(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】有機膜形成用材料、半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、パターン形成方法、及び有機膜形成用化合物
(51)【国際特許分類】
C08F 38/00 20060101AFI20240822BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20240822BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240822BHJP
C07D 319/24 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
C08F38/00
G03F7/11 502
H01L21/30 573
H01L21/30 578
C07D319/24
(21)【出願番号】P 2021021724
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】澤村 昂志
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-060680(JP,A)
【文献】特開2017-021329(JP,A)
【文献】特開2017-119670(JP,A)
【文献】特開2018-013768(JP,A)
【文献】特開2016-206676(JP,A)
【文献】特開2002-356551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 38/00-38/04
G03F 7/00-7/42
H01L 21/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤
を含有するものであることを特徴とする有機膜形成用材料。
【化1】
(式中、W
1は下記式(1W)のいずれかであり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中の
R
1
が結合するベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化2】
(式
(1W)中、これらの芳香環上に置換基を有してもよく、前記置換基としては炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、又は炭素数1~10のアルカノイルオキシ基である。)
【化3】
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(1C)、(1D)、または(1E)で示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機膜形成用材料。
【化4】
【化5】
【化6】
(上記式中のn1、R
1は前記と同じである。)
【請求項3】
前記(A)成分が、下記式(1F)、(1G)、または(1H)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用材料。
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項4】
前記(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料。
【請求項5】
前記(B)成分が、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料。
【請求項6】
前記有機膜形成用材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料。
【請求項7】
基板上に、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものであることを特徴とする半導体装置製造用基板。
【請求項8】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された前記被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項9】
半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された前記被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得ることを特徴とする有機膜の形成方法。
【請求項10】
前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の有機膜の形成方法。
【請求項11】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の有機膜の形成方法。
【請求項12】
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
被加工基板上に請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項18】
前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする請求項12から請求項17のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項19】
前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項12から請求項18のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることを特徴とする請求項19に記載のパターン形成方法。
【請求項21】
下記一般式(1A)で示されるものであることを特徴とする有機膜形成用化合物。
【化10】
(式中、W
1は下記式(1W)のいずれかであり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中の
R
1
が結合するベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化11】
(式
(1W)中、これらの芳香環上に置換基を有してもよく、前記置換基としては炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、又は炭素数1~10のアルカノイルオキシ基である。)
【化12】
【請求項22】
前記有機膜形成用化合物が、下記一般式(1C)、(1D)または(1E)で示されるものであることを特徴とする請求項21に記載の有機膜形成用化合物。
【化13】
【化14】
【化15】
(上記式中のn1、R
1は前記と同じである。)
【請求項23】
前記有機膜形成用化合物が、下記式(1F)、(1G)または(1H)で示されるものであることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の有機膜形成用化合物。
【化16】
【化17】
【化18】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程で使用される有機膜形成用材料、該材料を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、多層レジスト法によるパターン形成方法、及び上記材料に好適に用いられる有機膜形成用化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の高集積化と高速度化は、汎用技術として光露光を用いたリソグラフィー技術(光リソグラフィー)における光源の短波長化によるパターン寸法の微細化によって達成されてきた。このような微細な回路パターンを半導体装置基板(被加工基板)上に形成するためには、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板を加工する方法が用いられる。しかしながら、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しないため、近年では多層レジスト法による基板加工が一般化している。この方法は、フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより下層膜にパターンを転写し、更に下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0003】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この方法は、被加工基板上に有機樹脂含有組成物からなる有機下層膜材料を用いて塗布、焼成することにより有機下層膜(以下、有機膜)を成膜し、その上にケイ素含有樹脂含有組成物からなるレジスト中間膜材料を用いて塗布、焼成することによりケイ素含有膜(以下、ケイ素含有レジスト中間膜)として成膜し、その上に一般的な有機系フォトレジスト膜(以下、レジスト上層膜)を形成する。当該レジスト上層膜をパターニングした後、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行うと、有機系のレジスト上層膜はケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比を取ることが出来るため、レジスト上層膜パターンをケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持たないレジスト上層膜や、被加工基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト上層膜を用いても、通常、ケイ素含有レジスト中間膜はレジスト上層膜に比べて同等以下の膜厚であるため、容易にケイ素含有レジスト中間膜にパターンを転写することができる。続いてパターン転写されたケイ素含有レジスト中間膜をドライエッチングマスクとして酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングで有機膜にパターン転写すれば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つ有機膜にパターン転写することができる。このパターン転写された有機膜パターンをフッ素系ガスや塩素系ガスなどを用いてドライエッチングで基板にパターン転写することが出来る。
【0004】
一方、半導体装置の製造工程における微細化は、光リソグラフィー用光源の波長に由来する本質的な限界に近づきつつある。そのため、近年においては微細化に頼らない半導体装置の高集積化が検討されており、その方法の一つとしてマルチゲート構造等の複雑な構造を有する半導体装置が検討されており、一部は既に実用化されている。このような構造を多層レジスト法で形成する場合、被加工基板上で形成されたホール、トレンチ、フィン等の微小パターンを空隙なく膜で埋め込んだり、段差やパターン密集部分とパターンのない領域を膜で埋め込んで平坦化(planarization)可能な有機膜材料を適用することが出来る。このような有機膜材料を用いて段差基板上に平坦な有機膜表面を形成することによって、その上に成膜するケイ素含有レジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、光リソグラフィーの焦点裕度やその後の被加工基板の加工工程におけるマージン低下を抑制することが出来る。これにより、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。一方、単層レジスト法では、段差やパターンのある被加工基板を埋めるためには、上層レジスト膜の膜厚が厚くなり、それによる露光現像後のパターン倒れや、露光時の基板からの反射によりパターン形状劣化など、露光時のパターン形成裕度が狭くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが困難である。
【0005】
更に次世代の半導体装置の高速度化の手法として、例えば、歪シリコンやガリウムヒ素などを用いた電子移動度の高い新規材料やオングストローム単位で制御された超薄膜ポリシリコン等の精密材料の適用も検討され始めている。しかしながら、このような新規精密材料が適用されている被加工基板では、上記のような有機膜材料による平坦化膜形成時の条件、例えば空気中、300℃以上の成膜条件においては、空気中の酸素によって被加工基板の材料が腐食され、半導体装置の高速度化が材料設計どおりの性能を発揮することが出来ず、工業的な生産として成り立つ歩留まりに達成しない可能性がある。そこで、このような高温条件下の空気による基板の腐食に起因する歩留まりの低下を避けるため、不活性ガス中で成膜出来る有機膜材料が期待されている。
【0006】
従来、フェノール系やナフトール系化合物に対して縮合剤としてケトン類やアルデヒド類などのカルボニル化合物や芳香族アルコール類を用いた縮合樹脂類が多層レジスト法用の有機膜形成用材料として知られている。例えば、特許文献1に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特許文献2に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特許文献3に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特許文献4に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂などが例示できる。このような材料は、架橋剤としてのメチロール化合物による架橋や、空気中の酸素の作用による芳香環のα位での酸化とその後の縮合による架橋反応による硬化作用により、次工程で使用される塗布膜材料に対する溶剤耐性を持つ膜として成膜されている。
【0007】
更に、三重結合を硬化性樹脂の分子間架橋基として適用している有機膜材料が知られている。例えば、特許文献5~15などが知られている。これらの材料では、前述のメチロール由来の架橋だけでなく三重結合の重合による架橋により、溶剤耐性を有する硬化膜が形成されている。しかしながら、これらの有機膜形成用材料は、耐熱性に優れるものの平坦性、基板への密着性といった特性は不十分であり改善の余地を残すものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-128509号公報
【文献】特開2006-293298号公報
【文献】特開2006-285095号公報
【文献】特開2010-122656号公報
【文献】特表平11-512430号公報
【文献】特開2005-41938号公報
【文献】特開2009-206447号
【文献】特開2010-181605号公報
【文献】特開2012-215842号公報
【文献】WO2014-208324号公報
【文献】特開2016-44272号公報
【文献】特開2016-60886号公報
【文献】特開2017-14193号公報
【文献】特開2017-119671号公報
【文献】特開2018-92170号公報公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、空気中のみならず、不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、耐熱性や、基板に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板への成膜性、密着性が良好な有機膜を形成できる化合物、及び該化合物を含有する有機膜形成用材料を提供することを目的とする。更に、本発明は当該材料を用いた半導体装置製造用基板、有機膜の形成方法、及びパターン形成方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明では、
有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤
を含有する有機膜形成用材料を提供する。
【化1】
(式中、W
1は4または6価の有機基であり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中のベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化2】
【0011】
このような有機膜形成用材料であれば、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、基板への良好な密着性、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成することができる有機膜形成用組成物となる。
【0012】
また、前記(A)成分が、下記一般式(1C)、(1D)、または(1E)で示される化合物であることが好ましい。
【化3】
【化4】
【化5】
(上記式中のn1、R
1は前記と同じである。)
【0013】
有機膜形成用化合物に上記のようにスピロ構造またはカルド構造を導入することにより主骨格に屈曲性を導入することによって分子間の相互作用を緩和、結晶性を阻害することで、有機溶剤への溶解性と成膜性を向上させ、かつ、耐熱性と埋め込み/平坦化特性という相反する性能を両立することを可能とする。
【0014】
更に、前記(A)成分が、下記式(1F)、(1G)、または(1H)で示される化合物であることが好ましい。
【化6】
【化7】
【化8】
【0015】
有機膜形成用化合物に上記のような末端構造を有することが、耐熱性の観点から好ましい。
【0016】
加えて、前記(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10であることが好ましい。
【0017】
有機膜形成用化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0018】
また、前記(B)成分が、沸点が180度未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180度以上の有機溶剤1種以上との混合物であることが好ましい。
【0019】
このような有機膜形成用材料であれば、有機膜形成用化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、より高度な埋め込み、平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0020】
前記有機膜形成用材料が、更に(C)酸発生剤、(D)界面活性剤、(E)架橋剤、及び(F)可塑剤のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0021】
本発明の有機膜形成用材料は、その目的に応じて、上記(C)~(F)成分のうち1種以上を含有するものとすることができる。
【0022】
更に、本発明では、基板上に、上記の有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供する。
【0023】
本発明の有機膜形成用材料であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦化不足による有機膜表面の凹凸のない有機膜となる。本発明の有機膜形成用材料で平坦化された半導体装置製造用基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能になる。
【0024】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された前記被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する。
【0025】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された前記被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5秒~600秒の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理して硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する。
【0026】
本発明の有機膜の形成方法で形成された半導体装置の製造工程で適用される有機膜は、高い耐熱性と高度な埋め込み/平坦化特性を有しており、半導体装置の製造工程で用いると半導体装置の歩留まりが良好となる。
【0027】
また、前記不活性ガス中の酸素濃度を1%以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の有機膜形成用材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で加熱しても、昇華物を発生することなく十分に硬化し、また、基板への密着性に優れる有機膜を形成することができる。
【0029】
加えて、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0031】
また、本発明では、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0032】
更に、本発明では、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0033】
加えて、本発明では、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0034】
また、本発明では、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜、チタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、さらに、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0035】
本発明の有機膜形成用材料は、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができる。半導体装置の製造工程において、このような本発明のパターン形成方法で回路パターンを形成すれば、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
【0036】
また、前記無機ハードマスクを、CVD法あるいはALD法によって形成することが好ましい。
【0037】
本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスクを形成することができる。
【0038】
更に、前記回路パターンの形成において、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0039】
加えて、前記回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0040】
本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0041】
また、前記被加工基板として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0042】
更に、前記金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0043】
本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工基板を加工してパターンを形成することができる。
【0044】
また、本発明では、下記一般式(1A)で示されるものである有機膜形成用化合物を提供する。
【化9】
(式中、W
1は4または6価の有機基であり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中のベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化10】
【0045】
このような化合物は、空気中のみならず不活性ガス中での成膜条件でも硬化し、高い耐熱性、高度な埋め込み/平坦化特性を有し、さらに酸素を含むヘテロ環であるジオキシン構造の作用により基板への密着性に優れた有機膜を形成することができる有機膜形成用化合物となる。
【0046】
更に、前記有機膜形成用化合物が、下記一般式(1C)、(1D)または(1E)で示されるものであることが好ましい。
【化11】
【化12】
【化13】
(上記式中のn1、R
1は前記と同じである。)
【0047】
このような化合物であれば、カルド構造やスピロ構造の作用により耐熱性、埋め込み/平坦化特性を損なわず優れた溶剤溶解性を付与することができるとともに被加工基板の形状によらず成膜性に優れた有機膜形成用化合物となる。
【0048】
加えて、前記有機膜形成用化合物が、下記式(1F)、(1G)または(1H)で示されるものであることが好ましい。
【化14】
【化15】
【化16】
【0049】
このような化合物であれば、空気中、不活性ガス中のいずれの焼成条件でも副生物の発生なく硬化可能な優れた耐熱性を示す有機膜形成用化合物となる。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明の有機膜形成用化合物は、基板の腐食が防止される不活性ガス中での成膜においても副生物を発生することなく硬化し、高度な埋め込みおよび平坦化特性、耐熱性、エッチング耐性、成膜性、密着性を併せ持つ有機膜を形成するために有用な化合物となる。また、この化合物を含む有機膜形成用材料は、優れた埋め込み/平坦化特性を有するとともに、耐熱性、エッチング耐性、基板への密着性、成膜性等の諸特性を兼ね備えた有機膜を形成する材料となる。そのため、例えば、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法といった多層レジスト法における有機膜材料、あるいは、半導体装置製造用平坦化材料として極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用材料から形成される有機膜は、耐熱性に優れるため、当該有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合でも熱分解による膜厚変動が無く、パターン形成に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例の説明図である。
【
図3】実施例における埋め込み特性評価方法の説明図である。
【
図4】実施例における平坦化特性評価方法の説明図である。
【
図5】実施例における密着性測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
上述のように、基板の腐食を防止するため、不活性ガス中の成膜条件、例えば、300℃以上においても副生物が発生することなく、基板上に形成されたパターンの埋め込みや平坦化特性に優れるだけでなく、基板加工時のドライエッチング耐性も良好な有機膜を形成できるとともに、当該有機膜上にCVDハードマスクを形成する場合においても、熱分解による有機膜の膜厚変動のない有機膜形成用材料、当該材料を用いたパターン形成方法に有用な有機膜形成用化合物の開発が求められていた。
【0053】
通常、有機膜を形成する際には、有機膜形成用化合物を有機溶剤で溶解して組成物とし、これを半導体装置の構造や配線等が形成されている基板上に塗布して、焼成することで有機膜を形成する。組成物の塗布直後は基板上の段差構造の形状に沿った塗布膜が形成されるが、該塗布膜を焼成すると、硬化するまでの間に有機溶剤の殆どが蒸発し、基板上に残った有機膜形成用化合物によって有機膜が形成される。本発明者らは、このとき基板上に残った有機膜形成用化合物が十分な熱流動性を有するものであれば、熱流動によって塗布直後の段差形状を平坦化し、平坦な膜を形成することが可能であることに想到した。
【0054】
本発明者らは、更に鋭意検討を重ね、上記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物であれば、R1で示される置換基の作用により空気中のみならず、不活性ガス中においても従来の下層膜材料と同等の熱硬化性を有し、かつ、ジオキシン環で連結された部分構造により密着性、熱流動性、高度な埋め込み/平坦化特性を付与することで、CVDハードマスクを形成する場合においても熱分解による塗布膜厚変動の無い耐熱性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0055】
即ち、本発明は、
有機膜形成用材料であって、
(A)下記一般式(1A)で示される有機膜形成用化合物、及び(B)有機溶剤
を含有するものである有機膜形成用材料である。
【化17】
(式中、W
1は4または6価の有機基であり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中のベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化18】
【0056】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
<有機膜形成用化合物>
本発明の有機膜形成用の化合物は、下記一般式(1A)で示される有機膜形用化合物である。
【化19】
(式中、W
1は4または6価の有機基であり、n1は1または2の整数を表し、n2は2または3を表し、R
1はそれぞれ独立に下記式(1B)のいずれかを表す。また、式中のベンゼン環の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化20】
【0058】
上記一般式(1A)中のW1は少なくとも1つ以上の芳香環を有し、破線部で表される2つの酸素原子との結合はW1を構成する芳香環上の置換基として結合していることが好ましい。この2つの酸素原子とW1との結合は芳香環上に隣接して結合しており、1,4-ジオキシン環を形成することが好ましい。
【0059】
上記一般式(1A)のような化合物はヘテロ環構造を有することにより耐熱性、密着性に優れ、また、R1で示される置換基の作用により大気中および不活性ガス下で硬化性を付与することが可能となる。そのため本発明の化合物を用いて形成した有機膜は、CVD法やALD法による無機ハードマスクを有機膜上に形成する際に、有機膜の耐熱性不足により生じる欠陥、密着力不足による生じる膜剥がれを防止することが可能となる。
【0060】
上記一般式(1A)中のW1としては下記などを例示することができ、これらの芳香環上に置換基を有してもよく、置換基としては炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のアルキニル基およびアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、ニトロ基、ハロゲン基、ニトリル基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基、炭素数1~10のアルカノイルオキシ基などを例示することができる。これらの中でも耐熱性、平坦性の観点からフルオレン、スピロ環構造を有するものが好ましい。
【0061】
【0062】
本発明の有機膜形成用の化合物は、下記一般式(1C)、(1D)または(1E)で表される構造を持つ化合物であることが好ましい。
【化22】
【化23】
【化24】
(上記式中のn1、R
1は前記と同じである。)
【0063】
上記一般式(1C)、(1D)および(1E)で示される主骨格に組み込まれたフルオレン構造またはスピロ構造により、優れた有機溶剤への溶解性を付与し、かつ、耐熱性と埋め込み/平坦化特性という相反する特性を両立することが可能となる。
【0064】
本発明の有機膜形成用の化合物は、下記式(1F)、(1G)、または(1H)で示されるものであることが好ましい。
【化25】
【化26】
【化27】
【0065】
上記式(1F)、(1G)および(1H)の末端構造に導入したエチニル基の作用により有機膜をベークし熱硬化させる際に副生物が生成しないため膜の熱シュリンクを抑制できる。
【0066】
本発明の有機膜形成用化合物はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.10である有機膜形成用化合物であることが好ましい。
【0067】
有機膜用形成用化合物のMw/Mnをこのような範囲で制御することで埋め込み特性と平坦性に優れた有機膜を形成することができる。
【0068】
上記のようなMw/Mnの範囲のものであれば、有機膜形成用化合物の熱流動性が更に良好なものとなるため、組成物に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となる有機膜を形成することができる。
【0069】
[有機膜形成用化合物の製造方法]
本発明の有機膜形成用化合物を得る手段としては、下記に示すような塩基触媒を用いて行う置換基R1を有するジフルオロベンゼン類とテトラオール類またはヘキサオール類との置換反応などにより合成することが出来る。このときテトラオール類またはヘキサオール類は上記で説明した通り、芳香環上に隣接したフェノール性水酸基を2組または3組有する化合物であることが好ましい。また、合成に用いる置換基R1を有するジフルオロベンゼン類、テトラオール類、ヘキサオール類は単独または2種以上用いることもできる。これらは要求される特性に応じて適宜選択し組み合わせることができる。下記式中のW1、R1、n1、n2は先記と同じである。
【0070】
【0071】
このときに用いる塩基触媒として炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、リン酸カリウム等の無機塩基化合物、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン化合等が挙げられ、これらを単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの触媒の使用量は原料のテトラオール類またはヘキサオール類の水酸基1モルに対して好ましくは0.1~20モル、より好ましくは0.2~10モルの範囲である。
【0072】
このときに用いられる溶媒としては、上記反応に不活性な溶剤であれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、水等、これらを単独または混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲で使用でき、反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温~150℃が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0073】
反応方法としては、ジフルオロベンゼン類、テトラオール類またはヘキサオール類を溶媒中に一括で仕込む方法、ジフルオロベンゼン類とテトラオール類またはヘキサオール類を各々または混合し、分散または溶解したものを滴下して仕込む方法、ジフルオロベンゼン類またはテトラオール類またはヘキサオール類のいずれか一方を溶媒中に分散または溶解後、溶剤に分散または溶解したもう一方を滴下して仕込む方法などがある。また、ジフルオロベンゼン類、テトラオール類またはヘキサオール類をそれぞれ複数仕込む場合は、あらかじめ混合し反応させてもよいし、個別に順次反応させることもできる。塩基触媒を用いる場合は、ジフルオロベンゼン類またはテトラオール類またはヘキサオール類と一括に仕込む方法、塩基触媒をあらかじめ分散または溶解した後に滴下する方法などが挙げられる。
【0074】
得られた反応液は系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄を行って回収することもできる。
【0075】
分液洗浄に使用する有機溶剤としては、化合物を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物等を挙げることができる。この際に使用する洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0076】
分液洗浄の際に系内の未反応原料または酸性成分を除去するため、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としては、具体的には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
【0077】
更に、分液洗浄の際に系内の未反応原料、金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
【0078】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる。分液洗浄は、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0079】
上記の塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0080】
更に、分液操作後の反応生成物は減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜形成用材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
【0081】
このときの溶剤としては、化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0082】
上記の反応には、ジフルオロベンゼン類、テトラオール類またはヘキサオール類を要求性能に合わせて組み合わせることが可能である。具体的には溶剤溶解性、密着性、硬化性、埋め込み/平坦化特性、エッチング耐性、成膜性に寄与する置換基など所望の要求性能に合せて導入したものを用いることができる。これらの化合物を用いた有機膜材料は埋め込み/平坦化特性と耐熱性を高い次元で両立することが可能である。
【0083】
以上のように、本発明の有機膜形成用化合物であれば、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物を与えるものとなる。
【0084】
なお、本発明において、平坦化特性とは、基板の表面を平坦化する性能のことである。本発明の有機膜形成用化合物を含有する組成物であれば、例えば、
図1に示されるように、基板1上に有機膜形成用組成物3’を塗布し、加熱して有機膜3を形成することによって、基板1における100nmの段差を30nm以下まで低減することが可能である。なお、
図1に示される段差形状は、半導体装置製造用基板における段差形状の典型例を示すものであって、本発明の有機膜形成用化合物を含有する組成物によって、平坦化することのできる基板の段差形状は、もちろんこれに限定されるものではない。
【0085】
<有機膜形成用材料>
また、本発明では、有機膜形成用材料であって、(A)上述の一般式(1A)で示される本発明の有機膜形成用化合物及び(B)有機溶剤を含有する有機膜形成用材料(有機膜形成用組成物)を提供する。なお、本発明の有機膜形成用材料において、上述の本発明の有機膜形成用化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
本発明の有機膜形成用材料において使用可能な有機溶剤としては、上記の化合物、及びその他添加剤等の材料に含まれる構成成分が溶解するものであれば特に制限はない。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている溶剤などの沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。有機溶剤の配合量は、(A)上記化合物100部に対して好ましくは200~10,000部、より好ましくは300~5,000部である。
【0087】
このような有機膜形成用材料であれば、回転塗布で塗布することができ、また上述のような本発明の有機膜形成用化合物を含有するため、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0088】
更に、本発明の有機膜形成用材料には有機溶剤として、上記の沸点が180℃未満の溶剤に沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成用化合物を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノー2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独または混合し用いても良い。
【0089】
上記高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成用材料を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよく、添加する高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、更に好ましくは200℃~300℃である。このような沸点であれば沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、このような沸点であれば沸点が高いためベーク後も膜中に揮発せずに残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0090】
また、上記高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性などの膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
【0091】
このような有機膜形成用材料であれば、上記の有機膜形成化合物に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。
【0092】
本発明の有機膜形成用材料においては、硬化反応を更に促進させるために(C)酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0093】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0094】
本発明の有機膜形成用材料には、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100部に対して好ましくは0.01~10部、より好ましくは0.05~5部である。
【0095】
また、本発明の有機膜形成用材料には、硬化性を高め、上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、(E)架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤を例示できる。
【0096】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。架橋剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~50部である。
【0097】
また、本発明の有機膜形成用材料には、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。可塑剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~30部である。
【0098】
また、本発明の有機膜形成用材料には、埋め込み/平坦化特性を可塑剤と同じように付与するための添加剤として、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。これら液状添加剤を添加する場合の添加量は、上記化合物100部に対して好ましくは1~100部、より好ましくは5~50部である。
【0099】
【化29】
(式中、X
1は水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Y
1は炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0100】
【化30】
(式中、X
aは炭素数1~4のアルキル基である。Y
aは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。lは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0101】
以上のように、本発明の有機膜形成用材料であれば、400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用材料となる。従って、本発明の有機膜形成用材料は、2層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジスト法、ケイ素含有レジスト中間膜又は無機ハードマスク及び有機反射防止膜を用いた4層レジスト法等といった多層レジスト法の有機膜形成用材料として、極めて有用である。また、本発明の有機膜形成用材料は、不活性ガス中における成膜においても副生物が発生することなく、優れた埋め込み/平坦化特性を有するため、多層レジスト法以外の半導体装置製造工程における平坦化材料としても好適に用いることができる。
【0102】
<半導体装置製造用基板>
また、本発明では、基板上に、上記の有機膜形成用材料が硬化した有機膜が形成されたものである半導体装置製造用基板を提供する。
【0103】
本発明の有機膜形成用材料から形成された有機膜であれば、高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つことで、埋め込み不良による微小空孔や平坦化不足による有機膜表面の凹凸のない有機膜となり、このような有機膜で平坦化された半導体装置基板は、パターニング時のプロセス裕度が広くなり、歩留まり良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0104】
<有機膜の形成方法>
本発明では、半導体装置の製造工程で適用される有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上記の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された上記被加工基板を不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10秒~7200秒の範囲で熱処理をして硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する(1段ベーク)。
【0105】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される段差基板の表面を平坦化することのできる有機膜の形成方法であって、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を回転塗布し、該有機膜形成用材料が塗布された前記被加工基板を空気中で50℃以上300℃以下の温度で5~600秒間の範囲で熱処理して塗布膜を形成し、続いて不活性ガス雰囲気下で200℃以上600℃以下の温度、好ましくは250℃以上の温度で10~7200秒間の範囲で熱処理して硬化膜を得る有機膜の形成方法を提供する(2段ベーク)。
【0106】
この有機膜形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用材料を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。スピンコート法を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。回転塗布後、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。なお、このベークにより、有機膜形成用材料中の溶媒を蒸発させることができるため、有機膜上にレジスト上層膜やケイ素含有レジスト中間膜を形成する場合にも、ミキシングを防止することができる。
【0107】
有機膜(有機下層膜)を形成するための加熱成膜工程は1段ベーク、2段ベークまたは3段以上の多段ベークを適用することが出来るが、1段ベークまたは2段ベークが経済的に好ましい。
【0108】
1段ベークによる成膜は、不活性ガス雰囲気下で50℃以上600℃以下の温度で10~7200秒間の範囲、好ましくは150℃以上500℃以下の温度で10~3600秒間の範囲で行うのが好ましい。このような条件で熱処理することで、熱流動による平坦化と架橋反応を促進させることが出来る。
【0109】
多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素含有レジスト中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素含有レジスト中間膜を適用する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素含有レジスト中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素含有レジスト中間膜形成用組成物による有機膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。CVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0110】
一方、2段ベークによる成膜は、1段目のベークとして、空気中の酸素による基板の腐食の影響を考えると、空気中での処理温度は50℃以上300℃以下好ましくは250℃以下で5~600秒間の範囲で行う。2段目のベークは不活性ガス中で行い、ベーク温度としては、1段目のベーク温度より高く、200℃以上600℃以下好ましくは250℃以上500℃以下の温度で、10~7200秒間の範囲で行うのが好ましい。
【0111】
多層レジスト法ではこの得られた膜の上に塗布型ケイ素含有レジスト中間膜やCVDハードマスクを形成する場合がある。塗布型ケイ素含有レジスト中間膜を適用する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜を成膜する温度より高い温度での成膜が好ましい。通常、ケイ素含有レジスト中間膜は100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上350℃以下で成膜される。この温度より高い温度で有機膜を成膜すると、ケイ素含有レジスト中間膜形成用組成物による有機膜の溶解を防ぎ、当該組成物とミキシングしない有機膜を形成することができる。2段ベークでCVDハードマスクを適用する場合は、CVDハードマスクを形成する温度より高い温度で有機膜を成膜することが好ましい。CVDハードマスクを形成する温度としては、150℃以上500℃以下の温度を例示することが出来る。
【0112】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機下層膜として機能する有機膜の形成方法であって、被加工基板の腐食を防止するため、被加工基板を酸素濃度1%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成する有機膜形成方法を提供する。
【0113】
この有機膜形成方法では、まず、上述の本発明の有機膜形成用材料を、被加工基板上に回転塗布(スピンコート)する。回転塗布後、2段ベークでは、まず、空気中、300℃以下で一段目のベークをした後、酸素濃度1%以下の雰囲気で2段目のベークをする。1段ベークの場合は、初めの空気中での1段目のベークをスキップすればよい。なお、ベーク中の雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを例示出来る。本発明の有機膜形成用材料であれば、このような不活性ガス雰囲気中で焼成しても、昇華物の発生することなく十分に硬化した有機膜を形成することができる。
【0114】
また、本発明の有機膜の形成方法では、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが出来る。上述のように、本発明の有機膜形成用材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。つまり、本発明の有機膜の形成方法は、このような被加工基板上に平坦な有機膜を形成する場合に特に有用である。
【0115】
なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30~20,000nmとすることが好ましく、特に50~15,000nmとすることが好ましい。
【0116】
また、上記の有機膜の形成方法は、本発明の有機膜形成用材料を用いて有機下層膜用の有機膜を形成する場合と、平坦化膜用の有機膜を形成する場合の両方に適用可能である。
【0117】
<パターン形成方法>
[ケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法]
本発明では、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するケイ素含有レジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして上記ケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0118】
被加工基板としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
【0119】
被加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50~10,000nm、特に100~5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
【0120】
なお、被加工基板上の金属として、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、コバルト、マンガン、モリブデン、又はこれらの合金を含むものを用いることが好ましい。
【0121】
また、被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
【0122】
被加工基板上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成する際には、上述の本発明の有機膜形成方法を適用すればよい。
【0123】
次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜(ケイ素含有レジスト中間膜)を形成する。ケイ素含有レジスト中間膜材料としては、ポリシロキサンベースの中間膜材料が好ましい。ケイ素含有レジスト中間膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用材料として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト中間膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造またはポリシロキサン構造中に有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
【0124】
次に、ケイ素含有レジスト中間膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料をスピンコート後、60~180℃で10~300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30~500nmが好ましく、特に50~400nmが好ましい。
【0125】
次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
【0126】
なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、3~20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
【0127】
また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0128】
次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてケイ素含有レジスト中間膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うケイ素含有レジスト中間膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを形成する。
【0129】
次に、パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして有機膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスに対して有機物に比較して高いエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト中間膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成することが出来る。
【0130】
次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工基板にエッチングでパターンを転写する。被加工基板(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工基板がSiO2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト中間膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト中間膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0131】
本発明の有機膜形成用材料を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工基板のエッチング時のエッチング耐性に優れたものとすることができる。
【0132】
[ケイ素含有レジスト中間膜と有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてケイ素含有レジスト中間膜を形成し、該ケイ素含有レジスト中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして上記有機反射防止膜と上記ケイ素含有レジスト中間膜にドライエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト中間膜をマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0133】
なお、この方法は、ケイ素含有レジスト中間膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0134】
有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いてスピンコートで形成することができる。
【0135】
[無機ハードマスクを用いた3層レジスト法]
また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用材料を用いた3層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして上記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0136】
なお、この方法は、有機膜の上にケイ素含有レジスト中間膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト中間膜を用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0137】
ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)、チタン酸化膜及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002-334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5~200nm、より好ましくは10~100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300~500℃となるために、有機膜としては300~500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用組成物を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃~500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
【0138】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジスト法]
また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用材料を用いた4層レジスト法によるパターン形成方法として、被加工基板上に上述の本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜、チタン酸化膜及びチタン窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして上記有機反射防止膜と上記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして上記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして上記被加工基板にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0139】
なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジスト法と同様にして行うことができる。
【0140】
特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0141】
ここで、本発明の3層レジスト法によるパターン形成方法の一例を
図2(A)~(F)に示す。3層レジスト法の場合、
図2(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用材料を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、
図2(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、
図2(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、
図2(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト中間膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを形成する。次いで、
図2(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、
図2(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト中間膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
【0142】
無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト中間膜4のエッチングを行ってもよい。
【0143】
以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジスト法によって、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【実施例】
【0144】
以下、合成例、実施例、及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、分子量及び分散度としては、テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0145】
合成例 有機膜形成用材料用化合物の合成
有機膜形成用材料用の化合物(A1)~(A7)の合成には下記に示すテトラオールまたはヘキサオール:(B1)~(B4)、フルオロベンゼン:(C1)~(C3)を用いた。また、比較例用化合物(R1)~(R5)には比較例用合成原料(D1)~(D7)を用いた。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
[合成例1]化合物(A1)の合成
テトラオール(B1)20.0g、フルオロベンゼン(C1)24.7g、炭酸カリウム36.0gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温160℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A1)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A1):Mw=640、Mw/Mn=1.03
【化34】
【0150】
[合成例2]化合物(A2)の合成
テトラオール(B1)20.0g、フルオロベンゼン(C2)20.3g、炭酸カリウム36.0gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A2)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A2):Mw=570、Mw/Mn=1.05
【化35】
【0151】
[合成例3]化合物(A3)の合成
テトラオール(B2)20.0g、フルオロベンゼン(C1)22.3g、炭酸カリウム32.1gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温160℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A3)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A3):Mw=670、Mw/Mn=1.02
【化36】
【0152】
[合成例4]化合物(A4)の合成
テトラオール(B2)20.0g、フルオロベンゼン(C2)18.1g、炭酸カリウム32.1gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A4)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A4):Mw=610、Mw/Mn=1.04
【化37】
【0153】
[合成例5]化合物(A5)の合成
テトラオール(B3)20.0g、フルオロベンゼン(C2)18.1g、炭酸カリウム25.4gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A5)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A5):Mw=720、Mw/Mn=1.05
【化38】
【0154】
[合成例6]化合物(A6)の合成
テトラオール(B3)20.0g、フルオロベンゼン(C3)16.2g、炭酸カリウム25.4gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温120℃で8時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、メタノール400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A6)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A6):Mw=760、Mw/Mn=1.04
【化39】
【0155】
[合成例7]化合物(A7)の合成
ヘキサオール(B4)20.0g、フルオロベンゼン(C2)25.9g、炭酸カリウム45.4gにN-メチルピロリドン250gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン400mlと純水400mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、メタノール350gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(A7)を下記に示す混合物として得た。LCで測定した異性体比率を合せて示す。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A7):Mw=790、Mw/Mn=1.08
【化40】
【0156】
[合成例8]比較例用化合物(R1)の合成
【化41】
比較例用合成原料(D1)20.0g、比較例用合成原料(D2)16.4g、炭酸カリウム23.3gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、メタノール350gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R1)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R1):Mw=580、Mw/Mn=1.03
【0157】
[合成例9]比較例用化合物(R2)の合成
【化42】
比較例用合成原料(D3)20g、トリメチルシリルアセチレン8.4g、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム( I I ) 1.0g、ヨウ化銅(I ) 0.4g、トリエチルアミン20g、THF150gを加え、窒素雰囲気下、内温70
℃で8時間反応を行った。室温まで冷却後、不溶分をろ別し、メタノール300gに加えて晶出した。得られた結晶を酢酸エチル300mlに溶解し、3%塩酸水溶液100ml、3%炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、純水100mlで5回の順に洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。減圧乾固した固体に炭酸カリウム16.0g、THF80g、メタノール30gを加え、室温で4 時間反応を行った。室温まで冷却後、有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF60gを加え均一溶液とした後、メタノール200gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール100gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R2)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R2):Mw=660、Mw/Mn=1.01
【0158】
[合成例10]比較例用化合物(R3)の合成
【化43】
比較例用合成原料(D4)10.0g、比較例用合成原料(D5)39.3g、炭酸カリウム24.0gにN-メチルピロリドン200gを加え、窒素雰囲気下、内温140℃で24時間反応を行った。室温で冷却後、反応液にメチルイソブチルケトン400mlと純水300mlを加え均一化させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100mlで2回、純水100mlで5回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF100gを加え均一溶液とした後、メタノール400gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール300gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R3)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R3):Mw=1520、Mw/Mn=1.06
【0159】
[合成例11]比較例用化合物(R4)の合成
【化44】
比較例用合成原料(D6)30.0g、ヨウ化銅( I )0.03g、テトラメチルエチレンジアミン0.20gにトルエン120gを加え、エアバブラーから空気をバブリングしつつ内温50℃で3時間反応させた。室温で冷却後、濃塩酸20gとメタノール500
gの混合液に加え結晶を析出させた。沈降した結晶をろ過で分別し、メタノール200gで5回洗浄を行い回収した。回収した結晶を70℃で真空乾燥することで(R4)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R4):Mw=3100、Mw/Mn=1.85
【0160】
[合成例12]比較例用化合物(R5)の合成
【化45】
窒素雰囲気下、比較例用合成原料(D7)80g、37%ホルマリン溶液22g、及び1,2-ジクロロエタン250gを液温70℃で均一溶液とした後、メタンスルホン酸5gをゆっくり加え、液温80℃で12時間反応を行った。室温まで冷却後、MIBK500mlを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF300gを加え均一溶液とした後、ヘキサン2000gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥して化合物(R5)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(R5):Mw=3000、Mw/Mn=1.58
【0161】
上記で得られた化合物(A1)~(A7)の構造式、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を表1、表2に一覧にして示す。また、比較例に用いた化合物(R1)~(R5)についても同様に表3に合わせて示した。
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)の調製
上記化合物(A1)~(A7)および(R1)~(R5)、高沸点溶剤として(S1)1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃、(S2)トリプロピレングリコールモノメチルエーテル:沸点242℃を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)又はシクロヘキサノン(CyHO)、FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表4に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)をそれぞれ調製した。
【0166】
【0167】
実施例1 溶媒耐性測定(実施例1-1~1-9、比較例1-1~1-5)
上記で調製した有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)をシリコン基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間ベークした後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶媒をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。これらの結果を表5に示す。
【0168】
【0169】
表5に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例1-1~1-9)は、PGMEA処理後の残膜率が99.8%以上あり、窒素雰囲気下においても架橋反応が起き十分な溶剤耐性を発現していることがわかる。それに対してエーテル構造を持つ比較例1-1、1-3~1-5においては耐熱性の不足からPGMEA処理後の残膜率が99.5%未満となった。中でも比較例1-3、1-5の残膜率は90%未満となった。エーテル構造を持たない比較例1-2においては溶剤耐性が発現しており残膜率が99.8%以上となった。これらの結果よりジオキシン環はエーテル構造と異なり、ヘテロ原子を含んでいるものの複素環構造を形成しているため耐熱性に優れていることがわかる。
【0170】
実施例2 耐熱特性評価(実施例2-1~2-9、比較例2-1~2-5)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、大気中、180℃で焼成して200nmの塗布膜を形成し、膜厚を測定した。この基板を更に酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で10分間ベークして膜厚を測定した。これらの結果を表6に示す。
【0171】
【0172】
表6に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例2-1~2-9)は、450℃で10分間の焼成後も膜厚減少が3%未満となり、本発明の有機膜形成用材料は450℃という高温条件下においても高い耐熱性を有する有機膜を形成することができる。特にR1にエチニル基を有する実施例2-2、2-4、2-5、2-6、2-7、2-8、2-9では、450℃で10分ベーク後であっても膜厚減少は1%未満に抑えられ特に耐熱性に優れることがわかる。それに対してエーテル結合をもつ比較例2-1、2-3、2-4、2-5においては40%を超える大きな膜厚減少を起こしており、実施例1の結果と同様にジオキシン環がヘテロ原子を含みながらも高い耐熱性を有していることがわかる。
【0173】
実施例3 埋め込み特性評価(実施例3-1~3-9、比較例3-1~3-5)
図3のように、上記の有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)をそれぞれ、密集ホールパターン(ホール直径0.16μm、ホール深さ0.50μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.32μm)を有するSiO
2ウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で600秒間ベークし、有機膜8を形成した。使用した基板は
図3(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiO
2ウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なく、有機膜8で充填されているかどうかを確認した。結果を表7に示す。埋め込み特性に劣る有機膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。埋め込み特性が良好な有機膜材料を用いた場合は、本評価において、
図3(I)に示されるようにホール内部にボイドなく有機膜8が充填される。
【0174】
【0175】
表7に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例3-1~3-9)は、ボイドを発生すること無くホールパターンを充填することが可能であり、良好な埋め込み特性を有することが確認出来た。一方、比較例3-1、3-3、3-4、3-5においては実施例2の結果のとおり耐熱性不足に起因するボイドが発生していた。この結果から、本発明の有機膜形成用材料は良好な埋め込み特性を有すことが確認できた。
【0176】
実施例4 平坦化特性評価(実施例4-1~4-9、比較例4-1~4-5)
有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-1~5)をそれぞれ、巨大孤立トレンチパターン(
図4(J)、トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.10μm)を有する下地基板9(SiO
2ウエハー基板)上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒間ベークして有機膜10を形成した後、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差delta10を、パークシステムズ社製NX10原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。結果を表8に示す。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ0.10μmのトレンチパターンを、通常膜厚約0.2μmの有機膜材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。
【0177】
【0178】
表8に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例4-1~4-9)は、比較例4-1~4-5に比べて、トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差が小さく、平坦化特性に優れることが確認された。比較例4-1、4-3、4-4においてはエーテル結合により流動性が付与されるため比較的良好な平坦性を示すものの、実施例2の耐熱特性評価の結果の通り耐熱性が不足しているため、450℃ベークにより膜が大きくシュリンクしてしまい平坦性が劣化する結果となった。また、比較例4-2においてはエチニル基を架橋基としており、耐熱性は優れていたが本発明のようなジオキサン環構造を有さないため流動性が向上せず、平坦性が悪い結果となった。また、高沸点溶剤を添加した実施例4-8、4-9と添加していない実施例4-2、4-5それぞれ比較すると高沸点溶剤の添加により平坦性がより改善していることがわかる。この結果から、本発明の有機膜形成用材料は耐熱性に優れるため高温ベーク時の膜シュリンクが抑制され、優れた平坦化特性を発現することがわかる。
【0179】
実施例5 パターン形成試験(実施例5-1~5-9、比較例5-1)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-2)を、それぞれ、300nmのSiO2膜が形成されているシリコンウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒ベークし、有機膜(レジスト下層膜)を形成した。その上にCVD-SiONハードマスクを形成し、更に有機反射防止膜材料(ARC-29A:日産化学社製)を塗布して210℃で60秒間ベークして膜厚80nmの有機反射防止膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用単層レジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。なお、比較UDL―1およびUDL-3~5については実施例2の結果のとおり耐熱性が劣るためCVD―SiONハードマスクの形成ができなかったため以後のパターン形成試験に進むこととはできなかった。
【0180】
レジスト上層膜材料(ArF用単層レジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表9の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0181】
【0182】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)を以下に示す。
【化46】
【0183】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表10の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0184】
【0185】
用いたポリマー(PP1)を以下に示す。
【化47】
【0186】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0187】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにして有機反射防止膜とCVD-SiONハードマスクをエッチング加工してハードマスクパターンを形成し、得られたハードマスクパターンをマスクにして有機膜をエッチングして有機膜パターンを形成し、得られた有機膜パターンをマスクにしてSiO2膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0188】
レジストパターンのSiONハードマスクへの転写条件。
チャンバー圧力10.0Pa
RFパワー1,500W
CF4ガス流量75sccm
O2ガス流量15sccm
時間15sec
【0189】
ハードマスクパターンの有機膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー500W
Arガス流量75sccm
O2ガス流量45sccm
時間120sec
【0190】
有機膜パターンのSiO2膜への転写条件。
チャンバー圧力2.0Pa
RFパワー2,200W
C5F12ガス流量20sccm
C2F6ガス流量10sccm
Arガス流量300sccm
O2ガス流量60sccm
時間90sec
【0191】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表11に示す。
【0192】
【0193】
表11に示されるように、本発明の有機膜形成用材料(実施例5-1~5-9)の結果より、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明の有機膜形成用材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。比較例5-1においては下層膜(有機膜)上にCVD-SiONハードマスクを形成することができたが、膜の密着性が不足するためパターン形成時に基板からの剥がれが生じてしまいパターンを形成することができなかった。
【0194】
実施例6 密着性試験(実施例6-1~6-9、比較例6-1)
上記の有機膜形成用材料(UDL-1~9、比較UDL-2)を、SiO2ウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下450℃で60秒ベークすることにより膜厚200nmの有機膜を形成した。この有機膜付のウエハーを、1×1cmの正方形に切り出し、専用治具を用いて切り出したウエハーにエポキシ接着剤付きのアルミピンを取り付けた。その後、オーブンを用いて150℃で1時間、加熱しアルミピンを基板に接着させた。室温まで冷却した後、薄膜密着強度測定装置(Sebastian Five-A)を用いて抵抗力により、初期の密着性を評価した。
【0195】
図5に密着性測定方法を示す説明図を示す。
図5の11はシリコンウエハー(基板)、12は有機膜、13は接着剤付きアルミピン、14は支持台、15はつかみであり、16は引張方向を示す。密着力は12点測定の平均値であり、数値が高いほど有機膜の基板に対する密着性が高い。得られた数値を比較することにより密着性を評価した。その結果を表12に示す。
【0196】
【0197】
表12に示されるように本発明のジオキシン環を有する有機膜形成用化合物を含む有機膜形成用材料(実施例6-1~6-9)は、実施例5のパターン形成試験結果よりパターン形成ができなかった比較例6-1に比べ密着力に優れていることがわかる。密着力試験の結果からも、本発明の有機膜形成用材料はパターン形成材料として好適に用いられることが確認された。
【0198】
以上のことから、本発明の有機膜形成用化合物を含有する本発明の有機膜形成用材料であれば、酸素を含まない不活性ガス下においても400℃以上の耐熱性及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つため、多層レジスト法に用いる有機膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工基板が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0199】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0200】
1…基板、 2…被加工層、 2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、
3…有機膜、 3’…有機膜形成用組成物、 3a…有機膜パターン、
4…ケイ素含有レジスト中間膜、 4a…ケイ素含有レジスト中間膜パターン、
5…レジスト上層膜、 5a…レジスト上層膜パターン、 6…露光部分、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…有機膜、
9…巨大孤立トレンチパターンを有する下地基板、 10…有機膜、
delta10…トレンチ部分と非トレンチ部分の有機膜の段差、
11…シリコンウエハー、 12…有機膜、 13…接着剤付きアルミピン、
14…支持台、 15…つかみ、 16…引張方向。