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特許7542089基板加工用仮接着材料及び積層体の製造方法
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  • 特許-基板加工用仮接着材料及び積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】基板加工用仮接着材料及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/14 20060101AFI20240822BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240822BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20240822BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240822BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240822BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240822BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240822BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C09J183/14
C09J183/07
C09J183/05
C09J7/30
C09J5/06
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
B32B7/06
B32B27/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023003027
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2019129071の分割
【原出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2023052354
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】田辺 正人
(72)【発明者】
【氏名】菅生 道博
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩之
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072612(JP,A)
【文献】特開2017-013311(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191815(WO,A1)
【文献】特開2018-203880(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187874(WO,A1)
【文献】特開2008-143869(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098949(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/115060(WO,A1)
【文献】特開2017-73541(JP,A)
【文献】特開2016-119438(JP,A)
【文献】特開2015-179692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01L 21/304
H01L 21/463
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面を加工すべき基板を支持体に仮接着するための基板加工用仮接着材料であって、
前記仮接着材料は、総質量100部に対してGPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、
前記仮接着材料は、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは組成が異なる第二仮接着材層の2層構造からなり、
前記第一仮接着材層が、
下記一般式(1)で示される繰り返し単位と、下記一般式(3)で示される繰り返し単位のいずれか一方、又は両方を有するシロキサン結合含有重合体で構成され、5~150μmの膜厚であり、
前記第二仮接着材層が、
(p1)分子中にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(p2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(p1)成分中のアルケニル基に対する(p2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から15となる量、及び
(p3)白金系触媒を含有する付加硬化型シロキサン結合含有重合体で構成され、1.0~15μmの膜厚であり、
前記第一仮接着材層と前記第二仮接着材層のいずれの層も、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、100Pa・s以上6,000Pa・s以下であることを特徴とする基板加工用仮接着材料。
【化1】
[式中、R~Rは同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、mは1~100の整数であり、Bは正数、Aは0又は正数である。但しA+B=1である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基である。
【化2】
(式中、Zは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、Nは0又は1である。また、R、Rはそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【化4】
[式中、R~R10は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、nは1~100の整数であり、Dは正数、Cは0又は正数である。但し、C+D=1である。更に、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化5】
(式中、Vは
【化6】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R11、R12はそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【請求項2】
基板及び支持体と、前記基板と前記支持体との間に介在する仮接着材料から構成される積層体であって、
前記仮接着材料は、請求項に記載の基板加工用仮接着材料であり、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは組成が異なる第二仮接着材層の2層構造からなり、
前記第二仮接着材層が支持体の表面に形成されものであることを特徴とする積層体。
【請求項3】
基板と支持体を、仮接着材料を介して接合する積層体の製造方法であって、
前記仮接着材料は、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは組成が異なる第二仮接着材層の2層構造からなり、
下記(a)~(d)の工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
(a)基板と支持体のどちらか一方、若しくは両方の接合される面に、請求項に記載の基板加工用仮接着材料を用いて仮接着材層を形成する工程であって、
少なくとも支持体上に前記(p1)、(p2)及び(p3)を含有するシロキサン結合含有重合体を用いて前記第二仮接着材層を形成することを含み、
(b)前記基板と前記支持体のどちらか一方、若しくは両方を予め30℃以上100℃以下の温度に加熱する工程、
(c)前記基板と前記支持体を、前記仮接着材料を介して減圧下で接触させ、1MPa以下の圧力で加圧する工程、
(d)加圧を保持した状態で、基板温度を130℃以上250℃以下の温度に加熱する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加工用仮接着材料、及び該基板加工用仮接着材料を用いる積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(「裏面」ともいう)研削によって薄型化し、更に裏面にTSVを含む電極形成を行う工程が必要である。
【0003】
従来、シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に保護テープを貼り、研削時の基板破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを支持基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、TSV形成工程や裏面での配線層形成工程を行うには適さない。
【0004】
そこで、半導体基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着層を介して接合することによって、裏面研削、TSVや裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着層である。これは基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要で、更に最後に薄型基板を支持体から簡便に剥離できることが求められている。このように、最後に剥離することから、本明細書では、この接着層を仮接着層(又は仮接着材層)と呼ぶことにする。
【0005】
これまでに公知の仮接着層とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着材に高強度の光を照射し、接着材層を分解することによって支持体から接着材層を剥離する技術(特許文献1)、及び、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着材に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザ等の高価な装置が必要であり、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。また後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であるため、適用範囲は狭かった。更にこれらの仮接着層では、高段差基板の均一な膜厚形成と、支持体への完全接着にも適さないにもかかわらず、後工程の基板と支持体を剥離することができず、基板にダメージを与える場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-64040号公報
【文献】特許第6059631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、基板と支持体との仮接着が容易であり、基板又は支持体への仮接着材層形成工程が速く、更には、寸法安定性に優れ、CVD(化学的気相成長)等熱プロセス耐性に優れ、剥離も容易であり、積層体の生産性を高めることができる基板加工用仮接着材料、及び、該基板加工用仮接着材料を用いる積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、裏面を加工すべき基板を支持体に仮接着するための基板加工用仮接着材料であって、
前記仮接着材料は、総質量100部に対してGPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、
前記仮接着材料は、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは異なる第二仮接着材層を有し、
前記第一仮接着材層と前記第二仮接着材層のうち少なくとも1層は、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s以上10,000Pa・s以下であることを特徴とする基板加工用仮接着材料を提供する。
【0009】
このような本発明の基板加工用仮接着材料であれば、基板と支持体との仮接着が容易で、寸法安定性に優れ、仮接着材層形成速度が高く、TSV形成、基板裏面配線工程に対する工程適合性が高く、更には、CVD等の熱プロセス耐性も良好であり、剥離も容易で、薄型基板の生産性を高めることができる。
【0010】
この場合、前記第一仮接着材層が、熱可塑性樹脂で構成されることができる。
【0011】
このような基板加工用仮接着材料であれば、処理後の基板を簡単に洗浄することができるため、より一層、薄型基板の生産性を高めることができる。
【0012】
またこの場合、前記シロキサン結合含有重合体が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有することができる。
【化1】
[式中、R~Rは同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、mは1~100の整数であり、Bは正数、Aは0又は正数である。但しA+B=1である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基である。
【化2】
(式中、Zは
【化3】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、Nは0又は1である。また、R、Rはそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【0013】
また、前記シロキサン結合含有重合体が、下記一般式(3)で示される繰り返し単位を有することもできる。
【化4】
[式中、R~R10は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、nは1~100の整数であり、Dは正数、Cは0又は正数である。但し、C+D=1である。更に、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。
【化5】
(式中、Vは
【化6】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R11、R12はそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【0014】
また、前記シロキサン結合含有重合体が、
(p1)分子中にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(p2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(p1)成分中のアルケニル基に対する(p2)成分中のSi-H基のモル比が0.3から15となる量、及び
(p3)白金系触媒、
を含有するものであることもできる。
【0015】
このような本発明の基板加工用仮接着材料であれば、耐熱性により一層優れるため好ましい。
【0016】
また、本発明は、基板と支持体を、仮接着材料を介して接合する積層体の製造方法であって、下記(a)~(d)の工程を含むことを特徴とする積層体の製造方法も提供する。
(a)基板と支持体のどちらか一方、若しくは両方の接合される面に、上記基板加工用仮接着材料を用いて仮接着材層を形成する工程、
(b)前記基板と前記支持体のどちらか一方、若しくは両方を予め30℃以上100℃以下の温度に加熱する工程、
(c)前記基板と前記支持体を、前記仮接着材料を介して減圧下で接触させ、1MPa以下の圧力で加圧する工程、
(d)加圧を保持した状態で、基板温度を130℃以上250℃以下の温度に加熱する工程
【0017】
このような積層体の製造方法であれば、表面に凹凸を有する基板を、仮接着材を介して支持体と接合する際に、空隙なく積層体を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の基板加工用仮接着材料であれば、基板と支持体との仮接着が容易であり、基板又は支持体への仮接着材層形成工程が速く、更には、寸法安定性に優れ、CVD(化学的気相成長)等熱プロセス耐性に優れ、剥離も容易であり、積層体の生産性を高めることができる。また、基板と支持体を仮接着後に分離する際に、仮接着材層の表面若しくは仮接着材層中で分離が可能であるため、貫通電極構造や、バンプ接続構造を有する薄型基板を、簡単に製造することができる。更に、段差を有する基板に対しても、膜厚均一性の高い接着材層を形成でき、この膜厚均一性のため容易に50μm以下の均一な積層体(薄型基板等)を得ることが可能となり、更には、積層体作製後、この基板を支持体より例えば室温で、容易に剥離することができるため、薄型基板等割れ易い積層体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の基板加工用仮接着材料を使用して基板と支持体を接合した積層体の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記のように、仮接着が容易であり、基板又は支持体への仮接着材層形成速度が速く、寸法安定性に優れ、CVDといった基板熱プロセス耐性に優れ、剥離も容易で、薄型基板の生産性を高めることができる基板加工用仮接着材が求められている。
【0021】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、裏面を加工すべき基板を支持体に仮接着するための基板加工用仮接着材料であって、
前記仮接着材料は、その総質量100部に対してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、
前記仮接着材料は、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは異なる第二仮接着材層を有し、
前記第一仮接着材層と前記第二仮接着材層のうち少なくとも1層は、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s以上10,000Pa・s以下、好ましくは5Pa・s以上8,000Pa・s以下であることを特徴とする基板加工用仮接着材料を使用することで、貫通電極構造や、バンプ接続構造を有する薄型基板を、簡単に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0023】
[基板加工用仮接着材料]
本発明の基板加工用仮接着材料は、裏面を加工すべき基板を支持体に仮接着するためのものであって、その総質量100部に対してGPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、前記仮接着材料は、第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは異なる第二仮接着材層を有し、前記第一仮接着材層と前記第二仮接着材層のうち少なくとも1層は、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s以上10,000Pa・s以下であることを特徴とする。
【0024】
図1に示したように、本発明の基板加工用仮接着材料は、(A)第一仮接着材層と、前記第一仮接着材層とは異なる(B)第二仮接着材層とを有し、裏面を加工すべき基板1と、基板1の加工時に基板1を支持する支持体3と、これら基板1と支持体3との間に介在する仮接着材層2を形成するものである。この仮接着材層2は、(A)第一仮接着材層と(B)第二仮接着材層の2層構造からなる。図1では、第一仮接着材層が基板1の表面に剥離可能に接着され、第二仮接着材層が支持体3の表面に剥離可能に接着されているが、これとは逆に、第一仮接着材層が支持体3の表面に剥離可能に接着され、第二仮接着材層が基板1の表面に剥離可能に接着されていてもよい。
【0025】
また、本発明の基板加工用仮接着材料は、総質量100部に対して上記シロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、第一仮接着材層と第二仮接着材層のうちのいずれか又は両方のずり粘度の最小値が上記範囲内であることを必須の条件とする。このような本発明の基板加工用仮接着材料であれば、基板-仮接着材層間、支持体-仮接着材層間、及び第一仮接着材層-第二仮接着材層間の接着力が適切なものとなるため、基板と支持体を仮接着後に分離する際に、仮接着材層の表面若しくは仮接着材層中で分離が可能となる。ここで、仮接着材層の表面とは、基板又は支持体に剥離可能に接着されている仮接着材層の表面(基板又は支持体と、仮接着材層との接着面)をいい、仮接着材層中とは、仮接着材層の内部であればよく、特に限定されないが、例えば、第一仮接着材層と第二仮接着材層との接着面であってよい。なお、本発明におけるずり粘度は、JIS K 7244に記載の方法で、130℃から250℃の範囲で粘度測定を行うことにより求めた。各層のずり粘度の最小値は、前記温度範囲における最小のずり粘度である。
【0026】
[積層体]
図1に示したように、本発明の積層体は、裏面を加工すべき基板1と、基板1の加工時に基板1を支持する支持体3と、これら基板1と支持体3との間に介在する仮接着材層2から構成される。この仮接着材層2は、上記のとおり、(A)第一仮接着材層と(B)第二仮接着材層の2層構造からなり、いずれが基板側であってもよい。
【0027】
[仮接着材層]
仮接着材層は、第一仮接着材層と前記第一仮接着材層とは異なる第二仮接着材層の2層構造からなる。この仮接着材層は、その総質量100部に対して上記シロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有し、前記第一仮接着材層と前記第二仮接着材層のうち少なくとも1層は、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s以上10,000Pa・s以下である。この範囲のずり粘度を有することで、段差を有する基板を良好に仮接着材料で埋め込むことができる。仮接着材層は、上記条件を満たすものであれば特に限定されない。
上記シロキサン結合含有重合体の含有量が、仮接着材料の総質量100部に対して10質量部未満であると、仮接着及び剥離が容易であり、基板又は支持体への仮接着材層形成速度が速く、寸法安定性に優れ、熱プロセス耐性に優れた基板加工用仮接着材とならない。
また、第一仮接着材層と第二仮接着材層とが異なるものでない場合は、剥離性が悪く、第一仮接着材層と第二仮接着材層のいずれも、ずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s未満又は10,000Pa・sを超える場合には、接着性が悪い。
【0028】
各層を構成する材料(樹脂)は、上記条件を満たすものであればよく、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂から構成することができる。以下、各層を構成する材料について説明する。
【0029】
<熱可塑性樹脂>
仮接着材層のうち、第一仮接着材層(A)は、熱可塑性樹脂から構成することができる。段差を有する基板などへの適用性から、良好な埋め込み性を有する熱可塑性樹脂が第一仮接着材層(A)を形成する材料として好適に使用される。特に、オルガノポリシロキサンを有しない、ガラス転移温度-80~150℃程度の熱可塑性樹脂が好ましく、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー、スチレン・ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、特に耐熱性に優れた水素添加ポリスチレン系エラストマーが好適である。
【0030】
このような熱可塑性樹脂としては、市販品を使用することができ、具体的にはタフテック(旭化成ケミカルズ)、エスポレックスSBシリーズ(住友化学)、ラバロン(三菱化学)、セプトン(クラレ)、DYNARON(JSR)などが挙げられる。また、ゼオネックス(日本ゼオン)に代表されるシクロオレフィンポリマー及びTOPA・S(日本ポリプラスチック)に代表される環状オレフィンコポリマーが挙げられる。
【0031】
上記のように、第一仮接着材層(A)の熱可塑性樹脂としては、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。また、2種以上の樹脂を併用してもよい。
【0032】
このようなものであれば、積層体(薄型基板等)作製後、この基板から仮接着材料を、より一層容易に剥離や洗浄除去することができるため、割れ易い薄型基板をより容易に扱うことができる。
【0033】
上記熱可塑性樹脂(組成物)は、溶剤に溶解して仮接着材料溶液とし、仮接着材層の形成に用いることができる。溶剤としては、炭化水素系溶剤、好ましくは、ノナン、p-メンタン、ピネン、イソオクタン、メシチレン等が挙げられるが、そのコーティング性より、ノナン、p-メンタン、イソオクタン、メシチレンがより好ましい。さらに、必要に応じて濾過を行っても良い。その後、フォワードロールコータ、リバースロールコータ、コンマコータ、ダイコータ、リップコータ、グラビアコータ、ディップコータ、エアナイフコータ、キャピラリーコータ、レイジング&ライジング(R&R)コータ、ブレードコータ、バーコータ、アプリケータ、押し出し成形機等を用いて、例えば、支持体(離型基材)上に塗布することが好ましい。その後、仮接着材料溶液が塗布された支持体をインラインで溶剤の除去を行うことで、仮接着材層を形成する。
【0034】
このとき、形成される膜厚に制約はないが、支持体上に樹脂皮膜(仮接着材層)を形成することが望ましく、好適には、0.5~80μm、更に好ましくは0.5~50μmの膜厚で形成される。また、この熱可塑性樹脂には、その耐熱性向上の目的で、酸化防止剤や、コーティング性向上のため、界面活性剤を添加することができる。酸化防止剤の具体例としては、ジ-t-ブチルフェノールなどが好適に使用される。界面活性剤の例としては、フッ素シリコーン系界面活性剤X-70-1102(信越化学工業株式会社製)等が好適に使用される。なお、上記では、第一仮接着材層を支持体上に形成する例について説明したが、裏面を加工すべき基板上に形成してもよく、第二仮接着材層の上に形成してもよい。また、第一仮接着材層と第二仮接着材層の積層順序は逆にしても良い。
【0035】
<熱硬化性樹脂>
仮接着材層(第一仮接着材層及び第二仮接着材層)は、熱硬化性樹脂から構成することができる。熱硬化性樹脂としては、シロキサン結合含有重合体を主成分とする熱硬化性樹脂が好ましい。本発明では、仮接着材層は、総質量100部に対してGPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体を10質量部以上100質量部以下含有するところ、前記シロキサン結合含有重合体は特に限定されないが、下記一般式(1)及び/又は(3)で示される熱硬化性シロキサン変性重合体を主成分とする熱硬化性組成物からなる重合体や、付加硬化型シロキサン重合体を主成分とする熱硬化性組成物からなる重合体を用いることができる。
【0036】
なお、仮接着材層には、下記一般式(1)で示される重合体と、下記一般式(3)で示される重合体を併用することができる。その場合の割合(質量比)は、好ましくは(1):(3)=0.1:99.9~99.9:0.1、より好ましくは(1):(3)=1:99~99:1である。
【0037】
一般式(1)の重合体(フェノール性シロキサン重合体):
下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が3,000~500,000、好ましくは10,000~100,000のシロキサン結合含有重合体である。
【化7】
[式中、R~Rは同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、mは1~100の整数であり、Bは正数、Aは0又は正数である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基である。A+B=1である。また、好ましくはAは0~0.9、Bは0.1~1、またAが0より大きい場合には、好ましくはAは0.1~0.7、Bは0.3~0.9である。
【化8】
(式中、Zは
【化9】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、Nは0又は1である。また、R、Rはそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。kは0、1、2のいずれかである。)]
【0038】
この場合、R~Rの具体例としては、メチル基、エチル基、フェニル基等が挙げられ、mは、1~100の整数であり、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、B/Aは0より大きく20より小さい、特に0.5~5である。
【0039】
一般式(3)の重合体(エポキシ変性シロキサン重合体):
下記一般式(3)で示される繰り返し単位を有するGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が3,000~500,000のシロキサン結合含有重合体である。
【化10】
[式中、R~R10は同一でも異なっていてもよい炭素原子数1~8の1価炭化水素基を示す。また、nは1~100の整数であり、Dは正数、Cは0又は正数である。更に、Yは下記一般式(4)で示される2価の有機基である。C+D=1である。また、好ましくはCは0~0.9、Dは0.1~1、またCが0より大きい場合には、好ましくはCは0.1~0.7、Dは0.3~0.9である。
【化11】
(式中、Vは
【化12】
のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。また、R11、R12はそれぞれ炭素原子数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に同一でも異なっていてもよい。hは0、1、2のいずれかである。)]
【0040】
この場合、R~R10の具体例としては、上記一般式(1)中のR~Rで例示したものと同様のものが挙げられる。また、nは1~100の整数であり、好ましくは3~60、より好ましくは8~40の整数である。また、D/Cは0より大きく20より小さい、特に0.5~5である。
【0041】
上記一般式(1)及び/又は(3)の熱硬化性シロキサン変性重合体を主成分とする熱硬化性組成物は、その熱硬化のために、一般式(1)のフェノール性シロキサン重合体の場合には、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基(アルコキシメチル基)を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるいずれか1種以上の架橋剤を含有することができる。
【0042】
ここで、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、メラミン樹脂、尿素樹脂としては、以下のものを挙げることができる。例えば、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性されたメラミン樹脂(縮合物)は、ヘキサメトキシメチロールメラミンなどアルコキシメチロールメラミンの部分縮合物を用いてもよく、変性メラミンモノマー(例えばトリメトキシメチルモノメチロールメラミン)、又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を公知の方法に従ってホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて得ることもできる。なお、これらは1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0043】
また、ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂(縮合物)の調製は、例えば公知の方法に従って所望の分子量の尿素縮合物をホルマリンでメチロール化して変性し、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性して行ってよい。ホルマリン又はホルマリン-アルコールにより変性された尿素樹脂の具体例としては、例えばメトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。なお、これらは1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0044】
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基(アルコキシメチル基)を有するフェノール化合物としては、例えば(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’-テトラメトキシメチルビスフェノールA等を挙げることができる。なお、これらフェノール化合物は1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0045】
一方、一般式(3)のエポキシ変性シロキサン重合体の場合には、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、或いは、1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物のいずれか1種以上を架橋剤として含有することができる。
【0046】
ここで、一般式(1)に用いられる多官能エポキシ基を有するエポキシ化合物としては、特にその制約はないが、2官能、3官能、4官能以上の多官能エポキシ樹脂、例えば、日本化薬(株)製のEOCN-1020、EOCN-102S、XD-1000、NC-2000-L、EPPN-201、GAN、NC6000や下記式のような架橋剤を含有することができる。
【化13】
【0047】
熱硬化性重合体が、上記一般式(3)のエポキシ変性シロキサン重合体の場合の架橋剤としての1分子中に平均して2個以上のフェノール基を有するフェノール化合物の具体例としては、m、p-系クレゾールノボラック樹脂、例えば、旭有機材工業(株)製EP-6030Gや、3官能フェノール化合物、例えば、本州化学工業(株)製Tris-P-PAや、4官能性フェノール化合物、例えば、旭有機材工業(株)製TEP-TPAなどが挙げられる。
【0048】
架橋剤の配合量は、上記一般式(1)や式(3)の熱硬化性重合体100質量部に対して0.1~50質量部とすることができ、好ましくは0.1~30質量部、更に好ましくは1~20質量部であり、2種類又は3種類以上を混合して配合してもよい。
【0049】
また、熱硬化性重合体100質量部に対して、酸無水物のような硬化触媒を10質量部以下含有させてもよい。
【0050】
上記熱硬化性樹脂(組成物)は、溶剤に溶解して仮接着材層溶液として、仮接着材層の形成に用いることができる。溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用することができる。さらに、必要に応じて濾過を行っても良い。
【0051】
なお、耐熱性を更に高めるため、熱硬化性重合体100質量部に対して、公知の酸化防止剤、シリカ等のフィラーを50質量部以下添加してもよい。更に、塗布均一性を向上させるため、界面活性剤を添加してもよい。また、剥離性を向上させるため、剥離向上剤を添加してもよい。
【0052】
仮接着材層中に添加することができる酸化防止剤の具体例としては、テトラキス[メチレン-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン(商品名:アデカスタブ AO-60)等のヒンダードフェノール系化合物を挙げることができる。
【0053】
このとき、形成される膜厚は特に限定されないが、好ましくは5~150μm、更に好ましくは10~120μmである。膜厚が5μm以上であれば、基板薄型化の研削工程に十分耐えることができ、150μm以下であれば、TSV形成工程などの熱処理工程で樹脂変形を生じるおそれがなく、実用に耐えることができるため好ましい。
【0054】
付加硬化型シロキサン重合体:
また、仮接着材層は、下記(p1)、(p2)、(p3)成分を含有する付加硬化型シロキサン重合体であることができる。
【0055】
(p1)分子中にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(p2)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(p1)成分中のアルケニル基に対する(p2)成分中のSi-H基のモル比が0.3~15となる量。
(p3)白金系触媒:有効成分(質量換算)として0質量部を超え0.5質量部以下。
【0056】
以下、各成分について説明する。
【0057】
[(p1)成分]
(p1)成分は、分子中にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(p1)成分は、好ましくは、1分子中のSiモル数に対するアルケニル基のモル数(アルケニル基モル数/Siモル数)が0.3~10mol%であるアルケニル基を含有する、直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンである。特に好ましくは、上記Siモル数に対するアルケニル基のモル数が0.6~9mol%のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0058】
このようなオルガノポリシロキサンとして、具体的には下記式(5)及び/又は(6)で示されるものを挙げることができる。
13 (3-a) SiO-(R13SiO)-(R13 SiO)-SiR13 (3-a) (5)
13 (HO)SiO-(R13SiO)l+2-(R13 SiO)-SiR13 (OH) (6)
(式中、R13は夫々独立して、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基、Xは夫々独立してアルケニル基含有1価有機基、aは0~3の整数である。また、式(5)において、2a+lは1分子中にアルケニル基含有量が0.3~10mol%となる数である。式(6)において、l+2は1分子中にアルケニル基含有量が0.3~10mol%となる数である。lは0又は500以下の正数であり、rは1~10,000の正数である。)
【0059】
上記式中、R13としては、脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の1価炭化水素基が好ましく、例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、トリル基などのアリール基などであり、特にメチル基等のアルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0060】
のアルケニル基含有1価有機基としては、炭素原子数2~10の有機基が好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基;アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基等の(メタ)アクリロイルアルキル基;アクリロキシプロピル基、アクリロキシメチル基、メタクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基等の(メタ)アクリロキシアルキル基;シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基などのアルケニル基含有1価炭化水素基が挙げられ、特に、工業的にはビニル基が好ましい。
【0061】
上記一般式(5)中、aは0~3の整数であるが、aが1~3であれば、分子鎖末端がアルケニル基で封鎖されるため、反応性の良いこの分子鎖末端アルケニル基により、短時間で反応を完結することができ好ましい。更には、コスト面において、a=1が工業的に好ましい。このアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの性状はオイル状又は生ゴム状であることが好ましい。このアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、(p1)成分は2種以上を併用してもよい。
【0062】
なお、上記(p1)成分のGPCによる数平均分子量(Mn)は100000~500000であることが好ましい。
【0063】
[(p2)成分]
(p2)成分は架橋剤であり、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(Si-H基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(p2)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個、好ましくは2個以上100個以下、更に好ましくは3個以上50個以下有するものであり、直鎖状、分岐状、又は環状のものを使用できる。
【0064】
(p2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、1~5,000mPa・sであることが好ましく、5~500mPa・sであるのが更に好ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上の混合物でもよい。なお、粘度は回転粘度計により測定される。
【0065】
(p2)成分は、(p1)成分中のアルケニル基に対する(p2)成分中のSi-H基のモル比(Si-H基/アルケニル基)が0.3~15、好ましくは0.3~10、特に好ましくは1~8の範囲となるように配合する。このSiH基とアルケニル基とのモル比が0.3以上の場合、架橋密度が低くなる恐れがなく、粘着剤層が硬化しないといった問題が起こる恐れないために好ましい。15以下であれば、架橋密度が高くなりすぎるおそれがなく、十分な粘着力及びタックが得られる。
【0066】
[(p3)成分]
(p3)成分は白金系触媒(即ち、白金族金属触媒)であり、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0067】
(p3)成分の添加量は有効量であり、通常(p1)、(p2)の合計に対し、白金分(質量換算)として1~5,000ppmであり、5~2,000ppmであることが好ましい。1ppm以上であれば組成物の硬化性が低下することもなく、架橋密度が低くなることも、保持力が低下することもない。5,000ppm以下であれば、処理液の使用可能時間を長くすることができる。
【0068】
上記熱硬化性シロキサン重合体層組成物は、溶剤に溶解して仮接着材層溶液として、仮接着材層の形成に用いることができる。溶剤としては、例えばペンタン、へキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、p-メンタン、ピネン、イソドデカン、リモネンなどの炭化水素系溶剤やヘキサメチルジシロキサンやオクタメチルトリシロキサンなどの揮発性低分子シロキサンが好適に使用され、これらの1種を単独で又は2種以上を併用することができる。また、この熱硬化性シロキサン重合体層組成物には、公知の酸化防止剤を耐熱性向上のために添加することができる。さらに、必要に応じて濾過を行っても良い。
【0069】
このとき、形成される膜厚は0.1~30μm、特には1.0~15μmの間であることが好ましい。膜厚が0.1μm以上であれば、基板や支持体からの剥離がより一層容易となる。一方、膜厚が30μm以下であれば、薄型ウエハを形成する場合の研削工程に十分に耐えることができる。なお、この熱硬化性シロキサン重合体層には、耐熱性を更に高めるため、シリカ等のフィラーを、熱硬化性シロキサン重合体の各成分(p1)、(p2)、(p3)の混合した合計100質量部に対して、50質量部以下添加してもよい。
【0070】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は(a)~(d)の工程を有する。
[工程(a)]
工程(a)は、基板と支持体のどちらか一方、若しくは両方の接合される面に上記本発明の基板加工用仮接着材料を用いて仮接着材層を形成する工程である。
【0071】
加工すべき基板は、例えば、一方の面が回路形成面であり、加工すべき他方の面(裏面)が回路非形成面である基板である。本発明が適用できる基板は、通常、半導体基板である。該半導体基板の例としては、円盤状のウエハや、角基板等が挙げられる。ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等が挙げられる。該基板の厚さは、特に制限はないが、典型的には600~800μm、より典型的には625~775μmである。
【0072】
特に本発明の積層体(薄型ウエハ等)の製造方法では、表面上に回路による段差を有している基板が有効であり、特に段差が10~80μm、好ましくは20~70μmの基板が有効である。
【0073】
支持体としては、特に限定されないが、シリコンウエハやガラス板、石英ウエハ等の基板が使用可能である。本発明においては、必ずしも、支持体を通して仮接着材層に放射エネルギー線を照射する必要はなく、支持体は、光線透過性を有さないものであってもよい。
【0074】
第一仮接着材層及び、第二仮接着材層はそれぞれフィルムで、基板(ウエハ)や支持体上に形成することもでき、あるいは、それぞれの溶液をスピンコート、ロールコータなどの方法によりウエハや支持体上に形成することもできる。この場合、スピンコート後、その溶剤の揮発条件に応じ、80~200℃、好ましくは100~180℃の温度で、予め熱処理を行ったのち、使用に供される。第一仮接着材層及び第二仮接着材層は、基板若しくは支持体上に両方を形成することもでき、あるいは、基板若しくは支持体のいずれかの上に一方のみを形成することもできる。以下に仮接着材層の形成方法の例を挙げる。
【0075】
[形成方法1]
支持体上に第一仮接着材層の溶液を用いて第一仮接着材層を形成し、続いて形成された第一仮接着材層上に、第二仮接着材層の溶液を用いて第二仮接着材層を形成する。
【0076】
[形成方法2]
支持体上に第一仮接着材層の溶液を用いて第一仮接着材層を形成する。これとは別に、基板上に第二仮接着材層の溶液を用いて第二仮接着材層を形成する。
【0077】
また、各接着材層をフィルムで形成する場合には、ポリエチレン、ポリエステル等の保護フィルム上に本発明の構成成分を形成して、保護フィルムを剥離して用いることができる。
【0078】
工程(b)~(d)は、前記基板と支持体を貼り合わせる工程である。基板貼り合わせ装置としては、ウエハの場合では市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB、SUSS社のXBS300等が挙げられる。
基板と支持体は、装置内にこれらが仮接着材料を介して接合できるように配置されればよい。例えば、上記形成方法1のように、支持体上に第一仮接着材層と第二仮接着材層を形成した場合には、基板の仮接着材層を形成しようとする面と、支持体の仮接着材層が形成された面とを対向させて、また、上記形成方法2のように、基板又は支持体それぞれの上に第一仮接着材層又は第二仮接着材層を形成した場合には、基板の仮接着材層が形成された面と、支持体の仮接着材層が形成された面とを対向させて装置内に配置することができる。
【0079】
[工程(b)]
工程(b)は、基板と支持体のどちらか一方、若しくは両方を予め加熱する工程である。
この場合、加熱手段は、接合装置に内蔵され、基板及び支持体を設置するプレート(チャンバー)にヒータが内蔵されている。なお、ヒータは公知の加熱装置であればよい。前記基板と支持体のどちらか一方、若しくは両方を30℃以上100℃以下の温度に加熱する。
【0080】
[工程(c)]
工程(c)は基板と支持体を、仮接着材料を介して減圧下で接触させ、1MPa以下の圧力で加圧する工程である。例えば、工程(b)で加熱された温度条件で真空下(減圧下;圧力1Pa以下)、この基板へ均一に1MPa以下の圧力で加圧を行う。このとき加圧を行う時間は10秒から10分、好ましくは30秒から5分である。
【0081】
[工程(d)]
工程(d)は、工程(c)での加圧を保持した状態で、基板温度を130℃以上250℃以下の温度へ加熱する工程である。このとき保持する時間は、10秒から10分、好ましくは30秒から5分である。
【0082】
本発明の仮接着材料を用いて、上記工程(a)~(d)を経て得られる積層体であれば、第一仮接着材層と第二仮接着材層のうち少なくとも1層はずり粘度の最小値が130℃以上250℃以下の範囲において、1Pa・s以上10,000Pa・s以下であるため、段差を有する基板を良好に仮接着材料で埋め込むことができる。
【実施例
【0083】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例で部は質量部である。また、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。以下に下記樹脂溶液作製例で使用した化合物(M-1)~(M-5)を示す。
【0084】
【化14】
【0085】
[樹脂溶液作製例1]
水素添加スチレン・イソプレン・ブタジエン共重合体である熱可塑性樹脂セプトン4033(スチレン30%含有、クラレ製)24gをイソノナン176gに溶解し、12質量%の水素添加スチレン・イソプレン・ブタジエン共重合体のイソノナン溶液を得た。得られた溶液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱可塑性樹脂のイソノナン溶液(A-1)を得た。
【0086】
[樹脂溶液作製例2]
水素添加スチレン・イソプレン・ブタジエン共重合体である熱可塑性樹脂セプトン4044(スチレン32%含有、クラレ製)30gをイソノナン176gに溶解し、12質量%の水素添加スチレン・イソプレン・ブタジエン共重合体のイソノナン溶液を得た。得られた溶液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱可塑性樹脂のイソノナン溶液(A-2)を得た。
【0087】
[樹脂溶液作製例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備したフラスコ内に9,9’-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(M-1)43.1g、平均構造式(M-3)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン29.5g、トルエン135g、塩化白金酸0.04gを仕込み、80℃に昇温した。その後、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(M-5)17.5gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。このとき、フラスコ内温度は、85℃まで上昇した。滴下終了後、更に80℃で2時間熟成した後、トルエンを留去すると共に、シクロヘキサノンを80g添加して、樹脂固形分濃度50質量%のシクロヘキサノンを溶剤とする樹脂溶液を得た。この溶液の樹脂分の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量45,000であった。更に、この樹脂溶液50gに、架橋剤としてエポキシ架橋剤であるEOCN-1020(日本化薬(株)製)を7.5g、硬化触媒として、和光純薬工業(株)製、BSDM(ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン)を0.2g、更に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン(商品名:アデカスタブ AO-60)を0.1g、剥離向上剤として、KF-54(信越化学工業(株)製)を0.1g添加し、1μmのメンブレンフィルターで濾過して、樹脂溶液(B-1)を得た。(B-1)硬化膜の動的粘弾性測定によって測定される弾性率は、25℃において300MPaであった。
【0088】
[樹脂溶液作製例4]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内にエポキシ化合物(M-2)84.1gをトルエン600gに溶解後、化合物(M-3)294.6g、化合物(M-4)25.5gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)1gを投入し、内部反応温度が65~67℃に昇温するのを確認後、更に、90℃まで加温し、3時間熟成した。次いで室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)600gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。この樹脂溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)270gを添加して、固形分濃度60質量%のPGMEAを溶剤とする樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中の樹脂の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量28,000であった。更にこの樹脂溶液100gに4官能フェノール化合物であるTEP-TPA(旭有機材工業(株)製)を9g、テトラヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、リカシッドHH-A)0.2g、剥離向上剤として、KF-54(信越化学工業(株)製)を0.1g添加して、1μmのメンブレンフィルターで濾過して、樹脂溶液(B-2)を得た。(B-2)硬化膜の動的粘弾性測定によって測定される弾性率は、25℃において500MPaであった。
【0089】
[樹脂溶液作製例5]
3モル%のビニル基を両末端及び側鎖に有し、分子末端がSiMeVi基で封鎖されており、GPCによる数平均分子量(Mn)が50,000のポリジメチルシロキサン100部、及びイソドデカン400部からなる溶液に、下記式(M-6)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部(アルケニル基に対して2モル)を添加し混合した。更にポリジメチルシロキサン100部に対し、白金触媒CAT-PL-5(信越化学工業株式会社製)を0.05部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱硬化性シロキサン重合体溶液(C-1)を得た。
【化15】
【0090】
[樹脂溶液作製例6]
3モル%のビニル基を両末端及び側鎖に有し、分子末端がSiMeVi基で封鎖されており、GPCによる数平均分子量(Mn)が50,000のポリジメチルシロキサン100部、及びイソドデカン400部からなる溶液に、下記式(M-7)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10部(アルケニル基に対して2モル)を添加し混合した。更にポリジメチルシロキサン100部に対し、白金触媒CAT-PL-5(信越化学工業株式会社製)を0.05部添加し、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、熱硬化性シロキサン重合体溶液(C-2)を得た。
【化16】
【0091】
[実施例1]
直径200mmガラスウエハ上に上記(C-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(C)層に対応する材料を成膜した。続いて(C)層が形成されたガラスウエハの(C)層上に、上記(B-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(B)層に対応する材料を成膜した((a)工程)。成膜順と加熱条件、及び膜厚を表1に示す。
なお、表1の「シロキサン結合含有重合体量」は、仮接着材料の総質量100部に対する、GPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体の質量部である。
【0092】
表面に高さ40μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mm、厚さ725μmのシリコンウエハの銅ポスト面と、(a)工程にて作製したガラスウエハの仮接着材層が形成された面を対向させ、接合装置内で予め70℃に加熱した((b)工程)。続いて、接合装置内で、減圧下で前記シリコンウエハと前記ガラスウエハを接触させ、0.5MPaの圧力で加圧した((c)工程)。さらに、加圧を保持した状態で、基板温度を180℃まで加熱を行い、180℃到達後3分間加圧を続け((d)工程)、積層体を作製した。(b)から(d)までの条件を表3に示す。
【0093】
[実施例2~4及び比較例1]
表1及び表3に記載の条件で、実施例2~4及び比較例1も実施例1と同様に処理した。
【0094】
-粘度測定-
実施例1の条件で、直径200mmシリコンウエハ上に上記(C-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(C)層に対応する材料を成膜した。一方、直径200mmシリコンウエハ上に、上記(B-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(B)層に対応する材料を成膜した。その後、それぞれの仮接着材層をシリコンウエハから剥離させ、2つの仮接着材膜を得た。それぞれの膜をJIS K 7244に記載の方法で、130℃から250℃の範囲で粘度測定を行った。2つの仮接着材膜の最小の粘度のうちより低い粘度の値を表1に示した。同様に実施例2~4及び、比較例1も実施例1と同様に測定を行い、結果を表1に示した。
【0095】
[実施例5]
直径200mmガラスウエハ上に上記(C-2)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(C)層に対応する材料を成膜した。一方、表面に高さ40μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mm、厚さ725μmのシリコンウエハの銅ポスト面に、上記(B-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(B)層に対応する材料を成膜した((a)工程)。加熱条件、及び膜厚を表2に示す。
【0096】
(a)工程にて作製した表面に高さ40μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mm、厚さ725μmのシリコンウエハの仮接着材層が形成された面と、ガラスウエハの仮接着材層が形成された面を対向させ、接合装置内で予め70℃に加熱した((b)工程)。続いて、接合装置内で、減圧下で前記シリコンウエハと前記ガラスウエハを接触させ、0.5MPaの圧力で加圧した((c)工程)。さらに、加圧を保持した状態で、基板温度を180℃まで加熱を行い、180℃到達後3分間加圧を続け((d)工程)、積層体を作製した。(b)から(d)までの条件を表3に示す。
【0097】
[実施例6~7及び比較例2]
表2及び表3に記載の条件で、実施例6~7及び比較例2も実施例5と同様に処理した。
【0098】
-粘度測定-
実施例5の条件で、直径200mmシリコンウエハ上に上記(C-2)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(C)層に対応する材料を成膜した。一方、直径200mmシリコンウエハ上に、上記(B-1)溶液をスピンコート後、ホットプレートにて加熱することにより、(B)層に対応する材料を成膜した。その後、仮接着材層をシリコンウエハから剥離させ、2つの仮接着材膜を得た。この膜をそれぞれJIS K 7244に記載の方法で、130℃から250℃の範囲で粘度測定を行った。2つの仮接着材膜の最小の粘度の値のうち、より低い粘度の値を表2に示した。同様に実施例6~7及び、比較例2、3も実施例5と同様に測定を行い、結果を表2に示した。
なお、表1,2の「シロキサン結合含有重合体量」は、仮接着材料の総質量100部に対する、GPCによって測定される重量平均分子量が3,000以上700,000以下であるシロキサン結合含有重合体の質量部である。
【0099】
なお、ここでは、基板接着後の異常を目視で判別するために支持体としてガラス板を使用したが、ウエハなどの光を透過しないシリコン基板も使用可能である。
【0100】
この接合された基板(試料)に対し、下記試験を行い、実施例及び比較例の結果を表4に示した。また、下記の順で評価を実施したが、評価で判定が「×」となった時点で、それ以後の評価を中止した。
【0101】
-接着性試験-
積層体を180℃で1時間オーブンを用いて加熱処理を行った後室温まで冷却し、界面の接着状況を目視で確認した。界面での気泡などの異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0102】
-裏面研削耐性試験-
グラインダー((株)ディスコ製、DAG810)でダイヤモンド砥石を用いて、上述したように180℃で1時間オーブンで加熱硬化させて得られた積層体(試料)について、シリコンウエハの裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡(100倍)にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を「○」で示し、異常が発生した場合を「×」で示した。
【0103】
-CVD耐性試験-
シリコンウエハを裏面研削した後の加工体をCVD装置に導入し、2μmのSiO2膜の生成実験を行ない、その際の外観異常の有無を調べた。外観異常が発生しなかった場合を「○」で示し、ボイド、ウエハ膨れ、ウエハ破損等が発生した場合を「×」で示した。CVD耐性試験の条件は、以下の通りである。
装置名:プラズマCVD PD270STL(サムコ(株)製)
RF500W、内圧40Pa
TEOS(テトラエチルオルソシリケート):O=20sccm:680sccm
【0104】
-剥離性試験-
基板の剥離性は、以下の方法で評価した。まず、CVD耐性試験を終えたウエハ加工体の50μmまで薄型化したウエハ側にダイシングフレームを用いてダイシングテープを貼り、このダイシングテープ面を真空吸着によって、吸着板にセットした。その後、室温にて、ガラスの1点をピンセットにて持ち上げることで、ガラス基板を剥離した。50μmのウエハを割ることなく剥離できた場合を「○」で示し、割れなどの異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
表4に示されるように、本発明の要件を満たす仮接着材料では、基板と支持体の仮接着が容易で、剥離も容易であることが判明した(実施例1~7)。一方、本発明の要件を満たさない比較例1~2では、接着性や剥離性に問題があった。特に、仮接着材層のずり粘度の範囲は本発明の範囲内であるにも拘らず、第一仮接着材層と第二仮接着材層とが異ならない比較例2は、剥離性が悪くなった。
【0110】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
1…基板、 2…仮接着材層、
(A)…第一仮接着材層、 (B)…第二仮接着材層、 3…支持体。
図1