(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20240823BHJP
G03F 7/032 20060101ALI20240823BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240823BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240823BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240823BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20240823BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/032 501
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K1/03 610L
H05K3/46 T
H05K3/46 B
C08G59/42
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2020054585
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
(72)【発明者】
【氏名】舟越 千弘
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230616(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225441(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/032
G03F 7/004
H05K 1/03
H05K 3/46
C08G 59/42
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)エポキシ樹脂と、
(D)シリカとを含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(D)シリカとして、粒子径が300nm超のシリカを含有せず、
前記硬化性樹脂組成物中に含まれる前記(C)エポキシ樹脂のエポキシ基の数/前記(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の数の比が、1.9~2.9であ
り、
前記(A)カルボキシル基含有樹脂が、
1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、および
1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)シリカの含有量が、組成物の固形分全量基準で5~35質量%であることを特徴とする請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)エポキシ樹脂が、エポキシ当量が100~250g/eq.のエポキシ樹脂のみからなることを特徴とする請求項1または2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物、または、請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多層プリント配線板としては、回路形成された複数の回路板を、層間絶縁材としてのプリプレグを介して積層プレスし、スルーホールによって各層回路間を接続した構成を備えるものが知られている。また、内層回路板の導体層上に層間絶縁材と導体層とを交互に積み上げていくビルドアッププリント配線板も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
それら層間絶縁材としては一般に熱硬化性の層間絶縁フィルムが使用されており、層間接続のためのビア用開口はCO2レーザー等のレーザー加工により形成されている。しかしながら、レーザー加工によると、ビア用開口を一括して多数形成することができないため、フォトリソグラフィ技術を用いることが可能な感光性の層間絶縁材が求められている。
【0004】
一方、半導体部品のパッケージ形式の一つとしてウエハーレベルパッケージが知られている。このウエハーレベルパッケージを製造する際にも微細な絶縁パターンを一括して形成するためにアルカリ現像型の感光性絶縁材の要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-182991号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2013-36042号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような電子部品においては、配線の高密度化の要求があり、感光性絶縁材の解像性の改善が課題となっている。本発明者らは、無機フィラーとして、最大粒子径の小さいシリカを配合することによって、解像性が向上することに着眼した。しかしながら、そのような粒子径の小さいシリカを含有した硬化膜は、アセトンなどの薬品耐性が悪く、クラックが発生してしまうという問題があることが分かった。
【0007】
そこで本発明の目的は、解像性に優れ、かつ、薬品耐性に優れた硬化物を形成可能な感光性の硬化性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した結果、最大粒子径がより小さいシリカを配合し、かつ、組成物中に含まれるカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基とエポキシ樹脂のエポキシ基の比を特定の範囲とすることによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)エポキシ樹脂と、(D)シリカとを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記(D)シリカとして、粒子径が300nm超のシリカを含有せず、前記(C)エポキシ樹脂のエポキシ基/前記(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の比が、1.9~2.9であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D)シリカの含有量が、組成物の固形分全量基準で5~35質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(C)エポキシ樹脂が、エポキシ当量が100~250g/eq.のエポキシ樹脂のみからなることが好ましい。
【0012】
本発明のドライフィルムは、前記硬化性樹脂組成物をフィルム上に塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、解像性に優れ、かつ、薬品耐性に優れた硬化物を形成可能な感光性の硬化性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有する電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)エポキシ樹脂と、(D)シリカとを含有する硬化性樹脂組成物であって、前記(D)シリカとして、粒子径が300nm超のシリカを含有せず、前記(C)エポキシ樹脂のエポキシ基/前記(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の比が、1.9~2.9であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明においては、(D)シリカとして、粒子径が300nmを超えるシリカを含有しないことが肝要である。例えば、後述する比較例1に示すように、これほどに粒子径の小さいシリカでなくても解像性は改善されるが、その場合、上記のエポキシ基/カルボキシル基の比としたとしても、薬品耐性の改善効果は得られない。
【0018】
本発明における「粒子径が300nm超のシリカを含有しない」において、「粒子径」は一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含むものであり、動的光散乱法で測定した値である。動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製、NanotracWave II UT151が挙げられる。
【0019】
本発明において、(C)エポキシ樹脂のエポキシ基/(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の比とは、組成物中に含まれる(C)エポキシ樹脂のエポキシ基の数と(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の数との比である。(C)エポキシ樹脂のエポキシ基/(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の比は、1.9~2.6であることが好ましい。
【0020】
(C)エポキシ樹脂は、エポキシ当量が100~250g/eq.のエポキシ樹脂のみからなることが好ましく、より解像性および薬品耐性に優れる。
【0021】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0022】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
(A)カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。エチレン性不飽和基は、アクリル酸もしくはメタクリル酸又はそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和基を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光反応性モノマーを併用する必要がある。
【0023】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0024】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0025】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0027】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0029】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0030】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0031】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有樹脂。
【0032】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0033】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0034】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0035】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0036】
(13)アミド構造およびイミド構造の少なくともいずれかを有するカルボキシル基含有樹脂。
【0037】
(14)上記(1)~(13)等に記載のカルボキシル基含有樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有樹脂。
【0038】
上記カルボキシル基含有樹脂のうち、上記(7)、(8)、(10)、(11)、(14)に記載のカルボキシル基含有樹脂の少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。更なる絶縁信頼性を向上させる観点からは上記(10)、(11)に記載のカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0039】
(A)カルボキシル基含有樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせた混合物を用いてもよい。
【0040】
(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲である。(A)カルボキシル基含有樹脂の酸価を上記範囲とすることで、良好にアルカリ現像が可能となり、正常な硬化物のパターンを形成することができる。(A)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上の場合、乾燥塗膜のタックフリー性、露光後の塗膜の耐湿性、解像性が良好である。一方、重量平均分子量が150,000以下の場合、現像性と、貯蔵安定性が良好である。より好ましくは5,000~100,000である。
【0041】
[(B)光重合開始剤]
(B)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。(B)光重合開始剤のなかでも、露光感度を高くするために、ビスアシルフォスフィンオキサイド類やモノアシルフォスフィンオキサイド類等のアシルフォスフィン系光重合開始剤を含有することが好ましい。(B)光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(B)光重合開始剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して0.5~20質量部であることが好ましい。0.5質量部以上の場合、表面硬化性が良好となり、20質量部以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0043】
[(C)エポキシ樹脂]
(C)エポキシ樹脂としては、公知慣用のエポキシ樹脂が使用でき、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、液状であってもよく、固形ないし半固形であってもよい。多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ブロム化エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;ジグリシジルフタレート樹脂;テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;ナフタレン基含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。(C)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型(ビフェニルアラルキル型)エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0044】
(C)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100~300g/eq.であることが好ましく、100~250g/eq.であることがより好ましい。
【0045】
[(D)シリカ]
本発明の硬化性樹脂組成物は、フィラー成分として(D)シリカを含有するが、粒子径が300nm超のシリカは含有しない。シリカを含有することで、線膨張係数が小さい硬化物を得ることができる。シリカとしては、溶融シリカ、球状シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ等が挙げられ、なかでも球状シリカが好ましい。(D)シリカの製造方法は特に限定されないが、最大粒子径の小さいシリカが得られることからゾル-ゲル法が好ましい。
【0046】
(D)シリカの最大粒子径は、300nm以下であり、好ましくは280nm以下である。また、(D)シリカの平均粒子径(D50、メジアン径)は、120nm以下であることが好ましく、より好ましくは60nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。
【0047】
(D)シリカは表面処理されたシリカであることが好ましい。ここで表面処理とは、樹脂成分との相溶性を向上させるための処理のことを言う。また、シリカの表面に硬化性反応基を導入可能な表面処理が施されていてもよい。ここで、硬化性反応基とは、(A)カルボキシル基含有樹脂や(C)エポキシ樹脂などの硬化性化合物と硬化反応する基であれば特に限定されず、光硬化性反応基でも熱硬化性反応基でもよい。光硬化性反応基としては、メタクリル基、アクリル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられ、熱硬化性反応基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、イミノ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。シリカの表面に硬化性反応基を導入する方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いて導入すればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等でシリカの表面を処理すればよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を用いることができる。なお、硬化性反応基を有しない表面処理されたシリカとしては、例えば、シリカ-アルミナ表面処理、チタネート系カップリング剤処理、アルミネート系カップリング剤処理、有機処理がされたシリカ等が挙げられる。
【0048】
(D)シリカの平均粒子径の調整方法は特に限定されないが、例えば、ビーズミルやジェットミルで予備分散することが好ましい。また、(D)シリカとして、最大粒子径および平均粒子径が上記範囲にある市販品をそのまま用いてもよい。市販品としては、信越化学工業社製QSG-10(平均粒子径15nm、最大粒子径40nm)、QSG-30(平均粒子径30nm、最大粒子径70nm)、QSG-100(平均粒子径110nm、最大粒子径270nm)、日産化学社製PGM―AC―2140Y(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカ、固形分濃度42質量%、平均粒子径12nm、最大粒子径30nm)、MEK-EC-2130Y(メチルエチルケトン分散シリカ、固形分濃度30質量%、平均粒子径12nm、最大粒子径30nm)、MEK-EC2430Z(メチルエチルケトン分散シリカ、固形分濃度30質量%、平均粒子径12nm、最大粒子径30nm)、PMA-ST(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカ、固形分濃度30質量%、平均粒子径12nm、最大粒子径30nm)、アドマテックス社製YA050C-LHQ(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカ、固形分濃度40質量%、平均粒子径50nm、最大粒子径180nm)等が挙げられる。
【0049】
(D)シリカは、スラリー状態で配合されていてもよい。スラリー状態で配合することによって、高分散化が容易であり、凝集を防止して上記特定範囲の最大粒子径のシリカとして取り扱いが容易になる。
【0050】
(D)シリカは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)シリカの配合量は、組成物の固形分全量基準で5~35質量%であることが好ましく、より好ましくは10~30質量%である。(D)シリカの配合量が前記範囲内であるとより解像性が良好となる。
【0051】
(エチレン性不飽和基を有する化合物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有してもよい。エチレン性不飽和基を有する化合物は、活性エネルギー線の照射により光硬化して、樹脂層の照射部をアルカリ水溶液に不溶化し、または不溶化を助けることができる。エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の感光性モノマーである光重合性オリゴマー、光重合性ビニルモノマー等を用いることができる。エチレン性不飽和基を有する化合物として、感光性(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。エチレン性不飽基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、本明細書において、「エチレン性不飽和基を有する化合物」には、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル基含有樹脂を含まないものとする。
【0052】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリ
レート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが使用でき、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加体、プロピレンオキサイド付加体、もしくはε-カプロラクトン付加体などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加体もしくはプロピレンオキサイド付加体などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくとも何れか1種などを挙げることができる。
【0053】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物等を挙げることができる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0054】
エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部当り1~60質量部が好ましく、より好ましくは5~55質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。配合量を上記範囲とすることで、良好な光反応性を得て、かつ耐熱性を併せ持つことができる。
【0055】
(熱硬化促進剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化促進剤を含有してもよい。熱硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
熱硬化促進剤としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、これら以外にも、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0057】
市販されている熱硬化促進剤としては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、1B2PZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)等が挙げられる。
【0058】
熱硬化促進剤の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部当り0.1~10質量部が好ましく、より好ましくは0.1~5.0質量部である。0.1質量部以上の場合は硬化物の耐熱性が良好となり、10質量部以下の場合は保存安定性が良好となる。
【0059】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、樹脂組成物の調製のため、または基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために、有機溶剤を使用することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフ
サ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等である。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(その他の任意成分)
本発明の硬化性樹脂組成物には、電子材料の分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、着色剤、光開始助剤、増感剤、硬化剤、熱可塑性樹脂、有機フィラー、離型剤、表面処理剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、安定剤、蛍光体等が挙げられる。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁性硬化被膜の形成用として好適であり、絶縁性永久被膜の形成用としてより好適であり、カバーレイ、ソルダーレジスト、層間絶縁材の形成用としてさらに好適であり、層間絶縁材の形成用として特に好適である。また、高度な信頼性が求められるプリント配線板、例えばパッケージ基板、特にFC-BGA用の永久被膜(特に層間絶縁材)の形成に好適である。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、ソルダーダムなどの形成に使用することもできる。電子部品としては、プリント配線板以外の用途、例えば、インダクタなど受動部品でもよい。本発明の硬化性樹脂組成物は、液状型でもよく、液状型樹脂組成物を乾燥させて得られるドライフィルム型でもよい。液状型樹脂組成物は、保存安定性の観点から2液型等としてもよいが、1液型としてもよい。
【0062】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を、フィルム(以下、「キャリアフィルム」とも称す)上に塗布し、その後乾燥して得られた樹脂層を有するものである。本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、
スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~120℃の温度で1~30分間乾燥して得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で5~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜設定すればよい。フィルムとしては、キャリアフィルムに限らず、カバーフィルムでもよい。
【0063】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムを好適に用いることができ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0064】
キャリアフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後、さらに、塗膜の表面に塵が付着するのを防ぐ等の目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層してもよい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜とキャリアフィルムとの接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物をキャリアフィルム上に塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0066】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化されてなるもの、および、本発明のドライフィルムの樹脂層が硬化されてなるものである。
【0067】
[電子部品]
本発明の電子部品は、本発明の硬化物を備えるものである。本発明の電子部品は、本発明の硬化性樹脂組成物を直接塗布する方法と、本発明のドライフィルムを用いる方法とにより得ることができる。以下、電子部品として、プリント配線板を製造する場合を例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
直接塗布する方法でプリント配線板を製造する場合、回路形成されたプリント配線板上に本発明の硬化性樹脂組成物を直接塗布し、樹脂組成物の塗膜を形成した後、レーザー光等の活性エネルギー線をパターン通りに直接照射するか、またはパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線を照射することにより露光し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してパターンを形成する。さらに、形成したパターンに例えば100~2000mJ/cm2で活性エネルギー線を照射し、例えば約140~200℃の温度に加熱して硬化させることにより、硬化物のパターンを有するプリント配線板を製造する。なお、パターンへの活性エネルギー線の照射は、画像を形成する際の露光で反応しなかった光硬化成分をほぼ完全に硬化反応させるために行われる。
【0069】
ドライフィルムを使用する場合、回路形成されたプリント配線板上に、本発明のドライフィルムを貼り合わせて樹脂層を積層した後、上記と同様に露光後、キャリアフィルムを
剥がし、現像する。その後、樹脂層に活性エネルギー線を照射し、例えば約140~200℃の温度に加熱して硬化させることにより、硬化物のパターンを有するプリント配線板を製造する。
【0070】
活性エネルギー線の照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で活性エネルギー線を照射できる装置であればよく、さらに、例えば、コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線で画像を描くダイレクトイメージング装置のような直接描画装置も用いることができる。直接描画装置の光源としては、水銀ショートアークランプ、LED、最大波長が350~450nmの範囲にあるレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーいずれでもよい。パターンの画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~1500mJ/cm2、好ましくは20~1200mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0071】
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等を採用することができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0073】
[カルボキシル基含有樹脂の合成]
(合成例1:カルボキシル基含有樹脂1)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、アイカ工業株式会社製、OH当量:119.4)119.4質量部、水酸化カリウム1.19質量部およびトルエン119.4質量部を導入し、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8質量部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56質量部を添加混合して水酸化カリウムを中和し、固形分62.1%、水酸基価が182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキサイドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液293.0質量部、アクリル酸43.2質量部、メタンスルホン酸11.53質量部、メチルハイドロキノン0.18質量部およびトルエン252.9質量部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6質量部の水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35質量部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1質量部で置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5質量部およびトリフェニルフォスフィン1.22質量部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、固形分70.6%、固形分の酸価87.7mgKOH/gの感光性のカルボキシル基含有樹脂1の溶液を得た。
【0074】
(合成例2:カルボキシル基含有樹脂2)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート650部にオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLONN-695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070部(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360部(5.0モル)、及びハイドロキノン1.5部を仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルフォスフィン4.3部を仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、更にトリフェニルフォスフィン1.6部を追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)525部、テトラヒドロ無水フタル酸608部(4.0モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0部(1.0モル)を仕込み、115℃で4時間反応を行い、固形分酸価77mgKOH/g、固形分65%の感光性のカルボキシル基含有樹脂2の溶液を得た。
【0075】
[実施例1~8、参考例1、比較例1~5]
下記表1中の種々の成分を、表中に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、ビーズミルで混練し、硬化性樹脂組成物を調製した。尚、表中に記載の各成分の配合量は溶剤を含まない固形分の質量部である。
なお、撹拌機の攪拌条件は、回転数が800rpm、撹拌時間が10min.、撹拌機羽が12cmであり、ビーズミルとしては、コニカル型K-8(ビューラ社製)を使用し、ジルコニアビーズ、回転数1000rpm、吐出量20%、ビーズ粒径0.65mm、充填率88%の条件にて混練した。
上記で調製した硬化性樹脂組成物を、それぞれアプリケーターを用いて38μmのポリエステルフィルム上に塗布し、熱風循環式乾燥炉にて80℃で20分乾燥して、厚み10μmの樹脂層を有するドライフィルムを作製した。
【0076】
<解像性の評価>
FR-4 1.6mm厚 銅箔18μm厚の銅張積層板に電解銅めっき17μm厚でつけた基板をメック社製CZ-8101B処理にて1.0μm相当のエッチング処理を行った。そこに作製したドライフィルムを真空ラミネーター(CVP-300:ニッコーマテリアル社製)を用いて90℃の第一チャンバーにて真空圧3hPa、バキューム時間30秒の条件下でラミネートした後、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒の条件でプレスを行なった。
ついで、ポリエステルフィルムを剥がして高圧水銀灯を搭載した露光装置により各開口パターンにて露光を行なった。露光量は、ステップタブレット(Photec41段)で光沢感度が7段になるように露光量を調整した。その後、30℃の1質量%Na2CO3水溶液をスプレー圧2kg/cm2の条件で120秒間現像を行った。この硬化膜を有する基板をUVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、180℃で60分間加熱硬化した。得られた硬化物の開口径をSEMにより観測し、ハレーション、アンダーカットの発生がないかを以下の基準にて評価した。
◎:開口径8μmにて良好な開口径が得られた。
○:開口径10μmにて良好な開口径が得られた。
△:開口径15μmにて良好な開口径が得られた。
×:開口径15μmにて良好な開口径が得られなかった。
【0077】
<薬品耐性の評価>
銅めっきをつけた基板を6インチのウェハ上にドライフィルムの樹脂層を張り付けた以外は、上記<解像性の評価>試験と同様にして、硬化膜を有する基板を得た。得られた硬化膜を有する基板をアセトン中に30分浸漬し、クラックの発生が無いかを確認した。
◎: アセトン浸漬後にクラックが発生しない。
○: アセトン浸漬後に変色は見られるが、クラックは発生しない。
×: アセトン浸漬後に部分的にクラックが発生する。
××:アセトン浸漬後に材料全面にクラックが発生する。
【0078】
<熱膨張率(CTE)の評価>
銅めっきをつけた基板をGTS-MP箔(古河サーキットフォイル社製)に変更し、光沢面側(銅箔)上にドライフィルムの樹脂層を貼り付け、全面露光にした以外は、上記<解像性の評価>試験と同様にして、硬化膜を有する基板を得た。硬化膜を銅箔から剥がして、3mm幅×30mm長にカットした。この試験片を、ティー・エイ・インスツルメント社製 TMA(Thermomechanical Analysis)Q400を用いてCTEを測定した。測定条件は引張モードで、チャック間16mm、荷重50mN、窒素雰囲気下、20~300℃まで10℃/分で昇温し、次いで、300~-40℃まで10℃/分で降温し、さらに、-40~300℃まで10℃/分で昇温して測定した。-40~300℃まで10℃/分で昇温した時のTg以下の熱膨張率(CTEα1)を得た。
◎:CTEα1が45ppm未満のもの。
○:CTEα1が45ppm以上で55ppm未満のもの。
△:CTEα1が55ppm以上で65ppm未満のもの。
×:CTEα1が65ppm以上のもの。
【0079】
<絶縁信頼性(B-HAST耐性(L/S=10/10μm))>
基板をL/S=10/10μmの櫛形パターンが形成されたものとし、全面露光にした以外は解像性の評価基板の作製と同様に硬化膜を有する基板を作製した。そして、130℃、85%RH、印加電圧3.5V、槽内測定の条件でHASTを行った。評価基準は以下の通りである。
○:300時間後も異常なし。
△:200~300時間で短絡。
×:200時間以内で短絡。
【0080】
<密着性の評価>
(工程1)
厚さ1.6mmのFR-4銅張積層板に塩化第二鉄を使用したエッチング法にて完全に銅を除去した板(以下、単に「エッチアウト板」という)に、4辺がこの第1のエッチアウト板よりも少し小さい18μm厚の電解銅箔の4辺を耐薬品性粘着テープで固定した。この状態ではテープ貼り付け箇所以外は電解銅箔が露出している状態である。次に、メック社製エッチボンドCZ-8101で張り付けた電解銅箔を化学研磨し、銅箔付き基板を作製した。
(工程2)
作製したドライフィルムの樹脂層を、前記工程1で作製した銅箔付き基板の銅箔面に、真空ラミネーター(CVP-300:ニッコーマテリアル社製)を用いて90℃の第一チャンバーにて真空圧3hPa、バキューム時間30秒の条件下でラミネートした後、プレス圧0.5MPa、プレス時間30秒の条件でプレスを行なった。次いで、得られた評価基板に対して、高圧水銀灯を搭載した露光装置を用いて400mJ/cm2で露光して、PETフィルムを剥がし、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で120秒間現像した。現像後には、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射した後、180℃で60分加熱して硬化させて、銅箔付き基板の銅箔上に各組成物の硬化膜が形成された試験片を作製した。
(工程3)
工程2で作製した試験片の硬化膜面に、試験片の銅箔よりも4辺が少し小さい第2のエッチアウト板を2液性エポキシ系接着剤(アラルダイトスタンダード)にて接着し、60℃4時間硬化させた。硬化後に接着した第2のエッチアウト板の大きさにカッターで切り出して、第1のエッチアウト板から離脱して表裏を逆転し、第2のエッチアウト板に接着された各組成物の硬化膜に化学研磨された銅箔が形成されているピール強度測定用サンプルを作製した。
(測定)
作製したピール強度測定用サンプルを1cm幅、長さ7cm以上で切り出し、島津製作所製小型卓上試験機EZ-SXを使用し、90°プリントハクリ治具を用いて、90度の角度での密着強度を求めた。
評価基準は以下のとおりである。
○:下地の銅との密着性が5N/cm以上のもの。
△:下地の銅との密着性が3N/cm以上で5N/cm未満のもの。
×:下地の銅との密着性が3N/cm未満のもの。
【0081】
【0082】
*1:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂1の溶液(固形分70.6%、固形分の酸価87.7mgKOH/g)
*2:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂2の溶液(固形分65%、固形分酸価77mgKOH/g)
*3:Omnirad TPO H(IGM Resins社製)
*4:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 HP-7200L(エポキシ当量:248g/eq、DIC社製)
*5:ナフタレン型エポキシ樹脂 HP-4032D(エポキシ当量:136g/eq、DIC社製)
*6:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂 NC-3000H(エポキシ当量:286g/eq、日本化薬社製)
*7:QSG-10(平均粒子径15nm、最大粒子径40nm)信越化学工業社製
*8:QSG-30(平均粒子径30nm、最大粒子径70nm)信越化学工業社製
*9:QSG-100(平均粒子径110nm、最大粒子径270nm)信越化学工業社製
*10:QSG-170(平均粒子径170nm、最大粒子径420nm)信越化学工業社製
*11:SO-C5(平均粒子径1100nm、最大粒子径7000nm)アドマテックス社製
*12:1B2PZ(四国化成工業社製)
*13:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート DPHA(日本化薬社製)
*14:エポキシ樹脂のエポキシ基/カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の比
【0083】
上記表中に示す結果から、本発明の実施例1~8および参考例1の硬化性樹脂組成物は、解像性および薬品耐性に優れることが分かる。