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特許7542295活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/00 20060101AFI20240823BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240823BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240823BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08F290/00
C08G18/67 005
C09D4/02
C09D175/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018067071
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2018172672
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-09-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017070381
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】神田 幸宗
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】藤井 勲
【審判官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190544(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035573(WO,A1)
【文献】特開2017-002102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00-290/14
C08G 18/00- 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との反応物である下記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と、多価イソシアネート(B)とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を含有してなり、上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中のペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が29~50重量%であり、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]が上記多価イソシアネート(B)と未反応の(a4)を含み、上記混合物(A)の水酸基価が200mgKOH/g以上であり、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量が、4,700~16,000であり、上記多価イソシアネート(B)が、脂環式系ポリイソシアネートおよび芳香族系ポリイソシアネートの少なくとも一方であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
(a1)ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート
(a2)ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート
(a3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
(a4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
【請求項2】
上記(メタ)アクリレート(a1)~(a3)合計に対するペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が15~55重量%であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなることを特徴とするコーティング剤。
【請求項4】
ハードコート用コーティング剤として用いることを特徴とする請求項記載のコーティング剤。
【請求項5】
光学フィルム用コーティング剤として用いることを特徴とする請求項記載のコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物を含有してなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びコーティング剤に関し、更に詳しくは、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、硬度及び屈曲性に優れた塗膜を形成することができ、更に、基材上に塗布し乾燥した後に荷重をかけても未硬化状態でべたつかない、即ちタックフリーな塗膜表面を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びそれを用いたコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ごく短時間の放射線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化が完了するため、各種基材へのコーティング剤や接着剤、又はアンカーコート剤等として幅広く用いられており、その中の硬化成分としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物や多官能モノマーが使用されている。ところが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、特にコーティング剤、とりわけハードコート用コーティング剤として用いる際に、塗膜の硬化収縮が起こり、硬化塗膜がカールし易いという問題点があり、カールしにくいものが求められている。
【0003】
また、ハードコート用コーティング剤は保護フィルムとして成型品やディスプレイ等の屈曲部にも使用されるため、硬化塗膜を形成したプラスチックフィルムを曲げてもクラック等が生じ難いという屈曲性が求められている。
【0004】
上記のカールしにくいことについては、硬化収縮を抑えるために、硬化性樹脂に無機微粒子を添加した硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照。)や、硬化成分として高分子量化されたウレタン(メタ)アクリレートを含有させた硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照。)、更には、水酸基価が130mgKOH/g以上であるペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物中の水酸基と、多価イソシアネート系化合物のイソシアネート基とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレートを含有してなる硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0005】
また、耐擦傷性を向上させるためにハードコート層をより高硬度化する手法として、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及びトリペンタエリスリトールオクタアクリレートを含有してなる樹脂組成物を、厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に膜厚12μmで塗布して硬化させて得られるフィルムが、鉛筆硬度5H程度の硬度を発現する技術が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
更に、硬化塗膜における耐擦傷性や耐カール性、柔軟性、耐衝撃性を向上させるために、ポリイソシアネート化合物とジヒドロキシジ(メタ)アクリレート化合物とを反応原料とするウレタン(メタ)アクリレート樹脂(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-77292号公報
【文献】特開2010-180319号公報
【文献】特開2012-229412号公報
【文献】特開2009-286924号公報
【文献】国際公開2016/194765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、無機微粒子と硬化性樹脂との相溶性を考慮すると使用できる有機溶剤が限られたり、塗膜の表面異常が起こる可能性が高くなるという問題があったり、更に一般的に無機微粒子は高価なため、それを配合した樹脂や塗料も高価となり、現実的には硬化性樹脂の使用用途が特殊な用途に限られてしまうものであった。
【0009】
上記特許文献2の開示技術では、硬化成分として使用するウレタン(メタ)アクリレートを高分子量化させるための製造法が多段反応となるため、操作が煩雑となったり、塗膜の耐擦傷性が低下してしまうものであった。
【0010】
特許文献3の開示技術では、硬化収縮が小さくカールが抑制された硬化塗膜を得ることができるが、原料中に多量に含まれるテトラアクリレートモノマーにより、塗膜が硬くなり大きく屈曲させた際に割れが生じてしまうものであった。
【0011】
特許文献4の開示技術では、硬化塗膜の表面硬度は高いものの、硬化時に生じるカールが大きく、また硬く脆いものであるために、塗膜を屈曲させた際に割れが生じてしまうものであった。
【0012】
特許文献5の開示技術では、硬化塗膜における耐擦傷性や耐カール性、柔軟性、耐衝撃性について改善されているものの、基材上に塗工された硬化前の未硬化状態の塗膜においては、塗膜表面がべたつく傾向、即ちタック感を有するものであった。
【0013】
近年では、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物で形成された塗膜において、乾燥しただけの未硬化な状態であってもべたつかない、即ちタックフリーであることへの要望も大きくなっている。例えば、活性エネルギー線硬化性インクを用いて多色印刷を行う場合には、印刷面が乾燥状態でべたつかないものであれば、印刷面を乾燥しただけで次々と重ねて印刷し、最後に活性エネルギー線により一括して硬化させることができるという利点がある。また、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して乾燥し塗膜を形成したものを保管、輸送するに際してもタックフリーであるとフィルムロールとして取り扱うことができる。更には、フィルム上に形成された未硬化状態の積層フィルムを樹脂組成物側を成形物側にして成形物に貼り付けた後、活性エネルギー線硬化を行うことにより、種々の成形物に容易に硬化膜を形成することができる。
【0014】
しかしながら、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の多くは、オリゴマーと総称される低分子量のアクリル酸エステル化合物、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアクリレート並びに、反応性希釈モノマーと総称される液状の活性エネルギー線硬化性単量体が混合されているため、硬化するまでの塗膜は塗膜表面がべたついている状態であり、更なる改良が望まれるところである。
【0015】
そこで、本発明では、このような背景下において、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、かつ屈曲性にも優れた塗膜を形成することができ、更に、基材上に塗布し乾燥した後に荷重をかけてもタックフリーな塗膜表面を形成することのできる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びそれを用いたコーティング剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、硬化成分として、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との反応物であって、通常のものよりも水酸基価の高い下記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の水酸基を有する(メタ)アクリレートと、多価イソシアネート(B)とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系組成物を用いることにより、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、かつ硬度及び屈曲性に優れた硬化塗膜が得られ、更に、基材上に塗布し乾燥した後、硬化するまでの塗膜においてはタックフリーな塗膜表面が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
即ち、本発明の要旨は、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との反応物である下記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と、多価イソシアネート(B)とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を含有してなり、上記混合物(A)の水酸基価が200mgKOH/g以上である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関するものである。
(a1)ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート
(a2)ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート
(a3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
(a4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
【0018】
また、本発明においては、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなるコーティング剤も提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、硬度及び屈曲性に優れた硬化塗膜を形成することができ、更に硬化前の塗膜でもタックフリーな塗膜表面を形成することのできるものであり、ハードコート用のコーティング剤等、種々の用途に有用である。
【0020】
上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中のペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が10~50重量%であると、硬度と屈曲性の両立の点に優れるようになる。
【0021】
上記(メタ)アクリレート(a1)~(a3)合計に対するペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が15~55重量%であると、硬度と屈曲性の両立の点により優れるようになる。
【0022】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量が、1,000~20,000であると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の取り扱いやすさに優れるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との反応物である下記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と、多価イソシアネート(B)とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を含有してなるものである。
(a1)ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート
(a2)ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート
(a3)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
(a4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
【0025】
上記ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸が反応して得られる上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)の水酸基価としては、200mgKOH/g以上であることが必要であり、好ましくは210~380mgKOH/g、特に好ましくは230~320mgKOH/gである。
【0026】
かかる混合物(A)の水酸基価が小さすぎると、低分子量でエチレン性不飽和基数が多く、イソシアネートと反応しないペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの含有量が多くなるため、硬化時の硬化収縮が大きくなることから、カールしやすくなる傾向があり、更には屈曲性が低下する傾向がある。なお、通常、上記水酸基価が大きくなりすぎると分子量の増加に伴い、粘度が向上するため、取り扱いにくくなる傾向がある。
【0027】
本発明における水酸基価は、JIS K 0070 1992に準じた方法により求めることができる。
【0028】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中のペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が10~50重量%であることが硬度と屈曲性の両立の点で好ましく、特に好ましくは15~45重量%、更に好ましくは20~40重量%である。かかる含有割合が小さすぎると屈曲性が低下する傾向があり、大きすぎると硬度が低下したり粘度が増大したりする傾向がある。
【0029】
更に、上記(メタ)アクリレート(a1)~(a3)合計に対するペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)の含有割合が15~55重量%であることが硬度と屈曲性の両立の点で好ましく、特に好ましくは20~50重量%、更に好ましくは25~45重量%である。かかる含有割合が小さすぎると屈曲性が低下する傾向があり、大きすぎると硬度が低下したり粘度が増大したりする傾向がある。
【0030】
本発明では、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸を反応させてペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物を調製するが、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸の反応については、公知一般の方法で行うことができる。かかる反応において、ペンタエリスリトールに対して(メタ)アクリル酸が一つ付加したペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート(a1)、二つ付加したペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート(a2)、三つ付加したペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(a3)、四つ付加したペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(a4)が含有された混合物(A)が得られ、全体として上記の水酸基価を有する混合物(A)を得ることができる。
【0031】
なお、上記混合物(A)中には、アクリル酸のミカエル付加物などの副反応生成物が含まれる場合がある。
【0032】
水酸基価の調整に際しては、例えば、(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の含有割合を調整することにより行うことができる。
【0033】
本発明において、上記多価イソシアネート(B)は上記(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と反応するものであり、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ポリイソシアネート;或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物または多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、東ソー社製の「アクアネート105」、「アクアネート120」、「アクアネート210」等)、等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0034】
これらの中でも、脂環式系ポリイソシアネート、芳香族系ポリイソシアネートであることが強度の点で好ましく、特に好ましくは、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートである。
【0035】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]は、上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)の水酸基と、上記多価イソシアネート(B)のイソシアネート基とを反応させて得ることができる。この場合、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]には、(メタ)アクリレート(a1)と多価イソシアネート(B)が反応したもの、(メタ)アクリレート(a2)と多価イソシアネート(B)が反応したもの、(メタ)アクリレート(a3)と多価イソシアネート(B)が反応したものが含有されることとなり、更には、系中には(メタ)アクリレート(a1)~(a3)の未反応物や反応に関与しない(メタ)アクリレート(a4)等も含有されることとなる。
【0036】
(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と多価イソシアネート(B)との反応においては、水酸基とイソシアネート基の官能基モル比を調整し、必要に応じて後述の反応触媒を用いて行うことができる。
【0037】
かかる多価イソシアネート(B)と(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)との仕込みの反応モル比は、多価イソシアネート(B)のイソシアネート基が2個である場合は、多価イソシアネート(B):(メタ)アクリレート混合物(A)が1:1~1:5であることが好ましく、特に好ましくは1:1~1:3、更に好ましくは1:1~1:2である。
【0038】
かかる混合物(A)の割合が多すぎると、低分子量モノマーが多くなり、硬化収縮が大きくなるためカールが大きくなる傾向があり、混合物(A)の割合が少なすぎると、未反応の多価イソシアネート(B)が残存し、硬化塗膜の安定性や安全性が低下する傾向がある。
【0039】
(メタ)アクリレート混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と多価イソシアネート(B)の反応は、通常、上記混合物(A)及び多価イソシアネート(B)を、反応器に一括又は別々に仕込み反応させればよい。
【0040】
上記反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物;オクチル酸錫、オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン系触媒;硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒、等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらは1種単独または2種以上併せて用いることができる。
【0041】
また、上記反応においては、更に重合禁止剤を用いることが好ましい。上記重合禁止剤としては、重合禁止剤として用いられている公知一般のものを使用することができ、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン等のキノン類、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール等の芳香族類、p-t-ブチルカテコール等を挙げることができる。中でも、芳香族類が好ましく、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾールが特に好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0042】
また、反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0043】
反応温度は、通常30~90℃、好ましくは40~80℃であり、反応時間は、通常4~72時間、好ましくは8~48時間である。
【0044】
かくして、本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]が得られる。
【0045】
かかるウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]の重量平均分子量としては1,000~20,000であることが好ましく、特に好ましくは2,000~18,000、更に好ましくは3,000~16,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化塗膜が脆くなる傾向があり、大きすぎると高粘度となり取り扱いにくくなる傾向がある。
【0046】
なお、上記重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY APC XT 45を2本の計4本を直列にして用いることにより測定される。
【0047】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、殊に好ましくは80重量%以上である。なお、上限は通常95重量%である。
【0048】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下「樹脂組成物」と略すことがある)は、上記ウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を含有してなるものであり、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に光重合開始剤[II]を含有することが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマー、アクリル樹脂、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤等を添加することができ、更にはフィラー、染料、顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散または溶剤分散されたシリカ、ジルコニウム化合物、防腐剤等を配合することも可能である。
【0049】
上記光重合開始剤[II]としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類等が挙げられる。なお、これら光重合開始剤[II]の1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを用いることが好ましい。
【0051】
また、これらの助剤として、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0052】
光重合開始剤[II]の含有量としては、樹脂組成物中に含まれる硬化成分100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.5~10重量部、更に好ましくは1~10重量部である。光重合開始剤[II]の含有量が少なすぎると、硬化不良となり膜形成がなされにくい傾向があり、多すぎると硬化塗膜の黄変の原因となり、着色の問題が起こりやすい傾向がある。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマーが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0054】
かかる単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテルアクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0055】
かかる2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0056】
かかる3官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化15グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0057】
また、アクリル酸のミカエル付加物あるいは2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも併用可能であり、かかるアクリル酸のミカエル付加物としては、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸トリマー、(メタ)アクリル酸テトラマー等が挙げられる。上記2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、その他オリゴエステルアクリレート等を挙げることができる。
【0058】
ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーの含有量としては、樹脂組成物中に含まれる全硬化成分中、50重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは40重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。なお、下限値としては通常5重量%である。
【0059】
前記表面調整剤としては、例えば、セルロース樹脂やアルキッド樹脂等を挙げることができる。かかるセルロース樹脂は、塗膜の表面平滑性を向上させる作用が有り、アルキッド樹脂は、塗布時の造膜性を付与する作用を有するものである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0060】
前記レベリング剤としては、塗液の基材への濡れ性付与作用、表面張力の低下作用を有するものであれば、公知一般のレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン変性樹脂、フッ素変性樹脂、アルキル変性の樹脂等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0061】
前記重合禁止剤としては、反応時に使用したものと同様のものを用いることができ、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-t-ブチルハイドロキノン等のキノン類、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール等の芳香族類、p-t-ブチルカテコール等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0062】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、塗工時の粘度を適正なものにするために、希釈のための有機溶剤を使用することも好ましい。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレン等の芳香族類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、ジアセトンアルコール等が挙げられる。これら上記の有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
2種以上を併用する場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類と、メチルエチルケトン等のケトン類やメタノール等のアルコール類との組み合わせや、メチルエチルケトン等のケトン類と、メタノール等のアルコール類との組み合わせ、メタノール等のアルコール類の中から2種以上を選び併用することが、塗膜外観の点で好ましい。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材へのトップコート剤やアンカーコート剤等、塗膜形成用の硬化性組成物として有効に用いられるものである。また、各種基材上に塗布し乾燥した後に、硬化前の未硬化状態であってもべたつかない、即ちタックフリーな塗膜表面を形成することができ、そのための塗膜形成用の硬化性樹脂組成物として有効に用いられるものである。そして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗工した後(有機溶剤で希釈した樹脂組成物を塗工した場合には、更に乾燥させた後)、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
【0065】
上記本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する対象である基材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ、等)等のプラスチック基材、またポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルム等の光学フィルム、それらの複合基材、またはガラス繊維や無機物を混合した前記材料の複合基材等、金属(アルミニウム、銅、鉄、SUS、亜鉛、マグネシウム、これらの合金等)やガラス、または、これらの基材上にプライマー層を設けた基材等が挙げられる。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗工方法としては、例えば、スプレー、シャワー、グラビア、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられ、通常は常温下で、基材に塗工すればよい。
【0067】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、有機溶剤で希釈して塗工してもよい。希釈する場合には、上記有機溶剤を用いて、固形分濃度が、通常3~70重量%であり、好ましくは5~60重量%となるように希釈する。
【0068】
上記有機溶剤による希釈を行なった際の乾燥条件としては、温度が、通常40~120℃、好ましくは50~100℃で、乾燥時間が、通常1~20分間、好ましくは2~10分間であればよい。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工するに際して、樹脂組成物の20℃での粘度は、5~50,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10~10,000mPa・s、更に好ましくは50~5,000mPa・sである。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が低下する傾向がある。
なお、上記20℃での粘度の測定法はB型粘度計によるものである。ただし、溶剤希釈しない状態で高粘度のため20℃でのB型粘度計による測定ができない場合は、60℃にてE型粘度計を用い測定を行う。
【0070】
基材上に塗工された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行う場合は、光重合開始剤[II]を用いなくても硬化し得る。
【0071】
紫外線照射により硬化させる際には、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LEDランプ等を用いて、通常30~3,000mJ/cm2、好ましくは100~1,500mJ/cm2の紫外線を照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0072】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、活性エネルギー線硬化性の塗膜として光重合開始剤[II]が均一に反応するべく光線透過を鑑みると1~1,000μmであり、好ましくは2~500μmであり、特に好ましくは3~200μmである。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、コーティング剤として用いることが好ましく、特にはハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤として用いることが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、サイズ15cm×15cmで厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、硬化後の塗膜が10μmの厚みとなるように塗工し、温度60℃で3分間乾燥させた後、PETフィルム面からの高さ18cmの位置に80Wの高圧水銀灯を準備し、5.1m/minの速度で積算照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射することにより、硬化塗膜が得られる。その硬化塗膜を10cm×10cmになるように切り出し、その切り出した硬化塗膜の四隅の跳ね上がり高さの平均値が40mm以下、特には30mm以下、更には20mm以下である硬化塗膜となるコーティング剤とすることが好ましい。
【0075】
さらに、本発明においては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、サイズ15cm×15cmで厚み125μmの易接着PETフィルムに、硬化後の塗膜が10μmの厚みとなるように塗工し、温度60℃で3分間乾燥させた後、易接着PETフィルム面からの高さ18cmの位置に80Wの高圧水銀灯を準備し、5.1m/minの速度で積算照射量が500mJ/cm2となるように紫外線を照射することにより、硬化塗膜が得られる。その硬化塗膜において、JIS K 5600-5-1に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行い、評価用硬化塗膜を試験棒に巻き付けた際に、割れ又は剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)が20mm以下、特には15mm以下、更には10mm以下、殊には8mm以下であるコーティング剤とすることが好ましい。
【0076】
本発明においては、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸との反応物である上記(メタ)アクリレート(a1)~(a4)の混合物(A)中の(メタ)アクリレート(a1)~(a3)と、多価イソシアネート(B)とが反応したウレタン(メタ)アクリレート系組成物[I]を含有してなり、上記混合物(A)の水酸基価が200mgKOH/g以上である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、硬度及び屈曲性に優れた硬化塗膜を形成することができ、更には、硬化前の未硬化状態の塗膜であっても塗膜表面がべたつかず、タックフリーな塗膜表面を形成することができるという効果を有するものであり、特にコーティング剤(更にはハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤)として有用であり、また、塗料、インク等としても有用である。
【実施例
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0078】
<実施例1>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I-1]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(B-1)36g、水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)64g、溶剤として酢酸エチル100g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I-1]を得た(樹脂分濃度50%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]の重量平均分子量は4,700、20℃での粘度は80mPa・sであった。なお、20℃での粘度の測定はB型粘度計を用いて行った。20℃での粘度測定は以下同様である。
【0079】
なお、アクリレート混合物(A-1)中における下記成分(a1)~(a4)の合計に対する各成分の含有割合は以下の通りである。
(a1)ペンタエリスリトールモノアクリレート 4%
(a2)ペンタエリスリトールジアクリレート 29%
(a3)ペンタエリスリトールトリアクリレート 49%
(a4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート 18%
【0080】
なお、混合物中の各成分の含有割合は、液体クロマトグラフ(Agilent社製、「Technology HP 1100」)にカラム(Imtakt社製、Cadenza CD-C18 100×3mm 3μm)を用いることにより測定される。
【0081】
〔活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造〕
上記で得られたウレタンアクリレート系組成物[I-1]に、光重合開始剤[II]として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM社製、「オムニラッド184」)を硬化成分100部に対して4部配合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0082】
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物について、下記の通り硬化前の塗膜(乾燥塗膜)を形成し塗膜のべたつきを評価した。更に、下記の通り硬化塗膜を形成し、硬化塗膜の硬度、屈曲性を評価した。評価結果は後記の表1の通りである。
【0083】
〔乾燥塗膜のべたつき〕
上記で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、易接着PETフィルム(東洋紡社製、「A4300」、サイズ15cm×15cm、厚み125μm)基板上にバーコーターを用いて、硬化後の塗膜が10μmの厚みとなるように塗工し、60℃で3分間乾燥した。得られた硬化前の塗膜を、タッキング試験機(レスカ社製、「TAC-II」)を用いて押し込み速度120mm/min、引き揚げ速度600mm/min、圧力20.4gf、加圧時間1.0秒間の条件でプローブタック試験を行った。
【0084】
〔硬化塗膜の硬度〕
上記で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、易接着PETフィルム(東洋紡社製、「A4300」、サイズ15cm×15cm、厚み125μm)基板上にバーコーターを用いて、硬化後の塗膜が10μmの厚みとなるように塗工し、60℃で3分間乾燥した後、高圧水銀灯80W、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量500mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜について、JIS K-5600に準じて試験を行い、鉛筆硬度を測定した。
【0085】
〔硬化塗膜の屈曲性〕
上記の硬度評価と同様にして硬化塗膜を形成し、易接着PETフィルム上に塗工した硬化塗膜について、JIS K 5600-5-1に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行った。評価用硬化塗膜を、塗膜面が外側になるように試験棒に巻き付けた際に、割れ又は剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定した。値が小さいほど屈曲性の高い塗膜であることを意味する。
【0086】
<実施例2>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I-2]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、水添化キシリレンジイソシアネート(B-2)33g、水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)67g、溶剤として酢酸エチル100g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I-2]を得た(樹脂分濃度50%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I-2]の重量平均分子量は6,200、20℃での粘度は65mPa・sであった。
【0087】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I-2]を用いて、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0088】
<実施例3>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I-3]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、トリレンジイソシアネート(B-3)43g、水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)97g、溶剤として酢酸エチル60g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I-3]を得た(樹脂分濃度70%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I-3]の重量平均分子量は7,300、20℃での粘度は161,000mPa・sであった。
【0089】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I-3]を樹脂分50%となるように酢酸エチルによって希釈した後、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0090】
<実施例4>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I-4]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、キシリレンジイソシアネート(B-4)48g、水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)90g、溶剤として酢酸エチル60g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I-4]を得た(樹脂分濃度70%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I-4]の重量平均分子量は12,000、20℃での粘度は高粘度のため測定を行わなかった。
【0091】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I-4]を樹脂分50%となるように酢酸エチルによって希釈した後、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0092】
<比較例1>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-1]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えたフラスコに、イソホロンジイソシアネート38.4g、水酸基価120mgKOH/gのアクリレート混合物(A’-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)161.6gを仕込み、重合禁止剤としてハイドロキノンメチルエーテル0.01g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.01gを仕込み、60℃で8時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-1]を得た(樹脂分濃度100%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-1]の重量平均分子量は1,400、60℃での粘度は3,000mPa・sであった。ただし、高粘度であったためE型粘度計を用いて測定を行った。
【0093】
なお、アクリレート混合物(A’-1)中における下記成分(a1)~(a4)の合計に対する各成分の含有割合は以下の通りである。
(a2)ペンタエリスリトールジアクリレート 5%
(a3)ペンタエリスリトールトリアクリレート 50%
(a4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート 45%
ただし(a1)ペンタエリスリトールモノアクリレートに関しては含有量が測定限界以下であったため、(a2)~(a4)成分の含有割合を示した。
【0094】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-1]を樹脂分50%となるように酢酸エチルによって希釈した後、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0095】
<比較例2>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-2]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(B-1)37g、水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)14g、アジピン酸とネオペンチルグリコールからなるポリエステルポリオール(DIC社製、「ODX-2044」、数平均分子量:約2,000)114g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が3.9%となった時点で水酸基価288mgKOH/gのアクリレート混合物(A-1)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)35gを加え、さらに60℃で反応させた。残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-2]を得た(樹脂分濃度100%)。
なお、上記手順によると、得られるウレタンアクリレート系組成物[I’-2]には(A-1)及び(B-1)のみの反応物はないこととなる。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-2]の重量平均分子量は18,000、60℃での粘度は700,000mPa・sであった。ただし、高粘度であったためE型粘度計を用いて測定を行った。
【0096】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-2]を樹脂分50%となるように酢酸エチルによって希釈した後、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0097】
<比較例3>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-3]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(B-1)25.8g、水酸基価184.2mgKOH/gのアクリレート混合物(A’-2)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)74.2g、溶剤として酢酸エチル100g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-3]を得た(樹脂分濃度50%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-3]の重量平均分子量は2,100、20℃での粘度は73mPa・sであった。
【0098】
なお、アクリレート混合物(A’-2)中における下記成分(a1)~(a4)の合計に対する各成分の含有割合は以下の通りである。
(a1)ペンタエリスリトールモノアクリレート 1.6%
(a2)ペンタエリスリトールジアクリレート 14.6%
(a3)ペンタエリスリトールトリアクリレート 49.6%
(a4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート 34.2%
【0099】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-3]を用いて、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は後記の表1の通りである。
【0100】
<比較例4>
〔ウレタンアクリレート系組成物[I’-4]の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、水添化キシリレンジイソシアネート(B-2)23.3g、水酸基価184.2mgKOH/gのアクリレート混合物(A’-2)(ペンタエリスリトールのアクリル酸付加物)76.7g、溶剤として酢酸エチル100g、重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.08g、反応触媒としてジブチル錫ジラウレート0.05gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート系組成物[I’-4]を得た(樹脂分濃度50%)。
得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-4]の重量平均分子量は2,200、20℃での粘度は85mPa・sであった。
【0101】
また、得られたウレタンアクリレート系組成物[I’-4]を用いて、実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、更に、実施例1と同様の評価を行った。評価結果は下記の表1の通りである。
【0102】
【表1】
【0103】
上記評価結果より、実施例1~4のウレタンアクリレート系組成物[I]を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、硬度及び屈曲性に優れる上に、硬化前の未硬化状態の塗膜であってもべたつきもないものであることがわかる。
一方、特定のウレタンアクリレート系組成物[I]以外のウレタンアクリレート系組成物を用いた各比較例において、比較例1は、硬化塗膜の屈曲性に劣るものであり、更に、硬化前の塗膜はべたつきを有するものであった。また、比較例2は、硬化塗膜の硬度に劣るものであり、更に、硬化前の塗膜はべたつきを有するものであった。比較例3及び4では、硬化塗膜の屈曲性に劣るものであった。
これらから、実施例の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物がタックフリーであり、硬度及び屈曲性に良好で、コーティング剤等、とりわけハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤の用途において有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さいことからカールしにくく、硬度及び屈曲性に優れた塗膜を形成することができ、更に、基材上に塗布し乾燥した後に荷重をかけても未硬化状態でべたつかない、即ちタックフリーな塗膜表面を形成することができるものであり、コーティング剤、とりわけハードコート用コーティング剤や光学フィルム用コーティング剤として有用である。また、塗料、インク等としても有用である。更には、フィルム上に形成された未硬化状態の積層フィルムの樹脂組成物側を成形物側にして成形物に貼り付けた後、活性エネルギー線硬化を行うことにより、種々の成形物に容易に硬化膜を形成することができる。