
図2に例示されるように、回転駆動部31が旋回シャフト32を回転させることにより、ノズルアーム33の先端部に位置するノズル24は、保持部10に保持されている基板Wの略中心部の上方と、液受部40の開口41(後述する)の上方との間を円弧状に旋回移動する。なお、
図2に例示されるように、ノズル24が液受部40の上方を旋回移動する際のノズル24の旋回方向を「X方向」と称し、ノズルアーム33の長手方向を「Y方向」と称することがある。
【0020】
エンコーダ34は、回転駆動部31の回転位置(回転角度)を検出するように構成されている。エンコーダ34は、検出した回転位置をコントローラCtrに出力するように構成されている。位置センサ35は、旋回シャフト32の原点位置(基準位置)を検出するように構成されている。位置センサ35は、例えば、検出片35aと、光電センサ35bとを含んでいてもよい。検出片35aは、旋回シャフト32の外周面に接続されており、旋回シャフト32と共に回転するように構成されていてもよい。光電センサ35bは、受光部と、当該受光部に向けて光を照射する投光部とを含む投受光器であってもよい。検出片35aの回転に際して、検出片35aが受光部と投光部との間に位置すると、受光部が投光部からの光を受光できなくなり、検出片35aの存在が検出される。光電センサ35bが検出片35aの存在を検出したときにおける回転駆動部31の回転位置が、旋回シャフト32の原点位置に設定されてもよい。なお、旋回シャフト32が原点位置にあるときに、ノズル24が液受部40の開口41の上方に位置してもよい。
【0021】
液受部40は、ノズル24からダミー吐出された処理液Lを受け止める集液容器として機能する。液受部40は、上方が開放された有底筒体であり、
図3及び
図4に例示されるように、ノズル24からダミー吐出された処理液Lを受け入れる開口41を含む。液受部40の底壁には、図示しない排液管が設けられており、液受部40内に吐出された処理液Lが排液管から排出される。液受部40は、保持部10に保持されている基板Wの周囲を取り囲むカップ(図示せず)の外側(上下方向においてカップと重なり合わない位置)に配置されていてもよい。
【0022】
複数の検出部50は、液受部40に配置されている。検出部50は、
図3及び
図4に例示されるように、一対の端子51と、計測器52とを含む。一対の端子51は、導電性の材料で構成されている。一対の端子51は、例えば、処理液Lに対して耐食性を有する金属材料で構成されていてもよいし、導電性材料を含有する樹脂材料で構成されていてもよい。これらの場合、端子51の腐食に伴うパーティクルの発生を抑制することが可能となる。導電性材料を含有する樹脂材料は、例えば、カーボン材料を含有するフッ素樹脂(PTFE、PFAなど)、カーボン材料を含有するPEEK樹脂などであってもよい。
【0023】
一対の端子51は、液受部40の内周面から先端部が突出し且つ互いに離間した状態で、液受部40に設けられている。端子51の基端部の外周面にはネジ山が設けられており、当該ネジ山が液受部40の周壁と螺合することで、端子51が液受部40に対して取り付けられていてもよい。この場合、端子51の先端部の位置を調節することができる。なお、ネジ山と液受部40との間に、液漏れを防止するためのシール部材が介在していてもよい。
【0024】
一対の端子51の基端部同士は、導線等を介して計測器52と電気的に接続されている。計測器52は、例えば、抵抗計(テスター)であってもよい。
図4において例示されるように、処理液Lが導電性の液体である場合には、ノズル24からダミー吐出された処理液Lの液柱が一対の端子51に接触すると閉回路が構成され、計測器52において電流が検出される。そのため、検出部50は、処理液Lが一対の端子51の先端部に接触したか否かを検出するように構成されている。すなわち、先端部が液受部40の内周面近傍に位置する一対の端子51によって、処理液Lが液受部40の内周面近傍の検出空間を通過したか否かを検出できる。
【0025】
図3及び
図4(a)に例示されるように、液受部40の上部には2つの検出部50が配置されている。これらの2つの検出部50(以下、「検出部50A」と称することがある。)は、液受部40の中心に対して向かい合わせとなると共に、X方向(ノズル24の旋回方向)に沿って並んでいる。2つの検出部50Aの端子51は、液受部40の内周面において略同じ高さ位置に移置していてもよい。この2つの検出部50Aによって、ノズル24の旋回方向におけるダミー吐出位置のズレを検出することが可能である。
【0026】
図3及び
図4(b)に例示されるように、液受部40の下部には4つの検出部50が配置されている。これらのうち2つの検出部50(以下、「検出部50B」と称することがある。)は、液受部40の中心に対して向かい合わせとなると共に、X方向(ノズル24の旋回方向)に沿って並んでいる。この2つの検出部50Bによって、ノズル24の旋回方向におけるダミー吐出位置のズレを検出することが可能である。一方、残余の2つの検出部50(以下、「検出部50C」と称することがある。)は、液受部40の中心に対して向かい合わせとなると共に、Y方向(ノズルアーム33の長手方向)に沿って並んでいる。この2つの検出部50Cによって、ノズルアーム33の長手方向におけるダミー吐出位置のズレを検出することが可能である。これら4つの検出部50B,50Cの端子51は、液受部40の内周面において略同じ高さ位置に移置していてもよい。
【0027】
[コントローラの詳細]
コントローラCtrは、
図5に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0028】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、処理ユニット2を含む基板処理装置1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMは、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。なお、以下では、基板処理装置1の各部は、保持部10、供給部20及び駆動部30を含みうる。
【0029】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶してもよい。記憶部M2は、駆動部30のエンコーダ34からの回転位置に関するデータ、駆動部30の位置センサ35からの原点位置に関するデータ、検出部50からの処理液Lの検出データなどを記憶してもよい。記憶部M2は、基板Wの処理のための処理条件などを記憶してもよい。
【0030】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、基板処理装置1の各部を動作させるための信号を生成してもよい。
【0031】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を、基板処理装置1の各部に送信するように構成されている。
【0032】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、
図6に示されるように、ハードウェア上の構成として回路C1を含んでいてもよい。回路C1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路C1は、例えば、プロセッサC2と、メモリC3と、ストレージC4と、ドライバC5と、入出力ポートC6とを含んでいてもよい。
【0033】
プロセッサC2は、メモリC3及びストレージC4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートC6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを実現するように構成されていてもよい。メモリC3及びストレージC4は、記憶部M2として機能してもよい。ドライバC5は、基板処理装置1の各部をそれぞれ駆動するように構成された回路であってもよい。入出力ポートC6は、ドライバC5と基板処理装置1の各部との間で、信号の入出力を仲介するように構成されていてもよい。
【0034】
基板処理装置1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。基板処理装置1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路C1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路C1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路C1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサC2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサC2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサC2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0035】
[初期計測処理]
続いて、
図7及び
図8を参照して、初期計測処理について説明する。このとき、ノズル24は、作業者によってノズルアーム33に適切に取り付けられた初期状態にあるものとする。すなわち、ノズル24には異常が生じていないものとする。
【0036】
まず、コントローラCtrが駆動部30に指示して、旋回シャフト32を原点位置に移置させる(
図7のステップS11を参照)。このとき、
図8(a)に例示されるように、ノズル24は、液受部40の開口41の上方に位置する。次に、コントローラCtrが供給部20に指示して、ノズル24から処理液Lをダミー吐出させる(
図7のステップS12を参照)。
【0037】
この状態で、コントローラCtrが駆動部30に指示して、ノズル24からダミー吐出されている処理液Lの液柱が一方の検出部50Aにおいて検出されるまで、ノズルアーム33を旋回させる(
図7のステップS13及び
図8(b)の矢印Ar1を参照)。コントローラCtrは、エンコーダ34から受信したデータに基づいて、原点位置から、処理液Lの液柱が一方の検出部50Aにおいて検出された検出位置までの距離aを算出する(
図7のステップS13参照)。他方の検出部50Aについても同様にノズルアーム33を旋回させることにより(
図8(b)の矢印Ar2を参照)、コントローラCtrは、原点位置から、処理液Lの液柱が他方の検出部50Aにおいて検出された検出位置までの距離bを算出してもよい。なお、検出部50Aに代えて、原点位置から、検出部50Bにおいて処理液Lが検出された検出位置までの距離を算出してもよい。
【0038】
[異常検出方法]
続いて、
図9及び
図10を参照して、ノズルの異常状態の検出方法(基板処理方法)について説明する。このとき、
図10に例示されるように、ノズル24の位置及び姿勢が変わるという異常がノズル24に生じており、ノズル24からダミー吐出される処理液Lが鉛直方向に対して斜めに傾いているものとする。
【0039】
まず、コントローラCtrが駆動部30に指示して、旋回シャフト32を原点位置に移置させる(
図9のステップS21を参照)。上述のとおり、ノズル24が異常状態にあるので、旋回シャフト32が原点位置に位置していても、ノズル24からの処理液Lのダミー吐出位置(
図10(a)を参照)は、ノズル24が初期状態のときのダミー吐出位置(
図8(a)を参照)と異なっている。次に、コントローラCtrが供給部20に指示して、ノズル24から処理液Lをダミー吐出させる(
図9のステップS22を参照)。
【0040】
この状態で、コントローラCtrは、検出部50Cが処理液Lを検出したか否かを判断する(
図9のステップS23を参照)。検出部50Cが処理液Lを検出した場合(
図9のステップS23でYESを参照)、ノズルアーム33の長手方向においてダミー吐出位置がズレていることとなる。すなわち、コントローラCtrは、ノズル24が異常状態にあると判断する。ノズルアーム33は一般に、その長手方向において進退移動できる構成とはなっておらず、ダミー吐出位置のY方向におけるズレを補正することができない。したがって、この場合には、ノズル24の交換などの作業者によるメンテナンスが行われ(
図9のステップS24を参照)、異常状態の検出処理が終了する。
【0041】
一方、検出部50Cが処理液Lを検出しなかった場合(
図9のステップS23でNOを参照)、コントローラCtrが駆動部30に指示して、ノズル24からダミー吐出されている処理液Lの液柱が一方の検出部50Aにおいて検出されるまで、ノズルアーム33を旋回させる(
図9のステップS25及び
図10(b)の矢印Ar3を参照)。コントローラCtrは、エンコーダ34から受信したデータに基づいて、原点位置から、処理液Lの液柱が一方の検出部50Aにおいて検出された検出位置までの距離a’を算出する(
図9のステップS26を参照)。他方の検出部50Aについても同様にノズルアーム33を旋回させることにより(
図10(b)の矢印Ar4を参照)、コントローラCtrは、原点位置から、処理液Lの液柱が他方の検出部50Aにおいて検出された検出位置までの距離b’を算出してもよい。
【0042】
次に、コントローラCtrは、ステップS13で算出した距離aと、ステップS26で算出した距離a’との差分値δを算出する(
図9のステップS27を参照)。差分値δが0に近いほど、ノズル24の初期状態のときのダミー吐出位置からの乖離が小さいことを意味する。そこで、コントローラCtrは、差分値δが所定の許容範囲を超えるか否か(例えば、差分値δが±3mmの範囲外にあるか否か)を判断する(
図9のステップS28を参照)。差分値δが所定の許容範囲を超えると判断された場合(
図9のステップS28でYESを参照)、後述の補正が困難となる傾向にある。したがって、この場合には、ノズル24の交換などの作業者によるメンテナンスが行われ(
図9のステップS24を参照)、異常状態の検出処理が終了する。
【0043】
一方、差分値δが所定の許容範囲内にあると判断された場合(
図9のステップS28でNOを参照)、コントローラCtrは、差分値δに基づいて原点位置を補正する(
図9のステップS29を参照)。具体的には、コントローラCtrは、原点位置から差分値δの大きさズレた位置を新たな原点位置と見做して、後続の処理(例えば、基板Wへの処理液Lの供給処理)を行う。以上により、異常状態の検出処理が終了する。
【0044】
[作用]
以上の例によれば、ノズルアーム33が原点位置に位置するにも関わらず、ノズル24からダミー吐出された処理液Lを検出部50Cが検出した場合に、コントローラCtrがノズル24の異常を検出することが可能となる。
【0045】
以上の例によれば、検出部50が、一対の端子51と、計測器52とで構成されている。そのため、簡易な構成の検出部50を用いて、ノズル24の異常を精度よく検出することが可能となる。
【0046】
以上の例によれば、液受部40の内周面において略同じ高さに位置する一対の検出部50A、一対の検出部50B及び一対の検出部50Cが、液受部40に設けられている。そのため、水平に沿った複数の方向(X方向及びY方向)におけるダミー吐出位置のズレを検出することができる。したがって、ノズル24の異常をより精度よく検出することが可能となる。
【0047】
以上の例によれば、差分値δと所定の許容範囲とを比較することにより、ダミー吐出位置のズレの程度が比較的大きい状態を異常状態として識別することができる。そのため、ノズル24の異常をより精度よく検出することが可能となる。
【0048】
以上の例によれば、ダミー吐出位置のズレが大きすぎない場合に、差分値δを用いて原点位置が補正されるので、基板処理装置1を停止してメンテナンスを行うことなく、基板処理を継続できる。そのため、基板処理の生産性を高めることが可能となる。
【0049】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0050】
(1)ノズル24からダミー吐出された処理液Lが、鉛直方向に沿っている場合のみならず、鉛直方向に対して傾いている場合も、本開示の技術を適用することができる。例えば、
図3に例示されるように、上下方向において並んで配置される検出部50A,50Bを用いることにより、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが鉛直方向に対して傾いているか否かを検出することができる。具体的には、検出部50A,50Bの一方が処理液Lを検出したが他方が検出しなかった場合に、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが鉛直方向に対して傾いていると判断することができる。あるいは、検出部50A,50Bの端子51の突出量を異ならせることにより、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが所定の角度であるか否かを判断することができる。
【0051】
(2)
図11に示されるように、上下に位置し且つ上方から見て対向する一対の検出部50A,50Bを用いて、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが鉛直方向に対して傾いている場合の角度θを算出してもよい。具体的には、パラメータA,B,Yをそれぞれ、
A: 異常時において、原点位置から、検出部50Aで処理液Lが検出されるまでのノズルアーム33の移動距離
B: 異常時において、原点位置から、検出部50Bで処理液Lが検出されるまでのノズルアーム33の移動距離
Y: 検出部50A,50B間の離間距離
と定義したときに、角度θは次の式で規定される。
【数1】
コントローラCtrは、算出した角度θを用いて、ノズル24からダミー吐出された処理液Lの傾きを考慮して、ノズル24の位置を補正してもよい。
【0052】
(3)上記の例では、旋回シャフト32を中心軸としてノズル24が旋回移動するように構成されていたが、ノズル24は、水平に沿った任意の方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0053】
(4)計測器52は、例えば静電容量計であってもよい。この場合、一対の端子51に処理液Lが接触すると、コンデンサに予め蓄えられていた電荷が減少する。そのため、電化の減少に伴う電位の変化が検出されたか否かにより、処理液Lが液受部40の内周面近傍の検出空間を通過したか否かを検出できる。
【0054】
(5)
図12(a)に例示される検出部50を用いてもよい。当該検出部50は、液受部40の周壁に設けられた貫通孔40aに挿通された変位部材53と、変位部材53及び貫通孔40aの間を封止するように設けられた弾性膜材54と、機械式スイッチ55とを含んでいてもよい。ノズル24からダミー吐出された処理液Lが変位部材53の先端部に接触すると、変位部材53が下方に押し下げられるので、機械式スイッチ55のオン/オフが切り替えられる。これにより、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが検出空間を通過したか否かを、検出部50が検出することができる。当該検出部50は、機械式スイッチ55に代えて、あるいは機械式スイッチ55に加えて、荷重センサ56を含んでいてもよい。ノズル24からダミー吐出された処理液Lが変位部材53の先端部に接触すると、変位部材53が下方に押し下げられるので、変位部材53と荷重センサ56とを接続する弾性部材(バネ部材)56aが引っ張られる。そのため、荷重センサ56に荷重が作用する。これにより、荷重センサ56が検知する荷重の変化によって、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが検出空間を通過したか否かを、検出部50が検出することができる。
【0055】
(6)
図12(b)に例示される検出部50を用いてもよい。当該検出部50は、投光器57と、受光器58とを含む。投光器57からの光が処理液Lによって妨げられ、受光器58で検出できなかった場合に、ノズル24からダミー吐出された処理液Lが検出空間を通過したか否かを、検出部50が検出することができる。
【0056】
(7)上記の例では、ノズルアーム33を旋回させることにより、ノズル24が検出部50に対して移動していたが、液受部40自体を水平移動させてもよいし、検出部50を水平移動させてもよい。これらの場合も、液受部40又は検出部50の移動量量の変化に応じて、ダミー吐出位置のズレの程度を精度よく検出することが可能となる。
【0057】
(8)コントローラCtrは、差分値δと、差分値δを算出した日時とを対応付けて時系列データとして記憶してもよい。コントローラCtrは、当該時系列データに基づいて、ノズル24の異常状態の種類を推定してもよい。具体的には、時間の経過と共に差分値δが一方向に大きくなっているような時系列データの場合には、例えば、ノズル24やノズルアーム33等の劣化やノズル24の変形といった要因により、ダミー吐出位置が徐々にズレていると推定される。時間の経過によって差分値δが増減(振動)しているような場合には、例えば、ネジの緩みなどの要因により、ノズル24やノズルアーム33等が振動していると推定される。これらの異常状態の種類が推定できると、メンテナンスの方針を予測することができる。そのため、基板処理装置1のメンテナンスに要する時間を短縮しうる。したがって、基板処理の生産性を高めることが可能となる。
【0058】
(9)ノズル24の異常検出の処理(
図9の少なくともステップS21,S22,S24~S29)を定期的に実行してもよい。このとき、ステップS24が定期的な処理に含まれていてもよい。定期的とは、例えば、基板Wを数枚~数十枚処理するごとであってもよいし、所定の時間間隔ごとであってもよい。この場合、ノズル24に異常状態が発生しているか否かを継続的に監視することができる。そのため、基板処理の生産性を大きく損なうことなく、ノズル24の異常状態を早期発見することが可能となる。
【0059】
(10)コントローラCtrは、ノズル24が異常状態にあると判断した場合に、警報を報知してもよい。そのため、基板処理装置1は、例えば、音、画面上への文字表示、光などによる報知を行う報知器をさらに備えていてもよい。この場合、ノズル24に異常状態が発生したことを作業者が早期に把握できる。
【0060】
[他の例]
例1.基板処理装置の一例は、基板を保持するように構成された保持部と、保持部に保持されている基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルを含む供給部と、ノズルからダミー吐出された処理液を受容するように上方に向けて開放された開口を含む液受部と、ノズルを支持するノズルアームを駆動することにより、保持部に保持されている基板の上方と液受部との間でノズルを移動させるように構成された駆動部と、液受部に配置された検出部と、制御部とを備える。検出部は、ノズルからダミー吐出された処理液が、液受部の内周面近傍の検出空間を通過したか否かを検出するように構成されている。制御部は、ノズルアームが、開口の内側において予め設定された原点位置に位置するように駆動部を制御する第1の処理と、ノズルアームが原点位置に位置した状態で、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部が検出した場合に、ノズルが異常状態にあると判断する第2の処理とを実行するように構成されている。通常、ノズルがノズルアームに対して適切にセットされた初期状態では、ノズルアームが原点位置に位置するときにノズルからダミー吐出された処理液が、液受部の開口のうち検出空間よりも内側の内側空間を通過するように、原点位置が作業者によって調節される。そのため、ノズルアームが原点位置に位置するにも関わらず、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部が検出した場合には、ノズルからの処理液のダミー吐出位置がズレていることとなる。すなわち、ノズルの吐出口が初期状態とは異なる方向を向いていたり、ノズルの吐出口が初期状態とはズレて位置していることとなる。したがって、検出部からの検出信号に基づいて制御部がノズルの状態を判断することにより、ノズルの異常を検出することが可能となる。
【0061】
例2.例1の装置において、検出部は、液受部の内周面から突出し且つ互いに離間するように液受部に設けられた一対の端子と、一対の端子の間の電流又は電圧を計測するように構成された計測器とを含み、ノズルからダミー吐出された処理液が一対の端子を電気的に接続したときの計測器における値の変化に基づいて、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したか否かを検出するように構成されていてもよい。この場合、簡易な構成の検出部を用いて、ノズルの異常を検出することが可能となる。
【0062】
例3.例1の装置において、検出部は、液受部の内周面から突出し且つ上下方向に変位可能となるように液受部に設けられた変位部材と、変位部材の変位を検出するように構成された変位検出器とを含み、ノズルからダミー吐出された処理液が変位部材と接触したときの変位検出器における検出結果に基づいて、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したか否かを検出するように構成されていてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0063】
例4.例1の装置において、検出部は、液受部内に光を照射するように構成された投光器と、投光器と対向し且つ投光器からの光と受光可能な位置に配置された受光器とを含み、受光器による投光器からの受光の有無に基づいて、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したか否かを検出するように構成されていてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0064】
例5.例1~例4のいずれかの装置は、液受部の内周面において検出部と略同じ高さに位置するように液受部に配置された別の検出部をさらに備えていてもよい。この場合、複数の検出部を用いて、水平に沿った複数の方向におけるダミー吐出位置のズレを検出することができる。そのため、ノズルの異常をより精度よく検出することが可能となる。
【0065】
例6.例1~例5のいずれかの装置は、液受部の水平位置、又は、液受部の内周面からの検出部の突出量を変化させるように構成された別の駆動部をさらに備えていてもよい。この場合、ダミー吐出された処理液を検出部が検出するまで、液受部を水平移動させるか又は検出部の突出量を変化させることにより、ダミー吐出位置のズレを検出することができる。そのため、液受部の移動量又は検出部の突出量の変化に応じて、ダミー吐出位置のズレの程度を精度よく検出することが可能となる。
【0066】
例7.例1~例6のいずれかの装置において、制御部は、ノズルから処理液を吐出させるように供給部を制御しつつ、原点位置から、ノズルから吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部が検出する検出位置まで、ノズルアームを移動させるように、駆動部を制御する第3の処理と、原点位置から検出位置までノズルアームが移動した移動距離を算出する第4の処理と、ノズルが初期状態のときの原点位置から検出位置までの距離と、移動距離との差分値を算出する第5の処理と、差分値が所定の許容範囲を超えている場合に、ノズルが異常状態にあると判断する第6の処理とをさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、差分値と許容範囲とを比較することにより、ダミー吐出位置のズレの程度が比較的大きい状態を異常状態として識別することができる。そのため、ノズルの異常をより精度よく検出することが可能となる。
【0067】
例8.例7の装置において、制御部は、移動距離が前記許容範囲内にある場合に、差分値に基づいて原点位置を補正する第7の処理とをさらに実行するように構成されていてもよい。ダミー吐出位置のズレが大きすぎない場合に原点位置を補正することにより、装置を停止してメンテナンスを行うことなく、基板処理を継続できる。そのため、基板処理の生産性を高めることが可能となる。
【0068】
例9.例8の装置において、制御部は、差分値と、差分値を算出した日時とを対応付けて時系列データとして記憶する第8の処理と、時系列データに基づいて、ノズルの異常状態の種類を推定する第9の処理とをさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、推定されたノズルの異常状態の種類に応じて、メンテナンスの方針を予測することができる。そのため、装置のメンテナンスに要する時間を短縮しうる。したがって、基板処理の生産性を高めることが可能となる。
【0069】
例10.例7~例9のいずれかの装置において、制御部は、第1の処理、第3の処理及び第4の処理を含む一連の処理を定期的に実行するように構成されていてもよい。この場合、ノズルに異常状態が発生しているか否かを継続的に監視することができる。そのため、基板処理の生産性を大きく損なうことなく、ノズルの異常状態を早期発見することが可能となる。
【0070】
例11.例1~例10のいずれかの装置において、制御部は、ノズルが異常状態にあると判断した場合に警報を報知する第10の処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、ノズルに異常状態が発生したことを作業者が早期に把握できる。
【0071】
例12.例1~例11のいずれかの装置は、液受部の内周面において検出部とは異なる高さに位置するように液受部に配置されたさらに別の検出部を備えていてもよい。この場合、これらの2つの検出部における、ノズルからダミー吐出された処理液の検出状態に応じて、当該処理液が鉛直方向に対して傾いているか否かや、その傾きの角度を把握することが可能となる。
【0072】
例13.例12の装置において、検出部及びさらに別の検出部は、上下方向において並んで配置されており、制御部は、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部及びさらに別の検出部の一方が検出したが他方が検出しなかった場合に、ノズルからダミー吐出された処理液が鉛直方向に対して傾いていると判断する第11の処理を実行するように構成されていてもよい。
【0073】
例14.基板処理方法の一例は、保持部に保持されている基板の表面に処理液を供給するように構成されたノズルを支持するノズルアームを、液受部の開口であって、ノズルからダミー吐出された処理液を受容するように上方に向けて開放された開口の内側において予め設定された所定の原点位置に配置する第1の工程と、ノズルアームが原点位置に位置した状態で、ノズルからダミー吐出された処理液が液受部の内周面近傍の検出空間を通過したことを、液受部に配置された検出部が検出した場合に、ノズルが異常状態にあると判断する第2の工程とを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0074】
例15.例14の方法は、ノズルから処理液を吐出させつつ、原点位置から、ノズルから吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部が検出する検出位置まで、ノズルアームを移動させる第3の工程と、原点位置から検出位置までノズルアームが移動した移動距離を算出する第4の工程と、ノズルが初期状態のときの原点位置から検出位置までの距離と、移動距離との差分値を算出する第5の工程と、差分値が所定の許容範囲を超えている場合に、ノズルが異常状態にあると判断する第6の工程とをさらに含んでいてもよい。この場合、例7の装置と同様の作用効果が得られる。
【0075】
例16.例15の方法は、移動距離が前記許容範囲内にある場合に、差分値に基づいて原点位置を補正する第7の工程とをさらに含んでいてもよい。この場合、例8の装置と同様の作用効果が得られる。
【0076】
例17.例16の方法は、差分値と、差分値を算出した日時とを対応付けて時系列データとして記憶する第8の工程と、時系列データに基づいて、ノズルの異常状態の種類を推定する第9の工程とをさらに含んでいてもよい。この場合、例9の装置と同様の作用効果が得られる。
【0077】
例18.例15~例17のいずれかの方法は、第1の工程、第3の工程及び第4の工程を含む一連の工程を定期的に実施してもよい。この場合、例10の装置と同様の作用効果が得られる。
【0078】
例19.例14~例18のいずれかの方法は、ノズルが異常状態にあると判断された場合に警報を報知する第10の工程をさらに含んでいてもよい。この場合、例11の装置と同様の作用効果が得られる。
【0079】
例20.例14~例19のいずれかの方法は、ノズルアームが原点位置に位置した状態で、ノズルからダミー吐出された処理液が検出空間を通過したことを検出部及びさらに別の検出部の一方が検出したが他方が検出しなかった場合に、ノズルからダミー吐出された処理液が鉛直方向に対して傾いていると判断する第11の工程をさらに含み、さらに別の検出部は、液受部の内周面において検出部とは異なる高さに位置し且つ検出部と上下方向において並ぶように液受部に配置されていてもよい。この場合、例13の装置と同様の作用効果が得られる。
【0080】
例21.コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例は、例14~例20のいずれかの方法を基板処理装置に実行させるためのプログラムを記録していてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)又は伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…基板処理装置、2…処理ユニット、10…保持部、20…供給部、24…ノズル、30…駆動部、33…ノズルアーム、40…液受部、41…開口、50…検出部、51…端子、52…計測器、Ctr…コントローラ(制御部)、L…処理液、RM…記録媒体、W…基板。