(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】α-及びγ-ネクロジル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/297 20060101AFI20240822BHJP
C07C 29/143 20060101ALI20240822BHJP
C07C 29/147 20060101ALI20240822BHJP
C07C 35/06 20060101ALI20240822BHJP
C07C 67/293 20060101ALI20240822BHJP
C07C 69/52 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07C67/297
C07C29/143
C07C29/147
C07C35/06 CSP
C07C67/293
C07C69/52
(21)【出願番号】P 2021115879
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020125808
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】渡部 友博
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
(72)【発明者】
【氏名】長江 祐輔
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】ZOU, Yunfan et al.,Synthesis and Bioassay of Racemic and Chiral trans-α-Necrodyl Isobutyrate, the Sex Pheromone of the Grape Mealybug Pseudococcus maritimus,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2010年,58(8),4977-4982
【文献】LEVI-ZADA, Anat et al.,Identification of the Sex Pheromone of the Spherical Mealybug Nipaecoccus viridis,Journal of Chemical Ecology,2019年,45,455-463
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/297
C07C 69/52
C07C 35/06
C07C 67/293
C07C 29/143
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
2は、炭素数1~9の1価の炭化水素基を表し、かつXは、脱離基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物と、下記一般式(2)
CH
3-M
(2)
(式中、Mは、Li、MgZ
1、ZnZ
1、Cu、CuZ
1、又はCuLiZ
1を表し、かつZ
1はハロゲン原子又はメチル基を表す。)
で表されるメチル化剤との求核置換反応により、下記一般式(3)
【化2】
(式中、R
2は、上記で定義した通りである。)
で表されるα-ネクロジル化合物を得る工程を少なくとも含む、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法。
【請求項2】
3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)において、R
2がイソプロピル基であり、かつXがイソブチリルオキシ基であるところの下記式(1A)
【化3】
(式中、
iPrはイソプロピル基を表す。)
で表される(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレートであり、
α-ネクロジル化合物(3)において、R
2がイソプロピル基であるところの下記式(3A)
【化4】
で表される(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレートである、請求項1に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法と、
前記α-ネクロジル化合物(3)の二重結合の位置異性化反応により、下記一般式(4)
【化5】
(式中、R
2は、上記で定義した通りである。)
で表されるγ-ネクロジル化合物を得る工程と
を少なくとも含む、γ-ネクロジル化合物(4)の製造方法。
【請求項4】
γ-ネクロジル化合物(4)において、R
2がイソプロピル基であるところの下記式(4A)
【化6】
で表される(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)である、請求項3に記載の、γ-ネクロジル化合物(4)の製造方法。
【請求項5】
下記式(5C)
【化7】
で表される(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールを、エステル化反応、エステル化反応とハロゲン化反応との組み合わせ、及びエステル化反応とスルホニル化反応との組み合わせから選ばれる反応に付して、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(6)
【化8】
(式中、R
1は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステルを還元反応に付して、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を得る工程
をさらに含む、請求項5に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(6)
【化9】
(式中、R
1は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステルを対応するカルボン酸に変換し、そして該カルボン酸を還元反応に付して、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を得る工程
をさらに含む、請求項5に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法と、
前記α-ネクロジル化合物(3)の二重結合の異性化反応により、下記一般式(4)
【化10】
(式中、R
2は、上記で定義した通りである。)
で表されるγ-ネクロジル化合物(4)を得る工程と
を少なくとも含む、γ-ネクロジル化合物(4)の製造方法。
【請求項9】
下記式(5)
【化11】
で表される(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-及びγ-ネクロジル化合物の製造方法に関する。また、本発明は、新規な化合物である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールを出発物質として用いて、α-ネクロジル化合物及びγ-ネクロジル化合物を製造する方法に関する。さらに、本発明は、新規な化合物である(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールに関する。
【背景技術】
【0002】
α-ネクロジル(α-necrodyl)化合物、すなわち、(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル基を有する化合物群、及びγ-ネクロジル(γ-necrodyl)化合物、すなわち(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル基を有する化合物群は、生物活性物質であるフェロモン等の天然物に多く存在する。例えば、α-ネクロジル化合物の一つであるα-ネクロドールは、レッドラインド=キャリアン=ビートル(学名:Necrodes surinamensis)の防御物質として知られており(下記の非特許文献1)、同じくα-ネクロジル化合物の一つであるα-ネクロジル=イソブチレートは、グレープ=ミーリーバグ(学名:Pseudococcus maritimus)の性フェロモンとして同定されている(下記の非特許文献2及び3)。また、γ-ネクロジル化合物の一つであるγ-ネクロジル=イソブチレートは、スフェリカル=ミーリーバグ(学名:Nipaecoccus viridis)の性フェロモンとして同定されている(下記の非特許文献4)。
【0003】
昆虫の性フェロモンは、通常、雌個体が雄個体を誘引する機能を持つ生物活性物質であり、少量で高い誘引活性を示す。性フェロモンを用いた害虫の管理方法として多くの応用が考案され、そして実施されている。例えば、発生予察及び地理的な拡散(特定地域への侵入)の確認の手段として、また害虫防除の手段として、性フェロモンが広く利用されている。害虫防除の手段としては、大量誘殺法(mass trapping)、誘引殺虫法(lure and kill又はattract and kill)、誘引感染法(lure and infect又はattract and infect)及び交信撹乱法(mating disruption)と呼ばれる防除法が広く実用に供されている。性フェロモントラップは、誘引力が強力であり、かつ種特異的に誘引できるため、対象害虫の探知及びモニタリングにとって有用なツールである。
【0004】
コナカイガラムシ類(mealybugs)は、植物を吸汁する小型の昆虫であり、これらのいくつかの種は、穀物又は果実植物に深刻な被害を与えるため、農業上重要な害虫である。コナカイガラムシ類は、節又は花落ち部等の植物組織に付着して生息し、見つけるのが困難であることが多いため、作物の植物検疫の際に除去するのが難しい。そのため、コナカイガラムシ類の防除には、性フェロモントラップを用いる防除方法が特に有用となる。
コナカイガラムシ類の雌成虫は、翅を欠き、かつ足が退化しているため、ほとんど移動しない。一方、コナカイガラムシ類の雄成虫は翅を有するが、非常に小型であり、かつ弱く(tiny and fragile)、さらに、羽化後に給餌もしないため、生存期間は最大でも数日間である(下記の非特許文献5及び6)。したがって、固着性の雌が放出する性フェロモンは、短命な雄を誘引するのに必須であり、交尾相手を見つけ出すための鍵となっているため、進化上の強い選択圧にさらされていると考えられている(非特許文献7、8)。事実、コナカイガラムシ類のフェロモンは、高度に種特異的な構造を有しており、非常に多様性に富んでいる(下記の非特許文献9及び10)。このため、コナカイガラムシ類の性フェロモンは、害虫防除及び害虫検疫のための有用な手段であり、また、昆虫の化学的コミュニケーション機構の多様性を研究するためのモデルとしても重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】J.Meinwald et al.,J.Org.Chem.,1990,55,4051-4062.
【文献】J.G.Millar et al.,Tetrahedron Lett.,2007,48,8434-8437.
【文献】J.G.Millar et al.,J.Agric.FoodChem.,2010,58,4977-4982.
【文献】A.Levi-Zada et al.,J.Chem.Ecol.,2019,45,455-463.
【文献】J.C.Franco et al.,BiorationalControl of Arthropod Pests;I.Ishaaya,A.R.Horowitz,Eds.,Springer,Dordrecht,2009,233-278.
【文献】L.Ross et al.,Curr.Biol.,2009,19,R184-R186.
【文献】J.Tabata et al.,J.R.Soc.Interface,2017,14,20170027.
【文献】J.Tabata et al.,Biol.Lett.,2018,14,20190262.
【文献】J.G.Millar et al.,Semiochemicals in Pest and Weed Control,2005,Chapter 2,11-27.
【文献】J.G.Millar et al.,Nat.Prod.Rep.,2015,32,1067.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
α-ネクロジル化合物の合成として、非特許文献1にMeinwaldらの製法及び非特許文献3にMillarらの製法が知られている。また、γ-ネクロジル化合物の合成として、非特許文献4にLevi-Zadaらの製法が知られている。
しかしながら、非特許文献1では、酸化ルテニウム、t-ブチルジメチルクロロシラン、フェニルセレネニル=クロリド及び三酸化硫黄-ピリジン錯体等の高価な試薬を用いている点、ジアゾメタン等の爆発性のある試薬を用いている点、一般的な反応設備では実施が困難な液体アンモニアを用いた反応を行っている点、並びに、分取HPLCを用いて、中間体を精製している点等を考慮すると、工業的なスケールでの生産は難しい。また、原料の無水カンファー酸から、α-ネクロドールを13工程をかけて製造しているため、効率的であるともいえない。
また、非特許文献3では、分子内クネーフェナーゲル(Knoevenagel)反応において水素化ナトリウムを用いるため、工業的なスケールでの生産は困難である。また、共役付加反応により、α,β-不飽和ケトンに対してメチル基を導入する工程では、空気中で容易に発火するジメチル亜鉛を用いており、メチル化では、毒性の強いヘキサメチルリン酸トリアミドを用いている。さらに、エキソオレフィンを三置換オレフィンに異性化する工程では、エチレンジアミン中にて金属リチウムを用いた反応を行っているが、この反応は停止するタイミングが難しく、長時間反応させてしまった場合には、望まない四置換オレフィンが生成してしまい、収率の低下を招く。その上、これらの化合物を分離することは困難である。加えて、これら一連の合成は、原料のアセト酢酸メチルから8工程、7%収率でなされているため、効率的でない。
また、非特許文献4では、蒸留精製により、Lavandula luisieriのエッセンシャルオイルから、α-ネクロジル=アセテートを得、そしてエステルの加溶媒分解、ボロントリフルオリド-エチル=エーテル=コンプレックスを用いた二重結合の位置異性化及びアルコールのアシル化により、γ-ネクロジル=イソブチレートを得ている。しかしながら、このように天然の精油から原料を得る方法では、物性が近いもの同士を分離することが難しく、最終物まで不純物が混入してしまうことがあるため、極微量で活性を発現する生物活性物質の合成に利用するのは難しい。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、α-ネクロジル化合物及びγ-ネクロジル化合物を収率よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物への求核置換反応により、α-ネクロジル化合物を得ることができることを見出し、本発明を為すに至った。また、本発明者らは、α-ネクロジル化合物の二重結合の位置異性化によりγ-ネクロジル化合物を得ることできることを見出し、本発明を為すに至った。
【0008】
本発明の一つの様態によれば、下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
2は、炭素数1~9の1価の炭化水素基を表し、かつXは、脱離基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物と、下記一般式(2)
CH
3-M
(2)
(式中、Mは、Li、MgZ
1、ZnZ
1、Cu、CuZ
1、又はCuLiZ
1を表し、かつZ
1はハロゲン原子又はメチル基を表す。)
で表されるメチル化剤との求核置換反応により、下記一般式(3)
【化2】
(式中、R
2は、上記で定義した通りである。)
で表されるα-ネクロジル化合物を得る工程を少なくとも含む、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、α-ネクロジル化合物(3)の上記製造方法と、該製造方法により得られたα-ネクロジル化合物(3)の二重結合の位置異性化反応により、下記一般式(4)
【化3】
(式中、R
2は、上記で定義した通りである。)
で表されるγ-ネクロジル化合物を得る工程と
を少なくとも含む、γ-ネクロジル化合物(4)の製造方法が提供される。
【0010】
さらに本発明の他の態様によれば、下記式(5C)
【化4】
で表される(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールを、エステル化反応、エステル化とハロゲン化反応との組み合わせ、及びエステル化反応とスルホニル化反応との組み合わせから選ばれる反応に付して、上述の3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)を得る工程と、
該得られた3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)を用いる、α-ネクロジル化合物(3)の上述の製造方法と
を少なくとも含む、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の態様によれば、下記一般式(6)
【化5】
(式中、R
1は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステルを還元反応に付して、上述の(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を得る工程と、
該得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を用いる、α-ネクロジル化合物(3)の上述の製造方法と
を少なくとも含む、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法が提供される。
【0012】
さらに、本発明の他の態様によれば、下記一般式(6)
【化6】
(式中、R
1は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。)
で表される3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステルを対応するカルボン酸に変換し、そして該カルボン酸を還元反応に付して、上述の(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を得る工程と、
該得られた該得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を用いる、α-ネクロジル化合物(3)の上述の製造方法と
を少なくとも含む、α-ネクロジル化合物(3)の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の他の態様によれば、下記式(5)
【化7】
で表される(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特別な設備を用いることなく、α-ネクロジル化合物及びγ-ネクロジル化合物を収率よく製造することができる。さらに、本発明によれば、α-ネクロジル化合物及びγ-ネクロジル化合物の中間体として有用である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中の中間体、試薬及び目的物の化学式において、構造上、エナンチオ異性体(enantiomer)又はジアステレオ異性体(diastereomer)等の立体異性体が存在し得るものがあるが、特に記載がない限り、いずれの場合も各化学式はこれらの異性体のすべてを表すものとする。また、これらの異性体は、単独であってもよく、又は混合物であってもよい。
【0016】
A.まず、本発明に従う製造方法により製造されるα-ネクロジル化合物及びγ-ネクロジル化合物それぞれについて、以下に説明する。
【0017】
(a)α-ネクロジル化合物
α-ネクロジル化合物とは、(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル基を有する化合物群を云う。
本発明の目的物は、α-ネクロジル化合物のうち、α-ネクロジル=カルボキシレート化合物であり、下記一般式(3)
【化8】
で表される。
上記一般式(3)中の太線と点線は相対配置を表す。
【0018】
上記一般式(3)におけるR2は、炭素数1~9、好ましくは1~5の1価の炭化水素基を表す。
R2の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基及びn-ノニル基等の直鎖状の飽和炭化水素基;イソプロピル基、2-メチルブチル基及びt-ブチル基等の分岐状の飽和炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロペンチルメチル基等の環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基及びエチニル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;イソプロペニル基及び2-メチル-2-プロペニル基等の分岐状の不飽和炭化水素基;並びに、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ベンジル基及びフェネチル基等の環状の不飽和炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基であってもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部が、炭素数1~8の1価の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0019】
具体的には、上記一般式(3)は、下記一般式(3-1)で表される(1R,4R)-α-ネクロジル化合物、下記一般式(3-2)で表される(1S,4S)-α-ネクロジル化合物、又はその両方を表す。
【0020】
【0021】
α-ネクロジル化合物(3)の具体例としては、下記式(3A)で表される(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(R
2がイソプロピル基である)、(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=アセテート(R
2がメチル基である)及び(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=ベンゾエート(R
2がフェニル基である)等が挙げられ、グレープ=ミーリーバグ及びスフェリカル=ミーリーバグの性フェロモン製造の観点から、(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)が好ましい。
【化10】
【0022】
(b)γ-ネクロジル化合物
γ-ネクロジル化合物とは、(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル基を有する化合物群を云う。
本発明の目的物は、γ-ネクロジル化合物のうち、γ-ネクロジル=カルボキシレート化合物であり、下記一般式(4)
【化11】
で表される。
【0023】
上記一般式(4)におけるR2は、上記一般式(3)で定義した通りである。
【0024】
具体的には、上記一般式(4)は、下記一般式(4-1)で表される(1R)-γ-ネクロジル化合物、下記一般式(4-2)で表される(1S)-γ-ネクロジル化合物、又はその両方を表す。
【0025】
【0026】
γ-ネクロジル化合物(4)の具体例としては、下記式(4A)で表される(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(R
2がイソプロピル基である)、(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=アセテート(R
2がメチル基である)及び(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=ベンゾエート(R
2がフェニル基である)等が挙げられ、グレープ=ミーリーバグ及びスフェリカル=ミーリーバグの性フェロモン製造の観点から、(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)が好ましい。
【化13】
【0027】
B.次に、上述のα-ネクロジル化合物(3)及びγ-ネクロジル化合物(4)の本発明に従う製造方法について、以下に説明する。
本発明者らは、以下に説明するようにα-ネクロジル化合物(3)及びγ-ネクロジル化合物(4)の合成計画を考察した。
下記の逆合成解析の反応式は、上記目的化合物であるγ-ネクロジル化合物(4)のうち、上述の(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)を1つの例として示したものである。
【化14】
【0028】
上記の逆合成解析の反応式中、白抜き矢印は逆合成解析(retrosynthetic analysis)におけるトランスフォームを表す。iPrはイソプロピル基を表し、Mはカチオン部を表し、かつEtはエチル基を表す。上記式(3A)、上記式(1A)、及び上記式(5C)中の点線と太線は相対配置を表す。
【0029】
(工程D’) 目的物である(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)は、α-ネクロジル化合物(3)のうち、上述の(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)の二重結合の位置異性化により合成できると考えられる。これは、(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)の四置換二重結合が、(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)の三置換二重結合よりも、より安定であると考えられるからである。
(工程C’) 目的物である(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)は、上記反応式中の式(1A)で表される(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレートと上記反応式中の式(2)で表されるメチル化剤とを位置及び立体選択的(regio- and stereoselective)に求核置換反応させることにより合成できると考えられる。
(工程B’) 目的物である(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)は、上記反応式中の式(5C)で表される(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールをエステル化することにより合成できると考えられる。
(工程A’) 目的物である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)は、上記反応式中の式(6A)で表されるエチル=2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレートを立体選択的(stereoselective)に還元することにより合成できると考えられる。
【0030】
そして、上記逆合成解析の反応式を考慮すると、本発明の1つの実施態様に従う反応式は、下記の通りに示される。
【化15】
【0031】
(工程A) 上記反応式中の式(6)で表される3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステルを立体選択的に還元することで、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)が得られる。
(工程B) 工程Aに従って又はその他の方法に従って得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を、エステル化反応、エステル化反応とハロゲン化反応、及びエステル化反応とスルホニル化反応から選ばれる反応に付して、上記反応式中の式(1)で表される3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物が得られる。
(工程C) 工程Bに従って又はその他の方法に従って得られた3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)とメチル化剤(2)との求核置換反応により、位置及び立体選択的にメチル基を導入し、これによりα-ネクロジル化合物(3)が得られる。
(工程D) 工程Cに従って得られたα-ネクロジル化合物(3)の二重結合の位置異性化反応により、γ-ネクロジル化合物(4)が得られる。
【0032】
以下に、本発明の実施の形態としての上記工程A~Dを詳細に説明する。まず、本発明の目的化合物である上記α-ネクロジル化合物(3)を合成する工程C、そして、本発明の別の目的化合物である上記γ-ネクロジル化合物(4)を合成する工程D、そして、上記工程Cの出発物質を合成する工程B、最後に、該工程Bの出発物質を合成する工程Aの順に説明する。なお、該工程Aの説明では3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)を立体的選択的に還元することなしに、下記の式(5)で表される(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールを得る方法についても併せて説明する。
【化16】
【0033】
[1]工程C
以下に、α-ネクロジル化合物(3)を得る工程Cについて説明する。α-ネクロジル化合物(3)は、下記の化学反応式に示されている通り、上述の3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)と上述のメチル化剤(2)との求核置換反応により得られる。
【0034】
【0035】
上記一般式(1)中の点線は相対配置を表す。
一般式(1)において、R2は、炭素数1~9、好ましくは1~5の1価の炭化水素基を表す。
1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基及びn-ノニル基等の直鎖状の飽和炭化水素基;イソプロピル基、2-メチルブチル基及びt-ブチル基等の分岐状の飽和炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロペンチルメチル基等の環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基及びエチニル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基等の分岐状の不飽和炭化水素基;並びに、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ベンジル基及びフェネチル基等の環状の不飽和炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基であってもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部が、炭素数1~8の1価の炭化水素基で置換されていてもよい。
R2は、グレープ=ミーリーバグ及びスフェリカル=ミーリーバグの性フェロモン製造の場合、目的物のR2がイソプロピル基であるため、アシル基の変更を必要とせず直接目的物が得られるので、イソプロピル基が好ましい。
【0036】
一般式(1)において、脱離基Xは、カルボニル基の炭素を含めた炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアルカンスルホニルオキシ基、炭素数6~20のアレーンスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子で表される脱離基を表す。
【0037】
カルボニル基の炭素を含めた炭素数1~10のアシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、デカノイルオキシ基及びクロトニルオキシ基等の直鎖状のアシルオキシ基;イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、2-メチルブタノイルオキシ基、3-メチル-2-ブテノイルオキシ基及び3-メチル-3-ブテノイルオキシ基等の分岐状のアシルオキシ基;シクロヘキシルカルボニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等の環状のアシルオキシ基;並びに、トリクロロアセトキシ基及びトリフルオロアセトキシ基等のハロゲン化アシルオキシ基等が挙げられ、これらと異性体の関係にあるアシルオキシ基でもよい。また、これらのアシルオキシ基の水素原子の一部が炭素数1~8の1価の炭化水素基又はハロゲン原子等で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記アシルオキシ基の中でも、入手の容易さの観点から、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ピバロイルオキシ基、イソブチリルオキシ基及びベンゾイルオキシ基が好ましい。
【0038】
炭素数1~10のアルカンスルホニルオキシ基としては、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基、1-ブタンスルホニルオキシ基、1-ペンタンスルホニルオキシ基、1-ヘキサンスルホニルオキシ基、1-ヘプタンスルホニルオキシ基、1-オクタンスルホニルオキシ基、1-ノナンスルホニルオキシ基、1-デカンスルホニルオキシ基、アリルスルホニルオキシ基、10-カンファースルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基及びα-ベンジルスルホニルオキシ基等が挙げられ、これらと異性体の関係にあるアルカンスルホニルオキシ基でもよい。また、これらのアルカンスルホニルオキシ基の水素原子の一部がメチル基、エチル基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記アルカンスルホニルオキシ基の中でも、入手の容易さの観点から、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0039】
炭素数6~20のアレーンスルホニルオキシ基としては、ベンゼンスルホニルオキシ基、4-クロロベンゼンスルホニルオキシ基、4-メトキシベンゼンスルホニルオキシ基、2-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、1-ナフタレンスルホニルオキシ基及び2-ナフタレンスルホニルオキシ基が挙げられ、これらと異性体の関係にあるアレーンスルホニルオキシ基でもよい。また、これらのアレーンスルホニルオキシ基の水素原子の一部がメチル基、エチル基又はハロゲン原子等で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
上記アレーンスルホニルオキシ基の中でも、入手の容易さの観点から、ベンゼンスルホニルオキシ基及びp-トルエンスルホニルオキシ基が好ましい。
【0040】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。該ハロゲン原子の中でも、入手の容易さの観点から、塩素原子及び臭素原子が好ましい。
【0041】
上記脱離基Xとしては、アシルオキシ基又はハロゲン原子が好ましい。グレープ=ミーリーバグ及びスフェリカル=ミーリーバグの性フェロモン製造の場合、目的物のR2がイソプロピル基であり、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の一級アルコールのエステル化と同時に二級アルコールもエステル化できることから、脱離基Xとしては、アシルオキシ基がより好ましく、イソブチリルオキシ基がさらに好ましい。
【0042】
具体的には、上記一般式(1)は、下記一般式(1-1)で表される(1R,2S)-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物、下記一般式(1-2)で表される(1S,2R)-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物、又はその両方を表す。
【0043】
【0044】
3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)の具体例としては、下記式(1A)で示される(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート等の(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-アシルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=カルボキシレート;(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-メタンスルホニルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=アセテート等の(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-アルキルスルホニルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=カルボキシレート;並びに(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-ブロモ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート等の(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-ハロ-3-シクロペンテニル)メチル=カルボキシレート等が挙げられ、グレープ=ミーリーバグ及びスフェリカル=ミーリーバグの性フェロモン製造の観点から、(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)が好ましい。
【化19】
【0045】
具体的には、上記式(1A)は、下記式(1A-1)で表される(1R,2S)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート、下記式(1A-2)で表される(1S,2R)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート、又はその両方を表す。
【化20】
【0046】
3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)及び(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)は、下記において詳細に説明する工程Bに従って又はその他の方法に従って得られうる。
【0047】
上記求核置換反応には、メチル化剤(2)が用いられる。また、当該求核置換反応では、通常、I族若しくはII族の金属元素を又は遷移金属元素を含む有機金属試薬が用いられる。
メチル化剤(2)におけるMは、Li、MgZ1、ZnZ1、Cu、CuZ1、又はCuLiZ1を表し、かつZ1はハロゲン原子又はメチル基を表す。ハロゲン原子Z1としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
メチル化剤(2)としては、選択性及び/又は調製のしやすさの観点から、メチルリチウム等の有機リチウム試薬;並びに、グリニャール(Grignard)試薬及びメチルマグネシウム=ハライド等の有機マグネシウム試薬等が好ましく、特にグリニャール試薬が好ましい。
【0048】
メチル化剤(2)は、有機リチウム試薬又は有機マグネシウム試薬に化学量論量(1mol以上)の遷移金属化合物を用いた金属交換(metal exchange)反応により調製してもよいし、有機リチウム試薬又はグリニャール試薬と、触媒量の遷移金属化合物との反応により、反応系内で生成させて用いてもよい。
【0049】
遷移金属化合物としては、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、亜鉛及び銀等を含む遷移金属化合物等が挙げられるが、塩化銅(I)、臭化銅(I)及びヨウ化銅(I)等の1価のハロゲン化銅;塩化銅(II)、臭化銅(II)及びヨウ化銅(II)等の二価のハロゲン化銅;シアン化銅(I)及びシアン化銅(II)等のシアン化銅;酸化銅(I)及び酸化銅(II)等の酸化銅;並びに、ジリチウム=テトラクロロキュプレート(Li2CuCl4)等の銅化合物が挙げられ、反応性の観点から、1価のハロゲン化銅及び2価のハロゲン化銅が好ましい。
遷移金属化合物の使用量は、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)1molに対して、反応性と選択性の観点から、好ましくは0.01~10mol、より好ましくは0.1~5molである。
【0050】
上記求核置換反応において遷移金属化合物を用いる場合は、遷移金属化合物の溶媒への溶解性向上の観点から、補触媒を遷移金属化合物100部に対して、好ましくは0.01~1000部用いてもよい。
補触媒の具体例としては、亜リン酸トリエチル等の亜リン酸トリアルキル;並びに、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
【0051】
該求核置換反応では、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)1molに対して、反応の触媒として、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のリチウム塩類を0.001~1000mol共存させてもよく、反応性と選択性の観点から、1価のハロゲン化銅又は2価のハロゲン化銅とリチウム塩との組み合わせが好ましい。
【0052】
メチル化剤(2)の使用量は、試薬の種類、反応条件、反応の収率、中間体の価格等の経済性、及び/又は反応生成物から目的物の単離精製の容易さ等を考慮して任意に決められるが、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)1molに対して、好ましくは0.2~100mol、より好ましくは0.5~20mol、さらに好ましくは0.8~5molである。
【0053】
該求核置換反応における溶媒としては、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル、及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられ、反応性と溶解性の観点からテトラヒドロフランが好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応スケールにより異なるが、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)1molに対して、反応速度の観点から、好ましくは200~4000gである。
【0054】
α-ネクロジル化合物(3)の製造時における反応温度は、反応性と副生物抑制の観点から、好ましくは-78~150℃、より好ましくは-78~80℃である。
α-ネクロジル化合物(3)の製造時における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0055】
α-ネクロジル化合物(3)のうちの(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)は、下記に示す化学反応式に示されている通り、上述の(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)とメチル化剤(2)との求核置換反応により得られる(下記の実施例1を参照)。
【0056】
【0057】
[2]工程D
以下に、γ-ネクロジル化合物(4)を得る工程Dについて説明する。γ-ネクロジル化合物(4)は、下記の化学反応式に示されている通り、工程(C)で得られたα-ネクロジル化合物(3)の二重結合の位置異性化反応により得られる。
【0058】
【0059】
当該二重結合の異性化反応は、試薬存在下、溶媒中で必要に応じて冷却又は加熱して行う。
二重結合の異性化反応における試薬としては、リチウム=エチレンジアミン=エチレンジアミン溶液等のアルカリ金属=エチレンジアミン=エチレンジアミン溶液;ボロントリフルオリド-エチル=エーテル=コンプレックス等のルイス酸;塩酸、臭化水素酸及び硝酸、硫酸等の無機酸類;並びに、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸及びシュウ酸等が挙げられるが、反応性とハンドリングのしやすさの観点から、p-トルエンスルホン酸が好ましい。
二重結合の異性化反応における試薬の使用量は、α-ネクロジル化合物(3)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0.0001~100mol、より好ましくは0.001~10mol、さらに好ましくは0.01~1molである。
【0060】
二重結合の異性化における溶媒としては、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられ、反応速度の観点からトルエン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応スケールにより異なるが、α-ネクロジル化合物(3)1molに対して、反応速度の観点から、好ましくは200~8000gである。
【0061】
二重結合の異性化における反応温度は、反応速度と副生物抑制の観点から、好ましくは-78℃~溶媒の沸点温度、より好ましくは0~150℃である。
二重結合の異性化における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0062】
γ-ネクロジル化合物(4)のうちの(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)は、下記の化学反応式に示されている通り、上述の(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)の二重結合の位置異性化反応により得られる(下記の実施例2を参照)。
【0063】
【0064】
具体的には、上記式(3A)は、下記式(3A-1)で表される(1R,4R)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート、下記式(3A-2)で表される(1S,4S)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート、又はその両方を表す。
【化24】
【0065】
[3]工程B
以下に、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)を得る工程Bについて説明する。3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)は、下記の化学反応式に示されている通り、上述の(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を、(i)エステル化反応、(ii)エステル化反応とハロゲン化反応との組み合わせ、及び(iii)エステル化反応とスルホニル化反応との組み合わせから反応性、反応選択性、入手の容易さ、合成の容易さ、保存安定性、劇毒性、及び/又は価格等を考慮して選択される反応に付すことにより得られる。
【化25】
【0066】
3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテン化合物(1)については、上記した通りである。
【0067】
上記(i)、(ii)及び(iii)のエステル化反応としては、公知のエステルの製造方法、例えば、アシル化剤との反応、カルボン酸との反応、及びエステル交換反応等を適用できる。
【0068】
アシル化剤との反応では、通常、溶媒中、基質である上記(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とアシル化剤及び塩基とを順次又は同時に反応させる。
アシル化剤としては、アセチル=クロリド、イソブチリル=クロリド、及びベンゾイル=クロリド等のハロゲン化アシル;無水酢酸及びイソ酪酸無水物等のカルボン酸無水物;カルボン酸トリフルオロ酢酸混合酸無水物、カルボン酸メタンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸トリフルオロメタンスルホン酸混合酸無水物、カルボン酸ベンゼンスルホン酸混合酸無水物、及びカルボン酸p-トルエンスルホン酸混合酸無水物等のカルボン酸混合酸無水物;並びに、カルボン酸p-ニトロフェニル等が挙げられる。
アシル化剤の使用量は、基質である上記(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは1~500mol、より好ましくは1~50mol、さらに好ましくは1~5molである。
【0069】
アシル化剤との反応における塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン、2-エチルピリジン、及び4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
該塩基の使用量は、基質である上記(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは1~500molである。
【0070】
アシル化剤との反応における溶媒としては、上記塩基を溶媒として用いてもよいし、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル、及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、及びクロロホルム等の極性溶媒を用いてもよい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、基質である上記(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは0~100,000g、より好ましくは0~10,000gである。上記塩基を溶媒として用いる場合は、塩基以外の溶媒を用いなくてもよい。
【0071】
アシル化剤として、カルボン酸無水物、カルボン酸混合酸無水物及びカルボン酸p-ニトロフェニル等を用いる反応では、塩基の代わりに酸触媒下にて反応を行うこともできる。
酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及び硝酸等の無機酸類;シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化スズ、四臭化スズ、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズ=ジメトキシド、ジブチルスズ=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、及び酸化チタン(IV)等のルイス酸類等が挙げられる。
該アシル化剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該アシル化剤は、市販のものを用いることができる。
カルボン酸無水物、カルボン酸混合酸無水物及びカルボン酸p-ニトロフェニル等のアシル化剤との反応に用いる酸触媒の使用量は、0.0001~100molが好ましい。
【0072】
アシル化剤との反応における反応温度は、反応速度と副生物抑制の観点から、好ましくは-50~150℃、より好ましくは-20~50℃である。
アシル化剤との反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0073】
カルボン酸との反応は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との脱水反応であり、酸触媒存在下に行うのが一般的である。
【0074】
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との反応におけるカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、及びカプロン酸等の直鎖状の飽和カルボン酸;イソ酪酸、イソ吉草酸、4-メチルペンタン酸、2-メチルブタン酸、及びピバル酸等の分岐状の飽和カルボン酸;アクリル酸、クロトン酸、及び3-ブテン酸等の直鎖状の不飽和カルボン酸;メタクリル酸、セネシオ酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、3-メチル-4-ペンテン酸、及び4-メチル-4-ペンテン酸等の分岐状の不飽和カルボン酸;並びに、安息香酸等の芳香族カルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸の使用量は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは1~500mol、より好ましくは1~50mol、さらに好ましくは1~5molである。
【0075】
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との反応には酸触媒を用いてもよい。酸触媒としては、上記アシル化剤との反応における酸触媒と同じである。
該酸触媒の使用量は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは0.0001~100モル、より好ましくは0.001~1mol、さらに好ましくは0.01~0.05molである。
【0076】
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との反応に用いる溶媒及びその使用量は、上述のアシル化剤との反応に用いる溶媒及びその使用量と同じである。
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との反応温度は、反応速度と副生物抑制の観点から、好ましくは-50~150℃、より好ましくは0~150℃である。
また、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクメン等の炭化水素系溶媒を含む溶媒を用いて、生じる水を共沸により系外に除去しながら反応を進行させてもよい。この場合、常圧で溶媒の沸点にて還流しながら水を留去してもよいが、減圧下、沸点より低い温度にて水の留去を行ってもよい。
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸との反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0077】
エステル交換反応は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)とカルボン酸アルキルとを酸触媒存在下にて反応させ、生じたアルコールを除去することにより実施する。
カルボン酸アルキルとしては、カルボン酸の一級アルキルエステルが好ましく、価格及び/又は反応のしやすさの観点から、カルボン酸メチル、カルボン酸エチル、及びカルボン酸n-プロピル等が好ましい。
カルボン酸は、上記カルボン酸との反応におけるカルボン酸と同様の化合物が挙げられる。
カルボン酸アルキルの使用量は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは1~500mol、より好ましくは1~50mol、さらに好ましくは1~5molである。
【0078】
エステル交換反応における酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及び硝酸等の無機酸類;シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;並びに、三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化スズ、四臭化スズ、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズ=ジメトキシド、ジブチルスズ=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド、及び酸化チタン(IV)等のルイス酸類等が挙げられる。
該酸触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該酸触媒は、市販のものを用いることができる。
該酸触媒の使用量は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは0.0001~100mol、より好ましくは0.001~1mol、さらに好ましくは0.01~0.05molである。
【0079】
エステル交換反応は、反応試薬であるカルボン酸アルキル自身を溶媒として用いて、無溶媒で行ってもよく、又は溶媒を補助的に用いてもよい。無溶媒の場合には、余計な濃縮及び媒回収等の操作を必要としないことから、無溶媒で行うことが好ましい。
エステル交換反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル、及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン、キシレン、及びヘキサン等の炭化水素系溶媒が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)1molに対して、好ましくは10~10,000gである。
【0080】
エステル交換反応における反応温度は、反応速度の観点から、エステル交換反応により生じた低沸点の炭素数1~3の低級アルコール、すなわち、メタノール、エタノール、1-プロパノール等の沸点付近にて反応を行い、生じた低級アルコールを留去しながら反応を行うことが好ましい。減圧下にて、沸点より低い温度にてアルコールの留去を行ってもよい。
エステル交換反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0081】
次に、上記(ii)のエステル化反応と組み合わせて使用される上記ハロゲン化反応について説明する。該ハロゲン化反応は、公知のハロゲン化反応を適用できる。該公知のハロゲン化反応の例としては、例えばハロゲン化剤との反応、及びスルホン酸ハロゲン化物との反応が挙げられる。
【0082】
ハロゲン化剤としては、塩化チオニル及び臭化チオニル等のハロゲン化チオニル;三塩化リン、五塩化リン、及び五臭化リン等のハロゲン化リン化合物;オキシ塩化リン及びオキシ臭化リン等のオキシハロゲン化リン化合物;並びに、ジクロロトリフェニルホスホラン及びジブロモトリフェニルホスホラン等の芳香族ハロゲン化リン化合物等が挙げられる。
【0083】
スルホン酸ハロゲン化物としては、メタンスルホニル=クロリド、エタンスルホニル=クロリド、及びトリフルオロメタンスルホニル=クロリド等が挙げられる。スルホン酸ハロゲン化物を用いた場合、二級のヒドロキシ基はスルホン化されるが、その後、必要に応じて加熱することにより、スルホニルオキシ基をハロゲン原子に置換することができる。
【0084】
ハロゲン化反応は、塩基性又は弱酸性条件下で反応を行うことが好ましく、好ましい例としては、スルホン酸ハロゲン化物と塩基を用いた反応が挙げられる。塩基性又は弱酸性条件は、例えば、スルホン酸ハロゲン化物と塩基の量を調節することによって、選択することができる。
ハロゲン化反応における塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、N-メチルモルホリン、及びN,N-ジメチルアニリン等のアミン類;ピリジン、メチルエチルピリジン、ルチジン、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン等のピリジン類;イミダゾール及びピラゾール類等の有機塩基類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩;ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド、ナトリウム=アミド、及びリチウム=アミド等のアルカリ金属アミド;並びに、水素化ナトリウム及び水素化リチウム等の水素化アルカリ金属等の無機塩基類等が挙げられ、好ましい具体例としては、ピリジン及びトリエチルアミンを挙げることができる。
【0085】
ハロゲン化反応における溶媒としては、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられ、反応速度の観点からトルエン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、基質である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メチル=カルボキシレート化合物1molに対して、好ましくは10~10,000gである。
【0086】
ハロゲン化反応における反応温度は、反応速度の観点から、好ましくは-78~150℃、より好ましくは-10~100℃である。
ハロゲン化反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0087】
最後に、上記(iii)のエステル化反応と組み合わせて使用される上記スルホニル化反応について説明する。該スルホニル化反応は、公知のスルホニル化反応を適用できる。該公知のスルホニル化反応の例としては、例えばアルカンスルホニル化剤との反応、及びアレーンスルホニル化剤との反応が挙げられる。
【0088】
アルカンスルホニル化剤としては、メタンスルホン酸無水物、エタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等の置換基を有していてもよいアルカンスルホン酸無水物;メタンスルホニル=クロリド、エタンスルホニル=クロリド、トリフルオロメタンスルホニル=クロリド等の置換基を有していてもよいアルカンスルホン酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0089】
アレーンスルホニル化剤としては、ベンゼンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物等のアレーンスルホン酸無水物;ベンゼンスルホニル=クロリド、p-トルエンスルホニル=クロリド等のアレーンスルホン酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0090】
スルホニル化反応は、塩基性又は弱酸性条件下で反応を行うことが好ましく、好ましい例としては、スルホン酸ハロゲン化物と塩基を用いた反応が挙げられる。塩基性又は弱酸性条件は、例えば、スルホン酸ハロゲン化物と塩基の量を調節することによって、選択することができる。
スルホニル化反応における塩基としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、N-メチルモルホリン、及びN,N-ジメチルアニリン等のアミン類;ピリジン、メチルエチルピリジン、ルチジン、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン等のピリジン類;イミダゾール及びピラゾール類等の有機塩基類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び炭酸バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩;ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド、ナトリウム=アミド、及びリチウム=アミド等のアルカリ金属アミド;並びに、水素化ナトリウム及び水素化リチウム等の水素化アルカリ金属等の無機塩基類等が挙げられ、好ましい具体例としては、ピリジン及びトリエチルアミンを挙げることができる。
【0091】
スルホニル化反応における溶媒としては、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられ、反応速度の観点からトルエン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、基質である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メチル=カルボキシレート化合物1molに対して、好ましくは10~10,000gである。
【0092】
スルホニル化反応における反応温度は、反応速度の観点から、好ましくは-78~150℃、より好ましくは-10~100℃である。
スルホニル化反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0093】
ここで、(i)エステル化反応、(ii)エステル化反応とハロゲン化反応との組み合わせ、及び(iii)エステル化反応とスルホニル化反応との組み合わせの選択は例えば、下記に示すように脱離基Xに基づいて行われる。
脱離基Xが、アシルオキシ基である場合には、3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテンを有する化合物の二級ヒドロキシ基の変換反応として、エステル化反応を行う。
脱離基Xがハロゲン原子である場合には、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の一級ヒドロキシ基のエステル化を行い、そしてハロゲン化剤を用いて二級ヒドロキシ基の変換反応を行う。
脱離基Xがアルカンスルホニルオキシ基である場合には、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の一級ヒドロキシ基のエステル化を行い、そしてアルカンスルホニル化剤を用いて二級ヒドロキシ基の変換反応を行う。
脱離基Xがアレーンスルホニルオキシ基である場合には、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の一級ヒドロキシ基のエステル化を行い、そしてアレーンスルホニル化剤を用いて二級ヒドロキシ基の変換反応を行う。
【0094】
[4]工程A
まず、(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)の製造方法について、以下に説明する。(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)は、上述の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)(以下、開始物質(6)ともいう)を還元することにより得られる。
該製造方法は、(i)開始物質(6)を直接還元する方法と、(ii)開始物質(6)を対応するカルボン酸に変換し、そして該カルボン酸を還元反応に付す方法とに分けられる。
【0095】
まず、(i)開始物質(6)を直接還元する方法について説明する。
(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)は、下記の化学反応式に示されている通り、上述の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)を還元反応に付すことにより得られる。
【0096】
【0097】
一般式(6)におけるR1は、炭素数1~10、好ましくは1~6の1価の炭化水素基を表す。
R1の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基及びn-デシル基等の直鎖状の飽和炭化水素基、;イソプロピル基、2-メチルブチル基及びt-ブチル基等の分岐状の飽和炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロペンチルメチル基等の環状の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基及びエチニル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;イソプロペニル基及び2-メチル-2-プロペニル基等の分岐状の不飽和炭化水素基;並びに、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ベンジル基及びフェネチル基等の環状の不飽和炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基であってもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部が、炭素数1~9の1価の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0098】
3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)の具体例としては、エチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート(6A)、t-ブチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート、及びフェニル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート等が挙げられる。
【0099】
(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)は、4つの立体異性体を有する。(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)の具体例としては、下記式(5-1)で表される(1R,2R)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール、下記式(5-2)で表される(1R,2S)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール、下記式(5-3)で表される(1S,2R)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール、及び下記式(5-4)で表される(1S,2S)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール、並びに、これらのラセミ体、スカレミック混合物及びジアステレオ混合物が挙げられる。
【0100】
【0101】
上述の(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)は、(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールの4つの立体異性体(5-1)~(5-4)のうち、上述の(1R,2S)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5-2)、上述の(1S,2R)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5-3)、又はその両方を表す。
【0102】
上記還元反応には、公知のカルボン酸エステルの還元反応を適用できる。上記還元反応は、通常、溶媒中、必要に応じて冷却又は加熱しながら、反応基質を還元剤と反応させる。
反応基質としては、用いる還元剤の種類及び/又は反応条件にも依存するが、例えば、エステル中のR1が一級又は二級のアルキル基である場合は、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)をそのまま還元の基質として用いることができる。
【0103】
還元反応における還元剤としては、水素、ボラン、アルキルボラン、ジアルキルボラン及びビス(3-メチル-2-ブチル)ボラン等のホウ素化合物;ジアルキルシラン、トリアルキルシラン、水素化モノアルキルアルミニウム及び水素化ジアルキルアルミニウム等の金属水素化物類;並びに、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム、水素化ジエトキシアルミニウムリチウム、水素化トリt-ブトキシアルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム及び水素化ジイソブチルアルミニウム等の錯水素化塩類(complex hydride)、さらにはそれらのアルコキシ誘導体又はアルキル誘導体が挙げられるが、反応条件及び/又は後処理の容易さの観点から、錯水素化塩類が好ましい。
【0104】
還元反応における還元剤の使用量は、使用する還元剤及び/又は反応条件等により異なるが、基質である3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)1molに対して、好ましくは0.5~500mol、より好ましくは0.9~8molである。
【0105】
還元反応に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピル=アルコール、t-ブチル=アルコール、ベンジル=アルコール、メトキシエタノール及びエトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール=モノメチル=エーテル、トリエチレングリコール=モノメチル=エーテル、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
還元反応に用いる溶媒は、用いられる還元剤の種類によって適切なものを選択して用いる。例えば、還元剤と溶媒の好ましい組み合わせとしては、還元剤として水素化ホウ素リチウムを用いる場合には、エーテル系溶媒、エーテル系溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒又はエーテル系溶媒と炭化水素系溶媒との混合溶媒等、還元剤として水素化アルミニウムリチウムを用いる場合には、エーテル系溶媒又はエーテル系溶媒と炭化水素系溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
還元反応に用いる溶媒の使用量は、反応スケールにより異なるが、基質(6)1molに対して、反応速度の観点から、好ましくは0.01~100,000g、より好ましくは0.1~10,000g、さらに好ましくは1~1,000gである。
【0106】
還元反応の反応温度は、反応速度と副生物抑制の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-20~80℃である。
還元反応の反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0107】
また、(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)の製造方法の具体例としては、下記に示す化学反応式に示されている通り、エチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート(6A)と水素化アルミニウムリチウムとを反応させる方法等が挙げられる。
【0108】
【0109】
(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)のうちの(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)は、(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)と同様に、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)を還元反応に直接付すことにより得られる。
【0110】
次に、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を得る工程Aについて説明する。
溶媒の種類及び/又は還元剤の種類等によって、(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)の立体異性体の比率が変化し、(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)を選択的に製造することができる。上記溶媒及び還元剤としては、上記還元反応で述べたものを用いることができる。上記溶媒として、当業者は、立体選択的な反応が進む為の溶媒を上記溶媒から適宜選択することができる。上記還元剤として、例えば、ルイス酸性のある還元剤、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いることで立体選択的な反応が進行する。
【0111】
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の製造方法の具体例としては、下記の化学反応式に示される通り、上述のエチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート(6A)と水素化ジイソブチルアルミニウムとを反応させる方法等が挙げられる。
【0112】
【0113】
次に、(ii)開始物質(6)を対応するカルボン酸に変換し、そして該カルボン酸を還元反応に付す方法について説明する。
(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)は、上述の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)を対応する3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸に変換し、そして3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸を還元反応に付すことにより得られる。
もできる。
【0114】
まず、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸への変換について述べる。
3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸への変換には、公知のエステルからカルボン酸への変換反応を適用できる。例えば、塩基性又は中性条件での加水分解反応、酸性条件での脱離反応を挙げることができる。上記加水分解反応は、基質である上記エステル(6)中のR1が一級又は二級のアルキル基である場合に好ましく、上記脱離反応は、R1が三級アルキル基である場合に好ましい。
【0115】
上記加水分解反応の場合には、通常、溶媒中、塩基又は塩類を用いて、溶媒中の水と又は水を後で添加して該水と反応させる。上記脱離反応の場合には、通常、溶媒中、酸を用いて反応させる。いずれの反応の場合にも必要に応じて冷却又は加熱して反応させてもよい。
【0116】
加水分解反応に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等の炭酸塩類;並びに、ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、ナトリウム=t-ブトキシド、ナトリウム=t-アミロキシド、リチウム=メトキシド、リチウム=エトキシド、リチウム=t-ブトキシド、リチウム=t-アミロキシド、カリウム=メトキシド、カリウム=エトキシド、カリウム=t-ブトキシド及びカリウム=t-アミロキシド等の金属アルコキシド類が挙げられる。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販のものを用いることができる。
該塩基の使用量は、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは1~1000mol、より好ましくは1~100mol、さらに好ましくは1~10molである。
上記加水分解に用いる塩類としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸及びリン酸等の無機酸の塩類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等の有機酸の塩類;三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化スズ、四臭化スズ、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズ=ジメトキシド、ジブチルスズ=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸類;並びに、アルミナ、シリカゲル及びチタニア等の酸化物類が挙げられる。
該塩類は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩類は、市販のものを用いることができる。
該塩類の使用量は、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは1~1000mol、より好ましくは1~100mol、さらに好ましくは1~10molである。
上記脱離反応に用いる酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸及びリン酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等の有機酸類;三塩化アルミニウム、アルミニウム=エトキシド、アルミニウム=イソプロポキシド、酸化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化スズ、四臭化スズ、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズ=ジメトキシド、ジブチルスズ=オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のルイス酸類が挙げられる。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該酸は、市販のものを用いることができる。
該酸の使用量は、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0.0001~1000mol、より好ましくは0.001~100mol、さらに好ましくは0.01~10molである。
【0117】
上記加水分解反応又は脱離反応に用いる溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピル=アルコール、t-ブチル=アルコール、ベンジル=アルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール=モノメチル=エーテル、トリエチレングリコール=モノメチル=エーテル、テトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジエチル=エーテル、t-ブチル=メチル=エーテル、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム等の極性溶媒が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販のものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応スケールにより異なるが、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)1molに対して、反応速度の観点から、好ましくは0.01~200,000g、より好ましくは0.1~20,000g、さらに好ましくは1~2,000gである。
【0118】
加水分解反応又は脱離反応の反応温度は、反応速度と副生物抑制の観点から、好ましくは-78℃~溶媒の沸点温度、より好ましくは-10~100℃である。
加水分解反応又は脱離反応の反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.1~120時間である。
【0119】
次に、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸を還元反応に付す反応について述べる。
上記還元反応には、公知のカルボン酸からアルコールへの還元反応を適用できる。還元反応は、通常、溶媒中、必要に応じて冷却又は加熱しながら、反応基質を還元剤と反応させる。
反応基質としては、用いる還元剤の種類及び/又は反応条件にも依存するが、例えば、R1が三級であって、特にその立体障害が大きい場合には、還元反応の進行が遅いことが考えられることから、3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸に変換し、該カルボン酸を還元反応の基質として用いることが好ましい。
【0120】
還元反応における還元剤、還元反応における還元剤の使用量、還元反応に用いる溶媒及びその使用量、並びに、還元反応の反応温度及び反応時間は、上記した通りである。
【0121】
(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の製造方法の別の具体例としては、上述の3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸エステル(6)を対応する3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボン酸に変換し、そして該カルボン酸を還元反応に付すことにより得られる方法が挙げられる。この還元方法においても、還元剤として例えば水素化ジイソブチルアルミニウムを用いることができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(以下、「GC」ともいう。)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。
また「収率」はGC分析によって得られた面積百分率を基に算出した収率を示す。
収率は、出発原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[(反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、「粗収率」とは精製せずに算出した収率をいう。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5,0.25μm×0.25mmφ×30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:100℃ 10℃/分昇温 230℃。
【0123】
実施例1
<(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)の製造>
【0124】
【化30】
(式中、
iPrはイソプロピル基を表す。)
【0125】
反応器に、ヨウ化銅(1)(85.7g,0.450mol)、テトラヒドロフラン(THF)(801g)を加え、0~4℃に冷却した。その後、10℃以下にてヨウ化リチウム(121g,0.904mol)を加え、続いて0.00258重量モル濃度(mol/g)メチルマグネシウム=クロリドのTHF溶液(348g,0.898mol)を10℃以下にて滴下した。滴下終了後、得られた反応溶液を0~4℃にて30分間撹拌することにより、メチル化剤のTHF溶液を調製した。
次に、別の反応容器に、(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)(88.9g,0.300mol)及びTHF(91.2g)を加えて、37~42℃にて30分間撹拌した。その後、前述のメチル化剤のTHF溶液を35~45℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を37~42℃にて3.5時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を4~10℃に冷却し、そして塩化アンモニウム水溶液(354g:塩化アンモニウム(32g)及び水(322g)から調製)を加えて反応を停止した。さらに、得られた反応液に、20重量%塩酸(64.4g)及びヘキサン(1200g)を加えて、該反応液を分液し、そしてアンモニア水(1781g:塩化アンモニウム(58g)及び25重量%水酸化ナトリウム水溶液(193g)及び水(1530g)から調製)により、有機層を4回洗浄した。さらに、洗浄後の有機層を食塩水(1589g:食塩(59g)及び水(1530g)から調製)によって洗浄した。得られた有機層を減圧下濃縮し、そして残渣を減圧蒸留することにより、目的物である(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)(65.5g,0.292mol)が収率97.3%で得られた。
【0126】
上記で得られた(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.88(d,J=7.3Hz,3H),0.95(s,3H),0.96(s,3H),1.16(d,J=6.9Hz,6H),1.65(q,J=1.9Hz,3H),2.10-2.15(m,1H),2.45-2.49(m,1H),2.49-2.56(m,1H),3.93(dd,J=11.1,6.9Hz,1H),4.10(dd,J=11.1,6.5Hz,1H),5.14-5.15(m,1H);13C-NMR(75.6MHz,CDCl3):δ=12.36,15.17,18.97,19.00,23.95,24.59,34.13,43.01,52.52,52.61,64.59,123.03,145.27,177.21
〔GC-MS〕(EI,70eV):m/z 224(M+),136,121,105,93,81,67,55,43,27
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):νmax 3040,2966,2873,1737,1470,1387,1258,1191,1157,1074,982,919,826,755
【0127】
実施例2
<(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)の製造>
【0128】
【0129】
反応器に、実施例1で得られた(1RS,4RS)-(3,4,5,5-テトラメチル-2-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(3A)(0.61g,2.7mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(p-TsOH・H2O)(0.08g,0.4mmol)及びトルエン(20mL)を加えて、100~110℃にて9時間撹拌した。その後、反応液を4~10℃に冷却し、そして、炭酸水素ナトリウム水溶液(10.1g:炭酸水素ナトリウム(0.10g)及び水(10g)から調製)を加えて反応を停止した。得られた反応液を分液し、引き続き、有機層を飽和食塩水(30mL)により洗浄した。得られた有機層を減圧下濃縮し、そして残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=100:1~80:1のグラジエントで溶出)で精製することにより、目的物である(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)(0.55g,2.4mmol)が収率89%で得られた。
【0130】
上記で得られた(1RS)-(2,2,3,4-テトラメチル-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(4A)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.82(s,3H),1.05(s,3H),1.168(d,J=6.9Hz,3H),1.169(d,J=6.9Hz,3H),1.47-1.48(m,3H),1.58(brd,J=1.2Hz,3H),1.95-2.01(m,1H),2.09-2.15(m,1H),2.21-2.26(m,1H),2.50-2.58(m,1H),4.09(dd,J=11.1,7.7Hz,1H),4.15(dd,J=11.1,6.9Hz,1H);13C-NMR(75.6MHz,CDCl3):δ=9.20,14.09,18.99,19.02,19.92,27.01,34.12,39.06,46.74,47.67,65.62,127.85,138.52,177.27
〔GC-MS〕(EI,70eV):m/z 224(M+),136,121,105,93,79,67,55,43,27
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):νmax 2967,2929,1737,1470,1386,1360,1261,1193,1157,1073,979,919
【0131】
実施例3
<(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)の製造>
【0132】
【化32】
(式中、Etはエチル基を表し、i-Buはイソブチル基を表す。)
【0133】
反応器に、エチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート(6A)(84.1g,0.429mol)及びTHF(1029g)を加えて、-5~5℃にて30分間撹拌した。その後、混合物に、1.0モル濃度(mol/L)水素化ジイソブチルアルミニウム(i-Bu2AlH)のトルエン溶液(1500mL,1.50mol)を-5~5℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を室温で30分間撹拌し、55℃にて2時間さらに撹拌した。撹拌終了後、反応液を4~10℃に冷却し、そしてエタノール(108g,2.34mol)を加えて反応を停止した。さらに、得られた反応液に、飽和酒石酸ナトリウムカリウム水溶液(1500mL)を滴下した。滴下終了後、室温で15時間撹拌し、50℃にて2時間さらに撹拌した。撹拌終了後、得られた反応液を分液し、有機層を飽和食塩水(1000mL)で洗浄し、得られた有機層を減圧下濃縮することにより、粗結晶が得られた。得られた粗結晶をn-ヘキサン(500mL)及び酢酸エチル(78.5mL)を用いて再結晶を行うことにより、目的物である(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)(24.6g,0.158mol)が収率36.8%で得られた。
【0134】
上記で得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.97(s,3H),1.06(s,3H),1.77-1.78(m,3H),2.05(ddd,J=10.0,6.5,5.4Hz,1H),3.79(dd,J=10.7,5.4Hz,1H),3.95(dd,J=10.7,10.0Hz,1H),4.58(d,J=6.5Hz,1H),5.39(q,J=1.5Hz,1H);13C-NMR(75.6MHz,CDCl3):δ=13.96,25.45,28.92,44.67,54.14,59.86,80.37,137.91,140.81
〔GC-MS〕(EI,70eV):m/z 156(M+),141,125,109,95,77,67,55,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):νmax 3312,3021,2971,2946,2862,1443,1404,1215,1112,1091,1030,971,952,902,873,772,718,644,594
【0135】
実施例4
<(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)の製造>
【0136】
【0137】
反応器に、水素化アルミニウムリチウム(0.57g,15mmol)及びTHF(18.7g)を加えて、室温にて1.5時間撹拌した。その後、反応液を4~10℃に冷却し、エチル=3,5,5-トリメチル-2-オキソ-3-シクロペンテン-1-カルボキシレート(6A)(1.43g,7.27mmol)及びTHF(1.00g)を4~12℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を20~25℃にて2時間撹拌した。続いて、反応液を4~10℃に冷却し、水(1.13g)、25重量%水酸化ナトリウム水溶液(0.66g)、そして水(3.89g)を順次加えて反応を停止した。次に、反応液をセライトろ過し、得られたろ液を減圧下にて濃縮して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=20:1~2:3のグラジエントで溶出)を用いて残渣を精製することにより、目的物である(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5)(0.41g,2.6mmol)が(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C):(1RS,2RS)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール=45:55)の混合物として収率36%で得られた。
【0138】
上記で得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)のスペクトルデータはそれぞれ、実施例3で得られたスペクトルデータと同じであった。
また、上記で得られた(1RS,2RS)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノールのスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.84(s,3H),1.12(s,3H),1.70-1.71(m,3H),1.88(ddd,J=10.0,7.6,5.4Hz,1H),3.83(dd,J=10.0,10.0Hz,1H),3.90(dd,J=10.0,5.4Hz,1H),4.50(d,J=7.6Hz,1H),5.28(q,J=1.5Hz,1H);13C-NMR(75.6MHz,CDCl3):δ=13.04,23.47,29.20,43.04,60.13,60.21,83.39,137.47,138.45
〔GC-MS〕(EI,70eV):m/z 156(M+),141,125,109,95,77,67,55,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):νmax 3335,3022,2954,2866,1463,1448,1361,1254,1152,1090,1043,999,947,883,830,627
【0139】
実施例5
<(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)の製造>
【0140】
【化34】
(式中、
iPrはイソプロピル基を表す。)
【0141】
反応器に、実施例3に従って得られた(1RS,2SR)-(2-ヒドロキシ-3,5,5-トリメチル-3-シクロペンテニル)メタノール(5C)(137g,0.876mol)、THF(435g)及びピリジン(249g,3.15mol)を加えて、4~10℃にて1時間撹拌した。その後、混合物に、イソブチリル=クロリド(215g,2.01mol)を15℃以下にて滴下した。滴下終了後、反応液を4~10℃にて3時間撹拌し、食塩水(2882g:食塩(262g)及び水(2620g))を加えて反応を停止した。続いて反応液にヘキサン(545g)を加え、そして得られた反応液を分液し、塩酸(2804g:20重量%塩酸(117g)及び食塩(65g)及び水(2622g)から調製)により、有機層を洗浄した。さらに、食塩水(2687g:食塩(65g)及び水(2622g)から調製)、続いて、炭酸ナトリウム水溶液(2753g:炭酸ナトリウム(131g)及び水(2622g)から調製)、最後に、食塩水(2882g:食塩(262g)及び水(2620g)から調製)によって有機層の洗浄を行った。そして、得られた有機層を減圧下濃縮して残渣を減圧蒸留することにより、目的物である(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)(255g,0.860mol)が収率98.2%で得られた。
【0142】
上記で得られた(1RS,2SR)-(3,5,5-トリメチル-2-イソブチリルオキシ-3-シクロペンテニル)メチル=イソブチレート(1A)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ1.00(s,3H),1.12(s,3H),1.12-1.15(m,12H),1.65(d,J=1.5Hz,3H),2.28(ddd,J=9.2,6.5,6.5Hz,1H),2.48-2.54(m,2H),4.11(dd,J=11.1,6.5Hz,1H),4.17(dd,J=11.1,9.2Hz,1H),5.49(q,J=1.5Hz,1H),5.70(d,J=6.5Hz,1H);13C-NMR(75.6MHz,CDCl3):δ14.30,18.89,18.94,19.04(2C),24.48,27.84,33.98,34.28,45.21,50.19,60.69,79.97,135.32,143.10,176.51,177.07
〔LC-MS〕(ESI,positive):m/z 314(M++18)
〔赤外吸収スペクトル〕(NaCl):νmax 2972,2874,1734,1471,1386,1256,1192,1157,1115,1087,983,961,900,850,756