(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240822BHJP
【FI】
H01L21/30 571
H01L21/30 568
(21)【出願番号】P 2023542692
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2022018929
(87)【国際公開番号】W WO2023209815
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】牛丸 浩二
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 建次
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 圭
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幸信
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-064277(JP,A)
【文献】特開2006-310391(JP,A)
【文献】特開2008-186934(JP,A)
【文献】特開2020-129607(JP,A)
【文献】特開2022-007534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、
前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御
し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記ガス吐出部からの吐出量を増加させるように前記ガス吐出部を制御し、
前記制御部は、
前記排気量を増加させておらず、前記吐出量を増加させていない状態で、前記基板の加熱が開始されるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御し、
前記基板の加熱の開始後の第1タイミングで、前記吐出量を増加させていない状態を維持したまま、前記排気量を増加させるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御し、
前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで、前記排気量を増加させた状態を維持したまま、前記吐出量を増加させるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御する、基板処理装置。
【請求項2】
被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、
前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御し、
前記チャンバ内に、前記処理空間に対して接続された、前記熱板よりも下方のバッファ空間がさらに形成され、
前記バッファ空間に対して前記チャンバの外部から気体を供給する気体供給部をさらに有し、
前記バッファ空間は、前記処理空間より、体積が大きい
、基板処理装置。
【請求項3】
被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、
前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御し、
前記熱板は、当該熱板に前記基板を吸着するための吸着孔を有し、
前記吸着孔に連通する流路を有する樹脂製のパッドをさらに有し、
前記樹脂製のパッドは、金属製の部材を介して、前記吸着孔に連通し且つ前記熱板に接続されている
、基板処理装置。
【請求項4】
前記金属製の部材は、大径部を有する、請求項
3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記熱板に対して支持柱を介して下方に接続される環状部材をさらに有し、
前記樹脂製のパッドは、前記環状部材の下方に位置する、請求項
3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、
前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御し、
前記制御部は、前記ガス吐出部の前記ヘッド部に設けられた複数の吐出孔のうち、前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの温度を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの温度よりも高くするように、前記ガス吐出部を制御する
、基板処理装置。
【請求項7】
被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、
前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御し、
前記制御部は、前記ガス吐出部の前記ヘッド部に設けられた複数の吐出孔のうち、前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの流速を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの流速よりも大きくするように、前記ガス吐出部を制御する
、基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記ガス吐出部からの吐出量を増加させるように前記ガス吐出部を制御する、請求項2~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記排気量を増加させておらず、前記吐出量を増加させていない状態で、前記基板の加熱が開始されるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御し、
前記基板の加熱の開始後の第1タイミングで、前記吐出量を増加させていない状態を維持したまま、前記排気量を増加させるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御し、
前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで、前記排気量を増加させた状態を維持したまま、前記吐出量を増加させるように前記外周排気部及び前記ガス吐出部を制御する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、
前記基板に前記熱処理を施すことは、
チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、
を含み、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させること
と、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記ガスを吐出させることにおける吐出量を増加させることとをさらに含
み、
前記排気量を増加させること、及び、前記吐出量を増加させることにおいては、
前記基板の加熱が開始される時点では、前記排気量及び前記吐出量を増加させておらず、
前記基板の加熱の開始後の第1タイミングで、前記吐出量を増加させていない状態を維持したまま、前記排気量を増加させ、
前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで、前記排気量を増加させた状態を維持したまま、前記吐出量を増加させる、基板処理方法。
【請求項11】
被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、
前記基板に前記熱処理を施すことは、
チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、
を含み、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させることをさらに含み、
前記チャンバ内に、前記処理空間に対して接続された、前記熱板よりも下方のバッファ空間がさらに形成され、
前記バッファ空間に対して前記チャンバの外部から気体を供給することをさらに含み、
前記バッファ空間は、前記処理空間より、体積が大きい
、基板処理方法。
【請求項12】
被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、
前記基板に前記熱処理を施すことは、
チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、
を含み、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させることをさらに含み、
前記熱板は、当該熱板に前記基板を吸着するための吸着孔を有し、
前記吸着孔に連通する流路を有する樹脂製のパッドをさらに有し、
前記樹脂製のパッドは、金属製の部材を介して、前記吸着孔に連通し且つ前記熱板に接続されている
、基板処理方法。
【請求項13】
前記金属製の部材は、大径部を有する、請求項
12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記熱板に対して支持柱を介して下方に接続される環状部材をさらに有し、
前記樹脂製のパッドは、前記環状部材の下方に位置する、請求項
12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、
前記基板に前記熱処理を施すことは、
チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、
を含み、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させることをさらに含み、
前記ガスを吐出させることにおいて、前記複数の吐出孔のうち前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの温度を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの温度よりも高くする
、基板処理方法。
【請求項16】
被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、
前記基板に前記熱処理を施すことは、
チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、
前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、
前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、
を含み、
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させることをさらに含み、
前記ガスを吐出させることにおいて、前記複数の吐出孔のうち前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの流速を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの流速よりも大きくする
、基板処理方法。
【請求項17】
前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記ガスを吐出させることにおける吐出量を増加させることをさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記排気量を増加させること、及び、前記吐出量を増加させることにおいては、
前記基板の加熱が開始される時点では、前記排気量及び前記吐出量を増加させておらず、
前記基板の加熱の開始後の第1タイミングで、前記吐出量を増加させていない状態を維持したまま、前記排気量を増加させ、
前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで、前記排気量を増加させた状態を維持したまま、前記吐出量を増加させる、請求項17に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に形成された塗布膜を加熱処理する加熱ユニットを含む基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の加熱ユニットは、処理容器内に設けられて基板を加熱するための加熱部と、基板の外周側からユニット内にガスを供給する配管と、基板の中央付近の上方からユニット内からの排気を行う排気配管とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、熱処理において生じる基板の欠陥を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る基板処理装置は、被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、熱処理において生じる基板の欠陥を抑制することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、基板処理システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、塗布現像装置の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、熱処理ユニットの一例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、ガス吐出部の一例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、基板処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、熱処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、熱処理手順における各部材の動作及びガスの流れの一例を示す模式図である。
【
図9】は、熱処理手順における気流の大きさとワークの温度との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[例示的実施形態]
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1~
図5を参照して、一実施形態に係る基板処理システムについて説明する。
図1に示される基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のワークWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ワークW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)を露光する装置である。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理前に、下層膜が形成されたワークWの表面にレジスト(薬液)を塗布してレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0010】
[基板処理装置]
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。
図1及び
図2に示されるように、塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御装置100(制御部)とを備える。
【0011】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのワークWの導入及び塗布・現像装置2内からのワークWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ワークW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のワークWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからワークWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からワークWを受け取ってキャリアC内に戻す。処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。
【0012】
処理モジュール11は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりワークWの表面上に下層膜を形成する。塗布ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をワークW上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。つまり、熱処理ユニットU2は、処理液の被膜が形成されたワークWに熱処理を施す。これにより、ワークWの表面に下層膜が形成される。下層膜の具体例としては、例えばスピンオンカーボン(SOC)膜等の所謂ハードマスクが挙げられる。熱処理において被膜が形成されたワークWを加熱すると、当該被膜から昇華物(不要物)が発生する。このため、熱処理ユニットU2には、昇華物を排出するための排気部が設けられる。
【0013】
処理モジュール12は、塗布ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4により下層膜上にレジスト膜を形成する。塗布ユニットU3は、レジスト膜形成用の処理液を下層膜の上に塗布する。熱処理ユニットU4は、被膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0014】
処理モジュール13は、塗布ユニットU5と、熱処理ユニットU6と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU5及び熱処理ユニットU6によりレジスト膜上に上層膜を形成する。塗布ユニットU5は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。熱処理ユニットU6は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0015】
処理モジュール14は、現像ユニットU7と、熱処理ユニットU8と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU7及び熱処理ユニットU8により、露光処理が施されたレジスト膜の現像処理及び現像処理に伴う熱処理を行う。現像ユニットU7は、露光済みのワークWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU8は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0016】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でワークWを昇降させる。
【0017】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0018】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でワークWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたワークWを露光装置3に渡す。搬送装置A8は、露光装置3からワークWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0019】
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、下層膜等の被膜の熱処理を行う熱処理ユニット、及びこれを制御可能な制御装置を備えていればどのようなものであってもよい。
【0020】
(熱処理ユニット)
続いて、
図3及び
図4を参照して、処理モジュール11の熱処理ユニットU2の一例について詳細に説明する。
図3に示されるように、熱処理ユニットU2は筐体90と、加熱部20と、チャンバ30と、外周排気部60とを有する。筐体90は、少なくとも加熱部20及びチャンバ30を収容する。この場合、チャンバ30は、筐体90が形成する収容空間V内に配置される。なお、
図3では、一部の要素を除き断面であることを示すハッチングが省略されている。
【0021】
チャンバ30は、上チャンバ31と、下チャンバ32と、を含んで構成される。上チャンバ31は上側に位置し、下チャンバ32は下側に位置する。また、下チャンバ32は、加熱部20を内側に収容している。
【0022】
加熱部20は、ワークWを支持して加熱する。加熱部20は、例えば、熱板22と、熱板ヒータ24とを有する。熱板22は、熱処理対象のワークWを支持し、支持している当該ワークWに熱を伝達する。熱板ヒータ24は、熱板22の温度を上昇させる。一例として、熱処理中において熱板22の温度は300°~500°程度に保たれる。熱板ヒータ24は、例えば熱板22内に設けられる。熱板22は、一例として略円板状に形成されている。熱板22の直径は、ワークWの直径よりも大きくてもよい。熱板22は、載置面22aを有しており、載置面22aの所定位置にワークWが載置された状態で当該ワークWを支持する。熱板22は、熱伝導率が高いアルミ、銀、又は銅等の金属によって構成されてもよい。熱板22の載置面22aの上方はワークWの熱処理を行うための処理空間Sとなる。
【0023】
熱板22は、ワークWを吸着するための吸着孔22bを例えば複数有している。各吸着孔22bは、熱板22を厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0024】
また、各吸着孔22bは、中継部材41の中継孔41aに接続されている。各中継孔41aは、吸着のための排気を行う排気ライン27に接続されている。
【0025】
吸着孔22bと中継孔41aとの接続は、金属製の金属部材42及び樹脂製のパッド43を介して行われる。具体的には、吸着孔22bと中継孔41aとの接続は、金属部材42内の流路と樹脂製のパッド43内の流路を介して行われる。
【0026】
金属部材42は、吸着孔22b側に位置し、樹脂製のパッド43は、中継孔41a側に位置する。金属部材42は、一端が、熱板22(具体的には吸着孔22b)に直接接続され、他端が、対応する樹脂製のパッド43の一端に直接接続されている。言い換えると、各樹脂製のパッド43は、金属部材42を介して、対応する吸着孔22bに連通し且つ熱板22に接続されている。また、樹脂製のパッド43の他端は、中継部材41(具体的には中継孔41a)に直接接続されている。
【0027】
金属部材42は、樹脂製のパッド43側に大径部42aを有する。大径部42aの内部は、金属部材42の熱板22に接続されている部分(上端)よりも断面積が大きい流路空間42bを有し、熱処理で発生する昇華物による詰まりのリスクが低減されている。また、この断面積が大きい流路空間42bによって、ワークWの吸着時に処理空間Sから吸引する気体の熱が緩和されて吸着のための排気ライン27に向かって流れる。つまり、樹脂製のパッド43や排気ライン27に至るまでの排気流路を構成する機器の高温による劣化リスクを抑制し得る。
【0028】
また、下チャンバ32内には、熱板22の下方に、ワークWを下方から支持し昇降させる昇降ピン(図示せず)が例えば3本設けられている。昇降ピンは、モータ等の駆動源を有する昇降機構(図示せず)により昇降される。この昇降機構は制御装置100により制御される。なお、熱板22の中央部には、上記昇降ピンが通過する貫通孔(図示せず)が形成されている。昇降ピンは、貫通孔を通過し、熱板の上面から突出可能である。
【0029】
上記の加熱部20を収容する下チャンバ32は、加熱部20の熱板22を所定の位置に保持する。下チャンバ32は、例えば、支持底壁321と、周壁部322を含む。支持底壁321は、熱板22の直径と同程度の直径を有する円板状に形成されている。周壁部322は、支持底壁321の外縁から上方に延びるように形成されている。周壁部322は、円環状に形成され、熱板22の載置面22aと同程度の高さ位置まで延びている。周壁部322は、熱板22の周囲を囲っている。例えば、周壁部322の内周面と熱板22の外周面とは対向している。周壁部322の内周面と熱板22の外周面との間に、隙間が形成されてもよい。
【0030】
加熱部20の熱板22は、例えば、下チャンバ32の支持底壁321に支持される。具体的には、熱板22は、支持部330を介して、下チャンバ32の支持底壁321に支持される。支持部330は、例えば、上端が熱板22に接続される支持柱331と、支持柱331を支持する環状部材332と、下チャンバ32の底壁に環状部材332を支持する脚部材333と、を有する。
【0031】
環状部材332は金属で形成されており、熱板22の裏面の大部分に対して支持柱331の高さの分、間隙をもって設けられている。樹脂製のパッド43を、そのように設けられている環状部材332の下方に配置することで、熱板22からの熱を環状部材332が効果的に遮断し、樹脂製のパッド43が高温に晒されにくく(熱劣化しにくく)している。
【0032】
なお、下チャンバ32の周壁部322には、取り込み口323が設けられる。取り込み口323は、チャンバ30の外部から当該チャンバ30内に気体を取り込む気体供給部として機能する。
【0033】
上チャンバ31は、例えば、円板状に形成されている。上チャンバ31は、処理空間Sが形成される際に、加熱部20上のワークWを上方から覆うように下チャンバ32との間に隙間gを設けた状態で配置される。上チャンバ31は、例えば、天板311と、側壁312を含む。
【0034】
上チャンバ31は、ガス吐出部50を含んでいる。ガス吐出部50は、チャンバ30内の処理空間Sにおいて、熱板22上のワークWに向けて上方からガスを吐出する。ガス吐出部50は、例えば、ワークWの表面の略全面に向けてガスを吐出する。ガス吐出部50により吐出されるガスの種類は限定されないが、例えば、エア、水分含有量が調節されたガス、又は不活性ガス(窒素ガス)が用いられてもよい。ガス吐出部50には、供給路56を介してガスの供給源が接続される。ガス吐出部50は、天板211に設けられるヘッド部52を有してもよい。ヘッド部52には、天板211の下側に設けられるガス分配空間と、熱板22上のワークWに対向する下面に設けられた、ガス分配空間と処理空間Sとの間を貫通する複数の吐出孔54とが形成されている。ガス分配空間は、複数の吐出孔54と供給路56とを接続する空間である。
【0035】
図4は、
図3に例示する上チャンバ31を下方から見た模式図である。
図4に示されるように、複数の吐出孔54は、天板311の下面に沿って点在する。複数の吐出孔54は、例えば、天板311の下面のうちの熱板22上のワークWに対向する部分(対向部分)に略均一な密度で点在している。なお、上方から見て、対向部分よりも外側(ワークWの周縁よりも外側)にも、吐出孔54が設けられていてもよい。複数の吐出孔54は、上記対向部分において散らばって配置されている。ガス吐出部50からエア等のガスが吐出される場合に、単位時間あたりの吐出量がワークWの表面全域において略均一となるように、複数の吐出孔54が点在していてもよい。
【0036】
複数の吐出孔54の開口面積は、互いに略同一であってもよい。複数の吐出孔54の開口面積が互いに略同一である場合において、複数の吐出孔54は、対向部分の単位面積あたりの吐出孔54の開口面積が占める割合が均一となるように点在していてもよい。上下方向から見て、吐出孔54の形状は円又は楕円であってもよい。隣り合う吐出孔54同士の間隔が略同一となるように、複数の吐出孔54が点在していてもよい。一例として、
図4に示されるように、複数の吐出孔54が横方向及び縦方向に沿って2次元配列される場合に、横方向において隣り合う吐出孔54同士の間隔が均一であってもよく、縦方向において隣り合う吐出孔54同士の間隔が均一であってもよい。横方向で隣り合う吐出孔54同士の間隔と縦方向で隣り合う吐出孔54同士の間隔とが略同一であってもよい。
【0037】
側壁312は、天板311の外縁から下方に延びるように形成されている。側壁312は、円環状に形成されており、載置面22aを囲っている。
図3には、処理空間Sが形成される際の上チャンバ31の配置の一例が示されており、この配置において、側壁312の下端面312aは、下チャンバ32の周壁部322の上端面と近接した状態で対向している。具体的には、側壁312の下端面312aと周壁部322の上端面との間に隙間gが形成されており、この隙間gは、処理空間Sと、チャンバ30外の空間とを接続する。
【0038】
側壁312の内周面312bは、当該側壁312の下端から天板311に近づくにつれて、水平方向における天板311の中心との距離が小さくなるように、上下方向に対して傾斜していてもよい。この場合、側壁312の内径は、側壁312の下端から天板311に近づくにつれて小さくなる。
【0039】
上チャンバ31はさらに外周排気部60を含む。外周排気部60は、加熱部20に支持されたワークWの周縁よりも外側の外周領域から処理空間S内の気体を排出する。外周排気部60は、ガス吐出部50のヘッド部52の外側に設けられた複数の第1排気孔61及び複数の第2排気孔62を有する。
【0040】
複数の第1排気孔61は、上チャンバ31の側壁312内に設けられ、側壁312の傾斜した内周面312bにそれぞれ開口している。
図4に示されるように、複数の第1排気孔61は、天板311の外側に環状に配置されてもよい。なお、複数の第1排気孔61が、天板311内に設けられ、天板311の下面の外周部にそれぞれ開口してもよい。
【0041】
複数の第2排気孔62は、上チャンバ31の側壁312内に設けられ、側壁312の下端面312aにそれぞれ開口している。複数の第2排気孔62は、チャンバ30が閉状態である場合において、上チャンバ31(側壁312)と下チャンバ32(周壁部322)との間の隙間gに開口している。複数の第2排気孔62は、複数の第1排気孔61よりも外側に環状に配置されてもよい。第2排気孔62の高さ位置は、第1排気孔61の高さ位置よりも低くされている。
【0042】
第1排気孔61及び第2排気孔62は、排気ダクト65を介して排気ポンプに接続されている。排気ダクト65は、複数の第1排気孔61それぞれ及び複数の第2排気孔62それぞれに接続される排気流路が上チャンバ31内において一つの流路に集約されるように形成されてもよい。また、排気ダクト65には、排気の状態を制御するバルブ67が設けられていてもよい。制御装置100によってバルブ67の開閉を制御することで、第1排気孔61及び第2排気孔62からの排気量を制御することとしてもよい。バルブ67は、一例として、ソレノイドバルブである。
【0043】
上記の構成を有する外周排気部60は、隙間gに開口する第2排気孔62及び隙間gを介して処理空間S内のガスを排出すると共に、第1排気孔61を介して処理空間S内のガスを排出する。なお、外周排気部60は、複数の第1排気孔61を有していなくてもよく、第2排気孔62及び隙間gを介して処理空間S内のガスを排出してもよい。
【0044】
チャンバ駆動部38は、上チャンバ31を上下方向に移動させる。チャンバ駆動部38により、上チャンバ31の側壁312が周壁部322に近接するまで上チャンバ31が下降することで、チャンバ30により処理空間Sが形成される(チャンバ30が閉状態となる)。チャンバ駆動部38により、上チャンバ31の側壁312が周壁部322から離間するように上チャンバ31が上昇することで、熱板22上の空間がチャンバ30外の空間に開放される(チャンバ30が開状態となる)。
【0045】
上記のチャンバ30内では、ガス吐出部50のヘッド部52から処理空間Sへ向けてガスが供給されることに加えて、下チャンバ32に設けられた取り込み口323を介して、外部の気体が取り込まれる。取り込む口323から取り込まれた気体は、熱板22の外側を上昇して処理空間Sへ移動し得る。
【0046】
なお、処理空間Sをチャンバ30内の熱板22よりも上方の空間であり、且つ、側壁312よりも内側の空間と定義する。一方、熱板22よりも下方の空間をバッファ空間Bと定義する。バッファ空間Bは、熱板22よりも下方であり、且つ、環状部材332よりも上方の空間と定義する。また、バッファ空間Bは、処理空間Sに取り込まれる気体の流路に繋がっている。このとき、バッファ空間Bは、処理空間Sより、体積が大きくされている。
【0047】
熱処理ユニットU2は、ワークWを冷却する機能を有する冷却板を更に備えていてもよい。このとき、冷却板は、チャンバ30外の冷却位置と、その少なくとも一部がチャンバ30内に配置されるワークWの搬入出位置との間を往復移動してもよい。あるいは、冷却板は、水平方向に熱板22と並ぶ位置に固定されてもよく、熱処理ユニットU2は、冷却板と熱板22との間を移動しつつワークWを搬送する搬送アームを有してもよい。
【0048】
(制御装置)
制御装置100は、熱処理ユニットU2を含む塗布・現像装置2の各部を制御する。制御装置100は、チャンバ30により覆われた状態のワークWを加熱部20に支持させて加熱することと、加熱部20に支持されたワークWに対して、複数の吐出孔54からワークWの表面に向かってガスを吐出させることと、周縁よりも外側の外周領域から処理空間Sを排気することと、また、吐出量及び排気量を制御することを実行するように構成されている。
【0049】
図2に示されるように、制御装置100は、機能上の構成として、記憶部102と制御部104とを有する。記憶部102は、熱処理ユニットU2を含む塗布・現像装置2の各部を動作させるためのプログラムを記憶している。記憶部102は、各種のデータ(例えば、熱処理ユニットU2を動作させるための指示信号に係る情報)、及び各部に設けられたセンサ等からの情報をも記憶している。記憶部102は、例えば半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクである。当該プログラムは、記憶部102とは別体の外部記憶装置、又は伝播信号などの無形の媒体にも含まれ得る。これらの他の媒体から記憶部102に当該プログラムをインストールして、記憶部102に当該プログラムを記憶させてもよい。制御部104は、記憶部102から読み出したプログラムに基づいて、塗布・現像装置2の各部の動作を制御する。
【0050】
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、
図5に示される回路110を有する。回路110は、一つ又は複数のプロセッサ112と、メモリ114と、ストレージ116と、タイマー122と、入出力ポート118とを有する。ストレージ116は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の熱処理手順を含む基板処理手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ114は、ストレージ116の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ112による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ112は、メモリ114と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。タイマー122は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。入出力ポート118は、プロセッサ112からの指令に従って、熱処理ユニットU2との間で電気信号の入出力を行う。
【0051】
なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0052】
[基板処理手順]
図6は、塗布・現像処理を含む基板処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置100は、例えば以下の手順で1枚のワークWについての塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。まず制御装置100の制御部104は、キャリアC内のワークWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このワークWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0053】
次に制御部104は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御部104は、このワークWの表面上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する(ステップS01)。ステップS01において行われる下層膜形成に伴う熱処理(以下、「熱処理手順」という。)については後述する。その後制御部104は、下層膜が形成されたワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0054】
次に制御部104は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール12内の塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御部104は、このワークWの下層膜上にレジスト膜を形成するように塗布ユニットU3及び熱処理ユニットU4を制御する(ステップS02)。その後制御部104は、ワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0055】
次に制御部104は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御部104は、このワークWのレジスト膜上に上層膜を形成するように塗布ユニットU5及び熱処理ユニットU6を制御する(ステップS03)。その後制御装置100は、ワークWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0056】
次に制御部104は、棚ユニットU11に収容されたワークWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。そして、露光装置3において、ワークWに形成された被膜に露光処理が施される(ステップS04)。その後制御部104は、露光処理が施されたワークWを露光装置3から受け入れて、当該ワークWを棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0057】
次に制御部104は、棚ユニットU11のワークWを処理モジュール14内の熱処理ユニットU8に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、ワークWの被膜に現像前の熱処理を施すように熱処理ユニットU8を制御する(ステップS05)。次に、制御部104は、熱処理ユニットU8により熱処理が施されたワークWの被膜に現像処理、及び現像処理後の熱処理を施すように現像ユニットU7及び熱処理ユニットU8を制御する(ステップS06,S07)。その後制御部104は、ワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。以上で塗布・現像処理を含む基板処理が完了する。制御部104は、他のワークW(後続のワークW)についてもステップS01~S07の処理を繰り返し実行してもよい。
【0058】
(熱処理手順)
図7は、熱処理ユニットU2において行われる熱処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に例示のフローチャートは、熱処理ユニットU2において1枚のワークWに対して熱処理を順に施す場合の手順を示している。なお、熱板22は、所定の温度に維持されていることを前提としている。
【0059】
また、熱処理手順中のチャンバ30内での気体の流れを
図8(a)~
図8(c)において模式的に示す。さらに、熱処理手順中のチャンバ30におけるガス吐出部50からのガス吐出量、外周排気部60からのガス排気量、及びワークWの温度の関係を
図9において模式的に示す。
【0060】
まず、制御部104は、処理液の被膜が形成された処理対象のワークWをチャンバ30内に搬入するように熱処理ユニットU2を制御する(ステップS11)。
【0061】
例えば、制御部104は、チャンバ30において処理空間Sが形成される閉状態から、上チャンバ31が下チャンバ32から離間させる開状態に切り替えるようにチャンバ駆動部38を制御する。その上で、制御部104は、処理対象のワークWが載置された冷却板を、熱板22と上チャンバ31との間に挿入するように(搬入出位置に配置するように)熱処理ユニットU2を制御する。そして、制御部104は、熱板22の上方に配置された冷却板上のワークWを支持ピンが受け取るように支持ピンを上昇させる。これにより、チャンバ30内に処理対象のワークWが搬入される。その後、制御部104は、熱板22の載置面22aにワークWが載置されるように、当該ワークWを支持している支持ピンを下降させてワークWを下降させる。さらに、上チャンバ31を下降させるようにチャンバ駆動部38を制御することにより、チャンバ30が閉じた状態となり、ワークW上に処理空間Sが形成される。
【0062】
次に、制御部104は、外周排気部60による排気量(外周排気)と、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)とがいずれも「弱」状態となるように、熱処理ユニットU2を制御する(ステップS12)。例えば、制御部104は、供給路56に設けられる開閉バルブを閉状態から開状態に切り替えることで、ガスの供給源からヘッド部52のガス分配空間内にガスを供給する。これにより、ヘッド部52に形成されている複数の吐出孔54からガスが吐出される。また、制御部104は、開閉バルブを所定の開度に調整することで、ガス吐出量を「弱」の状態とすることができる。同様に、外周排気部60についても、バルブ67を所定の開度に調整することで、ガス吐出量を「弱」の状態とすることができる。
【0063】
なお、外周排気部60による排気とガス吐出部50からの給気の調整のうち、例えば、外周排気部60からの排気量の調整はワークWの搬入前に行ってもよい。
【0064】
ガス吐出部50からガスが吐出されつつ、外周排気部60からの排気が行われる状態で熱処理が開始される。このとき、ガス吐出部50から吐出されるガス、及び、下チャンバ32の周壁部322と熱板22との間に形成された隙間から処理空間S内に入り込んだガスは、外周排気部60から排気される。
【0065】
図8(a)は、処理空間Sに対する給気及び排気の流れを模式的に示す図である。
図8(a)に示すように、ワークWの上面の全体に対してガス吐出部50からが供給されるガスの気流F1を弱い状態すると共に、ワークWの外周から排気されるガスの気流F2を弱い状態にする。この結果、ワークWの表面上では外周側へ向かう緩やかなガスの流れが形成される。
【0066】
次に、制御部104は、ワークWの加熱が開始されてから、第1所定期間が経過するまで待機する(ステップS13)。第1所定期間は、記憶部102に記憶されている期間であり、
図9に示す時刻0~時刻t1の間に対応する。第1所定期間は、ワークW上の被膜が所定レベルで固化する程度に設定される。一例として、第1所定期間は、ワークW上の被膜の溶媒が揮発する温度に到達した後となる時刻t1に基づいて設定されてもよい。また、時刻t1は、例えば、ワークW上の被膜の固化状態に基づいて、例えば、表面の状態が所定の状態となるタイミングを時刻t1とすることによって、設定されてもよい。一例として、時刻t1は、ワークWに対する熱処理時間(
図9に示す時刻0~時刻t3の間)に対して、1/5~1/3の時間帯に設定され得る。時刻t1は、ワークWと同等の試験用ワークを用いた実験を繰り返し行うことで決定されてもよい。
【0067】
図9では、外周排気部60による排気量(外周排気)を線L1で示すと共に、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)を線L2で示している。さらに、
図9では処理中のワークWの温度変化を模式的に示している。
図9に示されるように、時刻0~時刻t1の間(初期)は、熱板上に載置されたワークW温度が上昇する期間である。この段階では、ワークWの温度上昇に伴って被膜が徐々に固化していく。このとき、被膜中の成分の架橋反応等に由来する昇華物が徐々に発生し、処理空間S内に飛散し得る。特に、
図9に示す時間帯Tcは被膜の表面が十分に固化する前であり、且つ、架橋反応等に由来した昇華物の発生量が大きな時間帯となる。
【0068】
第1所定期間が経過するまで制御部104が待機する間、外周排気部60による排気量(外周排気)と、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)とがいずれも「弱」の状態が継続する。この間、ワークWの加熱開始から初期の段階において、ワークWの被膜の固化(形成)が進行する。上述のように、給気及び排気の両方を弱い状態とすることで、給気及び排気に伴って発生する気流から被膜の形成への影響を抑制できる。
【0069】
第1所定期間の経過後、制御部104は、外周排気部60による排気量(外周排気)が「強」状態となるように、熱処理ユニットU2を制御する(ステップS14)。例えば、制御部104は、外周排気部60のバルブ67の開度が大きくなるように調整することで、ガス吐出量を「強」の状態とすることができる。なお、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)は引き続き「弱」状態が維持される。
【0070】
このとき、
図8(b)に示すように、ワークWの上面の全体に対してガス吐出部50からが供給されるガスの気流F1が弱く、ワークWの外周から排気されるガスの気流F2が強い状態となる。この結果、ワークWの表面上では外周側へ向かうガスの流れが形成されたまま、その流れが大きくなる。そのため、ワークWの上方の気体が外周側へ向かい、処理空間S外へ排気される。
【0071】
この状態で、制御部104は、第2所定期間が経過するまで待機する(ステップS15)。第2所定期間は、記憶部102に記憶されている期間であり、
図9に示す時刻t1~時刻t2の間に対応する。第2所定期間は、ワークW上の被膜の固化がさらに進行し、全体的に安定して固化する程度に設定される。一例として、第2所定期間は、ワークWの温度が熱処理の目標としての設定温度に対して±1℃以内となる時刻t2に基づいて設定されてもよい。また、時刻t2は、例えば、ワークW上の被膜の固化状態に基づいて、例えば、表面の状態がある程度固化し被膜の厚さが安定したタイミングを時刻t2とすることによって、設定されてもよい。一例として、時刻t2は、ワークWに対する熱処理時間(
図9に示す時刻0~時刻t3の間)に対して、1/3~3/4の時間帯に設定され得る。時刻t2は、ワークWと同等の試験用ワークを用いた実験を繰り返し行うことで決定されてもよい。
【0072】
図9に示されるように、時刻t1~時刻t2の間(中期)は、熱板上に載置されたワークW温度が徐々に安定してくる期間である。この間も、ワークWの被膜の固化(形成)が進行し、被膜がより安定した状態となる。この段階では、ワークWの被膜からの昇華物の発生量が徐々に減少するものの、被膜が完全に固化するまでは昇華物は引き続き発生し得る。そのため、処理空間Sには昇華物がある程度滞留した状態となり得る。
【0073】
これに対して、第2所定期間が経過するまで制御部104が待機する間、外周排気部60による排気量(外周排気)が「強」であり、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)が「弱」の状態が継続される。これにより、ワークW上方に滞留する被膜からの昇華物等がチャンバ30外へ排出される。特に外周側の排気量が大きく調整されることで、
図9に示す時間帯Tc及びその後に発生した昇華物の排出が促進される。
【0074】
第2所定期間の経過後、制御部104は、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)が「強」状態となるように、熱処理ユニットU2を制御する(ステップS16)。例えば、制御部104は、供給路56に設けられる開閉バルブの開度が大きくなるように調整することで、ガス給気量(ガス吐出部からの吐出量)を「強」の状態とすることができる。この結果、外周排気部60による排気量(外周排気)と、ガス吐出部50からのガス吐出量(給気)とがいずれも「強」状態となる。
【0075】
このとき、
図8(c)に示すように、ワークWの上面の全体に対してガス吐出部50からが供給されるガスの気流F1、及び、ワークWの外周から排気されるガスの気流F2が強い状態となる。この結果、ワークWの表面上では外周側へ向かうガスの流れがさらに大きくなる。
【0076】
この状態で、制御部104は、第3所定期間が経過するまで待機する(ステップS17)。第3所定期間は、記憶部102に記憶されている期間であり、
図9に示す時刻t2~時刻t3の間に対応する。第3所定期間は、ワークW上の被膜の固化がほぼ完了する程度に設定される。一例として、第3所定期間は、ワークWの温度が熱処理の目標としての設定温度に対して±1℃以内となってから所定期間経過した時刻t3に基づいて設定されてもよい。また、時刻t3は、例えば、ワークW上の被膜が完全に固化できるタイミングを時刻t3とすることによって、設定されてもよい。時刻t3は、ワークWと同等の試験用ワークを用いた実験を繰り返し行うことで決定されてもよい。
【0077】
図9に示されるように、時刻t2~時刻t3の間(後期)は、熱板上に載置されたワークWの温度が十分に安定した状態である。この間は、ワークWの被膜が全体的に固化する。この段階では、ワークWの被膜からの昇華物の発生量は少なくなり、処理空間Sには新たな昇華物が供給されない状態となる。
【0078】
第3所定期間が経過するまで制御部104が待機する間、外周排気部60による排気量(外周排気)及びガス吐出部50からのガス吐出量(給気)が「強」の状態が継続する。そのため、ガス吐出部50からワークWの上方から処理空間S内に供給されるガスは、ワークWの上方を移動し外周側から排気される流れがより大きくなり、ワークW上方に滞留する昇華物等はこの気流に乗ってチャンバ30外へより排出されやすくなる。
【0079】
第3所定期間の経過後、制御部104は、ワークWの搬出動作を行う(ステップS18)。具体的には、制御部104は、処理空間Sがチャンバ30外に開放されるように、チャンバ30が熱板22に近接した閉状態から、上チャンバ31が熱板22と離間する開状態に切り替わるようにチャンバ駆動部38を制御する。このように、制御部104は、ワークWを上チャンバ31の天板311に近づけた後に(より詳細には、天板311に近づけた状態を継続した後に)、チャンバ駆動部38により閉状態から開状態に切り替える。この状態で、制御部104は、ワークWを上昇させるように支持ピンを動作させると共に、ワークWをチャンバ30外に搬出するように冷却板等を制御する。この結果、チャンバ30と熱板22との間から、チャンバ30内に挿入された冷却板に対してワークWが受け渡され、ワークWがチャンバ30外に搬出される。以上により1枚のワークWに対する一連の熱処理が終了する。
【0080】
なお、ワークWを搬出した後に、次のワークWが搬入されるまでに、制御部104は、外周排気部60による排気量(外周排気)及びガス吐出部50からのガス吐出量(給気)が「弱」の状態に切り替えられる。これは、次のワークWが搬入された際に処理空間S内の気流の乱れを抑制するためである。
【0081】
処理対象のワークWを入れ換える期間において、外周排気部60による排気量(外周排気)及びガス吐出部50からのガス吐出量(給気)が「弱」の状態を切り替えることで、次のワークWを搬入した際に、未固化の被膜が気流の影響受けることが抑制される。
【0082】
[作用]
以上の実施形態に係る塗布・現像装置2は、被膜が形成されたワークWに熱処理を施す熱処理ユニットU2と、熱処理ユニットU2を制御する制御装置100とを備える。熱処理ユニットU2は、ワークWを支持して加熱する、熱板22を含む加熱部20と、加熱部20に支持されたワークWを覆うチャンバ30と、加熱部20に支持されたワークWに対向する面に沿って点在する複数の吐出孔54が形成されたヘッド部52を有し、複数の吐出孔54から当該ワークWの表面に向けてガスを吐出するガス吐出部50と、加熱部20に支持されたワークWの周縁よりも外側の外周領域からチャンバ30内の処理空間Sを排気する外周排気部60とを有する。このとき、制御装置100は、ワークWが加熱されている状態において、外周排気部60からの排気量を増加させるように外周排気部60を制御する。
【0083】
また、上述の実施形態に係る基板処理手順は、被膜が形成されたワークWに熱処理を施すことを含む。ワークWに熱処理を施すことは、チャンバ30により覆われた状態のワークWを加熱部20の熱板22に支持させて加熱することと、熱板22に支持されたワークWの周縁よりも外側の外周領域からチャンバ30内の処理空間Sを排気することと、熱板22に支持されたワークWに対向する面に沿って点在する複数の吐出孔54から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、を含み、加熱することを行っている状態において、排気することと、ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、排気することにおける排気量を増加させることをさらに含む。
【0084】
上記の塗布・現像装置2及び基板処理手順では、処理対象のワークWに対する熱処理を行っている際に、外周排気部60から排気を行うため、中心領域から排気を行う場合に発生し得る気流による被膜への影響、特に膜厚への影響を低減できる。また、ワークWが加熱されている状態において、外周排気部60からの排気量を増加させることにより、熱処理の後段において昇華物を効率的に回収することが可能となるため、昇華物によるワークWの欠損を抑制することが可能となる。
【0085】
また、制御装置100では、ワークWが加熱されている状態において、ガス吐出部50からの吐出量を増加させるようにガス吐出部50を制御してもよい。このような構成とすることで、ワークW表面近傍での気流の流れを利用して昇華物を効率的に移動させることができるため、熱処理において生じるワークWの欠陥を抑制することが可能となる。
【0086】
また、制御装置100によるガス吐出部50からの吐出量を増加させる制御は、外周排気部60からの排気量を増加させる制御よりも後に行われてもよい。このような構成とすることで、ワークW表面へ向けたガスの吐出量の増加によって被膜が影響を受けることを避けつつ、昇華物を効率的に回収することが可能となるため、昇華物によるワークWの欠損をさらに抑制することが可能となる。
【0087】
また、チャンバ30内に、処理空間Sに対して接続された、熱板22よりも下方のバッファ空間Bと形成され、バッファ空間Bに対してチャンバ30の外部から気体を供給する気体供給部としての取り込み口323をさらに有していてもよい。このとき、バッファ空間Bは、処理空間Sより、体積が大きくてもよい。このような構成とすることで、取り込み口323から供給された気体がバッファ空間Bで加熱した後に処理空間Sに供給されるため、処理空間S内のワークWの温度が変化することが防がれる。また、取り込み口323から供給された気体によって、上チャンバ31等の処理空間Sの周囲の部材が冷却されることが防がれる。したがって、処理空間S内の昇華物が冷却された部材と触れて固化すること等も防がれる。さらに、処理空間Sの体積が小さいことによって、処理空間Sの内部の気体の熱容量も小さくなる。したがって、処理空間Sの温度も安定しやすくなり、ワークWの熱処理自体も安定して行うことができる。
【0088】
熱板22は、当該熱板にワークWを吸着するための吸着孔22bを有し、吸着孔22bに連通する流路を有する樹脂製のパッド43をさらに有してもよい。このとき、樹脂製のパッド43は、金属部材42を介して、吸着孔22bに連通し且つ熱板22に接続されていてもよい。この場合、樹脂製のパッド43が熱板22に直接接続されている場合に比べて、熱板22からの熱による樹脂製のパッド43の劣化を抑制することができる。
【0089】
さらに、金属部材42は、大径部42aを有していてもよい。また、大径部42aの内側には断面積が大きい流路空間42bを有していてもよい。このような構成を有することで、熱処理で発生する昇華物によって詰まりのリスクが低減される。また、大径部42aの内側の断面積が大きい流路空間42bによって、ワークWの吸着時に処理空間Sから吸引される気体の熱が緩和される。そのため、下流側の樹脂製のパッド43及び排気ライン27に至るまでの排気流路を構成する機器の高温による劣化リスクを抑制することができる。
【0090】
さらに、熱板22に対して支持柱331を介して下方に接続される環状部材332をさらに有していてもよい。このとき、樹脂製のパッド43は、環状部材332の下方に位置していてもよい。このような構成とすることで、熱板22からの熱を環状部材332が効果的に遮断することができるため、樹脂製のパッド43が高温に晒されにくくなり、熱による劣化を抑制することができる。
【0091】
なお、上記の実施形態では、ガス吐出部50のヘッド部52に設けられた複数の吐出孔54から吐出するガスは全てガス分配空間で分配されたものであるため、同種且つ同温のガスが吐出されている。これに対して、制御装置100は、ガス吐出部50のヘッド部52に設けられた複数の吐出孔54のうち、ワークWの外周に対向する吐出孔54から吐出するガスの温度を、ワークWの中心に対向する吐出孔54から吐出するガスの温度よりも高くするように、ガス吐出部50を制御してもよい。このような構成とすることで、特にワークWの外周側において、被膜の固化を促進することができる。上記の熱処理ユニットU2では、外周排気部60により排気で、ワークWの中央側から外側に向けての気流が生まれるため、ワークWの外周側では、その上部の空間における溶媒濃度が、中央側の空間よりも高くなりやすい。つまり、外周排気部60によって排気が行われることから、ワークWの中央側における溶媒の揮発のほうが促進されやすく、ワークWの外周側では溶媒の揮発が遅くなる可能性がある。溶媒の揮発の速度の差は、ワークWにおける被膜の均一性に影響し得る。そこで、上記のように吐出孔54から吐出するガスの温度よりも高くするように、ガス吐出部50を制御することで、ワークWの内外において溶媒の揮発の速度の差を低減し、被膜の均一性を高めることができる。上記のようにガスの温度をワークWの中心側と外周側とで異ならせる制御は、例えば、熱処理の初期~後期(
図9参照)のいずれにおいても有効である。
【0092】
制御装置100は、ガス吐出部50のヘッド部52に設けられた複数の吐出孔54のうち、ワークWの外周に対向する吐出孔54から吐出するガス流速を、ワークWの中心に対向する吐出孔54から吐出するガスの流速よりも大きくするように、ガス吐出部50を制御してもよい。例えば、
図4において吐出孔54のうちワークWの中央に対向する所定の中央領域に含まれる吐出孔54をまとめて中央吐出領域(図示無し)とし、その外側において周状を成すような領域の吐出孔54をまとめて外周吐出領域(図示無し)とする。このとき、ヘッド部52の内部を隔壁で中央吐出領域と外周吐出領域とを区別し、それぞれに対し別々のガス供給流路(図示無し)を接続する、といった構成で実現される。このような構成とすることで、特にワークWの外周側において、昇華物に由来するワークWの欠損を抑制することができる。上記の熱処理ユニットU2では、外周排気部60により排気が行われることから、ワークWの中央側において発生した昇華物が外周側へ移動するため、外周側では昇華物による欠損が発生しやすくなる。これに対して、そこで、上記のように吐出孔54から吐出するガスの流速を大きくするように、ガス吐出部50を制御することで、ワークWの外周側での昇華物の移動を促進し、昇華物の回収効率を高めることができる。上記のようにガスの流速をワークWの中心側と外周側とで異ならせる制御は、例えば、熱処理の後期(
図9参照)において有効である。
【0093】
[変形例]
上記の熱処理ユニットU2の構成は一例であり、適宜変更され得る。例えば、チャンバ30の上チャンバ31及び下チャンバ32の形状等は、上記実施形態で説明した構成に限定されず、適宜変更される。
【0094】
また、上記の熱処理手順では、外周排気部60による排気量(外周排気)及びガス吐出部50からのガス吐出量(給気)の両方を熱処理中に変更したが、外周排気部60による排気量(外周排気)のみを変更する構成であってもよい。さらに、上記の手順では、「弱」と「強」との2段階で変更する場合について説明したが、3段階以上に多段に切り替える構成であってもよい。
【0095】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0096】
[付記]
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下とおり記載する。
【0097】
[1]被膜が形成された基板を支持して加熱する熱処理を施す熱板と、前記熱板に支持された前記基板を覆うチャンバと、前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔が形成されたヘッド部を有し、前記複数の吐出孔から当該基板の表面に向けてガスを吐出するガス吐出部と、前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気する外周排気部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記外周排気部からの排気量を増加させるように前記外周排気部を制御する、基板処理装置。
【0098】
上記の基板処理装置では、処理対象の基板に対する熱処理を行っている際に、外周排気部から排気を行うため、中心領域から排気を行う場合に発生し得る気流による被膜への影響、特に膜厚への影響を低減できる。また、基板が加熱されている状態において、外周排気部からの排気量を増加させることにより、熱処理の後段において昇華物を効率的に回収することが可能となるため、昇華物による基板の欠損を抑制することが可能となる。
【0099】
[2]前記制御部は、前記基板が加熱されている状態において、前記ガス吐出部からの吐出量を増加させるように前記ガス吐出部を制御する、[1]に記載の基板処理装置。
【0100】
上記の構成によれば、基板表面近傍での気流の流れを利用して昇華物を効率的に移動させることができるため、熱処理において生じる基板の欠陥を抑制することが可能となる。
【0101】
[3]前記制御部による前記ガス吐出部からの吐出量を増加させる制御は、前記外周排気部からの排気量を増加させる制御よりも後に行われる、[2]に記載の基板処理装置。
【0102】
上記の構成によれば、基板表面へ向けたガスの吐出量の増加によって被膜が影響を受けることを避けつつ、昇華物を効率的に回収することが可能となるため、昇華物による基板の欠損をさらに抑制することが可能となる。
【0103】
[4]前記チャンバ内に、前記処理空間に対して接続された、前記熱板よりも下方のバッファ空間がさらに形成され、前記バッファ空間に対して前記チャンバの外部から気体を供給する気体供給部をさらに有し、前記バッファ空間は、前記処理空間より、体積が大きい、[1]~[3]のいずれかに記載の基板処理装置。
【0104】
上記の構成によれば、気体供給部から供給された気体がバッファ空間で加熱した後に処理空間に供給されるため、処理空間内の基板の温度が変化することが防がれる。また、気体供給部から供給された気体によって、処理空間の周囲の部材が冷却されることが防がれ、昇華物が冷却された部材と触れて固化すること等も防がれる。
【0105】
[5]前記熱板は、当該熱板に前記基板を吸着するための吸着孔を有し、前記吸着孔に連通する流路を有する樹脂製のパッドをさらに有し、前記樹脂製のパッドは、金属製の部材を介して、前記吸着孔に連通し且つ前記熱板に接続されている、[1]~[4]のいずれかに記載の基板処理装置。
【0106】
上記の構成によれば、樹脂製のパッドが熱板に直接接続されている場合に比べて、熱板からの熱による樹脂製のパッドの劣化を抑制することができる。
【0107】
[6]前記金属製の部材は、大径部を有する、[5]に記載の基板処理装置。
【0108】
上記の構成によれば、大径部の内側では、断面積が大きい流路空間が形成可能となるため、熱処理で発生する昇華物によって詰まりのリスクが低減される。また、断面積が大きい流路空間によって、基板の吸着時に処理空間から吸引される気体の熱が緩和されるため、下流側へ高温の気体が流れることによる劣化リスクを抑制することができる。
【0109】
[7]前記熱板に対して支持柱を介して下方に接続される環状部材をさらに有し、前記樹脂製のパッドは、前記環状部材の下方に位置する、[5]に記載の基板処理装置。
【0110】
このような構成とすることで、熱板22からの熱を環状部材332が効果的に遮断することができるため、樹脂製のパッド43が高温に晒されにくくなり、熱による劣化を抑制することができる。
【0111】
[8]前記制御部は、前記ガス吐出部の前記ヘッド部に設けられた複数の吐出孔のうち、前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの温度を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの温度よりも高くするように、前記ガス吐出部を制御する、[1]~[7]のいずれかに記載の基板処理装置。
【0112】
[9]前記制御部は、前記ガス吐出部の前記ヘッド部に設けられた複数の吐出孔のうち、前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの流速を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの流速よりも大きくするように、前記ガス吐出部を制御する、[1]~[7]のいずれかに記載の基板処理装置。
【0113】
上記の構成を有することで、特に基板の外周側において、昇華物に由来する基板の欠損を抑制することができる。
【0114】
なお、上記の[1]~[9]の基板処理装置に係る例示的実施形態は、上記の[10]~[18]の基板処理方法に係る例示的実施形態として記述することもできる。[10]~[18]に記載の基板処理方法は、それぞれ、[1]~[9]の基板処理装置と同様の作用効果が得られる。
【0115】
[10]被膜が形成された基板に熱処理を施すことを含む基板処理方法であって、前記基板に前記熱処理を施すことは、チャンバにより覆われた状態の前記基板を加熱部の熱板に支持させて加熱することと、前記熱板に支持された前記基板の周縁よりも外側の外周領域から前記チャンバ内の処理空間を排気することと、前記熱板に支持された前記基板に対向する面に沿って点在する複数の吐出孔から当該基板の表面に向かってガスを吐出させることと、を含み、前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記排気することにおける排気量を増加させることをさらに含む、基板処理方法。
【0116】
[11]前記加熱することを行っている状態において、前記排気することと、前記ガスを吐出させることと、を同時に行いつつ、前記ガスを吐出させることにおける吐出量を増加させることをさらに含む、[10]に記載の基板処理方法。
【0117】
[12]前記ガスを吐出させることにおける吐出量を増加させることは、前記排気することにおける排気量を増加させることよりも後に行われる、[11]に記載の基板処理方法。
【0118】
[13]前記チャンバ内に、前記処理空間に対して接続された、前記熱板よりも下方のバッファ空間がさらに形成され、前記バッファ空間に対して前記チャンバの外部から気体を供給することをさらに含み、前記バッファ空間は、前記処理空間より、体積が大きい、[10]~[12]のいずれかに記載の基板処理方法。
【0119】
[14]前記熱板は、当該熱板に前記基板を吸着するための吸着孔を有し、前記吸着孔に連通する流路を有する樹脂製のパッドをさらに有し、前記樹脂製のパッドは、金属製の部材を介して、前記吸着孔に連通し且つ前記熱板に接続されている、[10]~[13]のいずれかに記載の基板処理方法。
【0120】
[15]前記金属製の部材は、大径部を有する、[14]に記載の基板処理方法。
【0121】
[16]前記熱板に対して支持柱を介して下方に接続される環状部材をさらに有し、前記樹脂製のパッドは、前記環状部材の下方に位置する、[14]に記載の基板処理方法。
【0122】
[17]前記ガスを吐出させることにおいて、前記複数の吐出孔のうち前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの温度を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの温度よりも高くする、[10]~[16]のいずれかに記載の基板処理方法。
【0123】
[18]前記ガスを吐出させることにおいて、前記複数の吐出孔のうち前記基板の外周に対向する吐出孔から吐出するガスの流速を、前記基板の中心に対向する吐出孔から吐出するガスの流速よりも大きくする、[10]~[16]のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【符号の説明】
【0124】
1…基板処理システム、2…塗布・現像装置、20…加熱部、22…熱板、22a…載置面、22b…吸着孔、24…熱板ヒータ、30…チャンバ、31…上チャンバ、32…下チャンバ、38…チャンバ駆動部、41…中継部材、42…金属部材、42a…大径部、42b…流路空間、43…パッド、50…ガス吐出部、52…ヘッド部、54…吐出孔、56…供給路、60…外周排気部、61…第1排気孔、62…第2排気孔、65…排気ダクト、67…バルブ、90…筐体、211…天板、311…天板、312…側壁、323…取り込み口、330…支持部、331…支持柱。332…環状部材、W…ワーク。