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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ウェーハのプラズマエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240823BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240823BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
H01L21/78 S
H01L21/78 N
H01L21/68 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020140469
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035863
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079837(JP,A)
【文献】特開平08-172061(JP,A)
【文献】特開2016-195150(JP,A)
【文献】特開2005-064234(JP,A)
【文献】特開2014-093494(JP,A)
【文献】特開2006-295067(JP,A)
【文献】特開2019-075404(JP,A)
【文献】特開2008-21945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に分割予定ラインが設定されたウェーハのプラズマエッチング方法であって、
環状のフレームの開口にウェーハがシートで支持されたフレームユニットを形成するフレームユニット形成ステップと、
プラズマエッチングチャンバーに搬入した該フレームユニットの該フレームをフレーム支持部で支持し、ウェーハに貼着した該シートが静電チャックテーブルの保持面と所定の間隔を空けて対面する位置に位置付ける離隔配置ステップと、
該離隔配置ステップ実施後、該間隔を維持したまま該プラズマエッチングチャンバーを減圧する第1減圧ステップと、
該第1減圧ステップ実施後、該フレームユニットの露出したウェーハ側である上方から、該ウェーハの中央部向かってガスを噴射し、該ガスの圧力で該ウェーハを中央から撓ませて該シートを該中央部から外周に向かって該保持面に密着させるガス供給ステップと、
該ガス供給ステップ実施後、該フレーム支持部を該保持面に近づけて該フレームの該保持面からの離隔を解除することで、該ウェーハの外周部においても該シートを該保持面に密着させる離隔解除ステップと、
該離隔解除ステップ実施後、該静電チャックテーブルの電極に電圧を印加して、該保持面に密着した該シートを該静電チャックテーブルで吸引保持する吸引保持ステップと、
該吸引保持ステップ実施後、該プラズマエッチングチャンバーを減圧する第2減圧ステップと、
該第2減圧ステップ実施後、該静電チャックテーブルの冷却機構によって該保持面から該シートを冷却しつつ、ウェーハにプラズマ状態のガスを供給してウェーハの該分割予定ラインにエッチング溝又は亀裂形成してエッチングするプラズマエッチングステップと、
を備えるウェーハのプラズマエッチング方法。
【請求項2】
該プラズマエッチングステップでは、該ウェーハの上方から、プラズマ状態のガスを供給するとともに、該ウェーハの下方から吸引する、
請求項1に記載のウェーハのプラズマエッチング方法。
【請求項3】
該静電チャックテーブルの該電極は単極式であり、
該プラズマエッチングステップでは、該ウェーハをプラズマダイシングする、
請求項1又は2に記載のウェーハのプラズマエッチング方法。
【請求項4】
該静電チャックテーブルは該保持面に負圧を供給する吸引源と連通するバキュームユニットを有し、
該ガス供給ステップ中又は実施後に、該バキュームユニットで該シートを該保持面に吸引し、該シートの該保持面への密着を補助する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のウェーハのプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチングによってシリコン等の半導体ウェーハを加工するプラズマエッチング加工が広く用いられている。最近では、フレームにダイシングテープ等の樹脂シートで固定された一枚のウェーハをプラズマダイシングによって一括で分割することで、切削ブレードやレーザー光線による加工に比べて抗折強度の高いチップを製造する加工方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-059766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラズマエッチングでは、プラズマ加工によって高熱になるウェーハを冷却するため、冷却構造を持たせたチャックテーブルの保持面にウェーハを密着させる必要がある。しかしながら、プラズマダイシングするウェーハは、すでに研削されている場合が多いため、ウェーハに反りが発生しており、チャックテーブルに載置した際に、反りの影響でウェーハの外周や中央がチャックテーブルに密着されないという問題があった。
プラズマエッチング装置では、ウェーハを静電吸着によってチャックテーブルに吸引保持するが、チャンバー内を減圧するため、チャックテーブルの保持面にウェーハを接触させないと吸引力が働かず、ウェーハの反りを矯正することが困難であった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマ加工中に保持面にウェーハを密着させて好適に冷却することができるウェーハのプラズマエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハのプラズマエッチング方法は、表面に分割予定ラインが設定された環状のフレームの開口にウェーハがシートで支持されたフレームユニットを形成するフレームユニット形成ステップと、プラズマエッチングチャンバーに搬入した該フレームユニットの該フレームをフレーム支持部で支持し、ウェーハに貼着した該シートが静電チャックテーブルの保持面と所定の間隔を空けて対面する位置に位置付ける離隔配置ステップと、該離隔配置ステップ実施後、該間隔を維持したまま該プラズマエッチングチャンバーを減圧する第1減圧ステップと、該第1減圧ステップ実施後、該フレームユニットの露出したウェーハ側である上方から、該ウェーハの中央部向かってガスを噴射し、該ガスの圧力で該ウェーハを中央から撓ませて該シートを該中央部から外周に向かって該保持面に密着させるガス供給ステップと、該ガス供給ステップ実施後、該フレーム支持部を該保持面に近づけて該フレームの該保持面からの離隔を解除することで、該ウェーハの外周部においても該シートを該保持面に密着させる離隔解除ステップと、該離隔解除ステップ実施後、該静電チャックテーブルの電極に電圧を印加して、該保持面に密着した該シートを該静電チャックテーブルで吸引保持する吸引保持ステップと、該吸引保持ステップ実施後、該プラズマエッチングチャンバーを減圧する第2減圧ステップと、該第2減圧ステップ実施後、該静電チャックテーブルの冷却機構によって該保持面から該シートを冷却しつつ、ウェーハにプラズマ状態のガスを供給してウェーハの該分割予定ラインにエッチング溝又は亀裂形成してエッチングするプラズマエッチングステップと、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のウェーハのプラズマエッチング方法において、該プラズマエッチングステップでは、該ウェーハの上方から、プラズマ状態のガスを供給するとともに、該ウェーハの下方から吸引する。また、本発明のウェーハのプラズマエッチング方法において、該静電チャックテーブルの該電極は単極式であり、該プラズマエッチングステップでは、該ウェーハをプラズマダイシングしてもよい。
【0008】
また、本発明のウェーハのプラズマエッチング方法において、該静電チャックテーブルは該保持面に負圧を供給する吸引源と連通するバキュームユニットを有し、該ガス供給ステップ中又は実施後に、該バキュームユニットで該シートを該保持面に吸引し、該シートの該保持面への密着を補助してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、プラズマ加工中に保持面にウェーハを密着させて好適に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るウェーハのプラズマエッチング方法の流れを示すフローチャートである。
図2図2は、図1に示すフレームユニット形成ステップによって形成されたフレームユニットの一例を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示す離隔配置ステップからプラズマエッチングステップまでを実施するプラズマ装置の構成例を示す模式図である。
図4図4は、図1に示す離隔配置ステップ後の一状態を示す模式図である。
図5図5は、図1に示すガス供給ステップ中の一状態を示す模式図である。
図6図6は、図1に示す離隔解除ステップ後の一状態を示す模式図である。
図7図7は、図1に示すプラズマエッチングステップの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウェーハ110のプラズマエッチング方法について、図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るウェーハ110のプラズマエッチング方法の流れを示すフローチャートである。ウェーハ110のプラズマエッチング方法は、フレームユニット形成ステップ1と、離隔配置ステップ2と、第1減圧ステップ3と、ガス供給ステップ4と、離隔解除ステップ5と、吸引保持ステップ6と、第2減圧ステップ7と、プラズマエッチングステップ8と、を含む。
【0013】
(フレームユニット形成ステップ1)
フレームユニット形成ステップ1は、環状のフレーム120の開口にウェーハ110がシート121で支持されたフレームユニット100を形成するステップである。図2は、図1に示すフレームユニット形成ステップ1によって形成されたフレームユニット100の一例を示す斜視図である。図1に示すように、フレームユニット100は、ウェーハ110と、フレーム120と、シート121と、を含む。
【0014】
ウェーハ110は、実施形態に係るウェーハ110のプラズマエッチング方法の加工対象である。ウェーハ110は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)又は炭化ケイ素(SiC)等を基板111とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。なお、ウェーハ110は実施形態に限定されず、本発明では円板状でなくともよい。ウェーハ110は、基板111の表面112に形成される複数の分割予定ライン113と、格子状に交差する複数の分割予定ライン113によって区画された各領域に形成されるデバイス114とを有する。
【0015】
デバイス114は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。ウェーハ110は、分割予定ライン113に沿って分割されることによって、個々のデバイスチップに製造される。ウェーハ110は、予め所定の厚さ、例えば100μm以下の厚さに薄く研削されていてもよい。
【0016】
フレーム120は、ウェーハ110の外径より大きな開口を有する環形状である。フレーム120は、プラズマエッチングに対して耐性を有する金属や樹脂等の材質で構成される。シート121は、例えば、絶縁性の合成樹脂により構成された基材層と、基材層の表面及び裏面の少なくともいずれかに積層された粘着性を有する糊層とを含む。シート121は、外周がフレーム120の裏面側に貼着される。
【0017】
ウェーハ110は、フレーム120の開口の所定の位置に位置決めされ、表面112がシート121の表面に貼着されることによって、フレーム120及びシート121に固定される。フレームユニット形成ステップ1においては、ウェーハ110がフレーム120の開口にシート121で支持されることによって、フレームユニット100が形成される。
【0018】
(プラズマ装置10の構成)
ウェーハ110のプラズマエッチング方法において、離隔配置ステップ2、第1減圧ステップ3、ガス供給ステップ4、離隔解除ステップ5、吸引保持ステップ6、第2減圧ステップ7、及びプラズマエッチングステップ8は、プラズマ装置10によって実施される。図3は、図1に示す離隔配置ステップ2からプラズマエッチングステップ8までを実施するプラズマ装置10の構成例を示す模式図である。なお、プラズマ装置10は、実施形態ではプラズマエッチングチャンバー11が大気開放型チャンバーであるリモートプラズマ装置であるが、本発明ではダイレクトプラズマ装置でもよい。プラズマ装置10は、静電チャック(Electrostatic chuck:ESC)テーブル20と、フレーム支持部30と、バキュームユニット40と、ガス供給機構60と、プラズマ発生機構70と、を備える。
【0019】
静電チャックテーブル20は、プラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12に設けられる。静電チャックテーブル20は、フレームユニット100のウェーハ110の表面112側を、シート121を介して保持面21で保持する。保持面21の下方には、静電吸着用の電極22が設けられる。静電チャックテーブル20は、電極22に直流電圧が印加されることによって、保持面21上にウェーハ110を吸着保持する。電極22は、実施形態において、双極式である。電極22は、直流電源23から直流電圧が供給される。また、静電チャックテーブル20は、冷媒循環ユニット24の少なくとも冷媒通路を含む。冷媒循環ユニット24は、静電チャックテーブル20の冷媒通路に、冷媒を循環させることによって、静電チャックテーブル20の昇温を抑制する。冷媒は、例えば、純水又はフッ素系不活性液体である。
【0020】
フレーム支持部30は、静電チャックテーブル20の周囲に設けられる。フレーム支持部30は、支持面31にフレームユニット100のフレーム120が載置される。フレーム支持部30は、フレーム昇降機構32によって、静電チャックテーブル20の保持面21と垂直な方向である鉛直方向に移動可能である。フレーム支持部30は、支持面31にフレーム120を支持した状態で、ウェーハ110に貼着したシート121が静電チャックテーブル20の保持面21と所定の間隔116(後述の図4参照)を空けて対面する位置に位置付けることができる。フレーム支持部30は、支持面31にフレーム120を支持した状態で、フレーム昇降機構32により下降することによって、支持面31を保持面21に近付けて、保持面21からのフレーム120の離隔を解除することができる。
【0021】
バキュームユニット40は、プラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12を減圧する。また、バキュームユニット40は、実施形態において、静電チャックテーブル20の保持面21に負圧を供給する。バキュームユニット40は、実施形態において、第1流路41と、第2流路42と、調圧弁43と、仕切弁44、45、46と、圧力計47、48と、を含み、吸引源である真空ポンプ50と連通する。
【0022】
第1流路41は、プラズマエッチングチャンバー11と真空ポンプ50とを接続する。第1流路41には、調圧弁43と仕切弁44とが設けられる。第2流路42は、静電チャックテーブル20の保持面21と真空ポンプ50とを接続する。第2流路42には、仕切弁45、46が設けられる。圧力計47は、プラズマエッチングチャンバー11に設けられる。圧力計47は、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力を測定する。圧力計48は、仕切弁45と仕切弁46との間の第2流路42に設けられる。圧力計48は、仕切弁45と仕切弁46との間の第2流路42内の圧力を測定する。真空ポンプ50は、第1流路41及び第2流路42を介してプラズマエッチングチャンバー11の密閉空間12を減圧して、密閉空間12の圧力を所定の圧力に維持する。
【0023】
ガス供給機構60は、プラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12に、ガス65(後述の図5及び図6参照)、66(後述の図7参照)を供給し、静電チャックテーブル20の保持面21に保持されたウェーハ110に向けて噴射させる機構である。ガス供給機構60は、不図示のガス供給源からガス導入口61及びガス噴出部62の噴出孔63を介して、密閉空間12にガス65、66を供給する。ガス導入口61は、配管等を介してガス供給源と接続する。ガス導入口61は、ガス噴出部62に連通する。ガス噴出部62は、プラズマエッチングチャンバー11内における静電チャックテーブル20の上方に設けられる。ガス噴出部62は、静電チャックテーブル20の保持面21に対向する下面側に複数の噴出孔63を有する。ガス噴出部62の噴出孔63は、ガス噴出部62の下面側をメッシュ材で設けることによって成してもよい。ガス65は、窒素(N)、ヘリウム(He)等の不活性ガスである。ガス66は、ヘリウム、六フッ化硫黄ガス(SF)、酸素(O)等の不活性ガスである。ガス66は、ガス導入口61において、後述のプラズマ発生機構70によってプラズマ71が生成されることにより、プラズマ状態のガスとなる。
【0024】
プラズマ発生機構70は、プラズマ71を発生させて、ガス供給機構60から供給されたガス66をプラズマ状態のガスとしてプラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12に供給させる(図7参照)。具体的には、ガス供給機構60がガス66を供給した状態で、プラズマ発生機構70からガス噴出部62にプラズマ71を作り維持する高周波電力を印加する。高周波電力を印加することにより、プラズマ状態となったガスが、噴出孔63を介して分散されながら、真空ポンプ50に吸引されて、静電チャックテーブル20とガス噴出部62との間の空間に供給される。この際、ウェーハ110は、プラズマ71中に生成される反応性の高い粒子に晒されることによって、分割予定ライン113に形成されたエッチング溝や分割基点となる亀裂がエッチングされる。
【0025】
(離隔配置ステップ2)
図4は、図1に示す離隔配置ステップ2後の一状態を示す模式図である。離隔配置ステップ2は、フレームユニット100のウェーハ110に貼着したシート121が静電チャックテーブル20の保持面21と所定の間隔116を空けて対面する位置に位置付けるステップである。
【0026】
離隔配置ステップ2では、まず、フレーム昇降機構32によって、支持面31の高さが静電チャックテーブル20の保持面21より上方に位置するようにフレーム支持部30を上昇させる。次に、フレームユニット100を不図示の搬出入口からプラズマエッチングチャンバー11に搬入する。この際、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力は、大気圧と同圧である。
【0027】
離隔配置ステップ2では、次に、プラズマエッチングチャンバー11に搬入したフレームユニット100のフレーム120をフレーム支持部30の支持面31で支持する。この際、支持面31は、静電チャックテーブル20の保持面21より上方に位置するので、ウェーハ110に貼着したシート121と保持面21とは、所定の間隔116をおいて離隔して配置される。間隔116は、5mm以上10mm以下程度であることが好ましい。フレームユニット100を、シート121が保持面21と所定の間隔116を空けて対面する位置に位置付けた後は、不図示の搬出入口を閉塞して、プラズマエッチングチャンバー11内を密閉空間12とする。
【0028】
なお、実施形態ではフレームユニット100をプラズマエッチングチャンバー11搬入する前に予めフレーム支持部30を上昇させるが、本発明ではフレームユニット100を静電チャックテーブル20に搬入した後にフレーム支持部30を上昇させてもよい。
【0029】
(第1減圧ステップ3)
第1減圧ステップ3は、シート121と保持面21との間隔116を維持したままプラズマエッチングチャンバー11を減圧するステップである。第1減圧ステップ3は、離隔配置ステップ2実施後に実施される。
【0030】
第1減圧ステップ3では、真空ポンプ50、調圧弁43、及び仕切弁44を作動させて、第1流路41を介してプラズマエッチングチャンバー11の密閉空間12を減圧する。第1減圧ステップ3では、密閉空間12の圧力を100Pa以下に減圧する。
【0031】
(ガス供給ステップ4)
図5は、図1に示すガス供給ステップ4中の一状態を示す模式図である。ガス供給ステップ4は、フレームユニット100の露出したウェーハ110の裏面115側にガス65を供給するステップである。ガス供給ステップ4は、第1減圧ステップ3実施後に実施される。
【0032】
ガス供給ステップ4では、ガス供給機構60を作動させて、不図示のガス供給源からガス導入口61及びガス噴出部62の噴出孔63を介して、プラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12にガス65を供給する。ガス65は、シート121と保持面21との間隔116が維持されたウェーハ110に向けて噴射される。なお、実施形態のガス供給ステップ4では、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力(絶対圧力)を、調圧弁43を動作させて600Paとする。ガス65は、窒素ガスでの流量を1000sccmとする。
【0033】
これにより、ウェーハ110の上方ではガス65により圧力が上昇するので、ウェーハ110の上方と静電チャックテーブル20の保持面21側との間に差圧が生じる。すなわち、ウェーハ110に噴射されたガス65の圧力によって、ウェーハ110の中央から下方に撓む。特に予め薄く研削されたウェーハ110は撓みやすいため、ウェーハ110及びウェーハ110に貼着したシート121は、まず中央部が保持面21に密着し、次いで中央部から外周に向かって保持面21に密着していく。これにより、シート121と静電チャックテーブルの保持面21との間に気泡が残ることが抑制される。
【0034】
この際、ガス供給ステップ4中又はガス供給ステップ4実施後に、真空ポンプ50、及び仕切弁44、45、46を作動させて、バキュームユニット40でシート121を保持面21に吸引してもよい。すなわち、ウェーハ110を真空吸着させてもよい。これにより、シート121の保持面21への密着を補助することができる。
【0035】
(離隔解除ステップ5)
図6は、図1に示す離隔解除ステップ5後の一状態を示す模式図である。離隔解除ステップ5は、フレーム支持部30の支持面31の高さを静電チャックテーブル20の保持面21に近づけてフレーム120の保持面21からの離隔を解除するステップである。離隔解除ステップ5は、ガス供給ステップ4実施後に実施される。
【0036】
離隔解除ステップ5では、ガス供給ステップ4から引き続き、ガス65のウェーハ110に向けた噴射と、バキュームユニット40によるシート121の保持面21への吸引を継続する。離隔解除ステップ5では、ガス供給ステップ4でウェーハ110の中央がシート121を介して保持面21に密着した状態を維持したまま、フレーム昇降機構32によって、支持面31の高さを保持面21に近付けるようにフレーム支持部30を下降させる。
【0037】
これにより、フレーム120の保持面21からの離隔が解除されると、ウェーハ110の外周部においてもシート121と保持面21とが密着する。この際、シート121と保持面21との間に気泡が入ってしまった場合でも、バキュームユニット40でシート121を保持面21に吸引することにより、気泡を取り除いて密着させることができる。また、例えば、調圧弁43を調整して、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力を上昇させることによって、保持面21に真空吸着力を発生させる。この際の、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力(絶対圧力)は、例えば、1000Pa程度である。これにより、ウェーハ110の反りを矯正することができる。
【0038】
(吸引保持ステップ6)
吸引保持ステップ6は、静電チャックテーブル20の電極22に電圧を印加して、保持面21に密着したシート121を静電チャックテーブル20で吸引保持するステップである。吸引保持ステップ6は、離隔解除ステップ5実施後に実施される。
【0039】
吸引保持ステップ6では、直流電源23を作動させて、静電チャックテーブル20の電極22に電圧を印加することにより、静電チャックテーブル20を帯電させ、ウェーハ110を吸引保持する。この際、双極式のそれぞれの電極22には、例えば、+3kV及び-3kVを印加する。ウェーハ110を静電チャックテーブル20の保持面21に吸引保持した後は、ガス供給機構60を停止させる。
【0040】
なお、実施形態の吸引保持ステップ6では、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力(絶対圧力)を600Pa、窒素ガスであるガス65の流量を1000sccmとし、プラズマ発生機構70による加熱パワーを1500W、直流電源23によって電極22に印加させる電圧を+3kV(-3kV)とする。
【0041】
(第2減圧ステップ7)
第2減圧ステップ7は、プラズマエッチングチャンバー11を減圧するステップである。第2減圧ステップ7は、吸引保持ステップ6実施後に実施される。
【0042】
第2減圧ステップ7では、真空ポンプ50、調圧弁43、及び仕切弁44を作動させて、第1流路41を介してプラズマエッチングチャンバー11の密閉空間12を減圧する。第2減圧ステップ7では、密閉空間12の圧力(絶対圧力)を50Pa以下に減圧する。
【0043】
(プラズマエッチングステップ8)
図7は、図1に示すプラズマエッチングステップ8の一例を示す模式図である。プラズマエッチングステップ8は、静電チャックテーブル20の冷却機構(冷媒循環ユニット24)によって保持面21からシート121を冷却しつつ、ウェーハ110にプラズマ状態のガス66を供給してウェーハ110をエッチングするステップである。プラズマエッチングステップ8は、第2減圧ステップ7実施後に実施される。
【0044】
プラズマエッチングステップ8では、まず、冷媒循環ユニット24を作動させて、静電チャックテーブル20の冷却を開始させる。次に、ガス供給機構60とプラズマ発生機構70の高電圧電源とを作動させて、不図示のガス供給源からガス導入口61に供給したガスをプラズマ状態にする。そして、ガス噴出部62の噴出孔63を介して、プラズマエッチングチャンバー11内の密閉空間12にプラズマ状態のガス66を供給する。
【0045】
この際、ウェーハ110は、プラズマ71中に生成される反応性の高い粒子に晒されることによって、分割予定ライン113に形成されたエッチング溝や分割基点となる亀裂がエッチングされる。
【0046】
なお、プラズマエッチングステップ8では、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力(絶対圧力)を100Paとし、プラズマ発生機構70によるパワーを2000W、プラズマ発生機構70の高電圧電源による電圧を±3kVとする。また、ガス66が六フッ化硫黄ガス又は酸素ガスである場合は、流量を250sccmとする。ガス66がヘリウムガスである場合は、流量を500sccmとする。
【0047】
以上説明したように、実施形態におけるウェーハ110のプラズマエッチング方法では、フレームユニット100を静電チャックテーブル20の保持面21から離隔して保持した状態でプラズマエッチングチャンバー11を減圧した後、ウェーハ110にガス65を供給することで、ウェーハ110の中央を下方に撓ませる。これにより、ウェーハ110に貼着したシート121が保持面21に中央から外縁に向かって密着する。その後、シート121と保持面21との離隔を解除することにより、ウェーハ110の外縁部分のシート121も保持面21に密着する。ウェーハ110を保持面21に密着させるので、静電チャックテーブル20の冷却機構(冷媒循環ユニット24)によって、プラズマ加工中に保持面21から好適に冷却することが可能である。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0049】
例えば、静電チャックテーブル20の電極22は、実施形態では双極式であるが、単極式でもよい。電極22が双極式である場合は、吸引保持ステップ6でプラズマが不要であるが、電極22が単極式である場合は必要である。電極22が単極式である場合は、プラズマ装置に、プラズマエッチングステップ8で使用するプラズマ発生機構70とは別に、吸引保持用のプラズマ発生機構を設けられることが好ましい。吸引保持用のプラズマ発生機構は、高圧力下で放電可能な種類のプラズマ源を含む。
【0050】
吸引保持ステップ6では、まず、プラズマエッチングチャンバー11内の圧力を調圧した後(例えば、600Pa)、吸引保持用のプラズマ発生機構を作動させることにより、プラズマエッチングチャンバー11内にプラズマを発生させる。次に、直流電源23を作動させて、静電チャックテーブル20の電極22に電圧を印加することにより、静電チャックテーブル20を帯電させ、ウェーハ110を吸引保持する。
【0051】
また、静電チャックテーブル20の電極22が単極式である場合、静電チャックテーブル20の保持面21全てに斑なく分割後のチップを吸着できる。したがって、プラズマエッチングステップ8において、本発明では、プラズマダイシングしてもよい。プラズマダイシングでは、例えば、放電方式を誘導結合プラズマとし、静電チャックテーブル20に整合器を介して高周波バイアス電力を印加する。この際、周波数を13.56MHz、電極22の温度を-10℃、ウェーハ110の裏面115におけるヘリウムガスの圧力(絶対圧力)を1000Pa、直流電源23によって電極22に印加させる電圧を+3kVとする。
【0052】
プラズマダイシングのプラズマエッチング方法としては、所謂ボッシュ法を採用してもよい。ボッシュ法は、プラズマ化した六フッ化硫黄ガスを供給してエッチングによる分割溝を形成するエッチング工程と、プラズマ化したハフッ化シクロブタン(c-C)ガスを供給して分割溝の側面及び底に被膜を堆積させる成膜工程と、を交互に実施する方法である。なお、エッチング工程では、例えば、誘導結合プラズマを2500W、バイアス電力を200W、六フッ化硫黄ガスの流量を800sccm、絶対圧力を20Pa、1回の時間を5secとする。成膜工程では、例えば、誘導結合プラズマを2500W、バイアス電力を50W、ハフッ化シクロブタンガスの流量を400sccm、絶対圧力を15Pa、1回の時間を2.5secとする。
【符号の説明】
【0053】
1 フレームユニット形成ステップ
2 離隔配置ステップ
3 第1減圧ステップ
4 ガス供給ステップ
5 離隔解除ステップ
6 吸引保持ステップ
7 第2減圧ステップ
8 プラズマエッチングステップ
100 フレームユニット
110 ウェーハ
116 間隔
120 フレーム
121 シート
10 プラズマ装置
11 プラズマエッチングチャンバー
12 密閉空間
20 静電チャックテーブル
21 保持面
22 電極
23 直流電源
24 冷媒循環ユニット(冷却機構)
30 フレーム支持部
31 支持面
32 フレーム昇降機構
40 バキュームユニット
50 真空ポンプ(吸引源)
60 ガス供給機構
61 ガス導入口
62 ガス噴出部
63 噴出孔
65、66 ガス
70 プラズマ発生機構
71 プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7