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特許7542053多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板上に単結晶炭化ケイ素の薄層を含む複合構造を製造するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板上に単結晶炭化ケイ素の薄層を含む複合構造を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240822BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20240822BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
H01L21/02 C
C30B29/36 A
C30B25/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502071
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 FR2020051159
(87)【国際公開番号】W WO2021019137
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】1908840
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シンキン, ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベソウ, ジーン―マーク
(72)【発明者】
【氏名】ラディソン, ダミアン
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-541230(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104291(WO,A1)
【文献】特開2017-057102(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006663(WO,A1)
【文献】特開平10-297996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C16/00 -16/56
C30B 1/00 -35/00
H01L21/00 -21/02
H01L21/04 -21/20
H01L21/205
H01L21/31
H01L21/34 -21/36
H01L21/365
H01L21/469
H01L21/84 -21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板(20)上に配置された単結晶炭化ケイ素の薄層(10)を含む複合構造(1)を製造するためのプロセスであって、
単結晶炭化ケイ素で作られた初期基板(11)を用意するステップと、
前記初期基板(11)上に多結晶炭化ケイ素の中間層(21)を形成するための、1000℃より高い温度での第1の堆積ステップであって、前記中間層(21)の厚さが1.5ミクロン以上である、ステップと、
前記中間層(21)を通して軽イオン種を注入して、前記初期基板(11)に埋め込み脆性面(12)を形成し、前記埋め込み脆性面(12)と前記中間層(21)との間の前記薄層(10)を区切るステップと、
前記中間層(21)上に多結晶炭化ケイ素の追加の層(22)を形成するための、1000℃より高い温度での第2の堆積ステップであって、前記中間層(21)及び前記追加の層(22)が、前記キャリア基板(20)を形成する、ステップと、を含み、
前記第2の堆積ステップ中に前記埋め込み脆性面(12)に沿って分離が起こる、プロセス。
【請求項2】
前記第1の堆積ステップ及び前記第2の堆積ステップが、1000℃~1600℃の間の温度での化学蒸着によって実行される、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記第1の堆積ステップ及び/又は前記第2の堆積ステップが、塩素化前駆体から開始して実行される、請求項2に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記第1の堆積ステップの完了時に、前記中間層(21)の前記厚さが、3ミクロン以上、又はさらには5ミクロン以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項5】
前記注入される軽イオン種が、水素及び/又はヘリウムから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記注入される軽イオン種が、水素から選択されると共に、260keV~2000keVの間のエネルギーで、516/cm~117/cmの間の線量で注入される、請求項5に記載の製造プロセス。
【請求項7】
前記第1の堆積ステップの前に、前記初期基板(11)の前面を脱酸する少なくとも1つの動作を含む、前記初期基板(11)を調製するステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクス部品用の半導体材料の分野に関する。本発明は、特に、多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板上に単結晶炭化ケイ素の薄層を含む複合構造を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)への関心は、この半導体材料がエネルギーを処理する能力を高めることができるため、過去数年間で大幅に増加している。SiCは、特に電気自動車などの電子機器の台頭する分野のニーズを満たす革新的なパワーデバイスを製造するためにますます広く使用されている。
【0003】
単結晶炭化ケイ素に基づくパワーデバイス及び統合電源システムは、従来のケイ素同族体に比べてはるかに高いエネルギー密度を管理でき、それをより小さいアクティブゾーンの寸法で行うことができる。SiC上のパワーデバイスの寸法をさらに制限するには、横方向の部品ではなく垂直方向の部品を製造することが有利である。このため、SiC構造の前面に配置された電極と背面に配置された電極との間の垂直方向の電気伝導が、前記構造によって可能にされなければならない。
【0004】
しかし、マイクロエレクトロニクス産業向けの単結晶SiC基板は依然として高価であり、大きなサイズで供給することは困難である。したがって、薄層転写の解決策を利用して、より安価なキャリア基板上に単結晶SiCの薄層を通常含む複合構造を製造することが有利である。よく知られている薄層転写解決策の1つは、軽イオンの注入及び直接結合による接合に基づくスマートカット(Smart Cut)(商標)プロセスである。そのようなプロセスは、例えば、多結晶SiC(p-SiC)で作られたキャリア基板と直接接触する、c-SiCドナー基板から取られた単結晶SiC(c-SiC)の薄層を含む複合構造を製造することを可能にし、及び垂直方向の電気伝導を可能にする。しかし、c-SiC及びp-SiCで作られた2つの基板間の分子接着による高品質の直接結合を実現することは、前記基板の表面状態及び粗さの管理が複雑であるため、依然として困難である。
【0005】
このプロセスから派生した様々な方法も従来技術から知られている。例えば、F.Muら(ECS Transactions、86(5)3~21、2018)は、アルゴンによる衝撃によって接合される表面を活性化した後、直接結合を実装する(「表面活性化結合」、略してSAB)。結合前のこのような処理により、非常に高密度のダングリングボンドが生成され、接合界面での共有結合の形成が促進されるため、結合エネルギーが高くなる。しかしながら、この方法には、単結晶SiCドナー基板の表面にアモルファス層を生成するという欠点があり、これは、c-SiCの薄層とp-SiCで作られたキャリア基板との間の垂直方向の電気伝導に悪影響を与える。
【0006】
この問題を解決するための解決策が提案されており、特に文献EP3168862では、その電気的特性を回復するために、前記アモルファス層へのドーパント種の注入を実装している。このアプローチの主な欠点は、その複雑さ、したがってそのコストである。
【0007】
また、熱膨張係数が薄層の熱膨張係数と一致する、金属キャリア基板上に配置されたc-SiCの薄層を含む複合構造を製造するためのプロセスを記載する文献米国特許第8436363号も知られている。この製造プロセスは、
c-SiCドナー基板に埋め込み脆性面を形成し、前記埋め込み脆性面とドナー基板の前面との間に薄層を区切るステップと、
ドナー基板の前面に金属、例えばタングステン又はモリブデンの層を堆積させて、硬化機能を実行するのに十分な厚さのキャリア基板を形成するステップと、
埋め込み脆性面に沿って分離して、一方では金属キャリア基板とc-SiCの薄層を含む複合構造を、他方ではc-SiCドナー基板の残りを形成するステップと、を含む。
【0008】
しかし、キャリア基板を形成する材料が、1000℃を超える温度、例えば1200℃での堆積を必要とするp-SiCである場合、このような製造プロセスは互換性がない。具体的には、これらの高温では、埋め込み脆性面に存在するキャビティの成長速度は、p-SiC層の成長速度よりも速く、水泡が発生し始める前に硬化効果に必要な厚さに到達しない。これは、キャビティに沿った垂直方向の層の変形に関連している。
【0009】
高温(>1000℃)でのp-SiCの堆積は、構造特性(粒子サイズ、結晶配向など)を与えるという点で特に有利であることに留意されたい。これらの構造特性は、良好な電気伝導、良好な熱伝導、及び堆積したp-SiC層上のc-SiCの熱膨張係数に非常に近い熱膨張係数に好適であり、パワーデバイスを収容することを目的としたSiCベースの基板に通常期待される特性である。高い堆積温度はまた、それらが高い成長速度を可能にするという点でも有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の解決策に代わるものとしての解決策に関するものであり、前述の欠点を完全に又は部分的に克服することを目的としている。本発明は、特に、高温堆積から生じるp-SiCで作られたキャリア基板上に配置されたc-SiCの薄層を含む複合構造を製造するためのプロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板上に配置された単結晶炭化ケイ素の薄層を含む複合構造を製造するためのプロセスに関する。このプロセスは、
単結晶炭化ケイ素で作られた初期基板を用意するステップと、
初期基板上に多結晶炭化ケイ素の中間層を形成するための、1000℃より高い温度での第1の堆積ステップであって、中間層の厚さが1.5ミクロン以上である、ステップと、
中間層を通して軽イオン種を注入して、初期基板に埋め込み脆性面を形成し、前記埋め込み脆性面と中間層との間の薄層を区切るステップと、
中間層上に多結晶炭化ケイ素の追加の層を形成するための、1000℃より高い温度での第2の堆積ステップであって、前記中間層及び追加の層が、キャリア基板を形成し、第2の堆積ステップ中に埋め込み脆性面に沿って分離が起こる、ステップと、を含む。
【0012】
単独で、又は技術的に実現可能な任意の組み合わせに従って考慮される、本発明の他の有利で非限定的な特徴によれば、以下の通りである:
第1の堆積ステップ及び第2の堆積ステップは、1000℃~1600℃の間、好ましくは1200℃~1600℃の間の温度での化学蒸着によって実行される。
【0013】
第1の堆積ステップ及び第2の堆積ステップは同じ温度で実行される。
【0014】
第1の堆積ステップ及び/又は第2の堆積ステップは、塩素化前駆体から開始して実行される。
【0015】
第1の堆積ステップの完了時に、中間層の厚さは、3ミクロン以上、又はさらには5ミクロン以上である。
【0016】
注入される軽イオン種は、水素及び/又はヘリウムから選択される。
【0017】
水素イオンは、260keV~2000keVの間のエネルギーで、5E16/cm~1E17/cmの間の線量で注入される。
【0018】
このプロセスは、第1の堆積ステップの前に、前記初期基板の前面を脱酸する少なくとも1つの動作を含む、初期基板を調製するステップを含む。
【0019】
このプロセスは、第2の堆積ステップの後に、複合構造に適用される仕上げステップを含み、前記ステップは、薄層の自由面の化学機械研磨及び/又はキャリア基板の自由面の化学機械研磨を含む。
【0020】
薄層及びキャリア基板の化学機械研磨は、両面研磨装置を使用して同時に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、添付の図面を参照して与えられる。
図1】本発明による製造プロセスに従って製造された複合構造を示している。
図2a】本発明による製造プロセスのステップを示している。
図2b】本発明による製造プロセスのステップを示している。
図2c】本発明による製造プロセスのステップを示している。
図2d】本発明による製造プロセスのステップを示している。
図2e】本発明による製造プロセスのステップを示している。
図2f】本発明による製造プロセスのステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
説明では、図中の同じ参照記号が同じタイプの要素に使用される。これらの図は、読みやすくするために縮尺どおりではない概略図である。特に、z軸に沿った層の厚さは、x軸及びy軸に沿った横方向の寸法に対して縮尺どおりではない。また、層の相互の相対的な厚さは、必ずしも図で尊重されているわけではない。
【0023】
本発明は、多結晶炭化ケイ素で作られたキャリア基板20上に配置された単結晶炭化ケイ素の薄層10を含む複合構造1を製造するためのプロセスに関する(図1)。
【0024】
このプロセスは、最初に、単結晶炭化ケイ素で作られた初期基板11を用意するステップを含む(図2a)。説明の残りの部分を通して、「c-SiC」は、単結晶炭化ケイ素を指すために使用される。
【0025】
初期基板11は、直径100mm若しくは150mm、又はさらには200mm、及び典型的には300~800ミクロンの間の厚さを有するウェーハの形状をとることが好ましい。それは、前面11a及び背面11bを有する。前面11aの表面粗さは、20ミクロン×20ミクロンのスキャンで原子間力顕微鏡(AFM)によって測定された平均粗さである1nmRaよりも低くなるように有利に選択される。
【0026】
複合構造1のc-Siの薄層10は、本発明のプロセスの完了時に、初期基板11から開始して形成される。したがって、初期基板11の結晶配向、結晶品質、及びドーピングのレベルは、薄層10上に形成される垂直部品の必要な仕様を満たすように選択される。通常、c-SiCで作られた初期基板11は、4H又は6Hポリタイプであり、<11-20>結晶軸に対して4.0°未満のオフカット角度±0.5°と、5/cm以下、又はさらには1/cm以下のマイクロパイプ密度とを有する。N(窒素)ドープされている場合、0.015ohm.cm~0.030ohm.cmの間の抵抗率を示すことが好ましい。任意選択で、これらの欠陥に対する部品の感度に応じて、典型的には1500/cm以下の低密度のBPD(基底面転位)を示す初期基板11を選択することが可能である。
【0027】
或いは、初期基板11は、前記表面層から開始する本発明のプロセスの完了時に、例えばエピタキシーによって製造され、形成されることになる将来の薄層10に必要な特性を示す、その前面11a上の表面層を含み得る。
【0028】
このプロセスは、初期基板11の前面11a上にp-SiCの中間層21を形成するための、1000℃より高い温度での堆積の第1のステップを含む(図2b)。中間層21の厚さは、1.5ミクロンよりも大きい。中間層21の厚さは、3ミクロン以上、又はさらには5ミクロン以上であることが有利である。この最小の厚さは、以下でさらに説明するように、プロセスの後の第2のステップに十分な硬化機能を中間層21に与えるように定義される。
【0029】
中間層21の厚さは、プロセスの次のステップで前記層を通過するのに必要な注入エネルギーを制限するために、30ミクロン未満に保たれることが好ましい。
【0030】
この第1の堆積は、塩素化前駆体に基づいて、1000℃~1600℃の間の温度で、化学蒸着(CVD)技術を使用して有利に実行される。堆積温度は、Chichignoudらによる文献(「Chlorinated silicon carbide CVD revisited for polycrystalline bulk growth」、第201巻、第22~23号、2007年9月25日、8888~8892ページ、Surface and Coatings Technology)で提案されているように、1200℃~1600℃の間であることがさらに有利である。第1の堆積のパラメータは、中間層21が良好な電気伝導率、すなわち0.015~0.03ohm.cmの間、高い熱伝導率、すなわち200W.m-1.K-1以上、及び薄層10の熱膨張係数と同様の熱膨張係数、すなわち、通常、周囲温度で3.8-6/K~4.2-6/Kの間を示すように決定される。
【0031】
これらの特性を得るために、例えば、中間層21が以下の構造的特徴を示すことが可能である:3C SiC粒子、111配向、平均サイズ1~10μm、0.03ohm.cm以下の最終抵抗率のためにNドープされている。
【0032】
本発明による製造プロセスは、初期基板11の所与の深さまで中間層21を通して軽イオン種を注入するステップをさらに含む。この注入により、初期基板11に埋め込み脆性面12が作成される(図2c)。
【0033】
注入される軽イオン種は、水素、ヘリウム、又はこれらの2つの種が同時注入されたものであることが好ましい。スマートカット(商標)プロセスに関してよく知られているように、これらの軽イオン種は、所与の深さの周りに、中間層21の自由表面に平行な、すなわち図中の平面(x,y)に平行な薄層に分布するマイクロキャビティを形成する。この薄層は、簡単にするために、埋め込み脆性面と呼ばれる。
【0034】
埋め込み脆性面12は、初期基板11の前面で、将来の薄層10を区切る。換言すれば、製造プロセスの完了時に得られる複合構造1の薄層10は、この段階で、埋め込み脆性面12と中間層21との間に配置される。
【0035】
軽イオン種の注入のエネルギーは、それらが中間層21を通過し、初期基板11の所与の深さに到達するように選択され、前記深さは、薄層10の目標厚さに対応する。
【0036】
通常、1.5ミクロン~30ミクロンの中間層21を通過し、約100~1500nmの薄層10を区切るために、水素イオンは260keV~2000keVの間のエネルギーで、516/cm~117/cmの間の線量で注入される。
【0037】
イオン注入ステップの前に、保護層を中間層21の自由面に堆積させることができることに留意されたい。この保護層は、例えば、酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの材料から構成され得る。
【0038】
製造プロセスは、最後に、中間層21上にp-SiCの追加の層22を形成するための、1000℃より高い温度での堆積の第2のステップを含む(図2d)。
【0039】
第2の堆積は、塩素化前駆体に基づいて、1000℃~1600℃の間の温度で、化学蒸着(CVD)技術を使用して有利に実行される。第1の堆積の場合と同様に、堆積の温度は1200℃~1600℃の間であることがさらに有利である。第1の堆積と同様に、第2の堆積のパラメータは、追加の層22が良好な電気伝導率、すなわち0.015~0.03ohm.cmの間、高い熱伝導率、すなわち200W.m-1.K-1以上、及び薄層10の熱膨張係数と同様の熱膨張係数、すなわち、通常、周囲温度で3.8-6/K~4.2-6/Kの間を示すように決定される。
【0040】
第2の堆積の温度及び条件は、第1の堆積のものと同一又は異なることが可能であり、その目的は、追加の層22について上記の電気的、熱的、及び機械的特性を得ることである。
【0041】
中間層21について上に示したように、これらの特性を得るために、例えば、追加の層22が以下の構造的特徴を示すことが可能である:3C SiC粒子、111配向、平均サイズ1~10μm、0.03ohm.cm以下の最終抵抗率のためにNドープされている。
【0042】
中間層21及び追加の層22によって形成されるアセンブリは、複合構造1のキャリア基板20を形成することを目的としている。したがって、上記の電気的、熱的、及び機械的特性は、キャリア基板20に提供されるため、垂直パワーデバイスの期待される仕様を満たす。
【0043】
キャリア基板20の目標最終厚さは、典型的には50ミクロン~300ミクロンの範囲内である。
【0044】
第2の堆積ステップ中に、初期基板11、中間層21、及び成長する追加の層22によって形成された構造に適用される熱収支のために、埋め込み脆性面12に沿って分離が起こる(図2e)。具体的には、埋め込み脆性面12に存在するマイクロキャビティは、埋め込み脆性面12の全範囲にわたって伝播する破壊波の開始まで、成長速度に従い、その結果、薄層10、中間層21、及び追加の層22から形成されたアセンブリと、初期基板11’の残りの部分との間の分離がもたらされる。
【0045】
第1の変形によれば、分離は、追加の層22がその目標厚さに到達する前に起こる。分離が起こるときの追加の層22の厚さに関係なく、中間層21はそれ自体で硬化効果を提供するのに十分な厚さであるため、破壊波は埋め込み脆性面12の全範囲にわたって伝播する。したがって、キャビティは、水泡形成で層を変形させない。次に、追加の層22の目標厚さに到達し、最終的な複合構造1が得られるまで、第2の堆積を続けることができる(図2f)。追加の層22の目標厚さと中間層21の厚さの合計が、キャリア基板20の最終的な厚さを構成する。
【0046】
第2の変形によれば、分離は、追加の層22がその目標厚さに到達した瞬間に実質的に起こる。
【0047】
分離は、注入パラメータ、第2の堆積の温度、及び追加の層22の目標厚さ(第2の堆積の期間を決定する)に従って、上記の第1又は第2の変形に従って起こることがよく理解される。
【0048】
製造プロセスは、第1の堆積ステップの前及び/又は第2の堆積ステップの前に、前記初期基板11の前面を脱酸する少なくとも1つのシーケンスを含む、初期基板11を調製するステップを含むことが有利である。例えば、このシーケンスは、フッ化水素酸(HF)の浴に浸すことによって、又はHF蒸気にさらすことによって実行することが可能である。調製ステップはまた、初期基板11の面11a、11bに存在し得る金属又は有機の粒子状汚染物質の全部又は一部を除去するための洗浄シーケンスを含み得る。
【0049】
1つの有利な実施形態によれば、製造プロセスは、第2の堆積ステップの完了時に得られる最終的な複合構造1に適用される仕上げステップを含む。これらの仕上げステップは、特に、薄層10の自由表面(最終的な複合構造1の前面)の粗さ、及び潜在的に追加の層22の自由面(最終的な複合構造1の背面)の粗さを改善することを目的としている。具体的には、分離後、薄層10の自由面は、通常、3~6nm Raの間の粗さ(AFM-20ミクロン×20ミクロンスキャン)を示す。後の部品製造の目的は、粗さを1nm Ra未満にすることである。最終的な複合構造1の背面に関して、第2の堆積の完了時の粗さは、通常、10nm Raよりも高く、又は100nm Raよりもさらに高い。目標の目的は通常、粗さを3nm Ra未満に下げることである。
【0050】
仕上げステップは、特に、最終的な複合構造1の前面に、その背面に、又は両面研磨装置を使用することによって同時に両方の面に適用される、既知の化学機械研磨技術を使用することができる。研磨プロセスは前面と背面とで異なる可能性があり、c-SiC表面の平滑化とp-SiC表面の平滑化とでは、通常、異なる消耗品が必要となる。
【0051】
(実施例)
1つの非限定的な例示的な実施によれば、製造プロセスの第1のステップで提供される初期基板11は、4Hポリタイプのc-SiCで作られたウェーハであり、<11-20>軸に対して4.0°±0.5°の配向で、直径150mm、厚さ350μmを有する。
【0052】
従来のRCA洗浄シーケンス(標準洗浄1+標準洗浄2)、続いてカロ酸(硫酸と過酸化水素の混合物)、次にHF(フッ化水素酸)が、第1の堆積ステップの前に初期基板11上で実行される。1200℃の温度で塩素化前駆体に基づくCVDが初期基板11の前面11aで実行され、6分後に5ミクロンの厚さの中間層21が作成される(堆積速度:50μm/h)。
【0053】
水素イオンは、中間層21の自由表面を通して、650keVのエネルギー及び616H+/cmの線量で注入される。したがって、埋め込み脆性面12が、初期基板11内に約600nmの深さで作成される。
【0054】
中間層21の自由面から潜在的な汚染物質を除去するために、構造上でRCA+カロ酸の洗浄シーケンスが実行される。
【0055】
300ミクロンの目標厚さ(中間層21及び追加の層22の厚さの合計)を達成するために、第2のCVDが、1200℃の温度で355分間、中間層21上で実行される。分離は、堆積中に埋め込み脆性面12のレベルで起こる。第2の堆積の完了時に、薄層10及びキャリア基板20から形成された複合構造1は、初期基板11の残りの部分から分離される。
【0056】
薄層10及びキャリア基板20の背面(追加の層22の自由面)の表面粗さを回復させるために、両面研磨を実行することができる。
【0057】
もちろん、本発明は、記載された実施形態及び例に限定されず、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲から逸脱しないその変形の実施形態が想定され得る。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f